説明

内部人工器官

【課題】管状臓器形状への追従性および柔軟性、縮径し易さを維持し、管状臓器の拡張・支持機能、管状臓器内での運搬性を向上させ、特殊な構成、手段を要することなく管状臓器の側枝を有する部位へ適用できるようにする。
【解決手段】変形可能な材料で形成され支柱の網目形状を有する1つの層をなす支持構造体に対し、変形可能な材料で形成された支柱の網目形状を有する他の層をなす支持構造体を挿入し、両方の層を一部の領域において接合して固定し、両層の支柱の網目構造の形状が相互に異なっていて、全体の構造を外方から見て各支持構造体における支柱の網目形状において重ならない部分が存在するようにし、各層の支持構造体が接合された一部の領域以外の領域においては支柱が相互に自由に変形可能であるようにする。支持構造体は3層以上としてもよく、接合領域の間の領域で支柱が周方向に変形し易い組み合わせた形状にしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は支持構造体を有する腔内用の内部人工器官に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内の血管などの管状臓器が狭窄を起こす病気がある。これらの病気は時として生命に重大な影響を及ぼす。一例として冠動脈において狭窄が生じると心筋への血流量が減少し、心臓の機能を低下させる。これにより生命が脅かされる。このような病気を治療する器具としてステントと呼ばれる器具がある。一般的にステントは図1(a)における展開図、部分的には(b)における拡大図に示されるような網目形状を有する平面状の構造体を丸めて、(c)のように両端部分が開口した円筒状の構造をなしているものである。ここで、(c)において網目形状は簡略的に示してある。図1(b)における単位構造はセル2とリンク3(またはコネクター)とが連結されてなり、セル2は管状臓器を拡張する役割を果たしており、半径方向に縮径・拡張する際に変形するセル屈曲部4とほとんど変形しない非変形部5に分けられる。非変形部5は略直線形状であることが多い。図1(a)は(b)の単位構造が平面状に反復した形状になっている。ステントの材料としてはステンレスなどの塑性変形可能な金属、屈曲した形状のセルと形状記憶や超弾性などの性質を有する金属(例えばNiTi合金)、超塑性や生体内で溶ける特性を有する金属、生分解性を示すプラスチックなどが使用されている。ステンレスなどの塑性変形可能な金属材料から構成されるステントがもっとも多く利用されている。
【0003】
ステントは中空パイプなどから作製されるため、使用前は真円に近い形状であるが、拡張されるとセル屈曲部4のみが変形する。例えば、拡張前直径が1.0mmから1.5mmのステンレス製ステントを、直径3.0mm程度に拡張する場合には、約30%程度のひずみが発生する。そのひずみはセル屈曲部の特に内側部分に非常に集中して発生する。
【0004】
ステントは、体外であらかじめ生体内の管状臓器に留置しやすいように半径を小さくした状態でバルーンカテーテルと呼ばれる運搬装置に取り付けられている。バルーンカテーテルに取り付ける際にステントの半径を小さくすることが出来れば、体内などへの挿入時および挿入後の病変部までの運搬が非常に容易になる。
【0005】
バルーンカテーテルに取り付けられているステントを生体のごく一部を切開した状態で血管などに挿入し、そこから病変部位に運ぶ。病変部位までステントを運搬すると、そこでバルーンカテーテルの先端部分を拡張する。バルーンカテーテルの先端部分にはステントが取り付けられているが、ステントの取り付けられている部分は風船状になっており、拡張が可能である。バルーンカテーテルの拡張によってステントも体内で拡張される。ステントが塑性材料である場合、ステントは塑性変形を起こすほど拡張され、その変形は永久に保持される。ステントを拡張した後にバルーンカテーテルを除去すると、塑性変形をしたステントのみが狭窄を起こした病変部位を拡張した状態で残される。
【0006】
ステントには、さまざまな構造が提案されている。ステントには多くの機能が要求されるが、基本的な要求機能は半径方向の変形可能性、拡張時に管状臓器を支持する半径方向の剛性、管状臓器の複雑な形状に追従し得る長軸方向の柔軟性である。ステントは基本的には円周方向、長軸方向にそれぞれ同じ形状が繰り返し、それによって構成されることが多い。
【0007】
特許文献1には、このような構造の代表的なものとして、管状臓器を拡張および支持する「セル」と呼ばれる部分とステントに長軸方向の柔軟性を与える「リンク」から構成されるステントについて記載されている。このようなステントはクローズドセル構造と呼ばれ、リンクがS字形やN字形の形状になっている。
【0008】
特許文献2には、管状臓器を拡張および支持する「セル」を、ステントの長軸方向に略平行で略直線状の「コネクター」などと呼ばれる支柱で接続した構造について記載されている。これはオープンセル構造と呼ばれる。これ以外にもワイヤーをコイル状に形成したステントや、ステントの長軸方向にほぼ平行に背骨と呼ばれる支柱を有し、その支柱に対し垂直、つまり円周方向に支柱を配置したステント(特表平8−507243号公報)なども存在するが、実際上は前二者が主流である。
【0009】
これらクローズドセル構造とオープンセル構造とは、上述の特徴以外に繰り返し構造単位の大きさの違いによって特徴づけられる。一般にクローズドセル構造の方が繰り返し構造単位の大きさが小さい。
【0010】
クローズドセル構造およびオープンセル構造は、非特許文献1に記載されるように一長一短の性質を持つ。例えばクローズドセル構造は、ステントを曲げた際の形状の変化が少なく、管状臓器を均一な応力分布で拡張、支持できる反面、管状臓器が分岐した部分では使用しにくいなどの特徴がある。他方、オープンセル構造では、柔軟性は高いものの、曲げた際にステントの一部が予期しない過大な変形をすることがあり、それによって管状臓器に不均一な応力分布を与えることがある。ただし管状臓器が分岐した部分での使用には好適である。
【0011】
一般に、従来のステントは長軸方向に見るとセルとリンク(またはコネクター)が1列ずつに交互に並んだ構造となっており、リンク(またはコネクター)部分では管状臓器の拡張、支持機能がほとんど期待できないという問題点がある。これは、特にクローズドセル構造では顕著であり、オープンセル構造でも拡張時には顕著に現れる。
【0012】
ところで、ステントは管状臓器形状への追従性を有することが求められる。この追従性は、長軸方向に蛇行しているような管状臓器にステントが拡張、留置後に忠実に追従することを意味する。そして、同時に、管状臓器の半径方向の断面形状に対しても追従すること、すなわち管状臓器を円形形状に拡張、支持することが望まれる。
【0013】
ステントの管状臓器の形状への追従性が不十分であると、ステントを管状臓器内に留置した際に管状臓器の拡張性が長軸方向に関して不均一になるという問題が生じ、ひいては管状臓器における応力分布の不均一性、そして応力集中部位での管状臓器の損傷とそれによる再狭窄の発生という問題に発展する。従来のステントは、この管状臓器の形状への追従性の点でも必ずしも満足できるものではなかった
図2(a),(b)はステントが曲がる時の状況を示しており、(a)のような構造のステントが曲がる際に柔軟性を与えるリンク(またはコネクター)部分が変形し、セル部分は変形しない。したがって曲げた際の形状は(b)のように多角形形状になるのが通例である。この傾向はオープンセル構造で,より顕著である。多角形状になるために、これらの頂点部分においては、ステントと管状臓器の間で強い接触応力が働き、管状臓器を損なう危険性がある。
【0014】
これを緩和するためにはリンク(またはコネクター)を長軸方向に多数配置し、曲げた際に滑らかな形状を実現することが考えられる。しかしながら、全長が同一のステントにおいてリンク(またはコネクター)を多数配置すれば、その分セル1列の長軸方向長さが減少する。材料はある一定以上のひずみが与えられると亀裂が発生し、破断(破壊)する。したがって拡張前後のセル屈曲部の角度変化には、限界が存在する。このような個々のセルの変形に限度があり、また、長軸方向のセルの数を多くすることにより各セルの長軸方向長さが減少すると、それだけ各セルは拡張の変形量が減少する。すなわち、セルの長軸方向の長さが短ければ、拡張時に到達できるステントの半径は小さくなる。これは管状臓器の狭窄部分をより大きく広げなければならないという治療器具に要求される基本的要求事項を満たせないことを意味する。したがってリンク(またはコネクター)を長軸方向に多数配置することが上述のような技術上の課題を克服することにつながるとは言えない。
【0015】
また、ステントは自身の弾性により拡張性をもたされており、拡張後のステントの断面形状は一般的に多角形形状になる。この多角形形状をできるだけ管状臓器内面に順応させるには、周方向のセルの数を多くすることになるが、この場合にもやはり同様の問題点がある。
【0016】
また、ステントの構成として、2つ以上の層を同軸状に重ねた多層構造のものがあり、特許文献3には、ステントの層を含む2つ以上の層を同軸状に重ねた人工内部器官として、ステントに人工血管を組み合わせたステントグラフトが開示されている。これは人工血管に相当するポリテトラフルオロエチレン等からなる可撓性を有する材料層を内側−外側ステントの締め付け力によって固定するとともに、内側−外側ステントを当該可撓性を有する材料層の体内への挿入時損傷防止の手段とするものである。この多層構造は人工血管に相当する可撓性材料層を介在させた構造とするためのものであり、管状臓器内の搬送、管状臓器の拡張・支持などの点では、単一層の支持構造体において現れる問題点をほとんどそのまま有している。
【0017】
特許文献4および特許文献5には、内側層と外側層で構成されるステントが提案されている。これは形状記憶合金である超弾性材料とステンレスなどの展性材料(弾塑性材料)などの異なる2種類の材料を1本のチューブ状に加工し、その後にステント形状に加工し、1つのステントでありながら支柱における材料構成が半径方向に層状構造を呈するように形成されたステントであり、層状構造を与えた支柱の材料学的特性によってステント機能向上を意図したものである。この多層構造は異なる材質のものを一体化した意味での多層であり、ステントの形状構造的な機能としては単層の場合と異なることはなく、やはり管状臓器内の搬送、管状臓器の拡張・支持などの点では、単一層の支持構造体において現れる問題点をほぼそのまま有している。
【0018】
特許文献6には多層ステントについて記載されており、これは山部となる先端部と谷部となる基端部を有し外側の層と内側の層とが谷部において連結された一連のセグメントになっている。この構造は拡張率を高めることを意図したものであり、非拡張状態で多層になっているが、拡張状態(使用状態)では単層になるものである。
【0019】
特許文献7には、半径方向に拡張可能な多層管状構造のステントについて記載されており、これは2枚の金属シートの1枚に凹部を形成して表面処理し、重ね合わせメッシング形成加工を行い、管状に巻き溶接してステント構造とするか、径の異なる金属管として形成し一方を他方内に摺入して構成したものであって、2つの層が互いに異なる機械的特性をもつものとしている。
【0020】
このような構成のステントにおいて、つぶれに対する半径方向の抵抗、拡張可能性が高められるが、これはサンドイッチ層とした場合に同じ厚さの単一層のものより圧延した後に降伏強さが大きくなることを用いていることによる。その意味では、構造的には複合的な1つの層として構成されるものであって、複数の層からなることによる特徴を生かして単層で構成されるステントの課題を解決するものとなってはいない。
【0021】
また、ステントを側枝のある管状臓器の部分に留置して治療を行うことが必要とされることがあるが、このような場合におけるステントによる治療を可能とするためには、ステントが留置される側枝分岐部分(側枝基部)に対応するステント部分におけるステント支柱を少なくして、隙間を大きくすることによって、先に留置されたステントの側方から分岐側枝へバルーンカテーテルを導入することが考えられる。
【0022】
図3(a)〜(c)は管状臓器として側枝を有する血管の狭窄部位を治療する手順を示している。最初に(a)のように本管となる血管に1つのステントを留置し、次に(b)のようにそのステントによって塞がれた側枝部分に対して、もう一つ別のステントをマウントしたバルーンカテーテルを誘導する。その際に本管に留置したステントの側面を強制的に通過させる。そして本管に留置されているステントの側面に対して、強制的に拡張を行い、(c)のように側枝部分にもステントを留置する。この際、本管に留置されたステントの側面は、非常に大きな穴が開いていることになる。つまりステントの側面(円筒面)においても拡張できる余地のあるステントが側枝のある部分での治療に適しており、このための側枝へのアプローチ性に関してはオープンセル構造が優れていると言われている。
【0023】
ところが、これを実現するためには2つの困難が存在する。一つは、側枝内にステントを留置したい場合は、大抵その側枝の分岐部分に狭窄が生じており、側枝にバルーンカテーテルをアプローチさせ易くするためにステント支柱を減らしたい領域と、狭窄部分を拡張させるために十分な半径方向剛性が必要となる領域が非常に近接していること。二つ目は、X線透視下で治療が実施されるために、特定の箇所のステント支柱を減らしても、その部位が確実に側枝部分に位置決め(長軸方向の位置と円周方向の角度を特定する必要がある)できず、ステントの支柱を減らした部位が血管の狭窄部位に誤配置され狭窄を十分に拡張できない可能性が否定できないことである。
【0024】
特許文献8と特許文献9には、側枝を有する箇所に適用するステントと専用のバルーンカテーテルが開示されている。このバルーンカテーテルは特別の側枝判別装置を備えており、側枝の長軸方向の位置と円周方向の角度を特定することができる。当該ステント、側枝へバルーンカテーテルが導入しやすいように、一箇所を外側に開きやすい構造にしてある。しかしながら、このように分岐部の治療効果を高めるためには、特別のステントや特別のデリバリーデバイスを用意する必要があるというような難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】米国特許第3236623号
【特許文献2】特表2001−501494号公報
【特許文献3】特開平10−314313号公報
【特許文献4】特表2002−537072号公報
【特許文献5】特開平11−332998号公報
【特許文献6】特開2005−515022号公報
【特許文献7】特開2005−535422号公報
【特許文献8】特表2003−532447号公報
【特許文献9】特表2003−532446号公報
【非特許文献1】山口ほか著「Drug−Eluting Stent」(医学書院,2004年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
前述したように、従来技術の内部人工器官(ステント)においては、管状臓器形状への追従性および柔軟性、縮径し易さを維持するとともに管状臓器の拡張・支持機能、管状臓器内での運搬性を向上させるには構造的な限界を有しており、また、側枝部を有する箇所の治療にも有利に適用することはできず、あるいは特殊なステント、特殊なデリバリーデバイスを要するものであった。そのため、内部人工器官の構造として管状臓器形状への追従性および柔軟性、縮径し易さを維持するとともに、管状臓器の拡張・支持機能、管状臓器内での運搬性を向上させることができ、また、特殊なデリバリーデバイス等を要せずに側枝を有する部位の治療に適用できる内部人工器官が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は前述した課題を解決すべくなしたものであり、本発明による内部人工器官は、
多数の支柱を円筒体の周面方向の網目形状をなすように組み合わせて配置し変形可能な材料で形成された1つの層をなす支持構造体に対し、多数の支柱を円筒体の周面方向の網目形状をなすように組み合わせて配置し前記1つの層をなす支持構造体内に挿入される大きさの径を有するように変形可能な材料で形成された他の層をなす支持構造体を挿入し、前記1つの層をなす支持構造体と前記他の層をなす支持構造体とを長軸方向の一部の領域において接合して固定してなり、前記1つの層をなす支持構造体と他の層をなす支持構造体とが接合された一部の領域以外の領域においては前記1つの層をなす支持構造体と前記他の層をなす支持構造体とにおける支柱が相互に自由に変形可能であり、前記1つの層をなす支持構造体における支柱の網目形状と前記他の層をなす支持構造体における支柱の網目形状とが異なる形状であることによって全体の構造を外方から見て隣り合う層をなす支持構造体における支柱の網目形状において重ならない部分が存在するようにしたものである。
【0028】
前記1つの層をなす支持構造体内に前記他の層をなす支持構造体を挿入したものに対し、より小さい径を有する円筒状のさらに他の層をなす支持構造体を挿入するというように順次内側に挿入して複数の層をなす支持構造体を形成し、隣接する層をなす支持構造体を長軸方向の一部の領域において接合して固定することにより全体の層をなす支持構造体を接合してなり、前記隣接する層をなす支持構造体が接合された一部の領域以外の領域において隣接する層をなす支持構造体における支柱が相互に自由に変形可能であるようにしてもよい。
【0029】
前記複数の層をなす支持構造体の支柱の網目構造が管状臓器を拡張しその状態を維持する支柱の要素であるセルと、柔軟性を付与するリンクまたはコネクターとを交互に組み合わせてなるものとしてもよい。
【0030】
前記複数の層をなす支持構造体の各層において、全体の円筒状の内部人工器官の軸方向の少なくとも両端側の領域において隣接する層間の接合がなされ、該層間の接合がなされた領域の中間の部分の少なくとも一部の領域における支柱の網目形状が支持構造体の周方向に変形し易い支柱の要素を主体として構成され、該中間の部分の少なくとも一部の領域における支柱の変形により管状臓器の側枝を有する部位に内部人工器官を適用した際に、該内部人工器官内から側枝に向けて他の内部人工器官を挿入できるようにしてもよい。
【0031】
前記複数の層をなす層のうちの少なくとも1つの層をなす支持構造体における層間の接合がなされた領域の中間の部分の少なくとも一部の領域における支柱の網目形状が支持構造体の周方向に変形し易い支柱の要素を主体として構成され、前記複数の層をなす少なくとも1つの層以外の層をなす支持構造体は前記少なくとも1つの層をなす支持構造体の一部分に相当する長さを有しており、内部人工器官の長さ全体にわたって複数の円筒状の支持構造体が重ね合わせられ接合された構造をなすように各層が重ね合わせられ接合されているようにしてもよい。
【0032】
前記支持構造体の周方向に変形し易い支柱の要素が柔軟性を付与する支柱の要素としてのリンクまたはコネクターを長軸方向に長めにしたものとしてもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明においては、多層の支持構造体で内部人工器官を形成し、隣接する層をなす支持構造体を一部の領域において接合してなり、全体の構造を外方から見て各支持構造体における支柱のなす網目形状において重ならない部分が存在するようにし、隣接する支持構造体が接合された一部の領域以外の領域においては支柱が相互に自由に変形可能であるようにしたことにより、単層で形成された内部人工器官あるいは一体的構造として形成された内部人工器官よりも管状臓器形状への追従性および柔軟性、縮径し易さを維持し、管状臓器の拡張・支持機能、管状臓器内での運搬性を向上させることができる。
【0034】
また、内部人工器官の長軸方向の中央部の少なくとも一部の領域において支柱の網目形状が支持構造体の周方向に変形し易い支柱の要素を主体として構成されることにより、管状臓器の側枝を有する部位に内部人工器官を適用した際に、内部人工器官内から側枝に向けて他の内部人工器官を挿入でき、通常の管状臓器に適用する構造のものを用いて容易に側枝を有する部位への適用が特殊な構成、手段を要することなく可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明による内部人工器官は、屈曲した部分を含む多数の支柱を組み合わせ円筒形の周面内に網目状に配置した形状の変形可能な材料で形成された円筒状の支持構造体を同軸状に重ね、隣り合う層の支持構造体における支柱を相互に接合部を介し接合して構成される。各層における多数の支柱は図1に示されるようなステントにおけるセルとリンクとが円筒形周面内に反復して配置されたステントの構造をもつものとすることができるが、一般的には支柱はその形状、配置により多層の支持構造体からなる管状内部人工器官とした際に拡張した状態を保持する部分と柔軟性を付与する部分とを有する形態とするものである。支持構造体の材料としてはステンレスなどの塑性変形可能な金属、屈曲した形状のセルと形状記憶や超弾性などの性質を有する金属(例えばNiTi合金)、超塑性や生体内で溶ける特性を有する金属、生分解性を示すプラスチックなどが使用される。
【0036】
本発明においては、このようなステントとして用いられる材質、構成を有する複数の層をなす円筒状の支持構造体を同軸状に重ね合わせ、隣り合う層の支持構造体におけるセル、リンクを接合することにより、単層のステントでは得られない特徴が与えられる。
【0037】
[実施形態1]
図4(a)は2つの円筒状の支持構造体A、Bを示しており、支持構造体A、Bはそれぞれが図1のように網目構造をなすように配置された多数の支柱からなる平面構造を円筒状に丸めた構造になっており、支持構造体Aの内径が支持構造体Bの外径と同等であり、支持構造体Bを支持構造体A内に挿入できるようになっており、支持構造体Aと支持構造体Bとの長さを等しくすれば、挿入後に支持構造体Aと支持構造体Bとの端部が揃えられるが、必ずしも両者の長さを等しくしなくてもよい。本発明においては、図4(b)のように支持構造体Bを支持構造体A内に挿入し、必要な箇所を溶接等により接合して一体化することにより内部人工器官が形成される。
【0038】
支持構造体A(外層)、支持構造体B(内層)はそれぞれが独自にステントとして作用するような支柱の形状、配置としてもよく、あるいはそれぞれが独自にステントとして作用するものではないが、組み合わせて接合された状態でステントとして作用するようにしてもよい。また、外層、内層の支柱の網目形状、配置は径が異なることのほかは同等なものとしてもよく、また、両者の形状、配置が異なるようにすることもできる。支柱の形状、配置を同等にした場合には外層の支柱と内層の支柱とが重ならないように周方向または長軸方向にずらした状態で接合する。
【0039】
外層をなす支持構造体と内層をなす支持構造体との接合は両方の層の支柱が重なる部分のうち必要な領域内の箇所について行う。例えば側方から見て図5(a)のように支持構造体の長軸方向のa,b,c,dの4つの間隔をおいた領域内において外側の層と内側の層とで支柱の重なる部分において接合を行う。このようにして領域a,b,c,dの間の領域では外層と内層との支柱が接合されずに自由に変形できる。領域a,b,c,d内においても支柱の重なる部分のうち周方向には例えば1つおき、あるいは2つおきに接合するというようにすれば、半径方向の変形の制約を少なくすることができる。このように外層と内層との接合は一部の領域について行い、両方の層が相対的に変位しないようにするとともに、両方の層の支柱が相互に変形できるようにする。図5(b)は両方の層の支柱が重なった部分における接合箇所を示しており、接合手法としては例えば接合箇所に電極で加圧し抵抗溶接を用いることができる。図5(c)は接合部における断面を示し、接合部分にはナゲットが形成される。他の接合の手法として、抵抗溶接、熱圧着、超音波溶接などがあり、また、接合箇所の一方の側に凹部を、他方の側にはこれに緊密に嵌合する凸部を形成しておき、凸部を凹部に圧入し嵌め合いをなす接合を行うようにしてもよい。接合手法としては溶出物・析出物が発生しないものを用いるのがよい。
【0040】
図6(a)〜(c)は外層をなす支持構造体と内層をなす支持構造体とにおける支柱の網目形状が異なるものを示している。図6(a)に示される1つの層の網目形状と、図6(b)に示される他の層の網目形状とが異なる形状になっている。このように異なる支柱の網目形状を有する外層をなす支持構造体に内層をなす支持構造体を挿入した場合、図6(c)のように両方の層の支柱の網目形状は重ならない部分を有する。外層をなす支持構造体と内層をなす支持構造体との支柱の網目形状を異なるものとした場合に、その形状は多様なものとなり得るが、本発明の人工内部器官においては、複数の層をなす支持構造体を一部の領域において接合するのであり、その上で両方の層の接合されていない領域における支柱が相互に自由に変形できるようにするという条件は必要であり、網目形状の設計においてもこの条件を損なうものとすべきではない。
【0041】
内部人工器官を構成する支持構造体は、金属チューブをレーザ加工などで支柱の網目状構造に形成することができるが、薄板の状態で網目状構造に形成し、その後に円筒状に加工し、断面が閉じた状態になるように接合して支持構造体としてもよい。径の異なる複数の層をなす支持構造体を形成し、大きい径の支持構造体内に小さい径の支持構造体を挿入し適宜箇所を接合することにより内部人工器官が構成される。支持構造体は閉じた断面形状にすることなく略C字形状のままでもよい。閉じた断面形状ではなく、略C字形状の支持構造体を重ね合わせて、半径方向に接合することにより内部人工器官を形成できる。また、所望する支持構造体の平面展開図を平面薄板に形成し、平板状態のまま層状にそれらを複数重ね合わせ、層間の接合を行い、その後にその層状の平板を円筒状に加工し、端部を接合する事によって内部人工器官を形成してもよい。
【0042】
内部人工器官を構成する支持構造体を形成する材料として、ステンレス、コバルトクロム、チタン合金、ニッケルチタン合金、マグネシウム合金等の金属系の材料のほか、生分解性のポリマーを用いてもよい。内部人工器官は管状臓器を拡張、支持するために用いられるので、半径方向の剛性が重視されるが、半径方向の剛性を高めるためには、使用する材料のヤング率や降伏応力などが高いことが望ましい。他方、内部人工器官の縮径、拡張時にはセル屈曲部に多大の歪みが発生する。このことからは、破断歪みが大きい材料を用いるのが望ましい。生分解性ポリマーを用いた内部人工器官では、一定期間が過ぎると生体内で分解され、長期間生体内に異物を残す心配がないため、安全性が高いと考えられるが、金属系の材料に比べてヤング率等の機械的性質の程度は低くなることから、半径方向の剛性を確保するために支柱を太くする必要性がある。内部人工器官を構成する支持構造物の材料としては、このような材料の特性を勘案し、使用目的、形態に応じて適宜選択するのがよい。
【0043】
人工内部器官を構成する支持構造体における支柱の寸法について、支柱が厚いほうが再狭窄率が高まり治療効果が劣ることが知られており、また支柱幅は広い方が半径方向剛性が向上し治療効果が高まることが知られているが、本発明の内部人工器官は支持構造体を重ね合わせて形成され、内部人工器官を冠状動脈の治療に適応する場合には、各層の支柱の厚さとしては単層の場合の支柱厚さ(0.05mm〜0.20mm)より薄く形成し、それらを重ね合わせることが好ましい。その際,各層の支柱厚さは0.01mm〜0.05mm程度が好ましく、これらの支柱を有する支持構造体を重ね合わせて、内部人工器官の厚さを冠動脈用の単層のものと同等の0.05mm〜0.20mmに形成するのが好ましい。
【0044】
冠状動用の単層のものでは、好ましい支柱の厚さは0.05mm〜0.20mm程度であるが、本発明のように複数の支持構造体を支柱が重ならない部分を有するように重ね合わせた人工内部器官では、単層のものに比べて血管をカバーする面積が飛躍的に増大し、再狭窄時におこる増殖した細胞が血管内腔側への侵入を抑制する効果がある。したがって冠動脈用の単層のものに関して好ましい支柱の厚さである0.05mm〜0.20mmよりも薄くても同等の治療効果を期待できる。具体的には内部人工器官の厚みは0.01mm〜0.20mm程度が好ましい。
【0045】
支柱の幅については冠動脈用の単層のものでは,好ましい支柱幅は0.02〜0.15mm程度であるが、複数の層からなる本発明の人工内部器官では単層のものよりも小さい支柱の幅となるように形成しても十分な半径方向の剛性が得られる。したがって本発明の複数の層をなす支持構造体を有する内部人工器官の好ましい支柱の幅は0.001mm〜0.20mmである。本発明の人工内部器官を他の部位の治療に適用する際には、その部位で用いられる単層のものと同等程度の支柱の幅を有する支持構造物をとするのが好ましい。
【0046】
本発明の人工内部器官においては、外層をなす支持構造体に内層をなす支持構造体を挿入し、一部の領域において重なる支柱を接合するのであるが、人工内部器官としての条件、すなわち管状臓器を拡張するための半径方向の剛性と、柔軟性を保つために両方の層の支柱が接合された領域以外で自由に変形できるようにすることが要求される。このため支柱の網目形状が管状臓器を拡張するように作用するセルと、セルを連結するリンクまたはコネクターとからなるものでは、接合箇所をセル以外のリンクまたはコネクターの部分に設けることにより半径方向の剛性が維持される。
【0047】
また、接合された領域以外で外層と内層との支柱が自由に変形できるようにするということから、外層と内層との間での接合箇所は限られてくる。そのため、設けられる接合箇所における接合強度を高めるのが好ましく、接合箇所の支柱の部分は単調な柱でなく、その部分だけ両方の層の支柱の面積が広がった長円形ないし円形の面を有するような形状とするようにしてもよい。
【0048】
このように、外層と内層との支柱の形状、配置が同等のものでも、異なるものでも、外層の支柱と内層の支柱とが外方から見て全体的に重なることはなく、外方の支柱の間の空所に内層の支柱が介在することになる。それにより、外層と内層とを一体化した内部人工器官の拡張状態において、外層の支柱の間の空所に内層の支柱が介在することによって、管状臓器内面を押圧、保持するのを補強する作用が得られる。
【0049】
管状臓器内面を押圧、保持する作用を与えるという点では、外層と内層とを併せた形状に相当する支柱を形成した単層のものとしてもよいことになるが、その場合支柱の網目構造が細かくならざるを得ず、内部人工器官としての変形可能性、柔軟性が狭められる。本発明においては、複数の層の支柱に管状臓器内面を押圧、保持する作用を分担させることにより、それぞれの層の支柱の網目構造を小さくせず、外層と内層との支柱が自由に変形できるように外層と内層とを接合しておくことにより、内部人工器官の押圧保持、変形可能性において単層のものではなし得ない効果が得られる。このように外層の支柱と内層の支柱とが自由に変形できるようにするため、外層と内層とはその全面で接合するのでなく、支柱の自由な変形を可能にする形で必要な箇所で行うものとする。
【0050】
1つの支持構造体における支柱の網目形状はセル、リンクからなる一様な形状の場合の例で示しているが、例えば図5(a)のようにa,b,c,dを接合領域とした時に、接合領域とそれ以外の領域とで支柱の網目形状を異なったものとしてもよい。このような外層をなす支持構造体と内層をなす支持構造体とにおける支柱の網目形状を組み合わせ一部の領域で接合した人工内部器官として支柱が管状臓器を拡張する半径方向の剛性を有し、管状臓器の形状に順応して変形できるように支柱の網目形状を多様な形で設計することができる。接合領域はa,b,c,dの4箇所に限らず、さらに多くしてもよく、接合強度が満たされれば両側のa,dのみでもよい。
【0051】
図7はこのような支柱の網目形状の例を示しており、(a)が内層をなす支持構造体、(b)が外層をなす支持構造体であり、支柱の網目形状を側方から見た状態を示し、長さ方向に対し径方向に誇大化して示してある。内層、外層とも両端側の領域e、g内に接合箇所を有し(●の箇所)、この部分では内層と外層との支柱が相互にあまり変位しない。これに対し中間の領域fは内層と外層とが接合されておらず、内層と外層とが相互に自由に変位できるようになっている。また、中間の領域fにおける網目形状は両端側の領域e、gにおける網目形状と異なっており、内層を外層に挿入した状態で周方向にずれるようにしてある。
【0052】
上述においては、外層をなす支持構造体に内層をなす支持構造体を挿入し一部の領域で接合した2層の支持構造体による人工内部器官の例を示したが、さらに他の層をなす支持構造体を挿入して、3層以上の支持構造体による人工内部器官とすることもできる。径が逐次異なる円筒状で支柱の網目形状を有する支持構造体を順次挿入し、隣接する層をなす支持構造体の間で一部の領域において接合を行うことにより人工内部器官が構成される。接合される領域、各層をなす支持構造体における支柱の形状は、全体を外方から見て、各層をなす支持構造体の支柱において重ならない部分が存在するようにすること、接合された領域以外の領域で支柱が自由に変形でき、半径方向の剛性を維持するものとすることでは2層の支持構造体からなる場合と同様である。
【0053】
このような多層の支持構造体からなる人工内部器官は側枝を有する部位に適用するのに好適に作用するものとすることができる。図8はこのような内部人工器官の作用を説明するため支持構造体の網目形状の一部を示した図であり、セルトリンクとからなる外層をなす支持構造体の支柱の網目構造を実線で示し、セルとリンクとからなる内層をなす支持構造体の支柱の網目形状を点線で示している。図で両側の領域h、j(全体の構成の中では必ずしも軸方向の端部とは限らない)において外層と内層とが接合され、その中間の領域iにおいては外層と内層とが接合されておらず、支柱が相互に自由に変形できる。外層と内層との網目形状としては、リンク部分の位置がずれているほかは同様な形状になっているが、さらに相互に異なる形状とすることもできる。
【0054】
中間の領域iにおいて支柱は周方向に自由に変形でき、図の中央部分に放射状の矢印で示したように押し広げ易くなる。すなわち、このような支柱が変形し易い領域が管状臓器の側枝の位置になるように内部人工器官を留置しておけば、図3(a)〜(c)のように他の内部人工器官をマウントしたバルーンカテーテルを側枝に導入するのが容易になされる。接合された領域の中間の部分で支柱が側方に変形し易くするために、接合された領域の間の部分の特に側枝に他の内部人工器官をマウントしたバルーンカテーテルを導入することが考えられる領域において支柱の要素としてのセルがなく、周方向に変形し易いリンクまたはコネクターを長めにして配置し構成するようにしてもよい。すなわち、接合された領域の間の部分においてはこのような内部人工器官の特性を与えるように支柱の網目形状の形態を適宜選択して設定するのがよい。
【0055】
[実施形態2]
図9(a)〜(d)は、側枝を有する箇所に適用するための他の形態の内部人工器官の例を示す図であり、(a)における支持構造体Aは左右の領域においてセルとリンクとを組み合わせた支柱の網目形状になっており、中央の部分においてはセルがなくリンクのみの構造の部分になっていて、この部分は半径方向ないし周方向に変形し易い。(b)に示される支持構造体Bは支持構造体の外側に重ねられる径の大きさであり、支持構造体Cは内側に重ねられる径の大きさになっており、支持構造体B、Cはそれぞれ支持構造体Aの約半分の長さである。
【0056】
図9(c)は、支持構造体Aを図で左側の支持構造体B内に挿入し、また支持構造体Cを支持構造体A内の右側に挿入して構成した内部人工器官を側方から見た状態を示し、図9(d)は支持構造体A、B、Cの関係を長軸方向の断面で示している。支持構造体Aの中央部は支柱の網目形状がリンクまたはコネクターのみになっており、周方向に変形し易くなっている。この部分に重なる支持構造体B、Cの部分はやはり変形しやすい網目形状になっている。このように支持構造体A、B、Cを重ね合わせた上で、中央部以外の適宜の領域において隣接する層の間での接合を行う。支持構造体A、B、Cはともにセルとリンクとを組み合わせた構造になっており、重なる層をなす支持構造体(AとBとAとC)における支柱の網目形状が重ならない部分を有すること、接合された領域以外において支持構造体における支柱が自由に変形可能であるようにすることは実施形態1において説明したのと同様である。このように、支持構造体A、B、Cが重ね合わされた内部人工器官は、長軸方向のどの領域を見ても、セルが2重に重ね合わされており、長軸方向に均一な半径方向の剛性が維持される。このような内部人工器官を管状臓器の治療部位に留置する場合、管状臓器内の流体の流れの乱れを最小化するために、内側の支持構造体Cが重ねられた長軸方向の端部が当該管状臓器内の治療部位に流れる流体の上流側に位置するように留置するのがよい。
【0057】
側枝を有する管状臓器内に留置されている状況において、図9に示される内部人工器官を用いて、側枝にバルーンカテーテルを導入することが容易になされる。図9の内部人工器官では支持構造体Aにおける接合領域の間の中間部分ではセルが存在せず、長軸方向に長さの長いリンクが配置されていることにより、支柱の網目形状が周方向に拡張し易くなっている。このように、図9の内部人工器官における接合領域の間の中間部分では支持構造体が外側に拡張し易くなっているので、図10のようにして、容易にバルーンカテーテルなどで側枝にアプローチできる。図10に示すように、支持構造体Bの中央部分(接合部の中間部分)においてセルがなくリンクが長めにされている領域は周方向に変形し易くなっており、この領域を側枝用の内部人工器官をマウントしたバルーンカテーテルの先端で押し広げ、外側の支持構造体Aの端側を押しのけるようにして側枝内に挿入されていく。このような内部人工器官によって、多少の留置位置決め精度が悪くてもバルーンカテーテルなどで側枝にアプローチでき、特別のデリバリーデバイスや内部人工器官を用いなくても側枝を有する部位の治療が可能となり、通常の部位の治療が可能でありながら、側枝を有する部位の治療にも良い適応を示す内部人工器官が形成できる。
【0058】
内部人工器官の内側の層をなす支持構造体において外側の層をなす支持構造体と接合されていない支柱部分が存在するが、内側の層に配置されている支柱であるために、バルーンカテーテルでの運搬操作中や拡張、留置時などにこの支柱が外側に飛び出して管状臓器を損傷する可能性は抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】一般的なステントを示し図であり、(a)網目形状を平面で示した図、(b)網目形状を部分的に拡大した図、(c)円筒状としたステント概略的に示す図である。
【図2】(a)ステントが曲がる前の状況を概略的に示し、(b)ステントが曲がっている状況を概略的に示す図である。
【図3】(a)〜(c):管状臓器の側枝を有する部位にステントを適用する手順を概略的に示す図である。
【図4】(a),(b):本発明による内部人工器官について、2層の支持構造体を有する構成形態を示す図である。
【図5】(a)複数の層をなす支持構造体の層間を接合する領域の例を示し、(b)支柱の接合手法の例を示し、(c)(b)における接合部の断面を示す図である。
【図6】互いに異なる網目形状を有する2つの層をなす支持構造体を重ね合わせた場合の例を示すもので、(a)一方の層をなす支持構造体の網目形状、(b)他方の層をなす支持構造体の網目形状、(c)(a)と(b)とを重ね合わせた場合を示している。
【図7】1つの層をなす支持構造体における網目形状を領域により多様にした例を示す図で、(a)、(b)はそれぞれの層の網目形状を示している。
【図8】側枝を有する部位に適用するのに好適な本発明による内部人工器官の作用を説明する図である。
【図9】本発明による側枝を有する部位に適用するのに好適な内部人工器官の他の例を示す図であり、(a)1つの層をなす支持構造体、(b)他の層をなす支持構造体、(c)(a)の支持構造体と(b)の支持構造体とを重ね合わせた構成した内部人工器官を側方から見た状態、(d)長軸方向の断面を示している。
【図10】図9に示される内部人工器官を側枝のある部位に適用した場合の状況を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の支柱を円筒体の周面方向の網目形状をなすように組み合わせて配置し変形可能な材料で形成された1つの層をなす支持構造体に対し、多数の支柱を円筒体の周面方向の網目形状をなすように組み合わせて配置し前記1つの層をなす支持構造体内に挿入される大きさの径を有するように変形可能な材料で形成された他の層をなす支持構造体を挿入し、前記1つの層をなす支持構造体と前記他の層をなす支持構造体とを長軸方向の一部の領域において接合して固定してなり、前記1つの層をなす支持構造体と他の層をなす支持構造体とが接合された一部の領域以外の領域においては前記1つの層をなす支持構造体と前記他の層をなす支持構造体とにおける支柱が相互に自由に変形可能であり、前記1つの層をなす支持構造体における支柱の網目形状と前記他の層をなす支持構造体における支柱の網目形状とが異なる形状であることによって全体の構造を外方から見て隣り合う層をなす支持構造体における支柱の網目形状において重ならない部分が存在するようにしたことを特徴とする内部人工器官。
【請求項2】
前記1つの層をなす支持構造体内に前記他の層をなす支持構造体を挿入したものに対し、より小さい径を有する円筒状のさらに他の層をなす支持構造体を挿入するというように順次内側に挿入して複数の層をなす支持構造体を形成し、隣接する層をなす支持構造体を長軸方向の一部の領域において接合して固定することにより全体の層をなす支持構造体を接合してなり、前記隣接する層をなす支持構造体が接合された一部の領域以外の領域において隣接する層をなす支持構造体における支柱が相互に自由に変形可能であるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項3】
前記複数の層をなす支持構造体の支柱の網目構造が管状臓器を拡張しその状態を維持する支柱の要素であるセルと、柔軟性を付与するリンクまたはコネクターとを交互に組み合わせてなるものであることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の内部人工器官。
【請求項4】
前記複数の層をなす支持構造体の各層において、全体の円筒状の内部人工器官の軸方向の少なくとも両端側の領域において隣接する層間の接合がなされ、該層間の接合がなされた領域の中間の部分の少なくとも一部の領域における支柱の網目形状が支持構造体の周方向に変形し易い支柱の要素を主体として構成され、該中間の部分の少なくとも一部の領域における支柱の変形により管状臓器の側枝を有する部位に内部人工器官を適用した際に、該内部人工器官内から側枝に向けて他の内部人工器官を挿入できるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内部人工器官。
【請求項5】
前記複数の層をなす支持構造体のうちの少なくとも1つの層をなす支持構造体における層間の接合がなされた領域の中間の部分の少なくとも一部の領域における支柱の網目形状が支持構造体の周方向に変形し易い支柱の要素を主体として構成され、前記複数の層をなす少なくとも1つの層以外の層をなす支持構造体は前記少なくとも1つの層をなす支持構造体の一部分に相当する長さを有しており、内部人工器官の長さ全体にわたって複数の円筒状の支持構造体が重ね合わせられ接合された構造をなすように各層が重ね合わせられ接合されていることを特徴とする請求項4に記載の内部人工器官。
【請求項6】
前記支持構造体の周方向に変形し易い支柱の要素が柔軟性を付与する支柱の要素としてのリンクまたはコネクターを長軸方向に長めにしたものであることを特徴とする請求項4または5のいずれか1項に記載の内部人工器官。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−196499(P2012−196499A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−135413(P2012−135413)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【分割の表示】特願2007−150019(P2007−150019)の分割
【原出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【Fターム(参考)】