説明

冊子の製造方法

【課題】従来品とは異なる外観または質感を与えるノート類をできるだけ低廉なコストで提供する。
【解決手段】筆記用の中紙31に表紙32、33を重ね合わせそれらの背側の縁に接着剤34を塗工して冊子本体3を得る綴じ工程と、前記冊子本体3の背面及び表紙32、33面の略全域を隠蔽する連続したクロス5を当該冊子本体3の背面及び表紙32、33面に貼付するクロス貼り工程と、前記冊子本体3及び前記クロス5の小口を裁断する裁断工程とを具備する冊子2の製造方法において、少なくとも前記綴じ工程を従来の冊子の製造方法と共通化することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノートその他の冊子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筆記用の中紙を積層し、これの外表面を覆う表紙とともに綴じたノート類が広範に流通している(例えば、下記特許文献を参照)。従来品では、中紙及び表紙の背側の縁に接着剤を塗工して背部を平綴じ(無線綴じ)し、その背部に背クロスを貼付して背部を被覆、保護している。
【0003】
この種の従来品は、長年にわたって製造販売されており、需要者の支持が厚いが、ともすれば外観デザインが固定的になりがちでもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−178662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来品とは異なる外観または質感を与えるノート類をできるだけ低廉なコストで提供することを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するべくなされた本発明は、筆記用の中紙に表紙を重ね合わせそれらの背側の縁に接着剤を塗工して冊子本体を得る仮綴じ工程と、前記冊子本体の背面及び表紙面の略全域を隠蔽する連続したクロスを当該冊子本体の背面及び表紙面に貼付するクロス貼り工程と、前記冊子本体及び前記クロスの小口を裁断する裁断工程とを具備する冊子の製造方法である。
【0007】
これにより、背面及び表紙面の略全域がクロスに覆われた斬新な外観または質感を与えるノート類を需要者に提供することができる。クロスに印刷したり、エンボス調、本革調、布調等の表面加工処理を施したりして、外観デザインを様々な需要に対応せしめることも可能となる。のみならず、その製造工程の一部を、従来品のそれと共通化することが可能であり、当該工程にて使用するライン、機械または器具の共用あるいは流用を図ることができる。従来品の製造に従事する作業者を新型品の製造に配置することができ、その逆もまた可である。総じて言えば、新型品の製造のために多大な投資をせずに済む。さらに、需要動向に応じて、従来品及び新型品の生産比率または生産量を調整することも容易となる。
【0008】
前記仮綴じ工程に加え、前記裁断工程をも従来の冊子の製造方法と共通化すれば、新型品の製造コストの低廉化に一層奏効し得る。
【0009】
また、本発明では、筆記用の中紙に表紙を重ね合わせそれらの背側の縁に接着剤を塗工して冊子本体を得る仮綴じ工程と、前記冊子本体の背面及び表紙面の略全域を隠蔽する連続したクロスを当該冊子本体の背面及び表紙面に貼付するクロス貼り工程と、前記冊子本体及び前記クロスの小口を裁断する裁断工程とを具備する冊子の製造方法において、前記中紙及び前記表紙のうち少なくとも一を従来の冊子と共通化することとしている。
【0010】
これにより、背面及び表紙面の略全域がクロスに覆われた斬新な外観または質感を与えるノート類を需要者に提供することができる。クロスに印刷したり、エンボス調、本革調、布調等の表面加工処理を施したりして、外観デザインを様々な需要に対応せしめることも可能となる。のみならず、その構成部材の一部を従来品のそれと共通化しており、当該部材の共用あるいは流用を図ることができる。ひいては、新型品の製造コストが低減する。需要動向に応じて、従来品及び新型品の生産比率または生産量を調整することも容易となる。
【0011】
前記中紙、前記表紙及び前記接着剤をおしなべて従来の冊子と共通化すれば、新型品の製造コストの低廉化に一層奏効し得る。
【0012】
前記仮綴じ工程において、前記表紙として、前記中紙を両側から挟むように表表紙及び裏表紙を配置して前記冊子本体を得、前記クロス貼り工程において、前記冊子本体の背面、表表紙面及び裏表紙面の略全域を隠蔽する連続したクロスを当該冊子本体の背面、表表紙面及び裏表紙面に貼付することとすれば、クロスによって冊子の背、表表紙及び裏表紙が一体的に連続した外観を形作ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来品とは異なる外観または質感を与えるノート類を低廉なコストで提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態における仮綴じ工程を説明するための分解斜視図。
【図2】同実施形態における冊子の中紙を示す要部斜視図。
【図3】同実施形態における仮綴じ工程を説明するための斜視図。
【図4】同実施形態における従来品のクロス貼り工程を説明するための斜視図。
【図5】同実施形態における従来品の裁断工程を説明するための斜視図。
【図6】同実施形態における新型品のクロス貼り工程を説明するための斜視図。
【図7】同実施形態における新型品のクロス貼り工程を説明するための斜視図。
【図8】同実施形態における新型品の裁断工程を説明するための斜視図。
【図9】同実施形態における新型品の冊子を示す斜視図。
【図10】同実施形態における新型品の冊子を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。まず、従来品の冊子1の製造方法について述べる。従来品の冊子1の製造の手順には、仮綴じ工程、クロス貼り工程、裁断工程が含まれる。
【0016】
図1及び図3に示すように、仮綴じ工程では、筆記用の中紙31を積層し、これの外表面を覆う表紙32、33とともに綴じて冊子本体3を得る。図2に示すように、中紙31は、表裏に罫線等を印刷した紙を屏風状に折り畳んだもので、冊子1の背側に当たる折り曲げ稜線にはミシン目311を形成してある。仮綴じ工程では、表紙となる表表紙32及び裏表紙33を、中紙31を両側から挟むように配置した上、それらの背側の縁に接着剤34を塗工して背部、換言すれば綴元を平綴じにする。その際、接着剤34がミシン目311を介して折り畳んだ中紙31の内側に進入することから、中紙31を頑健に綴じることができる。接着剤34の種類は、任意である。接着剤34は、ホットメルトタイプであってもよいし、コールドグルータイプであってもよい。綴元の柔軟性、見開き性を確保するためには、水性エマルジョン糊のようなコールドグルーや、ニカワ糊等を採用することが好ましい。
【0017】
図4に示すように、クロス貼り工程では、冊子本体3の背面の略全域、及び表紙32、33面の背側の一部領域を隠蔽する連続した背クロス4を貼付する。背クロス4には、例えば、紙に樹脂コーティングを施した素材、若しくは紙を特殊フィルムでラミネート加工した素材、または樹脂材料のみから作製した素材を用いる。背クロス4を冊子本体3に貼付する接着剤は、水分を含有しないものが好ましい。
【0018】
図5に示すように、裁断工程では、冊子本体3及び背クロス4の小口を裁断し、一冊の冊子1として完成させる。本実施形態では、仮綴じ工程及びクロス貼り工程において、複数冊分を一括して処理している。即ち、冊子1の構成部材である中紙31、表表紙32、裏表紙33及び背クロス4が、天地方向に沿って複数冊分連続して拡張している。そこで、裁断工程においては、前小口(背と反対側の小口)を裁断して中紙31を各ページに分断するとともに、天の小口、地の小口をそれぞれ切断して冊子本体3及び背クロス4を複数冊の冊子1に分割する。
【0019】
次に、新型品の冊子2の製造方法について述べる。新型品の冊子2の製造の手順にも、仮綴じ工程、クロス貼り工程、裁断工程が含まれる。
【0020】
仮綴じ工程では、筆記用の中紙31を積層し、これの外表面を覆う表紙32、33とともに綴じて冊子本体3を得る。仮綴じ工程の内容は、図1及び図3に示した従来品の製造における仮綴じ工程と共通である。新型品の構成部材となる中紙31、表表紙32及び裏表紙33、さらにはこれらを綴じる接着剤34等もまた、従来品と共通である。それ故、従来品の製造と新型品の製造とで、仮綴じ工程のラインを一本化することができる。
【0021】
図6及び図7に示すように、クロス貼り工程では、冊子本体3の背面及び表紙32、33面の略全域を隠蔽する連続したクロス5を貼付する。クロス5には、例えば、紙に樹脂コーティングを施した素材、若しくは紙を特殊フィルムでラミネート加工した素材、または樹脂材料のみから作製した素材を用いる。このクロス5には、所要の図柄を印刷したり、エンボス調、本革調、布調等の表面加工処理を施したりしておくことができる。クロス5を冊子本体3に貼付する接着剤51は、水分を含有しないものが好ましく、また、図10に断面視しているように、クロス5の内面にドットパターンをなすように間欠的に塗布することが好ましい。従来品の製造における仮綴じ工程と新型品の製造における仮綴じ工程とでラインが一本化している場合には、従来品に用いる冊子本体3の一部量(需要動向によっては、全部)を従来品の製造ラインから新型品の製造ラインに引き込み、新型品に転用する態様となる。
【0022】
図8に示すように、裁断工程では、冊子本体3及びクロス5の小口を裁断し、一冊の冊子2として完成させる。裁断工程の内容は、従ライン品の製造における裁断工程と同様であり、やはり前小口を裁断して中紙31を各ページに分断するとともに、天の小口、地の小口をそれぞれ切断して冊子本体3及びクロス5を複数冊の冊子2に分割する。新型品の製造における裁断工程のラインは、クロス貼り工程以後に従来品の製造ラインに合流する形で従来品と一本化してもよいし、従来品の製造とは別々のラインのままとしてもよい。
【0023】
本実施形態の新型の冊子2の製造方法は、筆記用の中紙31を積層しこれの外表面を覆う表紙32、33とともに綴じてなる冊子本体3の背部に背クロス4を貼付した従来の冊子1の製造方法と一部工程を共通化して実施するものであって、筆記用の中紙31に表紙32、33を重ね合わせそれらの背側の縁に接着剤34を塗工して冊子本体3を得る仮綴じ工程と、前記冊子本体3の背面及び表紙32、33面の略全域を隠蔽する連続したクロス5を当該冊子本体3の背面及び表紙32、33面に貼付するクロス貼り工程と、前記冊子本体3及び前記クロス5の小口を裁断する裁断工程とを具備し、少なくとも前記仮綴じ工程を従来の冊子1の製造方法と共通化している。
【0024】
このため、図9及び図10に示しているように、背面及び表紙32、33面の略全域がクロス5に覆われた斬新な外観または質感を与えるノート類を需要者に提供することができる。クロス5に印刷したり、エンボス調、本革調、布調等の表面加工処理を施したりして、外観デザインを様々な需要に対応せしめることも可能となる。背面及び表紙32、33面の略全域がクロス5に覆われたノート類は、その強度が従来品より向上したものとなる。
【0025】
のみならず、その製造工程の一部を従来品のそれと共通化しており、当該工程にて使用するライン、機械または器具の共用あるいは流用を図ることができる。従来品の製造に従事する作業者を新型品の製造に配置することができ、その逆も可能になる。総じて言えば、新型品の製造のために多大な投資をせずに済む。
【0026】
前記仮綴じ工程に加え、前記裁断工程をも従来の冊子1の製造方法と共通化しており、新型品の製造コストの低廉化に一層奏効し得る。
【0027】
また、本実施形態の新型の冊子2の製造方法は、筆記用の中紙31を積層しこれの外表面を覆う表紙32、33とともに綴じてなる冊子本体3の背部に背クロス4を貼付した従来の冊子1と一部構成部材を共通化して製造するものであって、筆記用の中紙31に表紙32、33を重ね合わせそれらの背側の縁に接着剤34を塗工して冊子本体3を得る仮綴じ工程と、前記冊子本体3の背面及び表紙32、33面の略全域を隠蔽する連続したクロス5を当該冊子本体3の背面及び表紙32、33面に貼付するクロス貼り工程と、前記冊子本体3及び前記クロス5の小口を裁断する裁断工程とを具備し、前記中紙31及び前記表紙32、33のうち少なくとも一を従来の冊子1と共通化している。このため、図9及び図10に示しているように、背面及び表紙32、33面の略全域がクロス5に覆われた斬新な外観または質感を与えるノート類を需要者に提供することができる。クロス5に印刷したり、エンボス調、本革調、布調等の表面加工処理を施したりして、外観デザインを様々な需要に対応せしめることも可能となる。のみならず、その構成部材の一部を従来品のそれと共通化しており、当該部材の共用あるいは流用を図ることができる。ひいては、新型品の製造コストが低減する。
【0028】
前記中紙31、前記表紙32、33及び前記接着剤34をおしなべて従来の冊子1と共通化しており、新型品の製造コストの低廉化に一層奏効し得る。
【0029】
しかも、新型品の製造では、前記仮綴じ工程において、前記表紙として、前記中紙31を両側から挟むように表表紙32及び裏表紙33を配置して前記冊子本体3を得、前記クロス貼り工程において、前記冊子本体3の背面、表表紙32面及び裏表紙33面の略全域を隠蔽する連続したクロス5を当該冊子本体3の背面、表表紙32面及び裏表紙33面に貼付することとしており、クロス5によって冊子2の背、表表紙32及び裏表紙33が一体的に連続した外観を形作ることができる。
【0030】
結局、従来品と新型品とで製造ラインや構成部材を可能な限り共通化することで、製造コストの騰貴を招くことなく製品バリエーションを富ませ、従来にない斬新な製品を提供し得るのである。しかも、従来品の受注が多いときには従来品の生産に重きを置き、新型品の受注が多いときには新型品の生産に重きを置くというように、需要動向に応じて従来品及び新型品の生産比率または生産量を調整することも容易なのである。
【0031】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。上記実施形態における冊子2は表表紙32及び裏表紙33を両備するものであったが、何れか一方のみを表紙として備えている冊子を製造することとしてもよい。
【0032】
上記実施形態における冊子2のクロス5は、背とともに表表紙32及び裏表紙33の略全域を覆うものであったが、これとは異なり、表表紙32は略全域を覆うが裏表紙33は背側の一部領域のみを覆う、あるいは逆に裏表紙33は略全域を覆うが表表紙32は背側の一部領域のみを覆うものとしてもよい。
【0033】
また、ノート以外の用途、例えば、メモ帳、日記帳、手帳、フォンブック等の用途に供する冊子の製造に、本発明を適用することも可能である。
【0034】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、筆記用ノート、メモ帳、日記帳、手帳、フォンブック等の製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…従来の冊子
2…新型の冊子
3…冊子本体
31…中紙
32、33…表紙
34…平綴じ用の接着剤
5…クロス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記用の中紙を積層しこれの外表面を覆う表紙とともに綴じてなる冊子本体の表紙をクロス貼りする冊子の製造方法であって、
中紙に表紙を重ね合わせそれらの背側の縁に接着剤を塗工して冊子本体を得る仮綴じ工程と、
前記冊子本体の背面及び表紙面にクロスを貼付するクロス貼り工程と、
前記冊子本体及び前記クロスの小口を裁断する裁断工程と
を具備し、
前記クロス貼り工程において、前記クロスにより前記冊子本体の背面及び表紙面の略全域を隠蔽することを特徴とする冊子の製造方法。
【請求項2】
筆記用の中紙を積層しこれの外表面を覆う表紙とともに綴じてなる冊子本体の表紙をクロス貼りする冊子の製造方法であって、
中紙に表紙を重ね合わせそれらの背側の縁に接着剤を塗工して冊子本体を得る仮綴じ工程と、
前記冊子本体の背面及び表紙面にクロスを貼付するクロス貼り工程と、
前記冊子本体及び前記クロスの小口を裁断する裁断工程と
を具備し、
前記中紙及び前記表紙のうち少なくとも一が、冊子本体の背部に背クロスを貼付した従来の冊子と共通化していることを特徴とする冊子の製造方法。
【請求項3】
前記仮綴じ工程において、前記表紙として、前記中紙を両側から挟むように表表紙及び裏表紙を配置して前記冊子本体を得、
前記クロス貼り工程において、前記冊子本体の背面、表表紙面及び裏表紙面の略全域を隠蔽する連続したクロスを当該冊子本体の背面、表表紙面及び裏表紙面に貼付する請求項1または2記載の冊子の製造方法。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の製造方法を以て製造された冊子であって、
前記冊子本体の背面及び表紙面の略全域がクロスによって隠蔽された冊子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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