説明

冷却システム

【課題】液体ヘリウムの供給管路での熱侵入を抑制する。
【解決手段】液体ヘリウム(1L)を冷凍機(2)からデュワー(4)に供給する供給管路(3)の内管(3i)と外管(3o)の間に、熱シールド管(5)を挿入し、その熱シールド管(5)を冷凍機(2)からの熱伝導およびデュワー(4)からの熱伝導により冷却する。
【効果】供給管路(3)を構成する内管(3i)と外管(3o)の間が真空断熱されているだけでなく、熱伝導で冷却された熱シールド管(5)の挿入により熱放射が遮断されている。このため、熱侵入を抑制でき、供給管路(3)を長くすることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システムに関し、さらに詳しくは、液体ヘリウムの供給管路での熱侵入を抑制し、供給管路を長くすることが出来る冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体ヘリウムを冷凍機から供給管路を通してデュワーに供給する冷却システムが知られている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−304365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の冷却システムでは、供給管路を内管と外管とにより構成し、内管に液体ヘリウムを通し、内管と外管とを真空断熱している。
しかし、熱放射による熱侵入が大きいため、供給管路を長くすることが出来ない問題点があった。
そこで、本発明の目的は、液体ヘリウムの供給管路での熱侵入を抑制し、供給管路を長くすることが出来る冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、液体ヘリウム(1L)を冷凍機(2)から供給管路(3)を通してデュワー(4)に供給する冷却システムであって、前記供給管路(3)は、液体ヘリウム(1L)を通す内管(3i)と、前記内管(3i)の外周を取り巻き該内管(3i)と真空断熱された外管(3o)とを有し、前記供給管路(3)の主要部分の前記内管(3i)と外管(3o)の間には熱シールド管(5)が挿入され、前記熱シールド管(5)が前記冷凍機(2)からの熱伝導により冷却されることを特徴とする冷却システム(100)を提供する。
上記第1の観点による冷却システム(100)では、供給管路(3)を構成する内管(3i)と外管(3o)の間が真空断熱されているだけでなく、冷凍機(2)からの熱伝導で冷却された熱シールド管(5)の挿入により熱放射が遮断されている。このため、供給管路(3)での熱侵入を抑制でき、供給管路を長くすることも可能になる。
【0005】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による冷却システム(100)において、前記熱シールド管(5)が前記デュワー(4)側からも熱伝導により冷却されることを特徴とする冷却システム(100)を提供する。
上記第2の観点による冷却システム(100)では、熱シールド管(5)が冷凍機(2)からの熱伝導で冷却されるだけでなく、デュワー(4)側からも熱伝導により冷却される。このため、さらに供給管路(3)での熱侵入を抑制できる。
【0006】
第3の観点では、本発明は、前記第1または第2の観点による冷却システム(100)において、前記供給管路(3)の主要部分の前記内管(3i)と外管(3o)とを可撓性のある金属管とし、前記熱シールド管(5)を熱伝導の良好な網線から構成したことを特徴とする冷却システム(100)を提供する。
上記第3の観点による冷却システム(100)では、供給管路(3)に熱シールド管(5)を挿入しても可撓性を持たせることが出来るので、供給管路(3)の取り付け/取り外し作業が容易になり、メンテナンス性が向上する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の冷却システムによれば、供給管路(3)を構成する内管(3i)と外管(3o)の間が真空断熱され且つ冷凍機(2)からの熱伝導で冷却された熱シールド管(5)の挿入により熱放射が遮断されているため、供給管路(3)での熱侵入を抑制でき、供給管路を長くすることも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0009】
図1は、実施例1にかかる冷却システム100を示す説明図である。
この冷却システム100は、被冷却体Sを冷却するために液体ヘリウム1Lを貯留しているデュワー4に、供給管路3を通して、冷凍機2から液体ヘリウム1Lを供給するシステムである。
被冷却体Sは、例えば超伝導磁気センサーであり、磁気ノイズを避けるために磁気シールド壁MWで囲まれた磁気シールド室に、デュワー4と共に設置されている。
冷凍機2は、ノイズを発生するため、磁気シールド室外に設置されている。
従って、冷凍機2とデュワー4とを連結する供給管路3は、磁気シールド壁MWを貫通している。
【0010】
デュワー4は、被冷却体Sを収容し且つ液体ヘリウム1Lを貯留する内槽4iと、内槽4iの外周を取り巻き内槽4iと真空断熱された外槽4oとからなり、ガス1Gの排出と液体ヘリウム1Lの供給を行うためのネック部4nを有している。
ネック部4nの上端には、ガス排出管4gが取り付けられている。
【0011】
供給管路3は、液体ヘリウム1Lを通す内管3iと、内管3iの外周を取り巻き該内管3iと真空断熱された外管3oとを有する。
供給管路3の一端はデュワー4のネック部4nに挿入される挿入部3sになっている。その挿入部3sにおいて、内管3iの一端がデュワー4の内槽4iに連通している。また、外管3oの一端は閉じている。
他方、供給管路3の他端において、内管3iの他端はカップリング7を介して冷凍機内管25と連結されている。また、外管3oの他端は真空バヨネット9を介してベローズ管6の一端に連結されている。ベローズ管6の他端は冷凍機2の真空容器20に連結されている。
供給管路3の主要部分(配管部分に相当する部分)の内管3iおよび外管3oは、可撓性のある金属管になっている。例えば蛇腹構造のステンレス管になっている(図1中に波線で表現している)。
内管3iの管径は、冷凍機2からデュワー4に適量の液体ヘリウム1Lを供給できると共にその液体ヘリウム1Lの供給量に相当するガス1Gがデュワー4から冷凍機2に戻れるように定められている。
【0012】
供給管路3の内管3iと外管3oの間には、熱シールド管5が挿入されている。
熱シールド管5の端部5aは、網線からなる連結体8を介して冷凍機2の熱シールド24に連結されている。
他方、熱シールド管5の端部5bは、挿入部3sの下端近くまで延びて外管3oに連結されている。挿入部3sはガス1Gで冷却される。特に挿入部3sの下端近くでは、ガス1Gの温度が極めて低いため、よく冷却される。従って、熱シールド管5の端部5bからの熱伝導により熱シールド管5も冷却される。
図2に示すように、熱シールド管5の主要部分(配管部分に相当する部分)は、熱伝導の良好な例えば銅の網線からなるメッシュシールド51と、そのメッシュシールド51を管形状に保持するためのスプリング52とから構成されており(図1中に×パターン線で表現している)、可撓性を有している。
【0013】
外管3oと熱シールド管5の間には、熱放射を遮断するために、例えばスーパーインシュレータのような断熱材11が充填されている。
【0014】
外管3o,熱シールド管5および内管3iは、支持体10により相互間隔を保持されている。
【0015】
冷凍機2は、真空容器20と、真空容器20に収容された第1ステージ21,第2ステージ22および凝縮器23と、第2ステージ22および凝縮器23を囲む熱シールド24と、凝縮器23から突出した冷凍機内管25とを具備している。
熱シールド24は、第1ステージ21により冷却されている。従って、熱シールド24に連結体8で連結された熱シールド管5も熱伝導により冷却される。
【0016】
冷凍機2からデュワー4へ液体へリウム1Lが自然落下で流れるようにするため、冷凍機2は架台26に載せられてデュワー4より高い位置に置かれ、供給管路3は適当な勾配を付けられている。
【0017】
冷凍機2に供給管路3を接続する作業は次の手順で行う。
まず、ベローズ管6を押しつぶした状態にして、冷凍機内管25に供給管路3の内管3iをカップリング10で接続すると共に、熱シールド24に熱シールド管5を連結体8で接続する。
次に、ベローズ管6を引き出した状態にして、ベローズ管6に供給管路3の外管3oを真空バヨネット9で接続する。
【0018】
実施例1の冷却システム100によれば、供給管路3の内管3iと外管3oの間に熱シールド管5が挿入され、熱シールド管5が冷却されているので、供給管路3での熱侵入を抑制でき、供給管路3を長くすることが可能になる。
また、供給管路3の主要部が可撓性を有するので、供給管路3の取り付け/取り外し作業が容易になり、メンテナンス性が向上する。
【実施例2】
【0019】
図3に示すように、ヒートパイプ53を熱シールド管5の長手方向に熱的に接触させて設けてもよい。ヒートパイプ53に内蔵する流体は、動作温度領域に適合するものを選択する。例えば窒素、ネオン、水素が挙げられる。
実施例2によれば、熱シールド管5の長手方向の温度勾配を小さくすることが出来る。
【実施例3】
【0020】
図4に示すように、内管3iを液管3Lとガス管3Gの二重管としてもよい。
実施例3によれば、温度が異なり且つ流れが逆方向の液体ヘリウム1Lとガス1Gとが分離され、接触しないので、温度損失を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の冷却システムは、液体ヘリウムを冷媒とする例えば生体磁気測定装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1にかかる冷却システムを示す断面説明図である。
【図2】実施例1にかかる熱シールド管の主要部の構造を示す斜視図である。
【図3】実施例2にかかる熱シールド管とヒートパイプを示す斜視図である。
【図4】実施例3にかかる内管と凝縮器を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1L 液体ヘリウム
1G ガス
2 冷凍機
3 供給管路
3i 内管
3o 外管
3G ガス管
3L 液管
4 デュワー
5 熱シールド管
8 連結体
24 熱シールド
51 メッシュシールド
52 スプリング
53 ヒートパイプ
100 冷却システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体ヘリウム(1L)を冷凍機(2)から供給管路(3)を通してデュワー(4)に供給する冷却システムであって、前記供給管路(3)は、液体ヘリウム(1L)を通す内管(3i)と、前記内管(3i)の外周を取り巻き該内管(3i)と真空断熱された外管(3o)とを有し、前記供給管路(3)の主要部分の前記内管(3i)と外管(3o)の間には熱シールド管(5)が挿入され、前記熱シールド管(5)が前記冷凍機(2)からの熱伝導により冷却されることを特徴とする冷却システム(100)。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却システム(100)において、前記熱シールド管(5)が前記デュワー(4)側からも熱伝導により冷却されることを特徴とする冷却システム(100)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の冷却システム(100)において、前記供給管路(3)の主要部分の前記内管(3i)と外管(3o)とを可撓性のある金属管とし、前記熱シールド管(5)を熱伝導の良好な網線から構成したことを特徴とする冷却システム(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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