説明

冷凍サイクル装置及び温水生成装置

【課題】除霜時間の短縮ができ、運転効率が高い二元冷凍サイクル装置を提供すること。
【解決手段】低温側冷凍サイクル110と、高温側冷凍サイクル120とを備え、低温側冷凍サイクル110の低温側蒸発器114の着霜状態を検知し、低温側蒸発器114の霜を解かす除霜運転への移行の場合には、低温側冷凍サイクル110の低温側圧縮機111の運転は継続し、高温側冷凍サイクル120の高温側圧縮機121の運転のみを停止し、除霜運転に移行することを特徴とする冷凍サイクル装置で、除霜運転へ移行した際には、この蓄熱した高温の低温側冷媒を、低温側蒸発器114に供給し除霜を行うので、除霜時間の短縮ができ、冷凍サイクルの運転効率の向上を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二元冷凍サイクル装置における除霜制御に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高温側冷凍サイクルと低温側冷凍サイクルからなる二元冷凍サイクルを利用して、熱媒体、たとえば水を65〜80℃にまで加熱することが可能なヒートポンプ式温水生成装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
高温側冷凍サイクルと低温側冷凍サイクルとは、カスケード熱交換器において、低温側冷媒の凝縮熱で、高温側冷媒が蒸発するよう、熱的に接続されている。また、高温側冷凍サイクルに設置された冷媒−熱媒体熱交換器では、高温側冷媒の凝縮熱を使って、熱媒体を65〜80℃の高温にまで加熱し、暖房用途に用いる。
【0004】
二元冷凍サイクルの温水生成装置により熱媒体を加熱する場合、1つの冷凍サイクルを使って、熱媒体を同じ65〜80℃の高温にまで加熱する場合よりも、エネルギー消費量を低減できる長所がある。
【0005】
このような温水生成装置において、低温側蒸発器に着いた霜を解かす除霜運転を行う場合は、高温側冷凍サイクルと低温側冷凍サイクルの、それぞれの冷媒順路を逆転させ、低温側冷凍サイクルの圧縮機の高温吐出冷媒を、直接蒸発器に供給して、霜を解かす動作が一般的である(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【0006】
特許文献2の制御フローを図7に示す。除霜運転開始を判断する(ステップS103)と、低温側冷凍サイクルの冷媒順路のみを逆転させて(ステップS104)、低温側冷凍サイクルのみで除霜運転(ステップS106)し、所定条件(所定時間経過、あるいは、除霜運転開始後に高温側冷凍サイクルの、圧縮機吸入過熱度が所定値以下となる)を満たすと、高温側冷凍サイクルの冷媒順路も逆転させ(ステップS111)、低温側および高温側冷凍サイクル双方を運転して除霜運転を行う(ステップS112)。
【0007】
特許文献3の制御フローを図8に示す。除霜運転開始を判断する(ステップS203)と、低温側および高温側冷凍サイクルの冷媒順路を切り換えて(ステップS205)、まず、低温側冷凍サイクルのみで除霜運転を行い(ステップS207)、所定時間経過した後も、低温側蒸発器の入口温度が所定温度を超えない場合は、高温側冷凍サイクルも運転して除霜運転を行う(ステップS211)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−196950号公報
【特許文献2】特開2000−105029号公報
【特許文献3】特開2011−127878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載の技術では、除霜運転中は、高温側冷凍サイクルと冷温側冷凍サイクル双方の冷媒順路を逆転させ、低温側冷凍サイクルの圧縮機の高温吐出冷媒を、直接低温側蒸発器に供給するため、蒸発器の霜を解かすのには有効である。
【0010】
しかしながら、高温側冷凍サイクルの冷媒−熱媒体熱交換器は蒸発器の役割をするため、冷媒−熱媒体熱交換器内の熱媒体が冷却され、暖房の利用者側に、冷却された熱媒体を供給してしまうという課題がある。除霜運転中に、熱媒体の循環を止めたとしても、熱媒体自体が凍結膨張してしまう可能性がある。
【0011】
一方、特許文献3に記載の技術では、低温側蒸発器に着いた霜の量が多い場合など、霜が解けにくい運転条件では、高温側冷凍サイクルの冷媒順路を逆転させた状態で除霜運転する必要が生じ、特許文献2と同じく、暖房の利用者側に冷却された熱媒体を供給したり、熱媒体自体が凍結したりする課題がある。
【0012】
この課題を解決するため、高温側冷凍サイクルにおいて、冷媒−熱媒体熱交換器と直列に開閉弁1を設置し、さらにこれらと並行して開閉弁2を取り付けたバイパス回路を設け、除霜運転中は、開閉弁1を閉じて開閉弁2を開け、低温の高温側冷媒が、冷媒−熱媒体熱交換器を通過しないようにする方法もある。しかしながら、バイパス回路や開閉弁2を設置するため、高温側冷凍サイクルが複雑化し、部品コストが増加するという課題がある。
【0013】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、除霜時間の短縮ができ、運転効率が高い二元冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記従来の課題を解決するために、本発明の冷凍サイクル装置は、低温側圧縮機、カスケード熱交換器、低温側減圧装置、低温側蒸発器を順に接続し、低温側冷媒が循環する低温側冷凍サイクルと、高温側圧縮機、冷媒−熱媒体熱交換器、高温側減圧装置、前記カスケード熱交換器を順に接続し、高温側冷媒が循環するとともに、前記カスケード熱交換器において、前記低温側冷媒と前記高温側冷媒とが熱交換する高温側冷凍サイクルと、前記低温側蒸発器の着霜状態を検知し、通常運転から前記低温側蒸発器の霜を解かす除霜運転への移行、および、前記除霜運転から前記通常運転への移行を判断する除霜検知手段とを備え、前記除霜検知手段が前記通常運転から前記除霜運転への移行を判断した場合には、前記低温側圧縮機の運転は継続し、前記高温側圧縮機の運転のみを停止し、前記除霜運転に移行することを特徴とするものである。
【0015】
これにより、低温側冷凍サイクルの圧縮機を停止せず、冷媒順路を逆転させずに除霜運転するので、暖房の利用者側に冷却された水媒体を供給したり、水媒体を凍結させたりすることがない。
【0016】
これに加えて、除霜運転に移行する前に、高温側冷凍サイクルの圧縮機を停止し、低温側冷凍サイクルのみ運転した状態で、所定時間、低温側冷凍サイクルの凝縮温度(高圧)を上昇させ、低温側冷凍サイクルの圧縮機からカスケード熱交換器にかけて蓄熱してから、低温側蒸発器の除霜を行うので、除霜時間の短縮ができ、冷凍サイクルの運転効率の向上を実現できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、除霜時間の短縮ができ、運転効率が高い二元冷凍サイクル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1における冷凍サイクル装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1における冷凍サイクル装置の制御フローチャート
【図3】本発明の実施の形態2における冷凍サイクル装置の制御フローチャート
【図4】本発明の実施の形態3における冷凍サイクル装置の制御フローチャート
【図5】本発明の実施の形態4における冷凍サイクル装置の制御フローチャート
【図6】本発明の実施の形態5における冷凍サイクル装置の制御フローチャート
【図7】従来の冷凍サイクル装置の制御フローチャート
【図8】従来の他の冷凍サイクル装置の制御フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の発明は、低温側圧縮機、カスケード熱交換器、低温側減圧装置、低温側蒸発器を順に接続し、低温側冷媒が循環する低温側冷凍サイクルと、高温側圧縮機、冷媒−熱媒体熱交換器、高温側減圧装置、前記カスケード熱交換器を順に接続し、高温側冷媒が循環するとともに、前記カスケード熱交換器において、前記低温側冷媒と前記高温側冷媒とが熱交換する高温側冷凍サイクルと、前記低温側蒸発器の着霜状態を検知し、通常運転から前記低温側蒸発器の霜を解かす除霜運転への移行、および、前記除霜運転から前記通常運転への移行を判断する除霜検知手段とを備え、前記除霜検知手段が前記通常運転から前記除霜運転への移行を判断した場合には、前記低温側圧縮機の運転は継続し、前記高温側圧縮機の運転のみを停止し、前記除霜運転に移行することを特徴とする冷凍サイクル装置である。
【0020】
これにより、高温側冷凍サイクルの冷媒順路を逆転させずに除霜運転するので、暖房の利用者側に冷却された熱媒体を供給したり、熱媒体を凍結させたりすることがない。
【0021】
また、除霜運転を行う前に、高温側冷凍サイクルの圧縮機を停止させ、所定時間、低温側冷凍サイクルのみを運転させた状態となるので、カスケード熱交換器において、低温側冷媒は凝縮熱を放熱できず、低温側冷凍サイクルの凝縮温度(低温側高圧)は上昇し、低温側冷凍サイクルの圧縮機からカスケード熱交換器にかけて蓄熱することになる。
【0022】
よって、除霜運転へ移行した際には、この蓄熱した高温の低温側冷媒を、低温側蒸発器に供給し除霜を行うので、除霜時間の短縮ができ、冷凍サイクルの運転効率の向上を実現できる。
【0023】
第2の発明は、前記低温側冷凍サイクルの高圧を検知する低温側高圧検知部を備え、前記除霜検知手段が前記通常運転から前記除霜運転への移行を判断した場合には、前記低温側高圧検知部が検知した圧力が所定高圧を超えた後に、前記除霜運転に移行することを特徴とするものである。
【0024】
これにより、除霜運転を行う前に、高温側冷凍サイクルの圧縮機を停止させ、かつ低温側冷凍サイクルのみを運転させた状態で、低温側高圧を、低温側冷凍サイクルの高圧上限値以下の所定値まで上昇させ、低温側冷凍サイクルの圧縮機からカスケード熱交換器にかけて蓄熱してから、低温側蒸発器の除霜を行うことになる。
【0025】
よって、どのような運転条件下でも、低温側高圧が、低温側冷凍サイクルの高圧上限を超える異常事態を確実に防止することができる。
【0026】
第3の発明は、前記カスケード熱交換器の温度を検知するカスケード熱交換器温度検知部を備え、前記除霜検知手段が前記通常運転から前記除霜運転への移行を判断した場合には、前記カスケード熱交換器温度検知部が検知した温度が所定温度を超えた後に、前記除霜運転に移行することを特徴とするものである。
【0027】
これにより、除霜運転を行う前に、高温側冷凍サイクルの圧縮機を停止させ、かつ低温側冷凍サイクルのみを運転させた状態で、カスケード熱交換器温度検知部で検知した温度
を所定温度まで上昇させ、低温側冷凍サイクルの圧縮機からカスケード熱交換器にかけて蓄熱してから、低温側蒸発器の除霜を行うことになる。カスケード熱交換器温度検知部が検知する温度は、低温側冷凍サイクルの凝縮温度に近い値であり、この検知温度から、低温側高圧を推定することができる。前記所定温度は、低温側冷凍サイクルの高圧上限値を飽和温度に換算した温度以下の値に設定される。
【0028】
よって、どのような運転条件下でも、低温側高圧が、低温側冷凍サイクルの高圧上限を超える異常事態を確実に防止することができるとともに、圧力検知部よりも安価な温度検知部を利用するので、部品コストを削減できる。
【0029】
第4の発明は、前記除霜検知手段が前記通常運転から前記除霜運転への移行を判断した場合には、前記低温側減圧装置を流れる前記低温側冷媒の流量を減少させることを特徴とするものである。
【0030】
これにより、除霜運転を行う前に、高温側冷凍サイクルの圧縮機を停止させ、低温側冷凍サイクルのみを運転させた状態で、さらに、低温側減圧装置を流れる低温側冷媒の流量を減少させることになり、低温側冷凍サイクルの凝縮温度(低温側高圧)の上昇速度が増加する。
【0031】
よって、低温側冷凍サイクルの圧縮機からカスケード熱交換器にかけての蓄熱に要する時間が短縮するので、第除霜時間を短縮することができる。
【0032】
第5の発明は、前記冷媒−熱媒体熱交換器に熱媒体循環手段を接続し、熱媒体が循環するとともに、前記冷媒−熱媒体熱交換器において、前記高温側冷媒と前記熱媒体とが熱交換する熱媒体サイクルを備え、前記除霜検知手段が前記通常運転から前記除霜運転への移行を判断した場合には、前記熱媒体循環手段を流れる水媒体の流量を減少させることを特徴とするものである。
【0033】
これにより、冷媒−熱媒体熱交換器では、熱媒体の循環量が少ないため、高温側冷凍の温度の低下が抑えられるとともに、冷媒−熱媒体熱交換器に入る熱媒体入口温度を正確に計測することが可能となる。熱媒体入口温度は、熱媒体サイクルの負荷を代表する値であり、この温度に基づき、除霜運転から通常運転へ移行した後の、高温側圧縮機の運転周波数を決定することができる。
【0034】
よって、除霜運転中でも熱媒体サイクルの負荷を監視することができるため、除霜検知手段が除霜運転から通常運転への移行を判断し、高温側圧縮機を起動する際、目標とする運転周波数を予め適切に設定することができるとともに、高温側冷凍サイクルの高圧が速やかに上昇し、通常運転への復帰を早めることができる。また、除霜運転中の熱媒体循環手段の消費エネルギーを削減できる。
【0035】
第6の発明は、前記除霜検知手段が前記通常運転から前記除霜運転への移行を判断した場合には、前記熱媒体循環手段を停止させることを特徴とするものである。
【0036】
これにより、高温側冷凍サイクルの高温側冷媒の凝縮熱と、熱媒体サイクルを循環する熱媒体とが熱交換する冷媒−熱媒体熱交換器では、熱媒体循環手段を停止した後は、熱媒体が流れないため、高温側冷凍の温度は低下せず、維持される。
【0037】
よって、除霜検知手段が除霜運転から通常運転への移行を判断し、高温側圧縮機を起動した後、高温側冷凍サイクルの高圧は速やかに上昇し、通常運転への復帰を早めることができるとともに、除霜運転中の熱媒体循環手段の消費エネルギーを削減できる。
【0038】
第7の発明は、前記冷媒−熱媒体熱交換器に熱媒体循環手段を接続し、熱媒体が循環するとともに、前記冷媒−熱媒体熱交換器において、前記高温側冷媒と前記熱媒体とが熱交換する熱媒体サイクルを備え、前記除霜検知手段が前記除霜運転から前記通常運転への移行を判断した場合には、前記熱媒体循環手段を流れる熱媒体の流量を増加させることを特徴とするものである。
【0039】
これにより、除霜運転から通常運転への移行と同時に、熱媒体サイクルの熱媒体の流量を通常運転の流量に戻す場合に比べて、熱媒体によって、冷媒−熱媒体熱交換器の温度が低下することを防ぐことになり、高温側冷凍サイクルの高圧が速やかに上昇し、通常運転への復帰を早めることができる。
【0040】
第8の発明は、熱媒体を、水または不凍液とし、冷媒−熱媒体熱交換器により加温した熱媒体を、給湯と暖房の少なくとも一方の用途に利用する、二元冷凍サイクルを構成する温水生成装置である。
【0041】
これにより、冷媒−熱媒体熱交換器は、冷媒−空気熱交換器のみならず、冷媒−熱媒体熱交換器でもよく、熱媒体を利用する自由度が高めることができる。
【0042】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって、本発明が限定されるものではない。
【0043】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における二元冷凍サイクル装置100の構成図である。二元冷凍サイクル装置100は、低温側冷凍サイクル110、高温側冷凍サイクル120、熱媒体サイクル130、そして制御部140とで構成される。
【0044】
低温側冷凍サイクル110は、気体状態の低温側冷媒を吸入して圧縮し、高温高圧の低温側冷媒を吐出する低温側圧縮機111、低温側冷媒と高温側冷媒とが熱交換を行うカスケード熱交換器112、低温側冷媒の流量を調整する低温側減圧装置113、室外空気から採熱する空気熱交換器114、室外空気を強制的に空気熱交換器114に導入する空気熱交換器ファン115とで構成されている。カスケード熱交換器112において、低温側冷媒は流路112aを流れる構成となっている。
【0045】
高温側冷凍サイクル120は、気体状態の高温側冷媒を吸入して圧縮し、高温高圧の高温側冷媒を吐出する高温側圧縮機121、高温側冷媒と水熱媒とが熱交換を行う冷媒−熱媒体熱交換器122、高温側冷媒の流量を調整する高温側減圧装置123、カスケード熱交換器112とで構成されている。
【0046】
カスケード熱交換器112において、高温側冷媒は流路112bを流れる構成となっている。また、冷媒−熱媒体熱交換器122において、高温側冷媒は流路122aを流れる構成となっている。
【0047】
低温側減圧装置113と高温側減圧装置123は、それぞれ、低温側冷媒、および、高温側冷媒を減圧して膨張させる機構であり、開度の制御が可能な電子式膨張弁を用いる。
【0048】
熱媒体サイクル130は、冷媒−熱媒体熱交換器122、および、熱媒体循環ポンプ131とで構成されている。冷媒−熱媒体熱交換器122において、水熱媒は流路122bを流れる構成となっている。
【0049】
低温側冷凍サイクル110の低温側冷媒と、高温側冷凍サイクル120の高温側冷媒とは、互いに独立し、混合することはないが、カスケード熱交換器112を介して熱交換可能な構成となっている。カスケード熱交換器には、二重管式熱交換器やプレート式熱交換器が用いられる。
【0050】
また、高温側冷凍サイクル120の高温側冷媒と、熱媒体サイクル130の水熱媒とは、互いに独立し、混合することはないが、冷媒−熱媒体熱交換器122を介して熱交換可能な構成となっている。冷媒−熱媒体熱交換器122には、二重管式熱交換器やプレート式熱交換器が使用される。
【0051】
直流電源によって駆動される熱媒体循環ポンプ131は羽根車を有し、この羽根車の回転数をPWM制御することで、熱媒体サイクル130内の水熱媒の循環流量を変更することができる。
【0052】
低温側冷凍サイクル110において、空気熱交換器114の出口側の配管には、空気熱交換器出口温度Teoを検知する空気熱交換器出口温度検知センサ116が設置されている。さらに、低温側圧縮機111の吐出側の配管には、低温側圧縮機111の吐出温度を検知する低温側圧縮機吐出温度検知センサ117と、低温側圧縮機111の吐出圧力を検知する低温側圧縮機吐出圧力検知センサ118とが設置されている。
【0053】
また、熱媒体サイクル130において、冷媒−熱媒体熱交換器122の流路122bに流入する水熱媒戻り温度Twiを検知する水熱媒戻り温度検知センサ132が設置されている。
【0054】
制御部140は、マイコン(図示せず)に組み込まれた制御プログラムで、各検知センサより検知値を取得し、低温側圧縮機111と高温側圧縮機121の運転周波数、低温側減圧装置113と高温側減圧装置123の開度、空気熱交換器ファン115の回転数、熱媒体循環ポンプ131の回転数の制御を行う。
【0055】
また、制御部140は、空気熱交換器114の着いた霜を解かす除霜運転への移行を行うか否かを判断する。除霜運転への移行は、例えば、室外温度Todによって決まる除霜開始判定温度Tesと、空気熱交換器出口温度Teoとを比較し、空気熱交換器出口温度TeoがTes以下になったときに判断する。除霜開始判定温度Tesは、室外温度Todと比例関係にあり、例えば、Tod=2℃のとき、Tes=−12℃である。
【0056】
次に、二元冷凍サイクル装置100の動作について説明する。図2は、本発明の第1に実施の形態における、制御部140の制御動作を説明したフローチャートである。
【0057】
二元冷凍サイクル装置100の制御部140は、通常運転(ステップS002)を行いながら、除霜開始条件を満たしているか否かを判断するために、常に空気熱交換器出口温度Teoを監視しており(ステップS003)、除霜運転への移行を判断しない場合は、通常運転を継続する。
【0058】
なお、通常運転中の制御部140は、外気温度Todと水媒体戻り温度Twiとから、水媒体の負荷を推定し、高温側圧縮機121と低温側圧縮機111の運転周波数を適切に設定し、また、低温側冷凍サイクル110と高温側冷凍サイクル120が最も効率が高いサイクル状態になるよう、低温側減圧装置113と高温側減圧装置123の開度を調整する。
【0059】
ステップS003において、除霜運転への移行を判断した場合は、まず、高温側圧縮機
121を停止する(ステップS004)。このとき、低温側圧縮機111は、運転を継続したままである。
【0060】
次に、ステップS005で、高温側圧縮機121を停止してから、低温側冷凍サイクルの除霜時制御(ステップS008)に移行するまでの時間を管理するタイマTmを起動する。Tmは定期的(例えば、時間Δtごと)にカウントアップされる。
【0061】
ステップS003で、高温側圧縮機121が停止してから、タイマTmがカウントアップされている間は、カスケード熱交換器112内の流路112bの高温側冷媒は、ほとんど流動せず、カスケード熱交換器112内の流路112aを流動する低温側冷媒の凝縮熱を吸収できなくなる。したがって、カスケード熱交換器112内の流路112aを流動する低温側冷媒の温度は上昇し、低温側圧縮機111からカスケード熱交換器112にかけて、蓄熱が行われる。
【0062】
制御部140は、Tmが所定時間Tms以上となると、空気熱交換器114の着いた霜を解かす除霜運転に移行する(ステップS008)。除霜運転に移行すると、まず、空気熱交換器ファン115を停止し、低温側減圧装置113を全開、または全開に近い状態にまで開く。このとき、ステップS007以前の低温側減圧装置113の開度が小さく、全開にするまでの開度差が大きい場合は、低温側減圧装置113の開度を何段階かに分けて開けてもよい。
【0063】
低温側減圧装置113を全開とすることにより、低温側圧縮機111が吐出した低温側冷媒が、カスケード熱交換器112内の流路112a、低温側減圧装置113を通過して、空気熱交換器114に到達するまでのエネルギーロスを最小限に抑えることができる。
【0064】
また、本実施の形態の特徴である、除霜運転前の、ステップS004〜S007における、低温側圧縮機111からカスケード熱交換器112にかけての蓄熱は、蓄熱しない場合に比べて、除霜運転開始時に、多くの熱を空気熱交換器114に供給することに役立ち、除霜運転を行う時間が短縮する。
【0065】
さて、低温側冷凍サイクルを、カスケード熱交換器112で放熱しない状態で、低温側減圧装置113を全開にしたまま、空気熱交換器114の除霜を行うと、冷凍サイクルにおける蒸発過程がないために、多量の液冷媒が低温側圧縮機111に戻ってくることになる。したがって、低温側圧縮機111が液冷媒を吸い込み、圧縮する危険性があり、低温側圧縮機111の耐久性に問題が生じる可能性がある。
【0066】
このため、低温側圧縮機111の入口側には、液冷媒が戻ってきても対応できるように、十分の容量を持つアキュムレータ(図示せず)を設置している。
【0067】
また、低温側圧縮機111が密閉容器に収められ、かつ、密閉容器内に吐出冷媒が放出される高圧シェル型圧縮機の場合、上記のような除霜運転を続けると、吐出温度が徐々に低下し、ついには、吐出冷媒が密閉容器内に放出された直後に凝縮し、液化する現象が起こる。そして、液化した冷媒は、密閉容器下部に溜まる圧縮機潤滑油と混ざり合い、共に密閉容器外に放出される危険性がある。
【0068】
これは、圧縮機の吐出冷媒の過熱度が不十分である場合に起こる現象であり、圧縮機潤滑油が密閉容器外に放出されるため、圧縮機内が潤滑油不足に陥り、低温側圧縮機111の耐久性に深刻な問題が生じる。
【0069】
このような事態に対応するため、除霜運転中の制御部140は、低温側減圧装置113
を全開にした後は、低温側圧縮機111の吐出冷媒の過熱度を監視し、低温側減圧装置113の開度を小さくしたり、低温側圧縮機111の周波数を落としたりして、過熱度が所定値、たとえば5Kを下回らないようにする。
【0070】
なお、低温側圧縮機111の吐出冷媒の過熱度は、低温側圧縮機吐出温度検知センサ117で検知した吐出温度と、低温側圧縮機吐出圧力検知センサ118で検知した吐出圧力から換算した飽和温度との差より求められる。また、吐出圧力の変わりに、カスケード熱交換器112内の冷媒流路112aに温度検知センサを設置し、該温度センサで検知した値を飽和温度として、過熱度を計算してもよい。
【0071】
空気熱交換器114の霜が解け始めると、空気熱交換器出口温度Teoは上昇を始める。制御部140は、空気熱交換器出口温度Teoが除霜終了判定温度Teeに達すると、空気熱交換器114の霜が完全に解けたと判断し(ステップS009)、空気熱交換器ファン115と高温側圧縮機121を起動し、通常運転に戻る。なお、除霜終了判定温度Teeは5〜10℃が望ましい。
【0072】
以上のように、本実施の形態では、制御部140が、除霜運転への移行を判断した場合には、高温側圧縮機121のみを停止し、所定時間経過後に、除霜運転に移行する。すなわち、高温側冷凍サイクルの冷媒順路を逆転させずに除霜運転するので、冷媒−熱媒体熱交換器122において、水熱媒を冷却して凍結させることがない。
【0073】
また、除霜運転を行う前に、高温側冷凍サイクル120の高温側圧縮機121を停止し、所定時間、低温側圧縮機111のみが運転する状態となるので、カスケード熱交換器112において、低温側冷凍サイクル110の凝縮温度(低温側高圧)が上昇し、低温側冷凍サイクル110の低温側圧縮機111からカスケード熱交換器112にかけて蓄熱する。
【0074】
よって、除霜運転へ移行した際には、蓄熱した高温の低温側冷媒を、空気熱交換器114に供給し除霜を行うので、除霜時間の短縮ができ、二元冷凍サイクル装置100の運転効率の向上を実現できる。
【0075】
(実施の形態2)
図3は、本発明の第2の実施の形態における、制御部140の制御動作を説明したフローチャート図である。なお、本実施の形態において、二元冷凍サイクル装置100の構成は図1と同じであるため、その構成要素の説明は省略する。
【0076】
図3は図2と比べ、ステップS005〜S007がなく、替わりにステップS010が入ったフローとなっている。その他の処理は、図2と同じなので、本実施の形態では、ステップS010の動作について主に説明する。
【0077】
制御部140は、ステップS003で除霜運転への移行を判断すると、次のステップS004にて、高温側圧縮機121を停止する。すると、第1の実施の形態と同様、カスケード熱交換器112内の流路112aを流動する低温側冷媒の温度は急速に上昇し、低温側圧縮機111からカスケード熱交換器112にかけて、蓄熱が行われる。
【0078】
しかしながら、このままの状態で運転を続けると、低温側冷凍サイクル110の高圧(低温側高圧)は上昇を続け、低温側冷凍サイクル110において設定された上限圧力を超えてしまう危険性がある。
【0079】
このため、制御部140は、ステップS010において、低温側吐出圧力検知センサ1
18が検知する吐出圧力Ph1を監視し、この吐出圧力Ph1が、所定圧力P0以上となると、ステップS008の除霜運転に移行する。なお、この所定圧力P0は、低温側冷凍サイクル110において設定された上限圧力以下の値とする。
【0080】
除霜運転を開始すると、第1の実施の形態に記述したとおり、制御部140は、低温側減圧装置113を全開、または全開に近い状態にまで開くので、低温側高圧は一気に低下し、上限圧力を超えることはない。
【0081】
なお、本実施の形態では、低温側高圧の検知に、低温側吐出圧力検知センサ118が検知する吐出圧力を用いたが、これに限るものではない。例えば、カスケード熱交換器112と低温側減圧装置113との間に設置した圧力検知センサの検知値を用いても良い。
【0082】
以上のように、本実施の形態では、除霜運転を行う前に、高温側圧縮機121が停止して、かつ低温側冷凍サイクル110のみ運転した状態で、低温側高圧を所定値まで上昇させ、低温側圧縮機111からカスケード熱交換器112にかけて蓄熱してから、空気熱交換器114の除霜を行う。
【0083】
よって、除霜運転へ移行した際には、蓄熱した高温の低温側冷媒を、空気熱交換器114に供給し除霜を行うので、除霜時間が短縮でき、さらに、どのような運転条件下でも、低温側高圧が、低温側冷凍サイクルの高圧上限を超える異常事態を確実に防止することができる。
【0084】
(実施の形態3)
図4は、本発明の第3の実施の形態における、制御部140の制御動作を説明したフローチャート図である。なお、本実施の形態において、二元冷凍サイクル装置100の構成は図1と同じであるため、その構成要素の説明は省略する。
【0085】
図4は図3と比べ、ステップS010がなく、替わりにステップS011が入ったフローとなっている。その他の処理は、図3と同じなので、本実施の形態では、ステップS011の動作について主に説明する。
【0086】
制御部140は、ステップS003で除霜運転への移行を判断すると、次のステップS004にて、高温側圧縮機121を停止する。すると、第1の実施の形態と同様、カスケード熱交換器112内の流路112aを流動する低温側冷媒の温度は急速に上昇し、低温側圧縮機111からカスケード熱交換器112にかけて、蓄熱が行われる。
【0087】
しかしながら、このままの状態で運転を続けると、低温側冷凍サイクル110の高圧(低温側高圧)は上昇を続け、低温側冷凍サイクル110において設定された上限圧力を超えてしまう危険性がある。
【0088】
このため、制御部140は、ステップS011において、カスケード熱交換器112の流路112aに設置された、カスケード熱交換器温度検知センサ(図示せず)の検知温度Th1を監視する。この検知温度Th1は、低温側冷凍サイクル110の凝縮温度に近い値であり、この検知温度Th1から、低温側高圧を推定することができる。
【0089】
そして、カスケード熱交換器温度検知センサの検知温度Th1が、所定温度T0以上となると、ステップS008の除霜運転に移行する。なお、この所定温度は、低温側冷凍サイクル110において設定された上限圧力より換算された飽和温度以下の値とする。
【0090】
除霜運転を開始すると、第1の実施の形態に記述したとおり、制御部140は、低温側
減圧装置113を全開、または全開に近い状態にまで開くので、低温側高圧は一気に低下し、上限圧力を超えることはない。
【0091】
以上のように、本実施の形態では、除霜運転を行う前に、高温側圧縮機121を停止させ、かつ低温側冷凍サイクル110のみを運転させた状態で、カスケード熱交換器温度検知センサで検知する温度を所定温度まで上昇させ、低温側圧縮機111からカスケード熱交換器112にかけて蓄熱してから、空気熱交換器114の除霜を行う。
【0092】
よって、除霜運転へ移行した際には、蓄熱した高温の低温側冷媒を、空気熱交換器114に供給し除霜を行うので、除霜時間が短縮でき、さらに、どのような運転条件下でも、低温側高圧が、低温側冷凍サイクルの高圧上限を超える異常事態を確実に防止することができる。また、圧力検知センサよりも安価な温度検知センサを利用するので、部品コストを削減できる。
【0093】
(実施の形態4)
図5は、本発明の第4の実施の形態における、制御部140の制御動作を説明したフローチャート図である。なお、本実施の形態において、二元冷凍サイクル装置100の構成は図1と同じであるため、その構成要素の説明は省略する。
【0094】
図4は図3(第2の実施の形態)と比べ、ステップS004とS010との間に、ステップS012が入ったフローとなっている。その他の処理は、図3と同じなので、本実施の形態では、ステップS012の動作について主に説明する。
【0095】
制御部140は、ステップS003で除霜運転への移行を判断すると、次のステップS004にて、高温側圧縮機121を停止する。そして、さらに、ステップS012にて、低温側減圧装置113の開度を小さくする。
【0096】
すると、第1から第3の実施の形態と同様、カスケード熱交換器112内の流路112aを流動する低温側冷媒の圧力および温度は上昇するが、低温側減圧装置113の開度が小さくなる分、それらの上昇速度は格段に速くなる。すなわち、低温側圧縮機111からカスケード熱交換器112にかけての蓄熱に要する時間は、本実施の形態では、第1から第3の実施の形態よりも短くなる。
【0097】
なお、ステップS012における、低温側減圧装置113の開度設定は、ステップS004以前の開度から所定開度小さくする相対値制御でも、外気温度などの運転条件によって、あらかじめ決められた開度とする絶対値制御でも、どちらでもよい。
【0098】
低温側吐出圧力検知センサ118が検知する吐出圧力Ph1が、所定圧力P0以上となり、ステップS008の除霜運転に移行してからの動作は、実施の形態2と同様である。
【0099】
以上のように、本実施の形態では、除霜運転を行う前に、高温側圧縮機121を停止させ、かつ低温側冷凍サイクル110のみを運転させた状態で、さらに低温側減圧装置113の開度を小さくして、低温側高圧を所定圧力まで速やかに上昇させ、低温側圧縮機111からカスケード熱交換器112にかけて蓄熱してから、空気熱交換器114の除霜を行う。
【0100】
よって、蓄熱に要する時間を、第1から第3の実施の形態と比べ短くすることができ、除霜時間を短縮することができる。
【0101】
(実施の形態5)
図6は、本発明の第5の実施の形態における、制御部140の制御動作を説明したフローチャート図である。なお、本実施の形態において、二元冷凍サイクル装置100の構成は図1と同じであるため、その構成要素の説明は省略する。
【0102】
図6は図5(第4の実施の形態)と比べ、ステップS012とS010との間に、ステップS013が入り、ステップS009の後にステップS0014とS0015とが入ったフローとなっている。その他の処理は、図5と同じなので、本実施の形態では、主に、熱媒体サイクル130における、熱媒体循環ポンプ131を制御するステップS013およびS015の動作について説明する。
【0103】
制御部140は、ステップS003で除霜運転への移行を判断すると、次のステップS004にて、高温側圧縮機121を停止し、さらに、ステップS012にて、低温側減圧装置113の開度を小さくする。すると、第4の実施の形態と同様、カスケード熱交換器112内の流路112aを流動する低温側冷媒の圧力および温度が急速に上昇する。
【0104】
このとき、冷媒−熱媒体熱交換器122における、高温側冷媒の温度は、通常運転時の高温側冷媒の凝縮温度と同じ65〜80℃程度である。また、水熱媒戻り温度Twiは、冷凍サイクル装置100の起動後1時間未満など、負荷が十分に温まっていない状態では、20〜30℃程度と低い。
【0105】
したがって、この状態で水熱媒の循環を続けると、冷媒−熱媒体熱交換器122の流路122bに戻ってくる低温の水熱媒によって、冷媒−熱媒体熱交換器122の流路122aに滞留している高温側冷媒が徐々に冷却される。除霜運転の時間は、一般的に6〜10分程度あるため、除霜運転中に、冷媒−熱媒体熱交換器122の高温側冷媒の温度は、水熱媒戻り温度Twiに近い温度まで冷却され、場合によっては30℃以上低下することになる。
【0106】
この状態で、除霜運転から通常運転に移行すると、再び、通常運転時の高温側冷媒の凝縮温度(65〜80℃程度)にまで上昇させるのに、時間を要してしまう。
よって、本実施の形態の制御部140は、低温側減圧装置113の開度を小さくするステップS012直後の、ステップS013において、熱媒体サイクル130の熱媒体循環ポンプ131を停止し、冷媒−熱媒体熱交換器122の流路122aに滞留している高温側冷媒の温度低下を防ぐ。
【0107】
なお、本実施の形態では、熱媒体サイクル130の熱媒体循環ポンプ131を停止するステップS013は、高温側圧縮機121を停止するステップS004と、低温側減圧装置113の開度を小さくするステップS012の後に置いているが、ステップS004またはステップS012と同時に処理しても、効果は同じである。
【0108】
次に、制御部140は、低温側吐出圧力検知センサ118が検知する吐出圧力Ph1が、所定圧力P0以上となると(ステップS010)、ステップS008の除霜運転に移行する。6〜10分の除霜運転を経て、空気熱交換器出口温度Teoが除霜終了判定温度Teeに達すると、空気熱交換器114の霜が完全に解けたと判断し(ステップS009)、高温側圧縮機121を起動する(ステップS014)。
【0109】
停止している熱媒体循環ポンプ131の運転は、高温側圧縮機121を起動してから後に開始する(ステップS015)。高温側圧縮機121の起動(ステップS014)と同時に熱媒体循環ポンプ131を起動すると、除霜運転中に熱媒体サイクル130内で冷えた水熱媒が、冷媒−熱媒体熱交換器122の流路122bに流入し、高温側圧縮機121起動後の、冷媒−熱媒体熱交換器122の高温側冷媒の温度上昇に時間を要する可能性が
あり、これを防止するためである。
【0110】
高温側圧縮機121を起動(ステップS014)してから、熱媒体循環ポンプ131を起動する(ステップS015)までは、あらかじめ設定した所定時間が経過してからとしても、冷媒−熱媒体熱交換器122の流路122aに設置した温度検知センサ(図示せず)が所定温度以上となってからとしてもどちらでもよい。
【0111】
以上のように、本実施の形態では、制御部140が通常運転から除霜運転への移行を判断した場合には、高温側圧縮機121を停止した後に、熱媒体サイクルにおいて熱媒体循環ポンプ131を停止する。このため、冷媒−熱媒体熱交換器122において、高温側冷媒は、水熱媒と継続的に熱交換できず、その温度は維持される。
【0112】
さらに、除霜運転が終了すると、高温側圧縮機121を起動した後に、熱媒体循環ポンプ131を起動するので、熱媒体循環ポンプ131が起動するまでの間は、水熱媒によって、冷媒−熱媒体熱交換器122の高温側冷媒は冷却されず、その温度は速やかに上昇する。
【0113】
よって、除霜運転終了後、高温側冷凍サイクル120の高圧は速やかに上昇し、通常運転への復帰を早めることができるとともに、除霜運転中の熱媒体循環ポンプの消費エネルギーを削減できる。
【0114】
また、本実施の形態では、ステップS013において、熱媒体サイクル130の熱媒体循環ポンプ131を停止するとしたが、熱媒体循環ポンプ131の回転数を、例えば、通常運転の5〜20%に低下させるようにしてもよい。
【0115】
この場合、冷媒−熱媒体熱交換器122の流路122aに滞留している高温側冷媒の温度低下を防ぐ効果や、除霜運転中の熱媒体循環ポンプの消費エネルギーを削減する効果は小さくなるが、除霜運転中でも、冷媒−熱媒体熱交換器122の流路122bに流入する水熱媒戻り温度Twiを正確に計測することが可能となる。
【0116】
水熱媒戻り温度Twiは、熱媒体サイクル130の負荷を代表する値であり、この温度に基づき、除霜運転から通常運転へ移行した後の、高温側圧縮機121の運転周波数を正確に決定することができる。すなわち、除霜運転終了後、熱媒体サイクル130の負荷に見合った適切な運転周波数で、通常運転に復帰することができる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
以上のように、本発明にかかる冷凍サイクル装置は、運転信頼性が高く、かつ除霜時間が短くて運転効率が高いので、空気調和機や温水生成装置に適用できる。
【符号の説明】
【0118】
100 冷凍サイクル装置
110 低温側冷凍サイクル
111 低温側圧縮機
112 カスケード熱交換器
113 低温側減圧装置
114 空気熱交換器(低温側蒸発器)
120 高温側冷凍サイクル
121 高温側圧縮機
122 冷媒−熱媒体熱交換器
123 高温側減圧装置
130 熱媒体サイクル
131 熱媒体循環ポンプ(熱媒体循環手段)
140 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温側圧縮機、カスケード熱交換器、低温側減圧装置、低温側蒸発器を順に接続し、低温側冷媒が循環する低温側冷凍サイクルと、高温側圧縮機、冷媒−熱媒体熱交換器、高温側減圧装置、前記カスケード熱交換器を順に接続し、高温側冷媒が循環するとともに、前記カスケード熱交換器において、前記低温側冷媒と前記高温側冷媒とが熱交換する高温側冷凍サイクルと、前記低温側蒸発器の着霜状態を検知し、通常運転から前記低温側蒸発器の霜を解かす除霜運転への移行、および、前記除霜運転から前記通常運転への移行を判断する除霜検知手段とを備え、前記除霜検知手段が前記通常運転から前記除霜運転への移行を判断した場合には、前記低温側圧縮機の運転は継続し、前記高温側圧縮機の運転のみを停止し、前記除霜運転に移行することを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記低温側冷凍サイクルの高圧を検知する低温側高圧検知部を備え、前記除霜検知手段が前記通常運転から前記除霜運転への移行を判断した場合には、前記低温側高圧検知部が検知した圧力が所定高圧を超えた後に、前記除霜運転に移行することを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記カスケード熱交換器の温度を検知するカスケード熱交換器温度検知部を備え、前記除霜検知手段が前記通常運転から前記除霜運転への移行を判断した場合には、前記カスケード熱交換器温度検知部が検知した温度が所定温度を超えた後に、前記除霜運転に移行することを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記除霜検知手段が前記通常運転から前記除霜運転への移行を判断した場合には、前記低温側減圧装置を流れる前記低温側冷媒の流量を減少させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記冷媒−熱媒体熱交換器に熱媒体循環手段を接続し、熱媒体が循環するとともに、前記冷媒−熱媒体熱交換器において、前記高温側冷媒と前記熱媒体とが熱交換する熱媒体サイクルを備え、前記除霜検知手段が前記通常運転から前記除霜運転への移行を判断した場合には、前記熱媒体循環手段を流れる水媒体の流量を減少させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記除霜検知手段が前記通常運転から前記除霜運転への移行を判断した場合には、前記熱媒体循環ポンプを停止させることを特徴とする請求項5に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記冷媒−熱媒体熱交換器に熱媒体循環手段を接続し、熱媒体が循環するとともに、前記冷媒−熱媒体熱交換器において、前記高温側冷媒と前記熱媒体とが熱交換する熱媒体サイクルを備え、前記除霜検知手段が前記除霜運転から前記通常運転への移行を判断した場合には、前記熱媒体循環手段を流れる熱媒体の流量を増加させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記請求項5〜7のいずれか1項に記載の熱媒体は、水または不凍液であり、前記冷媒−熱媒体熱交換器により加温された水または不凍液を、給湯と暖房の少なくともどちらか一方に利用することを特徴とする温水生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−104606(P2013−104606A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248329(P2011−248329)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)