説明

冷凍サイクル装置

【課題】高い効率(COP)を発揮しうる冷凍サイクル装置を提供する。
【解決手段】冷凍サイクル装置100は、容積制御圧縮機101、第1熱交換器103、膨張機構104、第2熱交換器105、流路10f(吸入経路)、容積制御経路111及びインジェクション経路121を備えている。容積制御経路111は、容積制御圧縮機101のバイパス吐出口16から流路10fに冷媒を導くようにバイパス吐出口16に接続され、当該冷凍サイクル装置100の負荷が小さいときに開通し、負荷が大きいときに閉鎖される。インジェクション経路121は、容積制御経路111が開通しているときに、液相の成分を含んだ冷媒を流路10fに導くように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置に関する。本発明は、特に、容積制御圧縮機を備えた冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吸入容積(排除容積)を変更できる容積制御圧縮機は従来から知られている。圧縮機の容積制御技術は、インバータが広く普及する以前に活発に検討されていたが、高性能のインバータが安価に入手できるようになってからというもの、容積制御技術の重要性は一時的に低下していた。昨今、更なる省エネルギー化を推進するために、圧縮機の容積制御技術が再び脚光を浴び始めている。図6を参照して、容積制御技術の一例を紹介する。
【0003】
図6は、特許文献1に記載された空気調和装置の構成図である。空気調和装置600は、容積制御圧縮機622、四方弁623、室外熱交換器624、膨張手段625、室内熱交換器641、アキュームレータ621、バイパス配管688、流路切替弁690、吸入配管628及び吐出配管630を備えている。容積制御圧縮機622とバイパス配管688との接続部には、バイパス吐出弁(図示省略)が設けられている。
【0004】
空調負荷が小さいとき、流路切替弁690によってバイパス配管688が吸入配管628に接続される。これにより、吸入冷媒の一部がバイパス配管688を経て吸入配管628に戻され、低容積での運転が可能となる。他方、空調負荷が大きいとき、流路切替弁690によってバイパス配管688が吐出配管630に接続される。このとき、バイパス吐出弁は、吐出圧力の冷媒で閉じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−240699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6を参照して説明した容積制御を採用する場合、次のような問題が生ずることが予測される。低容積での運転を行う場合、冷媒の一部は、高温の圧縮室及びバイパス配管を通じて、吸入配管に戻される。吸入配管に戻された冷媒の過熱度は比較的高い。高すぎる過熱度を有する冷媒は、吸入配管において、蒸発器から到来した冷媒と混ざる。その結果、高い過熱度を持った冷媒が容積制御圧縮機に吸入される。つまり、吸入冷媒が希薄になり、単位質量の冷媒を圧縮するために必要な動力が増加する。結果として、冷凍サイクル装置の成績係数(COP:coefficient of performance)が低下する。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するもので、高い効率(COP)を発揮しうる冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、
圧縮室と、前記圧縮室に開口しているバイパス吐出口と、前記バイパス吐出口を開閉するバイパス吐出弁とを有し、前記圧縮室に吸入された冷媒が吸入圧力を維持しつつ前記バイパス吐出口を通じて前記圧縮室から吐出されることによって吸入容積を変更できるように構成された容積制御圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された冷媒を冷却する放熱器と、
前記放熱器で冷却された冷媒を膨張させる膨張機構と、
前記膨張機構で膨張した冷媒を加熱する蒸発器と、
圧縮するべき冷媒を前記蒸発器から前記圧縮機に導く吸入経路と、
前記バイパス吐出口から前記吸入経路に冷媒を導くように前記バイパス吐出口に接続され、当該冷凍サイクル装置の負荷が小さいときに開通し、前記負荷が大きいときに閉鎖される容積制御経路と、
前記容積制御経路が開通しているときに、液相の成分を含んだ冷媒を前記吸入経路に導くインジェクション経路と、
を備えた、冷凍サイクル装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の冷凍サイクル装置は、容積制御経路が開通しているときに、液相の成分を含んだ冷媒を吸入経路に導くインジェクション経路を備えている。液相の成分を含んだ冷媒は、容積制御経路を通じてバイパス吐出口から吸入経路に供給された冷媒に混ざる。従って、圧縮機に吸入されるべき冷媒(吸入冷媒)の過熱度を適正な過熱度まで下げることができる。これにより、容積制御圧縮機の圧縮動力の増加を防止できる。その結果、冷凍サイクルの成績係数(COP)が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の構成図
【図2】図1に示す冷凍サイクル装置に使用された容積制御圧縮機の概略横断面図
【図3】変形例1に係る冷凍サイクル装置の構成図
【図4】変形例2に係る冷凍サイクル装置の構成図
【図5】変形例3に係る冷凍サイクル装置の構成図
【図6】従来の空気調和装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の冷凍サイクル装置100は、容積制御圧縮機101、第1四方弁102、第1熱交換器103、膨張機構104、第2熱交換器105及びアキュームレータ106を備えている。これらの構成要素は、冷媒回路を形成するように流路10a〜10gによって互いに接続されている。流路10a〜10gは、それぞれ、冷媒配管で構成されている。
【0013】
第1熱交換器103は、圧縮機101で圧縮された冷媒を冷却する放熱器又は膨張機構104で膨張した冷媒を加熱する蒸発器である。第2熱交換器105は、第1熱交換器103が放熱器のときに蒸発器であり、第1熱交換器103が蒸発器のときに放熱器である。膨張機構104は、放熱器で冷却された冷媒を膨張させる機能を有し、典型的には膨張弁で構成されている。膨張機構104は、冷媒の膨張エネルギーを回収できる容積式の膨張機で構成されていてもよい。
【0014】
圧縮機101は、密閉型圧縮機であり、密閉容器1、モータ2及び圧縮機構3を備えている。モータ2及び圧縮機構3は、密閉容器1の中に配置されている。密閉容器1は、圧縮機構3で圧縮された冷媒を保持しうる内部空間28を有する。すなわち、圧縮機101は、いわゆる高圧シェル型の圧縮機である。圧縮機構3は、シャフト4によってモータ2に接続されている。圧縮機構3は、容積式の流体機構であり、冷媒を圧縮するようにモータ2によって動かされる。
【0015】
図2に示すように、圧縮機構3は、吸入口27、吐出口29、圧縮室25、圧縮室25に開口しているバイパス吐出口16及びバイパス吐出口16を開閉するバイパス吐出弁35を備えている。高容積モードで圧縮機101を運転するとき、吸入口27から圧縮室25に吸入された冷媒の全量が圧縮室25で圧縮され、吐出口29を通じて密閉容器1の内部空間28に吐出される。他方、低容積モードで圧縮機101を運転するとき、吸入口27から圧縮室25に吸入された冷媒の一部がバイパス吐出弁35を押し開いてバイパス吐出口16を通じて圧縮室25から吐出される。高容積モードと低容積モードとを切り替えることによって、圧縮機101の吸入容積が変更される。
【0016】
詳細には、低容積モードで圧縮機101を運転するとき、吸入口27から圧縮室25に吸入された冷媒の一部が吸入圧力を維持しつつ(実質的に圧縮されることなく)、バイパス吐出口16を通じて圧縮室25から吐出される。吸入口27から圧縮室25に吸入された冷媒の残部が圧縮室25で圧縮され、吐出口29を通じて圧縮室25から吐出される。バイパス吐出口16を通じて圧縮室25から吐出された冷媒は、後述するように、吸入経路としての流路10fに戻される。従って、圧縮機101によって不要な圧縮仕事が行われない。
【0017】
バイパス吐出弁35は、リード36及び弁止め37を含むリード弁で構成されている。リード36及び弁止め37は、ネジ、ボルト等の固定部品38によってシリンダ5に固定されている。バイパス吐出弁35は、リード36の表面と裏面との間の圧力差によって開閉する。本明細書で説明するいくつかの吐出弁は、いずれも、リード弁で構成されうる。
【0018】
また、圧縮機構3は、シリンダ5、ピストン8、ベーン9及びバネ10を備えている。シリンダ5の上部及び下部には、それぞれ、シリンダ5を閉じるように上軸受及び下軸受が配置されている(図示省略)。シリンダ5の内部に圧縮室25が形成されるように、シャフト4の偏心部4aに嵌め合わされたピストン8がシリンダ5の内部に配置されている。シリンダ5には、ベーン溝24が形成されている。ベーン溝24には、ピストン8の外周面に接する先端を有するベーン9が収納されている。バネ10は、ベーン9をピストン8に向かって押すようにベーン溝24に配置されている。シリンダ5とピストン8との間の圧縮室25はベーン9によって仕切られ、これにより、吸入室25a及び圧縮−吐出室25bが形成されている。圧縮するべき冷媒は、流路10g及び吸入口27を通じて圧縮室25(吸入室25a)に導かれる。圧縮された冷媒は、吐出口29を通じて、圧縮室25(圧縮−吐出室25b)から密閉容器1の内部空間28に導かれる。吐出口29には、図示しない吐出弁が設けられている。なお、ベーン9は、ピストン8に一体化されていてもよい。すなわち、ピストン8及びベーン9がいわゆるスイングピストンで構成されていてもよい。
【0019】
本実施形態では、低容積モードでの吸入容積が高容積モードでの吸入容積の1/2となるようにバイパス吐出口16の位置が定められている。ただし、バイパス吐出口16の位置は限定されず、低容積モードで必要とされる吸入容積に応じて定められる。また、2以上のバイパス吐出口16が設けられていてもよい。この場合、複数の吸入容積の中から選ばれる1つの吸入容積にて圧縮機101を運転できる。
【0020】
本実施形態では、圧縮機101がロータリ圧縮機であるが、吸入容積を変更できる限りにおいて圧縮機101の型式は特に限定されない。特許文献1(特開2008−240699号公報)に記載されたスクロール圧縮機、レシプロ圧縮機等の他の型式の圧縮機を使用できる。また、本発明者らが特願2011−117778号で開示するように、吸入容積を変更できる2段ロータリ圧縮機にも本発明を適用できる。
【0021】
図1に示すように、流路10aは、圧縮機101で圧縮された冷媒を圧縮室25から放熱器(第1熱交換器103又は第2熱交換器105)に導く吐出経路を形成している。流路10f、アキュームレータ106及び流路10gは、圧縮するべき冷媒を蒸発器(第1熱交換器103又は第2熱交換器105)から圧縮室25に導く吸入経路を形成している。
【0022】
冷凍サイクル装置100は、さらに、容積制御経路111、第2四方弁112、高圧導入経路114、インジェクション経路121、インジェクション制御弁123及び制御装置117を備えている。
【0023】
容積制御経路111は、上流部分113及び下流部分115を含み、バイパス吐出口16から流路10f(吸入経路)に冷媒を導く役割を担う。上流部分113は、圧縮機101のバイパス吐出口16に接続された一端部と、第2四方弁112に接続された他端部とを有する。下流部分115は、第2四方弁112に接続された一端部と、吸入経路としての流路10fに接続された他端部とを有する。第2四方弁112は、圧縮機101の吐出圧力及び圧縮機101の吸入圧力のいずれかを制御圧力として容積制御経路111の上流部分113に供給する流路切替部である。高圧導入経路114は、第2四方弁112に接続された一端部と、流路10aに接続された他端部とを有する。インジェクション経路121は、容積制御経路111が開通しているときに、液相の成分を含んだ冷媒を吸入経路としての流路10fに導く経路である。経路111,114及び121は、それぞれ、冷媒配管で構成されうる。
【0024】
本実施形態では、1つの接続口が封鎖された第2四方弁112を流路切替部として使用して、吸入経路としての流路10fに接続された容積制御経路111における冷媒の流れを制御している。しかし、圧縮機101のバイパス吐出口16から吸入経路に冷媒を導くようにバイパス吐出口16に接続され、冷凍サイクル装置100の負荷が小さいときに開通し、負荷が大きいときに閉鎖される限りにおいて、容積制御経路の構成は限定されない。
【0025】
制御装置117は、冷凍サイクル装置100の負荷に応じて圧縮機101の吸入容積が増加又は減少するように第2四方弁112を制御する。具体的に、制御装置117は、負荷が小さい場合には、容積制御経路111が開通するように第2四方弁112を制御し、負荷が大きい場合には、容積制御経路111が閉鎖されるように第2四方弁112を制御する。詳細には、制御装置117は、負荷が小さい場合には、容積制御経路111において、上流部分113と下流部分115とが連通するように第2四方弁112を制御し、負荷が大きい場合には、容積制御経路111の上流部分113に高圧導入経路114が接続されるように第2四方弁112を制御する。制御装置117は、A/D変換回路、入出力回路、演算回路、記憶装置等を含むDSP(Digital Signal Processor)で構成されうる。制御装置117は、圧縮機101のモータ2を制御する駆動回路を含んでいてもよい。
【0026】
次に、冷凍サイクル装置100の運転を説明する。
【0027】
圧縮機101のモータ2を始動すると、圧縮機101は、流路10g(吸入経路)を通じて低圧のガス冷媒を吸入し、圧縮する。高圧のガス冷媒は、密閉容器1の内部空間28に吐出され、密閉容器1の内部空間28、流路10a、第1四方弁102及び流路10bを経て、第1熱交換器103(放熱器)へと導かれる。第1熱交換器103において、冷媒は冷却され、凝縮する。高圧の液冷媒は、流路10cを通じて、第1熱交換器103から膨張機構104に導かれ、膨張機構104の働きによって減圧される。気液二相の冷媒は、流路10dを通じて、膨張機構104から第2熱交換器105(蒸発器)に導かれ、第2熱交換器105で加熱され、蒸発する。ガス冷媒は、流路10e、第1四方弁102、流路10f、アキュームレータ106及び流路10gを通じて、圧縮機101に再び吸入される。
【0028】
圧縮機101は、吐出圧力及び吸入圧力を利用して吸入容積を変更するように構成されている。高圧導入経路114が容積制御経路111の上流部分113に連通するように第2四方弁112が維持されているとき、容積制御経路111の上流部分113には圧縮機101の吐出圧力が供給される。この場合、バイパス吐出弁35は閉じられるので、圧縮機101は相対的に大きい吸入容積で運転される(高容積モード)。
【0029】
冷凍サイクル装置100の負荷が減少すると、インバータによって圧縮機101のモータ2の回転数が減らされる。これにより、冷凍サイクル装置100の能力が減少し、効率的な運転が行われる。しかし、負荷がさらに減少すると、モータ2の回転数が下限値に到達し、それ以上の能力追従が困難になる。
【0030】
より低い能力での運転が必要な場合、制御装置117は、容積制御経路111が流路10fに連通するように第2四方弁112を切り替える。容積制御経路111の上流部分113が高圧導入経路114から切り離され、容積制御経路111が開通する。すなわち、上流部分113と下流部分115とが連通する。その結果、容積制御経路111の上流部分113には圧縮機101の吸入圧力が供給される。バイパス吐出弁35には、圧縮機101の吸入圧力が作用する。この場合、圧縮室25の容積減少時に圧縮室25内の冷媒がピストン8によって押しのけられることに伴い、バイパス吐出弁35が開く。バイパス吐出弁35が開いてバイパス吐出口16と圧縮室25とが連通している期間において、圧縮室25に吸入された冷媒は、容積制御経路111の上流部分113、第2四方弁112及び容積制御経路111の下流部分115を通じて、流路10fに戻される。すなわち、圧縮機101は相対的に小さい吸入容積で運転される(低容積モード)。
【0031】
圧縮機101の回転数が一定であると仮定すると、低容積モードでの圧縮機101からの冷媒吐出量は、高容積モードでの冷媒吐出量よりも少ない。従って、運転モードを高容積モードと低容積モードとの間で切り替えることによって、能力追従可能な範囲、特に下限値が拡大する。
【0032】
インジェクション経路121は、流路10dを流路10fに接続するように構成されている。流路10dは、膨張機構104と第2熱交換器105とを接続している流路である。流路10fは、第1四方弁102とアキュームレータ106とを接続している流路である。インジェクション経路121には、流路10dに比較的近い位置にインジェクション制御弁123が設けられている。
【0033】
圧縮機101が低容積モードで動作しているとき、容積制御経路111を通じて、圧縮機101から流路10fに高い過熱度のガス冷媒が戻され、アキュームレータ106に流入する。高容積モードから低容積モードへの切り替えに伴って、制御装置117は、インジェクション制御弁123を開くための制御を実行する。インジェクション制御弁123を開くと、インジェックション経路121を通じて、液相の成分を含んだ冷媒(気液二相冷媒)が流路10fに導かれる。これにより、アキュームレータ106の内部において、液冷媒が高い過熱度のガス冷媒に接触して気化し、蒸発潜熱によって高い過熱度のガス冷媒を適正な過熱度まで冷却する。結果として、容積制御圧縮機101の圧縮動力の増加を防止できる。冷凍サイクル装置100の成績係数(COP)も向上する。なお、低容積モードから高容積モードへの切り替えに伴って、制御装置117は、インジェクション制御弁123を閉じるための制御を実行する。
【0034】
本実施形態によれば、インジェクション制御弁123を使用して、インジェクション経路121を通じて流路10fに導かれる冷媒の量(液インジェクション量)を調節することができる。つまり、圧縮機101に吸入されるべき冷媒(吸入冷媒)の過熱度を比較的自由に調節できる。インジェクション制御弁123は、開度を変更できる弁、例えば、電動膨張弁であることが好ましい。制御装置117は、吸入冷媒の過熱度が適切な温度範囲内に収まるように、インジェクション制御弁123の開度を制御する。「適切な温度範囲」は、例えば、飽和蒸気温度から+2℃〜+5℃の範囲である。なお、吸入冷媒の過熱度は、圧縮機101の吸入経路である流路10gの温度を計測したり、圧縮機101の吐出温度(吐出冷媒の温度)から推定したりすることができる。当業者に知られているように、吸入冷媒の過熱度は、吐出温度、蒸発温度及び凝縮温度から推定することができる。従って、冷凍サイクル装置100は、吐出温度を計測する吐出温度センサ、蒸発温度を計測する蒸発温度センサ、及び凝縮温度を測定する凝縮温度センサを備えていてもよい。各センサによって計測された温度を用いて、制御装置117によって吸入冷媒の過熱度が特定される。
【0035】
また、制御装置117は、吸入冷媒の過熱度が高すぎる場合には、インジェクション経路121を通じて流路10f(吸入経路)に導かれる冷媒の量が増加するようにインジェクション制御弁123を制御する。つまり、インジェクション制御弁123の開度を拡大する。他方、制御装置117は、吸入冷媒の過熱度が低すぎる場合には、インジェクション経路121を通じて流路10f(吸入経路)に導かれる冷媒の量が減少するようにインジェクション制御弁123を制御する。つまり、インジェクション制御弁123の開度を縮小する。このようにすれば、圧縮機101の圧縮動力の増加を防止できることはもとより、より多くの液冷媒を蒸発器に供給できるので、冷凍サイクル装置100の能力の低下を抑制できる。
【0036】
本実施形態において、容積制御経路111は、アキュームレータ106の上流側で吸入経路(流路10f)に接続されている。インジェクション経路121は、アキュームレータ106の上流側で吸入経路(流路10f)に接続されている。ただし、容積制御経路111がアキュームレータ106に接続されていてもよい。インジェクション経路121がアキュームレータ106に接続されていてもよい。どのような組み合わせの構成を採用したとしても、ガス冷媒及び液冷媒がアキュームレータ106の中で混ざるので、過熱度を下げる効果を得ることができる。さらに、アキュームレータ106は省略可能である。アキュームレータ106が省略されていたとしても、ガス冷媒と液冷媒とが混ざって過熱度を下げる効果は得られる。例えば、スクロール圧縮機を用いた冷凍サイクル装置にはアキュームレータが設けられていないことが多い。
【0037】
本実施形態において、インジェクション経路121は、蒸発器(第1熱交換器103又は第2熱交換器105)をバイパスすることによって液相の成分を含んだ冷媒が吸入経路(流路10f)に導かれるように流路10dに接続されている。ただし、液相の成分を含んだ冷媒を吸入経路に供給できる限りにおいて、インジェクション経路121の始端部の位置は特に限定されない。例えば、インジェクション経路121は、流路10cに接続されていてもよい。つまり、インジェクション経路121は、高圧経路及び低圧経路のどちらに接続されていてもよい。ここで、高圧経路は、放熱器(第1熱交換器103又は第2熱交換器105)で冷却された冷媒を膨張機構104へと導く経路である。低圧経路は、膨張機構104で膨張した冷媒を蒸発器(第1熱交換器103又は第2熱交換器105)に導く経路である。さらに、インジェクション経路121は、高圧経路及び低圧経路の両方に接続されていてもよい。この場合、高圧経路に接続された部分(第1分岐部分)と低圧経路に接続された部分(第2分岐部分)とのそれぞれにインジェクション制御弁123が設けられていてもよい。液冷媒を吸入経路に供給する観点において、インジェクション経路121の始端部が高圧経路に接続されていることが好ましい。なお、冷凍サイクル装置100を空気調和装置に適用した場合、流路10c及び10dにおける冷媒の状態は、冷房時と暖房時とで逆転する。
【0038】
(変形例1)
図3に示すように、変形例1に係る冷凍サイクル装置200は、インジェクション制御弁123に代えて、インジェクション経路121に設けられた固定絞り機構125を備えている。固定絞り機構125は、典型的には、キャピラリーチューブ125である。以下、先の実施形態又は変形例と後の実施形態又は変形例とで共通する構成要素には同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
キャピラリーチューブ125は、圧縮機101の吸入冷媒の過熱度を2℃以上に保持しうる量の冷媒(液相の成分)をインジェクション経路121に流すように構成されている。詳細には、冷凍サイクル装置100の全ての運転条件において、圧縮機101の吸入冷媒の過熱度を2℃以上に保持しうる量の冷媒(液相の成分)がインジェクション経路121を通じて吸入経路に供給されるように、キャピラリーチューブ125の内径及び長さが調節されている。低容積モードにおけるモータ2の回転数の下限値は設計で決められている(例えば、10Hz)。このとき、容積制御経路111の冷媒の流量が最も少ない。つまり、冷凍サイクル装置200が最も低い能力で運転されているときに2℃以上の過熱度が確保されるようにキャピラリーチューブ125を設計する。そのようにすれば、全ての運転条件において、吸入冷媒が湿り蒸気となることを回避できる。高容積モードにおいても気液二相冷媒が流路10fに供給されるものの、その量は僅かである。従って、高容積モードにおいて、吸入冷媒が湿り蒸気となるおそれはない。
【0040】
変形例1によれば、図1を参照して説明したインジェクション制御弁123を安価なキャピラリーチューブ125で代替することができる。そのため、コストを抑制しながら、高い成績係数(COP)を発揮しうる冷凍サイクル装置200を提供できる。
【0041】
(変形例2)
図4に示すように、変形例2に係る冷凍サイクル装置300は、流路10c及び流路10dの両方に接続されたインジェクション経路121と、2つのキャピラリーチューブ125とを備えている点で変形例1に係る冷凍サイクル装置200と相違する。つまり、インジェクション経路121は、高圧経路及び低圧経路から選ばれる一方に接続された第1分岐部分121aと、高圧経路及び低圧経路から選ばれる他方に接続された第2分岐部分121bとを含む。高圧経路は、放熱器で冷却された冷媒を膨張機構104へと導く経路である。低圧経路は、膨張機構104で膨張した冷媒を蒸発器に導く経路である。第1分岐部分121a及び第2分岐部分121bのそれぞれにキャピラリーチューブ125が設けられている。
【0042】
変形例1で説明したように、詳細には、冷凍サイクル装置300の全ての運転条件において、圧縮機101の吸入冷媒の過熱度を2℃以上に保持しうる量の冷媒(液相の成分)がインジェクション経路121を通じて吸入経路に供給されるように、各キャピラリーチューブ125の内径及び長さが調節されている。
【0043】
変形例2によれば、第1四方弁102で冷媒の流れ方向を切り替えた場合において、2つのキャピラリーチューブ125の一方が高圧経路に接続され、他方が低圧経路に接続される。低圧経路に接続されたキャピラリーチューブ125には殆ど冷媒が流れず、高圧経路に接続されたキャピラリーチューブ125には液相の成分を含んだ冷媒が流れる。そのため、第1四方弁102で冷房と暖房を切り替えた場合において、冷房時に高圧経路に接続されるべきキャピラリーチューブ125と、暖房時に高圧経路に接続されるべきキャピラリーチューブ125とが相違する。従って、各運転に適したインジェクション量が達成されるようにキャピラリーチューブ125を設計できる。すなわち、圧縮機101の吸入冷媒の過熱度を成績係数(COP)の観点で望ましい範囲に設定できるため、高い成績係数(COP)を発揮しうる冷凍サイクル装置300を提供できる。
【0044】
(変形例3)
図5に示すように、変形例3に係る冷凍サイクル装置400は、変形例2に係る冷凍サイクル装置300の構成に加え、インジェクション経路121に設けられたインジェクション開閉弁127をさらに備えている。
【0045】
図5において、インジェクション経路121は、キャピラリーチューブ125(固定絞り機構)から見てインジェクション経路121の下流側に位置している。つまり、インジェクション開閉弁127は、キャピラリーチューブ125よりも流路10fの近くに位置している。この構成によれば、1つのインジェクション開閉弁127でインジェクション経路121の開閉を切り替えることができる。ただし、インジェクション開閉弁127の位置は特に限定されない。インジェクション開閉弁127は、キャピラリーチューブ125よりも流路10c又は10dの近くに位置していてもよい。この場合、第1分岐部分121a及び第2分岐部分121bのそれぞれにインジェクション開閉弁127を設けることができる。2つのインジェクション開閉弁127が必要になるものの、キャピラリーチューブ125に冷媒が滞留することを防止できる。
【0046】
インジェクション開閉弁127は、例えば、流路を開閉する機能を有する電磁弁で構成されている。制御装置117によって、インジェクション開閉弁127を制御し、これにより、インジェクション経路121の開閉を切り替えることができる。インジェクション開閉弁127は、冷媒を膨張させる機能を持っていてもよいし、持っていなくてもよい。
【0047】
冷凍サイクル装置400が高容積モードで運転されているとき、流路10fに液冷媒を供給する必要はない。制御装置117によってインジェクション開閉弁127を閉じることで、高容積モードでは必要のない液冷媒の短絡を防止できる。低容積モードでの運転条件に特化する形で、圧縮機101の吸入冷媒の過熱度が適正な値になるようにキャピラリーチューブ125を設計できる。そのため、吸入冷媒の過熱度を成績係数(COP)の観点で望ましい範囲に調節できる。その結果、高い成績係数(COP)を発揮しうる冷凍サイクル装置400を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の冷凍サイクル装置は、空調機、冷凍機、暖房機、給湯機等に有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 密閉容器
2 モータ
3 圧縮機構
4 シャフト
10a〜10g 流路(吸入経路、吐出経路)
16 バイパス吐出口
25 圧縮室
27 吸入口
28 密閉容器の内部空間
29 吐出口
35 バイパス吐出弁
100,200,300,400 冷凍サイクル装置
101 圧縮機
103 第1熱交換器
104 膨張機構
105 第2熱交換器
112 第2四方弁(流路切替部)
101 容積制御圧縮機
111 容積制御経路
113 容積制御経路の上流部分
114 高圧導入経路
115 容積制御経路の下流部分
117 制御装置
121 インジェクション経路
123 インジェクション制御弁
125 キャピラリーチューブ
127 インジェクション開閉弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮室と、前記圧縮室に開口しているバイパス吐出口と、前記バイパス吐出口を開閉するバイパス吐出弁とを有し、前記圧縮室に吸入された冷媒が吸入圧力を維持しつつ前記バイパス吐出口を通じて前記圧縮室から吐出されることによって吸入容積を変更できるように構成された容積制御圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された冷媒を冷却する放熱器と、
前記放熱器で冷却された冷媒を膨張させる膨張機構と、
前記膨張機構で膨張した冷媒を加熱する蒸発器と、
圧縮するべき冷媒を前記蒸発器から前記圧縮機に導く吸入経路と、
前記バイパス吐出口から前記吸入経路に冷媒を導くように前記バイパス吐出口に接続され、当該冷凍サイクル装置の負荷が小さいときに開通し、前記負荷が大きいときに閉鎖される容積制御経路と、
前記容積制御経路が開通しているときに、液相の成分を含んだ冷媒を前記吸入経路に導くインジェクション経路と、
を備えた、冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記インジェクション経路に設けられ、前記インジェクション経路を通じて前記吸入経路に導かれる冷媒の量を調節するインジェクション制御弁をさらに備えた、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記圧縮機に吸入されるべき冷媒の過熱度が高すぎる場合には、前記インジェクション経路を通じて前記吸入経路に導かれる冷媒の量が増加するように前記インジェクション制御弁を制御し、前記圧縮機に吸入されるべき冷媒の過熱度が低すぎる場合には、前記インジェクション経路を通じて前記吸入経路に導かれる冷媒の量が減少するように前記インジェクション制御弁を制御する制御装置をさらに備えた、請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記インジェクション経路に設けられた固定絞り機構をさらに備えた、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記固定絞り機構は、前記圧縮機に吸入されるべき冷媒の過熱度を2℃以上に保持しうる量の前記液相の成分を前記インジェクション経路に流すように構成されている、請求項4に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記インジェクション経路に設けられたインジェクション開閉弁をさらに備えた、請求項5に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記吸入経路に設けられたアキュームレータをさらに備え、
前記容積制御経路が、前記アキュームレータの上流側で前記吸入経路に接続されている、又は前記アキュームレータに接続されており、
前記インジェクション経路が、前記アキュームレータの上流側で前記吸入経路に接続されている、又は前記アキュームレータに接続されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記放熱器で冷却された冷媒を前記膨張機構へと導く高圧経路と、
前記膨張機構で膨張した冷媒を前記蒸発器に導く低圧経路と、
をさらに備え、
前記インジェクション経路は、前記蒸発器をバイパスすることによって液相の成分を含んだ冷媒が前記吸入経路に導かれるように前記高圧経路及び前記低圧経路から選ばれる少なくとも1つに接続されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−96602(P2013−96602A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237763(P2011−237763)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】