説明

写真用磁気記録層の塗布方法

【目的】本発明の目的は、磁気記録特性が良好でかつ写真性への悪影響が少ない磁気記録層を有したハロゲン化銀写真感光材料を製造するにあたり、塗布面状のすぐれた磁気記録層とともに、すぐれた塗布液安定性を有する製造方法を提供することにある。
【構成】本発明は、透明支持体上に透明な磁気記録層を有するハロゲン化銀写真感光材料を製造する方法において、磁気記録層の塗布液粘度が120cP以下であり、かつ、用いる磁性体の比表面積が40m2/g以上であることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ハロゲン化銀写真感光材料およびその製造方法に関するものであり、特にきわめてすぐれた磁気記録性能を有する磁気記録層を含有したハロゲン化銀写真感光材料およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ハロゲン化銀写真感光材料(以下感材と略す)においては、撮影時やプリント時に画像情報を提供するのみであったが、特開平4−68336や、特開平4−73737に開示されているように、感材に透明磁気記録層を全面に付与することにより、画像以外に撮影の日時、天候、縮小/拡大比などの撮影条件、再プリント枚数、ズームしたい箇所、メッセージなどの現像、プリント条件などを感材に入力でき、またテレビ/ビデオなどの映像機器への入力も可能となった。
【0003】このような透明磁気記録層をマグネ素材で感材に全面に付与する場合、本来の感材の性能を損なわないようにするため、マグネの塗布量はきわめて低くおさえる必要があり、それに伴って、磁気出力を最大限に得るためにはバインダー量も低くする必要がある。従来、磁気テープの製造では数ミクロンの厚みのマグネ層を作成するために高粘度かつ高濃度のマグネ液を用いて塗布しているが、上記のように薄層塗布を良好な塗布面状で行うためには、塗布方式によっても異なるが、たとえばワイヤーバー塗布方式などの場合、バインダー濃度の低いマグネ液を用いることが必要となり、従って、低粘度のマグネ液を用いることが必要となる。しかしながら、低粘度のマグネ液を用いた場合、マグネの比重が5以上とひじょうに大きいため、塗布液保存中にマグネが凝集沈降し、所定量のマグネを安定に塗布できなくなるという問題があり改善が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、磁気記録特性が良好でかつ写真性への悪影響が少ない磁気記録層を有したハロゲン化銀写真感光材料を製造するにあたり、塗布面状のすぐれた磁気記録層とともに、すぐれた塗布液安定性を有する製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、透明支持体上に透明な磁気記録層を有するハロゲン化銀写真感光材料を製造する方法において、磁気記録層の塗布液粘度が120cP以下であり、かつ、用いる磁性体の比表面積が40m2/g以上であることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の製造方法によって達成された。
【0006】ここで、塗布液粘度の測定はB型粘度計にて毎分60回転でおこなうものとする。また磁性体の比表面積は通常のBET表面積の測定法に従うものとする。前述のように、写真感材用に透明マグネ層を付与する場合、マグネ量もそのバインダー量も低くすることが必要となり、通常、塗布面状のよいサンプルを得るためには低粘度の塗布液を使用することが必要となる。特にワイヤーバーを用いた塗布方式などの場合、スジやムラのないすぐれた塗布面状を与えるためには液粘度は120cP以下、好ましくは40cP以下、さらに好ましくは5cP以下とすることが要求される。液粘度の下限は特にないが約0.1cPである。このとき、塗布液中でマグネはいかに細かく分散されていようとも徐々に沈降し始め、長期の保存中には上澄みが発生してくる。このことは、塗布液タンクや配管中でマグネ濃度が不均一になることを示しており、安定製造を困難なものとする。一方、従来の磁気テープの製造では塗布液が高濃度かつ高粘度であるため、この中でのマグネの安定性は十分であり、マグネサイズとしては安定性に関しては特に制限はないが、分散性からは特に比表面積で20〜40m2/gのものが分散し易いためよく用いられており、あまり比表面積の大きいものはかえって分散しにくいという欠点があった。
【0007】このような状況を鑑み本発明者らは鋭意研究の結果、上記低粘度のマグネ液において、用いる磁性体の比表面積を40m2/g以上としたときマグネ液の分散安定性が飛躍的に向上し、好ましくは47m2/g以上、さらに好ましくは55m2/g以上とすることにより、分散安定性がさらに向上することがわかった。この比表面積は数値が大きくなるにつれて磁性体サイズは小さくなることを示しており、従って、本発明では磁性体を微粒子にすることが好ましいわけであるが、磁気性能がなくなる磁性体サイズである約10nm以下までになると好ましくなく、通常比表面積の上限は100m2/gである。
【0008】次に、本発明についてさらに詳しく具体的に説明する。本発明に用いられる磁気記録材料としては、強磁性酸化鉄微粉末、Co含有強磁性酸化鉄微粉末、強磁性二酸化クロム微粉末、強磁性金属微粉末、強磁性合金微粉末、バリウムフェライトなどが使用できる。これらの強磁性微粉末の製法は既知であり、本発明で用いられる強磁性微粉末についても公知の方法で製造することができる。
【0009】強磁性粉末の形状は針状、米粒状、球状、立方体状、板状などいずれでもよいが特に針状が好ましい。強磁性粉末のpH、表面処理は特に制限なく、チタン、珪素、アルミニウムなどの元素を含む物質で表面処理されててもよいし、カルボン酸、硫酸エステル、ホスホン酸、燐酸エステル、ベンゾトリアゾールなどの含窒素複素環をもつ吸着性化合物やシランカップリング剤やチタネートカップリング剤などの化合物のような有機化合物で処理されていてもよい。好ましいpHの範囲は5〜10であり、強磁性体酸化鉄粉末の場合、2価/3価の鉄の比は特に制限されない。また、強磁性体粉末の保磁力は500Oe以上2000Oe以下が好ましい。500Oe以下では再生出力の増加が少なく、2000Oe以上では飽和記録することができないので、高出力が得られない。より好ましくは800〜1600Oeである。
【0010】マグネ層のバインダーとしては後述のように種々のものが使用でき、塗布液の溶剤も水や有機溶剤などバインダーに合わせて種々選択できる。また、塗布液中のバインダー量は前述の液粘度となるように設定され、使用するポリマーの種類や分子量によって異なるが、通常0.5〜20wt%であり、また、マグネ濃度もマグネの種類や塗布量によって異なるが、通常0.04〜6.0wt%である。バインダー/マグネ比としては2〜30が好ましく、5〜20がさらに好ましい。また、マグネ層の厚みは0.3〜3.0μが好ましく、0.6〜1.7μがさらに好ましい。さらに、マグネの塗布量としては、0.02〜0.3g/m2が好ましく、0.07〜0.15g/m2がさらに好ましい。このとき、写真性への影響を極力小さくするために塗布後の光学濃度の増加が例えばBフィルター透過濃度で0.05〜0.30になるようにすることが好ましい。
【0011】塗布液中へのマグネの分散方法は公知の種々の方法が使用できるが、ロールミルやニーダーなどの混練機や、サンドグラインダー、アトライター、アイガーミル、ダイノミル、ピンミル、コボールミルなどのビーズを使用する分散機の使用が好ましい。塗布液を後述の支持体上に塗布する方式としてはドクターコート、エクストルージョンコート、スライドコートなど公知の種々の方法が使用できるが、ワイヤーバーコートが特に好ましい。
【0012】本発明に用いられるバインダーは従来、磁気記録媒体用の結合剤として使用されている公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、反応型樹脂、酸、アルカリ又は生分解性ポリマーおよびこれらの混合物を使用することができる。上記脂肪のTgは−40℃〜150℃、重量平均分子量は1万〜100万、好ましくは1万〜30万である。上記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、酢酸ビニルとビニルアルコール、マレイン酸および/またはアクリル酸との共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・アクリロニトロル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体・ニトロセルロース、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート樹脂などのセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレンブタジエン樹脂、ブタジエンアクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂を挙げることができる。
【0013】上記熱硬化性樹脂または、反応型樹脂としては加熱により分子量がきわめて大きくなる物で、たとえばフェノール樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、硬化型ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、シリコン樹脂、アクリル系反応樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ニトロセルロースメラミン樹脂、高分子量ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、尿素ホルムアルデヒド樹脂、低分子量グリコール/高分子量ジオール/ポリイソシアネートの混合物、ポリアミン樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0014】上記放射線硬化型樹脂としては上記熱可塑性樹脂に放射線硬化官能基として炭素−炭素不飽和結合を有する基を結合させたものが用いられる。好ましい官能基としてはアクリロイル基、メタクリロイル基などがある。以上列挙の結合剤分子中に、極性基(エポキシ基、CO2 M、OH、NR2 、NR3 X、SO3 M、OSO3 M、PO3 2 、OPO3 2 、ただしMは水素、アルカリ金属またはアンモニウムであり、一つの基の中に複数のMがあるときは互いに異なっていてもよい、Rは水素またはアルキル基である)を導入したものが磁性体の分散性、耐久性上好ましく本発明のフッ素系オリゴマー界面活性剤の添加効果が顕著に現れる。極性基の含有量としてはポリマー1グラム当り10-7〜10-3当量が、好ましくはさらには10-6〜10-4当量が好ましい範囲である。以上列挙の高分子結合剤は単独または数種混合で使用され、エポキシ系、アジリジン系、イソシアネート系の公知の架橋剤、および/あるいは放射線硬化型ビニル系モノマーを添加して硬化処理することができる。イソシアネート系架橋剤としてはイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物で、たとえばトリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネート類、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの反応生成物、及びこれらのイソシアネート類の縮合により生成したポリイソシアネートなどをあげられる。
【0015】放射線硬化ビニル系モノマーとしては、放射線照射によって重合可能な化合物であって、炭素−炭素不飽和結合を分子中に1個以上有する化合物であり、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエステル類、ビニルエステル類、ビニル異節環化合物、N−ビニル化合物、スチレン、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、オレフィン酸等があげられる。これらのうち好ましいものとして(メタ)アクリロイル基を2個以上有する、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、などのポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物との反応物、等がある。これらの架橋剤は、架橋剤を含む全結合剤の5から45wt%であることが好ましい。また、本発明の磁気記録材料に親水性バインダーを使用できる。使用する親水性バインダーとしては、リサーチ・ディスクロージャー No.17643、26頁、および同 No.18716、651頁に記載されており、水溶性ポリマー、セルロースエステル、ラテックスポリマー、水溶性ポリエステルなどが例示されている。水溶性ポリマーとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、アルギン酸ソーダ、でんぷん、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体などであり、セルロースエステルとしてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどである。ラテックスポリマーとしては塩化ビニル含有共重合体、塩化ビニリデン含有共重合体、アクリル酸エステル含有共重合体、酢酸ビニル含有共重合体、ブタジエン含有共重合体などである。この中で最も好ましいのはゼラチンである。ゼラチンは、その製造過程において、ゼラチン抽出前、アルカリ浴に浸漬される所謂アルカリ処理(石灰処理)ゼラチン、酸浴に浸漬される酸処理ゼラチンおよびその両方の処理を経た二重浸漬ゼラチン、酵素処理ゼラチンのいずれでもよい。必要に応じて一部分をコロイド状アルブミン、カゼイン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、寒天、アルギン酸ソーダ、デンプン誘導体、デキストランなどの糖誘導体、合成親水性コロイド、たとえばポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリルアミドまたはこれらの誘導体、部分加水分解物、ゼラチン誘導体などをゼラチンと併用してもよい。
【0016】ゼラチンを含む磁気記録材料を硬膜するのは好ましい。磁性記録層に使用できる硬膜剤としては、たとえば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物類、ジアセチル、シクロペンタンジオンの如きケトン化合物類、ビス(2−クロロエチル尿素)、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、そのほか米国特許第3,288,775号、同2,732,303号、英国特許第974,723号、同1,167,207号などに記載されている反応性のハロゲンを有する化合物類、ジビニルスルホン、5−アセチル−1,3−ジアクリロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、そのほか米国特許第3,635,718号、同3,232,763号、英国特許第994,869号などに記載されている反応性のオレフィンを持つ化合物類、N−ヒドロキシメチルフタルイミド、その他米国特許第2,732,316号、同2,586,168号などに記載されているN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号等に記載されているイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号等に記載されているアジリジン化合物類、米国特許第2,725,294号、同2,725,295号等に記載されている酸誘導体類、米国特許第3,091,537号等に記載されているエポキシ化合物類、ムコクロル酸のようなハロゲンカルボキシアルデヒド類をあげることができる。あるいは無機化合物の硬膜剤としてクロム明バン、硫酸ジルコニウム、特公昭56−12853号、同58−32699号、ベルギー特許825,726号、特開昭60−225148号、特開昭51−126125号、特公昭58−50699号、特開昭52−54427号、米国特許3,321,313号などに記載されているカルボキシル基活性型硬膜剤などを例示できる。
【0017】硬膜剤の使用量は、通常乾燥ゼラチンに対して0.01〜30重量%、好ましくは0.05〜20重量%である。磁気記録層の厚みは0.1μ〜10μ、好ましくは0.2μ〜5μ、より好ましくは0.5μ〜3μである。磁気粒子とバインダーの重量比は好ましくは1:100〜40:100からなり、より好ましくは5:100〜30:100である。本発明の磁性材料を有した磁気記録層はハロゲン化銀写真感光材料(以下、写真フィルム、写真感材あるいは感材と称する)に好ましく用いられる。以下この写真感材について記す。本発明の磁気材料を含有する磁気記録層は、写真用支持体の裏面に塗布又は印刷によって全面またはストライプ状に設けることができる。このような方法により、支持体上に塗布された磁気記録層は必要により層中の磁性材料を直ちに乾燥しながら配向させる処理を施したのち、形成した磁気記録層を乾燥する。このときの支持体の搬送速度は、通常2m/分〜500m/分でおこなわれ、乾燥速度は20℃〜120℃で制御される。又必要により表面平滑化加工を施したりして、本発明の磁気記録層を製造する。これらは、例えば、特公昭40−23625号公報、特公昭39−28368号公報、米日特許第3473960号明細書、等にしめされている。又、特公昭41−13181号公報にしめされる方法はこの分野における基本的、且つ重要な技術と考えられる。
【0018】磁気記録層に、潤滑性向上、カール調節、帯電防止、接着防止などの機能を合せ持たせてもよいし、別の機能性層を設けて、これらの機能を付与させてもよい。必要に応じて磁気記録層に隣接する保護層を設けて耐傷性を向上させてもよい。磁気記録層を有する支持体の裏面をカレンダリング処理して平滑性を向上させ、磁気信号のS/N比を向上できる。この場合、カレンダリング処理を施した後に支持体上に感光層を塗布するのが好ましい。次に写真感材で好ましく用いられる支持体について記す。本発明に用いられる感材の支持体の素材としては、特に限定されないが、各種のプラスチックフィルムが使用でき好ましいものとしては、セルロース誘導体(例えばジアセチル、トリアセチル、プロピオニル、ブタノイル、アセチルプロピオニル−アセテートなど)、ポリアミド、米国特許第3,023,101号記載のポリカーボネート、特公昭48−40414号などに記載のポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート ポリエチレンナフタレートなど)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミドなどであり、特に好ましいのはトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレートである。これらのフィルムの中には極性基(エポキシ、COOM、OH、NR2 、NR3 X、SO3 M、OSO3 M、PO3 2 、OP3 OM2 、ただしMはH、アルカリ金属、アンモニアでありRはH、又は炭素数1〜20のアルキル基)を有してもよい。本発明のこれらの支持体は、その厚さが75μm以上300μmでありより好ましくは90μm〜200μmである。
【0019】75μmより薄いと急激な引っ張り強度が加えられた時に切断されやすく、又300μmより大きいと膜強度としては強くなるが、長時間フィルムカートリッジ中に保管された場合に磁気ヘッドとの接触不良を生じる。特に米国特許4,913,368号などの給送型カートリッジ中に保存された場合に磁気特性の劣化が著しい。これら、支持体は柔軟性付与等の目的で可塑剤を添加、使用される事もある。特にセルロースエステルでは、トリフェニルフォスフェート、ビフェニルジフェニルフォスフェート、ジメチルエチルフォスフェート、トリメトキシエチルトリメリテート等の可塑剤含有物が好ましい。これら支持体上に写真層(例えば感光性ハロゲン化銀乳剤層、中間層、フィルター層、本発明の透明マグネ層や、導電性層など)を強固に接着させるために薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理、などの表面活性化処理をした後、直接写真乳剤を塗布して接着力を得てもよいし、一旦これらの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで下塗層を設けこの上に写真乳剤層を塗布する方法でもよい。その際、セルロース誘導体に対しては、メチレンクロライド/ケトン/アルコール混合系有機溶剤に分散したゼラチン液を単層塗布し、下塗層を付与するのが用いられる。ゼラチン硬化剤としてはクロム塩(クロム明ばんなど)、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒドなど)、イソシアネート類、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンなど)、エピクロルヒドリン樹脂、ビニルスルホアルキル系硬化剤などを挙げることができる。これら下塗液には、必要に応じて各種の添加剤を含有させることができる。例えば界面活性剤、帯電防止剤、アンチハレーション剤着色用染料、顔料、塗布助剤、カブレ防止剤等である。本発明の下塗液を使用する場合には、レゾルシン、抱水クロラール、クロロフェノール等の如きエッチング剤を下塗液中に含有させることもできる。
【0020】本発明の下びき層にはSiO2 、TiO2 、の如き無機物微粒子又はポリメチルメタクリレート共重合体微粒子(0.05〜10μm)をマット剤として含有することができる。本発明にかかわる下塗液は、一般によく知られた塗布方法、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、或いは米国特許第2,681,294号明細書に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法等により塗布することができる。必要に応じて、米国特許第2,761,791号、3,508,947号、2,941,898号、及び3,526,528号明細書、原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)等に記載された方法により2層以上の層を同時に塗布することができる。次に写真感材について以下に述べる。本発明の磁気記録層を有する感材はハロゲン化銀乳剤層、バック層、保護層、中間層、アンチハレーション層などで、構成されているが、これらは主に親水性コロイド層で用いられる。その場合の親水性コロイド層のバインダーとしては、例えばゼラチン、コロイド状アルブミン、カゼインなどの蛋白質;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース化合物;寒天、アルギン酸ソーダ、でんぷん誘導体等の糖誘導体;合成親水性コロイド例えばポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリルアミドまたはこれらの誘導体および部分加水分散物、デキストラン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ロジン等が挙げられる、必要に応じてこれらのコロイドの二つ以上の混合物を使用してもよい。この中で最も用いられるのはゼラチンあるいはその誘導体であるがここに言うゼラチンはいわゆる石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチンおよび酵素処理ゼラチンを指す。
【0021】本発明の写真感光材料におけるハロゲン化銀乳剤層およびその他の親水性コロイド層は各種の有機または無機の硬化剤(単独または組合せて)により硬化されうる。特に本発明で好ましいハロゲン化銀カラー写真感光材料の代表例としてカラーリバーサルフィルムとカラーネガフィルム、あるいは白/黒ネガフィルム、映画用ネガ,ポジフィルムをあげることができる。特に一般用カラーネガフィルムとリバーサルフィルムが好ましいカラー写真感光材料である。以下一般用カラーネガフィルムを用いて説明する。この感光材料は、支持体上に青感色性層、緑感色性層、赤感色性層のハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層が設けられていればよく、ハロゲン化銀乳剤層および非感光性層の層数および層順に特に制限はない。典型的な例としては、支持体上に、実質的に感色性は同じであるが感光度の異なる複数のハロゲン化銀乳剤層から成る感光性層を少なくとも1つ有するハロゲン化銀写真感光材料であり、該感光性層は青色光、緑色光、および赤色光の何れかに感色性を有する単位感光性層であり、多層ハロゲン化銀カラー写真感光材料においては、一般に単位感光性層の配列が、支持体側から順に赤感色性層、緑感色性層、青感色性の順に設置される。しかし、目的に応じて上記設置順が逆であっても、また同一感色性層中に異なる感光性層が挟まれたような設置順をもとりえる。上記、ハロゲン化銀感光性層の間および最上層、最下層には各層の中間層等の非感光性層を設けてもよい。
【0022】該中間層には、特開昭61−43748号、同59−113438号、同59−113440号、同61−20037号、同61−20038号明細書に記載されているようなカプラー、DIR化合物等が含まれていてもよく、通常用いられるように混色防止剤を含んでいてもよい。各単位感光性層を構成する複数のハロゲン化銀乳剤層は、西独特許第1,121,470号あるいは英国特許第923,045号、特開昭57−112751号、同62−200350号、同62−206541号、同62−206543号、同56−25738号、同62−63936号、同59−202464号、特公昭55−34932号、同49−15495号明細書に記載されている。ハロゲン化銀粒子は、立方体、八面体、十四面体のような規則的な多面体結晶を有するもの、球状、板状のような変則的な結晶形を有するもの、双晶面などの結晶欠陥を有するもの、あるいはそれらの複合形でもよい。ハロゲン化銀の粒径は、約0.2ミクロン以下の微粒子でも投影面積直径が約10ミクロンに至るまでの大サイズ粒子でもよく、多分散乳剤でも単分散乳剤でもよい。本発明に使用できるハロゲン化銀写真乳剤は、例えばリサーチ・ディスクロージャー(RD)No17643(1978年12月)、22〜23頁、“I.乳剤製造((Emulsion preparation and types)”、および同No18716(1979年11月)、648頁、グラフキデ著「写真の物理と化学」、ポールモンテル社刊(P.Glafkides,Chemie et Phisique Photographique,Paul Montel,1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」、フォーカルプレス社刊(G.F.Duffin,Photographic Emulsion Chemistry(Focal Press,1966))、ゼリクマンら著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V.L.Zelikman et al.,Making and Coating Photographic Emulsion,Focal Press,1964)などに記載された方法を用いて調製することができる。米国特許第3,574,628号、同3,655,394号および英国特許第1,413,748号などに記載された単分散乳剤も好ましい。また、アスペクト比が約5以上であるような平板状粒子も本発明に使用できる。平板状粒子は、ガトフ著、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Gutoff,Photographic Science and Engineering)、第14巻、248〜257頁(1970年);米国特許第4,434,226号、同4,414,310号、同4,433,048号、同4,439,520号および英国特許第2,112,157号などに記載の方法により簡単に調製することができる。結晶構造は一様なものでも、内部と外部とが異質なハロゲン組成からなるものでもよく、層状構造をなしていてもよい、また、エピタキシャル接合によって組成の異なるハロゲン化銀が接合されていてもよく、また例えばロダン銀、酸化鉛などのハロゲン化銀以外の化合物と接合されていてもよい。また種々の結晶形の粒子の混合物を用いてもよい。
【0023】ハロゲン化銀乳剤は、通常、物理熟成、化学熟成および分光増感を行ったものを使用する。本発明の効率は、金化合物と含イオウ化合物で増感した乳剤を使用したときに特に顕著に認められる。このような工程で使用される添加剤はリサーチ・ディスクロージャーNo17643および同No18716に記載されており、その該当箇所を後掲の表にまとめた。本発明に使用できる公知の写真用添加剤も上記の2つのリサーチ・ディスクロージャーに記載されており、下記の表に関連する記載箇所を示した。
添加剤種類 RD17643 RD18716 1 化学増感剤 23頁 648頁右欄 2 感度上昇剤 同上 3 分光増感剤、 23〜24頁 648頁右欄〜 強色増感剤 649頁右欄 4 増 白 剤 24頁 5 かぶり防止剤、 24〜25頁 649頁右欄〜 および安定剤 6 光吸収剤、 25〜26頁 649頁右欄〜 フィルター染料、 650頁左欄 紫外線吸収剤 7 ステイン防止剤 25頁右欄 650頁左〜右欄 8 色素画像安定剤 25頁 9 硬 膜 剤 26頁 651頁左欄 10 バインダー 26頁 同上 11 可塑剤、潤滑剤 27頁 650頁右欄 12 塗布助剤、 26〜27頁 同上 表面活性剤また、ホルムアルデヒドガスによる写真性能の劣化を防止するために、米国特許4,411,987号や同第4,435,503号に記載されたホルムアルデヒドと反応して、固定化できる化合物を感光材料に添加することが好ましい。本発明には種々のカラーカプラーを使用することができ、その具体例は前出のリサーチ・ディスクロージャー(RD)No17643、VII −C〜Gに記載された特許に記載されている。水中油滴分散法に用いられる高沸点溶媒の例は米国特許第2,322,027号などに記載されている。
【0024】水中油滴分散法に用いられる常圧での沸点が175℃以上の高沸点有機溶剤の具体例としては、フタル酸エステル類、リン酸またはホスホン酸のエステル類、安息香酸エステル類、アミド類、アルコール類またはフェノール類、脂肪族カルボン酸エステル類、アニリン誘導体、炭化水素類などが挙げられる。また補助溶剤としては、沸点が約30℃以上、好ましくは50℃以上約160℃以下の有機溶剤などが使用でき、典型例としては酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−エトキシエチルアセテート、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。ラテックス分散法の工程、効果および含浸用のラテックスの具体例は、米国特許第4,199,363号、西独特許出願(OLS)第2,541,274号および同第2,541,230号などに記載されている。本発明の感光材料は乳剤層を有する側の全親水性コロイド層の膜厚の総和が28μm以下であり、かつ、膜膨潤速度T1/2 は30秒以下が好ましい。膜厚は、25℃相対湿度55%調湿下(2日)で測定した膜厚を意味し、膜膨潤速度T1/2 は、当該技術分野において公知の手法に従って測定することができる。例えばエー・グリーン(A.Green)らによりフォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photogr.Sci.Eng.) 、19巻、2号、124〜129頁に記載の型のスエロメーター(膨潤計)を使用することにより測定でき、T1/2 は発色現像液で30℃、3分15秒処理した時に到達する最大膨潤膜厚の90%を飽和膜厚とし、このT1/2 の膜厚に到達するまでの時間と定義する。
【0025】膜膨潤速度T1/2 は、バインダーとしてのゼラチンに硬膜剤を加えること、あるいは塗布後の経時条件を変えることによって調整することができる。また、膨潤率は150〜400%が好ましい。膨潤率とは、さきに述べた条件下での最大膨潤膜厚から、式:(最大膨潤膜厚−膜厚)/膜厚に従って計算できる。本発明に従ったカラー写真感光材料は、前述のRD. No.17643の28〜29頁、および同 No.18716の615左欄〜右欄に記載された通常の方法によって現像処理することができる。本発明のハロゲン化銀カラー感光材料には処理の簡略化及び迅速化の目的で発色現像主薬を内蔵しても良い。内蔵するためには、発色現像主薬の各種プレカーサーを用いるのが好ましい。例えば米国特許第3,342,597号のインドアニリン系化合物、同第3,342,599号、リサーチ・ディスクロージャー14,850号及び同15,159号記載のシッフ塩基型化合物、同第13,924号記載されている。
【0026】
【実施例】以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1表1に示す種々の比表面積を有するCo表面処理γ酸化第2鉄(針状粒子、保磁力800〜850Oe)それぞれ6.4gに対し、分子量約50,000の塩酢ビ35gとメチルエチルケトン458.6gを加えサンドグラインダーを用いて分散した(2000回転、4時間)。分散メディアとしてはガラスビーズを用いた。得られた液の粘度はそれぞれほぼ2cPであった。得られた液をワイヤーバーでウェット塗布量が約15cc/m2となるように、100μのPETベース上に塗布した。得られたフィルムの光学濃度をBフィルター濃度で測定するとそれぞれマグネによって約0.18上昇した。
【0027】同様に液中のマグネ濃度は一定でポリマーの濃度を変えてそれぞれ、表1の液粘度になるように調製し、先と同様に塗布した。各塗布液の沈降安定性を沈降管を用いて測定し、マグネが沈降し始める時間で評価した。また、塗布物の面状を目視で評価した。この結果、表1に示すように、塗布液が低粘度になるほど塗布面状が良く、しかも特に低粘度では比表面積の大きいマグネを用いるほど液安定性が良いことがわかる。
【0028】
【表1】


【0029】
【表2】


【0030】
【発明の効果】本発明により、塗布面状のよい透明マグネ層を与えるとともに、塗布液の保存安定性のよい塗布液を供給することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明支持体上に透明な磁気記録層を有するハロゲン化銀写真感光材料を製造する方法において、磁気記録層の塗布液粘度が120cP以下であり、かつ、用いる磁性体の比表面積が40m2/g以上であることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の製造方法。
【請求項2】 前記塗布液粘度が40cP以下であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真感光材料の製造方法。
【請求項3】 前記塗布液粘度が5cP以下であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真感光材料の製造方法。
【請求項4】 前記磁性体の比表面積が47m2/g以上であることを特徴とする請求項1〜3に記載のハロゲン化銀写真感光材料の製造方法。
【請求項5】 前記磁性体の比表面積が55m2/g以上であることを特徴とする請求項1〜3に記載のハロゲン化銀写真感光材料の製造方法。

【公開番号】特開平5−341436
【公開日】平成5年(1993)12月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−147440
【出願日】平成4年(1992)6月8日
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)