説明

再利用可能なモノコック構造の建築基礎構造物及びその構築方法

【課題】従来の建築基礎構造物構築方法では不可能であった、解体、移築による構造材の再利用をはじめとして、安全性、耐久性、防水性、断熱性等の品質を改善した上で、工期の短縮、及びコストの削減を目指し、より良い建築基礎構造物を提供する。
【解決手段】鋼製型枠に附属する孔あき鋼板ジベル部分にて、充填されたプレキャスト・コンクリート部分と構造的に一体化して製作された、軽量かつ剛性及び靭性に優れた安全性の高いモノコック構造合成床版を、現場状況に応じ断熱材:スタイロフォーム、EPS等によって地盤改良が施された地盤面に敷設、シームレス溶接で構造的に一体化し、モノコック構造を特徴とするベタ基礎を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築基礎構造物、及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建築基礎構造物は、現場にて打設される鉄筋コンクリートにより構築される、布基礎、ベタ基礎、杭基礎等が一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の建築基礎構造物は、次のような問題点がある。
▲1▼構造体が、現場にて打設される鉄筋コンクリートにより構築されるために、解体及び移築が不可能であり、再利用ができず、将来的にゴミとなってしまう。
▲2▼鉄筋コンクリート造である為、重量が大きく、構造的な靭性が乏しい為、地震時の安全性に問題がある。
▲3▼現場にて打設されるコンクリートの品質が不安定であり、耐久性に欠ける。
▲4▼仮設工事、鉄筋工事、型枠工事、コンクリート工事等の現場作業の工程が多く、施工の手間がかかる為、工事期間が長く、そのための費用がかかる。
本発明は、前述のような問題点を、解消すべくなされたものであり、その目的は、寿命が永く解体及び移築が容易であるために再利用ができ、軽量かつ強靭で安全性が高いことを特徴とする建築基礎構造物を、短い工期で、安い価格にて、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る建築基礎構造物は、鋼製型枠とプレキャスト・コンクリートで構成されたモノコック構造合成床版を、現場状況に応じて改良した地盤面に敷設してから、シームレス溶接により一体化することにより、SRC造かつモノコック構造の優位性を特徴とするベタ基礎を構築する。
【0005】
前記基礎を構築する構造部材は、事前に工場で製作されたプレファブ建材であり、鋼製型枠は、これに附属する孔あき鋼板ジベル部分にて、プレキャスト・コンクリート部分と、構造的に一体化される。また、この構造部材そのものも、SRC造かつモノコック構造の優位性を兼ね備えており、軽量かつ剛性及び靭性に優れた安全性の高い自立した床版として成立している。
【0006】
本発明の建築基礎構造物を構築する際に、現場における地質等の地盤状況に応じて、断熱材:スタイロフォーム、EPS等による地盤改良を施すことによって、不同沈下を防止し、断熱性能及び免震性能の高い建築構造物とすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明で構築される建築基礎構造物は、構造部材自体の寿命が永く、その解体及び移築が容易なために、再利用ができる。そのため将来的にゴミにならず、環境保全の観点において、極めて有効な建築構造物となる。
【0008】
杭、フーチング、地中梁等の地下構造物を必要としない自立した構造部材によって構成される、SRC造かつモノコック構造の軽量なベタ基礎であるため、地震による破壊力の影響が小さく、安全性が高い強靭な建築基礎構造物が構築できる。
【0009】
建築基礎構造物を構成するコンクリート部分が、工場において、平打ち打設による水の少ない固練りコンクリートで構築されるために、プレキャスト・コンクリートとしての、耐久性及び剛性の高い建築躯体が構築できる。
【0010】
現場における構築の工程において、仮設工事、鉄筋工事、型枠工事、コンクリート工事の作業がないため、工期の短縮及びコストの削減ができる。
【0011】
基礎床版の上面において、鋼板のシームレス溶接による構造の一体化がなされるが、これが溶接防水となるため完璧な止水及び防湿ができる。又、鋼板部分が地盤面上にほぼ露出される為、容易に、防錆及び防火もしくは耐火の措置が成される。
【0012】
上部の建築構造物は、SRC造である基礎床版上面の鋼板部分にて、接続されて構築されることになり、木造、RC造、鉄骨造等の多様な構造物との混構造が可能である。
また、その設計の自由度が高く、将来の増改築の際に、可変的な対応ができる。
【0013】
断熱材:スタイロフォーム、EPS等による地盤改良を施すことにより、基礎外断熱となるため断熱性能が高く、弾性構造材による、地盤免震基礎となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る建築基礎構造物の実施形態の構成を表す斜視図である。
【図2】本発明に係る建築基礎構造物の実施形態を表す平面図である。
【図3】本発明に係る建築基礎構造物の実施形態を表す断面図である。
【図4】本発明に係る建築基礎構造物の実施形態を表す構造断面詳細図である。
【図5】本発明に係る建築基礎構造物を構築するモノコック構造合成床版の実施形態を表す(a)平面図(b)短辺方向断面図(c)長辺方向断面図である。
【図6】本発明に係る建築基礎構造物の構造部材である、モノコック構造合成床版の製作工程を順に表す平面図である。
【図7】本発明に係る建築基礎構造物の構造部材であるモノコック構造合成床版を、構成する鋼製型枠の実施形態を表す斜視図である。
【図8】本発明に係る建築基礎構造物の構築工程を順に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る建築基礎構造物の実施例の図面を参照しつつ説明する。図1は斜視図、図2は平面図、図3は断面図であり、現場における地盤状況に応じて地盤改良を目的とする断熱材2を敷設した後、その上に建築基礎構造物1が構築されて、上部の建築構造物3は建築基礎構造物1の上に構築されることを示す。
【0016】
図4は本発明に係る建築基礎構造物の構造断面詳細図である。地盤改良を目的とする断熱材2の上に敷設される建築基礎構造物1の構造部材であるモノコック構造合成床版は、鋼製型枠5とプレキャスト・コンクリート10が、鋼製型枠外周部用孔あき鋼板ジベル6及び鋼製型枠内部用孔あき鋼板ジベル7によって構造的に一体化され構築される。モノコック構造合成床版内部には、軽量化を目的とする断熱材8とプレキャスト・コンクリート10のひび割れ防止を目的とするワイヤーメッシュ7が設置される。また、モノコック構造合成床版は、シームレス溶接11によって一体化され、建築基礎構造物1が全体としてモノコック構造のベタ基礎床版となる。尚、図5はモノコック構造合成床版の(a)平面図(b)短辺方向断面図(c)長辺方向断面図であり、床版全体について上記の内容を示すものである。
【0017】
図6はモノコック構造合成床版の製作工程を順に表す。工場において(1)鋼製型枠5を設置(2)断熱材8を設置(3)ワイヤーメッシュ7を設置後(4)平打ち打設によりプレキャスト・コンクリート10を充填して製作する。
【0018】
図7は鋼製型枠5の斜視図である。鋼製型枠5は鋼板で製作され鋼製型枠外周部用孔あき鋼板ジベル6及び鋼製型枠内部用孔あき鋼板ジベル7から構成される。
【0019】
図8は本発明に係る建築基礎構造物1の構築工程を順に表す。現場にて(1)地盤の表層土掘削(2)地盤改良を目的とする断熱材2の敷設(3)モノコック構造合成床版の敷設及びシームレス溶接による一体化して、建築基礎構造物を構築する。
【符号の説明】
【0020】
1 ・・・ 建築基礎構造物
2 ・・・ 地盤改良を目的とする断熱材
3 ・・・ 上部の建築構造物
4 ・・・ 地盤面
5 ・・・ 鋼製型枠
6 ・・・ 鋼製型枠外周部孔あき鋼板ジベル
7 ・・・ 鋼製型枠内部孔あき鋼板ジベル
8 ・・・ 軽量化を目的とする断熱材
9 ・・・ ワイヤーメッシュ
10 ・・・ プレキャスト・コンクリート
11 ・・・ シームレス溶接

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製型枠とプレキャスト・コンクリートから構成されるモノコック構造合成床版を、現場状況に応じて改良した地盤面に敷設し、SRC造かつモノコック構造を特徴とするベタ基礎を構築することを特徴とする再利用可能な建築基礎構造物。
【請求項2】
請求項1に記載の建築基礎構造物を構築する際の構造部材で、鋼製型枠に付属する孔あき鋼板ジベル部分にて、充填されたプレキャスト・コンクリート部分と構造的に一体化した軽量かつ剛性及び靭性に優れ安全性の高い、SRC造のモノコック構造合成床版。
【請求項3】
請求項2に記載のモノコック構造合成床版の製作にあたって用いられる、孔あき鋼板ジベル部分にて、充填されたプレキャスト・コンクリート部分と構造的に一体化することを特徴とする鋼製型枠。
【請求項4】
請求項3に記載の鋼製型枠に附属してプレキャスト・コンクリート部分との構造の一体化及びトラス構造による鋼製型枠構造強度の向上と軽量化を目的とすることを特徴とする、鋼製型枠外周部及び内部孔あき鋼板ジベル部分。
【請求項5】
請求項1に記載の、建築基礎構造物を構築する際に用いられる、断熱性能及び免震性能の向上のための断熱材:スタイロフォーム、EPS等の敷設による地盤改良を施すことを特徴とする構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−127410(P2011−127410A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299450(P2009−299450)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(594041070)
【Fターム(参考)】