説明

冷却トレイ

【課題】蓄冷剤容器に合成樹脂を用いつつも、物品が載置される金属板と蓄冷剤との間の熱伝導性が高く、同物品に対する冷却能力に優れた冷却トレイを提供する。
【解決手段】蓄冷剤容器1内に蓄冷剤Tを封入してなる冷却トレイの蓄冷剤容器1は、中空箱状をなす合成樹脂製の容器本体2と、上面の少なくとも一部を外部に露出させた状態で容器本体2の上壁10に配置される金属板Mとを備えている。容器本体2の上壁10には貫通孔13が設けられるとともに、金属板Mは貫通孔13を覆うようにして容器本体2の上壁10に固着され、容器本体2の上壁10に対する金属板Mの固着によって貫通孔13は液密に閉塞されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば冷蔵庫や冷凍庫の冷凍室内に収納して使用される冷却トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄冷剤を封入した冷却トレイを冷蔵庫や冷凍庫の冷凍室に収納するとともに、その冷却トレイに食品を載置することにより、冷凍室内における食品冷凍の急速化を図る技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の冷却トレイは、内部に蓄冷剤が封入された合成樹脂製又は金属製の蓄冷剤容器と、その蓄冷剤容器上に配置される金属板とから構成されている。こうした冷却トレイが収納された冷凍室では、冷却トレイの金属板上に食品が載置されると、その食品は冷凍室内に供給される冷気に加えて冷却トレイ内の蓄冷剤によっても熱を奪われるため、急速に温度が低下して冷凍状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−083629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蓄冷材を封入する蓄冷剤容器は、成形の容易性やコストの観点から、金属よりも合成樹脂により形成することが好ましい。しかしながら、特許文献1の冷却トレイの蓄冷剤容器を合成樹脂製とした場合には、蓄冷剤容器を金属製とした場合のような冷却能力を発揮することができなかった。これは、合成樹脂製の蓄冷剤容器とすると、金属板と蓄冷剤容器内部の蓄冷剤との間に介在する合成樹脂製の蓄冷剤容器部分の熱伝導性が低いために、金属製の蓄冷剤容器とした場合と比較して、食品から金属板へ伝導された熱を蓄冷剤へ伝導し難いからである。したがって、食品の冷却能力という観点では、合成樹脂製の蓄冷剤容器を用いた冷却トレイは、金属製の蓄冷剤容器を用いた冷却トレイに比べて劣ると言わざるを得ない。
【0005】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄冷剤容器に合成樹脂を用いつつも、物品が載置される金属板と蓄冷剤との間の熱伝導性が高く、同物品に対する冷却能力に優れた冷却トレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の冷却トレイは、蓄冷剤容器内に蓄冷剤を封入してなる冷却トレイであって、前記蓄冷剤容器は、中空箱状をなす合成樹脂製の容器本体と、上面の少なくとも一部を外部に露出させた状態で前記容器本体の上壁に配置される金属板とを備え、前記容器本体の上壁には貫通孔が設けられるとともに、前記金属板は前記貫通孔を覆うようにして前記容器本体の上壁に固着され、前記容器本体の上壁に対する前記金属板の固着によって前記貫通孔は液密に閉塞されていることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、容器本体の上壁に貫通孔が形成される部位では、蓄冷剤容器内に封入される蓄冷剤と金属板とが合成樹脂部分(容器本体の上壁)を介することなく直接接触することになる。そのため、合成樹脂製の蓄冷剤容器の上壁上面に金属板を配置した従来の構成と比較して、金属板と蓄冷剤との間に合成樹脂部分が介在されていない分だけ、金属板と蓄冷剤との間の熱伝導を効率的に行うことができる。そして、金属板と蓄冷剤との間の熱伝導性が向上することにより、冷却トレイ上の物品に対する冷却能力は優れたものとなる。
【0008】
また、容器本体の上壁と金属板とが隙間なく固着され、金属板により貫通孔が液密に閉塞されていることから、収容空間内に封入された蓄冷剤が上壁と金属板との間を通じて液漏れするおそれがない。
【0009】
請求項2に記載の冷却トレイは、請求項1に記載の発明において、前記容器本体の上壁には前記金属板の上面を支持する上面支持部が設けられていることを特徴とする。
封入された蓄冷剤を凍結させると、蓄冷剤が膨張することにより、蓄冷剤容器の内圧が高まって、金属板を外部側へ押す力が発生する。こうした蓄冷剤の凍結膨張時に発生する金属板を外部側へ押す力は、金属板の変形や容器本体からの金属板の剥がれをまねく原因となる。上記構成によれば、蓄冷剤の凍結膨張時に金属板を外部側へ押す力が発生した場合に、容器本体の上壁に設けられる上面支持部が、金属板をその上面側から支えることによって、金属板の変形や容器本体からの金属板の剥がれを抑制する。
【0010】
請求項3に記載の冷却トレイは、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記容器本体の上壁と下壁との間には、先端が前記容器本体の上壁及び前記金属板の少なくとも一方に固定されるとともに、基端が前記容器本体の下壁に固定される規制部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、規制部が蓄冷剤容器の上壁又は金属板と下壁との間を支える柱となって、上壁の下面支持部と下壁との間の間隔を一定に保つことができる。これにより、上壁又は金属板と下壁との間の間隔を広げようとする蓄冷剤容器の変形(膨張変形)を抑制することができる。さらに、蓄冷剤容器の膨張変形を抑制することにより、金属板の変形や容器本体からの金属板の剥がれも抑制することができる。
【0012】
請求項4に記載の冷却トレイは、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記容器本体の下壁及び周壁の少なくとも一部は、上壁を形成する樹脂材料よりも熱伝導性の低い樹脂材料により形成されていることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、容器本体の上壁を形成する樹脂材料よりも熱伝導性の低い樹脂材料で形成される、下壁及び周壁の特定の部位においては、蓄冷剤容器内外の熱伝導が行われ難くなる。これにより、蓄冷剤容器内に封入される蓄冷剤の冷却能力を任意の部位(方向)に集中させることができる。たとえば、容器本体の下壁及び周壁を熱伝導性の低い樹脂材料により形成した場合には、蓄冷剤の冷却能力を、容器本体の上壁と金属板とが存在する冷却トレイの上面側に集中させることができ、金属板上に載置される物品をより効率的に冷却することができる。また、容器本体の上壁及び金属板以外の部位からは、外部の熱が蓄冷剤容器内の蓄冷剤へ吸熱され難くなるため、蓄冷剤の温度上昇が抑制されて蓄冷剤の冷却効果の持続時間を延ばすことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の冷却トレイによれば、蓄冷剤容器に合成樹脂を用いつつも、物品が載置される金属板と蓄冷剤との間の熱伝導性を高めて、金属板上に載置される物品に対する冷却能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は冷却トレイの斜視図、(b)は(a)のX−X線断面図。
【図2】蓄冷剤容器の分解斜視図。
【図3】(a)は別例の冷却トレイの斜視図、(b)は(a)のY−Y線断面図。
【図4】別例の冷却トレイの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の冷却トレイを図面に基づいて説明する。
図1に示すように、冷却トレイは、中空箱状をなす蓄冷剤容器1と、同蓄冷剤容器1内に封入される蓄冷剤Tとから構成されている。
【0017】
まず、蓄冷剤容器1について説明する。蓄冷剤容器1は、中空の長四角箱状に形成される合成樹脂製の容器本体2と、容器本体2に固着される金属板Mとを備える。
図1に示すように、容器本体2は上壁10、下壁20、及び4枚の周壁30を備え、内部に収容空間Sを形成している。容器本体2の上壁10の中央部分には、四角枠状の枠状部11が形成されている。枠状部11の内側には貫通孔13が設けられるとともに、貫通孔13は枠状部11内を縦横に延びる桟状の架橋部12によって4個の区画(領域)に区画されている。図1(b)に示すように、枠状部11の内面には、枠状部11に沿って環状に延びる側縁支持部14が下方に向けて突設されている。この環状の側縁支持部14は、その内形寸法が金属板Mの外形寸法と略同一となるように設定されている。
【0018】
そして、上壁10の内面には1枚の金属板Mが接着剤により固着されている。金属板Mは上壁10に設けられる貫通孔13を覆うように上壁10の内面に固着され、金属板Mにより上壁10の貫通孔13が液密に閉塞されている。詳しくは、金属板Mの上面が上壁10の枠状部11及び架橋部12に固着されるとともに、側縁が上壁10の側縁支持部14に固着されている。上記接着剤としては、合成樹脂と金属とを接着可能な接着剤、例えばフロント研究所社製の成形用接着剤(FRV#2000S、FT#2000K)を用いることができる。なお、金属板Mの材料としては、冷却トレイに一般に用いられる公知のもの、例えばアルミニウム、銅、鉄、及びステンレス鋼を用いることができる。これらのなかでも熱伝導性の観点から、アルミニウム又は銅を用いることが好ましい。
【0019】
容器本体2の上壁10の周縁部分には、枠状部11を囲うように枠状の膨出部15が形成されている。この膨出部15は枠状部11よりも上方に膨出するように形成されている。また、図1(b)に示すように、膨出部15の内部にも金属板Mの下方に位置する収容空間Sと連通する収容空間Sが形成されるとともに、この膨出部15内の収容空間Sは、枠状部11よりも上方にまで達するように形成されている。
【0020】
図1(b)及び図2に示すように、容器本体2の下壁20には、上壁10側へ向かって膨出(隆起)する円錐台状の第1規制部21が複数、設けられている。第1規制部21は、その先端面21aが側縁支持部14及び金属板Mの下側に位置するように形成されるとともに、側縁支持部14との接触部分において側縁支持部14に溶着されている。本実施形態において、第1規制部21は、側縁支持部14の四隅と長辺側の中央部両側の計6箇所に設けられている。
【0021】
第1規制部21は膨張変形等の蓄冷剤容器1の変形を抑制する。蓄冷剤容器1が膨張変形した状態とは、換言すれば、蓄冷剤容器1の上壁(容器本体2の上壁10及び金属板M)と下壁(容器本体2の下壁20)との間隔が部分的又は全体的に広がった状態ということができる。こうした蓄冷剤容器1の膨張変形は、例えば、蓄冷剤Tの凍結膨張時に収容空間Sの内圧が高まって、容器本体2の上壁10及び金属板M、並びに容器本体2の下壁20を外部側へ押す力が作用することにより引き起こされる。
【0022】
ここで、第1規制部21は、容器本体2の上壁10及び容器本体2の下壁20を外部側へ押す力に抗して、上壁10と下壁20との間の間隔を一定に保つことで上壁10及び下壁20の変形を規制して、蓄冷剤容器1の膨張変形を抑制する。なお、上記金属板Mを外部側へ押す力に対しては、枠状部11及び架橋部12が金属板Mをその上面側から支えることによって金属板Mの変形を抑制する。つまり、本実施形態においては、枠状部11及び架橋部12が、金属板Mの上面を支持する上面支持部として機能する。
【0023】
また、下壁20の中央部には、上方へ膨出するとともに長手方向に延びる突条状の第2規制部22が設けられている。この第2規制部22は、下壁20の湾曲やねじれを抑制する。
【0024】
図1(a)に示すように、容器本体2の周壁30には収容空間S内に蓄冷剤Tを注入するための注入口31が設けられている。なお、注入口31は収容空間S内に蓄冷剤Tを注入した後に封止される。
【0025】
本実施形態の容器本体2は、その上壁10と、下壁20及び周壁30とが、熱伝導性の異なる樹脂材料により形成されている。具体的には、上壁10は熱伝導性に優れた樹脂材料(以下、「高熱伝導性樹脂材料」という。)により形成されるとともに、下壁20及び周壁30は上壁10を形成する樹脂材料よりも熱伝導性の低い樹脂材料(以下、「低熱伝導性樹脂材料」という。)により形成されている。なお、上壁10、並びに下壁20及び周壁30を形成する樹脂材料としては、冷却トレイに一般に用いられる公知のもの、例えばポリエチレン、及びポリプロピレンを用いることができる。そして、これら公知の樹脂材料のなかで熱伝導性の異なる高熱伝導性樹脂材料及び低熱伝導性樹脂材料がそれぞれ選択される。
【0026】
合成樹脂製の容器本体2と金属板Mとを組み合わせてなる蓄冷剤容器1の内部には、容器本体2と金属板Mとにより囲まれる1つの収容空間Sが形成される。そして、この収容空間S内には蓄冷剤Tが封入される。図1(b)に示すように、蓄冷剤Tは液体の状態において収容空間S内に凍結時の膨張代S1が形成されるように充填される。そして、液体の状態の蓄冷剤Tの液面T1は、膨張代S1を形成しつつ、枠状部11よりも高い位置に位置するように設定される。そのため、蓄冷剤Tは、容器本体2の上壁10に固着される金属板Mと常に直接接触する状態となっている。なお、蓄冷剤Tとしては、冷却トレイに一般に用いられる公知のもの(例えば、特開平4−23883号公報に記載される蓄冷剤)を用いることができる。
【0027】
次に、本実施形態の冷却トレイの製造方法について説明する。
図2に示すように、容器本体2は、第1の部材A及び第2の部材Bの2部材に分けて成形される。第1の部材Aは、上方に開口を有する有底箱状の部材であって、容器本体2の下壁20及び周壁30を構成する。第2の部材Bは、第1の部材Aの開口を閉塞する蓋状(板状)の部材であって、容器本体2の上壁10を構成する。
【0028】
第2の部材Bは、高熱伝導性樹脂材を用いて、インサート成形法により金属板Mと一体に成形される。具体的には、接着剤を所定部位に塗布した金属板Mを成形型内に配置した状態で第2の部材Bの成形を行うことにより、金属板Mが固着された第2の部材Bを成形することができる。このようにすることで、凍結・解凍を繰り返す使用態様においても、金属板Mと第2の部材Bとがより強固に固着した状態となって金属板Mと第2の部材Bとの間の液密性を好適に維持することができる。
【0029】
また、第1の部材Aは、低熱伝導性樹脂材を用いて、公知の成形方法(例えば、射出成形)により成形される。そして、第1の部材Aの開口に対して、金属板Mを固着した第2の部材Bを位置合わせし、第1の部材Aの開口周縁部分と第2の部材Bとを溶着する。具体的には、第1の部材Aの開口部分、即ち、容器本体2の周壁30の上端部に設けられるフランジ部32の上面と、第2の部材Bの下面とを溶着する(図1(b)参照)。同時に、第1の部材A側に形成される第1規制部21の先端面21aと、第2の部材B側に形成される側縁支持部14とを溶着する。
【0030】
第1の部材Aと第2の部材Bの所定箇所を溶着する方法としては、合成樹脂同士を溶着するための公知の方法、例えば熱板溶着、振動溶着、及びレーザー溶着を用いることができる。第1の部材Aと第2の部材Bとを溶着することにより、図1(a)に示すような内部に収容空間Sを形成する中空状の蓄冷剤容器1が得られる。なお、図1(a)に示す破線は、第1の部材Aと第2の部材Bとを溶着した際の溶着線を示している。そして、注入口31を介して蓄冷剤容器1内に蓄冷剤Tを充填した後、注入口31を封止することにより、本実施形態の冷却トレイを製造することができる。
【0031】
次に本実施形態における作用効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態の冷却トレイは、蓄冷剤容器1内に蓄冷剤Tを封入することにより構成されている。この蓄冷剤容器1は、中空箱状をなす合成樹脂製の容器本体2と、容器本体2の上壁10に配置される金属板Mとを備えている。金属板Mは、容器本体2の上壁10に設けられる貫通孔13を覆うようにして上壁10対して固着され、上面の一部が外部に露出した状態となっている。
【0032】
これにより、容器本体2の上壁10に貫通孔13が形成される部位では、蓄冷剤容器1内に封入される蓄冷剤Tと金属板Mとが合成樹脂部分を介することなく直接接触することになる。そのため、合成樹脂製の蓄冷剤容器の上壁上面に金属板を配置した従来の構成と比較して、金属板Mと蓄冷剤Tとの間に合成樹脂部分が介在されていない分だけ、金属板Mと蓄冷剤Tとの間の熱伝導を効率的に行うことができる。したがって、金属板Mと蓄冷剤Tとの間の熱伝導性が向上することにより、冷却トレイ上の物品に対する冷却能力は優れたものとなる。
【0033】
また、容器本体2の上壁10と金属板Mとが隙間なく固着され、金属板Mにより貫通孔13が液密に閉塞されている。これにより、収容空間S内に封入された蓄冷剤Tが上壁10と金属板Mとの間を通じて液漏れするおそれがない。
【0034】
(2)容器本体2の上壁10には、金属板Mの上面を支持する上面支持部としての枠状部11及び架橋部12が設けられている。
封入された蓄冷剤Tを凍結させると、蓄冷剤Tが膨張することにより、蓄冷剤容器1の内圧が高まって、金属板Mを外部側へ押す力が発生する。こうした蓄冷剤Tの凍結膨張時に発生する金属板Mを外部側へ押す力は、金属板Mの変形や容器本体2の上壁10からの金属板Mの剥がれをまねく原因となる。上記構成によれば、蓄冷剤Tの凍結膨張時に金属板Mを外部側へ押す力が発生したとしても、枠状部11及び架橋部12が金属板Mをその上面側から支えることによって、金属板Mの変形や上壁10からの金属板Mの剥がれを抑制することができる。
【0035】
(3)容器本体2の上壁10を高熱伝導性樹脂材料により形成するとともに、下壁20及び周壁30を低熱伝導性樹脂材料により形成している。これにより、蓄冷剤容器1内に封入される蓄冷剤Tの冷却能力を、容器本体2の上壁10及び金属板Mが存在する冷却トレイの上面側に集中させることができ、金属板M上に載置される物品をより効率的に冷却することができる。また、容器本体2の上壁10及び金属板M以外の部位からは、外部の熱が蓄冷剤容器1内の蓄冷剤Tへ吸熱され難くなるため、蓄冷剤Tの温度上昇が抑制されて蓄冷剤Tの冷却効果の持続時間を延ばすことができる。
【0036】
(4)容器本体2の下壁20には、上壁10側へ向かって膨出する円錐台状の第1規制部21が設けられている。そして、この第1規制部21の先端面21aは、上壁10に設けられる側縁支持部14に溶着された状態となっている。これにより、上壁10と下壁20との間の間隔が一定に保たれて、同間隔を広げようとする蓄冷剤容器1の変形を抑制することができる。さらに、蓄冷剤容器1の変形を抑制することにより、金属板Mの変形や容器本体2からの金属板Mの剥がれも抑制することができる。
【0037】
(5)第1規制部21の先端面21aと金属板Mの下面とを当接させた状態としている。これにより、第1規制部21が金属板Mを下側から支持する構造となって、金属板M上に重量のある物品を載置した場合にも、金属板Mの変形や容器本体2の上壁10からの金属板Mの剥がれを抑制することができる。
【0038】
(6)上壁10に対して、枠状部11よりも上方に膨出する膨出部15を形成している。ところで、蓄冷剤Tの凍結膨張時における蓄冷剤容器1の変形を抑制する方法として、予め蓄冷剤容器1内に凍結膨張時の膨張分を許容する膨張代としての空間部分を設ける方法、つまり、蓄冷剤容器1に対する液体状態の蓄冷剤Tの充填率を100%未満とする方法が考えられる。しかしながら、こうした方法を採用した場合、蓄冷剤Tの凍結時に、金属板Mと蓄冷剤Tとの間に非接触部分(空間部分)が生じて、金属板Mと蓄冷剤Tとの間の熱伝導性が低下してしまうおそれがある。
【0039】
これに対して、上記構成では、容器本体2の上壁10の一部に膨出部15を形成している。そのため、液体状態の蓄冷剤Tを、膨出部15内に膨張代となる空間部分S1を残しつつ、且つ液面が枠状部11よりも高い位置に位置するように封入することを可能にしている。このように蓄冷剤Tを封入した場合には、蓄冷剤Tの凍結時において、上記非接触部分(空間部分)は膨出部15内に形成されることとなり、金属板Mと蓄冷剤Tとを全面的に接触させることができる。したがって、蓄冷剤容器1内に膨張代S1を設けることによる蓄冷剤容器1の変形抑制効果を得つつも、金属板Mと蓄冷剤Tとの間の熱伝導性を好適に確保することができる。
【0040】
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。また、次の変更例を互いに組み合わせ、その組み合わせの構成のように上記実施形態を変更することも可能である。
【0041】
・ 容器本体2の上壁10に対して複数枚の金属板Mを固着する構成としてもよい。たとえば、架橋部12により複数個に区画された貫通孔13の各区画を、それぞれ異なる金属板Mにより覆うように構成してもよい。
【0042】
・ 図3(a)及び(b)に示すように、容器本体2の上壁10の上面側に金属板Mが固着されていてもよい。つまり、上壁10の枠状部11及び架橋部12の上面に金属板Mが固着されていてもよい。この場合、金属板Mの下面が貫通孔13を介して収容空間S側に露出し、金属板Mと蓄冷剤Tとが直接、接触し得る状態となる。この場合、枠状部11及び架橋部12は金属板Mの下面側を支持する下面支持部となる。なお、図3に示す形態では、上壁10の枠状部11に段差部分が設けられ、枠状部11の上面に金属板Mを固着した際に枠状部11の上段部分の上面と金属板Mの上面とが面一となるように形成されている。
【0043】
また、図4に示すように、さらに枠状部11に上面支持部11aを設けて、この上面支持部11aと枠状部11の下段部分との間に金属板Mを挟むように構成してもよい。
・ 架橋部12の数、形状、及び配置位置は特に限定されるものではない。たとえば、枠状部11の一方の対角線上に位置するように架橋部12を形成してもよい。この場合、枠状部11内の貫通孔13は架橋部12によって略三角形状の2つの区画(領域)に区画される。また、架橋部12により区画される貫通孔13の各区画の形状が円形状、楕円形状、多角形状となるように、架橋部12を形成してもよい。なお、架橋部12は省略してもよい。
【0044】
・ 容器本体2の上壁10に対する金属板Mの固着方法は接着剤を用いる方法に限定されない。たとえば、金属板Mの外形寸法を貫通孔13の内形寸法と略同形に設定し、貫通孔13の内側にシール部材(パッキン等)を介して金属板Mを嵌め込むようにして、上壁10に金属板Mを固着してもよい。このように固着した場合にも、金属板Mによって貫通孔13を液密に閉塞することができる。
【0045】
・ 第1規制部21の形状は特に限定されるものではなく、例えば角錐台状に形成してもよいし、下壁20の長手方向や短手方向に延びる突条状に形成してもよい。また、第1規制部21は、上記実施形態のような下方に開口する中空状に限らず、中実状に形成されてもよい。さらには、第1規制部21を下壁20と一体の部材として形成しなくともよく、別体として構成しつつ、上壁10又は金属板Mと下壁20とに固定するように形成してもよい。
【0046】
・ 第1規制部21を設ける数は特に限定されるものではなく、5個以下であってもよいし、7個以上であってもよい。さらに、第1規制部21を省略してもよい。
・ 第1規制部21を設ける位置は、側縁支持部14の下方に位置する部位に限定されるものではなく、例えば金属板Mの下方に位置する部位に設けてもよい。
【0047】
・ 図3及び図4に示すように、容器本体2の上壁10の上面側に金属板Mを固着した場合には、第1規制部21の先端面21aを枠状部11に溶着させるように構成してもよい。また、第2規制部22に代えて下壁20の中央部分に第1規制部21を設け、同第1規制部21の先端面21aを上壁10の架橋部12に溶着させるように構成してもよい。
【0048】
・ 第1規制部21の先端面21aと金属板Mとを互いに固定する構成としてもよい。たとえば、接着剤を用いて固着する構成としてもよい。この場合、第1規制部21によって、容器本体2の上壁10と下壁20との間隔だけでなく、金属板Mと下壁20との間隔についても一定に保つことができる。
【0049】
・ 蓄冷剤Tの封入状態は特に限定されるものではなく、例えば液体の状態において、枠状部11よりも低い位置に液面が位置するように封入されていてもよい。
・ 膨出部15の形状、及び上壁10における形成位置は特に限定されるものではない。たとえば、膨出部15の形状を平面視U字状、L字状、I字状に形成して枠状部11に隣接させてもよい。また、膨出部15を省略してもよい。
【0050】
・ 容器本体2を形成する樹脂材料は特に限定されるものではない。例えば、下壁20のみ、又は下壁20の一部分のみを低熱伝導性樹脂材料により形成し、他の部位を高熱伝導性樹脂材料により形成してもよい。また、一部の周壁30のみ、又は周壁30の一部分のみを低熱伝導性樹脂材料により形成し、他の部位を高熱伝導性樹脂材料により形成してもよい。もちろん、これら材料構成を適宜組み合わせて下壁20及び周壁30を構成することも可能である。このように構成した場合にも、蓄冷剤Tの冷却能力を上壁10側に集中させる効果を得ることができる。
【0051】
また、容器本体2を単一の樹脂材料により形成してもよい。たとえば、容器本体2を形成する単一の樹脂材料として、冷却トレイに一般に用いられる熱伝導性に優れた樹脂材料を用いてもよいし、無機充填剤等を添加して熱伝導性を向上させた樹脂材料を用いてもよい。また、冷却トレイには一般に用いられることのない熱伝導性の低い樹脂材料を用いてもよい。
【0052】
・ 金属板Mは上壁10のみに配置されたが、金属板Mの配置はこれだけに限らない。たとえば、下壁20に配置してもよいし、周壁30に配置してもよい。これら金属板Mの配置構成の場合も、上記実施形態のような上壁10に対する金属板Mの配置構成が適用できる。下壁20、周壁30に金属板Mを配置した冷却トレイでは、物品の間に挿入して使用するときに好適である。
【0053】
・ 容器本体2を第1の部材Aと第2の部材Bとに分ける際の分割構成は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、少なくとも容器本体2の上壁10を構成する部位が第2の部材B側に備えられていればよい。たとえば、容器本体2の下壁20を構成する部位を備える蓋状の第1の部材Aと、容器本体2の上壁10及び周壁30を構成する部位を備える、下方に開口を有する有底箱状の第2の部材Bとに分割されていてもよい。また、2つの第2の部材Bの開口縁同士を溶着して容器本体2を構成することも可能である。
【0054】
・ 第2の部材Bの成形方法は、インサート成形法により金属板Mと一体に成形する方法に限定されるものではない。公知の成形方法(例えば、射出成形)により第2の部材Bを成形した後、この第2の部材Bに対して金属板Mを固着してもよい。
【0055】
・ 容器本体2の上壁10の上面側に金属板Mを固着する場合には、容器本体2を一の部材により一体に成形することもできる。たとえば、ブロー成形により中空の箱状部材を成形し、その上壁10に貫通孔13を形成することにより容器本体2を得ることができる。
【0056】
・ 本実施形態の冷却トレイを保冷材として、例えば保冷を要する物品の輸送や保管に用いる保冷容器(例えばクーラーボックス)内に収納して使用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
【0057】
(イ) 前記金属板は前記容器本体の上壁の上面側に固着され、前記規制部は前記容器本体の下壁の一部を上壁側へ隆起させて形成されるとともに、その先端が前記容器本体の上壁に溶着されていることを特徴とする前記冷却トレイ。
【0058】
(ロ) 前記容器本体の上壁には、前記上面支持部よりも上方に膨出する膨出部が設けられていることを特徴とする前記冷却トレイ。
(ハ) 前記蓄冷剤は液体状態において、前記膨出部内に膨張代となる空間部分を残しつつ、且つ液面が前記下面支持部よりも高い位置に位置するように封入されていることを特徴とする冷却トレイ。
【0059】
(ニ)蓄冷剤を封入して使用される合成樹脂製の蓄冷剤容器であって、中空箱状をなす合成樹脂製の容器本体と、上面の少なくとも一部を外部に露出させた状態で前記容器本体の上壁に配置される金属板とを備え、前記容器本体の上壁には貫通孔が設けられるとともに、前記金属板は前記貫通孔を覆うようにして前記容器本体の上壁に固着され、前記容器本体の上壁に対する前記金属板の固着によって前記貫通孔は液密に閉塞されていることを特徴とする蓄冷剤容器。
【符号の説明】
【0060】
A…第1の部材、B…第2の部材、M…金属板、S…収容空間、T…蓄冷剤、1…蓄冷剤容器、2…容器本体、10…上壁、11…枠状部、13…貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄冷剤容器内に蓄冷剤を封入してなる冷却トレイであって、
前記蓄冷剤容器は、中空箱状をなす合成樹脂製の容器本体と、上面の少なくとも一部を外部に露出させた状態で前記容器本体の上壁に配置される金属板とを備え、
前記容器本体の上壁には貫通孔が設けられるとともに、前記金属板は前記貫通孔を覆うようにして前記容器本体の上壁に固着され、前記容器本体の上壁に対する前記金属板の固着によって前記貫通孔は液密に閉塞されていることを特徴とする冷却トレイ。
【請求項2】
前記容器本体の上壁には前記金属板の上面を支持する上面支持部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の冷却トレイ。
【請求項3】
前記容器本体の上壁と下壁との間には、先端が前記容器本体の上壁及び前記金属板の少なくとも一方に固定されるとともに、基端が前記容器本体の下壁に固定される規制部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷却トレイ。
【請求項4】
前記容器本体の下壁及び周壁の少なくとも一部は、上壁を形成する樹脂材料よりも熱伝導性の低い樹脂材料により形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の冷却トレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−202822(P2011−202822A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68381(P2010−68381)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)