説明

冷凍装置

【課題】冷媒回路に封入する冷媒としてP−h線図上での過熱域において飽和ガス線と等エントロピー線が2点以上の交点もしくは接点を有する特性を持つ単一冷媒および混合冷媒を含む冷媒を用いた場合に圧縮機1の圧縮行程中の液圧縮を回避する。
【解決手段】圧縮機1の吸入点の過熱度を検知する検知手段11と、検知手段11のデータに基づいて等エントロピー線と飽和ガス線が途中で接点を持つエントロピーより大きくなる様に圧縮機1の吸入点の過熱度を制御する制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒を用いた冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二重結合を有する冷媒を用いた冷凍装置では、等エントロピー線の傾斜が急峻で圧縮機からの吐出冷媒の過熱度が小さくなるので、液圧縮による損傷を回避するため、吸入を過熱状態とするのに蒸発器から圧縮機の間の冷媒を加熱している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−222348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特有の特性を持った冷媒即ち、P−h線図上での過熱域において飽和ガス線と等エントロピー線が2点以上の交点もしくは接点を有する特性を持つ単一冷媒および混合冷媒を含む冷媒を用いた冷凍装置においては、吸入部が過熱状態にあっても過熱の度合いによって圧縮機の圧縮行程中に冷媒が液化し液圧縮する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、前記の特有の特性を持った冷媒を用いた場合でも、圧縮機の吸入状態を所定以上の過熱度として、圧縮行程中の圧縮機内での液圧縮を確実に回避することにより、圧縮機の信頼性を向上することで信頼性の高い冷凍装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の冷凍装置は、冷媒回路に封入する冷媒としてP−h線図上での過熱域において飽和ガス線と等エントロピー線が2点以上の交点もしくは接点を有する特性を持つ単一冷媒および混合冷媒を用い、圧縮機の吸入側の冷媒状態を検知する検知手段と、検知手段の出力に基づいて等エントロピー線と飽和ガス線が途中で接点を持つエントロピーより大きくなる様に圧縮機の吸入側の冷媒状態を調整する制御手段を備えたものである。
【0007】
これによって、特有の特性を持った冷媒を用いた場合でも、圧縮機の吸入状態を所定以上の過熱度とできるため、圧縮行程中の冷媒が全ての行程で飽和域となることを避け必ず過熱域とできるので、圧縮機内での液圧縮を回避することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特有の特性を持った冷媒を用いた場合でも、圧縮機の吸入状態を所定以上の過熱度に制御して、圧縮行程中の圧縮機内での液圧縮を確実に回避することにより、圧縮機の信頼性を向上することで信頼性の高い冷凍装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】R410A冷媒のP−h線図
【図2】HFO1234yf冷媒のP−h線図
【図3】本発明の実施の形態1における冷凍装置の構成図
【図4】HFO1234yf冷媒を用いたサイクルの状態説明図
【図5】HFO1234yf冷媒の過熱度目標の説明図
【図6】HFO1234yf冷媒の蒸発器温度と吸入温度の対照を示す図
【図7】検知手段11、制御手段12および加熱手段13についての制御用のフローチャート
【図8】本発明の実施の形態2における冷凍装置の構成図
【図9】HFO1234yf冷媒の吸入圧力と吸入温度の対照を示す図
【図10】検知手段11’、制御手段12および加熱手段13についての制御用のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、少なくとも圧縮機、凝縮器、絞り装置、及び蒸発器を順次接続管で接続して環状の冷媒回路を構成し、冷媒回路に封入する冷媒としてP−h線図上での過熱域において飽和ガス線と等エントロピー線が2点以上の交点もしくは接点を有する特性を持つ単一冷媒および混合冷媒を用い、圧縮機の吸入側の冷媒状態を検知する検知手段と、検知手段の出力に基づいて等エントロピー線と飽和ガス線が接点を持つエントロピーより大きくなる様に圧縮機の吸入側の冷媒状態を調整する制御手段を備えることにより、特有の特性を持った冷媒を用いた場合でも、圧縮機の吸入状態を所定以上の過熱度とできるため、圧縮行程中の冷媒が全ての行程で飽和域となることを避け必ず過熱域とできるので、圧縮機内での液圧縮を回避することができ圧縮機の信頼性を向上することで信頼性の高い冷凍装置を提供できる。
【0011】
第2の発明は、特に第1の発明の検知手段は蒸発器の中間部の温度と圧縮機の吸入温度から圧縮機の吸入側の冷媒状態を検知し、制御手段は蒸発器の中間部の温度と圧縮機の吸入温度が所定の温度差以上となるように調整することにより、特有の特性を持った冷媒を用いた場合でも、圧縮機吸入部の過熱状態を精度よく検知して、圧縮機の吸入状態を所定以上の過熱度とできるため、圧縮行程中の冷媒が全ての行程で飽和域となることを避け必ず過熱域とできるので、圧縮機内での液圧縮を回避することができ圧縮機の信頼性を向上することで信頼性の高い冷凍装置を提供できる。
【0012】
第3の発明は、特に第1の発明の検知手段は圧縮機の吸入圧力と吸入温度から圧縮機の吸入側の冷媒状態を検知し、制御手段は吸入圧力から算出した飽和温度と圧縮機の吸入温度が所定の温度差以上となるように調整することにより、特有の特性を持った冷媒を用いた場合でも、圧縮機吸入部の過熱状態を精度よく検知して、圧縮機の吸入状態を所定以上の過熱度とできるため、圧縮行程中の冷媒が全ての行程で飽和域となることを避け必ず過熱域とできるので、圧縮機内での液圧縮を回避することができ圧縮機の信頼性を向上することで信頼性の高い冷凍装置を提供できる。
【0013】
第4の発明は、特に第1の発明の冷凍装置において、蒸発器に送風する送風装置を有し、前記制御手段は送風装置の送風量を調整することにより、特有の特性を持った冷媒を用いた場合でも、コストアップすることなく蒸発器の熱交換量を増加させ、圧縮機の吸入状態を所定以上の過熱度とできるため、圧縮行程中の冷媒が全ての行程で飽和域となることを避け必ず過熱域とできるので、圧縮機内での液圧縮を回避することができ圧縮機の信頼性を向上することで信頼性の高い冷凍装置を提供できる。
【0014】
第5の発明は、特に第1または第4の発明の冷凍装置において、制御手段は前記絞り装置の開度を調整することにより、特有の特性を持った冷媒を用いた場合でも、コストアップすることなく蒸発器の熱交換量を増加させ、圧縮機の吸入状態を所定以上の過熱度とできるため、圧縮行程中の冷媒が全ての行程で飽和域となることを避け必ず過熱域とできるので、圧縮機内での液圧縮を回避することができ圧縮機の信頼性を向上することで信頼性の高い冷凍装置を提供できる。
【0015】
第6の発明は、特に第1または第4の発明の冷凍装置において、蒸発器の出口側と前記圧縮機の吸入側との間に加熱手段を設け、制御手段は加熱手段の加熱量を調整することにより、特有の特性を持った冷媒を用いた場合でも、確実に圧縮機の吸入側の冷媒を加熱し、圧縮機の吸入状態を所定以上の過熱度とできるため、圧縮行程中の冷媒が全ての行程で飽和域となることを避け必ず過熱域とできるので、圧縮機内での液圧縮を回避することができ圧縮機の信頼性を向上することで信頼性の高い冷凍装置を提供できる。
【0016】
第7の発明は、特に第6の発明の冷凍装置において、加熱手段は内部熱交換器であることにより、特有の特性を持った冷媒を用いた場合でも、大幅なコストアップをすることなく圧縮機の吸入状態を所定以上の過熱度とできるため、圧縮行程中の冷媒が全ての行程で飽和域となることを避け必ず過熱域とできるので、圧縮機内での液圧縮を回避することができ圧縮機の信頼性を向上することで信頼性の高い冷凍装置を提供できる。
【0017】
第8の発明は、特に第6の発明の冷凍装置において、加熱手段はヒーターであることにより、特有の特性を持った冷媒を用いた場合でも、精度よく圧縮機の吸入側の冷媒を加熱でき、圧縮機の吸入状態を所定以上の過熱度とできるため、圧縮行程中の冷媒が全ての行程で飽和域となることを避け必ず過熱域とできるので、圧縮機内での液圧縮を回避することができ圧縮機の信頼性を向上することで信頼性の高い冷凍装置を提供できる。
【0018】
以下に、本発明の冷凍装置に用いる冷媒の特性、構成および動作について説明する。なお、この実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
本実施の形態において、冷媒回路に封入する冷媒としてP−h線図上での過熱域において飽和ガス線と等エントロピー線が2点以上の交点もしくは接点を有する特性を持つ単一冷媒および混合冷媒を含む冷媒を用いたものである。まず、上記冷媒の特性を図1、図2を用いて説明する。
【0020】
図1はR410A冷媒のP−h線図、そして図2は本実施の形態に用いられる冷媒の1つであるHFO1234yf冷媒のP−h線図である。図1より、等エントロピー線は飽和ガス線とは端部の1点で接するが、それ以外は飽和ガス線との交わりは無い。一方、図2より一部の等エントロピー線は飽和ガス線とX点、Y点で接点を持つことがわかる。
【0021】
本実施の形態の冷凍装置は図2の様な特有の特性を持つ冷媒を用いたものであり、以下、HFO1234yf冷媒を用いた場合を例として説明を進める。
【0022】
図3は本実施の形態による冷凍装置の構成図である。
【0023】
本実施の形態による冷凍装置は、冷媒を圧縮する圧縮機1、冷媒と空気の熱を熱交換する凝縮器2、冷媒を減圧する絞り装置3、冷媒と空気の熱を交換する蒸発器4、前記蒸発器4内の冷媒と空気との熱交換量を調整する送風装置5、前記絞り装置3に入る冷媒と前記蒸発器4から前記圧縮機1の吸入までの冷媒とで熱交換を行う内部熱交換器6、前記内部熱交換器6に流入する冷媒をバイパスして熱交換量を調整するバイパス弁20、前記蒸発器4から前記圧縮機1の吸入までの冷媒を過熱するヒーター7を備えている。加熱手段13は前記内部熱交換器6と前記ヒーター7で構成されている。
【0024】
また、前記蒸発器4の略中央に配置して冷媒温度を検知する蒸発器温度センサー8および前記圧縮機1の吸入冷媒温度を検知する吸入温度センサー9より構成される。そして、検知手段11は前記蒸発器温度センサー8と前記吸入温度センサー9により検知した温度の基づき制御手段12に制御信号を出力している。また、前記制御手段12は検知手段1
1の信号に基づき、絞り装置3、送風装置5、ヒーター7およびバイパス弁20を制御する。
【0025】
次に、以上の様に構成された本実施の形態の冷凍装置の動作について図4を用いて説明する。図4はHFO1234yf冷媒を用いたときのサイクルの状態説明図である。
【0026】
D3点で圧縮機1に吸入され圧縮された冷媒は、高温高圧の冷媒のA点となって凝縮器2に送られる。そして、空気と熱交換して放熱し、高圧の液冷媒のB点となり内部熱交換器6を通り吸入冷媒と熱交換してB’点に至り、絞り装置3に送られる。
【0027】
絞り装置3では減圧されて低温低圧の二相冷媒であるC点となり、蒸発器4に入り空気と熱交換して吸熱し、蒸発気化して低温のガス冷媒であるD1点となる。このとき送風装置5によって空気と冷媒の熱交換量が調整される。さらに冷媒は内部熱交換器6を通り絞り装置3入り口の冷媒と熱交換してD2点となる。バイパス弁20で内部熱交換器6に流入する冷媒流量を調整することで、内部熱交換器6での熱交換量を調整している。そして、冷媒はヒーターにより加熱されたD3点となった後、圧縮機1に吸入される。
【0028】
本発明の冷凍装置がエアコンであれば、蒸発器4で室内空気が冷やされ室内は冷房される。また、冷蔵庫であれば庫内の空気が冷やされ冷凍、冷蔵されることになる。
【0029】
また、圧縮機1に冷媒を圧縮する際、摺動部などに損失が無い理想的な場合はD3点で吸入した冷媒は等エントロピー線に沿って圧縮されE点となる。しかし、通常、圧縮機1には損失がある(圧縮機効率として例えば75%程度)ため、エンタルピーが増加してA点に到達することになる。このため実際の圧縮行程では等エントロピー線より飽和ガス線と離れた線上を推移することになるため、等エントロピー線上で飽和ガス線との交点がなければ、圧縮行程中にも交点はないと言える。
【0030】
ここで、圧縮行程で液圧縮が起きない様にするための原理を説明する。本実施の形態では、検知手段11、制御手段12および加熱手段13は圧縮機1の圧縮行程で液圧縮が起こらないように吸入の過熱度を調整する。過熱度目標の考え方を、図5を用いて説明する。図5はHFO1234yf冷媒の過熱度目標の説明図である。
【0031】
先に説明したように、理想的な場合で吸入した冷媒は等エントロピー線に沿って圧縮される。飽和ガス線が図5で示すような接点を持つエントロピーより大きく設定すれば通常、圧縮機1では圧縮行程が進むにつれエンタルピーが大きくなるため、必ず液圧縮は回避されることになる。従って、HFO1234yf冷媒での目標はエントロピーが1.6kJ/kg−K以上となる様な吸入状態とすることが必要となる。
【0032】
このため、等エントロピー線と飽和ガス線が途中で接点を持つエントロピー(この場合には1.6kJ/kg−K)以上となるに、吸入圧力毎に吸入の最小温度をあらかじめ設定し、制御手段12で最小吸入温度以上となるよう調整することになる。
【0033】
具体的には、本実施の形態の冷凍装置では、吸入圧力を、蒸発器温度センサー8により蒸発器温度を検知して、蒸発器温度相当の飽和圧力から算出するものとし、エントロピーが1.6kJ/kg−Kとなる蒸発器温度と最小吸入温度を対照できるデータをテーブルとして、検知手段11のメモリなどに持つようにした。図6にHFO1234yf冷媒の蒸発器温度と吸入温度の対照を示す。
【0034】
次に、検知手段11、制御手段12および加熱手段13としての内部熱交換器6およびヒーター7の動作について図7を用いて説明する。図7は検知手段11、制御手段12お
よび加熱手段13についての制御用のフローチャートである。
【0035】
図7より、STEP0では冷凍装置の能力制御により各アクチュエーターである圧縮機1、絞り装置3、送風装置5、ヒーター7およびバイパス弁20の動作を決定する。
【0036】
STEP1では検知手段11である蒸発器温度センサー8で蒸発器の蒸発温度Teを検知する。STEP2では検知手段11である吸入温度センサー9で圧縮機1の吸入温度を検知する。STEP3では検知手段11はSTEP1で検知した蒸発温度Teに最も近い図6の蒸発温度Teを検索して最小吸入温度Ts’を決定する。
【0037】
STEP4では検知手段11はSTEP2で検知した吸入温度TsとSTEP3で決定した最小吸入温度Ts’を比較し、TsがTs’以上であればSTEP0に戻り冷凍装置の能力制御を行う。
【0038】
TsがTs’未満であればSTEP5に進む。STEP5では制御手段12は絞り装置3の開度を小さくする。かつ/または、蒸発器4内の冷媒と空気の熱交換量を増加するために送風装置5の風量を増加する。かつ/または、加熱手段13の内部熱交換器6の熱交換量を増加するためにバイパス弁20の開度を小さくする。かつ/または、ヒーター7の加熱量を増加する。この操作により圧縮機1の吸入での加熱量が大きくでき、所定以上の過熱度とすることができる。そして、STEP0に戻り冷凍装置の能力制御を行う。
【0039】
この様にして、特有の特性を持った冷媒を用いた場合でも、圧縮機1の吸入状態を所定以上の過熱度として圧縮行程中の圧縮機1内での液圧縮を確実に回避することにより、圧縮機1の信頼性を向上することで信頼性の高い冷凍装置を提供できる。
【0040】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2の冷凍装置の構成について図8を用いて説明する。図8では実施の形態1の冷凍装置と同じ動作をするものについては実施の形態1と同じ名前、番号を付与しここでは説明を割愛する。
【0041】
10は圧縮機1の吸入圧力を検知する吸入圧力センサーである。検知手段11’は前記吸入圧力センサー10と前記吸入温度センサー9により検知した温度の基づき制御手段12に制御信号を出している。
【0042】
本実施の形態の冷凍装置では吸入圧力センサー10により圧縮機1の吸入圧力を検知して、検知した吸入圧力時にエントロピーが1.6kJ/kg−Kとなる最小吸入温度をテーブルとして持つようにした。図9にHFO1234yf冷媒の吸入圧力と最小吸入温度の対照表を示す。
【0043】
さらに、検知手段11’、制御手段12および加熱手段13としての内部熱交換器6およびヒーター7の動作について図10を用いて説明する。図10は検知手段11、制御手段12および加熱手段13についての制御用のフローチャートである。
【0044】
図10より、STEP0では冷凍装置の能力制御により各アクチュエーターである圧縮機1、絞り装置3、送風装置5、ヒーター7およびバイパス弁20の動作を決定する。
【0045】
STEP1では検知手段11’である吸入圧力センサー10で圧縮機1の吸入圧力Psを検知する。STEP2では検知手段11’である吸入温度センサー9で圧縮機1の吸入温度を検知する。STEP3では検知手段11’はSTEP1で検知した吸入圧力Psに最も近い図9の吸入圧力Psを検索して最小吸入温度Ts’を決定する。
【0046】
STEP4では検知手段11’はSTEP2で検知した吸入温度TsとSTEP3で決定した最小吸入温度Ts’を比較し、TsがTs’以上であればSTEP0に戻り冷凍装置の能力制御を行う。
【0047】
TsがTs’未満であればSTEP5に進む。STEP5では制御手段12は絞り装置3の開度を小さくする。かつ/または、蒸発器4内の冷媒と空気の熱交換量を増加するために送風装置5の風量を増加する。かつ/または、加熱手段13の内部熱交換器6の熱交換量を増加するためにバイパス弁20の開度を小さくする。かつ/または、ヒーター7の加熱量を増加する。この操作により圧縮機1の吸入部での加熱量が大きくでき、所定以上の過熱度とすることができる。そして、STEP0に戻り冷凍装置の能力制御を行う。
【0048】
この様にして、特有の特性を持った冷媒を用いた場合でも、圧縮機1の吸入状態を所定以上の過熱度として圧縮行程中の圧縮機内での液圧縮を確実に回避することにより、圧縮機1の信頼性を向上することで信頼性の高い冷凍装置を提供できる。
【0049】
尚、以上の実施の形態では絞り装置3、送風装置5、内部熱交換器6およびヒーター7を全て一つの冷凍装置内に設置した例を示したが、絞り装置3、送風装置5、内部熱交換器6およびヒーター7の何れか一つ以上設置していれば問題ない。
【0050】
また、上記実施の形態では冷凍装置として説明したが、四方弁を有する冷暖房装置例えば家庭用のエアコンや、また、加熱専用例えば給湯機等や、冷却専用例えばクーラーや冷凍庫等としても応用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、冷媒回路に封入する冷媒として、例えばHFO1234yfをはじめとする、P−h線図上での過熱域において飽和ガス線と等エントロピー線が2点以上の交点もしくは接点を有する特性を持つ単一冷媒および混合冷媒を含む冷媒を利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 圧縮機
2 凝縮器
3 絞り装置
4 蒸発器
5 送風装置
6 内部熱交換器
7 ヒーター
8 蒸発器温度センサー
9 吸入温度センサー
10 吸入圧力センサー
11、11’ 検知手段
12 制御手段
13 加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも圧縮機、凝縮器、絞り装置、及び蒸発器を順次接続管で接続して環状の冷媒回路を構成し、前記冷媒回路に封入する冷媒としてP−h線図上での過熱域において飽和ガス線と等エントロピー線が2点以上の交点もしくは接点を有する特性を持つ単一冷媒および混合冷媒を用い、前記圧縮機の吸入側の冷媒状態を検知する検知手段と、前記検知手段の出力に基づいて等エントロピー線と飽和ガス線が接点を持つエントロピーより大きくなる様に前記圧縮機の吸入側の冷媒状態を調整する制御手段とを備えたことを特徴とした冷凍装置。
【請求項2】
前記検知手段は前記蒸発器の中間部の温度と前記圧縮機の吸入温度から前記冷媒状態を検知し、前記制御手段は前記蒸発器の中間部の温度と前記圧縮機の吸入温度が所定の温度差以上となるように調整することを特徴とした請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記検知手段は前記圧縮機の吸入圧力と吸入温度から前記冷媒状態を検知し、前記制御手段は前記吸入圧力から算出した飽和温度と前記圧縮機の吸入温度が所定の温度差以上となるように調整することを特徴とした請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記蒸発器に送風する送風装置を有し、前記制御手段は前記送風装置の送風量を調整することを特徴とした請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記制御手段は前記絞り装置の開度を調整することを特徴とした請求項1または請求項4に記載の冷凍装置。
【請求項6】
前記蒸発器の出口側と前記圧縮機の吸入側との間に加熱手段を設け、前記制御手段は前記加熱手段の加熱量を調整することを特徴とした請求項1または請求項4に記載の冷凍装置。
【請求項7】
前記加熱手段は内部熱交換器であることを特徴とする請求項6記載の冷凍装置。
【請求項8】
前記加熱手段はヒーターであることを特徴とする請求項6記載の冷凍装置。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−141070(P2012−141070A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291920(P2010−291920)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)