説明

再生装置、再生装置のデータベース更新方法およびプログラム

【課題】データベースの更新を行ってもエラーコンテンツの非表示やスキップ再生を行うことのできる再生装置、再生装置のデータベース更新方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】再生可能なデータを蓄積するコンテンツ記憶部17と、コンテンツ記憶部17に蓄積されているデータに関する情報をデータベースとして蓄えるデータベース記憶部18と、コンテンツ記憶部17に蓄積されているデータに変更があったときにはデータベース記憶部18内のデータベースを更新する制御部16とを有し、更新前のデータベースに再生できないデータに関する情報が含まれ、その再生できないデータに変更がない場合には、データベースの更新時に再生できないデータに関する情報については残しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再生装置、再生装置のデータベース更新方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
楽曲データや映像データ(動画あるいは静止画)を内蔵ハードディスク装置やフラッシュメモリなどの半導体メモリに蓄積し、ユーザ操作により適宜再生動作などを行うことのできる再生装置が広く用いられている。楽曲データや映像データの蓄積は、CD(Compact Disc)やDVDからリッピングしたり、ダウンロード購入することで行われる。「リッピング」とは、DVDや音楽CDなどに記録されているデジタルデータをそのまま、またはイメージファイルで、あるいはパーソナルコンピュータ(以下「PC」という)や再生装置で扱うことのできるデータ形式に変換して、ファイルにすることをいう。上述のような再生装置は、PCやオーディオ機器、映像機器などへマスストレージ接続され、接続先の機器の操作により、楽曲データや映像データを蓄積することができる。再生装置内に蓄積されたデータの情報は再生装置内のデータベースにより管理され、例えばある楽曲データを再生する場合には、その楽曲名、アルバム名、アーティスト名などを表示できるようになっている。
【0003】
再生装置に記録されるデータには、楽曲データを例にしても、MP3(MPEG(Moving Picture Experts Group) Audio Layer-3)、WMA(Windows(登録商標) Media Audio)、AAC(Advanced Audio Coding)など複数の圧縮方式があり、また、同一の方式(同一のファイル形式で同一の拡張子)であっても、バージョンの違いにより対応するエンコーダ(エンコードフソフトウェア)が異なることもある。このため、多様な方式の圧縮データを蓄積している場合、エンコーダの未対応により再生(デコード)できないデータが存在することもある。また、データの破損によりデコードや再生が不可能なデータもある。さらに、マスストレージ接続でPCからデータが書き込まれる場合には、そもそもその再生装置が対応していないデータまで蓄積されることがある。以下、再生できないデータを「エラーコンテンツ」という。
【0004】
従来、このようなエラーコンテンツについては、
1.再生装置が再生動作を行い、エラーコンテンツであると判断された場合は、その旨を表示することにより、ユーザが次のデータを再生するスキップ動作を行うようにする、
2.エラーコンテンツを判別可能とした何らかの参照情報を用い、エラーコンテンツを自動的にスキップする(例えば特許文献1〜3参照)、
などの処理を行っている。
【特許文献1】特開平08−203195号公報
【特許文献2】特開平09−073727号公報
【特許文献3】特開2002−008320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
再生装置がマスストレージ接続された相手先の機器からデータを蓄積する場合、相手先の機器からは、再生装置が単なる外部記憶装置として認識される。このため、再生装置が対応していないデータ形式であっても、その再生装置に蓄積される可能性がある。相手先の機器から蓄積されたデータを再生装置で管理するためには、マスストレージ接続が解除された後に、再生装置でデータベースを再構築する必要がある。
【0006】
データベースの再構築に際して、従来は、すべての蓄積データを対象としている。この場合、エラーコンテンツに関する情報をデータベースで管理していても、データベースの再構築によりその情報が消去されてしまう。このため、データベースの再構築後は、再度、再生によりエラーコンテンツであるか否かの判断およびデータベースへの書き込みが必要となる。これは再生時間のロスにつながり、作業量の増大につながる。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、再生時間のロスを防止し、作業量を軽減できる再生装置、再生装置のデータベース更新方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点によると、再生可能なデータを蓄積する第1の記憶手段と、第1の記憶手段に蓄積されているデータに関する情報をデータベースとして蓄える第2の記憶手段と、第1の記憶手段に蓄積されているデータに変更があったときにはデータベースを更新する手段とを有し、更新する手段は、更新前のデータベースに再生できないデータに関する情報が含まれ、その再生できないデータに変更がない場合には、データベースの更新時に再生できないデータに関する情報については残しておくことを特徴とする再生装置が提供される。
【0009】
更新する手段は、更新前のデータベースに再生できないデータに関する情報が含まれ、その再生できないデータが削除または更新された場合には、再生できないデータを含めてデータベースを更新することが望ましい。
【0010】
本発明の第2の観点によると、再生可能なデータを蓄積するとともに、蓄積されたデータに関する情報をデータベースとして蓄える再生装置のデータベース更新方法において、更新前のデータベースに再生できないデータに関する情報が含まれ、その再生できないデータに変更がない場合には、データベースの更新時に、再生できないデータに関する情報については残しておくことを特徴とする再生装置のデータベース更新方法が提供される。
【0011】
本発明の第3の観点によると、コンピュータに、再生可能なデータを蓄積する第1の記憶処理手段、第1の記憶処理手段により蓄積されたデータに関する情報をデータベースとして蓄える第2の記憶処理手段、および第1の記憶処理手段により蓄積されたデータに変更があったときに、更新前のデータベースに再生できないデータに関する情報が含まれ、その再生できないデータに変更がない場合には、再生できないデータに関する情報については残して、データベースを更新する更新手段、として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、再生時間のロスを防止し、作業量を軽減できる再生装置、再生装置のデータベース更新方法およびプログラムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(構成)
図1は本発明の実施の形態に係る再生装置のブロック構成図である。なお、再生装置のデータベース更新方法およびプログラムに関しては、再生装置の説明と併せて説明する。
【0014】
この再生装置は、記憶部11、表示部12、操作部13、音声出力部14、外部インタフェース15および制御部16を備える。記憶部11は、ハードディスク装置あるいはフラッシュメモリなどの半導体メモリで構成され、その内部には、再生可能なデータを蓄積する第1の記憶手段としてのコンテンツ記憶部17と、このコンテンツ記憶部17に蓄積されているデータに関する情報をデータベースとして蓄える第2の記憶手段としてのデータベース記憶部18とが設けられる。
【0015】
表示部12は、液晶や有機EL等により構成され、コンテンツに関する情報や操作に関する情報などを表示する。操作部13は、ユーザが再生装置を操作するためのものであり、キー、スイッチ、タッチパネルなど多様な形態が可能である。音声出力部14は、ディジタル・アナログ変換器や増幅器(図示せず)を備え、コンテンツデータをヘッドフォン、スピーカあるいは他の機器などへ出力する。外部インタフェース15は、USB(Universal Serial Bus)端子などを備え、再生装置をPCや据え置き型オーディオ装置などの外部機器に接続し、コンテンツデータの授受を行う。
【0016】
制御部16は、表示部12への各種情報の表示制御、操作部13からの操作にしたがってコンテンツ記憶部17内のコンテンツを読み出して音声出力部14に出力する再生制御、外部インタフェース15を介したコンテンツ記憶部17内のデータの読み出しおよび書き込みの制御などを行う。制御部16はさらに、コンテンツ記憶部17に蓄積されているデータに変更(削除を含む)があったときにはデータベース記憶部18のデータベースを更新する手段として機能し、更新前のデータベースにエラーコンテンツに関する情報が含まれ、そのエラーコンテンツに変更がない場合には、データベースの更新時にエラーコンテンツに関する情報については残しておく制御を行う。また、制御部16は、更新前のデータベースにエラーコンテンツに関する情報が含まれ、そのエラーコンテンツが削除または更新された場合には、そのエラーコンテンツを含めてデータベースを更新する。
【0017】
(動作フロー)
図2は図1に示す再生装置におけるコンテンツ再生の動作を説明するフローチャートである。この動作は制御部16の制御により実行される。コンテンツ再生時には、コンテンツ記憶部17に蓄積されているコンテンツデータを何らかの順で選択し、データベースを参照して、選択したコンテンツデータがエラーコンテンツとして登録されているか否かを確認する(ステップS1)。エラーコンテンツとして登録されていれば(ステップS1でYes)、そのコンテンツデータに関する情報の表示部12への表示を行わず、再生をスキップする(ステップS2)。選択したコンテンツデータがエラーコテンツとして登録されていない場合(ステップS1でNo)には、そのコンテンツデータがデコード可能かつ再生可能かを調べる(ステップS3、S4)。デコード可能かつ再生可能である場合(ステップS3、S4でいずれもYes)には、そのコンテンツデータをコンテンツ記憶部17から読み出して、音声出力部14に出力する(ステップS5)。デコード不能あるいは再生不能の場合(ステップS3、S4の少なくとも一方でNo)には、そのコンテンツデータをエラーコンテンツとしてデータベースに登録する(ステップS6)。以上の動作を再生すべき楽曲がなくなるまで繰り返す(ステップS7)。
【0018】
図3は図1に示す再生装置におけるデータベース更新の動作を説明するフローチャートである。この動作も制御部16の制御により実行される。データベース更新の動作はそのデータベース内のコンテンツに対して順番に行い、更新対象がエラーコンテンツとして登録されていなければ(ステップS11でNo)、そのコンテンツデータに関してデータベースを更新する(ステップS12)。更新対象がエラーコンテンツとして登録されている場合(ステップS11でYes)でも、そのコンテンツデータが削除または更新されている場合(ステップS13でYes)には、そのコンテンツデータに関してデータベースを更新する(ステップS12)。更新対象がエラーコンテンツとして登録されており(ステップS11でYes)、かつそのコンテンツデータが削除も更新もされていない場合(ステップS13でNo)には、データベースの更新は行わない(ステップS14)。このステップS14によって、エラーコンテンツとしての登録が維持される。以上の動作を最後の楽曲まで繰り返す(ステップS15)。
【0019】
(データベースの更新例)
図4から図6はデータベースの一例を示す図であり、図4は更新前、図5は従来のデータベース再構築による更新後、図6は図1に示す再生装置における更新後の状態を示す。図4に示すデータベースには、エラーコンテンツであることを示す情報が登録されている。すなわち、「エラー」と表示されている項目に、「有」が登録されている。しかし、従来のようにデータベースを再構築すると、図5に示すように、エラーコンテンツに関する情報が消去されてしまう。これに対して、本実施の形態では、図6に示すように、エラーコンテンツに関する情報が含まれている項目について、上述したステップS11、S13、S14のフローによって、その情報をデータベース内に残すことができる。
【0020】
このように、データベースの更新を行っても、エラーコンテンツを意識せずに非表示やスキップ再生などのを動作を引き続き行うことができる。このため、ユーザにとっても、エラーコンテンツを再度再生させて、再生装置にエラーコンテンツであることを認識させるようなわずらわしい操作から解放される。
【0021】
以上の説明では同じ記憶部11内にコンテンツ記憶部17とデータベース記憶部18とを設けた例を示したが、例えば一方をハードディスク装置、他方をフラッシュメモリなどの半導体メモリに蓄積してもよく、また、それぞれを分割して別々の記憶装置に蓄積してもよい。また、楽曲データを再生する再生装置を例に説明したが、動画や静止画などの映像データを再生する装置でも同様の処理が可能である。さらに、パーソナルコンピュータなどの汎用のコンピュータを再生装置として動作させる場合にも、同様の処理が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る再生装置のブロック構成図である。
【図2】図1に示す再生装置におけるコンテンツ再生の動作を説明するフローチャートである。
【図3】図1に示す再生装置におけるデータベース更新の動作を説明するフローチャートである。
【図4】図1に示すデータベース記憶部内のデータベースの一例を示す図であり、更新前の状態を示す。
【図5】従来のデータベース再構築による更新後の状態を示す図である。
【図6】図1に示すデータベース記憶部内のデータベースの一例を示す図であり、更新後の状態を示す。
【符号の説明】
【0023】
11 記憶部、12 表示部、13 操作部、14 音声出力部、15 外部インタフェース、16 制御部(更新する手段)、17 コンテンツ記憶部(第1の記憶手段)、18 データベース記憶部(第2の記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能なデータを蓄積する第1の記憶手段と、
上記第1の記憶手段に蓄積されているデータに関する情報をデータベースとして蓄える第2の記憶手段と、
上記第1の記憶手段に蓄積されているデータに変更があったときには上記データベースを更新する手段と
を有し、
上記更新する手段は、更新前の上記データベースに再生できないデータに関する情報が含まれ、その再生できないデータに変更がない場合には、上記データベースの更新時に上記再生できないデータに関する情報については残しておく
ことを特徴とする再生装置。
【請求項2】
請求項1記載の再生装置において、前記更新する手段は、更新前の前記データベースに再生できないデータに関する情報が含まれ、その再生できないデータが削除または更新された場合には、上記再生できないデータを含めて前記データベースを更新することを特徴とする再生装置。
【請求項3】
再生可能なデータを蓄積するとともに、蓄積されたデータに関する情報をデータベースとして蓄える再生装置のデータベース更新方法において、
更新前の上記データベースに再生できないデータに関する情報が含まれ、その再生できないデータに変更がない場合には、上記データベースの更新時に、上記再生できないデータに関する情報については残しておく
ことを特徴とする再生装置のデータベース更新方法。
【請求項4】
コンピュータに、
再生可能なデータを蓄積する第1の記憶処理手段、
上記第1の記憶処理手段により蓄積されたデータに関する情報をデータベースとして蓄える第2の記憶処理手段、および
上記第1の記憶処理手段により蓄積されたデータに変更があったときに、更新前の上記データベースに再生できないデータに関する情報が含まれ、その再生できないデータに変更がない場合には、上記再生できないデータに関する情報については残して、上記データベースを更新する更新手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−27111(P2010−27111A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184544(P2008−184544)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】