説明

冊子プリンタ

【課題】 本発明の課題は、表紙紙葉と中紙紙葉の剛性が異なる事を特徴とする冊子に対して、最適なページめくりを行うプリンタを提供することにある。
【解決手段】 前記課題は、冷加温により硬度が変化するページめくりローラに対し、冷加温する手段を使用し、前記ページめくりローラの硬さを変化させることにより、前記ページめくりローラの摩擦力を変更させ、剛性の異なる中紙ないし表紙に対して最適な前記ページめくりローラ硬度でページめくりをおこなうプリンタを得ることによって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行等の金融機関で使用される現金自動取引装置や通帳記帳機等の通帳を扱う取引装置、特に、ページめくり機能が必要な自動取引装置で通帳を取り扱う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関で使用される通帳、海外旅行時に必要となる旅券、薬の投薬履歴を記載するいわゆる“お薬帳”等、紙葉類を綴じ合わせて作成した冊子のページめくり技術としては、特開2003-231378号公報に示すように、冊子の頁部の所望枚数分のめくり動作を行ない、排出する冊子めくり装置などが知られている。また特開平1-237198号公報においては、ページめくりローラ部に対抗する位置に、摩擦係数の大きい、パッドを配置した事例が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2003-231378号公報
【特許文献2】特開平1-237198号公報
【非特許文献1】第二回ロボットセンサシンポジウム予稿 P111
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特開平2003-231378号公報に示すような事例では、ページめくりを行うために、冊子を冊子の縦長手方向より数倍長い曲面長をもつドラムに巻き付け、ドラムとページめくりローラの間で、冊子を把持しドラムとめくりローラを回転させ、冊子表紙・冊子中紙をめくっているが、冊子表紙・冊子中紙毎に、剛性が異なる事が考慮されていない。また特開平1-237198号公報に記載の技術も同様に、冊子表紙・冊子中紙毎に、剛性が異なる事が考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、紙葉を綴じ合わせて作成するところの、表紙紙葉と中紙紙葉の剛性が異なる事を特徴とする冊子に対して、その表紙をたわませることによりめくる機能ないし、前記冊子の中紙をたわませることによってめくる機能を持つ、ページめくり部と、前記冊子を搬送する搬送部、前記冊子に印字を行う印字部、前記ページめくり部、前記搬送部、前記印字部を制御する制御部から構成されるプリンタにおいて、前記ページめくり部を構成する押圧力に起因する摩擦力によって前記冊子の表面をたわませる事ができ、冷加温により硬度が変化するページめくりローラに対し、冷加温する手段を使用し、前記ページめくりローラの硬さを変化させることにより、前記ページめくりローラの摩擦力を変更させ、剛性の異なる中紙ないし表紙に対して最適な前記ページめくりローラ硬度でページめくりをおこなうプリンタによって解決を図る。
【発明の効果】
【0006】
本発明における効果としては、ページめくりローラを冷加温することにより、めくるべき冊子の剛性に適合するページめくりローラを準備することなく、最適なページめくり装置の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
ページめくりローラとめくられる紙葉との摩擦力を使用して、ページをめくり機構においては[図2−1、図2−7]、一般に冊子表紙は剛性が高く、ページをめくるためのたわみ現象を起こしにくい[図2−8]ことから、硬いページめくりローラでめくり、冊子中紙は、一般に剛性が低く、ページをめくるためのたわみ現象を起こしやすい[図2−3]ことから、やわらかいページめくりローラでめくる必要があることを実験の結果見出し、かつ、実験で使用したページめくりローラは弾性体の持ちうる一般的な温度と硬度の関係(線形性)を常温近辺では有し、つまり加温により柔らかくなることを見出した。また適合しない硬度の場合の失敗事例も解析しえた[図2−6、図2−11]。これをまとめると、図6、図7に示すが如くになり、表紙・中紙ごとに最適なページめくりローラの硬度[B1,B2]があること、ページめくりローラに対して、表紙・中紙に適合しうる冷加温[Ts,Tm]するならば、表紙・中紙に適切なページめくりローラが、得られることが判明した。以下、その結果を受け、ページめくりのための最適な形態を図面、図1〜10により、詳細に説明する。図1は本発明装置の機構構成図である。冊子プリンタ401には、搬送部402、ページめくり部101、及び印字部305から構成され、搬送部402は搬送路301上には冊子挿入口A部から順に搬送ローラ対321、冊子検知手段(センサー)309、冊子検知手段(センサー)320搬送ローラ対303、搬送ローラ対308、冊子検知手段(センサー)306、搬送ローラ対312が配置され、搬送ローラ対321、搬送ローラ対303、搬送ローラ対308、搬送ローラ対312はアクチュエータ310に接続され、アクチュエータの動力が伝達される。アクチュエータ310は信号線483を介して、搬送制御部450と接続し、搬送制御部450の指示に基づき駆動する。センサー309、センサー306、センサー320は、それぞれ信号線480,481,482を介して、搬送制御部450と接続している。ページめくり部101は冊子搬送方向と垂直な回転軸121を持つ、支持棒104と支持棒104と圧着されたページめくりローラ103を中心に配置され、回転軸121はドライブシャフト120を介して、ページめくりモータ106と接続され、動力が伝達される。ページめくりモータ106は信号線484を介してページめくり制御部452と接続され、ページめくり制御部452の指示に基づき、ページめくり動作を行う、回転軸121を中心としたページめくりローラ103の軌跡(130)上、位置α近傍に加温部105を配置し、位置γ近傍には冷却部102を配置している。加温部105は信号線485を介してページめくり制御部452と接続され、ページめくり制御部452の指示に基づき、ページめくりローラ103を加温する。また冷却部102は信号線487を介して、ページめくり制御部452と接続され、ページめくり制御部452の指示に基づき、ページめくりローラ103を冷却する。印字部制御部453、ページめくり制御部452、搬送路制御部450はそれぞれ信号線491,490,489を介して主制御部404と接続され、主制御部404は印字部制御部453、ページめくり制御部452、搬送路制御部450に対して、指示を与える、主制御部は信号線494を介して上位装置470と接続され、上位装置470からの指示を受ける。
【0008】
冊子プリンタに接続されている上位装置470から信号線494を介して頁替指示を主制御部404が受けた時[701]、主制御部404は搬送制御部450に対し、吸入シーケンス[801]実行を指示する。それを受け、搬送制御部404は、センサー309を監視し[820]、冊子が挿入(センサー309 ON)されたならモータ310を駆動し[830]、搬送ローラ対321が冊子を把持することにより、冊子を搬送する。同時に搬送制御部450はセンサー320を監視[840]し、センサー309がOFFとなる時間[Tx]からセンサー320がONになる時間[Tz]得ることによって、冊子長Lは下記の式で与えられるので、それを演算し、閉じた冊子Kであるか、開いた冊子Γであるか判断する[850]。
【0009】
【数1】

【0010】
搬送路制御部405は開閉どちらかであるかの冊子情報を主制御部404に報告し、それに基づき、主制御部404はページめくり制御部422に対し、ページめくり準備シーケンスを指示する[901]。その直後、主制御部404は搬送制御部450に対してページめくり位置あわせシーケンスの指示をする[1001]。その指示に基づき、ページめくり制御部422は開冊子の場合[920]、信号線485を介して加温部105に対し、加温指示をする[930]、それに引き続き、ページめくりモータ106に対し、位置αまで動き、加温部105と接触させ、ページめくりローラ103を加温することにより、ページめくりローラ103の硬度を低下させ、中紙めくりに適した硬度にする[940]。ページめくり制御部452は規定時間Tm加温した後[950]、加温部105をOFF[955]とする。またページめくり制御部422は閉冊子の場合[920]、冷却部102に冷却指示をする[860]。ページめくりモータ106に対し、位置γまで動き、冷却部102と接触させ、ページめくりローラ103を冷却することにより、ページめくりローラ103の硬度を向上させ、表紙めくりに適した硬度にする[970]。ページめくり制御部452は規定時間Ts冷却した後[970]、冷却部102をOFF[985]とする。開冊子、閉冊子それぞれの処理が終了した時点で、ページめくり制御部422は主制御部404に対して、ページめくり準備シーケンス終了を報告する。搬送制御部450はセンサー306を監視し[1010]、ページめくり位置で冊子を停止[1020]させる。停止時点で搬送制御部450は主制御部404に対し、ページめくり位置あわせシーケンスの終了を報告する。主制御部404はページめくり準備シーケンス、ページめくり位置あわせシーケンスの終了を受けて、ページめくりシーケンス[1101]の実行を行う、ページめくり制御部452に対し、モータ106を駆動しεまで移動[1120]後、β〜γ方向に移動するよう指示し[1130][図2−1、図2−7]、冊子表面がたわんだ[図2−3、図2−8]タイミングで搬送制御部450に対し搬送を指示する[1140]ことにより、ページめくり動作が行われる。[図2−5、図2−10]、これら、ページめくりローラに対し冷加温することにより、めくるべき冊子の剛性に適合するページめくりローラを準備することなく、最適なページめくり装置の提供が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明は、銀行等の金融機関で使用される現金自動取引装置や通帳記帳機等の通帳を扱う取引装置、その自動取引装置で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】機器構成図。
【図2−1】めくりチャート。
【図2−2】めくりチャート。
【図2−3】めくりチャート。
【図2−4】めくりチャート。
【図2−5】めくりチャート。
【図2−6】めくりチャート。
【図2−7】めくりチャート。
【図2−8】めくりチャート。
【図2−9】めくりチャート。
【図2−10】めくりチャート。
【図2−11】めくりチャート。
【図3】機器配置図。
【図4】機器ブロック図。
【図5】硬度−ページめくり成功率を示す図。
【図6】ローラ硬度−温度関連図。
【図7】フローチャート(主シーケンス)。
【図8】フローチャート(吸入)。
【図9】フローチャート(めくり準備)。
【図10】フローチャート(位置あわせ)。
【図11】フローチャート(ページめくり)。
【符号の説明】
【0013】
101…ページめくり部、102…冷却部、103…ページめくりローラ、105…加温部、106…ページめくりモータ、120…ドライブシャフト、130…ページめくりローラ軌跡、301…搬送路、303,308,321…搬送ローラ対、304…印字部、306,309,320…センサー、310…搬送モータ、401…プリンタ、404…主制御部、450…搬送制御部、452…ページめくり制御部、453…印字制御部、470…上位装置、480,481,482,483,484,485,486,487,489,490,491,494…信号線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉を綴じ合わせて作成するところの、表紙紙葉と中紙紙葉の剛性が異なる事を特徴とする冊子に対して、その表紙をたわませることによりめくる機能ないし、前記冊子の中紙をたわませることによってめくる機能を持つ、ページめくり部と、前記冊子を搬送する搬送部、前記冊子に印字を行う印字部、前記ページめくり部、前記搬送部、前記印字部を制御する制御部から構成されるプリンタにおいて、前記ページめくり部を構成する押圧力に起因する摩擦力によって前記冊子の表面をたわませる事ができ、冷加温により硬度が変化するページめくりローラに対し、冷加温する手段を使用し、前記ページめくりローラの硬さを変化させることにより、前記ページめくりローラの摩擦力を変更させ、剛性の異なる中紙ないし表紙に対して最適な前記ページめくりローラ硬度でページめくりをおこなうプリンタ。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図2−7】
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【図2−8】
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【図2−9】
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【図2−10】
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【図2−11】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−341414(P2006−341414A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167660(P2005−167660)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)