説明

再設定可能な溶接電源を容易にする装置、システムおよび方法

【課題】再設定するために適合された溶接電源のための装置、システムおよび方法を提供する。
【解決手段】溶接電源は、電源制御および電源制御データストアを含む。オプションで、溶接電源は、通信コンポーネント、I/Oコンポーネント、ワイヤ給電制御コンポーネントおよび溶接手順ストアを含むことができる。溶接電源は、溶接電源の設定についての情報を、他の溶接電源および遠隔システムに提供し、溶接電源のトラブルシューティング、点検、動作、メンテナンスおよび/またはアップグレードを容易にすることができる。本発明は、さらに、設定情報を溶接電源へ提供するための方法論を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、コンピュータおよび溶接システムに関し、より詳細には、再設定可能な溶接電源を容易にする装置、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接電源は、電気アーク溶接システムの必要な一部分である。溶接システムは、例えば、電流が、電極を通って、および電極とワークピースとの間に現われたアークを横切って通過する間に、ワークピース(work piece)への消費できる電極の移動を伴っても良い。電極は、消費できない、または消費できるタイプであっても良く、この場合、電極の部分を、ワークピース上に溶融し堆積しても良い。電極への電力を、溶接電源によって供給する。
【0003】
周波数を増加させながら、溶接電源を利用して、例えば製造産業で、多様な溶接タスク(welding task)を実行する。しかしながら、近代の、複雑な製造オペレーションの性質および必要条件を与えられると、溶接システム設計者、立案者、および供給者は、種々の溶接位置のアップグレード、維持、制御および点検に関して増加している難題に直面する。従って、大規模なセンターの中の、および/または地球を横切った多数のおよび孤立した位置の制御、維持および点検は、より難題で、時間を消費しおよび費用がかかるようになってきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような難題の1つは、1つ以上の溶接タスクを実行する溶接電源を設定することに関係している。例えば、溶接電源を、特定の期間の間に、第1溶接タスクの実行に関して設定しても良く、その後に第2溶接タスクの実行に関して設定しても良い。
【0005】
溶接電源に直面する他の難題は、メンテナンスに関係する。溶接電源を、しばしば、溶接電源のオペレータによって実施される手順に従って、維持し点検する。幾つかのオペレータは、十分に、これら溶接電源を点検し維持するけれども、点検およびメンテナンスの質は、しばしば、個々のオペレータの訓練および能力次第である。従って、溶接電源を含み、組み立てプロセスの全体を点検する、良く維持された溶接システムの大きな集合は、適切に点検または維持されていない他の溶接システムに左右され得る。これにより、そのプロセスは、例えば、溶接電源を含む、不完全に維持された溶接者に関係があるサービスの停止の間に停止しまたは中断する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、本発明の幾つかの態様の基本的な理解を提供するために、簡潔化した本発明の概要を示す。この概要は、本発明の広範囲のあらましではない。本発明のキーまたは重要な要素を確認すること、または本発明の範囲を詳細に描くことを意図しているものではない。その唯一の目的は、以下に示されるより詳細な説明への序曲として、簡潔な形式で本発明の幾つかのコンセプトを示すことである。
【0007】
本発明は、適用される溶接電源が再設定されるのを容易にする装置、システムおよび方法に関する。本発明の一態様によれば、溶接電源は、少なくとも1つの電源制御および電源設定データストアを有する。電源制御は、溶接電源の電力出力を制御することができる。電源設定データストアは、電源制御に関連した情報、コンポーネント変更および履歴を格納できる。例えば、電源設定データストアは、電源制御の設定の日付、電源制御の設定の時刻、溶接電源のハードウエア設定、電源制御のソフトウエアバージョン、電源制御のシリアル番号および/またはID,溶接電源にインストールされた溶接手順および/または溶接電源のメモリ容量を格納できる。電源設定データストアに格納された情報は、溶接電源のトラブルシューティング、点検、動作、メンテナンスおよび/またはアップグレードを容易にすることができる。
【0008】
本発明の他の態様によれば、溶接電源は、I/Oコンポーネント、ワイヤ給電制御コンポーネント、通信コンポーネントおよび/または溶接手順データストアを有することができる。I/Oコンポーネントは、溶接システムのノードから入力信号を受信することができる。少なくとも一部分は、I/Oコンポーネントからの情報に基づいて、電源制御は、電力出力を出力ポートへ提供することができる。ワイヤ給電制御コンポーネントは、溶接プロセスで利用され消費できるワイヤの配信の割合を容易に決めることができる。通信コンポーネントは、溶接電源と遠隔システムとの間の通信を容易にして、例えば、溶接電源のトラブルシューティング、点検、動作、メンテナンスおよび/またはアップグレードを容易にすることができる。通信コンポーネントを、無線通信プロトコル(例えば、ブルートゥース)を遠隔システムで調節する周波数を利用する無線通信に適合させることができる。さらに、溶接電源を、ネットワークによって、有効に、遠隔システムと結合することができる。
【0009】
本発明の他の態様によれば、遠隔システムは、オプションで、溶接電源の検証および/または検査を容易にするセキュリティコンポーネントを含む。
【0010】
以下の説明および付属した図面は、本発明の詳細なある例示的な態様を示している。しかしながら、これらの態様は、本発明の原理を使用しても良い種々の方法のほんの少数を示しており、本発明を、このような態様全ておよびそれらの等化物を含むことを意図している。本発明の他の利点および新奇な特徴は、図面と共に考慮すると以下の本発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一態様に従う、溶接電源を例示している概略的ブロック図である。
【図1a】本発明の一態様に従う、溶接電源の制御を例示している概略的ブロック図である。
【図2】本発明の一態様に従う、溶接電源を例示している概略的ブロック図である。
【図3】本発明の一態様に従う、溶接システムを例示している概略的ブロック図である。
【図4】本発明の一態様に従う、無線溶接電源の設定のシステムを例示している概略的ブロック図である。
【図5】本発明の一態様に従う、無線通信ストレージシステムを例示している概略的ブロック図である。
【図6】本発明の一態様に従う、溶接システムを例示している概略的ブロック図である。
【図7】本発明の一態様に従う、設定情報を溶接システムへ供給するための方法論を例示しているフローチャートである。
【図8】図7の方法をさらに例示しているフローチャートである。
【図9】図7の方法をさらに例示しているフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を、図面を参照して説明し、それら図面では、参照番号を用いて、至る所で類似の要素を参照する。以下の記述では、説明のために、多数の具体的な記述を、本発明の完全な理解を提供するために示す。本発明をこれら具体的な記述無しに実施しても良いことは、当業者に明白であろう。他の例では、良く知られた構造とデバイスとを、本発明の説明を容易にするために、ブロック図形式の中で示す。
【0013】
本明細書で用いられる、用語“コンポーネント”を、電子機器および/またはコンピュータに関連した構成要素、すなわち、ハードウエア、ハードウエアとソフトウエアとのコンビネーション、ソフトウエア、または実行中のソフトウエアのいずれかを指すことを意図する。例えば、コンポーネントは、プロセッサ上で作動するプロセス、プロセッサ、オブジェクト、実行可能形式(executable)、実行のスレッド、プログラム、およびコンピュータであっても良いが、これらに限定されない。例えば、サーバ上で作動するアプリケーションおよびサーバの双方は、コンポーネントであっても良い。
【0014】
溶接セル(welding cell)の“ノード”は、溶接システムの物理的なハードウエアコンポーネントを指し、その溶接システムは、これらに限定されないが、ワイヤ給電線、コンタクトチップ、ドレッサ、ガス混合器、ガススニーザ(gas sneezer)、ガスコントローラ、クランプアクチュエータ(clamp actuator)、トラベルキャリッジ(travel carriage)/パートマニピュレータ(part manipulator)、ロボットアーム/ビーム/トーチマニピュレータ(torch manipulator)、レーザシームトラッカ(laser seam tracker)、他の入力/出力デバイスおよび溶接電源を含んでいる。“溶接セル”は、物理的なハードウエアコンポーネント(ノード)の集合体を指す。ノードおよび/または溶接セルは、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせ、または幾つかの場合においては単にソフトウエア(例えば、仮想のノードまたは溶接セル)を備えることができることを認識するべきである。
【0015】
“溶接手順”は、接合プロセスに伴う単一または複数のステップを指し、接合プロセスの前、最中、および/または後に、溶接システムの様々な態様に対する設定と一緒にプロセスで用いられるべき消耗品を含むことができる。例えば、これらの態様のうちの幾つかは、電力の制御および電極に供給される波形の制御、溶接の間の溶接チップの動きまたは行程の制御、他の溶接ポイントへの電極の行程制御、上昇された温度で酸化から溶融溶接プールを保護するためのガス制御に関係し、かつ、アークのために電離したプラズマ、および溶接の質を制御するためのアークの安定性のような他の態様を提供する。
【0016】
“ポスト第2世代サービス”(例えば、第3世代(3G))は、(例えば、ストーミングビデオおよび/またはボイス伝送(voice transmittal)に関連した)高速パケットデータ、例えば、CDMA2000および/または広帯域CDMA(WCDMA)、に対して権限を提供するモバイル通信テクノロジーを指す。ポスト第2世代テクノロジーは、また、モバイル通信デバイス(携帯電話)に埋め込まれた再プルグラム可能なソフトウエアを含むことができ、従って、無線通信に使用されるハードウエアが追加的に機能することを可能とする。ポスト第2世代テクノロジーは、また、認知テクノロジーを含むことができ、それによって、モバイルデバイスは、周波数の一時的な使用について、周波数チャネルの所有者/管理者と交渉する。
【0017】
図1を参照すると、本発明の態様に従う、溶接電源100が例示されている。溶接電源100は、第1電源制御1101から第N電源制御110Nを含み、Nは1以上の整数である。電源制御1101から110Nを、電源制御110のように集合的に参照することができる。溶接電源100は、さらに、電源設定データストア120および電源プロセスコンポーネント130を含む。
【0018】
電源制御110は、溶接電源100の電力出力を制御することができる。例えば、電源制御110は、溶接電源100の電力出力の電圧および/または電流を制御することができる。
【0019】
電源設定データストア120は、電源制御110および/または溶接電源100に関連した情報、コンポーネントの変更、および履歴を格納することができる。例えば、電源設定データストア120は、電源制御110の設定の日付、電源制御110設定の時刻、溶接電源100のハードウエアの設定、電源制御110のソフトウエアのバージョン、電源制御110のシリアル番号および/またはID、溶接電源100および/または溶接電源100のメモリ容量にインストールされた溶接プログラム、を格納することができる。電源設定データストア120に格納された情報により、溶接電源100のトラブルシューティング、点検、動作、メンテナンスおよび/またはアップグレードを容易にすることができる。
【0020】
電源プロセスコンポーネント130により、少なくとも一部分、電源制御データストア120に格納された情報に基づいて電源制御110の再設定を容易にすることができる。例えば、電源プロセッサコンポーネント130により、電源制御110への情報(例えば、電圧設定、波形および/または電流設定)の送信を容易にすることができる。
【0021】
次に図1aを参照すると、本発明の態様に従う、溶接電源制御140が例示されている。電源制御140を、第1電源溶接アプリケーション1501から第P電源溶接アプリケーション150pに対して再設定するように適合することができる。ここで、Pは1以上の整数である。例えば、第1部分の溶接を容易にするために、電源制御140を、第1電源溶接アプリケーション1501として動作するように設定することができる。その後は、異なる部分の溶接を容易にするために、電源制御140を、(例えば、異なる電圧設定、波形および/または電流設定を有する)第2電源溶接アプリケーション1502として動作するように再設定することができる。
【0022】
図2に目を向けると、本発明の態様に従う、溶接電源200が例示されている。溶接電源200は、第1電源制御2101から第M電源制御210Mを含み、Mは1以上の整数である。電源制御2101から210Mを、電源制御210のように集合的に参照することができる。溶接電源200は、さらに、電源設定データストア220および電源プロセスコンポーネント270を含む。オプションで、溶接電源200は、I/Oコンポーネント230、ワイヤ給電制御コンポーネント240、通信コンポーネント250および/または溶接手順データストア260を含むことができる。
【0023】
電源制御210は、溶接電源200の電力出力の様々なパラメータを制御することができる。電源制御210は、波形の形状を規定して、溶接電源200の電力出力の電圧および/または電流の制御をして、溶接プロセスの異なるタイプを実行することができる。例えば、電源200を、ガスメタルアーク溶接(GMAW)、フラックスコアードアーク溶接、メタルコアードアーク(metal cored arc)溶接、サブマージドアーク溶接(SAW)、ナローグルーブ(narrow groove)溶接、ガスタングステンアーク溶接(GTAW)、プラズマアーク溶接、電子線およびレーザ溶接、ハードサーフェシング(hard surfacing)溶接、アークガウジングおよび/または被覆アーク溶接(SMAW)を実行するために利用することができる。
【0024】
電源設定データストア220は、電源制御210および/または溶接電源200に関連した情報を格納できる。例えば、電源設定データストア220は、電源制御210の設定の日付、電源制御210の設定の時刻、溶接電源200のハードウエア設定、電源制御210のソフトウエアバージョン、電源制御210のシリアル番号および/またはID、溶接電源200にインストールされた溶接プログラムおよび/または溶接電力制御200のメモリ容量、を格納することができる。電源設定データストア220に格納された情報は、溶接電源200のトラブルシューティング、点検、動作、メンテナンスおよび/またはアップグレードを容易にすることができる。
【0025】
電源プロセスコンポーネント270は、少なくとも一部分、電源制御データストア220に格納された情報に基づいて、電源制御210の設定を容易にすることができる。例えば、電源プロセッサコンポーネント270は、情報(例えば、電圧設定、波形および/または電流設定)を電源制御210へ送信することを容易にする。
【0026】
I/Oコンポーネント230は、入力信号を溶接システムのノードから受信することができる。例えば、I/Oコンポーネント230は、入力信号を近接スイッチから受信することができ、そのスイッチは、ワークピースが物理的に存在することを示している。少なくとも一部分、I/Oコンポーネント230からの情報に基づいて、電源制御210は、電力出力を出力ポート212へ提供する。さらに、I/Oコンポーネント230は、出力信号を溶接システムのノードへ送信することができる。
【0027】
ワイヤ給電制御コンポーネント240により、溶接プロセスで利用され消費できるワイヤの配信の割合を容易に決めることができる。
【0028】
通信コンポーネント250は、溶接電源200と(図示していない)遠隔システム(例えば、他の溶接電源、パーソナルデジタルアシスタント、ローカルコンピュータシステムおよび/または遠隔コンピュータシステム)との間の通信を容易にする。例えば、通信コンポーネント250は、電源設定データストア220に格納された情報を取出し、その情報を(図示しない)遠隔システムへ送信して、溶接電源200のトラブルシューティング、点検、動作、メンテナンスおよび/またはアップグレードを容易にすることができる。例えば、電源制御210の設定の時刻、コンポーネントの変更項目、および(図示しない)遠隔システムへの電源制御210の設定の履歴、を識別することによって、通信コンポーネント250は、溶接電源200から遠隔の物理的な位置にいる溶接技師が溶接電源200のトラブルシューティングを行うことを可能にする。
【0029】
通信コンポーネント250を、(図示していない)遠隔システムで周波数調整無線通信(frequency adjusting wireless communication)プロトコル(例えば、ブルートゥース)を利用する無線通信に適合させることができる。図3を参照すると、本発明の態様に従う、溶接システム300が例示されている。溶接システム300は、溶接電源200および無線通信デバイス310(例えば、無線通信に適合される、パームパイロットのような、パーソナルデジタルアシスタント)を含む。無線通信デバイス310は、溶接電源200の近接(例えば、10m以内)な範囲内に置くことができ、例えば、電源設定データストア220のコンテントの取り出しおよび/または検査する。無線通信デバイス310を、さらに、溶接電源200へ情報(例えば、溶接手順)を送信するように適合することができる。通信コンポーネント250を、さらに、通信リンクによって他の溶接ノード、例えば、アークリンク溶接通信基準(Arclink Weld Communications Standard)、と通信をするように適合することができ、従って、さらに、電源設定データストア220に格納された情報の移動を容易にする、ということを理解すべきである。
【0030】
図2に戻ると、通信コンポーネント250によって、溶接電源200を(図示しない)遠隔システムへ結合することができる。例えば、その遠隔システムは、イーサネット(登録商標)(IEEE802.3)、無線イーサネット(登録商標)(IEEE802.11)、PPP(point−to−point−protocol)、ポイント・トゥー・マルチポイントショートレンジRF(point−to−multipoint short range)(無線周波数)、WAP(Wireless Application Protocol)、ブルートゥース、IP、IPv6、TCPおよびユーザデータグラムプロトコル(UDP)を利用している。さらに、通信コンポーネント250は、エクストラネットおよび/または共有プライベートネットワークによって、通信が可能である。
【0031】
通信コンポーネント250は、ポスト第2世代モバイル通信テクノロジー(例えば、3G)を利用し、他のデバイス(例えば、WAPゲートウェイ)との通信を可能にする。通信コンポーネント250は、再プログラム可能であるソフトウエアを含むことができる。通信コンポーネント250は、さらに、1つのチャネルおよび/または多数のチャネル間のシフトによって通信することができ、それらは、例えば、実行されるべき通信のタイプ(例えば、音声、データおよび/または高速データ)に依存している。通信コンポーネント250を、さらに、例えば、優先レベルに基づいた特定の通信様式を利用するように適合することができる。さらに、通信コンポーネント250を、認識機能を実行するように適合して、通信を容易にすることができる。例えば、通信コンポーネント250は、通信(例えば、一時的な使用)に利用できる周波数を決定でき、それら周波数の各々の通信に関連したコストを決定でき、取り扱いの権利をチャネルのオーナーと交渉することができる。さらに、通信コンポーネント250は、さらに、送信の品質および/または受信の情報を監視でき、および送信周波数を適応的に修正することができる。通信コンポーネント250は、溶接電源200内に埋め込まれている移動通信手段、例えば(図示していない)モバイル通信チップセットを備えたプリント回路、を含むことができ、および/または溶接電源200の外部にある移動通信手段、例えば、溶接電源200用の移動通信モデムとして用いられる(図示していない)携帯電話、を含むことができる。
【0032】
1つの実装において、通信コンポーネント250を、例えば、赤外データ規格(IrDA)プロトコルを利用する赤外通信のために適合することができる。通信コンポーネント250は、1つまたは2つ以上のIrDAプロトコル層を実装することができる。それら層は、物理層、リンクアクセスプロトコル(IrLAP)、リンク管理プロトコル(IrLMP)、情報アクセスサービス(IAS)、タイニートランスポートプロトコル(tiny transport protocol)(TinyTP)、オブジェクト交換プロトコル(IrOBEX)、シリアルおよびパラレルポートエミュレーション(IrComm)および/またはローカルエリアネットワークアクセス(IrLAN)、である。溶接手順データストア260は、溶接電源200に利用できる溶接手順を格納することができる。例えば、多数の溶接手順を、(例えば、カスタマ部分の数および/または溶接プロセスに伴ったマテリアルのタイプに基づいた)オペレータの選択を可能にするために、溶接電源200に格納することができる。さらに、溶接手順を、(図示していない)遠隔システムから通信コンポーネント250を介して、溶接手順データストア260へ移動することができる。例えば、(図示していない)遠隔システムは、溶接手順を、少なくとも一部分、電源設定データストア220に格納された情報および/または実行されるべき溶接タスクに基づいて溶接電源200へ移動することができる。
【0033】
図4を参照すると、本発明の態様に従う、無線溶接電源設定システム400が例示されている。無線通信デバイス310は、電源設定データストア220および/または第1溶接電源410の溶接手順ストア260に格納された情報を受信することができる。例えば、無線通信デバイス310は、電源設定データストア220および/または第1溶接電源410の溶接手順ストア260に格納された情報を受信することができる。その後は、無線通信デバイス310は、受信した情報の少なくとも幾つかを第2溶接電源420へ提供することができ、従って、第1溶接電源410の“複製”を効率良く提供することができる。
【0034】
図5を簡単に参照すると、本発明の態様に従う、無線通信ストレージシステムが例示されている。無線通信デバイス310は、溶接電源510の電源設定データストア220および/または溶接手順ストア260に格納された情報を受信することができる。ついで、無線通信デバイス310は、受信された情報の少なくとも幾つかを、溶接電源510からワークステーション/PC520へ提供して、例えば、(例えば、第1溶接電源への破壊的なダメージの場合)情報のアーカイブを容易にすることができる。オプションで、ワークステーション/PC520は、受信された情報の少なくとも幾つかを、(例えば、WANを介して)無線通信デバイス310から(図示していない)遠隔システムへ提供して、さらに、情報のアーカイブを容易にすることができる。
【0035】
次に、図6を参照すると、本発明の態様に従う、溶接システム600が例示されている。溶接システム600は、溶接電源200および遠隔システム610(例えば、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)および/またはコンピュータに基づいたマイクロプロセッサ)を含む。溶接電源200を、ネットワーク620を介して、有効に、遠隔システム610へ結合する。例えば、ネットワーク620は、イーサネット(登録商標)(IEEE802.3)、無線イーサネット(登録商標)(IEEE802.11)、PPP(point−to−point protocol)、ポイント・トゥー・マルチポイントショートレンジRF(無線周波数)、WAP(無線アプリケーションプロトコル)、ブルートゥース、IP,IPv6、TCP、IrDAプロトコルおよびユーザデータグラムプロトコル(UDP)、を使用することができる。さらに、ネットワーク接続は、エクストラネットおよび/または共有プライベートネットワークに経由であっても良い。例えば、ネットワーク接続は、溶接電源200からインターネットサービスプロバイダ(ISP)経由で遠隔システム610へと向かう(図示していない)電話接続を介するものでも良い。他の可能なネットワーク接続は、ローカルエリアネットワーク(LAN)を介して遠隔システム610へと向かうものである。溶接電源200と遠隔システム610との間で交換された情報は、種々のフォーマットであっても良く、およびASCIIテキストファイル、HTML、SHTML、VBスクリプト、JAVA(登録商標),CGIスクリプト、JAVA(登録商標)スクリプト、ダイナミックHTML、PPP、RPC、TELNET、TCP/IP、FTP、ASP、XML、PDF、EDI、WML、ならびに他のフォーマット、のような技術を含むことができるが、それらに限定されない。
【0036】
オプションで、遠隔システム610は、セキュリティコンポーネント630を含む。セキュリティコンポーネント630は、溶接電源200と遠隔システム610との間の安全な通信を容易にする。溶接情報をインターネットのような一般のネットワークによって移動させても良いということを与えられると、セキュリティコンポーネント630は、暗号化されたデータ通信を、遠隔システム610と溶接電源200との間の認証および許可サービスと一緒に提供する。認証は、主張しているユーザまたは溶接電源200が主張すべきものである、ということの決定を言う。許可は、ユーザまたは溶接電源200を遠隔システム610によって、溶接情報をアクセスするように権限を与えている、ということを証明するプロセスである。暗号化は、データが権限を与えられていないエージェントによって簡単に理解されない暗号のような形式へ変換することである。例えば、認証、権限化、および否認防止(non−repudation)を、公開鍵基盤(PKI)およびX.509公開鍵インフラストラクチャを利用すべく確立し、認証およびメッセージの保全性を提供しても良い。さらに、セキュアソケットレイヤー(SSL)およびセキュアHTTP(SHTTP)を、認証およびデータの符号化を提供するために使用しても良く、そこで、専用の認証および許可の技術を、公的に利用可能な暗号化アルゴリズムまたはそれらのカスタムメイドの設計のどちらかを利用すべく使用しても良い。カスタムメイドの設計に基づいたこれらの例外を持った、これらのプロトコルは、当業者によって容易に理解される。それらは、インターネット・エンジニアリング・タスクフォース(Internet Engineering Task Force)(IETF)および他のソースから、リクエスト・フォー・コメント(Request For Comment)(RFC)ドキュメントに提供された仕様書の中で規定されている。
【0037】
セキュリティコンポーネント630は、さらに、1つまたは2つ以上の以下のプロトコルを利用して確立することができる暗号化を使用することができる。例えば、PGP、S/MIMEプロトコルを、暗号化されたeメールを提供するために使用しても良い。SSHおよび/またはSSH2プロトコルを、暗号化されたターミナルセッションを提供するために利用しても良く、そこで、インターネットプロトコルセキュリティ(IPSEC)プロトコルを、データの符号化を提供するために使用しても良い。公的に利用可能な符号化アルゴリズムおよび/またはそれらのカスタムメイドの設計のどちらかを利用したクローク技術を、また、使用しても良い。カスタムメイドの設計に基づいたこれらの例外を持った、これらのプロトコルは、当業者によって容易に理解される。それらは、インターネット・エンジニアリング・タスクフォース(IETF)および他のソースから、リクエスト・フォー・コメント(RFC)ドキュメントに提供された仕様書の中で規定されている。
【0038】
ネゴシエーションは、遠隔システム610のセキュリティコンポーネント630と溶接電源200との間で起こる。これらの交渉を、例えば、溶接電源200の(図示していない)TCP/IPドライバと遠隔システム610との間に、安全な(例えば、符号化された)データチャネルを確立するために利用しても良い。
【0039】
セキュリティコンポーネント630は、さらに、ユーザ/溶接電源200のタイプ、および/または特定のユーザ/溶接電源200に基づいたアクセス権を規定することができる。例えば、一つの溶接機を有するユーザは、十分に全てのユーザにアクセス可能な溶接情報へのアクセスを許可される一方、ことによると種々の地理的な位置にわたり広がった何百もの溶接機を有するユーザ(例えば、自動化した工場)は、特定の構成要素に関連したユーザへアクセス可能な情報(例えば、特定の部分数および/またはプラントの位置に対する溶接手順)と一緒に、十分に全てのユーザにアクセス可能な溶接情報へのアクセスを許可される。従って、セキュリティコンポーネント630は、安全な通信を容易にし、および/または、少なくとも一部分、溶接電源200および/またはユーザと認められたアクセス権に基づいた情報のアクセスを検証する。
【0040】
図7、8および9は、本発明による、溶接電源への設定情報を提供する種々の態様を実現するための方法論が例示されている。その方法は、ブロックによって示されたアクションまたはプロセスのグループを構成している。説明を簡潔にするために、その方法論を一連のブロックとして示し説明する一方、本発明によれば、幾つかのブロックは、ここで示され説明されたものとは異なる順序および/または他のブロックと平行して起こっても良いので、本発明を、ブロックの数または順序によって制限しない、ということを理解し認識すべきである。例えば、当業者は、方法論を状態図でのように一連の相互関係のある状態として二者択一的に示すことができる、ということを理解し認識するであろう。さらに、全ての図示された動作を、本発明による方法論を実施するために必要としているわけではない。
【0041】
図7を参照すると、本発明による、溶接電源への設定情報を提供するための方法論700を提供している。710で開始すると、溶接電源を検証する(例えば、許可されたシステムユーザであると決定する)。714では、溶接電源についての設定情報を受信する(例えば、電源設定データストア220から取り出す)。720では、設定情報が期待と同じもの(例えば、最新の設定以来変更がない)かどうか決定する。720での決定がNOである場合、724で、溶接電源から受信した設定情報を(例えば、遠隔システム上に)格納し、プロセスは730へと続く。720での決定がYESである場合、プロセスは730へと続く。730では、溶接電源を(例えば、異なる溶接電源設定で)設定すべきかどうかに関して、決定する。730での決定がYESである場合、734で、溶接電源が設定すべき物理的な容量(例えば、所望の設定をロードするための十分なメモリ)を有しているかどうか、決定する。734での決定がYESである場合、764で、所望の設定情報を溶接電源へ移動させる。768では、その設定情報を(例えば、遠隔システム上に)格納しそれ以上のプロセスは起こらない。734での決定がNOである場合、それ以上のプロセスは起こらない。
【0042】
730での決定がNOである場合、740で、溶接電源を(以前に格納された設定情報に基づいて)復元すべきかどうか、決定する。740での決定がNOである場合、それ以上のプロセスは起こらない。740での決定がYESである場合、744で、溶接電源用のハードウエアを、設定を復元するために命令する必要があるかどうか、決定する。744での決定がYESである場合、750で、命令を、溶接電源の設定を復元する必要があるハードウエアに対して設定し、プロセスは、754へと続く。744での決定がNOである場合、プロセスは754へと続く。754では、ソフトウエアを、溶接電源を復元するために命令する(例えば、溶接手順)必要があるかどうか、決定する。754での決定がNOである場合、それ以上プロセスは起こらない。754での決定がYESである場合、760で、命令を、溶接電源を復元する必要があるソフトウエアに対して設定し、(例えば、ネットワーク接続を介して)送信する。
【0043】
上記で説明されてきたものは、本発明の種々の態様である。もちろん、本発明の説明のために、全ての考え得る構成要素または方法論の組み合わせを記述することは可能ではないが、当業者であれば、本発明の多くの更なるコンビネーションおよび交換が可能であることを理解するであろう。従って、本発明は、特許請求の範囲の精神およびその範囲内にある変更、修正および変形のような全てを包括することを意図する。
【符号の説明】
【0044】
100 溶接電源
1001 電源制御1
100N 電源制御N
120 電源制御データストア
130 電源プロセッサコンポーネント
140 電源制御
1501 電源溶接アプリケーション1
150N 電源溶接アプリケーションN
200 溶接電源
2101 電源制御1
210M 電源制御M
220 電源設定データストア
230 I/Oコンポーネント
240 ワイヤ給電制御コンポーネント
250 通信コンポーネント
260 溶接手順ストア
270 電源プロセッサコンポーネント
310 無線通信デバイス
410 第1溶接電源
420 第2溶接電源
510 溶接電源
520 ワークステーション/PC
610 遠隔システム
630 セキュリティコンポーネント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接電源の電圧および電流のうち少なくとも1つを制御する、少なくとも1つの電源制御コンポーネント、前記少なくとも1つの電源制御コンポーネントに関連した情報を格納する電源設定データストア、および、通信コンポーネントを備える溶接電源と、遠隔システムとを備える溶接システムにおいて、前記溶接電源の設定を容易にするための方法であって、
前記通信コンポーネントが、前記電源設定データストアに格納された溶接電源設定情報を取出すステップと、
前記取出した溶接電源設定情報が期待と同じものであるかどうか決定するステップと、
前記取出した溶電源設定情報が期待と同じものでない場合、前記取出した溶接電源設定情報を前記遠隔システムに格納するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記溶接電源設定情報は、前記電源制御コンポーネントの設定の日付、前記電源制御コンポーネントの設定の時刻、前記溶接電源のハードウエア設定情報、前記電源制御コンポーネントのソフトウエアバージョン、前記電源制御コンポーネントのシリアル番号、前記電源制御コンポーネントのID、前記溶接電源にインストールされた溶接プログラム、前記溶接電源のコンポーネント変更履歴および前記溶接電源のメモリ容量、のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記溶接電源が復元されるべきかどうか決定をするステップと、
前記溶接電源が復元されるべきである場合に、前記溶接電源に関連したハードウエアまたはソフトウエアに対して命令を設定するステップと、
前記ソフトウェアに対して命令を設定する場合に、前記溶接電源によって利用されるソフトウエアを送信するステップと
をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の方法。

【図1】
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【図1a】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−162607(P2010−162607A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32306(P2010−32306)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【分割の表示】特願2003−272555(P2003−272555)の分割
【原出願日】平成15年7月9日(2003.7.9)
【出願人】(399011597)リンカーン グローバル インコーポレーテッド (24)
【Fターム(参考)】