説明

写真処理装置

【課題】処理液の蒸気ガスの臭気によって操作者が不快感を感じにくく、装置構成が簡略で小型なものとする。
【解決手段】処理槽1a〜1fと遮蔽プレート2との間に形成された閉空間9からガス排出管4を経て排出された処理液の蒸気ガスが、処理槽1a〜1f内の処理液の温度調整をするための液体が流れる液体管3内に導入される。蒸気ガスは液体管3内において臭気成分が除去され、その後、ガス放出管6から装置外に放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真感光材料を自動的に処理する写真処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印画紙やフィルムなどの感光材料に対して自動的に現像、漂白、安定化などの処理を施すことが可能な写真処理装置が知られている。かかる写真処理装置には、現像液や漂白液などの処理液が貯留された複数の処理槽を感光材料が順次搬送されていく特許文献1に記載されているタイプのものがある。
【0003】
上述したような写真処理装置では、処理液として腐食性を有するものが用いられることが多く、しかも処理液の温度は良好な処理を行うために35℃前後に維持されている必要がある。そのため、処理液は蒸気ガスとなって装置内の他の個所に達し、当該個所において部材を腐食させたり、錆を生じさせたりする可能性がある。そこで、このような事態を防止するためには、ファンなどを用いて処理液の蒸気ガスを強制的に装置の外へ排気する必要がある。
【特許文献1】特開2001−201799号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記処理液から発生した蒸気ガスは臭気を含んでいる。そのため、例えば上記の写真処理装置を部屋内で使用し、処理液の蒸気ガスをファンなどにより写真処理装置からその部屋内に排気した場合には、部屋内に臭気成分を含む蒸気ガスが充満し、操作者に不快感を与えることになって、操作者は写真処理作業を快適に行うことができなくなってしまう。また、処理液の蒸気ガスを、写真処理装置が設置された部屋の外(例えば屋外)に排気するには、室外排気用のダクトを設ける必要があり、ダクトを室外排気口に接続するなどの煩雑な取付作業が必要になるとともに、写真処理装置が設置された部屋内における写真処理装置の位置変更を容易に行うことができなくなる。また、別機構として、例えば特開2001−125234号公報に記載されているように、蒸気ガスを脱臭するための流体槽を設けることなどにより装置の内部で蒸気ガスの脱臭を行うことも可能であるが、その場合には装置構成が複雑で大掛かりなものとなってしまうため、同様に写真処理装置の位置変更が制限されることになる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、処理液の蒸気ガスを写真処理装置が設置された部屋の外に排気するダクトを設けない場合であっても、写真処理装置の操作者が蒸気ガスの臭気によって不快感を感じにくく、別機構として流体槽などの脱臭機構を設ける必要がなく装置構成が簡略な写真処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による写真処理装置は、写真感光材料を処理する処理液が貯溜された処理槽と、前記処理槽の上方に閉空間を形成する遮蔽部材と、前記処理槽内の処理液の温度調整のために前記処理槽に近接する部分が形成されていると共に、処理液の蒸気ガスに対して脱臭効果を有する流体が流れる流体路と、前記閉空間内及び前記流体路内に開口を有するガス排出路と、前記閉空間内にある処理液の蒸気ガスを一方の前記開口から前記ガス排出路へと強制的に送出する強制排気機構と、前記ガス排出路の他方の前記開口から排出されて前記流体路内にある処理液の蒸気ガスを外部空間に放出するガス放出路とを備えている。
【0007】
本発明によると、処理液の蒸気ガスが脱臭効果を有する流体と接触した後にガス放出路から外部空間に放出される。したがって、蒸気ガスを写真処理装置が設置された部屋の外(例えば屋外)に排気するダクトを設けない場合であっても、写真処理装置の操作者が蒸気ガスの臭気によって不快感を感じにくくなる。また、係るダクトが不要となるので、写真処理装置が設置された部屋内における写真処理装置の位置変更を容易に行うことが可能となる。しかも、脱臭効果を有する流体が処理槽内の処理液の温度調整用としても用いられるので、処理槽内の処理液の温度調整用の流体路とは別の機構として蒸気ガスを脱臭するための流体槽を設ける必要がなく、装置構成が簡略なものとなって装置の小型化を図ることができる。
【0008】
前記ガス排出路の他方の前記開口は、流体中に位置していることが好ましい。これによると、ガス排出路から排出された蒸気ガスを含む気泡の全周が脱臭効果を有する流体によって取り囲まれることになるので、脱臭効果を高めることができる。
【0009】
前記流体路は循環路を形成していてもよい。このとき、本発明による写真処理装置は、流体を前記循環路内で強制的に循環させる強制循環機構をさらに備えていることが好ましい。これによると、脱臭効果を有する流体を循環させることにより、流体の再利用が可能となるので、外部から連続的に流体を供給する必要がなくなり、脱臭効果を有する流体を効率よく用いることができる。また、臭気成分を有する蒸気ガスの廃棄量を少なくすることができるので環境保全の面でも好ましい。
【0010】
また、本発明による写真処理装置は、前記流体路を流れる流体としてのオゾン水を生成し且つ生成されたオゾン水を前記流体路に供給するオゾン水生成供給機構をさらに備えていることが好ましい。オゾンガス(O3 )については、特開平10−057465号公報などに記載されているように、強力な殺菌、酸化分解力を有することが知られており、これらの性質を利用して任意空間の消毒、脱臭が行われている。また、オゾンガス状態よりもオゾン水状態の方が反応性が高く、高い脱臭効果が得られる。このため、オゾン水生成供給機構を備えた写真処理装置は高い脱臭効果を維持することが可能となる。
【0011】
本発明による写真処理装置は、前記流体路内に流体を貯溜するタンクが形成されており、前記ガス排出路が前記タンク内に処理液の蒸気ガスを排出するものであることが好ましい。これによると、流体路において処理槽に近接する部分に蒸気ガスが排出されないことにより、流体路による処理槽の温度調整能力のばらつきを抑制することができる。
【0012】
本発明による写真処理装置は、前記流体路に流れる流体の流量を調整するための流量調整機構と、前記処理槽内の処理液の温度を検出するための温度センサと、前記温度センサが検出した温度に応じた流量の流体が前記流体路を流れるように、前記流量調整機構を制御する流量制御手段とをさらに備えていてよい。これによると、処理槽内の処理液の温度変化が抑制されるので、写真感光材料に形成される画像の品質を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、本発明の第一実施形態に係る写真処理装置全体の概略図である。また、図2は、図1に示す写真処理装置の内、現像装置の一部の概略図である。
【0015】
図1に示す写真処理装置90は、読み取り装置20、制御装置23、焼付処理機24、及び、現像処理機27を含んでいる。読み取り装置20は、ハロゲンランプから成る光源を収納したランプハウジング25と、現像済フィルムをセットするフィルムマスク26と、スキャナ(図示せず)とを有している。読み取り装置20においては、ランプハウジング25内のハロゲンランプの光で、フィルムマスク26にセットした現像済フィルムが照射される。そして、フィルムを透過した透過光がスキャナにより読み取られる。
【0016】
制御装置23は、写真処理装置90の各部の動作を制御する。また、制御装置23は、読み取り装置20により読み取られたデジタル画像データに対して色補正やγ補正などの各種画像補正処理を施す。
【0017】
焼付処理機24内には、デジタル露光装置22が配置されている。デジタル露光装置22は、制御装置23において画像処理が施されたデジタル画像データに基づいて、ペーパーマガジン21から引き出された感光材料である印画紙Pを露光する。
【0018】
現像処理機27は、デジタル露光装置22で露光済の印画紙Pに対して現像、漂白、安定化などの処理を施す現像装置31と、現像装置31で処理された印画紙Pを乾燥させるための乾燥装置32と、乾燥された印画紙Pを排出するプリント排出装置33とを有している。
【0019】
現像装置31においては、6個の処理槽1a〜1fが近接配置されている。6個の処理槽1a〜1fには、各種処理液が個別に貯溜されており、処理槽1aには現像液が、1bには漂白定着液が貯留されている。また、安定化液はまず処理槽1fに供給されるようになっており、処理槽1fへの供給により溢れた安定化液が処理槽1eへ流出し、同様に1d、1cの順で安定化液が供給されるような構造となっている。各処理槽1a〜1f内には、印画紙Pが処理槽1a、1b、1c、1d、1e、1f内をこの順で順次搬送されるようにするための多数の搬送ローラ対を含む搬送機構31bが配置されている。
【0020】
6個の処理槽1a〜1fの上方には、遮蔽プレート2が配置されている。これにより、6個の処理槽1a〜1fと遮蔽プレート2との間には、6個の処理槽1a〜1fに共通した1つの閉空間9が形成されている。閉空間9内には、6個の処理槽1a〜1fから発生した臭気を伴う蒸気ガスが充満している。
【0021】
液体管3の水平方向に延びた部分は、6個の処理槽1a〜1fの外壁面と接しており、液体管3は処理槽1aの外壁面の管口より処理槽1a内部に挿入され、液体管3の垂直方向に延びた部分は、処理槽1a内部の処理液と接している(図2の液体管3の点線部参照)。液体管3内には、処理槽1aと熱交換を行う熱媒である液体が間欠的に流される。これにより、処理槽1a内の処理液の温度は、最適温度範囲内に収まるようにされる。
【0022】
液体管3に流す液体としては、処理液から発生する蒸気ガスに対して脱臭効果を有しているものが用いられる。一般の水道水でもよいが、木酢液、カテキン、フラボノイド、葉緑素、オゾンなどの脱臭効果のある成分を有する液体の使用が好ましい。液体管3の給水口7と排水口8は、それぞれ給水機構、排水機構に接続されている。
【0023】
閉空間9には、閉空間9内において比較的上方に一方の開口16が位置するようにガス排出管4が接続されている。また、ガス排出管4において開口16の近傍には、強制排気機構5が配置されている。強制排気機構5は、閉空間9内部の蒸気ガスを開口16から強制的にガス排出管4内へ送出する。強制排気機構5は、例えばエアーポンプ、ファンを含むものであってよい。ガス排出管4の他方の開口17は、6個の処理槽1a〜1fのうちで最後に印画紙Pが搬送される処理槽1fよりも上流位置における液体管3の内部に設けられている。開口16からガス排出管4内に送出された処理液の蒸気ガスは、開口17から液体管3内に導入される。
【0024】
また液体管3において処理槽1aよりも下流位置には、開口17から液体管3内に導入された蒸気ガスを写真処理装置外部に放出するためのガス放出管6が接続されている。ガス放出管6は、上方に向けて開口している。ガス放出管6の接続位置を液体管3において処理槽1aよりも下流位置としているのは、液体管3内に送出された蒸気ガスと液体管3内の液体との接触時間をできるだけ長くするためである。
【0025】
このように構成された写真処理装置の動作中においては、熱媒としての液体を液体管3に流す流量を制御することによって、処理槽1a内の現像液を適切な温度に調整することができる。前述のように、処理液は良好な処理を行うために35℃付近に維持されている必要があり、特に現像液に対しては厳格な温度管理が必要とされる。そのため、設置場所の環境温度などに応じて処理液の温度調整を行う必要がある。例えば、各処理槽にヒータ(図示せず)を設けることで、処理液をその最適温度範囲内にまで上昇させて処理を行うが、最適温度範囲の上限値よりも高温になると、液体管3に処理液の最適温度範囲の上限値より低温の液体を流すことで、高温になった処理液から熱を吸収し、処理液をその最適温度範囲内にまで冷却することができる。
【0026】
一方、閉空間9に閉じ込められた、6個の処理槽1a〜1fに貯溜された処理液の蒸気ガスは、強制排気機構5の作用により強制的に開口16からガス排出管4へ送出される。ガス排出管4内に送出された蒸気ガスは、液体管3内に設けられた開口17から液体管3内に導入される。
【0027】
このようにして、脱臭効果のある液体と蒸気ガスが液体管3内において接触する。液体管3の中では、蒸気ガスの一部は液体に吸収され、一部はガス状態のまま、両者が混交した状態で液体管3の内部を流れる。このようにして蒸気ガスと脱臭効果のある液体とが接触し、液体の流れによる攪拌作用も働いて、蒸気ガスの臭気成分が除去される。そして、液体管3の内部の蒸気ガスはガス放出管6から装置90外に放出される。この時点で蒸気ガスの臭気成分量は蒸気ガス発生時と比較して低減されているので、ガス放出管6にダクトを設け、写真処理装置90が設置された部屋の外までダクトを延長してガスを排気する必要はなく、装置90を設置した部屋内に蒸気ガスを放出しても、操作者が蒸気ガスの臭気により不快感を感じにくくなる。加えて、係るダクトを設けなくともよくなるので、写真処理装置90が設置された部屋内における写真処理装置90の位置変更を容易に行うことが可能となる。また、液体管3には常に新鮮な液体が流されるので、常に良好な脱臭効果が得られる。
【0028】
しかも、本実施形態では、脱臭効果を有する液体が処理槽1a内の処理液の温度調整用としても用いられているので、処理槽1aの処理液の温度調整用の液体管とは別の機構として蒸気ガスを脱臭するための液体槽を設ける必要がなく、装置構成が簡略なものとなって装置の小型化を図ることができるという利益が得られる。
【0029】
次に、本発明の第二実施形態に係る写真処理装置について説明する。本実施形態に係る写真処理装置は、現像処理機だけが第一実施形態のものと相違しており、残りの部分については共通であるため、ここでは現像処理機を中心として説明することとし、その他の部分についての説明を省略する。また、図1及び図2に示した部材と同じ部材には同じ符号を付すこととし、その説明を省略する。
【0030】
図3は、本実施形態に係る写真処理装置における現像処理機の概略図である。図3に示す現像処理機127は、6個の処理槽1a〜1fと、遮蔽プレート2とを含んでいる。これにより、処理槽1a〜1fの上方には、閉空間9が形成されている。
【0031】
6個の処理槽1a〜1fの外壁面には、液体管103aの水平方向に延びた部分が接触している。また、5個の処理槽1b〜1fの外壁面には、液体管103bの水平方向に延びた部分が接触しており、1個の処理槽1fの外壁面には、液体管103cの水平方向に延びた部分が接触している。また、液体管103a、103b、103cはそれぞれ処理槽1a、1b、1fの外壁面の管口よりそれぞれ処理槽1a、1b、1f内部に挿入され、液体管103a、103b、103cの垂直方向に延びた部分は、それぞれ処理槽1a、1b、1f内部の処理液と接している(図3の液体管103a、103b、103cの点線部参照)。3本の液体管103a、103b、103cの一端である下端は、水平方向に延びた液体管103dと互いに異なる位置において接続されている。3本の液体管103a、103b、103cの他端は、オゾン(O3 )水を貯溜するタンク112に接続されている。タンク112は、3本の液体管103a、103b、103cとの接続部よりも下方において液体管103dに接続されている。これにより、タンク112から液体管103d及び液体管103aを経由してタンク112に戻る循環路、タンク112から液体管103d及び液体管103bを経由してタンク112に戻る循環路、タンク112から液体管103d及び液体管103cを経由してタンク112に戻る循環路の合計3つの循環路が形成されていることになる。これら3つの循環路は、オゾン水で満たされている。
【0032】
液体管103dにおいて、3本の液体管103a、103b、103cと液体管103dとの3つの接続部のうち最もタンク112に近い液体管103cと液体管103dとの接続部と、液体管103dとタンク112との接続部との間には、ポンプ110が取り付けられている。ポンプ110は、液体管103d内のオゾン水に対して、これを図3中右から左へと強制的に送出するエネルギーを付与する。
【0033】
3本の液体管103a、103b、103cの他端と処理槽1fとの間には、それぞれ、液体管103a、103b、103cを開閉する電磁弁113a、113b、113cが取り付けられている。これら3つの電磁弁113a、113b、113cは、制御装置23に制御されることによって、流路を開状態、閉状態、半開状態のいずれかの状態とする。制御装置23には、処理槽1a内の処理液温度を検知する温度センサ114aと、処理槽1b内の処理液温度を検知する温度センサ114bと、処理槽1f内の処理液温度を検知する温度センサ114cとが接続されている。制御装置23は、温度センサ114a、114b、114cによって検知された温度に基づいて、3つの電磁弁113a、113b、113cをそれぞれ独立に制御する。その結果、各処理槽内における処理液の温度変化が抑制されるので、印画紙Pに形成される画像を高品質なものとすることができる。
【0034】
3つの電磁弁113a、113b、113cが閉じている場合、上記3つの循環路が閉じられることになって、ポンプ110を駆動させてもオゾン水がいずれの循環路をも循環しない。これに対して、電磁弁113a、113b、113cが開かれている場合、対応する循環路が開かれることになって、ポンプ110を駆動させるとオゾン水が対応する循環路を循環する。電磁弁113a、113b、113cが半開状態のときにも対応する循環路は開いているが、その流量は半減する。
【0035】
閉空間9には、閉空間9内において比較的上方に一方の開口116が位置するようにガス排出管104が接続されている。また、ガス排出管104において開口116の近傍には、強制排気機構5が配置されている。強制排気機構5は、閉空間9内部の蒸気ガスを開口116から強制的にガス排出管104内へ送出する。ガス排出管104の他方の開口117は、タンク112に貯溜したオゾン水中に位置している。開口116からガス排出管104内に送出された処理液の蒸気ガスは、開口117からタンク112内のオゾン水内に気泡として放出される。そして、タンク112内においてオゾン水中を蒸気ガスの気泡が上昇して行く過程においてオゾン水によって蒸気ガス内の臭気成分が徐々に除去されていく。このようにして臭気成分が低減された蒸気ガスは、タンク112の上部に集められる。
【0036】
タンク112の頂壁には、タンク112の上部に集められた臭気成分が低減された蒸気ガスを写真処理装置外部に放出するためのガス放出管106が接続されている。ガス放出管106は、上方に向けて開口している。第一実施形態と同じく、ガス放出管106から装置外に放出された蒸気ガスは、臭気成分が低減されたものであるので、操作者が蒸気ガスの臭気により不快感を感じにくくなる。その他、第一実施形態で説明したのと同様の効果が得られる。特に、本実施形態では、ガス排出管104の開口117がオゾン水中に位置しているため、開口117から排出された蒸気ガスの気泡の全周がオゾン水に取り囲まれることになるので、大きな脱臭効果が得られる。また、この開口117がタンク112内に設けられているために、液体管103a、103b、103c内に蒸気ガスが導かれることがない。そのため、蒸気ガスの多寡に応じて液体管103a、103b、103cを流れるオゾン水の流量が変動することがなく、液体管103a、103b、103cによる処理槽1a、1b及び1fの温度調整能力のばらつきが抑制される。
【0037】
タンク112の底部には、オゾン水を生成し、その生成したオゾン水をタンク112に供給するオゾン水生成供給機構111が設けられている。オゾン水生成供給機構111におけるオゾン水の生成方法は例えば特許第2542587号など多数の文献に記載された周知技術であるので、ここではその詳細な説明を省略する。また、オゾンガスについては、特開平10−057465号公報などに記載されているように、強力な殺菌、酸化分解力を有することが知られており、これらの性質を利用して任意空間の消毒、脱臭が行われている。また、オゾンが水中に溶解したオゾン水はオゾンガスよりも反応性が高く、高い脱臭効果が得られる。本実施形態では、タンク112内にオゾン水生成供給機構111が設けられているために、タンク112内のオゾン水の脱臭効果が経時劣化するのを防止できる。したがって、高い脱臭効果を維持することが可能となる。また、オゾン水生成供給機構111がタンク112内に配置されているために、タンク112外にオゾン水生成供給機構111が配置されている場合において必要となるオゾン水の配管などが不要となる点で利益が大きい。
【0038】
また、オゾン水が循環路を循環するので、温度調節及び脱臭のためにオゾン水を何度でも再利用することができる。したがって、オゾン水の廃棄量を削減することができ、環境保全面において優れている。また、ランニングコストを低く抑えることが可能である。ただし、オゾン水の脱臭能力が限界を超えて低下した場合には、循環路内のオゾン水を交換することが好ましい。
【0039】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限られるものではなく、様々な設計変更を行うことが可能なものである。例えば、第二実施形態において、ポンプ110を逆回転させてオゾン水を逆方向に循環させてもよい。また、ガス排出管104の開口117がオゾン水の水面よりも上にあってもよいし、液体管103a、103b、103c内にあってもよい。
【0040】
また、上述の実施の形態において、蒸気ガスの臭気成分を除去するための別の機構を設けるようにしてもよい。例えば、ガス排出管104中に、活性炭、酸化アルミニウム、シリカゲル、ゼオライト系吸着剤などの空気中の臭気成分を吸収可能な材料を含む部材を配置して、蒸気ガスがタンク112に到達する前段階で臭気成分を除去してもよい。このようにすることで、蒸気ガスの脱臭効果を高めることができる。また、液体管3又は液体管103a、103b、103cには、液体ではなく、蒸気ガスに対する脱臭効果を有し且つ熱媒として機能する気体を流してもよい。また、上述した実施形態では、流体路、ガス排出路及びガス放出路が共に管材によって構成されていたが、これらが管材以外の部材で構成されていてもよい。また、第一実施形態においては,液体管3の給水口7と排水口8は、それぞれ給水機構、排水機構に接続するように構成されていたが、第二実施形態のように、タンクに接続して循環路を形成してもよく、更に、第二実施形態においては、タンク112と液体管によって循環路が形成されていたが、第一実施形態のように、タンクが給水機構、排水機構にそれぞれ接続されており、必要に応じて給水、排水を行うような構成としてもよい。
【0041】
さらに、前記した実施形態では印画紙の現像装置を含む写真処理装置について説明したが、本発明は、フィルムの現像装置を含む写真処理装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第一実施形態に係る写真処理装置全体の概略図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る写真処理装置の内、現像装置の一部を示した概略図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る写真処理装置の内、現像装置の一部を示した概略図である。
【符号の説明】
【0043】
1a〜1f 処理槽
2 遮蔽プレート
3 液体路
4 ガス排出管
5 強制排気機構
6 ガス放出管
7 給水口
8 排水口
10 ポンプ
16 開口
17 開口
23 制御装置
111 オゾン水生成供給機構
112 貯溜タンク
113a〜113b 電磁弁
114a〜114c 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
写真感光材料を処理する処理液が貯溜された処理槽と、
前記処理槽の上方に閉空間を形成する遮蔽部材と、
前記処理槽内の処理液の温度調整のために前記処理槽に近接する部分が形成されていると共に、処理液の蒸気ガスに対して脱臭効果を有する流体が流れる流体路と、
前記閉空間内及び前記流体路内に開口を有するガス排出路と、
前記閉空間内にある処理液の蒸気ガスを一方の前記開口から前記ガス排出路へと強制的に送出する強制排気機構と、
前記ガス排出路の他方の前記開口から排出されて前記流体路内にある処理液の蒸気ガスを外部空間に放出するガス放出路とを備えていることを特徴とする写真処理装置。
【請求項2】
前記ガス排出路の他方の前記開口が流体中に位置していることを特徴とする請求項1に記載の写真処理装置。
【請求項3】
前記流体路が循環路を形成しており、
流体を前記循環路内で強制的に循環させる強制循環機構をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の写真処理装置。
【請求項4】
前記流体路を流れる流体としてのオゾン水を生成し且つ生成されたオゾン水を前記流体路に供給するオゾン水生成供給機構をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の写真処理装置。
【請求項5】
前記流体路内に流体を貯溜するタンクが形成されており、前記ガス排出路が前記タンク内に処理液の蒸気ガスを排出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の写真処理装置。
【請求項6】
前記流体路に流れる流体の流量を調整するための流量調整機構と、
前記処理槽内の処理液の温度を検出するための温度センサと、
前記温度センサが検出した温度に応じた流量の流体が前記流体路を流れるように、前記流量調整機構を制御する流量制御手段とをさらに備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の写真処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−127970(P2007−127970A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322430(P2005−322430)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】