説明

冷凍液化機及び冷凍液化機の運転方法

【課題】冷凍液化機本体への冷媒ガスの循環供給を継続中に冷媒ガスの精製を行える冷凍液化機及びその運転方法を提供する。
【解決手段】冷媒ガスを冷凍液化機本体11に循環供給する圧縮機12と、圧縮機の吐出側と吸入側とをバイパス弁15Vを介して接続するバイパス経路15と、圧縮機吸入側にロード弁17Vを有するガス導入経路17を介して接続し、かつ、圧縮機吐出側にアンロード弁16Vを有するガス導出経路16を介して接続するガス貯留容器13と、圧縮機の吐出側と吸入側とにそれぞれガス精製経路を介して接続するガス精製器14と、圧縮機吸入圧力を検出してバイパス弁を開閉制御する吸入圧力制御手段22と、圧縮機吐出圧力を検出してアンロード弁及びロード弁をスプリット制御する吐出圧力制御手段19と、アンロード弁及びロード弁のいずれか一方又は双方を開弁状態とする精製操作用制御手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍液化機及び冷凍液化機の運転方法に関し、詳しくは、冷媒ガス中の不純物を除去して冷媒ガスを精製する機能を備えた冷凍液化機及び冷凍液化機の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍液化機、例えばヘリウム冷凍液化機は、寒冷を発生する膨張タービンやJT弁、発生した寒冷を回収する熱交換器等の低温機器類をコールドボックスに収容した冷凍液化機本体と、冷媒ガスであるヘリウムを圧縮して冷凍液化機本体に循環供給する圧縮機と、該圧縮機の吸入圧力及び吐出圧力を一定圧力に制御するための圧力制御手段と、ヘリウムを貯留するガス貯留容器とを備えるとともに、ヘリウム中の酸素、窒素、二酸化炭素等の不純物を除去するための精製器とを備えている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−21358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、ガス貯留容器内の冷媒ガスを精製器で精製するため、ガス貯留容器と精製器とを接続する配管、ガス貯留容器内の冷媒ガスを精製器に循環させるための圧縮機、精製の開始及び終了を制御するための開閉弁などをガス精製用として設置する必要があり、装置コストの上昇を招くことになる。また、一部の配管を精製用にも兼用できるように形成した場合は、冷凍液化機本体への冷媒ガスの循環供給を継続中に冷媒ガスの精製を開始すると、圧縮機周りの圧力や流量が不安定になり、制御が困難になって冷凍液化機本体の運転に支障を来すおそれがあった。
【0005】
そこで本発明は、冷凍液化機本体への冷媒ガスの循環供給を継続中でもガス貯留容器内の冷媒ガスを精製器に循環させて冷媒ガスの精製を行うことができる冷凍液化機及びその運転方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の冷凍液化機は、冷凍液化機本体からの冷媒ガスを圧縮して前記冷凍液化機本体に循環供給する圧縮機と、該圧縮機の吐出側と吸入側とをバイパス弁を介して接続するバイパス経路と、前記圧縮機の吸入側にロード弁を有するガス導入経路を介して接続し、かつ、前記圧縮機の吐出側にアンロード弁を有するガス導出経路を介して接続するガス貯留容器と、前記圧縮機の吐出側と吸入側とにそれぞれガス精製経路を介して接続するガス精製器と、前記圧縮機の吸入圧力を検出して該吸入圧力が低下したときに前記バイパス弁を開弁方向に、吸入圧力が上昇したときに前記バイパス弁を閉弁方向に制御する吸入圧力制御手段と、前記圧縮機の吐出圧力を検出して該吐出圧力が低下したときに前記アンロード弁を閉じて前記ロード弁を開弁方向に制御し、前記吐出圧力が上昇したときに前記ロード弁を閉じて前記アンロード弁を開弁方向に制御する吐出圧力制御手段と、前記アンロード弁及び前記ロード弁のいずれか一方又は双方の弁を開弁状態とする精製操作用制御手段とを備えていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の冷凍液化機の運転方法の第1の構成は、冷凍液化機本体からの冷媒ガスを圧縮して前記冷凍液化機本体に循環供給する圧縮機と、該圧縮機の吐出側と吸入側とをバイパス弁を介して接続するバイパス経路と、前記圧縮機の吸入側にロード弁を有するガス導入経路を介して接続するとともに、前記圧縮機の吐出側にアンロード弁を有するガス導出経路を介して接続するガス貯留容器と、前記圧縮機の吐出側と吸入側とをガス精製器を介して接続するガス精製経路と、前記圧縮機の吸入圧力を検出して該吸入圧力が低下したときに前記バイパス弁を開弁方向に、吸入圧力が上昇したときに前記バイパス弁を閉弁方向に制御する吸入圧力制御手段と、前記圧縮機の吐出圧力を検出して該吐出圧力が低下したときに前記ロード弁を開弁方向に制御して前記アンロード弁を閉じ、前記吐出圧力が上昇したときに前記アンロード弁を開弁方向に制御して前記ロード弁を閉じる吐出圧力制御手段とを備えた冷凍液化機の運転方法であって、前記アンロード弁又は前記ロード弁のいずれか一方の弁が開弁状態のときに他方の弁を閉弁状態とする冷却運転用制御により前記冷凍液化機本体への冷媒ガスの循環供給を継続中に、前記アンロード弁及び前記ロード弁を開く精製操作用制御に切り替えて前記ガス貯留容器内の冷媒ガスを前記ガス精製器に循環させることを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明の冷凍液化機の運転方法の第2の構成は、冷凍液化機本体からの冷媒ガスを圧縮して前記冷凍液化機本体に循環供給する圧縮機と、該圧縮機の吐出側と吸入側とをバイパス弁を介して接続するバイパス経路と、前記圧縮機の吸入側にロード弁を有するガス導入経路を介して接続するとともに、前記圧縮機の吐出側にアンロード弁を有するガス導出経路を介して接続するガス貯留容器と、前記圧縮機の吐出側と吸入側とをガス精製器を介して接続するガス精製経路と、前記圧縮機の吸入圧力を検出して該吸入圧力が低下したときに前記バイパス弁を開弁方向に、吸入圧力が上昇したときに前記バイパス弁を閉弁方向に制御する吸入圧力制御手段と、前記圧縮機の吐出圧力を検出して該吐出圧力が低下したときに前記ロード弁を開弁方向に制御して前記アンロード弁を閉じ、前記吐出圧力が上昇したときに前記アンロード弁を開弁方向に制御して前記ロード弁を閉じる吐出圧力制御手段とを備えた冷凍液化機の運転方法であって、前記アンロード弁又は前記ロード弁のいずれか一方の弁が開弁状態のときに他方の弁を閉弁状態とする冷却運転用制御により前記冷凍液化機本体への冷媒ガスの循環供給を継続中に、一方の弁が開弁状態となったときに閉弁状態となるべき他方の弁を開弁状態とする精製操作用制御に切り替えて前記ガス貯留容器内の冷媒ガスを前記ガス精製器に循環させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷凍液化機本体への冷媒ガスの循環供給を継続中にガス貯留容器内に貯留されている冷媒ガスをガス精製器に循環させて冷媒ガスの精製を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1形態例を示す冷凍液化機の系統図である。
【図2】第1形態例におけるロード弁及びアンロード弁の開度制御を説明する図である。
【図3】本発明の第2形態例を示す冷凍液化機の系統図である。
【図4】第2形態例におけるロード弁及びアンロード弁の開度制御を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、図1及び図2は本発明の第1形態例を示すもので、本形態例に示す冷凍液化機は、寒冷を発生する膨張タービンやJT弁、発生した寒冷を回収する熱交換器等の低温機器類をコールドボックスに収納した冷凍液化機本体11と、該冷凍液化機本体11からの低圧の冷媒ガス(LP)を吸引して圧縮した高圧の冷媒ガス(HP)を冷凍液化機本体11に循環供給するための圧縮機12と、冷媒ガスを貯留するガス貯留容器13と、冷媒ガス中の酸素、窒素、二酸化炭素等の低温で固化する不純物を除去するための精製器14と、前記圧縮機12の吐出側経路12aと吸入側経路12bとをバイパス弁15Vを介して接続するバイパス経路15と、前記圧縮機12の吐出側経路12aと前記ガス貯留容器13とをアンロード弁16Vを介して接続するガス導出経路16と、前記圧縮機12の吸入側経路12bと前記ガス貯留容器13とをロード弁17Vを介して接続するガス導入経路17と、前記精製器14を圧縮機12の吐出側経路12aと吸入側経路12bとにそれぞれ接続する精製経路14a,14bとを備えるとともに、圧縮機12の吸入圧力を一定に保つための吸入圧力制御手段18と、圧縮機12の吐出圧力を一定に保つための吐出圧力制御手段19とを備えている。
【0012】
吐出圧力制御手段19は、圧縮機12の吐出圧力を検出する吐出側圧力検出手段(PIC1)21で検出した吐出圧力と制御目標値とに応じて出力される信号(計装用語のMV値(Manipulated Value)、以下、「操作出力」という。)に基づいて、アンロード弁16V及びロード弁17Vをスプリット制御するように設定されている。なお、このような制御において、バイパス弁15Vにはバイパス流れが専ら形成されるので、図2に破線で示す特性を付与し、安定時にはロード弁17Vの流量とアンロード弁16Vの流量とが共にゼロとなるように、すなわち、操作出力を50%に設定することが通常行われている。また、ロード弁17Vやアンロード弁16Vに微小な流れが発生することによる外乱を抑制するため、吐出側圧力検出手段21の操作出力が50%の付近にロード弁17Vやアンロード弁16Vが閉状態を維持するための不感帯を設けることが多い。例えば、アンロード弁16V及びロード弁17Vが共に閉弁状態となる圧力のときの操作出力を50%、不感帯幅を10%にそれぞれ設定すれば、操作出力50%に対しては45〜55%の範囲が不感帯となる。図2では不感帯を含めて制御を行う際の操作線を図示するが、以下の説明では、数値が煩雑になるため、不感帯を0%として説明を行う。
【0013】
吐出圧力制御手段19によるアンロード弁16V及びロード弁17Vのスプリット制御は、図2の各図に破線でそれぞれ示すように、吐出側圧力検出手段21の操作出力0〜100%に対して0〜50%の範囲では、アンロード弁16Vを閉弁状態(開度0%)に保持するとともに、ロード弁17Vは、操作出力0%で全開状態(開度100%)に、操作出力50%以上で全閉状態(開度0%)になるように直線的に開弁状態を制御する。一方のアンロード弁16Vは、操作出力50%以下で全閉状態、操作出力50〜100%の範囲で、開度0%から開度100%に直線的に開弁制御する。
【0014】
このように、アンロード弁16V及びロード弁17Vを、一方の弁が開いているときには他方の弁を閉じるように設定したスプリット制御を行う吐出圧力制御手段19において、本形態例では、通常の冷却運転を前記スプリット制御にて行う冷却運転用制御と、系内の冷媒ガスの精製操作を行うための精製操作用制御とを切替可能に設定している。精製操作用制御では、吐出側圧力検出手段21の操作出力が0〜50%の範囲でロード弁17Vの開弁状態を制御する際に、前記スプリット制御では全閉状態となるべきアンロード弁16Vを、あらかじめ設定された範囲まで開弁状態に維持するように制御するとともに、吐出側圧力検出手段21の操作出力が50〜100%の範囲でアンロード弁16Vの開弁状態を制御する際に、前記スプリット制御では全閉状態となるべきロード弁17Vを、あらかじめ設定された範囲まで開弁状態に維持するように制御する。
【0015】
通常の冷却運転用制御では、図2(a)に破線Vaで示すロード弁17Vの開度A[%]は、吐出側圧力検出手段21の操作出力MV[%]に対して、傾きをa、切片をb[%]で表すと、次式で制御するように設定されており、求めたAの値が負になったときには全閉状態(開度0%)としている。
A=a×MV+b=−2×MV+100
【0016】
同様に、図2(b)に破線Vcで示すアンロード弁16Vの開度B[%]は、吐出側圧力検出手段21の操作出力MV[%]に対して、傾きをc、切片をd[%]で表すと、次式で制御するように設定されており、求めたBの値が負になったときには全閉状態(開度0%)としている。
B=c×MV+d=2×MV−100
【0017】
そして、精製操作用制御では、アンロード弁16Vとロード弁17Vとにおける前記傾きa,cの値を一定の比率で変化させ、ロード弁17Vは、吐出側圧力検出手段21の操作出力が50%を超えても開弁状態を維持し、アンロード弁16Vは、吐出側圧力検出手段21の操作出力が50%を下回っても開弁状態を維持するように設定する。但し、アンロード弁16Vの切片dは、吐出側圧力検出手段21の操作出力が100%、アンロード弁16Vの開度が100%になる点を通るように設定している。
【0018】
ロード弁17Vでは、前記傾きaの値を精製操作用制御で使用する傾きa1に変更し、例えば、図2(a)に実線Vbで示すように、吐出側圧力検出手段21の操作出力が100%近くに達したときにロード弁17Vの開度が0%(閉弁状態)になるように、精製操作用制御で用いる傾きa1を−1に設定する。この精製操作用制御におけるロード弁17Vの制御は次式で行われる。
A=a1×MV+b=−1×MV+100
【0019】
同様に、アンロード弁16Vの制御においても、例えば、図2(b)に実線Vdで示すように、前記傾きcを精製操作用制御で使用する傾きc1に変更するとともに、切片dは、前述のように、吐出側圧力検出手段21の操作出力が100%、アンロード弁16Vの開度が100%になる点を通る切片d1に変更する。傾きc1を、ロード弁17Vの前記傾きa1に対応させて、a1=−c1にした場合は、a1=−1であるからc1=1となる。この精製操作用制御におけるアンロード弁16Vの制御は次式で行われる。
B=c1×MV+d1=1×MV−0
【0020】
このように精製操作用制御を設定することにより、吐出側圧力検出手段21の操作出力が50%のときには、アンロード弁16V及びロード弁17Vの開度は共に50%程度となる。
【0021】
冷凍液化機が冷却運転用制御にて定常状態で安定した運転を行っているときには、圧縮機12では、略一定量の低圧の冷媒ガスを吸引し、圧縮機12で圧縮した高圧の冷媒ガスは、略一定量が冷凍液化機本体11に供給され、余剰となる高圧の冷媒ガスをバイパス経路15を通して圧縮機12の吸入側に循環させる状態となっている。この安定運転状態では、圧縮機12の吸入圧力及び吐出圧力はほとんど変化せず、吐出側圧力検出手段21の操作出力は約50%となり、アンロード弁16V及びロード弁17Vは共に全閉状態(開度0%)、バイパス弁15Vは略一定の開度を保持した状態となっている。
【0022】
冷却運転用制御を精製操作用制御に切り替えると、吐出圧力制御手段19は、冷却運転用制御で使用していた傾きa,cを、精製操作用制御で使用する傾きa1,c1に変更する。このとき、急激に傾きを変更すると、圧縮機12の吸入圧力及び吐出圧力が乱れることがあるので、あらかじめ設定された時間、例えば30分を掛けて、あるいは、開度が毎分1%ずつ変化するように、徐々に傾きをa,cからa1,c1になるように制御する。
【0023】
このようにして吐出圧力制御手段19を精製操作用制御に切り替えると、アンロード弁16V及びロード弁17Vが略半開状態(開度50%程度)になるので、圧縮機12の吐出側経路12aに吐出された高圧の冷媒ガスの一部が、圧力差によってガス導出経路16を前記ガス貯留容器13に向かって流れ、ガス貯留容器13内に貯留されている冷媒ガスは、流入した高圧の冷媒ガスによってガス貯留容器13からガス導入経路17に押し出され、吸入側経路12bを通って圧縮機12に吸入される。
【0024】
同時に、高圧の冷媒ガスの一部は、吐出側経路12aから精製経路14aを経て精製器14に流入し、精製器14で精製された後に精製経路14bから吸入側経路12bを通って圧縮機12に吸入される。精製操作用制御を行っているときに圧縮機12から吐出される高圧の冷媒ガスは、冷凍液化機本体11からの低圧の冷媒ガス(LP)と、バイパス経路15から循環する冷媒ガスと、ガス貯留容器13からの冷媒ガスとが合流した冷媒ガスであるから、合流した冷媒ガス中に含まれているガス貯留容器13からの冷媒ガスの一部が精製器14を通ることになる。したがって、ガス貯留容器13の容積や圧力、精製器14を通る冷媒ガスの量などの条件に応じて、精製操作用制御の各種条件を設定するとともに、精製操作用制御をあらかじめ設定された時間継続して行うことにより、ガス貯留容器13内を含めた系内の冷媒ガスの全量を精製器14で精製することができる。
【0025】
また、高圧の冷媒ガスの一部がガス貯留容器13を通って圧縮機12に循環し、圧縮機12が吸入する冷媒ガス量が多くなって圧縮機12の吸入圧力が上昇することになるが、吸入側圧力検出手段(PIC2)22で検出した吸入圧力の上昇に基づいて前記吸入圧力制御手段18がバイパス弁15Vを閉弁方向に制御し、バイパス経路15を通って循環する冷媒ガス量を少なくすることにより、圧縮機12の吸入圧力を一定に保持する。このようにして圧縮機12の吸入圧力及び吐出圧力を一定に保つことにより、冷凍液化機本体11には、所定の圧力及び流量の冷媒ガスが安定した状態で供給されて循環する。
【0026】
このように、吐出圧力制御手段19に精製操作用制御を行う精製操作用制御手段を組み込むことにより、アンロード弁16V及びロード弁17Vの一方が開弁状態のときに他方を閉弁状態とする冷却運転用制御を、一方の弁を開弁方向に制御すると同時に他方の弁を閉弁方向に制御してアンロード弁16V及びロード弁17Vの両者を開状態とする精製操作用制御に切り替えるだけで、ガス導出経路16及びガス導入経路17を利用してガス貯留容器13に冷媒ガスを循環させることができ、精製用に別の圧縮機や配管を必要とせずに、冷凍液化機本体11への冷媒ガスの循環供給を継続しながら、系内の冷媒ガスの全量を精製器14に導入して精製することができる。これにより、設備コストや運転コストをほとんど上昇させることなく、冷媒ガスの精製処理を行うことができる。また、圧縮機12の吐出圧力に応じてアンロード弁16V及びロード弁17Vを開閉制御するので、冷凍液化機本体11の負荷変動によって冷凍液化機本体11を循環する冷媒ガス量が変動しても、アンロード弁16V及びロード弁17Vがそれぞれ関連した状態で開閉制御されるので、冷凍液化機本体11の負荷変動にも追従することができる。
【0027】
なお、精製器14は、冷却運転用制御を行っているときにも冷媒ガスの一部を連続して精製するものであってもよく、精製操作用制御のときにのみ作動して冷媒ガスの一部を精製するものであってもよく、冷却運転用制御と精製操作用制御とを切り替える際に圧縮機12の吸入圧力及び吐出圧力に大きな影響を与えるものならば、各種精製器を使用することができる。
【0028】
図3及び図4は、本発明の第2形態例を示すもので、前記第1形態例に示した冷凍液化機の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0029】
本形態例では、アンロード弁16V及びロード弁17Vのいずれか一方を前記スプリット制御から切り離し、あらかじめ設定された開度で開弁状態とする精製操作用制御を行う。例えば、図3に示すように、アンロード弁16Vの開閉制御を、前記吐出圧力制御手段19と精製操作用制御手段23とに切り替えるためのスイッチ24を設け、該スイッチ24を吐出圧力制御手段19から精製操作用制御手段23に切り替えることによって冷媒ガスの精製を行うようにしている。
【0030】
吐出圧力制御手段19による通常の冷却運転用制御では、図4(a)に実線Vaで示すように、ロード弁17Vは、吐出側圧力検出手段21の操作出力0〜50%の範囲で所定の開弁状態に、図4(b)に実線Vcで示すように、アンロード弁16Vは、操作出力50〜100%の範囲で所定の開弁状態に、これ以外の範囲ではそれぞれ閉弁状態になるように制御されている。
【0031】
スイッチ24を精製操作用制御手段23に切り替えると、図4(c)に実線Ve示すように、アンロード弁16Vは、あらかじめ設定された時間を掛けて、あらかじめ設定された開度、例えば開度70%に向けて徐々に開弁し、スイッチ24が冷却運転用制御Sに切り替えられるまで開度70%を維持する精製操作用制御が行われる。
【0032】
アンロード弁16Vが開弁状態になると、圧縮機12の吐出側経路12aに吐出された高圧の冷媒ガスの一部が、圧力差によってガス導出経路16を前記ガス貯留容器13に向かって流れるので、ガス貯留容器13に流入する冷媒ガスの量に応じて吐出側圧力検出手段21で検出する圧縮機12の吐出圧力が低下する。操作出力が50%を下回ると、前記吐出圧力制御手段19が作動し、前記スプリット制御により、操作出力に基づいてロード弁17Vの開度が制御され、ガス貯留容器13内に貯留されている冷媒ガスの所定量が、ガス導入経路17を通って圧縮機12の吸入側経路12bに導入される。
【0033】
このように、アンロード弁16Vが精製操作用制御手段23によって開弁状態に保持されている間、ロード弁17Vは、吐出圧力制御手段19によって吐出圧力に応じた開弁状態に制御されるので、圧縮機12からガス導出経路16を通ってガス貯留容器13に流入する冷媒ガスの量に相当する量の冷媒ガスがガス貯留容器13からロード弁17V及びガス導入経路17を通って圧縮機12に吸引される。したがって、冷媒ガスの一部がガス貯留容器13を循環する状態になるとともに、冷媒ガスの他の一部が精製器14を循環する状態になるので、前記第1形態例と同様にして冷媒ガスの精製が行われる。さらに、ガス貯留容器13を循環する冷媒ガスの量に応じて吸入圧力制御手段18がバイパス弁15Vを制御するので、吸入圧力制御手段18及び吐出圧力制御手段19によって圧縮機12の吸入圧力及び吐出圧力が一定に保持され、所定量の冷媒ガスが冷凍液化機本体11に供給されて循環する。
【0034】
また、アンロード弁16Vに代えてロード弁17Vを精製操作用制御で開弁するように設定した場合は、ロード弁17Vが開弁状態になることでガス貯留容器13内のガスがガス導入経路17を通って圧縮機12に吸引され、圧縮機12で圧縮される冷媒ガス量が増加することから吐出側経路12aの圧力が上昇するので、吐出側圧力検出手段21の操作出力が50%を超える状態になり、前記吐出圧力制御手段19が操作出力に基づいてアンロード弁16Vを開弁方向に制御し、圧縮機12から吐出された冷媒ガスの一部がアンロード弁16Vを通ってガス貯留容器13内に流入する。したがって、この場合も、圧縮機12から吐出された冷媒ガスは、一部がガス貯留容器13を循環し、他の一部が精製器14を循環する状態になり、前記同様に冷媒ガスの精製が行われる。このときも、吸入圧力制御手段18がバイパス弁15Vを制御することで圧縮機12の吸入圧力が一定に保持されることで、所定量の冷媒ガスが冷凍液化機本体11に供給されて循環する状態を継続できる。
【符号の説明】
【0035】
11…冷凍液化機本体、12…圧縮機、12a…吐出側経路、12b…吸入側経路、13…ガス貯留容器、14…精製器、14a,14b…精製経路、15…バイパス経路、15V…バイパス弁、16…ガス導出経路、16V…アンロード弁、17…ガス導入経路、17V…ロード弁、18…吸入圧力制御手段、19…吐出圧力制御手段、21…吐出側圧力検出手段(PIC1)、22…吸入側圧力検出手段(PIC2)、23…精製操作用制御手段、24…スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍液化機本体からの冷媒ガスを圧縮して前記冷凍液化機本体に循環供給する圧縮機と、該圧縮機の吐出側と吸入側とをバイパス弁を介して接続するバイパス経路と、前記圧縮機の吸入側にロード弁を有するガス導入経路を介して接続し、かつ、前記圧縮機の吐出側にアンロード弁を有するガス導出経路を介して接続するガス貯留容器と、前記圧縮機の吐出側と吸入側とにそれぞれガス精製経路を介して接続するガス精製器と、前記圧縮機の吸入圧力を検出して該吸入圧力が低下したときに前記バイパス弁を開弁方向に、吸入圧力が上昇したときに前記バイパス弁を閉弁方向に制御する吸入圧力制御手段と、前記圧縮機の吐出圧力を検出して該吐出圧力が低下したときに前記アンロード弁を閉じて前記ロード弁を開弁方向に制御し、前記吐出圧力が上昇したときに前記ロード弁を閉じて前記アンロード弁を開弁方向に制御する吐出圧力制御手段と、前記アンロード弁及び前記ロード弁のいずれか一方又は双方の弁を開弁状態とする精製操作用制御手段とを備えていることを特徴とする冷凍液化機。
【請求項2】
冷凍液化機本体からの冷媒ガスを圧縮して前記冷凍液化機本体に循環供給する圧縮機と、該圧縮機の吐出側と吸入側とをバイパス弁を介して接続するバイパス経路と、前記圧縮機の吸入側にロード弁を有するガス導入経路を介して接続するとともに、前記圧縮機の吐出側にアンロード弁を有するガス導出経路を介して接続するガス貯留容器と、前記圧縮機の吐出側と吸入側とをガス精製器を介して接続するガス精製経路と、前記圧縮機の吸入圧力を検出して該吸入圧力が低下したときに前記バイパス弁を開弁方向に、吸入圧力が上昇したときに前記バイパス弁を閉弁方向に制御する吸入圧力制御手段と、前記圧縮機の吐出圧力を検出して該吐出圧力が低下したときに前記ロード弁を開弁方向に制御して前記アンロード弁を閉じ、前記吐出圧力が上昇したときに前記アンロード弁を開弁方向に制御して前記ロード弁を閉じる吐出圧力制御手段とを備えた冷凍液化機の運転方法であって、前記アンロード弁又は前記ロード弁のいずれか一方の弁が開弁状態のときに他方の弁を閉弁状態とする冷却運転用制御により前記冷凍液化機本体への冷媒ガスの循環供給を継続中に、前記アンロード弁及び前記ロード弁を開く精製操作用制御に切り替えて前記ガス貯留容器内の冷媒ガスを前記ガス精製器に循環させることを特徴とする冷凍液化機の運転方法。
【請求項3】
冷凍液化機本体からの冷媒ガスを圧縮して前記冷凍液化機本体に循環供給する圧縮機と、該圧縮機の吐出側と吸入側とをバイパス弁を介して接続するバイパス経路と、前記圧縮機の吸入側にロード弁を有するガス導入経路を介して接続するとともに、前記圧縮機の吐出側にアンロード弁を有するガス導出経路を介して接続するガス貯留容器と、前記圧縮機の吐出側と吸入側とをガス精製器を介して接続するガス精製経路と、前記圧縮機の吸入圧力を検出して該吸入圧力が低下したときに前記バイパス弁を開弁方向に、吸入圧力が上昇したときに前記バイパス弁を閉弁方向に制御する吸入圧力制御手段と、前記圧縮機の吐出圧力を検出して該吐出圧力が低下したときに前記ロード弁を開弁方向に制御して前記アンロード弁を閉じ、前記吐出圧力が上昇したときに前記アンロード弁を開弁方向に制御して前記ロード弁を閉じる吐出圧力制御手段とを備えた冷凍液化機の運転方法であって、前記アンロード弁又は前記ロード弁のいずれか一方の弁が開弁状態のときに他方の弁を閉弁状態とする冷却運転用制御により前記冷凍液化機本体への冷媒ガスの循環供給を継続中に、一方の弁が開弁状態となったときに閉弁状態となるべき他方の弁を開弁状態とする精製操作用制御に切り替えて前記ガス貯留容器内の冷媒ガスを前記ガス精製器に循環させることを特徴とする冷凍液化機の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−47350(P2012−47350A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186858(P2010−186858)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)