説明

冷却システム

【課題】気化熱を利用して家屋などの効率の良い冷却が行えるようにする。
【解決手段】乾き流路110と、濡れ流路120と、水分供給手段と、排出手段140と、熱交換手段102とを備えるシステムとする。乾き流路110は、冷却対象個所の空気を一端に設けた入口に取り込み、入口から取り込んだ空気を他端から出力させる出口を有する。濡れ流路120は、乾き流路側と少なくとも1つの面が接して配置され、入口に乾き流路の出口が接続されて、その入口から入った空気を他端に設けた出口から出力させる。水分供給手段は、濡れ流路120内に水分を供給する。排出手段140は、濡れ流路120の出口に接続された空気を外部に排出する。熱交換手段102は、乾き流の出口と濡れ流路の入口との接続箇所の近傍の流路の空気の温度を、冷却対象個所に伝える構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋などに建物に設置される冷却システムに関し、特に気化熱を利用して冷却する機構を利用した、冷却のために電源や化石燃料を使用しない冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
家屋などの建物に設置される、冷却のための電源や化石燃料を使用しない冷却システムとして、従来から知られているものの1つに、ソーラーチムニーと称されるものがある。
図8は、ソーラーチムニーの原理を示した図である。家屋10内の内壁11と外壁12との間に、排気用の通路としてのチムニー13を設ける。このチムニー13と内壁11の間の下端に、空気の入口14を設け、チムニー13と外壁12との間の上端に、空気の出口15を設ける。
【0003】
そして、外壁12が日光Sなどで温められることで、家屋10の室内の空気が、チムニー13の入口14から流入すると共に、チムニー13の出口15から排出される空気流a1,a2が発生する。これは、日光Sでチムニー13を温めることによる対流を利用したものであり、室内の空気の排出を促して室内に高温の空気が滞留しないようにして、室内が高温にならないようにしたものであり、室内の空気を積極的に冷却する作用はない。
【0004】
一方、冷却のための電源や化石燃料を使用しない冷却システムとして、液体の気化熱を利用した冷却システムが従来から知られている。この気化熱を利用した冷却システムの1つとして、メイソチェンコサイクル蒸発冷却器が知られている。
図9は、メイソチェンコサイクル蒸発冷却器の原理を示したものである。
メイソチェンコサイクル蒸発冷却器20は、乾き流路21と濡れ流路22とを、それぞれが接した状態で配置する。図9の例では、上側を乾き流路21とし、下側を濡れ流路22としてあり、乾き流路21の1つの面と濡れ流路22の1つの面は、仕切り板を介して接した状態としてある。濡れ流路22は、内部が湿った状態となるように設定された流路である。この例では、乾き流路21の入口21aと濡れ流路22の出口22bとが上下に並んで配置され、その反対側で、乾き流路21の出口21bと濡れ流路22の入口22aとが上下に並んで配置されている。
【0005】
そして、乾き流路21の入口21aから、冷却させたい空気を取り込み(図9のT1の位置の矢印)、その取り込んだ空気を、乾き流路21の出口21bから取り出す(図9のT3の位置の矢印)。この取り出した空気は、一部を外部に取り出し(図9のT4の位置の矢印)、残りを濡れ流路22の入口22aから取り込む(図9のT5の位置の矢印)。外部に取り出した空気が、冷却された空気となる。
そして、濡れ流路22の入口22aから取り込んだ空気を、出口22bから取り出す(図9のT7の位置の矢印)。
濡れ流路22は内部を湿った状態としてあるため、濡れ流路22内を通過する空気は、気化熱で冷却される。そして、その濡れ流路22内を通過する空気が冷却されることで、その濡れ流路22と接して配置された乾き流路21を通過する空気についても、冷却される。
【0006】
図10は、このメイソチェンコサイクル蒸発冷却器の各部の温度変化を示した図であり、曲線Dryは乾き流路21内の温度変化であり、曲線Wetは濡れ流路22内の温度変化である。図10の各温度T1〜T7は、図9に示した各位値T1〜T7の箇所の温度である。温度T7の外部から乾き流路21に取り込んだ空気は、冷却されている濡れ流路22と乾き流路21が接していることで、乾き流路21の出口の温度T4まで徐々に低下する。この乾き流路21の出口の温度T4は、濡れ流路22の入口の温度でもあり、理想的には露点温度となる。濡れ流路22の出口温度T7は、理想的には湿球温度である。
濡れ流路22内を通過する空気は、濡れ流路22内で気化熱により冷却されるが、その冷却した温度が乾き流路21側に伝わることで、濡れ流路22の出口の温度T7は、濡れ流路22の入口の温度T4よりも高い温度となる。
【0007】
特許文献1には、メイソチェンコサイクル蒸発冷却器についての記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2009−524792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図9に示したメイソチェンコサイクル蒸発冷却器を屋内の冷却システムに適用することで、それなりに室内を冷却することが可能であるが、そのままでは、あまり効率の良い冷却とは言えない。即ち、例えば図9に示した乾き流路22の出口から排出される空気を、冷却用に使用した場合には、濡れ流路22内で湿度が高められた空気が室内に排出されてしまう。従って、室内の温度の低下とともに湿度が上昇してしまい、快適な冷却が行われるとは言えない状況になってしまう。
【0010】
ここで、図9に示したように、乾き流路21の出口から出力される空気の一部を、室内に取り込んで冷却させ、濡れ流路22の出口から出力される空気を、室外に排出させることで、室内の湿度を上昇させずに、室内を冷却させることが可能になる。
ところが、乾き流路21の出口から出力される空気の内の一部は、濡れ流路22の入口に戻すことが冷却原理上必要であり、乾き流路21の出口から出力される空気の一部しか冷却用に使用できず、冷却に使用できる空気が少なく、効率が悪い問題がある。
【0011】
本発明はこれらの課題を解決するためになされたものであり、家屋などで、気化熱を利用して効率の良い冷却が行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、乾き流路と、濡れ流路と、水分供給手段と、排出手段と、熱交換手段とを備える冷却システムとする。
乾き流路は、所定長のダクトで構成され、冷却対象個所の空気をダクトの一端に設けた入口に取り込み、入口から取り込んだ空気をダクトの他端から出力させる出口を有する。
濡れ流路は、乾き流路を構成するダクトと少なくとも1つの面が接して配置された所定長のダクトで構成され、ダクトの一端に設けた入口に乾き流路の出口が接続されて、その入口から入った空気をダクトの他端に設けた出口から出力させる構成である。
水分供給手段は、濡れ流路内に水分を供給する。
排出手段は、濡れ流路の出口に接続された空気を外部に排出する。
熱交換手段は、乾き流の出口と濡れ流路の入口との接続箇所の近傍の流路の空気の温度を、冷却対象個所に伝える構成である。
【0013】
またこの場合に、排出手段は、外気により温められるチムニーで構成し、外気により温められることで、チムニー内の空気を外部に排出する作用を有する構成としてもよい。
【0014】
またさらに、水分供給手段は、濡れ流路の1つの面に配置された吸水シートと、吸水シートに水分を供給する水タンクとで構成してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、乾き流路と濡れ流路とで構成されるメイソチェンコサイクル蒸発冷却器に、排出手段が接続された状態となり、室内の空気を、乾き流路から濡れ流路、濡れ流路から排出手段への順に供給して、室外に排出させることで、室内の湿度を高くすることなく冷却が行われる。従って、冷却動作に電源や化石燃料を使用しない効率のよい冷却が行える。
【0016】
この場合、排出手段として、外気により温められるチムニーで構成したことで、外気でチムニーが暖められることで、自動的に乾き流路からチムニーまでの空気流が発生して、全く電源などを必要としないで冷却動作が行われるようになる。
【0017】
また、水分供給手段は、濡れ流路の1つの面に配置された吸水シートと、吸水シートに水分を供給する水タンクとで構成することで、簡単に濡れ流路を構成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態の構成例を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態の乾き流路及び濡れ流路の構成例を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態の冷却特性の原理図である。
【図4】本発明の一実施の形態の流路内温度分布の例を示す特性図である。
【図5】本発明の一実施の形態の供給流量比と冷却効率の関係の例を示す特性図である。
【図6】本発明の一実施の形態の変形例(変形例1)を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態のさらに別の変形例(変形例2)を示す断面図である。
【図8】ソーラーチムニーの設置例を示す断面図である。
【図9】メイソチェンコサイクル蒸発冷却器の原理を示す説明図である。
【図10】メイソチェンコサイクル蒸発冷却器の特性例を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して以下の順序で説明する。
1.一実施の形態の構成例(図1、図2)
2.一実施の形態の構成による冷却状態の説明(図3〜図5)
3.変形例1(図6)
4.変形例2(図7)
5.その他の変形例
【0020】
[1.一実施の形態の構成例]
まず、図1及び図2を参照して、本実施の形態の構成について説明する。
図1は、家屋100に本実施の形態の冷却装置を組み込んだ構成を、断面で示したものである。
家屋100の室内101を冷却するものであり、天井102と屋根との空間に、メイソチェンコサイクル蒸発冷却器を構成する、乾き流路(ドライチャンネル)110と濡れ流路(ウェットチャンネル)120とを配置する。
乾き流路110と濡れ流路120とは、それぞれ所定長のダクトで構成され、仕切り板131で乾き流路110の1つの面(上側の面)と濡れ流路120の1つの面(下側の面)とが接する構成としてある。なお、本明細書においてダクトとは、流体が通過する構成の流路として機能するあらゆるものが含まれ、図示の例に限定されるものではない。
【0021】
乾き流路110は、天井102と接した位置に配置してあり、一端の入口111から室内101の空気を取り込み、他端の出口112から排出させる。乾き流路110と接した天井102は、乾き流路110内の冷気を室内101に伝える熱交換手段として機能するように、少なくとも一部を、比較的熱伝導性の高い素材で構成するのが好ましい。乾き流路110と濡れ流路120との間に配置された仕切り板131についても、熱伝導性の高い素材で構成するのが好ましい。
【0022】
濡れ流路120は、乾き流路110の出口112から排出される空気が一端の入口121に供給され、他端の出口122から排出させる。濡れ流路120は、底面に吸水シート123が配置してあり、その吸水シート123が湿っていることで、濡れ流路120内を高湿度状態に保つ。吸水シート123が湿れた状態に保たれる構成の例については後述する。
乾き流路110と濡れ流路120とは、空気流の方向が反転した状態となり、対向流による熱交換を行うようにしてある。
【0023】
濡れ流路120の出口122は、空気の排出手段としての、チムニー140の入口141に接続してある。
チムニー140は、家屋100の外壁103、104と接した位置に、直立した状態で配置された、ソーラーチムニーと称される自然対流を利用した換気用通路である。即ち、チムニー部の外壁104に太陽熱Sが照射されることで、チムニー140内の空気が暖められ、下端の入口141からの空気を、上端の出口142から家屋の外に排出させる自然対流を生じさせるものである。
【0024】
図1に示した矢印a11,a12,a13,a14は、室内101からチムニー140の出口142までの空気流を示したものである。
即ち、室内101の天井102の入口111から、乾き流路110に取り込んだ空気(矢印a11)は、濡れ流路120側に送られ(矢印a12)、さらに濡れ流路120からチムニー140に送られ(矢印a13)、チムニー140から屋外に排出される(矢印a14)。
【0025】
図2は、メイソチェンコサイクル蒸発冷却器を構成する、乾き流路110と濡れ流路120の構成例を分解して示したものである。
乾き流路110側は、天井102の乾き流路部102aの一端に、開口部102bを設けて、その開口部102bを、図1に示した乾き流路110の空気の入口111とする。
天井102の乾き流路部102aの出口の近傍には、熱交換用薄板部102cを設けてある。
【0026】
仕切り板131の一端には、開口部132が設けてある。この開口部132は、乾き流路110の出口112として機能すると共に、濡れ流路120の入口121としても機能する。
濡れ流路120内には、流路120の長さに対応した細長形状の吸水シート123が配置してある。この吸水シート123は、吸水性を有する樹脂シートなどで構成し、外部の給水タンク125から2本のチューブ124で給水される構成としてある。チューブ124は、吸水シート123の左右の端に配置してあり、チューブ124の途中に複数の孔124aを一定間隔で設けて、その孔124aから吸水シート123上に水を供給する構成としてある。
このように吸水シート123に給水されて濡れていることで、濡れ流路120内が高湿度状態に保たれる。
【0027】
[2.一実施の形態の構成による冷却状態の説明]
次に、図3から図5を参照して、図1及び図2に示した構成で室内が冷却される状態について説明する。
本実施の形態で冷却される原理は、基本的にはメイソチェンコサイクル蒸発冷却器を利用したものであり、図3に示したメイソチェンコサイクルの温度特性がそのまま適用される。
即ち、温度T11を乾き流路110の入口111の温度、温度T12を乾き流路110の途中の温度、温度T13を乾き流路110の出口112及び濡れ流路120の入口の温度とする。さらに、温度T14を濡れ流路120の途中の温度、温度T15を濡れ流路120の出口122の温度とする。各温度T11〜T15は、図1に示した流路110,120中の各点T11〜T15の位置の温度に相当する。
この図3に示した温度特性は、乾き流路110と濡れ流路120との熱交換によって生じるメイソチェンコサイクルの特性であり、乾き流路110と濡れ流路120との接続点の温度T13が理想的には露点温度であり、濡れ流路120の出口の温度T15が、理想的には湿球温度である。
【0028】
従って、室内101の天井102の付近の温度である温度T11が、乾き流路110と濡れ流路120との接続点の温度T13まで冷却される。ここで本実施の形態においては、図2に示したように、天井102の乾き流路部102aの出口の近傍には、熱交換用薄板部102cを設けてあるため、この露点温度に相当する温度T13付近に冷却された温度が、室内101側にも伝わり(図1の矢印a15)、室内101が冷却される。このように冷却されることで、図3に破線で示したように、冷却用に利用される温度範囲Taとして、露点温度の近傍の温度がそのまま利用されることになる。
【0029】
そして、乾き流路110と濡れ流路120の空気流は、濡れ流路120に接続されたチムニー140が、外気で暖められることで自然対流として発生し、濡れ流路120内の湿度の高い空気は、全て屋外に排出される。従って、メイソチェンコサイクルを利用した冷却機構であるにも係わらず、室内の湿度上昇がない効果を有する。しかも、乾き流路110の出口112からの空気を、全て濡れ流路120の入口121に供給させるため、冷却効率がよい。
【0030】
図4は、本実施の形態の構成の冷却システムを構成させて、流路内温度分布を測定した例である。図4(a)は、供給流量比=0.0の場合の特性であり、図4(b)は、供給流量比=0.6の場合の特性であり、それぞれ縦軸が温度、横軸が各流路の長手方向の位置を示す。図4(a)及び(b)において、Dryが乾き流路110の温度変化特性であり、Wetが濡れ流路120の温度変化特性である。供給流量比は、乾き流路に取り込んだ空気の流量に対する、出力した空気の流量の割合を表すものである。本実施の形態の構成の場合には、乾き流路110の入口から取り込んだ空気の全てが濡れ流路120に流れ込むので、図4(a)に示した供給流量比=0.0の状態となる。図4(b)の供給流量比=0.6の場合は、乾き流路に取り込んだ空気の60%を外部に供給する図9に示した従来のメイソチェンコ蒸発冷却器の場合であり、
それぞれ乾き流路110の入口(即ち室内)の温度を30℃、相対湿度を30%とした場合の例であり、空気流を66L/minとしてある。
【0031】
図4(a)の供給流量比=0.0の場合には、湿球温度18.9℃で、露点温度12.6℃であり、乾き流路110と濡れ流路120との接続点で、湿球温度18.9℃以下に冷却されていることが判る。
図4(b)の供給流量比=0.6の場合には、湿球温度19.5℃で、露点温度12.7℃であり、乾き流路110と濡れ流路120との接続点で、ほぼ湿球温度19.5℃と同じ温度に冷却されていることが判る。
図4(a)及び(b)を比較すると判るように、図4(a)の本実施の形態の特性の方が優れていることが判る。
【0032】
図5は、冷却効率ηを示したものであり、横軸が供給流量比で、縦軸が冷却効率である。冷却効率ηは、以下の式で示される。
η=(TInlet air−Tminimum)/(TInlet air−Tdewpoint
この式において、TInlet airは、乾き流路110の入口の温度T11であり、Tminimumは、乾き流路110と濡れ流路120との接続点の温度T13であり、温度が最低になる位置の温度である。冷却効率ηは、理想的に得られる最大の冷却効果に対して、実際のシステムで得られた冷却効果の比を示す。
図5において、丸印でプロットして示す冷却効率ηは、温度30℃、相対湿度30%、流量66L/minの場合の効率を、供給流量比の変化で示してある。供給流量比=0.0の場合には、80%近い冷却効率が得られている。供給流量比=0.6の場合には、冷却効率が約60%になっている。
図5において、三角印でプロットして示す冷却効率ηは、温度26℃、相対湿度50%、流量60L/minの場合の効率を、供給流量比の変化で示してある。供給流量比=0.0の場合には、70%近い冷却効率が得られている。
図6に示した
【0033】
このように本実施の形態の構成によると、ソーラーチムニーを利用した太陽エネルギーを駆動源として、メイソチェンコサイクルにより建物内を積極的に冷却するシステムであり、電源や石化燃料を使わないで、効率のよい冷却が行える効果を有する。
【0034】
[3.変形例1]
図6は、本実施の形態の変形例(変形例1)を示したものである。
この図6の構成は、乾き流路210を上側、濡れ流路220を下側として、家屋200の室内201の天井202の裏にメイソチェンコサイクルを配置したものであり、乾き流路と濡れ流路の位置関係が逆である以外は、基本的な構成は図1の構成と同じである。
即ち、図6に従って説明すると、家屋200の室内201の天井202には、ダクト213を介して乾き流路210の入口211が接続してある。ダクト213は、図6に示した断面位置とは異なる位置に配置してある。
【0035】
そして、乾き流路210の入口211から室内201の空気を取り込み、他端の出口212から排出させる。
濡れ流路220は、乾き流路210と仕切り板231で接した状態で配置してあり、乾き流路210の出口212から排出される空気が濡れ流路220の一端の入口221に供給され、他端の出口222から、チムニー240側に排出させる。濡れ流路220は、上面及び底面に吸水シート223が配置してあり、その2つの面の吸水シート223が湿っていることで、濡れ流路220内を高湿度状態に保つ。吸水シート223が湿れた状態に保たれる構成の例については、例えば図2に示した構成が適用可能である。但し、2つの面に吸水シート223を配置してあるため、2枚の吸水シート223と、それぞれの吸水シートに対応した給水用チューブなどが必要である。
【0036】
濡れ流路220の出口222は、空気の排出手段としての、チムニー240の入口241に接続してある。
チムニー240は、家屋200の外壁203、204と接した位置に、直立した状態で配置された、ソーラーチムニーと称される自然対流を利用した換気用通路であり、チムニー部の外壁204に太陽熱Sが照射されることで、チムニー240内の空気が暖められ、下端の入口241からの空気を、上端の出口242から家屋の外に排出させる自然対流を生じさせるものである。
【0037】
図6に示した矢印a21,a22,a23,a24は、室内201からチムニー240の出口242までの空気流を示したものである。
即ち、室内201の天井202側のダクト213から、乾き流路210に取り込んだ空気(矢印a21)は、乾き流路210と濡れ流路220との接続点232で濡れ流路220側に送られ(矢印a22)、さらに濡れ流路120からチムニー240に送られ(矢印a23)、チムニー240から屋外に排出される(矢印a24)。
そして、既に図3などで説明した原理で、冷却が行われる。
このように、乾き流路210と濡れ流路220との位置関係を逆とした場合でも、図1例と同様の冷却効果が得られる。
【0038】
[4.変形例2]
図7は、本実施の形態の変形例(変形例1)を示したものである。
この図7の構成は、家屋100′を2階建てとした例であり、1階の部屋101の天井裏と、2階の部屋101の天井裏のそれぞれに、既に図1で説明した冷却機構を配置してある。この図7において、図1に対応する部分には同一符号を付してあり、それぞれの階の冷却機構は、既に図1で説明した乾き流路110と濡れ流路120とで構成される冷却機構と同じである。
【0039】
そして、1階の天井裏の濡れ流路120の出口と、2階の天井裏の濡れ流路120の出口とを、それぞれ1本のチムニー140′の途中に設けた入口141a及び141bに接続してある。
このように構成したことで、1本のチムニー140′で、複数の部屋の冷却機構に接続させて、排気を行うことができる。図7では、2階建ての例としたが、3階建て以上の場合にも同様に適用が可能である。また、図7において、乾き流路110と濡れ流路120とは、図6の例のように、逆配置のものを適用してもよい。
【0040】
[5.その他の変形例]
ここまで説明した実施の形態では、濡れ流路の出口に接続される排出手段として、ソーラーチムニーを適用した例について説明したが、その他の排出手段を適用してもよい。例えば、補助的にファンなどの空気流を発生させる手段を設けて、外部に排出させる構成としてもよい。
また、実施の形態で説明したダクトは、流体が通過する構成の流路として機能するものであれば、どのような形状であっても良く、一般的な換気用などのダクトとは異なる形状の流路で構成させてもよい。例えば、濡れ流路と乾き流路の何れか一方又は双方を、天井裏などに複数本配設した構成としてもよい。また、各図の例では、濡れ流路と乾き流路とは直線状に配置したダクトで構成させたが、直線形状以外のダクトで構成させてもよい。
また、濡れ流路の湿度を高湿度状態に保つ構成についても、図2に示した構成は一例であり、その他の水分供給手段で構成させてもよい。
さらに、乾き流の出口と濡れ流路の入口との接続箇所の近傍の流路の空気の温度を、室内である冷却対象個所に伝える熱交換手段についても、上述した実施の形態では、天井の一部(図2の熱交換用薄板部102c)の素材そのもので構成した熱交換手段としたが、より効率のよい熱交換を行う構成としてもよい。例えば、熱交換が積極的に行われるように、何らかのフィン(羽根)などを配置した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10…家屋、11…内壁、12…外壁、13…チムニー、14…入口、15…出口、100,100′…家屋、101…室内、102…天井、102a…天井の乾き流路部、102b…開口部、102c…熱交換用薄板部、103…外壁、104…チムニー部の外壁、110…乾き流路、111…入口、112…出口、120…濡れ流路、121…入口、122…出口、123…吸水シート、124…チューブ、124a…孔、125…給水タンク、126…上板、131…仕切り板、132…開口部、140,140′…チムニー、141,141a,141b…入口、142…出口、200…家屋、201…室内、202…天井、203…外壁、204…チムニー部の外壁、210…乾き流路、211…入口、212…出口、213…ダクト、220…濡れ流路、221…入口、222…出口、223…吸水シート、231…仕切り板、232…開口部、240…チムニー、241…入口、242…出口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長のダクトで構成され、冷却対象個所の空気をダクトの一端に設けた入口に取り込み、前記入口から取り込んだ空気をダクトの他端から出力させる出口を有する乾き流路と、
前記乾き流路を構成するダクトと少なくとも1つの面が接して配置された所定長のダクトで構成され、ダクトの一端に設けた入口に前記乾き流路の出口が接続されて、その入口から入った空気をダクトの他端に設けた出口から出力させる濡れ流路と、
前記濡れ流路内に水分を供給する水分供給手段と、
前記濡れ流路の出口に接続された空気を外部に排出する排出手段と、
前記乾き流の出口と前記濡れ流路の入口との接続箇所の近傍の流路の空気の温度を、前記冷却対象個所に伝える熱交換手段とを備えたことを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却システムにおいて、
前記排出手段は、外気により温められるチムニーで構成し、外気により温められることで、チムニー内の空気を外部に排出する作用を有する冷却システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の冷却システムにおいて、
前記水分供給手段は、前記濡れ流路の1つの面に配置された吸水シートと、前記吸水シートに水分を供給する水タンクとで構成した冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−226699(P2011−226699A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96153(P2010−96153)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】