説明

内部人工器官

内部人工器官等の医療器具が開示される。いくつかの実施形態では、内部人工器官は、周方向に配向されたバンド(22)と該バンドから延びるコネクタとを備え、バンド(22)は、2つの湾曲部分(26)と、これら2つの湾曲部分を連結する第1の部分(28)とを有し、第1の部分が第1の幅を有し、少なくとも1つの湾曲部分が、第1の幅より大きな第2の幅を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部人工器官(例えばステント)等、医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
身体は、動脈、その他の血管、及びその他の体管腔等、様々な通路を備える。これらの通路は、閉塞又は脆弱化することがある。例えば、通路は、腫瘍によって閉塞したり、プラークによって狭窄したり、又は動脈瘤によって脆弱になることがある。このような事態が生じた場合、医療用の内部人工器官を用いて、当該通路を再び開通させ、あるいは補強を行い、またさらには置換することができる。内部人工器官は、通常、体内の管腔内に配置される管状部材である。内部人工器官の例は、ステント、被覆されたステント、及びステント−グラフトを含む。
【0003】
内部人工器官は、カテーテルによって体内に送達することができ、カテーテルは、内部人工器官が所望の部位へと移送されるときに、内部人工器官を圧縮された又は小さな寸法にて支持する。当該部位に到達すると、内部人工器官は、例えば管腔壁に接触することができるように、拡張させられる。
【0004】
拡張機構は、内部人工器官を径方向に拡張させることを含むことができる。例えば、拡張機構は、バルーンを担持するカテーテルを備えることができ、バルーンは、バルーン拡張型内部人工器官を担持する。バルーンを膨張させることにより、バルーンを変形させることができ、拡張された内部人工器官を、所定の位置において管腔壁と接触させて固定することができる。次いでバルーンを収縮させ、カテーテルを抜去することができる。
【0005】
別の送達技法では、内部人工器官は、例えば弾性的に、又は材料の相転移によって、可逆的に圧縮及び拡張可能な弾性材料で形成される。体内への挿入時に、内部人工器官は、圧縮状態にて拘束される。所望の植込み部位に到達すると、例えば外側シース等の拘束器具を後退させることによって拘束が解かれ、内部人工器官が、それ自体の内部弾性復元力によって自己拡張することが可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、内部人工器官等、医療器具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、内部人工器官は、2つの湾曲部分と、これら2つの湾曲部分を連結する第1の部分とを有する、周方向に配向されたバンドを備え、第1の部分は第1の幅を有し、少なくとも1つの湾曲部分は、第1の幅よりも広い第2の幅を有する。
【0008】
諸実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を備えることができる。
内部人工器官は、第1の幅に対する第2の幅の比率を1より大きく3未満(例えば、1.05より大きい、1.1より大きい、1.5より大きい、又は1.75より大きい等)とすることができる。
【0009】
内部人工器官は、344.75MPa(50重量キロポンド毎平方インチ)より大きく、約1034.3MPa(150重量キロポンド毎平方インチ)より小さい(例えば、約379.2MPa(55重量キロポンド毎平方インチ)より大きい、約448.2MPa(65重量キロポンド毎平方インチ)より大きい、又は約482.7MPa(70重量キロポンド毎平方インチ)より大きい)降伏強度を有する材料からなる湾曲部分及び第1の部分を有することができる。
【0010】
湾曲部分及び第1の部分は、ステンレス鋼、放射線不透過性の元素と合金化されたステンレス鋼、ニッケル合金、ニオブ合金、及びチタン合金から選択される材料を含むことができる。
【0011】
周方向に配向されたバンドは、複数の湾曲部分と、ほぼ正弦波パターンを形成するように、隣接する湾曲部分同士を連結する複数の第1の部分とを備えることができる。内部人工器官は、周方向に配向された複数のバンドと、隣接するバンド間に延びる複数のコネクタとを備えることができる。
【0012】
周方向に配向されたバンドは、複数の湾曲部分と、これら湾曲部分を連結する複数の第1の部分とを備えることができ、各第1の部分はある長さをさらに有し、各バンドは、湾曲部分の幅の平均値を第1の部分の長さの合計値で除算することによって計算される、第1の部分の長さに対する湾曲部分の幅の総計比を有し、それは0.01より大きい(例えば0.015より大きい)。
【0013】
本発明の別の態様では、内部人工器官は、複数の湾曲部分と、ほぼ正弦パターンを形成するように隣接する湾曲部分同士を連結する複数の第1の部分とを有する、周方向に配向されたバンドを備え、第1の部分が第1の平均幅を有し、湾曲部分が第2の平均幅を有し、第2の平均幅を第1の平均幅で除算することによって計算される幅の比率が1.05より大きく、湾曲部分及び第1の部分は、379.225MPa(55重量キロポンド毎平方インチ)より大きな降伏強度を有する材料からなる。
【0014】
諸実施形態は、以下の特徴のうち1つ又は複数を備えることができる。
幅の比率は、1.1より大きくすることができる。
湾曲部分及び第1の部分は、482.65MPa(70重量キロポンド毎平方インチ)より大きな降伏強度を有する材料を含むことができる。
【0015】
内部人工器官は、複数の前記周方向に配向されたバンドと、隣接するバンド間に延びる複数のコネクタとを備えることができる。
本発明の別の態様によれば、内部人工器官は、内部人工器官の長手方向軸線に対してほぼ横断するように延び、かつ第1の平均幅を有する2つの第1の部分と、第1の部分同士を連結し、かつ第2の平均幅を有する第2の部分とを備え、第1の平均幅は第2の平均幅より大きい。第2の部分は、長手方向軸線に対してほぼ平行とすることができる。第1の部分及び第2の部分は、それらの交点にて約80°〜110°の角度を形成することができる。
【0016】
諸実施形態は、1つ又は複数の、以下の利点を備えることができる。理論に制約されるつもりはないが、高降伏強度の材料を含む(例えばそれから作製される)特定のステントは、ステントが体内管壁に対して拡張されるとき、又はステントが送達カテーテル上に巻縮されるときに、比較的大きなリコイルを生じるおそれがあると考えられている。その結果、体内管壁又は送達カテーテルに対するステントの固定が、所望されるよりも弱くなることがある。隣接する直線部分の幅よりも大きな幅を有する湾曲部分を備えるステントを形成することによって、ステントの巻縮又は拡張中に生じるひずみが、直線部分の材料の比較的小さい体積へと伝達されて集中し、それによって、ひずみを応力ひずみ曲線に従ってより増大させ、ステントの弾性変形ではなく塑性変形をもたらし得ると考えられている。結果として、リコイルが制限され、ステントの固定が改善される。さらに、湾曲部分のみの幅を増大させることによって、例えば、湾曲部分及び直線部分の両方の幅が増大されるステントに比べて、可撓性が向上すると考えられている。
【0017】
その他の態様、特徴、及び利点は、その好ましい実施形態の説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1を参照すると、ステント20は、複数のバンド22と、隣接するバンド間に延びそれらを連結する複数のコネクタ24とによって形成される管状部材の形態を有する。使用中に、バンド22は、初めの小さな直径からより大きな直径へと拡張させられて、ステント20を体内管壁に接触させ、それによって体内管の開存性を維持する。ステントの例は、バーメイスター(Burmeister)らの米国特許第6,451,052号明細書に記載されている。
【0019】
本明細書では、バンド22とは、ステントの周面を周方向に延びるステントの一部分を意味する。バンドは、例えばバンドの端部同士が結合されるようにステントの周面を一周するように延びていてもよく、又は周面の一部を延びていてもよい。バンドは、ほぼ直線状に延びていてもよく、あるいは、例えば波状パターン、(図1に示すような)ジグザグパターン、又は方形波パターン等をなすように非直線状に延びていてもよい。いくつかの実施形態では、バンド22同士は、バンドに対して横方向にバンド間に延びる一体的に形成されたコネクタ24によって連結される。
【0020】
本明細書では、コネクタ24は、ステントのバンドから延びる(例えば第1のバンドから隣接する第2のバンドへとステントの長さに沿って延びる)ステントの一部を意味する。コネクタは、直線状に(例えば、ステントの長手方向軸線と平行に)、あるいは、例えば波形パターン又はジグザグパターン等をなすように非直線状に延びることができる。
【0021】
図2A及び図2Bを参照すると、バンド22とコネクタ24とは、異なる形状及び寸法を有する。図示されるように、バンド22は、直線部分28によって連結された湾曲部分26を有する。湾曲部分26は、直線部分28の幅(Wbs)よりも大きな幅(Wbc)を有する。これらの幅(Wbc、Wbs)はいずれも、コネクタ24の幅(W)よりも大きい。
【0022】
理論に制約されるつもりはないが、高降伏強度の材料を含む(例えばそれから作製された)ステント等、特定のステントは、ステントが体内管壁に対して拡張されるとき、又はステントが送達カテーテル上に巻縮されるときに、比較的大きなリコイルを生じる可能性があると考えられている。結果的に、体内管壁又は送達用カテーテルに対するステントの固定が、所望されるよりも弱くなることがある。隣接する直線部分28の幅(Wbs)よりも大きな幅(Wbc)を有する湾曲部分26を備えるステントを形成することによって、ステントの巻縮又は拡張中に生じるひずみが、直線部分の材料の比較的小さな体積へと伝達されて集中し、それによって、ひずみを応力ひずみ曲線に従ってより増大させ、ステントの弾性変形ではなく塑性変形をもたらし得ると考えられている。結果として、リコイルが制限され、ステントの固定が改善される。さらに、湾曲部分26のみの幅を増大させることによって、例えば湾曲部分26及び直線部分28の両方の幅が増大されるステントに比べて、可撓性が向上すると考えられる。
【0023】
図示されるように、ステント20は、直線部分の幅(Wbs)に対する湾曲部分の幅(Wbc)の幅の比率(すなわちWbc/Wbs)が1よりも大きい。幅の比率Wbc/Wbsは、約1以上、約1.25以上、約1.5以上、約1.75以上、約2以上、約2.25以上、約2.5以上、約2.75以上、及び/又は、約3以下、約2.75以下、約2.5以下、約2.25以下、約2以下、約1.75以下、約1.5以下、約1.25以下とすることができる。図示されるように、湾曲部分26の幅(Wbc)及び直線部分28の幅(Wbs)はほぼ一定の寸法を有し、よって、幅の比率(Wbc/Wbs)は、ステント全体にわたり一定である。一部のステントでは、これらの幅を変えることができる。しかしながら、理論に制約されるつもりはないが、個々の幅の比率が1より大きく約3未満である、1つの直線部分によって連結された2つの湾曲部分を備える個々の区域は、固定性能を漸増させ得ることが予想される。
【0024】
バンド22は、約0.03〜0.20mmの範囲の幅(Wbc、Wbs)を有することができる。バンド22の特定の幅は、例えば、ステント20内の(1つ又は複数の)材料、ステントのタイプ(例えばバルーン拡張型又は自己拡張型)、及び/又は所望の性能の関数とすることができる。例えば、316Lステンレス鋼を含むステントは、約0.06〜0.25mmのバンド幅(Wbc、Wbs)を有することができ、10〜60重量パーセントの白金及び316Lステンレス鋼の構成成分からなる合金(PERSS(登録商標))を含むステントは、約0.04〜0.25mmのバンド幅(Wbc、Wbs)を有することができ、Fe−Co−Cr−Ni合金(エルジロイ(登録商標)、MP35N(登録商標)、又はL605等)を含むステントは、約0.03〜0.20mmのバンド幅(Wbc、Wbs)を有することができ、約1〜10重量パーセントのジルコニウム、約1〜70重量パーセントのタンタル、又は約1〜10重量パーセントのタングステンと合金化されるニオブを含むステントは、約0.08〜0.30mmのバンド幅(Wbc、Wbs)を有することができる。図示されるように、バンド22は、正弦波を含むが、正方波、ジグザグ波、又は複数の連結された多角形等、別の実施形態を用いることもできる。
【0025】
コネクタ24は、約0.03〜0.20mmの範囲の幅(W)を有することができる。コネクタ24の特定の幅は、例えば、ステント20内の(1つ又は複数の)材料、ステントのタイプ(例えばバルーン拡張型又は自己拡張型等)、及び/又は所望の性能の関数とすることができる。例えば、316Lステンレス鋼を含むステントは、約0.05〜0.18mmのコネクタ幅(W)を有することができ、PERSS(登録商標)合金を含むステントは、約0.03〜0.10mmのコネクタ幅(W)を有することができ、クロム及びコバルトを有する合金を含むステントは、約0.02〜0.08mmのコネクタ幅(W)を有することができ、耐熱金属を含むステントは、約0.08〜0.20mmのコネクタ幅(W)を有することができ、チタンを有する合金を含むステントは、約0.03〜0.15mmのコネクタ幅(W)を有することができる。図示されるように、コネクタ24は直線状であるが、屈曲したコネクタ24等、別の実施形態を用いてもよい。さらに、隣接するバンド間で材料を共有することによって、コネクタなしでステントを形成してもよい。
【0026】
複数の直線部分28によって連結された複数の湾曲部分26を含むステント20では、直線部分28は長さ(L)を有する(図2A参照)。いくつかのステントは、湾曲部分の幅の平均値を直線部分の長さの合計値で除算することによって計算される、直線部分の長さに対する湾曲部分の幅の総計比を有するように構成され、この比は0.01より大きい(例えば0.015より大きい)。例えば、この比は、図2Aに示すステントに関して、約Wbc/12Lとなる(すなわち、湾曲部分の幅Wbcの平均値が、直線部分の長さの合計値、又は直線部分の個数である12と平均長さLの積によって除算される)。
【0027】
上記のように、別のバンド及びコネクタ構成が可能である。例えば、図3を参照すると、高降伏強度のステント120は、隣接するバンド122の間に延びるコネクタ124によって結合された正方波として構成されたバンド122を備えることができる。バンド122は、ステントの長手方向軸線127をほぼ横断するように延びる第1の部分126と、第1の部分126同士を連結する第2の部分128とを備える。第2の部分128は、第1の部分126に対して横断するように延び、長手方向軸線127に対して平行である。第1の部分126及び第2の部分128は、それらの交点にて、約80〜110°の角度を形成することができる。第1の部分126は幅(W)を有し、第2の部分は幅(W)を有し、コネクタ124は幅(W)を有する。図示されるように、第1の部分126の幅(W)は、第2の部分の幅(W)よりも大きく、それらはいずれも、コネクタ124の幅(W)よりも大きい。第1の部分126の幅及び第2の部分128の幅(W、W)が変化する、降伏強度が高いステント等の一部のステントにおいては、第1の部分126の幅の平均値は、第2の部分128の幅の平均値よりも大きい。Wbc/Wbsに関して上記で説明したように、W対Wの比(W/W)は、約1〜3の範囲とすることができる。
【0028】
図4〜図6を参照すると、幅Wbcを有する湾曲部分226、326、426を備え、かつ湾曲部分が、Wbcよりも小さな幅Wbsを有する隣接する直線部分228、328、428同士を連結するバンド222、322、422等、別の構成が可能である。バンドは、コネクタによって結合可能であり(コネクタ224、324によって結合されるバンド222、322等)、あるいは、バンドは、コネクタなしで結合させてもよい(バンド422等)。バンド22及びコネクタ24は、ステント20を圧縮し、また後に体内管を支持するために拡張させることができるような機械的特性を有する1つ又は複数の生体適合性材料を含むことができる(例えばそのような材料から作製することができる)。いくつかの実施形態では、ステント20は、約137.9〜1034.25MPa(約20〜150ksi)の最大抗張力(UTS)、約15%より大きな破断伸び、及び約68.95〜413.7GPa(約10〜60msi)の弾性率を有することができる。ステント20が拡張されると、材料はおよそ0.4のひずみまで伸張され得る。いくつかの実施形態では、バンド122及びコネクタ124は、約379.225〜1034.25MPa(約55〜150重量キロポンド毎平方インチ(ksi))の降伏強度を有する材料を含む。降伏強度は、約413.7MPa(約60ksi)以上、約482.65MPa(約70ksi)以上、約551.6MPa(約80ksi)以上、約620.55MPa(約90ksi)以上、約689.5MPa(約100ksi)以上、約758.45MPa(約110ksi)以上、約827.4MPa(約120ksi)以上、約896.35MPa(約130ksi)以上、もしくは約965.3MPa(約140ksi)以上、及び/又は、約1034.25MPa(約150ksi)未満、約965.3MPa(約140ksi)未満、約896.35MPa(約130ksi)未満、約827.4MPa(約120ksi)未満、約758.45MPa(約110ksi)未満、約689.5MPa(約100ksi)未満、約620.55MPa(約90ksi)未満、約551.6MPa(約80ksi)未満、約482.65MPa(約70ksi)未満、もしくは約413.7MPa(約60ksi)未満とすることができる。高降伏強度材料の例は、米国特許出願公開第2003/0018380号明細書、同第2002/0144757号明細書、及び同第2003/0077200号明細書に記載されるような、ステンレス鋼及び5〜60重量%の1つ又は複数の放射線不透過性元素(例えばPt、Ir、Au、Ta、Pd)を有する合金(例えばPERSS(登録商標))を含む。良好な機械的特性及び/又は生体適合性をもたらす材料の別の例は、例えば、ステンレス鋼(例えば316L及び304Lステンレス鋼及びPERSS(登録商標))、ニチノール(ニッケル−チタン合金)、エルジロイ(登録商標)、L605合金、MP35N(登録商標)、Ti−6Al−4V、Ti−50Ta、Ti−10Ir、Nb−1Zr、及びCo−28Cr−6Moを含む。その他の材料は、例えばシェトスキー、L.マクドナルド(Schetsky,L.McDonald)、Shape Memory Alloys、Encyclopedia of Chemical Technology(第3版)、ジョンワィリーアンドサンズ(John Wiley & Sons)、1982年、第20巻、第726〜736頁、及び本願と同一の譲受人に譲渡された2003年1月17日に出願された米国特許出願第10/346,487号明細書に記載されるような、超弾性合金、擬弾性合金等の弾性生体適合性金属を含む。
【0029】
(1つ又は複数の)材料は、放射線不透過性を付与すべく、1つ又は複数の放射線不透過性材料を含むことができる。放射線不透過性材料の例には、例えば43より大きい等、26より大きな原子番号を有する金属元素を含む。いくつかの実施形態では、放射線不透過性材料は、約9.9g/ccより高い密度を有する。特定の実施形態では、放射線不透過性材料は、例えば、100keVにて、少なくとも25cm−1、例えば少なくとも50cm−1の線形減衰係数を有する等、X線を比較的吸収する。放射線不透過性材料には、タンタル、白金、イリジウム、パラジウム、ハフニウム、タングステン、金、ルテニウム、オスミウム、及びレニウムを含む。放射線不透過性材料は、上記で列挙した1つ又は複数の元素と、鉄、ニッケル、コバルト、又はチタン等の1つ又は複数の他の元素とを有する、二元、三元、又はより多元の合金等の合金を含むことができる。1つ又は複数の放射線不透過材料を含む合金の例は、米国特許出願公開第2003/0018380号明細書、同第2002/0144757号明細書、及び同第2003/0077200号明細書に記載されている。
【0030】
いくつかの実施形態では、ステント20は、磁気共鳴映像法(MRI)による視認性を向上させる、1つ又は複数の材料を含む。MRI材料の例には、テルビウム−ジスプロシウム、ジスプロシウム、及びガドリニウム等、常磁性元素(例えば、ジスプロシウム又はガドリニウム)を含む非鉄金属合金;ジスプロシウム又はガドリニウムの酸化物又は炭化物層(例えばDy又はGd)で被覆された非鉄金属バンド;ナノ結晶Fe、CoFe、MnFe、又はMgFe等、超常磁性材料の層で被覆された非鉄金属(例えば、銅、銀、白金又は金);ならびに遷移金属酸化物(例えばFe、Co、Niの酸化物)のナノ結晶粒子を含む。これに代えて、又はこれに加えて、撮像時に、例えばステントに隣接する組織及び/又はステントを包囲する組織の撮像を妨げるおそれがある磁化率アーチファクトを低減するために、ステント20は、低い磁化率を有する1つ又は複数の材料を含むことができる。磁化率が低い材料としては、タンタル、白金、チタン、ニオブ、銅、及びそれらの元素を含む合金が挙げられる。MRIで視認可能な材料は、構造材料内に組み込むことができ、かつ/又は構造材料として機能させることができ、かつ/又はステント20の層として含むことができる。
【0031】
ステント20を作製する一方法は、ステント20の管状部材を構成する管を形成することを含む。続いて管は、バンド22及びコネクタ24を形成するように切断され、未完成のステントが作り出される。切断による影響を受けた未完成のステント部分が、続いて除去される。未完成のステントは、ステント20を形成するように仕上げられる。
【0032】
ステント20の管状部材を構成する管は、熱機械処理等、冶金技術を用いて形成することができる。例えば、中空の金属部材(例えばロッド又はバー)を、漸進的に小さくなる円形開口部を有する一連のダイを通して引き抜いて、部材を目標の寸法及び形状に塑性変形させることができる。いくつかの実施形態では、塑性変形ひずみは、部材を硬化させ(またその降伏強度を増大させ)、結晶粒を部材の長手方向軸線に沿って伸長させる。伸長された結晶粒を、初期粒組織(例えば等軸結晶粒を含む粒組織)へと変態させるために、変形された部材を熱処理(例えば再結晶温度よりも高い温度におけるアニーリング及び/又は熱間静水圧プレス)することができる。部材を再結晶温度付近で短時間加熱すると、小さな又は微細な結晶粒が形成される。部材をより高い温度で、かつ/又はより長い時間加熱して結晶粒の成長を促進すると、大きな又は粗い結晶粒を形成することができる。
【0033】
次に、管を切削することによって、ステント20のバンド22及びコネクタ24が形成される。内容の全体を本願明細書に援用する米国特許第5,780,807号明細書に記載されるように、バンド22及びコネクタ24を形成するために、レーザ切断を用いて管の選択された部分を除去することができる。特定の実施形態では、レーザ切断中に、管の管腔を通して溶剤又は油等の液体キャリヤを流すことができる。キャリヤは、管の一部上に形成されたドロスが別の部分上に再付着することを防止することができ、かつ/又は管上におけるリキャスト材料の形成を低減することができる。機械的加工(例えばマイクロマシニング)、放電加工(EDM)、フォトエッチング(例えば酸によるフォトエッチング)等、管の一部を除去する他の方法を使用してもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、バンド22及びコネクタ24が形成された後に、上記切断操作による影響を受けた管の領域を除去することができる。例えば、バンド22及びコネクタ24のレーザ加工によって、ステント20の機械的特性及び性能に悪影響を及ぼすおそれがある溶融されて再凝固した材料及び/又は酸化された金属の表面層が残る場合がある。影響を受けた領域は、(グリットブラストやホーニング等によって)機械的に、かつ/又は(エッチング又は電解研磨等によって)化学的に除去することができる。いくつかの実施形態では、管状部材は、これが実行された後にニアネットシェイプ形状を有することができる。「ニアネットサイズ」とは、管が、完成されたステントを得るために除去される材料からなる外被が比較的薄いことを意味する。いくつかの実施形態では、管は、約25%未満の過大寸法、例えば約15%未満、10%未満、又は5%未満の過大寸法で形成される。
【0035】
次いで、未完成のステントは、ステント20を形成するように仕上げられる。未完成のステントは、例えば電解研磨によって平滑化処理を施して仕上げることができる。未完成のステントをニアネットサイズとなるように形成できるため、ステントを仕上げるために除去することが必要な未完成のステントは比較的わずかである。結果的に、(ステントに損傷を与えるおそれがある)さらなる処理及び高価な材料を減少させることができる。いくつかの実施形態では、ステントを産出するために、約2.54μm(約0.0001インチ)のステント材料を、化学研磨及び/又は電解研磨によって除去することができる。
【0036】
ステント20は、所望の形状及び寸法(例えば、冠動脈ステント、大動脈ステント、末梢血管ステント、消化管ステント、泌尿器用ステント、及び神経用ステント等)を有することができる。用途に応じて、ステント20は、例えば1〜46mmの直径を有することができる。特定の実施形態では、冠動脈ステントは、約2〜6mmの拡張直径を有することができる。いくつかの実施形態では、末梢ステントは、約5〜24mmの拡張直径を有することができる。特定の実施形態では、消化管及び/又は泌尿器用ステントは、約6〜30mmの拡張直径を有することができる。いくつかの実施形態では、神経用ステントは、約1〜12mmの拡張直径を有することができる。腹部大動脈瘤(AAA)用ステント及び胸部大動脈瘤(TAA)用ステントは、約20〜46mmの直径を有することができる。ステント20は、バルーン拡張型、自己拡張型、又はそれら両方の組合せ(例えば米国特許第5,366,504号明細書参照)とすることができる。
【0037】
使用に際しては、ステント20は、カテーテル送達システムを用いて使用する(例えば送達及び拡張される)ことができる。カテーテルシステムについては、例えば、ワン(Wang)の米国特許第5,195,969号明細書、ハムリン(Hamlin)の米国特許第5,270,086号明細書、及びレーダー−デベンズ(Raeder−Devens)の米国特許第6,726,712号明細書等に記載されている。米国ミネソタ州メープルグローブ(Maple Grove)に所在するボストンサイエンティフィックサイムド社(Boston Scientific Scimed)から販売されるRadius(登録商標)又はSymbiot(登録商標)システムもまた、ステント及びステント送達の例である。
【0038】
多数の実施形態について上述してきたが、本発明はそれらの実施形態に限定されるものではない。
いくつかの実施形態では、バンド22とコネクタ24とは異なる微細構造を有することができる。例えば、バンド22とコネクタ24とが異なる結晶粒サイズを有し、バンドの結晶粒をコネクタの結晶粒よりも大きくすることができる。この結果、結晶粒サイズは通常は降伏強度に反比例するため、コネクタ24はバンド22よりも高い降伏強度を有する。コネクタ24の降伏強度が高いことによって、コネクタ24は小さな断面寸法を有することが可能になる。これにより、コネクタ24は容易に変形することができ、ステント20が非直線状の体内管の形状に十分に合致することができる。降伏強度及び断面寸法は、コネクタ24が、破断に対する抵抗を維持しながらも容易に変形することができるようにバランスがとられる。相対的に、バンド22の降伏強度が低いと、ステント20が送達システムに巻縮されるとき、及び生体内での拡張中において生じる弾性リコイルが低減される。バンド22の降伏強度及び断面寸法は、径方向の圧縮力に対する良好な抵抗を提供し、かつ弾性リコイルを制御するようにバランスがとられる。異なる粒子サイズを有するステント、及びこのようなステントの製造方法は、本願と同一の譲受人による2004年10月8日に出願された米国特許出願第10/961,289号明細書に記載されている。
【0039】
ステント20は、2つ以上の層を有することができる。例えばステントは、316Lステンレス鋼又はPERSS(登録商標)等の第1の「構造」層、及び放射線不透過性元素からなる第2の層を備えることができる。例えば、熱膨張の差による分離等を防止するために、熱処理後に放射線不透過層を形成することができる。いずれの層を内側又は外側の層とすることもでき、いずれかの層又は両方の層は、上述した微細構造を含むことができる。3層ステントは、2つの構造層間に形成される放射線不透過性元素を含む層を備えることができる。
【0040】
ステント20はまた、被覆されたステント又はステント−グラフトの一部とすることもできる。別の実施形態では、ステント20は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸PTFE、ポリエチレン、ウレタン、又はポリプロピレンで形成される生体適合性の、非多孔性又は半多孔性ポリマーマトリックスを含むことができ、かつ/又は該ポリマーマトリックスに取り付けることができる。
【0041】
ステント20は、米国特許第5,674,242号明細書、2001年7月2日に出願された米国特許出願第09/895,415号明細書、及び2002年8月30日に出願された米国特許出願第10/232,265号明細書に記載されるものを含め、放出可能な治療薬、薬物、又は薬学的に活性な化合物を含むことができる。治療薬、薬物、又は薬学的に活性な化合物には、例えば、抗血栓薬、抗酸化剤、抗炎症薬、麻酔薬、抗凝血薬、及び抗生物質が含まれる。
【0042】
本願明細書で参照したすべての刊行物、参考文献、特許出願、及び特許は、その全体が本願明細書に援用される。
特許請求の範囲は、その他の実施形態をも包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】拡張されたステントの一実施形態を示す斜視図。
【図2A】図1のステントの一部を示す詳細図。
【図2B】図2Aの部分Bを示す詳細図。
【図3】ステントの別の実施形態を示す詳細図。
【図4】ステントの別の実施形態を示す詳細図。
【図5】ステントの別の実施形態を示す詳細図。
【図6】ステントの別の実施形態を示す詳細図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの湾曲部分と、これら2つの湾曲部分を連結する第1の部分とを有する、周方向に配向されたバンドを備え、前記第1の部分が第1の幅を有し、少なくとも1つの湾曲部分が前記第1の幅より大きな第2の幅を有する、内部人工器官。
【請求項2】
第1の幅に対する第2の幅の比率が1より大きく、かつ3未満である、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項3】
第1の幅に対する第2の幅の比率が1.05より大きい、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項4】
第1の幅に対する第2の幅の比率が1.1より大きい、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項5】
前記湾曲部分及び第1の部分が、482.65MPa(70重量キロポンド毎平方インチ)より大きな降伏強度を有する材料からなる、請求項4に記載の内部人工器官。
【請求項6】
前記第1の幅に対する第2の幅の比率が1.5より大きい、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項7】
前記湾曲部分及び第1の部分が、482.65MPa(70重量キロポンド毎平方インチ)より大きな降伏強度を有する材料からなる、請求項6に記載の内部人工器官。
【請求項8】
前記第1の幅に対する第2の幅の比率が1.75より大きい、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項9】
前記湾曲部分及び第1の部分が、482.65MPa(70重量キロポンド毎平方インチ)より大きな降伏強度を有する材料からなる、請求項8に記載の内部人工器官。
【請求項10】
前記湾曲部分及び第1の部分が、379.225MPa(55重量キロポンド毎平方インチ)より大きな降伏強度を有する材料からなる、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項11】
前記湾曲部分及び第1の部分が、448.175MPa(65重量キロポンド毎平方インチ)より大きな降伏強度を有する材料からなる、請求項10に記載の内部人工器官。
【請求項12】
前記湾曲部分及び第1の部分が、482.65MPa(70重量キロポンド毎平方インチ)より大きな降伏強度を有する材料からなる、請求項11に記載の内部人工器官。
【請求項13】
前記湾曲部分及び第1の部分が、344.75MPa(50重量キロポンド毎平方インチ)より大きく、かつ1034.25MPa(150重量キロポンド毎平方インチ)より小さな降伏強度を有する材料からなる、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項14】
前記湾曲部分及び第1の部分が、ステンレス鋼、放射線不透過性の元素と合金化されたステンレス鋼、ニッケル合金、ニオブ合金、及びチタン合金から選択された材料からなる、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項15】
前記周方向に配向されたバンドが、複数の湾曲部分と複数の第1の部分とを備え、複数の第1の部分は、ほぼ正弦波パターンを形成するように、隣接する湾曲部分同士を連結する、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項16】
前記周方向に配向されたバンドを複数個備え、かつ隣接する該バンド間に延びる複数のコネクタを備える、請求項15に記載の内部人工器官。
【請求項17】
第1の幅に対する第2の幅の比率が1.1より大きい、請求項15に記載の内部人工器官。
【請求項18】
前記湾曲部分及び第1の部分が、448.175MPa(65重量キロポンド毎平方インチ)より大きな降伏強度を有する材料からなる、請求項15に記載の内部人工器官。
【請求項19】
前記湾曲部分及び第1の部分が、482.65MPa(70重量キロポンド毎平方インチ)より大きな降伏強度を有する材料からなる、請求項14に記載の内部人工器官。
【請求項20】
前記周方向に配向されたバンドが、複数の湾曲部分と、該湾曲部分同士を連結する複数の第1の部分とを備え、各第1の部分がある長さをさらに有し、
各バンドは、湾曲部分の幅の平均値を第1の部分の長さの合計値で除算することによって計算される、湾曲部分の幅に対する第1の部分の長さの総計比を有し、その比が0.01よりも大きい、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項21】
前記湾曲部分の幅に対する第1の部分の長さの総計比が0.015よりも大きい、請求項20に記載の内部人工器官。
【請求項22】
前記湾曲部分及び第1の部分が、448.175MPa(65重量キロポンド毎平方インチ)より大きな降伏強度を有する材料からなる、請求項20に記載の内部人工器官。
【請求項23】
前記湾曲部分及び第1の部分が、482.65MPa(70重量キロポンド毎平方インチ)より大きな降伏強度を有する材料からなる、請求項22に記載の内部人工器官。
【請求項24】
複数の湾曲部分と、ほぼ正弦波パターンを形成するように、隣接する湾曲部分同士を連結する複数の第1の部分とを含む、周方向に配向されたバンドを備え、前記第1の部分は第1の平均幅を有し、前記湾曲部分が第2の平均幅を有し、
第2の平均幅を第1の平均幅で除算することによって計算される幅の比率が、1.05よりも大きく、かつ前記湾曲部分及び第1の部分が、379.225MPa(55重量キロポンド毎平方インチ)より大きな降伏強度を有する材料からなる、内部人工器官。
【請求項25】
前記幅の比率が1.1よりも大きい、請求項24に記載の内部人工器官。
【請求項26】
前記湾曲部分及び第1の部分が、482.65MPa(70重量キロポンド毎平方インチ)より大きな降伏強度を有する材料からなる、請求項24に記載の内部人工器官。
【請求項27】
前記周方向に配向されたバンドを複数個備え、かつ隣接する該バンド間に延びる複数のコネクタを備える、請求項24に記載の内部人工器官。
【請求項28】
内部人工器官であって、
該内部人工器官の長手方向軸線をほぼ横断するように延び、かつ第1の平均幅を有する2つの第1の部分と、
前記第1の部分同士を連結し、かつ第2の平均幅を有する第2の部分と、
前記第1の平均幅が前記第2の平均幅より大きいことと
を備える内部人工器官。
【請求項29】
前記第2の部分が前記長手方向軸線とほぼ平行である、請求項28に記載の内部人工器官。
【請求項30】
前記第1の部分と前記第2の部分が、その交点において約80〜110°の角度を形成する、請求項28に記載の内部人工器官。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−534149(P2008−534149A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504310(P2008−504310)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/011457
【国際公開番号】WO2006/105192
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】