説明

再生可能な資源に基づくポリオールの製造方法

【課題】ポリウレタンアプリケーションのための、再生可能な原料に基づく、より詳細には、天然油脂及び脂肪酸誘導体に基づくポリオールであって、低コストで利用可能であり、且つ反応媒介変数に対する非常に単純な適応がそのポリオールに非常に広範な官能価を含ませることを可能とする場合には、それゆえ、幅広い範囲でのアプリケーションのための製品を製造することを可能とするポリオールを提供すること。
【解決手段】上記課題は、最初の工程で、大豆油、ひまわり油、菜種油、ヒマシ油又は対応する脂肪酸誘導体等の不飽和天然油脂を、笑気ガスとも呼ばれる一酸化二窒素の存在下で酸化に付してケトン化油脂及び脂肪酸誘導体を生成し、及び更なる反応工程で、これらの生成物を、水素及び不均一触媒の存在下で還元に付してヒドロキシル油脂を得る方法により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然油に基づくポリオールの製造方法、より詳細には、ポリウレタンの製造のための、天然油に基づくポリオールの製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは多くの技術分野で用いられる。通常、それらは、発泡剤、及び任意に触媒及び慣用される助剤、及び/又は補助物質の存在下で、ポリイソシアネートをイソシアネート基と反応性である少なくとも2個の水素原子を有する化合物と反応させることにより製造される。
【0003】
最近では、再生可能な原料に基づくポリウレタンの出発成分の重要性が増大している。より詳細には、イソシアネート基と反応性である少なくとも2個の水素原子を有する化合物の場合、イソシアネート基と反応性の少なくとも2個の水素原子を導入するために、ポリウレタンアプリケーションに使用される前に通常化学的に変性される天然油脂を使用することが可能である。一般に、化学的変性の間、天然脂肪及び/又は油はヒドロキシル官能化され、及び任意に一以上のさらなる工程で変性される。PU系でのヒドロキシル官能化脂肪誘導体及び/又は油誘導体のアプリケーションの例は、例えば、WO2006/116456及びWO2007/130524を含む。
【0004】
ポリウレタン産業での使用のために必要とされるその反応性水素原子は、上述のように化学的方法を用いて天然油の大部分に導入されなければならない。この目的のために、最先端の技術に従って、実質的に、多くの油の脂肪酸エステル中に生じる二重結合を利用する方法が存在する。最初に、脂肪が対応する脂肪エポキシド又は脂肪酸エポキシドへと触媒の存在下で過カルボン酸との反応により酸化され得る。その後のアルコール、水、カルボン酸、ハロゲン又はハロゲン化水素の存在下におけるオキシラン環の酸触媒又は塩基触媒開環がヒドロキシル官能化油脂又は脂肪酸誘導体の形成をもたらすことが、例えば、WO2007/127379及びUS2008076901にそれぞれ記載されている。この方法の不具合は、その最初の反応工程(エポキシ化(expoxidation))が腐食性の過ギ酸を用いることにより、又は過酢酸を用いることにより工業的に実施されるので、その反応工程が高耐食性材料の使用を要求することである。製造後、さらに、経済的な手順のために、得られた薄い過カルボン酸が蒸留により濃縮され、そして再利用されなければならず、それゆえに、これは、よりエネルギー多消費且つコストのかかる耐腐食性蒸留装置の使用を必要とする。
【0005】
ヒドロキシル官能化のための他の可能性は、最初の反応工程で不飽和脂肪又は脂肪酸誘導体を、コバルトを含むか、若しくはロジウムを含む触媒の存在下で、最初に一酸化炭素と水素(合成ガス)の混合物でのヒドロホルミル化に付し、その後に好適な触媒(ラネーニッケル等)を用いて、この反応工程においてヒドロキシル基を導入してアルデヒド基をヒドロキシル化に付すことである(WO2006/12344A1又はJ.Mol.Cat.A,2002,184,65及びJ.Polym.Environm.2002,10,49参照)。しかしながら、この反応経路では、最初の反応工程、ヒドロホルミル化が、少なくとも触媒及び溶媒の使用を要求するので、経済的な製造のためには、それらは同様に再び取り戻され、そして処理又は再生されなければならないことに留意しなければならない。
【0006】
EP1170274A1には、大気酸素の存在下で不飽和油の酸化によりヒドロキシル化油(hydroxyl oil)を製造する方法が記載されている。不具合は、この方法では得られた官能化の程度が高くはなく、その反応が脂肪構造の部分的な分解につながる高い温度で行われなければならないことである。さらなる油脂へのヒドロキシル基の導入の可能性は、オゾンの存在下での脂肪又は脂肪酸誘導体の切断、及びその後のヒドロキシ脂肪誘導体の形成のための還元の実施である(Biomacromolecules 2005,6,713;J.Am.Oil Chem.Soc.2005,82,653及びJ.Am.Oil Chem.Soc.2007,84,173参照)。この方法は溶媒中で行われなければならず、且つ一般的に低温(−10〜0℃)で実施されるので、同様に比較的高い製造コストを結果として生じさせる。さらに、この方法の安全特性は、計測・制御技術や区画化等の安全対策のコストのかかる対策を要求する。
【0007】
Adv.Synth.Catal.2007,349,1604には、笑気ガスを用いた油脂のケトン化が記載されている。ケトン基は、均一触媒を用いてヒドロキシル基へと転化させることができる。しかしながら、これらの製品のさらなる処理については全く参照が無い。
【0008】
ポリウレタンのための再生可能な原材料に基づくポリオールの製造のための一つの可能性は、大豆油、ヒマワリ油、菜種油等の不飽和天然油脂、又は脂肪酸若しくはそれらのモノエステル等の対応する脂肪酸誘導体を、対応する誘導体化により反応させてヒドロキシ官能化油脂及び脂肪酸誘導体をそれぞれ得ることである。これらの原料は、ヒドロキシ官能化脂肪又は脂肪酸誘導体のOH基へのアルカリ性酸化物の追加の付加の後に、直接又は二者択一的に対応するPUアプリケーションのために用いることができる。ヒドロキシ脂肪酸誘導体のアルカリ性酸化物との反応及びポリウレタンアプリケーションでのその反応生成物の使用の例は、WO2007/143135及びEP1537159等で知ることができる。ここで、その付加反応は、多くの場合、二重金属シアン化物触媒として知られる触媒を用いることで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2006/116456
【特許文献2】WO2007/130524
【特許文献3】WO2007/127379
【特許文献4】US2008076901
【特許文献5】WO2006/12344A1
【特許文献6】EP1170274A1
【特許文献7】WO2007/143135
【特許文献8】EP1537159
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J.Mol.Cat.A,2002,184,65
【非特許文献2】J.Polym.Environm.2002,10,49
【非特許文献3】Biomacromolecules 2005,6,713
【非特許文献4】J.Am.Oil Chem.Soc.2005,82,653
【非特許文献5】J.Am.Oil Chem.Soc.2007,84,173
【非特許文献6】Adv.Synth.Catal.2007,349,1604
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ポリウレタンアプリケーションのための、再生可能な原料に基づく、より詳細には、天然油脂及び脂肪酸誘導体に基づくポリオールであって、低コストで利用可能であり、且つ反応媒介変数に対する非常に単純な適応がそのポリオールに非常に広範な官能価を含ませることを可能とする場合には、それゆえ、幅広い範囲でのアプリケーションのための製品を製造することを可能とするポリオールを提供することであった。より詳細には、高コストな原料(触媒及び溶媒)を用いることなく単純な方法によりその油脂は製造可能であるべきである。同時に、その反応生成物から単純な方法で触媒が除去可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、最初の工程で、大豆油、ひまわり油、菜種油、ヒマシ油又は対応する脂肪酸誘導体等の不飽和天然油脂を、笑気ガスとも呼ばれる一酸化二窒素の存在下で酸化に付してケトン化油脂及び脂肪酸誘導体を生成し、及び更なる反応工程で、これらの生成物を、水素及び不均一触媒の存在下で還元に付してヒドロキシル油脂を得ることにより達成される。
【0013】
したがって、本発明は、
a)不飽和天然油脂、不飽和天然脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルを一酸化二窒素と反応させる工程、
b)工程a)で得られた生成物を不均一触媒を用いて水素と反応させる工程
を含む、再生可能な原料に基づくポリオールの製造方法を提供する。
【0014】
これらの材料は、アプリケーションの非常に広範な範囲に亘って、例えば、対応するPUアプリケーションでポリオール成分として直接用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
天然不飽和油脂は、好ましくは、ヒマシ油、ブドウ種子油、ブラッククミンオイル、カボチャ種子油、ルリヂサ種子油、大豆油、小麦胚芽油、菜種油、ヒマワリ油、ピーナッツ油、杏仁油、ピスタチオ油、アーモンド油、オリーブ油、マカダミアナッツ油、アボカド油、シーバックソーン油、胡麻油、大麻油、ヘーゼルナッツ油、サクラソウ油、野薔薇油、サフラワー油、くるみ油、パーム油、魚油、ココナッツ油、トール油、トウモロコシ胚芽油、亜麻仁油を含む群から選択される。
【0016】
好ましい脂肪酸及び脂肪酸エステルは、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、ペトロセリン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、α−及びγ−リノレン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、ティムノドン酸、クルパノドン酸及びセルボン酸、並びにそれらのエステルからなる群から選択されるものである。
【0017】
脂肪酸エステルとしては、完全にエステル化されたものだけでなく、部分的にエステル化された一価アルコール又は多価アルコールもまた用いることができる。意図される一価又は多価アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、及びマンノースを含む。
【0018】
ヒマシ油、大豆、パーム、ヒマワリ及び菜種油を含む群から選択される天然の、不飽和油脂を用いることが特に好ましい。より詳細には、大豆、パーム、ヒマワリ及び菜種油が用いられる。これらの化合物は工業規模で、少なからず、同様にバイオディーゼルの生産のために使用される。
【0019】
上述の油に加えて、異なる脂肪酸組成を有する遺伝子組換え植物から得られたこれらの油もまた使用可能である。上述の油に加えて、上記のように、その対応する脂肪酸又は脂肪酸エステルを使用することも同様に可能である。
【0020】
反応工程a)及びb)は、お互いに独立して、及びまた任意に場所と時間に関して別々に実施することができる。しかしながら、三つの方法工程をお互いのすぐ後に実施することも可能である。この文脈において、その方法を完全に連続的に実施することもまた可能である。
【0021】
工程a)は、好ましくは、超大気圧下で、より詳細には、1〜30MPa(10〜300bar)の範囲の圧力下で、且つ高温で、より詳細には、200〜350℃の範囲の温度で実施される。ここで、油若しくは脂肪を塊で、又はシクロヘキサン、アセトン若しくはメタノール等の好適な溶媒での溶液中で使用することができる。その反応は、所望の設計の撹拌反応器中で、又は管型反応器中で行うことができる;原則として、所望の他の反応系での反応が可能である。使用される笑気ガスは、純粋物質として、又は窒素、ヘリウム、アルゴン若しくは二酸化炭素等の、反応条件下で不活性なガスとの混合物として用いることができる。この場合、不活性ガスの量は50体積%以下である。
【0022】
反応の終了後の反応混合物のさらなる処理のために、反応混合物は冷却され、必要であれば蒸留又は抽出等の手段により溶媒が除去される。そして、生成物はさらなる後工程と共に、又は後工程を伴うことなく工程b)へと供給される。
【0023】
工程a)からの反応生成物は工程b)で水素化される。これも、一般的な公知の方法に従って行われる。この目的のために、好ましくは工程a)からの精製された有機相が水素と、好ましくは、好適な溶媒の存在下で反応する。この目的のために、有機相は、5〜30MPa(50〜300bar)、より詳細には9〜15MPa(90〜150bar)の圧力下で、且つ50〜250℃、より詳細には50〜120℃の温度で水素化触媒の存在下に反応する。水素化触媒は不均一触媒である。ルテニウムを含む触媒を用いることが好ましい。ルテニウムの他には、触媒はまた、ニッケル、コバルト、銅、モリブデン、パラジウム又は白金等の6−11族からの金属である他の金属を含んでいても良い。
【0024】
触媒は好ましくは担体上に施される。使用可能な担体は、酸化アルミニウム又はゼオライト等の一般的な担体である。本発明の好ましい一実施の形態では、炭素が担体材料として用いられる。
【0025】
触媒は湿性でも良い。水素化は固定床で好ましくは実施される。
【0026】
水素化の後、有機溶媒、触媒、及び必要であれば水が除去される。生成物は必要に応じて精製される。
【0027】
手順上の工程a)で使用された天然脂肪及び脂肪酸誘導体に応じて、手順上の工程b)からのポリオールは、2〜6の、より詳細には2〜4の平均官能価、及び50と300mgKOH/gの間の範囲の水酸基価を有する。その構造は、より詳細にはポリウレタン製造のために、より詳細には軟質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム及びポリウレタン塗膜のために好適である。硬質ポリウレタンフォーム及びポリウレタン塗膜の製造には、原則として、アルキレンオキシドの付加反応がなされていないポリオール、すなわち、再生可能な原料に基づいており、且つ方法工程a)及びb)の履行のみにより製造されたポリオールもまた用いることが可能である。軟質ポリウレタンフォームの製造の過程では、この種類の化合物は、その低鎖長のために不必要な架橋をもたらし、それゆえに好適ではない。
【0028】
ポリウレタンは、本発明の方法により生成されたポリエーテルアルコールをポリイソシアネートと反応させることにより製造される。
【0029】
本発明のポリウレタンは、イソシアネート基と反応性の少なくとも2個の水素原子を有する化合物とのポリイソシアネートの反応により製造される。そのフォームの製造の場合には、反応は発泡剤の存在下で行われる。
【0030】
使用される出発化合物は、以下の特定の備考に属する;
意図されるポリイソシアネートは、従来の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族を含み、好ましくは、芳香族多官能イソシアネートを含む。
【0031】
具体的な例は、以下のものを含む:すなわち、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート等の、アルキレン基中に4〜12個の炭素原子を有するアルキレンジイソシアネート;シクロヘキサン−1,3−及び−1,4−ジイソシアネート、及びまたこれらの異性体の所望の混合物、ヘキサヒドロトルエン2,4−及び2,6−ジイソシアネート、及びまたその対応する異性体混合物、ジシクロヘキシルメタン4,4’−,2,2’−及び2,4’−ジイソシアネート、及びまたその対応する異性体混合物等の脂環式ジイソシアネート、キシリレン1,4−ジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート異性体混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネートを含む。しかし、好ましくは、トリレン2,4−及び2,6−ジイソシアネート(TDI)とその対応する異性体混合物、ジフェニルメタン4,4’−,2,4’−及び2,2’−ジイソシアネート(MDI)とその対応する異性体混合物、ジフェニルメタン4,4’−及び2,4’−ジイソシアネートとポリフェニル−ポリメチレンポリイソシアネートの混合物、ジフェニルメタン4,4’−,2,4’−及び2,2’−ジイソシアネートとポリフェニル−ポリメチレンポリイソシアネート(粗MDI)の混合物、並びに粗MDIとトリレンジイソシアネートの混合物等の芳香族ジイソシアネート及びポリイソシアネートを含む。有機ジイソシアネート及びポリイソシアネートは別々に、又は混合物の形態で用いることができる。
【0032】
また、有機ジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートの化学反応により得られる生成物である、いわゆる変性多官能イソシアネートの使用がしばしばなされる。例としては、イソシアヌレート基及び/又はウレタン基を含むジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートを含む。意図される具体例は、有機の、好ましくは、ポリイソシアネートの合計質量に対して33質量%〜15質量%、好ましくは31質量%〜21質量%のNCO含量を有し、ウレタン基を含む、芳香族のポリイソシアネートを含む。
【0033】
本発明の方法により製造されるポリオールは、イソシアネート基と反応性の少なくとも2個の水素原子を有する他の化合物との組み合わせで使用することができる。
【0034】
本発明の方法により製造されるポリオールと共に用いることができ、少なくとも2個のイソシアネート反応性水素原子を有する化合物としては、より詳細には、ポリエーテルアルコール及び/又はポリエステルアルコールが用いられる。
【0035】
硬質ポリウレタンフォームの製造の場合、少なくとも4の官能価と250mgKOH/gを超える水酸基価を有する少なくとも一種のポリエーテルアルコールを用いることが一般的である。
【0036】
本発明の方法により製造されるポリオールと共に使用されるポリエステルアルコールは、通常、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、及び、好ましくは、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及び異性体のナフタレンジカルボン酸等の、2〜12個の炭素原子、好ましくは、2〜6個の炭素原子を有する多官能アルコール、好ましくは、ジオールの、2〜12個の炭素原子を有する多官能カルボン酸との縮合により生成される。
【0037】
本発明の方法により製造されるポリオールと共に使用されるポリエステルアルコールは、通常、2及び8、より詳細には、4〜8の間の官能価を有する。
【0038】
より詳細には、アルカリ金属水酸化物の存在下でのアルキレンオキシドのアニオン重合等の公知の方法により製造されるポリエーテルポリオールのポリヒドロキシル化合物としての使用がなされる。
【0039】
使用されるアルキレンオキシドは、好ましくは、エチレンオキシド及び1,2−プロピレンオキシドである。そのアルキレンオキシドは別々に、交互に連続して、又は混合物として使用することができる。
【0040】
意図される出発分子の例は、以下のものを含む:水;コハク酸、アジピン酸、フタル酸及びテレフタル酸等の有機ジカルボン酸;例えば、任意にモノ−及びジアルキル置換されたエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,3−及び/又は1,4−ブチレンジアミン、1,2−,1,3−,1,4−,1,5−及び1,6−ヘキサメチレンジアミン、アニリン、フェニレンジアミン、2,3−,2,4−,3,4−及び2,6−トリレンジアミン、並びに4,4’−,2,4’−及び2,2’−ジアミノジフェニルメタン等のアルキル基中に1〜4個の炭素原子を有する、脂肪族及び芳香族の、任意にN−モノ−,N,N−及びN,N’−ジアルキル置換されたジアミンである。
【0041】
意図されるさらなる出発分子は以下のものを含む:エタノールアミン、N−メチル−及びN−エチルエタノールアミン等のアルカノールアミン、例えば、ジエタノールアミン、N−メチル−及びN−エチルジエタノールアミン等のジアルカノールアミン、例えば、トリエタノールアミン等のトリアルカノールアミン、及び、例えば、アンモニアである。
【0042】
さらに、多価アルコール、より詳細には、エタンジオール、プロパン−1,2−及び−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びスクロース等の二価及び/又は三価アルコール;4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン及び2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の多価フェノール;例えば、フェノールとホルムアルデヒドのオリゴマーの縮合生成物、及びフェノール、ホルムアルデヒド及びジアルカノールアミンのマンニッヒ縮合物等のレゾール;並びにメラミンの使用がなされる。
【0043】
ポリエーテルポリオールは好ましくは3〜8の、より詳細には3及び6の官能価、及び120mgKOH/g〜770mgKOH/gの、及びより詳細には240mgKOH/g〜570mgKOH/gの水酸基価を有する。
【0044】
また、イソシアネート基と反応性の少なくとも2個の水素原子を有する化合物は、任意に共同使用される鎖延長剤と架橋剤を含む。しかしながら、機械的特性を変更させるために、二官能性の鎖延長剤、3以上の官能価を有する架橋剤又は任意にそれらの混合物の添加が有利であるとわかることが多い。使用される鎖延長剤及び/又は架橋剤は、好ましくはアルカノールアミンであり、及びより詳細には400未満、好ましくは60〜300の分子量を有するジオール及び/又はトリオールである。
【0045】
鎖延長剤、架橋剤又はそれらの混合物がポリウレタンの製造の際に使用される場合、それらは、通常、イソシアネート基と反応性の少なくとも2個の水素原子を有する化合物の質量に対して0〜20質量%、好ましくは2〜5質量%の量で用いられる。
【0046】
発泡剤としては、イソシアネート基との反応で二酸化炭素を排除する水等を用いることができる。代わりに、しかし好ましくは水との組み合わせで、いわゆる物理的発泡剤を使用することもまた可能である。これらは、原料の成分に対して不活性であり、そして通常室温で液状であるが、ウレタン反応の条件下で気化する化合物である。これらの化合物の沸点は好ましくは110℃未満であり、より詳細には80℃未満である。物理的発泡剤はまた、原料の成分に導入されるか、又はその中に溶解する二酸化炭素、窒素若しくは希ガス等の不活性ガスを含む。
【0047】
室温で液状の化合物は、通常、少なくとも4個の炭素原子を有するアルカン及び/又はシクロアルカン、ジアルキルエーテル、エステル、ケトン、アセチル、1〜8個の炭素原子を有するフルオロアルカン、及びアルキル鎖中に1〜3個の炭素原子を有するテトラアルキルシラン、より詳細にはテトラメチルシランを含む群から選択される。
【0048】
例としては、対流圏で分解することができ、それゆえ、トリフルオロメタン、ジフルオロメタン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2−テトラフロオロエタン、ジフルオロエタン及びヘプタフルオロプロパン等のようにオゾン層に対して有害ではないプロパン、n−ブタン、イソブタン、シクロブタン、n−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルブチルエーテル、ギ酸メチル、アセトン、及びまたフロオロアルカンを含む。上記の物理的発泡剤は、単独で、又はお互いに所望の組み合わせで使用しても良い。
【0049】
使用される触媒は、より詳細には、イソシアネート基の、イソシアネート基と反応性の基との反応を大幅に加速させる化合物である。より詳細には有機金属化合物、好ましくは、有機酸のスズ(II)塩等の有機スズ化合物の使用がなされる。
【0050】
触媒としては、強塩基性アミンを付加的に使用することができる。それらの例は、二級脂肪族アミン、イミダゾール、アミジン、トリアジン及びアルカノールアミンである。要求に応じて、触媒を単独で、又はお互いに所望の混合物として用いることができる。
【0051】
使用される助剤及び/又は補助物質は、この目的のためにそれ自体公知の物質であり、例えば、界面活性剤、整泡剤、気泡調整剤、充填剤、顔料、染料、難燃剤、加水分解抑制剤、帯電防止剤、及び静真菌性と静菌活性を有する剤である。
【0052】
本発明の方法の履行のために使用される出発材料、発泡剤、触媒、及び助剤及び/又は補助物質についてのより詳細な情報は、Kunststoffhandbuch,7巻、“Polyurethane”Carl−Hanser−Verlag Munich,第1版、1966年、第2版、1983年、第3版、1993年等に記載されている。
エポキシ化/開環及びヒドロホルミル化/水素化に亘る本発明の方法の利点は、ケトン化の手順がいかなる溶媒又はいかなる触媒を必要としないことである。したがって、比較的低コストなヒドロキシ官能化油脂及び脂肪酸誘導体の利用が可能となる。加えて、圧力、温度及び滞留時間等の反応条件の単純な適応を通じて、官能価を非常に簡単に、且つ狙いを定めた方法で調整することができる。それにより、ポリウレタンのアプリケーションを越えさえもする、アプリケーションのための非常に広範な可能性をもたらす材料の入手を提供する。
【0053】
エポキシ化及びオゾン分解と比較して、本方法は、水酸基化の程度を自由に調整可能である一方で、もはや二重結合を含まず、それゆえもはや通常の油脂の老化の過程(二重結合(DBs)の酸化“悪臭がするようになること”)を受けないオリゴヒドロキシ油脂を生成するという利点を提供する。エポキシ化及びオゾン分解の場合、これは完全な転化の場合にのみ達成されるが、しかしながら、これは官能化の程度を低くさせる。
ヒドロホルミル化と比較して、笑気ガスでの酸化は相補的な反応性を有する材料の製造を許す。なぜなら、この場合、ヒドロホルミル化が一級OH基を生成するのに対してもっぱら二級水酸基が生成されるからである。
【0054】
本発明を以下の実施例を用いて詳説する。
【実施例】
【0055】
実施例1:笑気ガスでの大豆油の酸化
1.2L容の鋼オートクレーブに260gの大豆油を充填し、それから密封し、窒素で不活化した。5MPa(50bar)の笑気ガスを注入し、攪拌機を700rpmにセットし、そしてスイッチを入れ、続いて反応混合物を220℃へと加熱した。22時間の運転時間の後に、室温へと冷却し、攪拌機のスイッチを切り、オートクレーブを雰囲気圧力へとゆっくりと減圧させた。溶媒の除去の後、黄色がかった液体排出物を分析した。
【0056】
分析データ:臭素価 36g臭素/100g、カルボニル価 173mgKOH/g、エステル価 196mgKOH/g、酸価 1.8mgKOH/g。元素分析:C=73.6%、H=10.8%、O=15.1%。
【0057】
実施例2:笑気ガスでの大豆油の酸価
1.2L容の鋼オートクレーブに172gの大豆油及び172gのシクロヘキサンを充填し、それから密封し、窒素で不活化した。2MPa(20bar)の笑気ガスを注入し、攪拌機を700rpmにセットし、スイッチを入れ、続いて反応混合物を220℃へと加熱した。36時間の運転時間の後に、室温へと冷却し、攪拌機のスイッチを切り、オートクレーブを雰囲気圧力へとゆっくりと減圧させた。溶媒の除去後に、黄色がかった液体排出物を分析した。
【0058】
分析データ:臭素価 57g臭素/100g、カルボニル価 64mgKOH/g、エステル価 196mgKOH/g、酸価 1.8mgKOH/g。元素分析:C=75.6%、H=11.5%、O=13.4%。
【0059】
実施例3:管型反応器における笑気ガスでの大豆油の酸化
管型反応器(内部容積210mL、滞留時間約50分)中で、290℃、10MPa(100bar)で、50質量%の大豆油と50質量%のシクロヘキサンの混合物130g/hを45g/hの笑気ガスと反応させた。反応排出物を容器に移し、反応排出物の液体画分を冷却し、シクロヘキサンを蒸留により除去した。黄色がかった液体排出物を分析した。
【0060】
分析データ:臭素価54g 臭素/100g、カルボニル価 81mgKOH/g、エステル価 199mgKOH/g、酸価 2.6mgKOH/g。元素分析:C=75.0%、H=11.1%、O=13.7%。
【0061】
全ての実施例で使用した大豆油は、80g臭素/100gの臭素価、1mgKOH/100gのカルボニル価、192mgKOH/gの鹸化価、及び0.1mgKOH/g未満の酸化を有するAldrichからの市販製品であった。元素分析は、C=77.6%、H=11.7%、O=11.0%を示した。
【0062】
実施例4:実施例2からの酸化した大豆油の水素化
300mL容の鋼オートクレーブに、100mLのテトラヒドロフラン中に実施例2からの酸化した大豆油溶液20g(カルボニル価 64mgKOH/100g、OH価 5mgKOH/1g未満、臭素価 57g臭素/100g)を、湿性の、炭素担体上の5%ルテニウム触媒2gと共に充填した。120℃へと加熱し、12MPa(120bar)の水素を注入した。これらの媒介変数と共に、攪拌を12時間実施した。それから反応混合物を冷却し、減圧した。排出物をろ過し、蒸留により溶媒を除去した。固体(バターのような)残渣の分析は、64のOH価、5未満のカルボニル価、及び5未満の臭素価を示した。
【0063】
実施例5:実施例3からの酸化した大豆油の水素化
300mL容の鋼オートクレーブに、100mLのテトラヒドロフラン中に酸化した大豆油の溶液20g(カルボニル価=81、臭素価=54)を、Alに坦持された湿性のルテニウム触媒(0.5%)20gと共に充填した。120℃へと加熱し、10MPa(100bar)の水素を注入した。これらの媒介変数と共に、12時間の攪拌を実施した。その後、反応混合物を冷却し、減圧した。反応排出物をろ過し、その後、溶媒を蒸留により除去した。固体(バターのような)残渣の分析は、80のOH価、5未満のカルボニル価、及び5未満の臭素価を示した。
【0064】
実施例5のポリオールを、首尾よくポリウレタン塗膜の処方に用いた。その場合、その塗膜は注目に値する非常に高い撥水性であった。
【0065】
実施例6:実施例1からの酸化した大豆油の水素化
300mL容の鋼オートクレーブに、100mLのテトラヒドロフラン中に実施例1からの酸化した大豆油溶液20g(カルボニル価=173、OH価 5未満、臭素価=36)を、湿性の、炭素担体上の5%のルテニウム触媒2gと共に充填した。120℃へと加熱し、12MPa(120bar)の水素を注入した。これらの媒介変数と共に、12時間の攪拌を実施した。その後、反応混合物を冷却し、減圧した。排出物をろ過し、その後、溶媒を蒸留により除去した。固体(バターのような)残渣の分析は、170のOH価、5未満のカルボニル価、及び5未満の臭素価を示した。
【0066】
実施例6からのポリオールを、硬質ポリウレタンフォームの処方で使用した。その場合、その系は使用したペンタン発泡剤との注目に値する優れた親和性を示すことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)不飽和天然油脂、不飽和天然脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルを一酸化二窒素と反応させる工程、
b)工程a)で得られた生成物を、不均一触媒を用いて水素と反応させる工程
を含むポリオールの製造方法。
【請求項2】
前記不飽和天然油脂及び油脂誘導体が、ヒマシ油、ブドウ種子油、ブラッククミンオイル、カボチャ種子油、ルリヂサ種子油、大豆油、小麦胚芽油、菜種油、ヒマワリ油、ピーナッツ油、杏仁油、ピスタチオ油、アーモンド油、オリーブ油、マカダミアナッツ油、アボカド油、シーバックソーン油、胡麻油、大麻油、ヘーゼルナッツ油、サクラソウ油、野薔薇油、サフラワー油、くるみ油、パーム油、魚油、ココナッツ油、トール油、トウモロコシ胚芽油、亜麻仁油を含む群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂肪酸及び脂肪酸エステルが、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、ペトロセリン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、α−及びγ−リノレン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、ティムノドン酸、クルパノドン酸及びセルボン酸、並びにこれらのエステルを含む群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記不飽和天然油脂が、大豆油、パーム油、ヒマワリ油、菜種油、及びヒマシ油を含む群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程a)において一酸化二窒素が、不活性ガスとの混合物で用いられる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程b)が、ルテニウムを含む触媒の存在下で実施される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒が、担体上に施される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
炭素が担体として用いられる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が固定床として使用される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに従って製造されたポリオール。
【請求項11】
請求項10に記載のポリオールをポリウレタンの製造のために使用する方法。
【請求項12】
ポリイソシアネートを、イソシアネート基と反応性の少なくとも2個の水素原子を有する化合物と反応させることによりポリウレタンを製造する方法であって、
請求項10に記載のポリオールをイソシアネート基と反応性の少なくとも2個の水素原子を有する化合物として使用することを特徴とする方法。

【公表番号】特表2012−532947(P2012−532947A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519003(P2012−519003)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059850
【国際公開番号】WO2011/003991
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】