説明

冷凍または冷蔵ショーケース用ナイトカバー

【課題】変形し難くいため、操作性に優れ、保冷性が良好であり、結露が発生し難く、毛羽などの発生もない、冷凍または冷蔵ショーケース用ナイトカバーを提供する。
【解決手段】布帛からなるナイトカバーであって、該布帛が、平織物からなり、該平織物を構成する経糸または緯糸が、中空断面マルチフィラメントと多葉断面マルチフィラメントとで構成される混繊糸からなることを特徴とする冷凍または冷蔵ショーケース用ナイトカバーとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍または冷蔵商品を販売するオープンショウケースにおいて、非営業時に商品の衛生を保持したり、消費電力を節約するためにその開口部を覆うナイトカバーに関し、特に該ナイトカバーがロールに巻き取られて収納されるタイプのオープンショーケースに好適な冷凍または冷蔵ショーケース用ナイトカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍または冷蔵ショーケース用ナイトカバーにはケース内の冷気を保持する保冷性をはじめ、商品の汚染や氷結を防止する密閉性や結露防止性、防カビ性、適度な通気性などが求められ、ショーケースのサイズや形状、構造などに応じて(1)樹脂製パネル、(2)樹脂製シート、(3)フィルム、(4)不織布、(5)編物、(6)織物、(7)(2)〜(6)の積層材などが用いられてきた。
【0003】
しかし近年はショーケースの大型化が進み、それに伴ってナイトカバーの設置および収納などの操作を楽に出来るようにした、ナイトカバーをロールに巻付けてこれを引出したり巻取ったりしてその設置や収納を行うタイプのショーケースが急増している。このため、かかるタイプのショーケースに適したナイトカバーとして、従来の要求特性に加えて、ロール巻き取りの操作性や繰り返し受ける引っ張りや屈曲に対する耐久性に優れたナイトカバーが熱望されている。
【0004】
一方、これらの要求に対応するナイトカバーとして例えば特許文献1〜5などに開示されたナイトカバーが提案されている。
しかしながら、特許文献1〜3に用いられる不織布や編物においては、その構造より明らかなように、厚みが過大になったり、引っ張りに対して変形したり、ロールに繰り返し巻取られる際に蛇行したりしわが入ったり、あるいは不織布のランダムな繊維配列や編糸のループ構造や繊維間および糸間の粗な空隙などの影響により結露水の拡散や乾燥速度が低下したり、通気性が増加して保冷性が低下したりする問題がある。
【0005】
更にこの他、編物においては、その編目構造に起因して布帛のそりが発生してショーケースの密閉性が低下したり、織物においては、不織布や編物に対して嵩性が少なく保冷性低下したり、不織布や紡績糸を使用した織編物においては、繰り返し使用時にショーケース内へ毛羽が脱落して製品が汚染するといった問題もある。
【0006】
また、特許文献4および5に用いられる不織布とフィルムやシートの積層材おいては、上記不織布と同様の厚みや毛羽脱落の問題の他、繰り返し使用による不織布とフィルムあるいはシート間の剥離の問題、あるいはフィルムやシートに通気性が無いことによる結露水や洗浄時の水の乾燥難の問題などがあり、いずれのナイトカバーも未だ満足できる水準には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−041799号公報
【特許文献2】特開2006−167284号公報
【特許文献3】実用新案登録第3058051号公報
【特許文献4】特開平8−154787号公報
【特許文献5】特開平9−079737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、その目的は、変形し難くいため、操作性に優れ、保冷性が良好であり、結露が発生し難く、毛羽などの発生もない、冷凍または冷蔵ショーケース用ナイトカバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、冷凍または冷蔵ショーケース用に最適な布帛構成について検討を行い、次の織物を用いることによって上記課題を解決できることを見出した。
かくして本発明によれば、布帛からなるナイトカバーであって、該布帛が、平織物からなり、該平織物を構成する経糸または緯糸が、中空断面マルチフィラメントと多葉断面マルチフィラメントとで構成される混繊糸からなることを特徴とする冷凍または冷蔵ショーケース用ナイトカバーが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の冷凍または冷蔵ショーケース用ナイトカバーは、中空断面マルチフィラメントと多葉断面マルチフィラメントとからなる混繊糸で構成される平織物であることによって、寸法安定性に優れ、設置や収納操作が楽にできるといった特徴を有している。また、保冷性や通気性が良好で、結露が発生し難く、防カビ性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のナイトカバーを使用するショーケースの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明のナイトカバーに用いる混繊糸において、(A)は混繊糸の形態、(B)は混繊糸の横断面の一例を示す概略図である。
【図3】本発明のナイトカバーに用いる織物を構成する繊維の横断面の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態例を図面により説明する。図1は、本発明のナイトカバーの特性が活かされる、これにナイトカバーをロールに巻付けて設置しこれを引出したり巻取ったりして使用する、冷凍または冷蔵ショーケースの一例を示す斜視図である。ここで、1はオープンショーケース、2はナイトカバーを巻き取るロール、3はナイトカバーを示し、図1は、オープンショーケースの開口部がナイトカバーによりカバーされた状態を示す。
【0013】
本発明の冷凍または冷蔵ショーケース用ナイトカバー(以下、単にナイトカバーと称することがある)は、上記図1の3のナイトカバーとして用いることができるものであり、布帛からなるナイトカバーであって、該布帛が、平織物からなり、該平織物を構成する経糸または緯糸が、中空断面マルチフィラメントと多葉断面マルチフィラメントとで構成される混繊糸からなることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、上記のように中空と多葉という異なる断面形態を有し、好ましくは糸足差をするマルチフィラメントからなる混繊糸を使用していることによって、中空および多葉断面の形態や糸足差により生まれる芯部と鞘部といった糸形態などにより、繊維内および繊維間や織物組織間への空気層の取込みが可能となる他、多葉断面マルチフィラメントの側面の溝形態やマルチフィラメントの集合形態による効率的な毛管現象が働くため、保冷性や適度な通気性、並びに結露防止性や速乾性、更には防カビ性などが得られ、本発明の課題を解決することができる。
【0015】
本発明で用いる中空断面マルチフィラメントの横断面形態は、図3(1)〜(4)に示すような中空断面の他にも断面内に空隙を有すものであれば一向に構わないが、繊維の断面積に占める中空率または空隙部の割合を30〜50%とすることが好ましい。中空率または空隙部が30%未満では断熱効果が低下しやすく、50%を越えると断面が潰れ易い欠点が生じるためである。
【0016】
一方、本発明で用いる多葉断面マルチフィラメントの横断面形態は、図3(5)〜(7)に示すような3、4、6葉の多葉断面を例示することができる。葉数は3〜8葉が望ましく、全葉数の半数以上において隣接する二葉の凸部に接する接線長Lに対する凹部の深さDの比率D/L×100(%)が25%以上あることが好ましい。3葉未満では凹部の溝が形成し難く、8葉より多いと、葉の巾が小さくなって裂け易くなると共に深い溝が得難くなり、またD/Lの比率が25%未満では高度の毛管作用が得られ難く好ましくない。
【0017】
本発明においては、布帛の形態が平織物である必要があり、後述するトータルカバーファクターを有する比較的高密度の平織物とすることが好ましい。これによって、不織布や編物あるいはそれらとフィルムなどを積層したものに比べて、厚みを薄く、かつ引張りに対する変形を少なく、また強度を強く、更には毛羽脱落を少なくできるため、ロール巻取り時の操作性、並びに繰り返し受ける引っ張りや屈曲などに対する耐久性、更にはケース内商品の汚染や氷結を防止する密閉性、および摩擦などによる毛羽脱落の少ない防塵性などが得られる。
【0018】
上記平織物は、以下に述べるトータルカバーファクターが1400〜1700になるように設定することが好ましい。
トータルカバーファクター=N1×√D1+N2×√D2
ここで、N1は経糸密度(本/インチ)、D1は経糸の総繊度(dtex)、N2は緯糸密度(本/インチ)、D2は緯糸の総繊度(dtex)を示す。
【0019】
すなわち、トータルカバーファクターが1700を越えると織物の充填度が不足して織物の経糸方向および緯糸方向に対して斜め方向に変形し易くなり、ロール巻取り時にしわが発生したり巻き形態が崩れ易くなり好ましくない。一方、トータルカバーファクターが1400未満では、織物が硬くなると共に繊維間や織物組織間の空隙が圧縮され、ロール巻取り性や保冷性が低下し易く好ましくない。
【0020】
上記混繊糸においては、マルチフィラメントの繊維間に空隙を付与することによって、前述した効果をさらに高めることができる。かかる方法としては、仮撚加工などを施して繊維に捲縮を付与する方法を採用することができるが、このような方法ではマルチフィラメントに伸縮性も付与してしまい織物が変形し易くなるため、中空断面マルチフィラメントと多葉断面マルチフィラメントとに糸足差を設ける方法を好ましく採用することができる。
【0021】
図2(A)には、かかる糸足差を有する混繊糸の形態の概略図を示す。ここで、4が糸長の長いマルチフィラメント、5が糸長の短いマルチフィラメントを示している。また、図2(B)は、本発明の混繊糸の一例として、糸長の長いマルチフィラメントを4葉断面マルチフィラメント、糸長の短いマルチフィラメントを中空断面マルチフィラメントとした場合の混繊糸の断面図を示している。本発明においては、糸長の長いマルチフィラメントが中空断面マルチフィラメント、糸長の短いマルチフィラメントが多葉断面マルチフィラメントであってもよく、その場合は、中空断面マルチフィラメントが鞘部に、多葉断面マルチフィラメントが芯部に配された混繊糸となるが、図2(B)に示すような多葉断面マルチフィラメントが鞘部に配された混繊糸とする方が、効率的な毛管現象が働きやすい。
【0022】
このように、糸足差を有する混繊糸とした場合、糸長の長いマルチフィラメントが鞘部を、糸長の短いマルチフィラメントが芯部を形成する混繊糸となり、両者の間に大きな空隙を付与することができ、しかも芯部のマルチフィラメント5が直線状をなすため引っ張りに対して寸法が変化し難く、ナイトカバーとして好適なロール巻取り性が得られる他、適度な通気性も得られ、好ましい。
【0023】
また、かかる混繊糸を用いることにより、中空断面内部および多葉断面の凹部および糸長の異なるマルチフィラメント間に生じる繊維間空隙、更には織物組織間空隙などに多量の断熱に有効な空気層を確保でき、不織布や編物対比厚みが薄いにも関わらず高性能の保冷性を得ることができる。
【0024】
また、多葉断面マルチフィラメントを用いる効果に加え、糸足差を有するマルチフィラメントからなる混繊糸とする効果によって、混繊糸の繊維間や織物組織間の空隙に生ずる毛管作用に更に該多葉断面の凹部が有する高い毛管作用が加わり、これによって織物に付着した結露水や洗浄水などが面方向にすばやく拡散できるようになり、結露防止性能や乾燥速度を飛躍的に向上できる他、繊維間空隙に水が溜まり難いため保冷性や防カビ性も向上できる。
【0025】
中空断面マルチフィラメントと多葉断面マルチフィラメントとの糸足差としては6〜12%が好ましい。糸足差が、6%未満ではこれによって得られる繊維間空隙が少なく保冷効果が弱まり、一方、12%を越えると逆に繊維間空隙が粗になって毛管作用が弱まり好ましくない。
【0026】
本発明おいて、中空断面マルチフィラメント、多葉断面マルチフィラメントとしては、合成繊維であることが好ましく、引っ張りや屈曲を繰り返し受けても良好な耐久性並びに防塵性を得ることができる。上記合成繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ナイロン6、ナイロン66などのナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、アクリル等からなる合成繊維が適しており、これらに順ずる強度や伸度を有する合成繊維であれば一向に構わないが、中でもポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートからなる合成繊維が好ましい。
【0027】
以上に説明した本発明のナイトカバーを構成する混繊糸は、中空断面マルチフィラメントと多葉断面マルチフィラメントを引き揃え、空気交絡ノズル等を用いて交絡することによって製造することができる。
【0028】
また、中空断面マルチフィラメントと多葉断面マルチフィラメントとで糸足差を有する混繊糸は、例えば、沸水収縮率が異なるマルチフィラメントを用い、以下の方法により製造することができる。
【0029】
沸水収縮率が低いマルチフィラメント(低収縮マルチフィラメント)は、紡糸速度が2000〜4000m/分の高配向未延伸糸、いわゆるPOYを用い、定長熱処理または弛緩熱熱処理することによって製造することができる。一方、沸水収縮率が高いマルチフィラメント(高収縮マルチフィラメント)としては、製糸時の熱セットを弱くしたり、重合度を高めたポリマーや、イソフタル酸などを共重合したポリマーを用いて製糸することにより、製造することができる。
【0030】
上記の低収縮マルチフィラメントと高収縮マルチフィラメントとを引き揃え、空気交絡ノズルに通して両フィラメント間に交絡を付与し、必要に応じてリング撚糸装置で撚りを施し、巻き取ることにより、本発明に使用する混繊糸を製造することができる。
【0031】
こうして得られた混繊糸は、製織時は糸足差を有していないため、混繊糸の形態がスムースで高密度に製織することができ、製織後の精練や熱セットで収縮差により、糸足差を発現させることができる。
【0032】
上記混繊糸は、無撚、あるいは甘撚を加えて平織物に製織し、その後、精練および熱収縮処理および仕上げセットを施す。ここで、混繊糸に撚りを加える場合は、甘撚り水準を超えると繊維間空隙が圧縮されてしまい好ましくない。
【0033】
以上により、織物表面が平滑でかつ引っ張りや屈曲に対して偏りが無く、均質で、良好なロール巻取り性を有する平織物が得られ、最後に冷凍または冷蔵ショーケースの形状に合わせて縫製することによって本発明の好適なナイトカバーを得ることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれに限定されることはない。
【0035】
(1)寸法安定性
試料から長さ方向に沿って採取した長さ300mm、巾50mmのサンプルを引っ張り試験機を用いて試長200mm、引張り速度20mm/分で伸長し、引張り荷重が1Kg/巾50mmになった時の伸び率で示し、この伸び率が3%未満を○、3%以上6%未満を△、6%以上を×で示した。
【0036】
(2)通気性
JIS L1096に準じ、フラジール通気性を測定し、50cc/cm2・sec以上120cc/cm2・sec未満を○、120cc/cm2・sec以上300cc/cm2・sec未満を△、50cc/cm2・sec未満または300cc/cm2・sec以上を×で示した。
【0037】
(3)保温性
JIS L1096に準じて測定し、保温性(%)が20%以上を○、20%未満を×で示した。
【0038】
(4)速乾性
300mm四方の試料を水平にしてその中央に水を1cc滴下し、その試料の重量が元に戻るまでの時間で示し、180分未満を○、180分以上360分未満を△、360分以上を×で示した。
【0039】
(5)防塵性
18mm巾の粘着テープを試料に押し付けて剥がし、その粘着テープに付着した繊維の本数を100cm当たりに換算して示し、100本未満を○、100本以上200本未満を△、200本以上を×で示した。
【0040】
(6)糸足差
織物から混繊糸を抜き取り、0.1cN(0.1g)×混繊糸の総繊度(dtex)の荷重をとりつけ、5cmの長さにカットし、カットした混繊糸から、中空断面フィラメント(単繊維)と多葉断面フィラメント(単繊維)とを取り出し、それぞれ、0.1cN(0.1g)×の単繊維繊度(dtex)の荷重をかけて長さを測定し、下記式により糸足差(%)を算出する。各フィラメントの長さはそれぞれ10本を測定しその平均値とした。なお、糸足差は絶対値で示す。
糸足差(%)=(LB−LA)/LA×100
ただし、LAは中空断面フィラメントの糸長(cm)であり、LBは多葉断面フィラメントの糸長(cm)である。
【0041】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸し紡糸速度が3000m/分で引取った、断面形状が、D/L×100=32%の図3(7)に示すような6葉断面を有し、全繊度が124dtex、フィラメント数が36本のポリエステルマルチフィラメント糸に、1%弛緩しながら120℃で熱処理を行い、沸水収縮率が1.5%の低熱収縮マルチフィラメントを得た。
【0042】
一方、イソフタル酸を10モル%共重合したポリエステルを溶融紡糸し、紡糸速度1300m/分で一旦巻き取った未延伸糸を、延伸倍率3.1倍、セット温度160℃で延伸、熱セットし、断面形状が中空率37%の図3(1)に示すような中空断面を有し、強度が3.8cN/dtex、伸度が35%、全繊度が138dtex、フィラメント数が36本、沸水収縮率が13.4%の高収縮マルチフィラメントを得た。
この高収縮マルチフィラメントと、前記6葉断面の低熱収縮マルチフィラメントと引き揃えると共に、1.5%の弛緩を付与しながら空気交絡ノズルに通して両フィラメント間にメーター当たり36個の交絡を付与し、これを引き続きリング撚糸装置によってボビンに巻取り、混繊糸を得た。
【0043】
次に、該混繊糸にメーター当たり120回の撚糸を施してからウォータージェットルームを用いて経糸密度48本/インチ、緯糸密度36本/インチの平織物に製織し、引き続き該織物に精練、ボイルによる収縮処理、乾燥、160℃による仕上げセットなどを施すことによって、6葉断面マルチフィラメントの糸長が中空断面マルチフィラメントの糸長よりも長く糸足差が10.7%であり、トータルカバーファクターが1631である平織物を得た。結果を表1に示す。
【0044】
[比較例1〜3]
実施例1の織物に代えて、全繊度が167dtex、フィラメント数が48本、断面形状が丸断面のポリエステルマルチフィラメントを用いたトリコット編地(比較例1)、原綿の繊度が1.7dtex、断面形状が丸断面のポリエステルニードルパンチ不織布(比較例2)、全繊度が400dtex、フィラメント数が96本、断面形状が丸断面のポリエステルマルチフィラメントを用いた織物基布に酢酸ビニル樹脂をコーティングした樹脂シート(比較例3)を用いた以外は、実施例1と同様にした。結果を表1に示す。
【0045】
[比較例4]
全繊度が275dtex、フィラメント数が72本、強度が4.6cN/dtex、伸度が37%、繊維の断面形状が丸断面のポリエステルマルチフィラメントを用い、メーター当たり120回の撚糸を施し、ウォータージェットルームを用いて経糸密度52本/inch、緯糸密度39本/inchの平織物に製織し、引き続き該織物に精練、乾燥、160℃による仕上げセットを施し、トータルカバーファクターが1632の平織物を得た。結果を表1に示す。
【0046】
[比較例5]
原綿の繊度が1.7dtex、原綿の断面形状が丸断面のポリエステル短繊維からなる、繊度が286dtex(≒20番手)、強度が3.4cN/dtex、伸度が39%の紡績糸を用い、レピアルームにて経糸密度54本/inch、緯糸密度41本/inchの平織物に製織し、引き続き該織物に精練、乾燥、160℃による仕上げセットを施し、トータルカバーファクターが1632の平織物を得た。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
実施例1に記載の平織物を使用し1.2m×2mのナイトカバーを作成し、図1に示すオープンショーケースのナイトカバー3として設置し、引き出しとロール巻取り収納を30回繰り返したが、ロール巻取り収納性(巻取りロール2への収納のし易さ)、ロール巻取り性、ロール捲癖においては、何れも良好な結果が得られた。
【0049】
また、表1からも明らかなように、実施例1の平織物は、比較例1、2の布帛対比、寸法安定性に優れており、上記のようにロール引取り収納などの取り扱い性が優れていることを裏付けている。また、比較例1〜5の布帛に対しても、保温性、すなわち保冷性が良好であり、適度な通気性を有し、かつ速乾性にも優れているため、結露が起こり難く防カビ性に優れている。また、毛羽が発生し難く製品を汚すこともなく、冷凍または冷蔵ショーケース用ナイトカバーに最適な素材と言える。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のナイトカバーは、変形し難くいため、操作性に優れている。また、保冷性が良好であり、結露が発生し難く防カビ性に優れ、毛羽などの発生もないため、製品を清潔に保つことができる。このため、冷凍または冷蔵ショーケースに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 オープンショーケース
2 巻取りロール
3 ナイトカバー
4 糸長が長いマルチフィラメント
5 糸長が短いマルチフィラメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛からなるナイトカバーであって、該布帛が、平織物からなり、該平織物を構成する経糸または緯糸が、中空断面マルチフィラメントと多葉断面マルチフィラメントとで構成される混繊糸からなることを特徴とする冷凍または冷蔵ショーケース用ナイトカバー。
【請求項2】
多葉断面マルチフィラメントと中空断面マルチフィラメントとが糸足差を有する請求項1に記載の冷凍または冷蔵ショーケース用ナイトカバー。
【請求項3】
多葉断面マルチフィラメントの糸長が中空断面マルチフィラメントの糸長よりも長い請求項2に記載の冷凍または冷蔵ショーケース用ナイトカバー。
【請求項4】
中空断面マルチフィラメントと多葉断面マルチフィラメントとの糸足差が6〜12%である請求項2または3に記載の冷凍または冷蔵ショーケース用ナイトカバー。
【請求項5】
中空断面マルチフィラメントの中空率が30〜50%である請求項1〜4のいずれかに記載の冷凍または冷蔵ショーケース用ナイトカバー。
【請求項6】
多葉断面マルチフィラメントの葉数が3〜8、かつ二葉の凸部に接する接線長Lに対する二葉の凹部の深さDとの比率(L/D)が25%以上である請求項1〜5のいずれかに記載の冷凍または冷蔵ショーケース用ナイトカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−16387(P2012−16387A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153938(P2010−153938)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】