説明

冊子用ラック

【課題】設置に要する場所をできるだけ少なくしながらも、多種類の冊子類の陳列を可能とする冊子用ラックを提供する。
【解決手段】スタンド部11に、複数の平面形状が略平行四辺形状であり、線材フレームから形成される冊子収容部21が横方向に連接された連接収容部20を有し、連接収容部は、正面に対して左向きの傾斜冊子収容部と右向きの傾斜冊子収容部とが互い違いにジグザグ状に配置してなり、この連接収容部を階段状にずらして複数配置すると共に、連接収容部を構成する各傾斜冊子収容部の上部を背面側に傾斜させて冊子用ラック10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冊子、雑誌等を収容して陳列するための冊子用ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
冊子、雑誌、パンフレット、ちらし、新聞、地域情報紙(タウン誌)、フリーペーパー等は、駅の売店、コンビニエンスストアをはじめとする商店、イベント会場等の人通りが多い場所において、通常ラックに収容されて陳列、販売されている。これら多種類の冊子類を限られた場所に効率よく並べることは、冊子類の見栄えを良くして訴求効果を高めると共に、限られた陳列数から販売数量、頒布数量を得る上で不可欠である。
【0003】
一般的に、冊子類を収容するラックは、線材フレームから形成されることが多い(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。特許文献1に開示されるラックは、脚部にキャスタを有し移動が容易であるため、設置場所を選ばず便利である。しかし、ラックとしての収容能力は必ずしも大きいとは言えない。これに対して、特許文献2に開示されるラックによると、壁面を支持体とした壁掛け構造であり、多列、多段とすることにより冊子類の収容量を確保している。当該特許文献2のラックは省スペースを実現できるものの、設置場所の自由度が制限される。
【0004】
このような経緯から、限られた場所に冊子類の陳列を可能とし、しかも取り扱いが簡便なラックが望まれていた。そこで、図7にパンフレット置き台が提案されている(特許文献3参照)。特許文献3に開示するパンフレット置き台90によると、載置部91とその仕切り92が当該置き台の正面に対して交互に連続しながら傾斜するジグザグ状を成している。特許文献3の置き台によると、冊子99の大きさに関わらず載置が可能となり、陳列上の利点は大きい。図示のパンフレット置き台90にあっては、図示の矢印G1方向から冊子99の表紙を視認することはできる。しかしながら、矢印G2方向からの視線では、冊子の表紙を容易に見ることができない。
【0005】
つまり、通行人、購買者に対し、置き台のいずれか一方側のみの冊子表紙しか見せることができず、陳列時の訴求効果を欠く。また、置き台としての構造ゆえに、冊子類を数多く収容することができず、陳列目的としては不向きと考えられる。
【特許文献1】実開平7−14964号公報
【特許文献2】特許第3055889号公報
【特許文献3】実開平6−31566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、設置に要する場所をできるだけ少なくしながらも、多種類の冊子類の陳列を可能とする冊子用ラックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、請求項1の発明は、スタンド部に複数の冊子収容部が横方向に連接された連接収容部を有するラックにおいて、前記連接収容部は、正面に対して左向きの傾斜冊子収容部と右向きの傾斜冊子収容部とが互い違いにジグザグ状に配置されてなることを特徴とする冊子用ラックに係る。
【0008】
請求項2の発明は、前記傾斜冊子収容部の平面形状が略平行四辺形状である請求項1に記載の冊子用ラックに係る。
【0009】
請求項3の発明は、前記連接収容部を構成する各傾斜冊子収容部の上部が背面側に傾斜するように配置された請求項1又は2に記載の冊子用ラックに係る。
【0010】
請求項4の発明は、前記連接収容部が階段状にずらして複数配置された請求項1ないし3のいずれか1項に記載の冊子用ラックに係る。
【0011】
請求項5の発明は、前記傾斜冊子収容部が線材フレームから形成されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の冊子用ラックに係る。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明に係る冊子用ラックによると、スタンド部に複数の冊子収容部が横方向に連接された連接収容部を有するラックにおいて、前記連接収容部は、正面に対して左向きの傾斜冊子収容部と右向きの傾斜冊子収容部とが互い違いにジグザグ状に配置されてなるため、ラック自体の設置に要する場所をできるだけ少なくすることができ、同時に、多種類の冊子の陳列が可能となる。
【0013】
請求項2の発明に係る冊子用ラックによると、請求項1の発明において、前記傾斜冊子収容部の平面形状が略平行四辺形状であるため、冊子は傾斜冊子収容部の収容空間の形状に合わせて端をずらしながら収容される。従って、冊子の収容数に影響を与えることはない。また、連接収容部は、互いの傾斜冊子収容部同士を連接させた際に傾斜冊子収容部の間に余分な隙間を生じさせることなく形成されるため、ラック自体の横幅を狭めることができる。
【0014】
請求項3の発明に係る冊子用ラックによると、請求項1又は2の発明において、前記連接収容部を構成する各傾斜冊子収容部の上部が背面側に傾斜するように配置されたため、ラックの正面に立つ購入者、通行人は、収容されている冊子の表紙を容易に識別することができる。ゆえに、優れた訴求効果を備えることとなる。
【0015】
請求項4の発明に係る冊子用ラックによると、請求項1ないし3のいずれか1項の発明において、前記連接収容部が階段状にずらして複数配置されたため、1台の冊子用ラック当たりの冊子収容数、陳列数を増すことができる。さらに、連接収容部を階段状の配置とするため、手前の連接収容部に収容された冊子が、直後の連接収容部に収容された冊子表紙を遮ることがなく、陳列時の冊子の視認性を確保できる。
【0016】
請求項5の発明に係る冊子用ラックによると、請求項1ないし4のいずれか1項の発明において、前記傾斜冊子収容部が線材フレームから形成されているため、耐久性、堅牢さを備え、しかも軽量となる。加えて、各々の収容部に収容された冊子の表紙を必要以上に覆い隠すことがなく、陳列した冊子の訴求効果を損なうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下添付の図面に従って本発明を説明する。図1は本発明の一実施形態の冊子用ラックを示す全体斜視図、図2は図1の連接収容部の全体斜視図、図3は傾斜冊子収容部の開口部の平面図、図4は連接収容部同士の比較を示す上面図、図5は図1の冊子用ラックの側面図、図6は他の実施形態の冊子用ラックを示す全体斜視図である。
【0018】
本発明の冊子用ラックとは、冊子、雑誌、パンフレット、ちらし、新聞、地域情報紙(タウン誌)、フリーペーパー(Freesheet)をはじめ、薄板状のケース内に格納されているCDやDVD等の各種の被収容物を収容、陳列可能とするラックである。とりわけ、後述する図3からも把握されるように、厚みの薄い冊子や雑誌の収容に優れたラックである。
【0019】
図1に開示される冊子用ラック10においては、請求項1の発明に規定するとおり、スタンド部11に、複数の冊子収容部21を横方向に連接させた連接収容部20が配される。紙面の略横方向が当該ラックの横方向であり、ラックは正面側を向けて示される。図示の例によると、スタンド部11は冊子用ラック10の左右両側に設けられ、互いのスタンド部同士は梁部12により接続されている。両スタンド部11の下部には台座部13が備えられ、ラック全体の安定性を維持している。左右の台座部13には、それぞれキャスタ17、滑り止め18が適宜設けられ、移動や設置の便宜が図られている。さらに、破線で示す装飾板16には、宣伝広告、標章等が表示される。この冊子用ラックは副次的に広告板としても用いられる。符号19は支持フレームであり連接収容部とスタンド部とを接続する。20wは奥行きの長い連接収容部である。
【0020】
図2に表されるとおり、連接収容部20は、当該冊子用ラック10の正面に対して左向きの傾斜冊子収容部25と右向きの傾斜冊子収容部26とを互い違いとするジグザグ状に配置することによって構成される。連接収容部の向きについては、後述の図4(a)における連接収容部20と正面Fとの位置関係から参照される。この例によると、連接収容部20における冊子収容部21の連接数は、左向きの傾斜冊子収容部25と右向きの傾斜冊子収容部26を合わせて4個としている。冊子収容部の連接数は、ラック自体の構造、設置場所、ラックの需要者側の要望に応じ適宜である。奇数個とすることも偶数個とすることも任意である。
【0021】
冊子収容部21(すなわち、左向きの傾斜冊子収容部25,右向きの傾斜冊子収容部26)は、鋼板、樹脂板(アクリル樹脂等)、木材板、紙(ボール紙)、植物のつる(編みかご)等の各種材料から形成することが可能である。それらの中でも、請求項5の発明に規定するように、線材フレーム29から形成されている構造が優れている。アルミニウムやステンレス鋼等の金属製の線材フレームは、耐久性、堅牢さを備え、しかも軽量である。さらには、各々の収容部に収容された冊子60の表紙を必要以上に覆い隠すことがなく、陳列に際し好都合である。このため、購入者、通行人に対する冊子等の訴求効果を損なうことがない。
【0022】
引き続き、連接収容部20における各部の構成を述べる。傾斜冊子収容部25及び傾斜冊子収容部26とも、その上部に開口部22が設けられ、収容空間24への冊子等の差し込みや取り出しが自在である。必要に応じ蓋部材(図示せず)を開口部に接続することもできる。冊子収容部自体が線材フレームからなるため、収容部の底面として底面部23(底部フレーム)が設けられ、底板として収容空間24内の冊子の下支えをする。
【0023】
前記の傾斜冊子収容部25,26においては、請求項2の発明に規定するように、その平面形状は略平行四辺形を成していることである。図3(a)は連接収容部における左向きの傾斜冊子収容部25を示し、開口部22部分(上部部分)の平面視である。図からよく理解されるとおり、冊子60は、傾斜冊子収容部の収容空間24の形状に合わせ、その端をずらしながら収容される。
【0024】
これに対し、図3(b)は従前のラックにおける収容部81の開口部82部分の平面視である。冊子60は、収容空間84内にその端を揃えて収容されている。冊子60に見られる厚みの薄い被収容物の場合、収容空間の形状が長方形から平行四辺形となっても、収容容量(収容冊数)に何らの変化を与えることもない。しかし、傾斜冊子収容部25(21)と収容部81との間の形状の相違から、長さsの差が生じる。
【0025】
そこで、図4の上面視として示すように、傾斜冊子収容部、冊子収容部をラックの幅方向に連接させた場合、前記の長さsの差が積み重なる。結果、図4(a)の連接収容部20のラック(本件構成)と、図4(b)の連接収容部80のラック(従来品)との間に長さs’の差が生じる。図示からも自明なとおり、傾斜冊子収容部の平面形状は平行四辺形を成していることから、連接収容部20は、互いの傾斜冊子収容部25,26同士を連接させた際に傾斜冊子収容部の間に余分な隙間を生じさせることなく形成される。
【0026】
仮に、従来品のラックにおいて冊子を10冊横に並べる場合、当然ながら冊子収容部10個を横に並べた連接収容部を形成してラックを構成していた。これに対し、本発明のラックによると、従来品と同様のラックの幅に、例えば傾斜冊子収容部12個を横に並べて連接収容部を形成することが可能である。つまり、陳列可能な冊子の種類を増やすことができる。これは、限られた設置場所から販売数量、頒布数量を得る上で極めて効果を発揮する。図中、符号Hは購入者(通行人も含む)、Fはラックの正面、Bはラックの背面を表す。図中の網掛け部分は傾斜冊子収容部の底面部23、冊子収容部の底面部83を表す。
【0027】
自明ながら、傾斜冊子収容部の平面形状である平行四辺形の変形具合いかんにより、ラックの幅は変化する。通常、購入者Hは冊子用ラック(連接収容部20)より数歩程度離れた位置から連接収容部を眺めた場合、購入者Hはいずれの傾斜冊子収容部25,26に収容された冊子も俯瞰することができる。実用上、従前のラック(連接収容部80)との比較において、冊子の表紙の見え易さは劣ることはない。
【0028】
ただし、極端に鋭角な平行四辺形とすると、左向きの傾斜冊子収容部25及び右向きの傾斜冊子収容部26内に収容された冊子について、購入者Hからは見えにくくなる。そのため、傾斜冊子収容部の形状は、冊子等の被収容物の種類、設置場所、ラックと購入者、通行人等との距離等の要因から総合的に勘案される。図1中の連接収容部20wにおいては、主要な構成は連接収容部20と同様であるため、その説明を省略する。
【0029】
次に、当該冊子用ラックにおける連接収容部の配置について、図1、図5等を用い説明する。請求項3の発明に規定し、特に図5から理解されるとおり、連接収容部20を構成する各傾斜冊子収容部25,26の上部(開口部22付近)は、当該冊子用ラックの背面B側に傾斜して配置される。従って、ラックの正面F側に立つ購入者Hは、傾斜冊子収容部25,26内に収容された冊子の表紙を容易に識別することができる。購入者の視線Eからも明らかなように、陳列時の冊子の視認性は高い。なお、図示の冊子用ラックによると、傾斜冊子収容部はラック設置面からの垂直軸よりラックの背面B側にほぼ10°の傾斜である。
【0030】
また、請求項4の発明に規定し、図1及び図5から理解されるとおり、連接収容部20は階段状にずらされて複数配置されている。図示の例によると、1段当たり4個の傾斜冊子収容部からなる連接収容部20は、ラックの上方に5段にわたり支持フレーム19により接続されて階段状にずらされて配置される。連接収容部を複数配置することにより、1台の冊子用ラック当たりの冊子収容数、陳列数を増すことができる。さらに、連接収容部を階段状の配置とするため、手前の連接収容部に収容された冊子が、直後の連接収容部に収容された冊子表紙を遮ることがない。よって、購入者の視線Eからも明らかなように、陳列時の冊子の視認性は確保される。
【0031】
これまでに開示した冊子用ラックの他に、例えば、図6に示す冊子用ラック10Aのように、スタンド部11に等身大の広告板16Kを設置し、該スタンド部の一部に連接収容部20を設けた構成とすることも可能である。この冊子用ラック10Aは、広告板16Kの内容と、連接収容部20内に収容される被収容物とを関連づけた販売促進に好適である。特に、連接収容部の幅は従来構造の収容部と比較して狭めることができるため、冊子等の被収容物が広告板16Kを覆い隠す面積も少なくなる。図中、前掲の冊子用ラック10と共通する箇所は同一符号である。
【0032】
以上、詳述した冊子用ラックは、発明の一形態を開示するものであり必ずしも開示の形態のみに限定されることはなく、発明の要旨を変更しない範囲において適宜変形は許容される。例えば、スタンド部はラックの左右に一対とするものである。これに限らず、1本のみ、あるいはラック自体の幅に応じて3本以上とすることも適宜である。また、連接収容部を形成する傾斜冊子収容部の個数、形成する平行四辺形の傾斜の程度は言うに及ばず、傾斜冊子収容部のラック背面側への傾斜角度、連接収容部の配置段数等も適宜である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態を示す冊子用ラックの全体斜視図である。
【図2】図1の連接収容部の全体斜視図である。
【図3】傾斜冊子収容部の開口部の平面図である。
【図4】連接収容部同士の比較を示す上面図である。
【図5】図1の冊子用ラックの側面図である。
【図6】他の実施形態の冊子用ラックを示す全体斜視図である。
【図7】従来のパンフレット置き台の主要部斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
10,10A 冊子用ラック
11 スタンド部
12 梁部
13 台座部
16 装飾板
16 広告板
20,20w 連接収容部
21 冊子収容部
22 開口部
23 底面部
24 開口部
25 左向きの傾斜冊子収容部
26 右向きの傾斜冊子収容部
29 線材フレーム
60 冊子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタンド部に複数の冊子収容部が横方向に連接された連接収容部を有するラックにおいて、
前記連接収容部は、正面に対して左向きの傾斜冊子収容部と右向きの傾斜冊子収容部とが互い違いにジグザグ状に配置されてなることを特徴とする冊子用ラック。
【請求項2】
前記傾斜冊子収容部の平面形状が略平行四辺形状である請求項1に記載の冊子用ラック。
【請求項3】
前記連接収容部を構成する各傾斜冊子収容部の上部が背面側に傾斜するように配置された請求項1又は2に記載の冊子用ラック。
【請求項4】
前記連接収容部が階段状にずらして複数配置された請求項1ないし3のいずれか1項に記載の冊子用ラック。
【請求項5】
前記傾斜冊子収容部が線材フレームから形成されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の冊子用ラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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