説明

再生装置、プログラム、及び再生方法

【課題】再生装置において、高音質で再生したいために非圧縮や可逆圧縮又は高ビットレートで記録されているオーディオデータについては、そのファイル情報をユーザがいちいち確認する必要なく、高音質モードで再生することができるようにする。
【解決手段】再生装置において、所定の記憶手段に記憶されているオーディオデータの再生に際し、オーディオデータの音質を特定可能なデータを記憶手段から読み出す読出し手段(ステップ21)と、読出し手段が読み出した音質を特定可能なデータに基づき、オーディオデータを所定の高音質モードで再生するか否かを判定する判定手段(ステップ22、23)とを設ける。音質を特定可能なデータは、たとえば、オーディオデータのヘッダ部において記録されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオデータの再生に際し、該オーディオデータを所定の高音質モードで再生することができる再生装置及び再生方法、並びに該再生装置としてコンピュータを機能させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量のHDDやメモリを有するオーディオ再生装置の市場が拡大している。これらの記憶手段には、オーディオソースとして、各種音源から記録し又はネットワークを介して購入した、MP3形式やWMA方式、WAV形式等のファイルを記録することができる。その場合、各種ファイル形式や複数種類のビットレートによるものが混在して記録されることもある。一方、オーディオ再生装置としては、上記大容量のHDDやメモリを内蔵したものの他、大容量のHDDやメモリを有するポータブル再生装置を接続し、これが保持するデータをオーディオソースとして再生するものもある。
【0003】
さらに、これらのオーディオソースに基づく再生を可能な限り高音質で行う目的で、特許文献1のような技術も提案されている。この技術では、放送信号を受信する信号受信機能と音声再生機器からの音声信号を処理する音声信号処理機能とを有する音声再生装置において、放送信号を処理する必要が無い場合には、信号受信機能の電源を切断することによって、音声再生機器からの音声信号の音質の劣化を防ぎ、不要な輻射の発生を減少させるようにしている。
【0004】
また、高音質による再生を実現するために、ユーザ操作による高音質モードの選択手段を設け、高音質モードが選択された場合には、オーディオ信号の再生に不要な機能を停止させたり、不要な回路を迂回させたりすることにより、高音質なオーディオ再生を可能としたものも知られている。不要な機能の停止としては、たとえば、表示部やサラウンドチャンネル増幅部等についての電源オフが該当する。不要な回路の迂回としては、たとえばイコライザ回路のパス等が該当する。これらの機能や回路は不要輻射等の要因や、オーディオ信号の伝送経路に対するノイズ源や抵抗となるので、これらの機能や回路の使用を減らすことによって、高音質なオーディオの再生を可能にすることができる。
【0005】
図5は、高音質モードの選択手段を設けた従来例に係る再生装置を示すブロック図である。同図に示すようにこの再生装置50は、所定のプログラムと協働して装置各部の制御や必要な情報処理を行うCPU51、CPU51により処理されるオーディオデータが格納された記憶部52、CPU51がユーザに対して必要な表示を行うための表示部53、ユーザがCPU51に対して操作入力を行うための操作部54、CPU51が出力するデジタル信号をアナログ信号に変換するDAコンバータ55、DAコンバータ55からの信号又は外部入力ソース56からのアナログ信号のいずれかを選択するセレクタ57、セレクタ57により選択された信号に対して音質調整を行うトーン回路58、DAコンバータ55又はトーン回路58からの信号を増幅する増幅部59を備える。また、高音質モード及び通常モード間の切替えをユーザの手動操作に基づいて行う手動切替え部63を備える。
【0006】
記憶部52は装置に内蔵されたハードディスクやメモリにより構成される。なお、CPU51による処理対象となるオーディオデータは、記憶部52において格納されているものの他、外部記憶装置60において格納されているものであってもよい。外部記憶装置60としては、たとえばハードディスクや半導体メモリにより構成される。ネットワークを介して通信可能なサーバ上に存在するものであってもよい。増幅部59により増幅された音声信号はスピーカ等の外部出力手段61によって音声として出力される。
【0007】
この構成において、操作部54を介したユーザの指示により再生対象とされた記憶部52中のオーディオデータは、CPU51においてデコードされ、DAコンバータ55においてアナログ信号に変換される。そして、手動切替部63が通常モード側に切り替えられている場合には、DAコンバータ55からのアナログ信号は、手動切替部63、セレクタ57、トーン回路58、及び増幅部59を経て、外部出力手段61により、音声として出力される。
【0008】
一方、手動切替部63が高音質モード側に切り替えられている場合には、DAコンバータ55からのアナログ信号は、トーン回路58を経ることなく直接的に増幅部59に入力される。この場合、オーディオデータが有する高音質の信号は、より原音に近い状態で再生されることになる。
【0009】
【特許文献1】特開2002−352570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、再生装置が有する大容量の記録媒体において、各種のファイル形式やビットレートのオーディオデータが混在している場合、非圧縮や可逆圧縮又は高ビットレートでの圧縮によるオーディオデータについては、ユーザがそのオーディオデータを高音質で聴取したいために、そのような形式やビットレートで記録していることが多い。
【0011】
しかしながら、上述の高音質モードの選択手段を備えた従来技術によれば、ユーザが高音質で聴取したいオーディオデータを再生するために、高音質モードへの切替えを行おうとするき、そのオーディオデータがどのような形式のファイルであり、どのようなビットレートで圧縮されているか等のような音質に関連した情報を確認しなければならず、不便である。
【0012】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点に鑑み、再生装置において、非圧縮や可逆圧縮、高ビットレート等による高音質の形式で記録されているオーディオデータについては、その音質関連情報をユーザがいちいち確認して判断する必要なく、高音質モードで再生することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため、第1の発明に係る再生装置は、所定の記憶手段に記憶されているオーディオデータの再生に際し、該オーディオデータの音質を特定可能なデータを前記記憶手段から読み出す読出し手段と、前記読出し手段が読み出した音質を特定可能なデータに基づき、前記オーディオデータを所定の高音質モードで再生するか否かを判定する判定手段とを具備することを特徴とする。
【0014】
ここで、音質を特定可能なデータとしては、たとえば、当該オーディオデータについての、圧縮ファイルであるか否か、非可逆圧縮ファイルであるか否か、ファイル形式、ビットレート、サンプリング周波数、若しくは量子化ビット数に関するデータ、又はこれらのうちから任意に選択される2以上のものの組合せが該当する。所定の高音質モードとしては、たとえば、再生装置が有する表示部を消灯したモード、不要なチャンネルの増幅部についての電源供給をオフとしたモード、若しくは再生信号がトーン回路等を迂回するようなモード、又はこれらのモードのうちの任意の2以上のものの組合せが該当する。
【0015】
この構成において、所定の記憶手段に記憶されているオーディオデータの再生に際しては、該オーディオデータの音質を特定可能なデータが前記記憶手段から読み出され、該音質を特定可能なデータに基づき、該オーディオデータを所定の高音質モードで再生するか否かが判定される。つまり、たとえば、音質を特定可能なデータが、当該オーディオデータが非圧縮形式や可逆圧縮形式により高音質で記録されていることを示す場合には、高音質モードで再生する旨の判定が行われる。したがって、ユーザは再生しようとするオーディオデータについての音質を特定可能なデータがどうなっているのかを確認する必要なく、装置による判定結果を享受することができる。たとえば、判定結果に従い、自動的に高音質モード又は通常モードによる再生を行わせることができる。
【0016】
第2の発明に係る再生装置は、第1発明において、前記音質を特定可能なデータは、前記オーディオデータのヘッダ部において記録されているデータであることを特徴とする。
【0017】
第3の発明に係る再生装置は、第1又は第2発明において、前記判定手段は、前記読出し手段が読み出した音質を特定可能なデータが前記オーディオデータのファイル形式を表すデータを有し、前記オーディオデータが非圧縮形式又は可逆圧縮形式であることを示している場合に、前記オーディオデータを所定の高音質モードで再生する旨の判定を行うものであることを特徴とする。
【0018】
第4の発明に係る再生装置は、第1〜第3のいずれかの発明において、前記判定手段は、前記読出し手段が読み出した音質を特定可能なデータが前記オーディオデータの圧縮率を表すデータを有し、前記オーディオデータが所定の圧縮形式のものであり、かつ所定以上の周波数の再生が可能なビットレートのものであることを示すものである場合に、前記オーディオデータを所定の高音質モードで再生する旨の判定を行うものであることを特徴とする。
【0019】
第5の発明に係るプログラムは、コンピュータを第1〜第4のいずれかの発明に係る再生装置における各手段として機能させることを特徴とする。
【0020】
第6の発明に係る再生方法は、所定の記憶手段に記憶されているオーディオデータの再生に際し、読出し手段が、該オーディオデータの音質を特定可能なデータを前記記憶手段から読み出す読出し工程と、判定手段が、前記読出し手段が読み出した音質を特定可能なデータに基づき、前記オーディオデータを所定の高音質モードで再生するか否かを判定する判定工程とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、記憶手段に記憶されているオーディオデータの再生に際し、該オーディオデータの音質に関連する所定の音質関連データを記憶手段から読み出し、該音質関連データに基づいて該オーディオデータを所定の高音質モードで再生するか否かを判定するようにしたため、ユーザは再生しようとするオーディオデータが高音質で記録されている場合、そのファイル形式やビットレートを意識する必要なく、高音質モードで再生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る再生装置を示すブロック図である。同図に示すようにこの再生装置10は、所定のプログラムと協働して装置各部の制御や必要な情報処理を行うCPU1、CPU1により処理されるオーディオデータが格納された記憶部2、CPU1がユーザに対する表示を行うための表示部3、ユーザがCPU1に対して操作入力を行うための操作部4、CPU1が出力するデジタル信号をアナログ信号に変換するDAコンバータ5、DAコンバータ5からの信号又は外部入力ソース6からのアナログ信号のいずれかを選択するセレクタ7、セレクタ7により選択された信号に対して音質調整を行うためのトーン回路8、DAコンバータ5又はトーン回路8からの信号を増幅する増幅部9を備える。また、動作モードを高音質モード及び通常モード間で切り替える自動切替部13を備える。
【0023】
記憶部2は装置に内蔵されたハードディスクやメモリにより構成される。なお、CPU1の処理対象となるオーディオデータは、記憶部2に格納されているものの他、外部記憶装置12において格納されているものであってもよい。外部記憶装置12は、たとえばハードディスクや半導体メモリにより構成される。ネットワークを介して通信可能なサーバ上に存在するものであってもよい。増幅部9により増幅された音声信号はスピーカ等の外部出力手段11によって音声として出力される。記憶部2において蓄積されるオーディオデータとしては、たとえば、MP3形式、WMA形式、WAV形式等の楽曲コンテンツのファイルが該当する。トーン回路8はイコライジング機能を含むものであってもよい。
【0024】
この構成において、操作部4を介したユーザの指示により再生対象とされた記憶部2中のオーディオデータは、CPU1においてデコードされ、DAコンバータ5においてアナログ信号に変換される。そして、通常モードにおいては、DAコンバータ5からのアナログ信号は、セレクタ7、トーン回路8、及び増幅部9を経て、外部出力手段11により、音声として出力される。
【0025】
一方、オーディオデータを高音質で再生する高音質モードで動作している場合には、DAコンバータ5からのアナログ信号は、トーン回路8を経ることなく直接的に、増幅部9に入力される。この場合、オーディオデータが有する高音質の信号が極力そのまま再現され、より原音に近いサウンドが得られることになる。
【0026】
図2はかかるオーディオデータの再生に際し、図1の再生装置において行われる再生処理を示すフローチャートである。操作部4を介し、再生対象とする1又は複数のオーディオデータが選定され、再生の開始が指示されると、CPU1はまず、ステップ21において、再生対象とされた最初のオーディオデータのフレームヘッダを読み込む。次に、ステップ22において、該フレームヘッダに基づき、当該オーディオデータを、高音質モードによる再生の対象とするかどうかの判断を行う。
【0027】
さらに、ステップ23において、高音質モードによる再生対象であるとされたか否かを判定する。高音質モードの対象とされたと判定した場合には、ステップ24において、当該オーディオデータに基づき、高音質モードで再生を行う。具体的には、表示部3における表示をオフとし、DAコンバータ5から、トーン回路8を介することなく、増幅器9へ直接音声信号を出力するようにして再生を行う。また、多チャンネルの再生が可能な再生装置の場合には、さらに、増幅部9における不要なチャンネルについての増幅回路をオフとするようにしてもよい。これにより、ノイズ等の影響が少なく、より原音に近い、高音質による再生が行われる。
【0028】
ステップ23において高音質モードの対象とされなかったと判定した場合には、ステップ25において、当該オーディオデータに基づき、高音域補間を行うことにより、高音質に近い音質での再生を行う。この場合、トーン回路8を介して再生が行われる。なお、高音域補間とは、圧縮録音時に失われた高音域部分を補間することにより、圧縮前の音質に迫る高い音質を再現するものであり、公知の技術である。
【0029】
ステップ24又は25における当該オーディオデータの再生が終了すると、ステップ26において、再生すべき次のオーディオデータが存在するか否かを判定する。存在すると判定した場合はステップ21へ戻り、次のオーディオデータについて、上述ステップ21以降の処理を繰り返す。存在しないと判定した場合には、図2の再生処理を終了する。
【0030】
図3は上述のステップ22における高音質モードの判断処理を示すフローチャートである。まず、ステップ31〜33において、上述のステップ21において読み込んだヘッダ情報に基づき、当該オーディオデータが、非圧縮ファイル若しくは可逆圧縮ファイルのデータであるか、又は非可逆圧縮ファイルであってビットレートが所定以上のデータであるかを判定する。非圧縮ファイルとしては、たとえばWAVE形式のものが該当する。可逆圧縮ファイルとしては、たとえばロスレス圧縮形式のものが該当する。非可逆圧縮ファイルとしては、たとえばMP3やWMA形式のものが該当する。
【0031】
この判定に際しては、読み込んだヘッダ情報に基づき、そのビット構成の特徴等から、当該オーディオデータがいずれのファイル形式のものであるかを判定することができる。また、判明したファイル形式におけるビットレート格納位置のデータに基づき、ビットレートが所定値以上か否かを判定することができる。たとえば、読み込んだフレームヘッダの上位11ビットがすべて「1」であれば、そのオーディオデータはMP3形式のものであり、非可逆圧縮ファイルであることが判明する。MP3のデータはフレームヘッダ、データ領域、及びID3タグにより構成されており、フレームヘッダの3バイト目の前半にビットレートの値が格納される。したがって、このビットレートの値に基づいて、ビットレートが所定値以上か否かを判定することができる。
【0032】
また、MP3の場合、再生周波数の上限は、ビットレートが128[kbps]で15[kHz]程度、160[kbps]で18[kHz]程度、192[kbps]で21[kHz]程度となっている。したがって、ステップ33のビットレートの判定における所定値としてはたとえば、192[kbps]を採用し、これ以上であれば高音質モードによる再生の対象とするようにすることができる。
【0033】
ステップ31〜33において非圧縮ファイル若しくは可逆圧縮ファイルのデータであるか、又は非可逆圧縮フィルであってビットレートが所定以上のデータであると判定した場合には、ステップ34において、当該オーディオデータを高音質モードによる再生の対象とすることを決定し、図3の処理を終了する。いずれにも該当しないと判定した場合にはステップ35において、当該オーディオデータを高音質モードによる再生の対象とはしないことを決定し、図3の処理を終了する。図3の処理を終了した後、図2のステップ23へ進むことになる。
【0034】
本実施形態によれば、オーディオデータのヘッダ情報に基づき、非圧縮ファイル、可逆圧縮ファイル、又は非可逆圧縮ファイルであってビットレートが所定以上であると判定した場合には当該オーディオデータを高音質モードで再生し、他の場合には高音域補間を行い、高音質に近い音質で再生するようにしたため、ユーザは、オーディオデータのファイル形式やビットレートを意識する必要なしに、高音質で記録されているオーディオデータについては高音質モードで再生することができる。その際、ヘッダ情報に基づいて、非圧縮ファイル又は可逆圧縮ファイルであるかどうか、さらにはビットレートが所定以上であるかどうかを確実に認識し、高音質モードの対象とするか否かを判定することができる。
【0035】
また、非圧縮ファイル及び可逆圧縮ファイル形式のオーディオデータを高音質モードによる再生の対象とするようにしたため、これらの高音質のオーディオデータを生かした高音質モードでの再生を行うことができる。
【0036】
また、ビットレートが所定値よりも低く、高音質モードの対象とならないオーディオデータについては高音域補間を施して再生を行うようにしたため、高音質モードの対象とならないオーディオデータであっても、高音質なオーディオデータに近い音質で再生を行うことができる。
【0037】
図4は上述した高音質モードにおける再生装置の動作例を示す。図中の「対象」欄は高音質モード及び非高音質モードにおいてオン・オフ又は回避・通過の切替えの対象となるものを示す。「高音質モード」及び「非高音質モード」欄はこれらの切替え内容を示す。同図のように各対象は、非高音質モードで動作する場合にはオン又は通過となるように制御され、高音質モードで動作する場合には、オフ又は回避となるように制御される。これにより、高音質モードで動作する場合には、CPU1の不要な処理を停止してCPU1の負荷を低減させたり、不要な回路に信号を通過させないようにして再生波形の乱れや損失を低減させたり、不要な電源を用いないようにして電源からの不要輻射を低減させたりすることができる。したがって、高音質モードで動作する場合には、非高音質モードで動作する場合に比べ、高音質で再生を行うことができる。対象や切替え内容は図4に例示したものに限定されず、他の対象や切替え内容であってもよい。
【0038】
具体的には、再生装置は一般的に液晶表示装置や有機EL表示装置、FL管、発光ダイオード等による表示部を有し、再生装置の動作状態や再生しているオーディオデータの名称などの情報を表示する。図4の高音質モードにおける表示部のオフは、この表示を行わないことによって、CPU1の負荷低減を図るとともに、表示部4や表示部4を駆動する電源を動作させないことにより、表示部のオンの場合よりも高音質な再生を可能にする。
【0039】
また、音質調整機構は、トーンやイコライザ等のような、再生オーディオデータの周波数毎の音量を調整するものである。音質調整機構としては、ディジタルの状態でオーディオデータをCPU1により調整するものや、アナログ出力をトーン回路を通過させることにより調整するものがある。図4の高音質モードにおける音質調整機構のオフは、音質調整機構によるこれらの動作を行わないようにすることによって、又は音質調整機構を経由しないことによって、音質調整機構のオンである場合よりも高音質な再生を可能にする。
【0040】
図4中の高音質モードにおけるセレクタの回避は、オーディオデータをDAコンバータ5によりアナログ波形に変換した後、他のアナログ入力ソースとの間で切り替えるセレクタ7を経由することなく増幅させることにより、セレクタ7を経由させる場合よりも高音質な再生を可能にする。
【0041】
サラウンド処理・増幅部のオフは、再生装置がサラウンドチャンネル等の再生が可能な多チャンネル再生装置であり、オーディオデータがステレオ2チャンネルのソースである場合、CPUにおける2チャンネル以外のチャンネルの処理を不要とし、2チャンネル以外のチャンネルの増幅も行わないことにより、CPUの負荷低減を図り、かつ増幅部59に対する電源供給を不要とし、サラウンド処理・増幅部がオフの場合よりも高音質な再生を可能にする。
【0042】
映像関連処理・出力のオフは、再生装置が映像を伴うソースに対応しているいわゆるAVアンプや動画対応再生装置である場合に、動画を処理するCPU1の動作や映像処理用の集積回路の動作を行わないことにより、映像関連処理・出力のオンの場合よりも高音質な再生を可能にする。
【0043】
高音質モードである場合にはオーディオデータに高音域までの周波数情報が含まれている。したがって高音域補間処理のオフは、CPUによる補間処理を行わないことにより、高音域補間処理がオフである場合よりも高音質な再生を可能にしている。
【0044】
なお、本発明は上述実施形態に限定されることなく、適宜変形して実施することができる。たとえば、上述においては、図3のステップ33における所定値の一例として、MP3形式のオーディオデータの場合における192[kbps]を挙げたが、この所定値としては、これに限ることはなく、たとえば、ファイル形式がMP3形式又はWMA形式であるオーディオデータの各場合において、所定値以上の周波数の再生が可能な各ビットレート値を採用してもよい。これによれば、圧縮形式のデータであっても、比較的高音質であるビットレートのデータについては、その高音質を生かした再生を行うことができる。
【0045】
また、上述においては、オーディオデータを高音質モードによる再生の対象とするか否かの判定を、ファイル形式及びビットレートに基づいて行うようにしているが、この代わりに又はこれに加え、サンプリング周波数や量子化ビット数に基づいて行うようにしてもよい。
【0046】
また、上述においては特に言及はしなかったが、オーディオデータが可変ビットレートである場合には、図2や図4の処理は行わないようにしてもよい。
【0047】
また、上述においては、高音質モードによる再生の対象とする旨の判定を行った場合、そのまま高音質モードで再生を行うようにしている(ステップ24)が、この代わりに、高音質モードによる再生の対象とする旨の判定を行った場合、高音質モードで再生を行うことについてユーザの了承を得るようにしてもよい。その際、当該オーディオデータが高音質モードによる再生の対象とするにふさわしい適格性を有する旨を表示するようにしてもよい。
【0048】
さらに、上述においては高音質モードの対象とするか否かの判断を、再生対象のオーディオデータのフレームヘッダに基づいて判断しているが、該再生対象のオーディオデータのタグ情報に上述したビットレートやファイル形式が記載されている場合には、タグ情報に基づいて、高音質モードの対象とするか否かを判断するようにしてもよい。また、タグ情報中に、上述の高音質モードとするかどうかの判断を行うための情報が記載されていない場合、一旦フレームヘッダ情報を読み込み、高音質モードの対象とするか否かの判断を行った上で、その情報をタグ情報に書き込み、次回よりそのタグ情報を読み込むことによって高音質モードとするか否かの判断を行うようにしてもよい。
【0049】
また、再生対象のオーディオデータに対して高音質モードによる再生の対象とするか否かの判断結果を、データベース化して、記憶部2や外部記憶装置12等の再生対象のオーディオデータに関連付けて記憶、更新し、該データベースを読み込むことによって再生対象のオーディオデータを高音質モードで再生するか否かを判断してもよい。
【0050】
また、上述の実施例においては、オーディオデータ毎に高音質モードによる再生の対象とするか否かを判断する例について説明したが、これに限定されず、アルバム単位や、フォルダ単位で判断するようにしてもよい。この場合、該当するアルバム又はフォルダの最初のオーディオデータ若しくは任意のオーディオデータについて高音質モードによる再生の対象とするか否かの判断を行い、そのオーディオデータが含まれるアルバム又はフォルダに含まれている他のオーディオデータに対し、判断したモードでの再生を継続すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係る再生装置を示すブロック図である。
【図2】図1の再生装置において行われる再生処理を示すフローチャートである。
【図3】図2の処理における高音質モードの判断処理を示すフローチャートである。
【図4】図2の処理における高音質モードの動作例である。
【図5】従来例に係る再生装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
1,51:CPU、2,52:記憶部、3,53:表示部、4,54:操作部、5,55:DAC、6,56:外部入力ソース、7,57:セレクタ、8,58:トーン回路、9,59:増幅部、10,50:再生装置、11,61:外部出力手段、12,60外部記憶装置、13:自動切替部、63:手動切替部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の記憶手段に記憶されているオーディオデータの再生に際し、該オーディオデータの音質を特定可能なデータを前記記憶手段から読み出す読出し手段と、
前記読出し手段が読み出した音質を特定可能なデータに基づき、前記オーディオデータを所定の高音質モードで再生するか否かを判定する判定手段とを具備することを特徴とする再生装置。
【請求項2】
前記音質を特定可能なデータは、前記オーディオデータのヘッダ部において記録されているデータであることを特徴とする請求項1に記載の再生装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記読出し手段が読み出した音質を特定可能なデータが前記オーディオデータのファイル形式を表すデータを有し、前記オーディオデータが非圧縮形式又は可逆圧縮形式であることを示している場合に、前記オーディオデータを所定の高音質モードで再生する旨の判定を行うものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の再生装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記読出し手段が読み出した音質を特定可能なデータが前記オーディオデータの圧縮率を表すデータを有し、前記オーディオデータが所定の圧縮形式のものであり、かつ所定以上の周波数の再生が可能なビットレートのものであることを示すものである場合に、前記オーディオデータを所定の高音質モードで再生する旨の判定を行うものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の再生装置。
【請求項5】
コンピュータを請求項1〜4のいずれかの再生装置における各手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
所定の記憶手段に記憶されているオーディオデータの再生に際し、読出し手段が、該オーディオデータの音質を特定可能なデータを前記記憶手段から読み出す読出し工程と、
判定手段が、前記読出し手段が読み出した音質を特定可能なデータに基づき、前記オーディオデータを所定の高音質モードで再生するか否かを判定する判定工程とを具備することを特徴とする再生方法。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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