説明

再撮影像用モアレ解消フィルタ

【課題】放送局のスタジオにおいて、モニタ画面をテレビカメラで撮影するいわゆる「再撮」において、モアレという干渉縞が発生し、画質を劣化させていた。
【解決手段】低域通過フィルム103と反射防止フィルム101とそれらを固定する固定板102とを有する再撮影像用モアレ解消フィルタ111を構成し、画像モニタ202に装着した。また、画像モニタ202の画面の大きさがN(Nは正の数)型画像モニタである場合には低域通過フィルタ103の特性が、入射した光を拡げる角度を(500/N)度、±30%の角度に設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像モニタの映像をテレビカメラで撮影するいわゆる「再撮」において、画像モニタの画面に装着してモアレ(干渉縞)を防止する再撮映像用モアレ解消フィルタの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、放送局のスタジオにおいては画像モニタ(以下、モニタと略す場合もある)に様々な映像を映し出し、その映像そのもの、もしくはその映像を映したモニタ画面を含む光景の映像をテレビカメラ(以下、カメラと略す場合もある)で撮影するいわゆる「再撮」と呼ばれる演出が多用されている。この際に画像モニタ側が映像を映し出す画素のピッチ間隔による周期と、テレビカメラ側の画素の(または、テレビカメラの撮像素子の)ピッチ間隔による周期とが一般的には一致することはないので、視覚的に周期のずれが発生し、「モアレ」(以下、モアレと単に表現する場合もある)という画質を劣化させる干渉縞が生じる既知の問題がある。その現象を図7を参照して説明する。
【0003】
図7(a)に示すように、画像モニタの画素ピッチ711とテレビカメラの画素ピッチ721(撮像ピッチでもある。以下テレビカメラの撮像ピッチを単に画素ピッチと表現することもある。)は異なっているが、テレビカメラの画素ピッチ721の4画素毎に、画像モニタの画素ピッチ711が必ず1画素出現しているので、画素ピッチは適合しており、画素ピッチの差による周期的なパターンは発生しない。したがって、モアレも発生しない。4画素は一例であり、整数倍の関係の場合にモアレが発生しない。
図7(b)に示す画素ピッチは画像モニタの画素ピッチ712とテレビカメラの画素ピッチ722が異なっており、かつ、画素ピッチのズレが解消される画素ピッチの関係が整数倍でなく、ズレが生じているため、周期的なパターンが発生している様子を示している。
【0004】
前記したように二つの異なる周期の縞模様が重なるとピッチ間隔のズレによって周期的に光学的な干渉パターンとなるモアレが発生する。テレビカメラと画像モニタの関係においてもカメラ側の画素ピッチとモニタ側の画素ピッチに差があり、かつ周期的にも適合していないと、周期的に縞模様が発生する。より詳しくは、画像モニタ側が映像を映し出すための同期信号、および画像モニタが画素として有するピッチ間隔と、テレビカメラ側の撮影のための同期信号、およびテレビカメラの画素ピッチ間隔が影響し、これら画像モニタとテレビカメラがそれぞれ発生する映像の周期とが一般的には一致しないので、視覚的に周期のずれを発生し、光の周波数成分として、主に高周波成分において、干渉し合い、モアレを生じ、画質を劣化させる。
これらの問題に対して、従来においてはカメラのフォーカスを甘くする、あるいはモアレが発生しないズームサイズにする等、運用面で対応していた。
【0005】
なお、モアレについてはカメラとモニタの関係のみならず、二つの異なる周期の縞模様が干渉する場合については様々な場合で起こりうる現象であって、これらの一般的なモアレの現象や理由については非特許文献1がある。
また、テレビカメラと画像モニタにおけるモアレについての詳細は後記する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ウィキメディア財団、フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」、[2009年3月13日検索]、インターネット、< HYPERLINK "http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%82%A2%E3%83%AC" http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%82%A2%E3%83%AC>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、昨今、高精細なハイビジョン映像を家庭において、大画面テレビで観ることができるようになったため、再撮した映像を表示した場合、以前よりもモアレの発生が目立つようになり、視聴者に不快感を与えるという問題がある。
また、カメラのフォーカスを甘くする、もしくはズームサイズを制限する等の対応以外のモアレ改善方法がスタジオの現場で要望されている。
【0008】
そこで本発明はこのような問題点を解決するもので、その目的とするところはカメラの画像操作をすることなく、画像モニタの前面に取り付けるだけで、モアレの発生を解消する再撮影像用モアレ解消フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決して、本発明の目的を達成するために、各発明は以下のように構成した。
すなわち請求項1に記載の発明は、画像モニタの映像をテレビカメラで撮影する際の画像モニタの画面に装着してモアレを解消する再撮映像用モアレ解消フィルタであって、前記画像モニタから入射した映像の光を拡げ高周波成分を減少させて出射する低域通過フィルムと、前記低域通過フィルムを固定する支持体と、を有し、前記画像モニタの画面の大きさがN(Nは正の数)型画像モニタである場合には前記低域通過フィルムの特性が、入射した光を拡げる角度を(500/N)度、で求めた角度の±30%の範囲となる角度に設定した。
なお、N型画像モニタとはNインチ型画像モニタの意味であって、以下単にN型画像モニタと表現する。
【0010】
かかる構成において、低域通過フィルムはN型画像モニタの画像ピッチに起因して発生する周期的な映像要素を拡げてぼかす、もしくは光学的な高周波成分を除去し、モアレ発生原因をモニタ側で取り除く。また、低域通過フィルムの特性は、入射した光を拡げる角度を(500/N)度、で求めた角度の±30%の範囲となる角度に設定しているので、N型画像モニタに最適な低域通過特性で低域通過フィルムが機能する。以上の各構成から全体としてN型の画像モニタ用に適した特性の再撮影像用モアレ解消フィルタとして機能する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、画像モニタの映像をテレビカメラで撮影する際の画像モニタの画面に装着してモアレを解消する再撮映像用モアレ解消フィルタであって、前記画像モニタから入射した映像の光を拡げ高周波成分を減少させて出射する低域通過フィルムと、照明の反射を抑えるための反射防止フィルムと、前記低域通過フィルムと前記反射防止フィルムを固定する支持体と、を有し、前記画像モニタの画面の大きさがN(Nは正の数)型画像モニタである場合には前記低域通過フィルムの特性が、入射した光を拡げる角度を(500/N)度、で求めた角度の±30%の範囲となる角度に設定した。
【0012】
かかる構成において、低域通過フィルムはN型画像モニタの画像ピッチに起因して発生する周期的な映像要素を拡げてぼかす、もしくは光学的な高周波成分を除去し、モアレ発生原因をモニタ側で取り除く。また、低域通過フィルムの特性は、入射した光を拡げる角度を(500/N)度、で求めた角度の±30%の範囲となる角度に設定しているので、N型画像モニタに最適な低域通過特性で低域通過フィルムが機能する。また、反射防止フィルムは外部からの照明の反射を抑える。以上の各構成から全体としてN型の画像モニタ用に適した特性の再撮影像用モアレ解消フィルタとして機能する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、画像モニタの映像をテレビカメラで撮影する際の画像モニタの画面に装着してモアレを解消する再撮映像用モアレ解消フィルタであって、前記画像モニタから入射した映像の光を拡げ高周波成分を減少させて出射する低域通過フィルムと、乱反射を抑制するための偏光フィルムと、前記低域通過フィルムと前記偏光フィルムを固定する支持体と、を有し、前記画像モニタの画面の大きさがN(Nは正の数)型画像モニタである場合には前記低域通過フィルムの特性が、入射した光を拡げる角度を(500/N)度、で求めた角度の±30%の範囲となる角度に設定した。
【0014】
かかる構成において、低域通過フィルムはN型画像モニタの画像ピッチに起因して発生する周期的な映像要素を拡げてぼかす、もしくは光学的な高周波成分を除去し、モアレ発生原因をモニタ側で取り除く。また、低域通過フィルムの特性は、入射した光を拡げる角度を(500/N)度、で求めた角度の±30%の範囲となる角度に設定しているので、N型画像モニタに最適な低域通過特性で低域通過フィルムが機能する。また、前記偏光フィルムは外部からの照明が前記低域通過フィルムにより乱反射するのを抑える。以上の各構成から全体としてN型の画像モニタ用に適した特性の再撮影像用モアレ解消フィルタとして機能する。
【0015】
請求項4に記載の発明は、画像モニタの映像をテレビカメラで撮影する際の画像モニタの画面に装着してモアレを解消する再撮映像用モアレ解消フィルタであって、前記画像モニタから入射した映像の光を拡げ高周波成分を減少させて出射する低域通過フィルムと、照明の反射を抑えるための反射防止フィルムと、乱反射を抑制するための偏光フィルムと、前記低域通過フィルムと前記反射防止フィルムと前記偏光フィルムを固定する支持体と、を有し、前記画像モニタの画面の大きさがN(Nは正の数)型画像モニタである場合には前記低域通過フィルムの特性が、入射した光を拡げる角度を(500/N)度、で求めた角度の±30%の範囲となる角度に設定した。
【0016】
かかる構成において、低域通過フィルムはN型画像モニタの画像ピッチに起因して発生する周期的な映像要素を拡げてぼかす、もしくは光学的な高周波成分を除去し、モアレ発生原因をモニタ側で取り除く。また、低域通過フィルムの特性は、入射した光を拡げる角度を(500/N)度、で求めた角度の±30%の範囲となる角度に設定しているので、N型画像モニタに最適な低域通過特性で低域通過フィルムが機能する。また、反射防止フィルムは外部からの照明の反射を抑える。また、前記偏光フィルムは外部からの照明が前記低域通過フィルムにより乱反射するのを抑える。以上の各構成から全体としてN型の画像モニタ用に適した特性の再撮影像用モアレ解消フィルタとして機能する。
【0017】
なお、再撮映像用モアレ解消フィルタにおいて、前記支持体が、透明で平板状に形成された固定板としてもよい。
かかる構成において、前記固定板を光が通過するとともに、前記固定板が前記低域通過フィルムまたは前記反射防止フィルムもしくは前記偏光フィルムを固定し、前記フィルムの形態を安定化する。以上の各構成から全体としてN型の画像モニタ用に適した特性の再撮影像用モアレ解消フィルタとして機能する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の本発明によれば、再撮影像用モアレ解消フィルタを画像モニタに装着するだけで、画像モニタから発生する光学的な高周波成分を除去し、モアレを発生させないという効果がある。
また、再撮影像用モアレ解消フィルタの装着は容易で、画質劣化は殆どないという効果がある。
また、再撮影像用モアレ解消フィルタは光学的なフィルタのため、発光するモニタであるならば、CRT(Cathode Ray Tube)、PDP(Plasma Display Panel)、液晶モニタ等において広く使用できるという効果がある。
また、PDP、液晶パネルに関係なく、またPCでもTV等の画像モニタの種類にも関係なく、様々な画面の大きさの画像モニタにも対応可能であるという効果がある。
また、カメラをズームイン、ズームアウト、パンしてもモアレの発生はなく、広く使用できるという効果がある。
【0019】
また、請求項2に記載の発明において、再撮影像用モアレ解消フィルタの構成のなかに照明の反射を抑えるための反射防止フィルムを設けているので、外部の照明からの影響に対して強いという効果がある。
【0020】
また、請求項3に記載の発明において、再撮影像用モアレ解消フィルタの構成のなかに乱反射を抑制するための偏光フィルムを設けているので、外部の照明からの影響に対して強いという効果がある。
【0021】
また、請求項4に記載の発明において、再撮影像用モアレ解消フィルタの構成のなかに照明の反射を抑えるための反射防止フィルムと、乱反射を抑制するための偏光フィルムとを、設けているので、請求項1から請求項3の一つに記載の再撮影像用モアレ解消フィルタより、外部の照明からの影響に対して更に強いという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態1に係る再撮影像用モアレ解消フィルタを分解した状態を示す第1の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る再撮影像用モアレ解消フィルタを使用する方法を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る再撮影像用モアレ解消フィルタを画像モニタに設置した場合の、画像モニタから再撮影像用モアレ解消フィルタに入射した光の拡がりを示す図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る再撮影像用モアレ解消フィルタを分解した状態を示す第2の構成図である。
【図5】本発明の実施形態3に係る再撮影像用モアレ解消フィルタを分解した状態を示す第3の構成図である。
【図6】本発明の実施形態に係る再撮影像用モアレ解消フィルタを画像モニタに装着する第2の手法を示した図である。(a)は留め具の形態と種類を示す図であり、(b)は留め具を用いて再撮影像用モアレ解消フィルタを画像モニタに係止する手法を示した図である。
【図7】画像モニタの画像ピッチとカメラの撮像ピッチ(画素ピッチ)とのズレによるモアレ発生の原理を示す図である。(a)は、画像モニタの画素ピッチとテレビカメラの画素ピッチが整数倍で適合する場合であり、(b)は、画像モニタの画素ピッチとテレビカメラの画素ピッチがずれている場合である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
第1の実施形態を図1を参照して説明する。
図1に示すように、再撮影像用モアレ解消フィルタ111は、画像モニタ202から入射した映像の光を拡げ高周波成分を減少させて出射する低域通過フィルム103と、照明の反射を抑えるための反射防止フィルム101と、低域通過フィルム103と反射防止フィルム101を支持、固定する固定板(支持体)102から構成されている。
【0024】
低域通過フィルム103は、光学的な低域通過特性を有しており、再撮時において、モアレを解消させるものである。この低域通過フィルム103は、テレビカメラ203からみて画像モニタ202側に位置しており、画像モニタ202からの映像を入射し、画像モニタ202の画素ピッチに起因して発生する周期的な映像要素を拡げてぼかす、もしくは光学的な高周波成分を除去し、モアレ発生原因を取り除く。この低域通過フィルム103は固定板102の一側面に設置されている。低域通過フィルタ103から出射された光は固定板102を介して、反射防止フィルム101に出射される。なお、画像モニタ202の画面の大きさがN型画像モニタ(Nインチ画像モニタ)である場合には、低域通過フィルム103の特性を、入射した光を拡げる角度を(500/N)度、で求めた角度の±30%の範囲となる角度に設定した。低域通過フィルム103が何故モアレ発生原因を取り除くかについては後記する。
【0025】
また、反射防止フィルム101は、低域通過フィルム103とテレビカメラ203の間に位置し、低域通過フィルム103から入射した光を通過させて、テレビカメラ203に出射すると共に、テレビカメラ203側に存在する外部照明が入射して映像を擾乱するのを防止している。この反射防止フィルム101は、固定板102の他側面に設置されている。なお、反射防止フィルム101は前記したように外部照明が入射して映像を擾乱するのを防止しているので、TVスタジオなどで外部照明が強く当たるような過酷な環境でない場合においては、構成要素として不要となる。
また、固定板102は、低域通過フィルム103と反射防止フィルム101との間に配置され、固定板102の画像モニタ202側となる一側面に低域通過フィルム103を支持し、テレビカメラ203側となる他側面に反射防止フィルム101を支持して、低域通過フィルム103および反射防止フィルム101を平坦に保持するものである。この固定板102は、低域通過フィルム103と反射防止フィルム101を固定し、形態を安定化できる板厚で、光を透過することができる素材で形成されている。また、固定板102は、例えば低域通過フィルム103および反射防止フィルム101とほぼ同じ大きさで、平板状の透明なアクリル板から形成されている。
【0026】
なお、ここでは、画像モニタ202に係止するためのフィルタ外枠210を設置している。フィルタ外枠210は再撮影像用モアレ解消フィルタ111を支持して画像モニタ202に係止するものである。このフィルタ外枠210は、再撮影像用モアレ解消フィルタ111を支持する枠体と、この枠体の所定位置に設けたフックとを備えている。また、フィルタ外枠210を再撮影像用モアレ解消フィルタ111に取り付けたときに再撮影像用モアレ解消フィルタ111の低域通過フィルム103の面が、フィルタ外枠210の側面と面一となるか、あるいはフィルタ外枠210の側面より外側に位置するようにする。したがって、フィルタ外枠210を介して再撮影像用モアレ解消フィルタ111を画像モニタ202に取り付けると、低域通過フィルム103の面と画像モニタ202の面とが当接、もしくは密着した状態となる。
【0027】
(再撮影像用モアレ解消フィルタ111の使い方)
再撮影像用モアレ解消フィルタ111を実際に使用する方法を図2に示す。
図2において、再撮影像用モアレ解消フィルタ111は画像モニタ202の画面の表面にフィルタ外枠210を介して取り付けられる。再撮影像用モアレ解消フィルタ111が画像モニタ202に取り付けられると、再撮影像用モアレ解消フィルタ111面と画像モニタ202面は密着した状態となるように構成されている。このとき、テレビカメラ203から「再撮」を行なってもモアレは発生しない。
【0028】
(再撮影像用モアレ解消フィルタ111の作用)
前記したように異なる周期の縞模様、もしくはそれと同様の光学的な周波数成分が干渉し合うことがモアレ発生の原因となる。
以上においてはテレビカメラ側の画素ピッチと画像モニタ側の画素ピッチとの互いの関係から起こりうる現象を記してきたが、画像モニタ側で対処できる再撮影像用モアレ解消フィルタ111を用いた手法を次に説明する。
【0029】
例えば、テレビカメラ側に撮像ピッチ(画素ピッチ)があっても通常の風景、光景ではモアレは発生しない。縞柄のシャツや格子等の縞模様があるものは例外として、通常の風景や光景には一般的にはテレビカメラ側の画素ピッチと干渉を起こすような周期的な光の成分は含まれていないからである。つまり、再撮の際の画像モニタ側の画素ピッチに起因する周期的な成分を除去してしまえば通常の風景、光景とほぼ同等になるのでモアレは発生しない。画像モニタに映った画像は通常の風景、光景を画像モニタ側の画素ピッチに乗せたいわばサンプリングされた画像となっている。このとき、画像モニタに映った画像は画素ピッチに相関のある高周波成分が混ざり込むことになる(非特許文献1参照)。
したがって、この高周波成分を適切に除去してやれば、通常の風景、光景の画像とほぼ同等になり、モアレは発生しない。この画素ピッチに相関のある高周波成分を取り除くために光学的な低域通過フィルムをとりつける。以上が本発明の実施形態に係る再撮影像用モアレ解消フィルタ111の基本的な役目である。
したがって、図1における低域通過フィルム103において、画像モニタ202からの光学的映像の入射した光を拡げ、モアレの発生条件を意図的に除去すればよい。あるいは低域通過フィルム103において、光の高周波成分を除去すればよい。
【0030】
図3は本発明の再撮影像用モアレ解消フィルタ111を画像モニタ202に設置した場合の、画像モニタ202から再撮影像用モアレ解消フィルタ111に入射した光の拡がりを示す図である。フィルタがない場合、本来光はまっすぐ進むが、このように光が拡がる事でカメラ側でのモニタの見た目の解像度が低下する事になるので、再撮影像用モアレ解消フィルタ111は光学的に低域通過フィルタとしての役目を果たしている。
【0031】
また、モアレが発生する原因として、テレビカメラ側の画素ピッチと画像モニタ側の画素ピッチと、低域通過フィルムの入射した光を拡げる特性、もしくは光学的な低域通過特性と、が関係することが、経験的にも、実験的にも確認されている。
例えば、50型(インチ)〜40型(インチ)程度の画像モニタの場合には、再撮影像用モアレ解消フィルタ111を構成している低域通過フィルム103の入射した光を拡げる特性の角度が約10度付近(7度〜13度の範囲)において、モアレ(干渉縞)が出現しないことが、実験的に確認されている。
【0032】
また、40型〜26型程度の画像モニタの場合には、再撮影像用モアレ解消フィルタ111を構成している低域通過フィルム103の入射した光を拡げる特性の角度が約20度付近(14度〜26度の範囲)において、モアレ(干渉縞)が出現しないことが、実験的に確認されている。
【0033】
また、16型程度の画像モニタの場合には再撮影像用モアレ解消フィルタ111を構成している低域通過フィルム103の入射した光を拡げる特性の角度が約30度付近(21度〜39度の範囲)において、モアレ(干渉縞)が出現しないことが、実験的に確認されている。
【0034】
以上から、50型画像モニタ用の再撮影像用モアレ解消フィルタ111a(111)を構成している低域通過フィルム103a(103)の低域通過特性と、16型画像モニタ用の再撮影像用モアレ解消フィルタ111b(111)を構成している低域通過フィルム103b(103)を例にとって、低域通過特性との関係について次に検討する。
【0035】
例えば50型画像モニタの画面の形状として横1104mm×縦621mm、また映像の横方向が1280画素で、縦方向が768ラインとする。このとき、水平方向は1.16画素/mm(0.863mm/画素)であり、垂直方向は1.24ライン/mm(0.809mm/ライン)である。
また、16型画像モニタの画面の形状として横343mm×縦193mm、また映像の横方向が1366画素で、縦方向が768ラインとする。このとき、水平方向は3.98画素/mm(0.251mm/画素)であり、垂直方向は3.98ライン/mm(0.251mm/ライン)である。
なお、前記50型画像モニタはPDP(Plasma Display Panel)の例であり、また、前記16型画像モニタは液晶パネルの例である。液晶パネルはPDPより高密度の画素の製作に向いているため、前記16型画像モニタの横方向の画素数は1366と、前記50型画像モニタの横方向の画素数の1280と異なり、かつ上回っているが、以下の説明において、本質的に重要なのは画素密度であるので、上記の例で説明を続ける。
【0036】
さて、前記50型画像モニタの水平方向での画素密度は1.16画素/mmであり、前記16型画像モニタの水平方向での画素密度は3.98画素/mmであるので、16型画像モニタの方が50型画像モニタに比較して、3.44倍も高い。
また、前記50型画像モニタの垂直方向でのライン密度は1.24ライン/mmであり、前記16型画像モニタの垂直方向での3.98ライン/mmであるので、16型画像モニタの方が50型画像モニタに比較して、3.22倍も高い。
なお、垂直方向においてはライン(数)と表現しているが、垂直方向における映像画素を決める要因であるので、実質的に画素(数)と考えることにする。
このように考えると、前記16型画像モニタは前記50型画像モニタに比較して、画素密度は、水平方向で3.44倍、垂直方向で3.22倍高い。
【0037】
これは50型の画像モニタを基準として、16型の画像モニタは画素ピッチが50型の画像モニタの画素ピッチの(50/16)倍、つまり約3倍に密集していることに主に起因している。したがって、16型モニタ側の映像の等価的な縞模様は細かくなり、テレビカメラ側が同一条件であれば、モアレの発生条件も異なる。なお、画素ピッチが密集し、映像の縞模様が細かくなることは映像に光学的な高周波成分が混ざりこむことを意味している。したがって、再撮影像用モアレ解消フィルタ111に含まれる低域通過フィルム103の光を拡げる特性あるいは低域通過特性も変える必要がある。
【0038】
以上の50型画像モニタと16型画像モニタとの関係においては前記したように16型の画像モニタは画素ピッチが50型の画像モニタの画素ピッチの(50/16)倍、つまり約3倍に密集していた。また、前記した実験結果として、50型の画像モニタの場合の再撮影像用モアレ解消フィルタ111a(111)を構成している低域通過フィルム103a(103)の光を拡げる特性の最適角は約10度付近(7度〜13度の範囲)であり、16型の画像モニタの場合の再撮影像用モアレ解消フィルタ111b(111)を構成している低域通過フィルム103b(103)の光を拡げる特性の最適角は約30度付近(21度〜39度の範囲)であった。これはそれぞれ最適な光を拡げる特性の角度は約3倍となっていて、画素ピッチの約3倍の関係と相関があることを示している。
したがって、画像モニタの画面の大きさによって画素ピッチが密集すると、それに比例して低域通過フィルム103の光を拡げる特性あるいは低域通過特性を変える必要があることを意味している。
【0039】
それは、16型画像モニタが50型画像モニタの約3倍画素ピッチが密集しており、1画素に注目すると、16型の方が約1/3、小さいことになる。50型で低域通過フィルム103a(103)の光を拡げる特性の最適角約10度で光を拡げてカメラに届く光の範囲を、約1/3、画素が小さい16型で同等とする場合、光を拡げる角度を約3倍程度にする必要があることは計算からも成り立つ。
【0040】
なお、低域通過フィルム103の光を拡げる特性を必要以上に高めると、モニタの解像度が低下する。例えば前記したように50型画像モニタは再撮影像用モアレ解消フィルタ111a(111)を構成している低域通過フィルム103a(103)の光を拡げる特性の角度は約10度付近の特性でモアレは発生しない。また、16型画像モニタに用いる光を拡げる特性の角度が約30度付近の低域通過フィルム103b(103)の再撮影像用モアレ解消フィルタ111b(111)を50型画像モニタに使用してもモアレは発生しないが、画像モニタの解像度は低下する。したがって、一般にN型画像モニタにおいて、モアレの発生条件と解像度の関係から最適な再撮影像用モアレ解消フィルタ111の低域通過フィルム103の光を拡げる特性の最適角度がある。
【0041】
一般に、N型の画像モニタに用いる再撮影像用モアレ解消フィルタの低域通過フィルムの光を拡げる特性の角度(図3の角度θ)は50型の画像モニタに用いる再撮影像用モアレ解消フィルタ111の低域通過フィルム103の光を拡げる特性の角度に対して(50/N)倍必要なことが前記したように実験的にも確認されている。
また、前記したように50型の画像モニタに用いる再撮影像用モアレ解消フィルタ111a(111)の低域通過フィルム103a(103)のほぼ最適な光を拡げる特性の角度は約10度であるので、一般のN型(Nインチ)画像モニタ用の再撮影像用モアレ解消フィルタの光を拡げる特性の最適な角度は50インチモニタを基準としてNインチモニタにおいては画面の大きさに反比例するので、最適な角度の大きさθはほぼ
θ=10×(50/N)
=500/N
と表現される。なお単位は角度の[度]である。
【0042】
なお、以上は50型画像モニタのデータを基にしてはいるが、モニタ画面の大きさを表すNと、光を拡げる特性の角度θは反比例していることは前記した実験結果でも確認されているので、前記光を拡げる特性の最適な角度θを表す式は50型画像モニタだけの実験結果から得られた特殊な関係式ではなく、一般のN型画像モニタ用に適用できる関係式である。
なお、モアレを解消できる光の角度には範囲があることが、実験的にも分っており、500/Nで算出した角度に対して±30%の特性の範囲により解消されるものである。また最適な範囲としては、500/Nで算出した角度の±15%の範囲である。光の角度が(500/N)±30%を越えると再撮するときに映像が次第に不明確となってしまう。
【0043】
(第2実施形態)
第2の実施形態を図4を参照して説明する。
図4に示すように、再撮影像用モアレ解消フィルタ411は、画像モニタ202から入射した映像の光を拡げ高周波成分を減少させて出射する低域通過フィルム103と、照明の反射を抑えるための反射防止フィルム101と、乱反射を抑制するための反射防止フィルム404と、反射防止フィルム101と404および低域通過フィルム103を支持、固定する固定板(支持体)102と、から構成されている。
ここで、低域通過フィルム103と反射防止フィルム101と固定板102およびフィルタ外枠210は、それぞれ第1の実施形態における低域通過フィルム103と反射防止フィルム101と固定板102およびフィルム外枠210に対応しており同様の機能を有しているので、その説明は省略する。
【0044】
また、反射防止フィルム404は、反射防止フィルム101と低域通過フィルム103の間に位置し、低域通過フィルム103から来た映像を通過させて、反射防止フィルム101とテレビカメラ203に出射すると共に、外部からの照明が低域通過フィルム103により乱反射するのを抑える役目をしている。
【0045】
(第3実施形態)
第3の実施形態を図5を参照して説明する。
図5に示すように、再撮影像用モアレ解消フィルタ511は、画像モニタ202から入射した映像の光を拡げ高周波成分を減少させて出射する低域通過フィルム103と、照明の反射を抑えるための反射防止フィルム101と、乱反射を抑制するための偏光フィルム505と、反射防止フィルム101と偏光フィルム505と低域通過フィルム103を支持、固定する固定板(支持体)102と、から構成されている。
ここで、低域通過フィルム103と反射防止フィルム101と固定板102とおよびフィルム外枠210は、それぞれ第2の実施形態における低域通過フィルム103と反射防止フィルム101と固定板102とおよびフィルム外枠210に対応しており同様の機能を有している。
偏光フィルム505は第2の実施形態における反射防止フィルム404に置き換わったものである。ただし、機能として、偏光フィルム505は外部からの照明が低域通過フィルム103により乱反射するのを抑える役目をしていて、第2の実施形態における反射防止フィルム404とほぼ同様のものである。そのため説明は省略する。
なお、反射防止フィルム101は前記したように外部照明が入射して映像を擾乱するのを防止しているので、TVスタジオなどで外部照明が強く当たるような過酷な環境でない場合においては、構成要素として不要となる。
【0046】
(その他の実施形態)
本発明は前記の各実施形態に限定されるものではない。
例えば、図1においては、再撮影像用モアレ解消フィルタ111をテレビカメラ203側から順に、反射防止フィルム101、固定板102、低域通過フィルム103の構成を示したが、テレビカメラ203側から順に、低域通過フィルム103、固定板102、反射防止フィルム101の構成でもよい。
【0047】
また図1において、テレビカメラ203側から順に、低域通過フィルム103、固定板102のみでもよい。この構成は反射防止フィルム101を省略したものであるが、前記したように外部照明の影響の少ない環境では充分に機能する。以下同様である。
【0048】
また、図5においては、再撮影像用モアレ解消フィルタ511はテレビカメラ203側から順に、反射防止フィルム101、固定板102、偏光フィルム505、低域通過フィルム103の構成を示したが、テレビカメラ203側から順に、低域通過フィルム103、固定板102、偏光フィルム505の構成でもよい。
【0049】
また、テレビカメラ203側から順に、低域通過フィルム103、偏光フィルム505、固定板102、反射防止フィルム101の構成でもよい。
【0050】
また、テレビカメラ203側から順に、低域通過フィルム103、固定板102、偏光フィルム505、反射防止フィルム101の構成でもよい。
【0051】
また、本発明の再撮影像用モアレ解消フィルタに使用される固定板は、アクリル板を例にあげて前記したが、透明であれば他のプラスチックでもよいし、ガラスや、あるいは有機樹脂であってもよい。
【0052】
また、前記支持体である固定板は「板」と表現し、平面状を示唆したが、支持体として機能するのであれば、必ずしも平面的な板に限らない。外側に枠だけを設けた「固定枠」であってもよい。
また、固定板102では板と枠は別々に成形し、後で組み立てる例をとっていたが、固定板102は図1に示したフィルタ外枠210と一体成型されたものでもよい。
【0053】
また、フィルタ外枠210は画像モニタ202に係止する際の手段として、図1、図4、図5においては、フックを例示したが、図6に示すように金属またはプラスチックからなる二段に折り曲げた形状の留め具601、602のいずれかを用いる方法もある。これらは図6(b)に示すように、画像モニタ202の少なくとも下部および上部に、留め具601の二段に折り曲げた形状の一端を画像モニタ202に固定し、他端に再撮影像用モアレ解消フィルタ111を載せ、もしくは押さえて使用する。また、図6(b)では上下に留め具601を用いる方法を示したが、さらに左右の一方または両方においても留め具601を用いて確実に係止する方法もある。また、留め具601は左右のみに用い、上下には用いない方法もある。
なお、画像モニタ202や再撮影像用モアレ解消フィルタ111の大きさ、形状により、留め具602に示すような小型の留め具で充分に機能を果たす場合もある。これらの止め具601、602で画像モニタ202に再撮影像用モアレ解消フィルタ111が取り付けられたとき、再撮影像用モアレ解消フィルタ111面と画像モニタ202面とが当接する状態となる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の再撮影像用モアレ解消フィルタは放送局のニューススタジオでの「再撮」における、テレビ画像やPC画像のモニタ用のモアレ解消フィルタとして広く用いられる可能性がある。
また、一般家庭や業務用としても、大画面のモニタやハンディカメラが広く普及していくなかで、放送局以外においても「再撮」の機会が増大し、家庭用や業務用としてモニタに使用されていく可能性がある。
【符号の説明】
【0055】
101、404 反射防止フィルム
103 低域通過フィルム
102 固定板(支持体)
111、411、511 再撮映像用モアレ解消フィルタ
505 偏光フィルム
202 画像モニタ
203 テレビカメラ
210 フィルタ外枠
601、602 留め具
711、712 画像モニタの画素ピッチ
721、722 テレビカメラの画素ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像モニタの映像をテレビカメラで撮影する際の画像モニタの画面に装着してモアレを解消する再撮映像用モアレ解消フィルタであって、
前記画像モニタから入射した映像の光を拡げ高周波成分を減少させて出射する低域通過フィルムと、前記低域通過フィルムを固定する支持体と、を有し、
前記画像モニタの画面の大きさがN(Nは正の数)型画像モニタである場合には前記低域通過フィルムの特性が、入射した光を拡げる角度を(500/N)度、で求めた角度の±30%の範囲となる角度に設定した、ことを特徴とする再撮影像用モアレ解消フィルタ。
【請求項2】
画像モニタの映像をテレビカメラで撮影する際の画像モニタの画面に装着してモアレを解消する再撮映像用モアレ解消フィルタであって、
前記画像モニタから入射した映像の光を拡げ高周波成分を減少させて出射する低域通過フィルムと、照明の反射を抑えるための反射防止フィルムと、前記低域通過フィルムと前記反射防止フィルムを固定する支持体と、を有し、
前記画像モニタの画面の大きさがN(Nは正の数)型画像モニタである場合には前記低域通過フィルムの特性が、入射した光を拡げる角度を(500/N)度、で求めた角度の±30%の範囲となる角度に設定した、ことを特徴とする再撮影像用モアレ解消フィルタ。
【請求項3】
画像モニタの映像をテレビカメラで撮影する際の画像モニタの画面に装着してモアレを解消する再撮映像用モアレ解消フィルタであって、
前記画像モニタから入射した映像の光を拡げ高周波成分を減少させて出射する低域通過フィルムと、乱反射を抑制するための偏光フィルムと、前記低域通過フィルムと前記偏光フィルムを固定する支持体と、を有し、
前記画像モニタの画面の大きさがN(Nは正の数)型画像モニタである場合には前記低域通過フィルムの特性が、入射した光を拡げる角度を(500/N)度、で求めた角度の±30%の範囲となる角度に設定した、ことを特徴とする再撮影像用モアレ解消フィルタ。
【請求項4】
画像モニタの映像をテレビカメラで撮影する際の画像モニタの画面に装着してモアレを解消する再撮映像用モアレ解消フィルタであって、
前記画像モニタから入射した映像の光を拡げ高周波成分を減少させて出射する低域通過フィルムと、照明の反射を抑えるための反射防止フィルムと、乱反射を抑制するための偏光フィルムと、前記低域通過フィルムと前記反射防止フィルムと前記偏光フィルムを固定する支持体と、を有し、
前記画像モニタの画面の大きさがN(Nは正の数)型画像モニタである場合には前記低域通過フィルムの特性が、入射した光を拡げる角度を(500/N)度、で求めた角度の±30%の範囲となる角度に設定した、ことを特徴とする再撮影像用モアレ解消フィルタ。






【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−243864(P2010−243864A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93567(P2009−93567)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(509101011)株式会社 東京シスコン (1)
【Fターム(参考)】