説明

冷凍機およびこれを用いたチラー

【課題】 0℃付近まで水の冷却を可能とするチラーにおいて、外気温が低いために冷凍機の起動時に水が凍結してしまうのを防止する。
【解決手段】 冷凍機1は、膨張弁4の一次側に、液電磁弁11が設けられる。凝縮器3の一次側と膨張弁4の二次側とは、バイパス路16にて接続される。バイパス路16には、開度調整可能なバイパス弁17が設けられる。蒸発器5とタンク20との間で水を循環させ、蒸発器5における冷媒の気化熱により循環水の冷却が図られる。冷凍機1の起動時、液電磁弁11の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値以下の場合には、液電磁弁11を閉じた状態でバイパス弁17を開いて冷凍機1を起動する一方、液電磁弁11の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値を超える場合には、バイパス弁17を閉じた状態で液電磁弁11を開いて冷凍機1を起動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水などの被冷却液を冷却するチラーと、これに好適に用いられる冷凍機とに関するものである。たとえば、食品冷却や空調などのために、水の凍結を防止しつつ0℃付近(たとえば0.5℃)の冷水を得るためのチラーと、これに好適に用いられる冷凍機とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されるように、冷凍機(1)、熱交換器(2)および冷水タンク(3)により構成された冷水装置において、冷凍機(1)と熱交換器(2)との間を冷媒供給ライン(4)と冷媒還流ライン(5)で接続し、冷媒供給ライン(4)と冷媒還流ライン(5)とをバイパスライン(8)で接続し、このバイパスライン(8)に流量調節弁(9)を設けると共に、熱交換器(2)と冷水タンク(3)との間を冷水供給ライン(6)と冷水還流ライン(7)で接続し、この冷水還流ライン(7)に温度センサ(10)を設け、この温度センサ(10)の検出値に基づいて流量調節弁(9)を制御する冷水装置(チラー)が知られている。
【特許文献1】特開平9−166339号公報 (請求項1、図1、段落番号[0012]および[0013])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
チラーを用いて0℃付近まで水の冷却を図る場合には、蒸発器(熱交換器)内において水が凍結しないように、その対策が必要となる。しかしながら、前記特許文献1に開示される発明は、流量調節弁の開度調整により、冷凍機の凝縮器や膨張弁から蒸発器へ供給する冷媒の流量を調整して、水温調整するものであり、水の凍結防止については十分考慮されていない。
【0004】
具体的には、冷媒の流量は調整可能であるものの、冷凍機の凝縮器を介した冷媒のみが蒸発器へ供給されるものである。また、冷凍機の起動前ではなく起動後に、冷媒温度ではなく水温に基づき、蒸発器へ供給する冷媒の流量を調整するものである。従って、外気温が低い状態で冷凍機を起動させると、起動直後に凝縮器から低温の冷媒が膨張弁を介して蒸発器へ入ることが避けられず、蒸発器内において水が凍結するおそれがある。
【0005】
このような不都合は、水を冷却するためのウォータチラーに限らず、被冷却液が凍結するおそれがある他のチラーの場合も同様である。また、前記特許文献1では、水が冷水タンクと蒸発器との間を循環される循環仕様とされるが、蒸発器を通過して得られる冷水を使い捨てる流水仕様など、他の仕様のチラーの場合も同様である。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、外気温が低い場合においても、蒸発器内における凍結を防止しつつ被冷却液の冷却が可能なチラーと、これに好適に用いられる冷凍機とを提供することにある。たとえばウォータチラーとこれに好適に用いられる冷凍機において、蒸発器内における水の凍結を防止しつつ、0℃付近まで水の冷却を可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器にて冷凍サイクルを実行する冷凍機であって、前記膨張弁の一次側に設けられる液電磁弁と、前記凝縮器の一次側と前記膨張弁の二次側とを接続するバイパス路と、このバイパス路を通る冷媒の流量を調整する流量調整手段とを備えることを特徴とする冷凍機である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、蒸発器には、凝縮器および膨張弁を介した冷媒の他、これに代えてまたはこれに加えて、バイパス路を介して凝縮器一次側の冷媒が供給可能とされる。従って、たとえばチラーに用いた場合において、外気温が低く、凝縮器および膨張弁を介した冷媒を用いると、蒸発器内において被冷却液が凍結するおそれがある場合には、バイパス路を介した冷媒を用いることで、蒸発器内における被冷却液の凍結を防止することができる。しかも、バイパス路を介した冷媒の供給流量は、流量調整手段により調整可能とされるので、所望の状態で冷凍機を運転することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記蒸発器に被冷却液を流通させ、前記蒸発器における冷媒の気化熱により被冷却液の冷却を図るチラーであって、前記流量調整手段は、前記バイパス路に設けられる開度調整可能なバイパス弁から構成され、前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力に基づき、前記液電磁弁および/または前記バイパス弁の開閉を制御することを特徴とする請求項1に記載の冷凍機を用いたチラーである。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、蒸発器には、凝縮器および膨張弁を介した冷媒の他、これに代えてまたはこれに加えて、バイパス路を介して凝縮器一次側の冷媒が供給可能とされる。従って、外気温が低く、凝縮器および膨張弁を介した冷媒を用いると、蒸発器内において被冷却液が凍結するおそれがある場合には、バイパス路を介した冷媒を用いることで、蒸発器内における被冷却液の凍結を防止することができる。しかも、バイパス路を介した冷媒の流量調整手段は、開度調整可能なバイパス弁から構成されるので、簡易な構成とすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記冷凍機の起動時、前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力に基づき、前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値以下の場合には、前記液電磁弁を閉じた状態で前記バイパス弁を開いて前記冷凍機を起動する一方、前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値を超える場合には、前記バイパス弁を閉じた状態で前記液電磁弁を開いて前記冷凍機を起動することを特徴とする請求項2に記載のチラーである。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値以下の場合には、液電磁弁を閉じた状態でバイパス弁を開いて冷凍機を起動することで、許容温度以下の冷媒が蒸発器に供給されることがない。従って、外気温が低い場合においても、蒸発器内における被冷却液の凍結を防止することができる。たとえば、0℃付近まで水の冷却が可能なウォータチラーにおいても、蒸発器内における水の凍結を防止することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値以下であることにより、前記液電磁弁を閉じた状態で前記バイパス弁を開いて前記冷凍機を起動した場合において、前記蒸発器の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第二設定値以上になると、前記液電磁弁を開いた後、前記蒸発器の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第三設定値になるように、前記バイパス弁の開度調整を行うことを特徴とする請求項3に記載のチラーである。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、バイパス弁のみを開いて冷凍機を起動し、次に液電磁弁をも開いた後、バイパス弁の開度を調整して、所望温度の冷媒を蒸発器へ供給可能である。これにより、外気温が低い場合においても、蒸発器内における凍結を防止しつつ被冷却液の冷却が可能となる。たとえば、0℃付近まで水の冷却が可能なウォータチラーにおいても、蒸発器内における水の凍結を防止することができる。
【0015】
さらに、請求項5に記載の発明は、前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力を監視し、その温度または圧力が第一設定値を超える場合には、前記バイパス弁を全閉することを特徴とする請求項4に記載のチラーである。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、バイパス路を介した冷媒を供給しなくても、蒸発器内において被冷却液が凍結するおそれがなくなった場合には、バイパス弁を閉じて通常の冷凍サイクルのみで運転することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、外気温が低い場合においても、蒸発器内における凍結を防止しつつ被冷却液の冷却が可能となる。たとえばウォータチラーの場合、外気温が低い場合においても、蒸発器内における水の凍結を防止しつつ、0℃付近まで水の冷却が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
この発明の冷凍機は、水などの被冷却液を冷却するチラーに好適に用いられる。また、この発明のチラーは、冷凍機の蒸発器を被冷却液との熱交換器として用い、蒸発器における冷媒の気化熱で被冷却液の冷却を図る装置である。被冷却液は、典型的には水とされるが、凍結のおそれがある他の液体でもよい。チラーは、被冷却液が水の場合、ウォータチラーまたは冷水装置ということができる。
【0019】
本実施形態のチラーは、圧縮式冷凍機を備える。圧縮式冷凍機は、周知のとおり、圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器を備え、冷媒の圧縮、凝縮、膨張および蒸発の冷凍サイクルを実行する。
【0020】
圧縮機は、その形式を特に問わないが、たとえばスクロール圧縮機が用いられる。凝縮器は、典型的にはファンを備える空冷式の熱交換器である。このファンは、所定箇所の冷媒温度が設定温度以下の場合には、回転しないよう制御される。また、膨張弁は、キャピラリチューブなどから構成してもよい。さらに、蒸発器は、冷媒流路と被冷却液流路とを有し、冷媒と被冷却液とを混ぜることなく、間接的に熱交換させる熱交換器である。蒸発器は、典型的にはプレート式熱交換器とされるが、二重管式熱交換器などでもよい。
【0021】
本実施形態の冷凍機では、膨張弁の一次側(入口側)に液電磁弁が設けられる。この液電磁弁は、凝縮器と膨張弁との間に設けられ、膨張弁への冷媒供給の有無を切り替える。
【0022】
また、凝縮器の一次側(入口側)と膨張弁の二次側(出口側)とは、バイパス路で接続される。従って、圧縮機からの冷媒は、通常どおり凝縮器および膨張弁を介して蒸発器へ供給可能とされると共に、バイパス路を介して蒸発器へ供給可能とされる。バイパス路には、バイパス弁が設けられている。
【0023】
バイパス路を介して蒸発器へ供給する冷媒の流量は、流量調整手段により調整可能とされる。流量調整手段は、バイパス弁を開度調整可能な電動弁から構成することで実現される。具体的には、バイパス弁は、モータバルブまたは比例制御弁から構成される。但し、バイパス路として管径の異なる複数の管路を並列して設け、それぞれの管路に設けた電磁弁を個別に開閉可能とすることで、流量調整手段を構成してもよい。
【0024】
蒸発器を構成する熱交換器は、前述したように、冷媒が通される冷媒流路と、被冷却液が通される被冷却液流路とを有する。被冷却液は、蒸発器を通過する間に、冷媒の気化熱により冷却を図られる。
【0025】
被冷却液は、蒸発器を通される限り、その流路を特に問わない。また、蒸発器にて冷却を図られた被冷却液は、その用途を特に問わない。たとえば、被冷却液は、蒸発器を通されて冷却された後、負荷との熱交換(たとえば食材の冷却)に使用され、使い捨てられる(流水仕様)。また、被冷却液を貯留するタンクを備え、このタンクから蒸発器へ被冷却液を供給して、蒸発器にて冷却を図った後、タンクへ戻してもよい(循環仕様)。すなわち、蒸発器とタンクとの間で、被冷却液を循環させてもよい。
【0026】
循環仕様の場合、蒸発器からタンクへの戻し路において、負荷との熱交換を図ってもよいし、タンク内において負荷との熱交換を図ってもよい。たとえば、タンクを冷却槽として用い、パックされた食品を、タンク内の被冷却液に浸して冷却を図ることができる。また、蒸発器とタンクとの間で、被冷却液の循環を図ってタンク内の被冷却液を冷却すると共に、その冷却された被冷却液を、他の装置へ供給して利用してもよい。
【0027】
冷凍機(特に圧縮機、凝縮器のファン)の他、それに付設された液電磁弁およびバイパス弁などは、制御器により制御される。この制御は、液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力、蒸発器の一次側の冷媒温度または冷媒圧力、および被冷却液の液温などに基づき行われる。そのために、液電磁弁の一次側および蒸発器の一次側には、それぞれ温度センサまたは圧力センサが設けられ、蒸発器から被冷却液が通される流路(循環仕様の場合、タンクへの戻し路)には、被冷却液の温度を検出する液温センサが設けられる。そして、制御器は、これらセンサの検出信号などに基づき、圧縮機の起動、凝縮器のファンの回転、液電磁弁の開閉、バイパス弁の開閉や開度調整などを実行する。
【0028】
寒冷地などで外気温が低い場合、凝縮器が冷やされることで、液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が低く、そのような低温の冷媒が膨張弁を介して蒸発器へ供給されると、蒸発器内で被冷却液が凍結してしまうおそれがある。そこで、本実施形態のチラーでは、冷凍機の起動時(再起動時を含む)に、液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が確認される。
【0029】
そして、液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値以下の場合には、液電磁弁を閉じた状態でバイパス弁を開いて冷凍機を起動する。一方、液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値を超える場合には、バイパス弁を閉じた状態で液電磁弁を開いて冷凍機を起動する。
【0030】
第一設定値は、それ以下の温度または圧力の冷媒が膨張弁を介して蒸発器へ供給されると、蒸発器において被冷却液を凍結させるおそれがあるか否かに基づき設定される。液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値以下である場合には、バイパス路を介した冷媒を用いることで、蒸発器内における被冷却液の凍結が防止される。一方、液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値を超える場合には、通常の冷凍サイクルを実行する。
【0031】
液電磁弁を閉じた状態でバイパス弁を開いて冷凍機を起動後には、蒸発器の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が上昇する。そして、蒸発器の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第二設定値以上になると、バイパス弁に加えて液電磁弁も開ける。これにより、バイパス路を介した高温冷媒(気相)と、凝縮器および膨張弁を介した低温冷媒(気液二相)とが、蒸発器へ供給されて冷凍機が運転される。
【0032】
その後、蒸発器の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第三設定値になるように、バイパス弁の開度調整がなされる。バイパス路を介して冷媒を蒸発器へ供給中には、液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力を常時監視する。そして、その温度または圧力が第一設定値を超える場合には、蒸発器内での被冷却液の凍結のおそれはなくなったとして、バイパス弁を全閉する。
【0033】
循環仕様のウォータチラーとして構成した場合、蒸発器にて得られる冷水は、たとえば、加熱調理後の食品の冷却に使用される。食品の安全性や食感および鮮度を保つためには、加熱調理後、速やかに5℃以下の低温に冷却するのが好ましい。そこで、たとえば、循環仕様のウォータチラーにおいて、循環水を数℃というレベルではなく、それ未満の0度付近(通常0.5〜1.5℃)まで冷却する構成とするのがよい。この場合、水は、冷水タンクと蒸発器との間を循環されるが、その際、蒸発器にて冷却を図られる。水温および/または冷媒温度に基づき冷凍機を制御することで、蒸発器から冷水タンクへ戻される冷水の温度、または冷水タンク内の冷水の温度を、所望温度に保つことができる。
【実施例】
【0034】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、循環仕様のウォータチラーと、それ用の冷凍機について説明する。
【0035】
図1は、本発明の冷凍機およびこれを用いたチラーの一実施例を示す概略構成図である。本実施例の冷凍機1は、圧縮式冷凍機である。圧縮式冷凍機は、周知のとおり、圧縮機2、凝縮器3、膨張弁4および蒸発器5を備え、冷媒の圧縮、凝縮、膨張および蒸発の冷凍サイクルを実行する。
【0036】
圧縮機2は、冷媒を圧縮して高温高圧のガスにする。圧縮機2からのガスは、油分離器6を介して凝縮器3へ送られる。油分離器6により、圧縮機2からのガスに含まれる油の分離除去が図られる。圧縮機2は、その形式を特に問わないが、たとえばスクロール圧縮機が用いられる。この場合、凝縮器3の一次側には、KVR弁(高圧圧力調整弁)7を設けておくのが好ましい。
【0037】
凝縮器3は、圧縮機2からのガスを凝縮液化する。本実施例の凝縮器3は、ファン8を備える空冷式の熱交換器である。このファン8は、モータ9により回転される。但し、所定箇所の冷媒温度が設定温度以下の場合には、回転しないよう制御される。凝縮器3からの冷媒は、受液器10および液電磁弁11を介して膨張弁4へ送られる。受液器10は、凝縮器3で液化された冷媒を一次的に貯蔵する。液電磁弁11は、凝縮器3および受液器10から膨張弁4への冷媒の供給の有無を切り替える。
【0038】
膨張弁4は、凝縮器3からの液化冷媒を通過させることで、冷媒の圧力と温度とを低下させる。そして、蒸発器5は、冷媒の蒸発により、周囲から熱を奪う熱交換器である。蒸発器5は、冷媒流路12と水流路13とを有し、冷媒と水とを混ぜることなく、冷媒と水とで熱交換させる熱交換器である。本実施例の蒸発器5は、プレート式熱交換器とされる。
【0039】
蒸発器5にて気化された冷媒は、アキュムレータ14を介して圧縮機2へ戻される。蒸発器5とアキュムレータ14との間には、SPR弁(吸入圧力調整弁)15を設けるのが好ましい。冷凍機1は、以上のように構成されることで、冷凍サイクルを実行可能とされる。
【0040】
本実施例の冷凍機1は、さらに、凝縮器3の一次側と膨張弁4の二次側との間が、バイパス路16で接続される。バイパス路16に冷媒を通した場合に冷凍機1が異常とならないように、バイパス路16は、冷凍サイクルを構成する主管(油分離器6と凝縮器3とを接続する管など)と同等かそれ以上の口径から形成するのが好ましい。また、同じ目的で、前述したように、油分離器6の二次側には、KVR弁7を設けるのが好ましい。
【0041】
バイパス路16を前記主管から分岐して設けることで、圧縮機2からの冷媒は、通常どおり凝縮器3および膨張弁4を介して蒸発器5へ供給可能とされると共に、バイパス路16を介して蒸発器5へ供給可能とされる。バイパス路16には、開度調整可能なバイパス弁17が設けられる。本実施例のバイパス弁17は、モータバルブから構成される。モータバルブとは、モータを正転または逆転させて、開度調整が可能とされた弁である。
【0042】
本実施例の冷凍機1には、第一温度センサ18と第二温度センサ19とが設けられる。第一温度センサ18は、受液器10と液電磁弁11との間に設けられ、液電磁弁11の一次側の冷媒温度を検出する。また、第二温度センサ19は、膨張弁4と蒸発器5との間に設けられ、蒸発器5の一次側の冷媒温度を検出する。この際、膨張弁4と蒸発器5とを接続する主管と、バイパス路16との接続部よりも下流側に設けられる。これにより、液電磁弁11を介した冷媒の温度、バイパス弁17を介した冷媒の温度、およびこれらが混ざった状態の冷媒の温度を検出することができる。
【0043】
蒸発器5を構成するプレート式熱交換器は、その冷媒流路12に、膨張弁4からの冷媒、および/または、バイパス路16からの冷媒が通される。一方、水流路13には、冷水タンク20からの水が給排水される。具体的には、蒸発器5の水流路13は、給水路21と戻し路22とを介して、冷水タンク20に接続されている。そして、給水路21には、ポンプ23が設けられている。従って、このポンプ23を作動させることで、冷水タンク20からの水は、給水路21を介して蒸発器5へ供給され、蒸発器5内の水流路13を通った後、戻し路22を介して冷水タンク20へ戻される。このようにして、冷水タンク20内の水は、冷水タンク20と蒸発器5との間を循環される。蒸発器5において冷媒が蒸発する際の気化熱を利用して、循環水の冷却を図ることができる。
【0044】
ところで、蒸発器5においては、冷媒流路12を流れる冷媒と、水流路13を流れる循環水とは、通常は対向流とされるが、場合により並行流とすることもできる。また、循環水の温度を検出するために、本実施例では、蒸発器5出口付近において戻し路22に水温センサ24を設けている。
【0045】
本実施例のチラー25は、制御器26により制御される。そのため、制御器26は、冷凍機1およびポンプ23に接続されている。より具体的には、制御器26は、圧縮機2、凝縮器3のファン8のモータ9、ポンプ23、液電磁弁11およびバイパス弁17などに接続されている。さらに、制御器26は、第一温度センサ18、第二温度センサ19、および水温センサ24に接続されている。そして、制御器26は、これらセンサ18,19,24の検出信号などに基づき、圧縮機2、凝縮器3のファン8のモータ9、ポンプ23、液電磁弁11およびバイパス弁17などを制御する。なお、図示例では、制御器26は、二点鎖線で囲まれる冷凍機本体ユニット27を制御し、この冷凍機本体ユニット27が、圧縮機2と、凝縮器3のファン8のモータ9とを制御する構成としているが、制御器26が直接に、圧縮機2と、凝縮器3のファン8のモータ9とを制御する構成としてもよい。
【0046】
チラー25の運転中は、ポンプ23を作動させて、蒸発器5と冷水タンク20との間で水の循環がなされる。本実施例のチラー25は、典型的には、戻し路22を介して冷水タンク20へ戻される循環水の温度が0度付近(たとえば0.5℃)となるように運転される。この際、冷凍機1の圧縮機2は、起動や停止および再起動がなされる場合があるが、起動時(再起動時を含む)には、低温の冷媒で循環水が凍結することがないように制御される。
【0047】
すなわち、圧縮機2が停止して冷媒の循環がない状態では、外気温が低いと凝縮器3が冷やされることで、液電磁弁11の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が低くなる。従って、そのような低温の冷媒が膨張弁4を介して蒸発器5へ供給されると、蒸発器5内で循環水が凍結してしまうおそれがある。そこで、本実施例のチラー25では、冷凍機1の起動時(圧縮機2の起動時ともいえる)に、図2および図3に示すような制御を行うことで、循環水の凍結の防止が図られる。
【0048】
図2は、冷凍機1の起動時、より具体的には圧縮機2の起動時(再起動時を含む)における冷凍機1の制御を示すフローチャートである。また、図3は、図2における凍結防止制御の詳細を示すフローチャートである。
【0049】
いま、冷凍機1が停止状態にあるとする。この状態では、圧縮機2は停止すると共に、液電磁弁11は閉鎖されており、バイパス弁17は全閉状態とされている。その状態から、冷凍機1を起動しようとする場合、まず、第一温度センサ18に基づく液電磁弁11の一次側の冷媒温度が、凍結防止制御開始温度(第一設定値)以下か否かを確認する(S11)。液電磁弁11の一次側の冷媒温度が凍結防止制御開始温度以下である場合には、図3に示される凍結防止制御にて冷凍機1を起動する(S12)。一方、液電磁弁11の一次側の冷媒温度が凍結防止制御開始温度を超える場合には、通常どおり、液電磁弁11を開放して冷凍機1を起動する(S13)。
【0050】
次に、図3に基づき、凍結防止制御について説明する。液電磁弁11の一次側の冷媒温度が凍結防止制御開始温度以下であることにより、凍結防止制御へ移行した場合、まずバイパス弁17を全開または設定開度まで開いて、冷凍機1を起動する(S21)。これにより、比較的高温の冷媒が、バイパス路16を介して蒸発器5へ供給されつつ、サイクルの予熱が図られる。ところで、凍結防止制御がなされる場合には、通常、冷媒温度が低いために、凝縮器3のファン8は停止している。
【0051】
このようにして、液電磁弁11を閉じてバイパス弁17を開いた状態で圧縮機2を起動すると、第二温度センサ19が検出する冷媒温度は上昇していくことになる。第二温度センサ19に基づく蒸発器5の一次側の冷媒温度が、液電磁弁開放温度(第二設定値)以上となると、液電磁弁11を開ける(S22,S23)。これにより、バイパス路16を介した高温冷媒(気相)と、凝縮器3および膨張弁4を介した低温冷媒(気液二相)とが、混合されて蒸発器5へ供給されつつ冷凍機1が運転される。第二温度センサ19に基づく蒸発器5の一次側の冷媒温度は、液電磁弁11を開いた直後には一旦低下するが、その後は上昇していくことになる。
【0052】
第二温度センサ19に基づく蒸発器5の一次側の冷媒温度が、開度調整移行温度以上になるか、液電磁弁11の開放から設定時間経過すると、バイパス弁17を徐々に閉鎖し始める(S24,S25)。すなわち、バイパス弁17を所定速度で徐々に閉鎖するよう制御する。すると、バイパス弁17が全閉する前に、蒸発器5の一次側の冷媒温度が開度固定移行温度(第三設定値)に達する(S26)。
【0053】
蒸発器5の一次側の冷媒温度が開度固定移行温度になれば、その時点における開度にバイパス弁17の開度を固定する(S27)。以後は、その状態で冷凍機1を運転するのであるが、万一、蒸発器5の一次側の冷媒温度が上昇して、開度再調整移行温度以上となれば、再びステップS25へ戻って、バイパス弁17の開度調整が実行される(S28)。
【0054】
このようにして、最終的には、蒸発器5へ供給される冷媒の温度を、蒸発器5へ供給される水温以下で、且つ循環水が凍結しない所望温度で制御する。このような凍結防止制御中には、第一温度センサ18に基づき液電磁弁11の一次側冷媒温度が監視され、その温度が凍結防止制御開始温度を超えると、循環水の凍結のおそれはないので、バイパス弁17を全閉して、通常の冷凍サイクルで運転がなされる。
【0055】
このような構成のチラー25は、蒸発器5から冷水タンク20への戻し路22において、負荷との熱交換を図ってもよいし、冷水タンク20内において負荷との熱交換を図ってもよい。たとえば、冷水タンク20を冷却槽として用い、パックされた食品を、冷水タンク20内の冷水に浸して冷却を図ることができる。また、蒸発器5と冷水タンク20との間で、水の循環を図って冷水タンク20内の水を冷却すると共に、その冷却された水を、他の装置(たとえば蓄氷型冷水装置)へ供給して利用してもよい。
【0056】
本実施例の冷凍機1およびこれを用いたチラー25によれば、蒸発器5には、凝縮器3および膨張弁4を介した冷媒の他、これに代えてまたはこれに加えて、バイパス路16を介して凝縮器3の一次側の冷媒が供給可能とされる。そして、外気温が低く、凝縮器3および膨張弁4を介した冷媒を用いると、蒸発器5内において水が凍結するおそれがある場合には、バイパス路16を介した冷媒を用いることで、蒸発器5内における水の凍結を防止することができる。
【0057】
本発明の冷凍機1およびこれを用いたチラー25は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、温度センサ18,19を用いて、冷媒の温度に基づき制御したが、圧力センサを用いて、冷媒の圧力に基づき制御してもよい。また、前記実施例において、ステップS24は省略することもできる。
【0058】
また、前記実施例では、バイパス弁17はモータバルブから構成したが、モータバルブの代わりに比例制御弁を用いてもよい。この場合、図3におけるステップS25〜S28は、第二温度センサ(圧力センサ)19に基づき、蒸発器5の一次側の冷媒温度(冷媒圧力)が第三設定値になるように、バイパス弁17の開度を増減することで、より精密な制御を行うことができる。
【0059】
また、前記実施例において、バイパス路16として管径の異なる複数の管路を並列して設け、それぞれの管路に設けた電磁弁を個別に開閉可能とすることで、バイパス路16を介して蒸発器5へ供給する冷媒の流量を調整してもよい。また、前記実施例において、液電磁弁11は、その名のとおり、通常は開閉のみ可能な電磁弁から構成されるが、場合によりモータバルブなどを用いて、開度調整可能としてもよい。
【0060】
また、前記実施例では、ウォータチラーについて説明したが、その他のチラーにも同様に適用可能である。すなわち、蒸発器5において冷媒との間で熱交換を図られる被冷却液は、水に限らず、凍結のおそれがあるその他の液体であってもよい。
【0061】
また、前記実施例では、タンク20と蒸発器5との間を被冷却液が循環される循環仕様としたが、蒸発器5へ供給した被冷却液を、負荷との熱交換(食材の冷却など)に使用後、使い捨てる流水仕様としてもよい。
【0062】
さらに、前記実施例では、冷凍機1は、チラー25に用いた例について説明したが、蒸発器5へ所望温度以下の冷媒を流したくない場合や、蒸発器5へ供給する冷媒温度を調整したい場合であれば、チラー25以外の用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の冷凍機およびこれを用いたチラーの一実施例を示す概略構成図である。
【図2】図1のチラーの冷凍機の起動時の制御を示すフローチャートである。
【図3】図2における凍結防止制御の詳細を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
1 冷凍機
2 圧縮機
3 凝縮器
4 膨張弁
5 蒸発器
11 液電磁弁
16 バイパス路
17 バイパス弁(流量調整手段)
18 第一温度センサ
19 第二温度センサ
20 冷水タンク
26 制御器
25 チラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器にて冷凍サイクルを実行する冷凍機であって、
前記膨張弁の一次側に設けられる液電磁弁と、
前記凝縮器の一次側と前記膨張弁の二次側とを接続するバイパス路と、
このバイパス路を通る冷媒の流量を調整する流量調整手段と
を備えることを特徴とする冷凍機。
【請求項2】
前記蒸発器に被冷却液を流通させ、前記蒸発器における冷媒の気化熱により被冷却液の冷却を図るチラーであって、
前記流量調整手段は、前記バイパス路に設けられる開度調整可能なバイパス弁から構成され、
前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力に基づき、前記液電磁弁および/または前記バイパス弁の開閉を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍機を用いたチラー。
【請求項3】
前記冷凍機の起動時、前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力に基づき、
前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値以下の場合には、前記液電磁弁を閉じた状態で前記バイパス弁を開いて前記冷凍機を起動する一方、
前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値を超える場合には、前記バイパス弁を閉じた状態で前記液電磁弁を開いて前記冷凍機を起動する
ことを特徴とする請求項2に記載のチラー。
【請求項4】
前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値以下であることにより、前記液電磁弁を閉じた状態で前記バイパス弁を開いて前記冷凍機を起動した場合において、
前記蒸発器の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第二設定値以上になると、前記液電磁弁を開いた後、前記蒸発器の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第三設定値になるように、前記バイパス弁の開度調整を行う
ことを特徴とする請求項3に記載のチラー。
【請求項5】
前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力を監視し、その温度または圧力が第一設定値を超える場合には、前記バイパス弁を全閉する
ことを特徴とする請求項4に記載のチラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−14298(P2009−14298A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178445(P2007−178445)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)