説明

冷凍装置における低圧受液器への冷媒循環方法及び装置

【課題】液循環方式の冷凍装置の低圧受液器と液ポンプ及び蒸発器となる空気冷却器の配置の制約をなくし、液循環方式の冷凍装置を設けた冷却施設の建築コストの低減を図る。
【解決手段】被冷却室Rに設けられた空気冷却器14と同一高さで液面形成容器34を設け、空気冷却器14と液面形成容器34とを往路36及び復路40で接続する。往路36に冷媒供給管18を接続し、復路40に冷媒戻り管20を接続する。液面形成容器34の内部に空気冷却器14内で形成された冷媒液面レベルと同じ高さの冷媒液面レベルLを形成させる。復路40に接続された冷媒戻り管20にはガス冷媒のみが還流し、冷媒戻り管20に液柱が形成されないので、空気冷却器14の冷媒蒸発圧力を上昇させない。また被冷却室Rの室温を検出し、コントローラ50で冷媒液面レベルLを設定値に維持することで、空気冷却器14の冷却能力を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルを構成する蒸気圧縮式冷凍装置において、低圧受液器又は二次冷媒システムの液溜器から液ポンプを使用して空気冷却器(エアクーラ)等の冷却器への冷媒液の供給を制御する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の各室の空調や冷凍室等の冷凍のために、冷凍サイクルを構成する蒸気圧縮式冷凍装置が使用されている。この冷凍装置は、例えば、低圧受液器に低圧低温の液冷媒を貯留し、この液冷媒を液ポンプで空気冷却器(蒸発器)に循環する方式や、一次冷媒の循環路と二次冷媒の循環路とを液化器(カスケードコンデンサ)で組み合わせ、二次冷媒の循環路に液溜器と液ポンプを設け、液溜器に貯留した二次冷媒を液ポンプで空気冷却器に循環する液循環方式のものが広く使用されている。
【0003】
この方式の冷凍装置は、特許文献1〜4に開示されている。蒸発器となる空気冷却器(エアクーラ)は、フィンコイルと送風機を一体に組み込んだユニットクーラが多く使用されている。空気冷却器で蒸発したガス冷媒を含む気液二相流が低圧受液器又は液溜器に戻される。
【0004】
前記液循環方式の冷凍装置のうち、NHを一次冷媒として用い、COブラインを二次冷媒として用いた冷凍装置の従来例が特許文献1に開示されている。この冷凍装置を図4に示す。図4において、一階の機械室Mに、NHを冷媒とし、COブラインの二次冷媒を冷却液化する冷凍サイクルを構成するアンモニア冷凍装置100が設置されている。アンモニア冷凍装置100は、NH冷媒の循環路102と、該循環路102に設けられた圧縮機104、凝縮器106、膨脹弁108、及びNH冷媒をCOブラインと熱交換して液化させる液化器(蒸発器)110とから構成されている。
【0005】
機械室M内の半地下階GLに、COブラインの液溜器112と、液ポンプ116とが設置されている。1階から4階の各階の室01〜04に夫々空気冷却器118a〜dが設けられ、空気冷却器118a〜dで各室内の空気を冷却している。また、液溜器112と液化器110間にCOブラインの循環路114が接続され、液溜器112と、空気冷却器118a〜d間にCOブラインの循環路120が接続されている。該循環路120の往路120aに液ポンプ116が介設され、COブライン液を液溜器112から空気冷却器118に供給している。往路120aの各空気冷却器118a〜dの入口部に流量調整弁122が設けられている。
【0006】
かかる構成により、液溜器112の低温低圧のCOブライン液を空気冷却器118a〜dに供給し、空気冷却器118でCOブライン液と室内空気とを熱交換させ、COブライン液の一部を気化させて室内空気を冷却している。そして、熱交換後の気液二相流のCOブラインを液溜器112に戻している。
【0007】
図5には、特許文献2に記載されている液循環方式の冷凍装置を示す。この冷凍装置は、低圧受液器と蒸発器とを循環路で接続し、液ポンプで低圧受液器と蒸発器間に冷媒を循環させる液冷媒循環式の蒸発器を備えた冷凍装置の従来例である。図5において、一階の機械室Mに冷凍サイクルを構成する冷凍装置130が設置されている。冷凍装置130は、冷媒循環路132に圧縮機134、凝縮器136、膨脹弁138及び低圧受液器140が介設されている。
【0008】
機械室M内の半地下階GLに低圧受液器140と液ポンプ142とが設けられている。1階から4階の各階1F〜4Fの室01〜04に空気冷却器144a〜dが設けられ、低圧受液器140と空気冷却器144a〜d間を接続する冷媒循環路146が設けられている。該冷媒循環路146の往路146aに液ポンプ142が介設され、液ポンプ142によって冷媒を液溜器112から空気冷却器144a〜dに供給している。往路146aの空気冷却器144a〜dの入口部に流量調整弁148が設けられている。
【0009】
かかる構成により、低圧受液器140の低温低圧の冷媒液を空気冷却器144a〜dに供給し、空気冷却器144a〜dで冷媒液と室内空気とを熱交換させ、冷媒の一部を気化させて室内空気を冷却している。そして、熱交換後の気液二相流の冷媒液を低圧受液器140に戻している。
【0010】
図6(A)に、従来の液循環式冷凍装置での空気冷却器と低圧受液器又は液溜器との配置関係を示す。図6(A)において、空気冷却器150のケーシング151の内部では、ケーシング151出口に設けられたファン152により空気流aが形成されている。ケーシング151の内部には、冷媒供給ヘッダー154と冷媒排出ヘッダー156とが設けられている。そして、図示省略の多数のフィン付き熱交換管が冷媒供給ヘッダー154と冷媒排出ヘッダー156間に接続されている。該フィン付き熱交換管に内部を流れる冷媒液と空気流a間で熱交換が行なわれ、空気冷却器150が設けられた被冷却室内の空気を冷却している。
【0011】
空気冷却器150と低圧受液器(液溜器)158間に、冷媒供給管160aと冷媒戻り管160bとからなる冷媒循環路160が接続されている。冷媒供給管156aに液ポンプ162が介設されている。液ポンプ162は空気冷却器150で蒸発する冷媒量(最小必要冷媒量)の2〜3倍の液冷媒を供給している。前記フィン付き熱交換管内で生成される気体を含む液冷媒が低圧受液器(液溜器)158に還流されるように、低圧受液器(液溜器)158と液ポンプ162は、蒸発器となる空気冷却器150より下方に配置される。
【0012】
低圧受液器(液溜器)158が空気冷却器150より上方に配置されると、戻り管160bに余剰の液冷媒による液柱が発生し、この液柱の重量が空気冷却器150の冷媒に負荷され、空気冷却器150で発生したガス冷媒が空気冷却器150から冷媒戻り管160bに排出されなくなる。
【0013】
図6(B)は、低圧受液器(液溜器)158と液ポンプ162とを、蒸発器となる空気冷却器150より上方に配置した場合を示す。この場合、液ポンプ162は空気冷却器150で蒸発する冷媒量(最小必要冷媒量)の2〜3倍の液冷媒(冷却装置によっては3〜5倍の液冷媒)を供給する。戻り管160bを流れる冷媒は、空気冷却器150で蒸発した気体と余剰の液冷媒が混相した気液二相流となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開WO2006/038354再公表特許公報
【特許文献2】特開2004−245497公開特許公報
【特許文献3】特開平03−007854公開特許公報
【特許文献4】特公昭48−021985公告特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図6(B)の配置では、戻り管160bに余剰の液冷媒による液柱が発生する。空気冷却器150で蒸発したガス冷媒は、この液柱に封じられて、空気冷却器150から排出されなくなる。即ち、冷却施設の冷却空間を維持する室温に相当する空気冷却器150の冷媒飽和圧力がPパスカルの時、戻り管160b中の余剰の液冷媒による液柱圧力ΔPパスカルが加わると、実際の空気冷却器150のガス冷媒の飽和圧力は(P+ΔP)パスカルとなる。そのため、空気冷却器150での冷媒の蒸発が阻害され、冷凍装置の冷却能力が低下する。
【0016】
その結果、被冷却室の設定室温よりΔPパスカルに相当する温度だけ室温が上昇し、冷却施設の冷却空間は冷却不良となってしまい、保管物等に重大な影響を与えてしまう問題が起きる。
空気冷却器150内のガス冷媒の飽和圧力が(P+ΔP)パスカル以上に上昇すると、戻り管160b内のガス冷媒は低圧受液器(液溜器)158に還流する。しかし、空気冷却器150の飽和圧力が(P+ΔP)パスカル以上に上昇すると、冷凍装置(圧縮機)は、室温の冷却不足を解消するために、空気冷却器150の蒸発圧力を液柱の圧力ΔPパスカル分だけ低下させなければならなくなる。そのため、本来の冷却装置の定格運転から外れた運転を強いられ、余分な動力が必要になると共に、COPが低下するという問題が起こる。
【0017】
そのため、従来の液ポンプを使用する液循環方式の冷凍装置においては、空気冷却器で生成される気体を含む液冷媒が戻り管で液柱を発生しないように、低圧受液器(液溜器)と液ポンプは、蒸発器となる空気冷却器より下方に配置されていた。しかし、低圧受液器(液溜器)と液ポンプを蒸発器となる空気冷却器より下部に配置するため、低圧受液器(液溜器)と液ポンプを一階に設けられる機械室の中に半地下階を設けて設置したり、地階に設けられた機械室に設置することになる。こうして、半地下階や地階を余分に設けるため、冷却施設の建築コストが上昇する要因のひとつとなっている。
【0018】
そこで、本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、建築コストを削減するため、低圧受液器(液溜器)と液ポンプを蒸発器となる空気冷却器の上部、たとえば屋上階に設置しても冷却能力に支障が生じない液循環方式の冷凍装置を実現し、これによって、半地下階や地階を不要し、建築コストを削減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
かかる課題を解決するため、本発明の冷凍装置における低圧受液器への冷媒循環方法は、
冷凍サイクル構成機器を備えた冷凍装置で、低圧受液器から液ポンプにより冷媒液を冷却器に送り、該冷却器から気液二相状態の冷媒を低圧受液器に戻すようにした冷媒循環方法において、
前記冷却器と同一高さに設けられると共に、該冷却器と冷媒循環路で接続された液面形成容器に、冷却器の冷媒液面と同一高さの冷媒液面及び該冷媒液面の上方に気相部を形成させる工程と、
冷却器で気化したガス冷媒を含む気液二相状態の冷媒を該冷媒循環路又は液面形成容器の気相部に接続された戻り路からガス冷媒のみを低圧受液器に戻す工程と、からなるものである。
【0020】
本発明方法では、冷却器と同一高さに設けられた液面形成容器に冷却器の冷媒液面と同一高さの冷媒液面を形成させると共に、低圧受液器と、冷却器及び液面形成容器を接続する冷媒循環路又は液面形成容器の気相部とを接続する戻り管からガス冷媒のみを低圧受液器に戻すようにしているので、該戻り管に液冷媒の液柱が形成されない。そのため、冷却器内のガス冷媒が液柱に封じられて、空気冷却器から排出されなくなる虞がない。従って、空気冷却器の冷媒の蒸発が阻害されず、冷凍装置の冷却能力が低下する虞がない。
【0021】
これによって、低圧受液器及び液ポンプの設置場所に制約がなくなり、これらを蒸発器となる空気冷却器の上部、例えば、屋上階や中間階等、自由にその設置位置を選択できるようになる。そのため、低圧受液器と液ポンプを一階の機械室の半地下階又は地階の機械室に設置する必要がなくなるため、コストがかかる半地下階や地階を設ける必要がなくなり、建築コストを節減できる。
【0022】
本発明方法において、液面形成容器の冷媒液面レベルを検出し、この冷媒液面レベルを調整して冷却器の冷却能力を調整するようにするとよい。これによって、液面形成容器の冷媒液面レベルを調整するだけで、冷却器の冷却能力を調整できるので、冷却器の冷却能力の調整が容易になる。
【0023】
なお、本発明方法は、前記冷凍装置が、一次冷媒の循環路と二次冷媒の循環路とを液化器(カスケードコンデンサ)で組み合わせ、二次冷媒の循環路に液溜器と液ポンプを設け、該液溜器に貯留した二次冷媒を液ポンプで空気冷却器に循環する液循環方式の冷凍装置であり、前記低圧受液器が前記液溜器である冷凍装置にも適用できる。
また、高温側の冷媒循環路と低温側の冷媒循環路とをカスケードコンデンサで組み合わせ、低温側冷媒循環路に介設した低圧受液器に液冷媒を貯留し、該低圧受液器から液冷媒を冷却器に液ポンプで循環するように構成した二元冷凍装置にも適用可能である。
【0024】
前記本発明方法の実施に直接使用可能な本発明の冷凍装置における低圧受液器への冷媒循環装置は、
冷凍サイクル構成機器と、低圧受液器と、該低圧受液器と冷媒循環路を介して接続された冷却器とを備え、該低圧受液器と冷却器間に冷媒を循環させるようにした冷凍装置における低圧受液器への冷媒循環装置において、
前記冷却器と同一高さに設けられると共に該冷却器と冷媒循環路で接続され、内部に冷却器と同一高さの冷媒液面及び該冷媒液面の上方に気相部を形成した液面形成容器と、
該冷媒循環路のうち冷媒を冷却器から該液面形成容器に戻す冷媒復路又は該液面形成容器の気相部と前記低圧受液器とを接続するガス冷媒戻し路と、を備え、
該冷媒戻し路を通る冷媒の気液二相流からガス冷媒を分離し、ガス冷媒のみを該ガス冷媒戻し路を介して低圧受液器に戻すように構成したものである。
【0025】
本発明装置では、前記液面形成容器を設けると共に、該液面形成容器の内部に冷却器に形成される冷媒液面と同一高さの冷媒液面を形成させるようにしたので、冷却器と液面形成容器とを接続する冷媒循環路の復路、又は液面形成容器の気相部に接続された前記ガス冷媒戻し路からガス冷媒のみを低圧受液器に還流できるようになる。これによって、該戻り管に液冷媒の液柱が形成されないため、冷却器内のガス冷媒が液柱に封じられて、空気冷却器から排出されなくなる虞がない。従って、空気冷却器の冷媒の蒸発が阻害されず、冷凍装置の冷却能力が低下する虞がない。
【0026】
これによって、低圧受液器及び液ポンプを蒸発器となる空気冷却器の上部、例えば、屋上階や中間階等、自由にその設置位置を選択できるようになるため、低圧受液器と液ポンプは、一階の機械室の半地下階又は地階の機械室に設置するという制約を受けなくなる。従って、建築コストがかかる半地下階や地階を設ける必要がないので、建築コストを削減できる。
【0027】
本発明装置において、液面形成容器に設けられた液面検出器と、低圧受液器から冷却器に液冷媒を供給する冷媒供給路に設けられた流量調整弁と、該液面検出器の冷媒液面レベル検出値に基づいて該流量調整弁を制御して冷却器内の冷媒液面レベルを調整するコントローラと、を備え、該コントローラで該冷媒液面レベルを調整して冷却器の冷却能力を調整するように構成するとよい。これによって、液面形成容器の冷媒液面レベルを調整するだけで、冷却器の冷却能力を調整できるので、冷却器の冷却能力の調整が容易になる。
【0028】
本発明装置において、第2冷媒循環路のうち液冷媒を液面形成容器から冷却器に供給する冷媒往路に前記冷媒供給路を接続すると共に、該冷媒往路と冷媒供給路との接続部と液面形成容器との間の冷媒往路に、液冷媒が液面形成容器に逆流するのを防止した逆止弁を設けるようにするとよい。これによって、冷媒循環路を簡素化できると共に、液面形成容器から液冷媒が該冷媒往路を通って冷却器に向かい、冷媒の気液二相流が冷却器から冷却復路を通って液面形成容器に向う冷媒循環流を確実に形成できる。そのため、液面形成容器での冷媒液面の形成と該冷媒液面レベルの調整が容易になる。
【0029】
本発明装置において、冷却器が空気冷却器であり、被冷却空気の温度を検出する温度センサを設け、該温度センサの温度検出値を前記コントローラに入力し、該コントローラで前記冷媒液面レベルを調整して被冷却空気の温度を設定範囲に調整するようにするとよい。これによって、液面形成容器の冷媒液面レベルを調整するだけで、被冷却空気の温度を設定範囲に調整できるので、被冷却空気の温度調整が容易になる。
【発明の効果】
【0030】
本発明方法によれば、冷凍サイクル構成機器を備えた冷凍装置で、低圧受液器から液ポンプにより冷媒液を冷却器に送り、該冷却器で気化したガス冷媒を含む気液二相状態の冷媒を低圧受液器に戻すようにした冷媒循環方法において、冷却器と同一高さに設けられると共に、該冷却器と冷媒循環路で接続された液面形成容器に、冷却器の冷媒液面と同一高さの冷媒液面及び該冷媒液面の上方に気相部を形成させる工程と、冷却器で気化したガス冷媒を含む気液二相状態の冷媒を該冷媒循環路又は液面形成容器の気相部に接続された戻り路からガス冷媒のみを低圧受液器に戻す工程と、からなることにより、冷却器から低圧受液器に向う冷媒の戻り路に冷媒液柱が形成されなくなるので、液循環方式の冷凍装置の低圧受液器と液ポンプ及び蒸発器となる空気冷却器の配置の制約をなくすことができる。従って、液循環方式の冷凍装置による冷却施設の建築コストの低減を達成できる。
【0031】
本発明装置によれば、冷凍サイクル構成機器と、低圧受液器と、該低圧受液器と冷媒循環路を介して接続された冷却器とを備え、該低圧受液器と冷却器間に冷媒を循環させるようにした冷凍装置における低圧受液器への冷媒循環装置において、冷却器と同一高さに設けられると共に該冷却器と冷媒循環路で接続され、内部に冷却器と同一高さの冷媒液面及び該冷媒液面の上方に気相部を形成した液面形成容器と、該冷媒循環路のうち冷媒を冷却器から該液面形成容器に戻す冷媒復路又は該液面形成容器の気相部と前記低圧受液器とを接続するガス冷媒戻し路と、を備え、該冷媒戻し路を通る冷媒の気液二相流からガス冷媒を分離し、ガス冷媒のみを該ガス冷媒戻し路を介して低圧受液器に戻すように構成したことにより、前記本発明方法と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の冷凍装置の一実施形態に係る系統図である。
【図2】前記実施形態に係る冷凍装置の空気冷却器14の背面側から視た拡大図である。
【図3】図2中のA−A線に沿う断面図である。
【図4】従来のアンモニア冷凍サイクル/COブライン液溜器による液循環式冷却施設の回路図である。
【図5】従来の低圧受液器を備えた液循環式冷却施設の回路図である。
【図6】従来の液循環式冷凍装置に係り、(A)は低圧受液器(液溜器)と液ポンプを空気冷却器より下方に配置した説明図であり、(B)は低圧受液器(液溜器)と液ポンプを空気冷却器より上方に配置した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0034】
本発明の低圧受液器への冷媒循環方法及び装置の一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。まず、図1を用いて本実施形態に係る液循環方式の冷凍装置の基本構成を説明する。図1に、本実施形態に係る冷凍装置10の一部を示す。冷凍装置10は、図4に示すような、NHを冷媒とした蒸気圧縮式の高温側冷凍サイクル装置と、冷却負荷を有する低温側二次冷媒(COブライン)の循環流路とを組み合わせた冷凍装置である。図1では、高温側冷凍サイクル装置の構成機器の図示は省略されている。
【0035】
図1において、COブライン等の二次冷媒又は低圧低温の液冷媒を保持する液溜器12と、液溜器12の下部に設置され冷媒供給管18に介設されて、蒸発器となる空気冷却器14に液冷媒を送液する液ポンプ16と、冷却施設の被冷却室R内に設けられ、被冷却室R内の空間を冷却するための空気冷却器14と、液溜器12から空気冷却器14に液冷媒を送る冷媒供給管18と、空気冷却器14から液溜器12に空気冷却器14で蒸発したガス冷媒のみを送る冷媒戻り管20と、を備えている。
【0036】
図2及び図3により、空気冷却器14の構成を説明する。図2は図1の空気冷却器14を背面側から視た拡大図である。空気冷却器14は、ケーシング22の内部の空気流通路出口側に設けられ、空気流aを形成する送風機24と、該空気流通路に設けられ外側に熱交換促進用の多数のフィン26が間隔を空けて並列に設けられた熱交換管28と、冷媒供給管18と接続され液冷媒を熱交換管28に分配導入するための冷媒供給ヘッダー30と、冷媒戻り管20に接続され熱交換管28から蒸発する気相を集合するための冷媒排出ヘッダー32と、から構成されている。
【0037】
空気冷却器14の近傍でかつ空気冷却器14と同一高さに液面形成容器34が設けられている。液面形成容器34は、上下方向に長い柱状をなし、空気冷却器14と冷媒循環路35で接続されている。液面形成容器34の下部が冷媒循環路35の往路36を介して冷媒供給ヘッダー30と接続され、冷媒循環路35の上部で復路40を介して冷媒排出ヘッダー32と接続している。復路40に前記冷媒戻り管20が接続されている。
【0038】
液面形成容器34は、空気冷却器14と同一高さに配置されているため、液面形成容器34の内部で、空気冷却器14の冷媒供給ヘッダー30及び冷媒排出ヘッダー32の内部で形成された冷媒液面レベルと同一高さの冷媒液面レベルLを形成できる。往路36には冷媒供給管18が接続され、復路40には冷媒戻り管20が接続されている。冷媒供給管18には流量調整弁42とオンオフ式の給液調整弁44が介設されている。往路36には、冷媒供給管18との接続部より液面形成容器34寄りに、矢印b方向にのみ冷媒を通す逆止弁38が介設されている。
【0039】
液面形成容器34には、液面形成容器34内の冷媒液面レベルを検出するフロート式の液面検知器46が設けられている。
図1において、冷凍装置10が図4に示すようなアンモニア冷凍装置100であれば、図示のように、液化器110と接続する循環路114が接続され、冷凍装置10が図5に示すような液循環方式の冷凍装置130であれば、冷媒循環路132が接続される。
【0040】
被冷却室Rは、図4又は図5に図示したように、建物の各階に設けられた室01から04か、あるいは、冷却設備の冷凍庫であり、空気冷却器14はこれらの被冷却室Rの室内を冷却する。被冷却室Rの内部に温度センサ48が設けられている。液面検出器46の冷媒液面レベル検出値及び温度センサ48の室温検出値はコントローラ50に入力される。コントローラ50は、これらの検出値に基づいて、給液調整弁44をオンオフ動作させる。
【0041】
給液調整弁44が「開」の時、液溜器12の液冷媒は、冷媒供給管18から往路36を介して冷媒供給ヘッダー30に供給される。冷媒供給管18の液冷媒は、逆止弁38があるため、液面形成容器34には供給されない。空気冷却器14に設定液面までの液冷媒が導入されると、コントローラ50がこの冷媒液面レベル検出値の信号を入力し、この信号によりコントローラ50が給液調整弁44を作動させ、液面検出器46を「閉」にする。これによって、液面検出器46への液冷媒の供給は停止する。
【0042】
逆に、液面形成容器34内の冷媒液面レベルLが設定液面より低下すると、コントローラ50にこの冷媒液面レベル信号が入力され、コントローラ50によって給液調整弁44が「開」となる。これによって、冷媒供給管18から冷媒供給ヘッダー30に液冷媒が供給される。こうして、冷媒供給ヘッダー30や冷媒排出ヘッダー32の冷媒液面レベルを上昇させることで、液面形成容器34内の冷媒液面レベルLを設定液面に戻す。
【0043】
空気冷却器14で蒸発したガス冷媒を含む気液二相流は、冷媒排出ヘッダー32から復路40を介して液面形成容器34に戻る。冷媒戻り管20の接続口は復路40の管壁の上部にあるので、ガス冷媒のみが液冷媒と分離して冷媒戻り管20に還流する。そして、ガス冷媒が復路40から液溜器12に還流する。液冷媒は復路40から液面形成容器34に還流する。
【0044】
本実施形態によれば、冷媒戻り管20内のガス冷媒は液冷媒を含まないため、冷媒が冷媒戻り管20から液溜器12に還流する間に、冷媒戻り管20の内部で液柱が生成されない。そのため、空気冷却器14で蒸発した気相は、従来のように、余剰液冷媒の封鎖の影響を受けずに容易に液溜器12に還流する。従って、空気冷却器14での冷媒の蒸発が阻害されず、空気冷却器14の冷媒供給ヘッダー30や冷媒排出ヘッダー32で冷媒の蒸発圧力が上昇しないので、冷凍装置10の冷却能力が低下しない。その結果、被冷却室Rの室温を設定温度に維持することができる。
【0045】
そのため、本来の冷凍装置10の定格運転を維持することができ、冷凍装置10の設定COPを維持できる。これによって、液溜器112や液ポンプ16の設置場所に制約がなくなるため、これらの機器類を設置するための半地下階や地階を設ける必要がなくなり、冷却施設の建築コストが上昇するという問題を解消できる。
【0046】
また、液面検出器46を設けて液面形成容器34の冷媒液面レベルLを検出し、流量調整弁42と給液調整弁44のオンオフ動作によって冷媒液面レベルLを調整することにより、空気冷却器14の冷却能力を容易に調整できる。
【0047】
また、往路36に冷媒供給管18を接続し、往路36と冷媒供給管18との接続部と液面形成容器34との間の往路36に逆止弁38を設けたことにより、冷媒循環路を簡素化できると共に、液面形成容器34から液冷媒が往路36を通って空気冷却器14に向かい、冷媒の気液二相流が空気冷却器14から復路40を通って液面形成容器34に向う冷媒循環流を確実に形成できる。そのため、液面形成容器34での冷媒液面レベルLの形成と該冷媒液面レベルLの調整が容易になる。
【0048】
また、温度センサ48を設け、温度センサ48の温度検出値をコントローラ50に入力し、コントローラ50で冷媒液面レベルLを調整して被冷却空気の温度を設定範囲に調整しているので、液面形成容器34の冷媒液面レベルLを調整するだけで、被冷却空気の温度を設定範囲に調整できる。そのため、被冷却空気の温度調整が容易になる。
【0049】
なお、前記実施形態では、復路40に冷媒戻り管20を接続していたが、この代わりに、液面形成容器34の上部に形成される気相部に連通するように冷媒戻り管20を設けてもよい。これによって、冷媒戻り管20にガス冷媒のみを還流することができ、冷媒の液柱を形成しなくて済む。
【0050】
本発明は、図5に図示される液冷媒循環方式の冷凍サイクル装置や、高温側の冷媒循環路と低温側の冷媒循環路とをカスケードコンデンサで組み合わせ液冷媒循環方式の二元冷凍装置にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、液循環方式の冷凍装置の低圧受液器と液ポンプ及び蒸発器となる空気冷却器の配置の制約をなくすことにより、液循環方式の冷凍装置を設けた冷却施設の建築コストの低減を図ることができ、自然冷媒の冷却システムの代表的なアンモニア/COブライン冷却方式等の普及に有益なものとなる。
【符号の説明】
【0052】
10、100,130 冷凍装置
12,112 液溜器
140,158 低圧受液器
14、118a〜d、144a〜d、150 空気冷却器
16,116,142、162 液ポンプ
18,160a 冷媒供給管
20,160b 冷媒戻り管
22 ケーシング
24 送風機
26 フィン
28 熱交換管
30 冷媒供給ヘッダー
32 冷媒排出ヘッダー
34 液面形成容器
35,146 冷媒循環路
36 往路(第2冷媒循環路)
38 逆止弁
40 復路(第2冷媒循環路)
42 流量調整弁
44 給液調整弁
46 液面検出器
48 温度センサ
50 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクル構成機器を備えた冷凍装置で、低圧受液器から液ポンプにより冷媒液を冷却器に送り、該冷却器で気化したガス冷媒を含む気液二相状態の冷媒を低圧受液器に戻すようにした冷媒循環方法において、
前記冷却器と同一高さに設けられると共に、該冷却器と冷媒循環路で接続された液面形成容器に、冷却器の冷媒液面と同一高さの冷媒液面及び該冷媒液面の上方に気相部を形成させる工程と、
冷却器で気化したガス冷媒を含む気液二相状態の冷媒を該冷媒循環路又は液面形成容器の気相部に接続された戻り路からガス冷媒のみを低圧受液器に戻す工程と、からなることを特徴とする冷凍装置における低圧受液器への冷媒循環方法。
【請求項2】
前記液面形成容器の冷媒液面レベルを検出し、この冷媒液面レベルを調整して前記冷却器の冷却能力を調整することを特徴とする請求項1に記載の冷凍装置における低圧受液器への冷媒循環方法。
【請求項3】
前記冷凍装置が、一次冷媒の循環路と二次冷媒の循環路とを液化器で組み合わせ、二次冷媒の循環路に液溜器と液ポンプを設け、該液溜器に貯留した二次冷媒を液ポンプで空気冷却器に循環する液循環方式の冷凍装置であり、前記低圧受液器が前記液溜器であることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷凍装置における低圧受液器への冷媒循環方法。
【請求項4】
冷凍サイクル構成機器と、低圧受液器と、該低圧受液器と冷媒循環路を介して接続された冷却器とを備え、該低圧受液器と冷却器間に冷媒を循環させるようにした冷凍装置における低圧受液器への冷媒循環装置において、
前記冷却器と同一高さに設けられると共に該冷却器と第2冷媒循環路で接続され、内部に冷却器と同一高さの冷媒液面及び該冷媒液面の上方に気相部を形成した液面形成容器と、
該第2冷媒循環路のうち冷媒を冷却器から該液面形成容器に戻す冷媒復路又は該液面形成容器の気相部と前記低圧受液器とを接続するガス冷媒戻し路と、を備え、
該冷媒戻し路を通る冷媒の気液二相流からガス冷媒を分離し、ガス冷媒のみを該ガス冷媒戻し路を介して低圧受液器に戻すように構成したことを特徴とする冷凍装置における低圧受液器への冷媒循環装置。
【請求項5】
前記液面形成容器に設けられた液面検出器と、低圧受液器から冷却器に液冷媒を供給する冷媒供給路に設けられた流量調整弁と、該液面検出器の冷媒液面レベル検出値に基づいて該流量調整弁を制御して冷却器内の冷媒液面レベルを調整するコントローラと、を備え、
該コントローラで該冷媒液面レベルを調整して冷却器の冷却能力を調整するように構成したことを特徴とする請求項4に記載の冷凍装置における低圧受液器への冷媒循環装置。
【請求項6】
前記第2冷媒循環路のうち液冷媒を液面形成容器から冷却器に供給する冷媒往路に前記冷媒供給路を接続すると共に、該冷媒往路と冷媒供給路との接続部と液面形成容器との間の冷媒往路に、液冷媒が液面形成容器に逆流するのを防止した逆止弁を設けたことを特徴とする請求項5に記載の冷凍装置における低圧受液器への冷媒循環装置。
【請求項7】
前記冷却器が空気冷却器であり、被冷却空気の温度を検出する温度センサを設け、該温度センサの温度検出値を前記コントローラに入力し、該コントローラで前記冷媒液面レベルを調整して被冷却空気の温度を設定範囲に調整するようにしたことを特徴とする請求項5又は6に記載の冷凍装置における低圧受液器への冷媒循環装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−38704(P2011−38704A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186819(P2009−186819)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)