説明

冷却機器及び静電霧化装置及び空気調和機

【課題】冷却部の能力を上げて、長期に渡って安全な、冷却機器を提供する。
【解決手段】冷却機器600は、ペルチェユニット6と、その放熱面に接する放熱部7と、冷却面に接する冷却部8とを備え、放熱部7が、ペルチェユニット6の放熱面と接する面に、前記ペルチェユニット6から露出している放熱露出部73を有する。放熱露出部73には、放熱部7が露出しないように断熱部12が接着されている。断熱部12は、ペルチェユニット6の接着部分を除いた略コの字状または略ロの字状に形成され、断熱部12を放熱露出部73に接着してから、ペルチェユニット6を放熱露出部73に接着する工程を有し、ペルチェユニット6の天面方向または横方向に取り出すリード線と放熱露出部73の間に断熱部12が位置し、断熱部12は、冷却部保持枠63を用いて、放熱部側に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ペルチェユニットを用いた冷却機器、静電霧化現象によりナノメータサイズのミスト(微粒子水)を発生させる静電霧化装置、及び、静電霧化装置を搭載した空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水供給部として、ペルチェユニットと、その放熱面に接する放熱部と、放熱面の反対側に位置する冷却面に接して結露水を生成する冷却部とを備え、冷却部に結露させた水を多孔質体に重力滴下して、多孔質体に高電圧を印加することで水を破砕して空気中に静電霧化現象により生成されたミストを放出する静電霧化装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
空気中から無給水で結露水を得る際に、冷却部の吸熱能力を高めて効率よく結露水を得るために、断熱シートをペルチェユニットの冷却部や放熱部の周囲に配置して、放熱部からの熱影響を軽減しているものがある。(例えば、特許文献2および3参照)。
【0004】
水を高電圧によって破砕して生成されたミストは、粒径が3〜50nm(ナノメートル=10−9メートル)程度で、人体の角質細胞の大きさより小さいため、人体の角質に浸透して肌に保湿効果を付与するものであり、さらに肌表面を親水化する作用も有している。また、高電圧によりミストは帯電しているため、電位差を生じる人に寄りやすくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−090280号公報
【特許文献2】実公平6−41625号公報
【特許文献3】特開平9−112947号公報
【特許文献4】特開2006−090632号公報
【特許文献5】特開2009−090192号公報
【特許文献6】特開2008−142661号公報
【特許文献7】特開2009−133603号公報
【特許文献8】実開平05−026135号
【特許文献9】特開2006−041221号公報
【特許文献10】特開2009−045554号公報
【特許文献11】特開2005−183676号公報
【特許文献12】特開2008−185289号公報
【特許文献13】特開2009−133603号公報
【特許文献14】特開2005−183676号公報
【特許文献15】特開2006−090632号公報
【特許文献16】特開2005−340392号公報
【特許文献17】特開2001−14700号公報
【特許文献18】特開2005−285954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の静電霧化装置は、特許文献1に記載されているように、ペルチェユニットを用いて冷却部を露点以下まで冷却して空気中から結露水を得ていたが、冷却部温度をできるだけ低くして、冷却部温度と露点温度との差を大きくしていた。除湿性能が高まれば、多くの結露水が得られ、素早くミストを生成することができる。
【0007】
しかしながら、冷却部温度を低くする際に、特許文献1の図1に記載のように、冷却部のすぐ近傍に放熱部が存在するため、放熱部の熱対流や熱放射の影響を受けて、冷却部の温度が低くならない、冷却部の温度を低くするために余分なエネルギーを消費する、除湿性能が下がって結露水が得られるまでに時間がかかる、という課題があった。
【0008】
特許文献2のように断熱シートを使用する場合は、シートと放熱部のわずかな隙間から熱流入が起こって性能が低下したり、断熱シートを保持するためのハウジング部材が必要で構成が大きくなったり、断熱シートの位置がずれて隙間から放熱部の熱が更に大きく漏れ出たりする、という課題があり、結果として、ペルチェ素子の性能を損なった。
【0009】
また、ペルチェユニットを放熱部に接着した後から、断熱シートをペルチェユニットと放熱部の間に挟むと、断熱材を的確な位置に貼り難く、また、リード線が邪魔になって、放熱部との間に隙間が発生するという課題もあった。
【0010】
また、放熱部を重力方向と平行に設置した場合に、断熱シートが剥がれる懸念や、断熱シートが落下して冷却部を覆ってしまったり、高電圧部に落ちて火種となってしまったりする、という課題があった。
【0011】
この発明は、コンパクトかつ省スペースな構成で、放熱部からの熱対流や熱放射の影響を削減し、断熱部が剥がれて落下することがない冷却機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の冷却機器は、
放熱面と、この放熱面の反対側に位置する冷却面とを有するペルチェユニットと、
前記放熱面に接し前記放熱面より面積が大きい放熱ベース板を有し、この放熱ベース板の前記放熱面と接する面に、前記放熱面から露出する放熱露出部が形成される放熱部と、
前記冷却面に接する冷却部と、
前記放熱露出部からの熱が大気に伝搬しないように、前記放熱露出部の一部を覆う断熱部と、
前記冷却部の一部を露出させる開口部と、前記冷却部の端部を前記冷却面の方向へと押さえつける冷却部押さえ部と、前記断熱部の一部を前記放熱露出部へ押さえつける断熱部押さえ部とを有する冷却部保持枠と
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る冷却機器は、放熱部からの熱対流や熱放射の影響を確実に削減し、断熱部が剥がれて落下することがなく、長期に渡って安定して冷却効果を維持できる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1を示す図で、冷却機器600(水供給部700)と静電霧化装置100との概略構成図。
【図2】実施の形態1を示す図で、水供給部700概略構成図。
【図3】実施の形態1を示す図で、静電霧化装置150の分解斜視図。
【図4】実施の形態1を示す図で、水供給部保持枠60の斜視図。
【図5】実施の形態1を示す図で、水供給部を水供給部保持枠60で保持した状態を示す図((a)は上面図、(b)は斜視図)。
【図6】実施の形態1を示す図で、静電霧化装置150の縦断面図。
【図7】実施の形態1を示す図で、静電霧化装置100、150のいずれかを備えた空気調和機50の縦断面図。
【図8】実施の形態1を示す図で、水供給部700に断熱部12を接着した状態を示す図。
【図9】実施の形態1を示す図で、水供給部700に断熱部12を接着した状態を示す図。
【図10】実施の形態1を示す図で、冷却部保持枠63を有する冷却機器600(水供給部700)の分解斜視図。
【図11】実施の形態1を示す図で、上下左右に遮断壁62を備えた冷却機器600(水供給部700)の斜視図。
【図12】実施の形態1を示す図で、冷却部保持枠63を用いた水供給部700の詳細図(正面図とAA断面図)。
【図13】実施の形態1を示す図で、冷却部8の重力方向の上端部と、前記放熱部7の重力方向の上端部を揃えた水供給部700の斜視図。
【図14】実施の形態2を示す図で、冷却部保持枠63を用いた水供給部700の詳細図(正面図とAA断面図)。
【図15】実施の形態2を示す図で、冷却部保持枠63の詳細図(表斜視図と裏斜視図と側面図)。
【図16】実施の形態2を示す図で、冷却部保持枠63の変形例を示す図。
【図17】実施の形態2を示す図で、冷却部保持枠63の変形例を示す図。
【図18】実施の形態3を示す図で、放熱部7に目印線14を施した後で断熱部12を接着した水供給部700を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図1乃至図13は実施の形態1を示す図であり、まず、図1により、冷却機器600(水供給部700)と静電霧化装置100の構成を説明する。
【0016】
***実施の形態1の冷却機器600(水供給部700)と静電霧化装置100***
本実施の形態の静電霧化装置100は、図1に示すように、ナノメータ(10−9m)サイズの静電ミスト1を発生するために、水印加電極2と対向電極3とを備えている。
【0017】
水印加電極2は、ともに板状の胴部28と先端霧化部29から成り、胴部28に供給された水を先端霧化部29に移動(搬送)する。先端霧化部29の先端29a(突端)が、対向電極3に向くように配置される。水印加電極2は材料に多孔質体が用いられるが、ここでは特に三次元網目状構造を有する金属多孔質体である発泡金属を用いている。
【0018】
水印加電極2と対向電極3との間には、高電圧電源部4から供給される約4〜6kVの高電圧が、給電端子を介して印加される。ここでは、対向電極3がグランド極となって電位0Vであり、水印加電極2に、−4〜−6kVのマイナスの直流電圧が印加される。
【0019】
水印加電極2の胴部28の形状は略矩形であり、その胴部28の上方には、所定の距離L1の隙間を空けて水供給部700の一部であるペルチェユニット6の冷却面に接する冷却部8の複数の冷却フィン82が略水平方向に積層された状態で位置している。胴部28は、冷却フィン82の積層方向に長辺方向幅(長手方向の幅)を伸ばして形成されている。すなわち、略矩形の胴部28の長辺方向(長手方向)が冷却部8の冷却フィン82の積層方向に略一致している。
【0020】
水印加電極2は、冷却フィン82の下方に所定の距離L1の隙間を空けて位置し、冷却フィン82の積層方向に長手方向(長辺方向)の幅を伸ばす平板状または曲面上の胴部28を有している。そして、胴部28の短辺方向が冷却フィン82の突出方向に略一致している。胴部28は、長辺方向の幅が短辺方向の幅の3倍以上ある細長い形状である。
【0021】
なお、胴部28の形状は略矩形と説明しているが、長辺と短辺のなす角度が直角である完全なる長方形に限定されるものではなく、短辺の長辺に対する角度が鋭角や鈍角である、すなわち、互いが平行な二辺の長辺に対して短辺が直角に接続しない平行四辺形や台形であってもよく、また断面が円形の円柱側面の曲面部にて水を受けても良い。
【0022】
先端霧化部29は、平板状の胴部28の長辺方向(長手方向)となる冷却フィン82の積層方向に伸びる側面途中に胴部28と連続的に形成され、胴部28の長辺方向側面から対向電極3に向かって突出する板状突起であって、その形状は先端29aに向かうほど突起幅が細くなる形状で、先端29aは線状に尖った状態、もしくは線状に尖った状態に近しいくらいまで細い状態となっている。
【0023】
対向電極3は、導電性のある金属もしくは樹脂にて板状に成形されたもので、略中央に開口3aを有している。この開口3aが水印加電極2の先端霧化部29と対向するように、対向電極3は、先端霧化部29の先端29aと一定の距離を隔てて位置している。
【0024】
***実施の形態1の冷却機器600(水供給部700)***
次に水印加電極2よりも上方に位置する水供給部700について説明する。
この実施の形態1では、冷却機器600が水供給部700として機能する場合について説明する。冷却機器600は、以下に説明する水供給部700と同一の構成をとることができるが、冷却機器600により結露水を生成する場合に、冷却機器600が水供給部700として機能する。この実施の形態1では、冷却機器600を水供給部700として機能させ、結露水を生成してミストを発生する静電霧化装置100を説明するが、結露水を生成せず、冷却機器600を単に冷却器として使用する場合でもかまわない。
【0025】
図1に示す静電霧化装置100は、ペルチェユニット6と、そのペルチェユニット6の放熱面に接する放熱部7と、放熱面の反対側に位置する冷却面に接する冷却部8で構成される水供給部700を有する。そしてこの水供給部700で生成した水を水印加電極2の胴部28上面に重力により滴下させて供給する。
【0026】
図2は、ペルチェユニット6と冷却部8と放熱部7とを有する水供給部700の概略構成図である。
ペルチェユニット6は、放熱面(図2の右後面)と、放熱面の反対側に位置する冷却面(図2の左前面)とを有する。
放熱部7は、ペルチェユニット6の放熱面と接する放熱ベース板71と、その放熱ベース板71の反ペルチェユニット側の面に略垂直に立設する複数の放熱フィン72とを有する。放熱ベース板71のペルチェユニット6の放熱面が接している面は、放熱露出部73であり、放熱露出部73からも放熱する。
冷却部8は、ペルチェユニット6の冷却面と接する冷却ベース板81とその冷却ベース板81の反ペルチェユニット側の面に略垂直に立設する複数の冷却フィン82とを有する。
複数の放熱フィン72と複数の冷却フィン82とは、各々のフィンが通過する空気流と略平行となるように通過する空気流と略直交する方向に積層される。ここでは、空気流が概ね重力方向であるため、複数の放熱フィン72と複数の冷却フィン82とは、重力方向とほぼ直交する方向となる略水平方向に積層される。
ペルチェユニット6の放熱面の面積より放熱ベース板71の面積が大きく構成されており、横幅も縦幅も放熱ベース板71がペルチェユニット6の放熱面よりも大きい。
ペルチェユニット6の冷却面の面積より冷却ベース板81の面積がやや大きく構成されており、図2では、冷却ベース板81の縦幅がペルチェユニット6の冷却面の縦幅と同じで、冷却ベース板81の横幅がペルチェユニット6の冷却面の横幅より10%〜20%大きい。
また、冷却部8を効率よく冷却するために、放熱部7の方が冷却部8よりもフィンの表面積が大きく構成されており、横幅も縦幅も放熱部7の方が冷却部8より十分に大きい。
【0027】
ペルチェユニット6内部には、複数のP型N型半導体が交互に直列に接続されている。低電圧電源部5から1〜5V程度の直流電圧がリード線6aを介してペルチェユニット6に印加されると、一方向に電流が流れ、ペルチェ効果によって放熱面の熱量が増え、冷却面では吸熱がなされる。これにより、放熱部7は暖められ、冷却部8は冷却される。放熱部7および冷却部8は、アルミニウムを材料として形成されている。
【0028】
ペルチェユニット6によって、冷却部8の温度が通過する空気の露点以下まで冷やされると、冷却部8の冷却フィン82の表面にはその空気中の水分が結露した結露水10が生成される。生成された結露水10は、重力により冷却フィン82の下端に向けて冷却フィン82の表面を伝って落下し、下端まで集まった後で表面張力を超えると冷却フィン82から重力により下方へ滴下される。
【0029】
***実施の形態1の静電霧化装置100***
ここで冷却部8の重力方向下方には、図1に示すように、この冷却フィン82の下端から下方に所定長さL1の空間を介して水印加電極2が配置されている。冷却部8と水印加電極2は、互いが直接的に接触する部分を有していない。冷却フィン82の下端から滴下された結露水10は、水印加電極2の胴部28上面に落下する。すなわち、水印加電極2の略矩形の胴部28が、冷却フィン82の積層方向に長辺方向を伸ばし、かつ冷却フィン82の真下(直下)に距離L1の空間を隔てて配置されているのである。
【0030】
水印加電極2の先端霧化部29の先端29a近傍まで水(結露水10)が搬送されると、グランド極である対向電極3に対して水印加電極2には、−4〜−6kVのマイナス高電圧が印加されているので、先端29a近傍の水にその高電圧がかかり、水印加電極2と同電位、すなわちマイナスの高電圧に帯電している。そのため、帯電している水は、静電界中のクーロン力の作用によって、先端29aから局所的に水印加電極2の外部へ引っ張られテーラーコーンと呼ばれる盛り上がりを形成する。このときテーラーコーンを形成している水は、水印加電極2に付いているので、引き続き帯電している。そして、作用するクーロン力が水の表面張力を超えることで、テーラーコーンを形成していた水が飛び出し、はじけるように分裂(この分裂はレイリー分裂と呼ばれている)を繰り返し、ナノメータサイズの帯電した静電ミスト1が生成される。静電ミスト1は対向電極3に向かって移動し、対向電極3の開口3aから外部へと放出される。
【0031】
このように生成された静電ミスト1は、単にミストや微粒子水と呼ばれたり、帯電していることから、帯電ミストや帯電微粒子水と呼ばれたりすることがある。また、大きさがナノメータサイズであることから、ナノミストと呼ばれることもある。いずれであっても、水に高電圧をかけ、レイリー分裂により微細化させ生成する帯電したナノメータサイズのミスト(微粒子水)であり、ここでは、このようにして生成されたミストのことを静電ミスト1と呼ぶこととする。また、このように静電ミスト1を生成することを静電霧化と呼び、霧化するとは水をミスト化することである。そして、霧化量とは、静電ミスト1の生成量(発生量)のことである。
【0032】
なお、水供給部700の冷却部8は、必ずしも冷却フィン82を備えていなくてもよく、冷却フィン82を有している場合と比べれば、生成される結露水10の量は減少するが、平板状の冷却ベース板81だけがペルチェユニット6の冷却面に接している構成であってもよい。この場合には、冷却ベース板81が冷却板となって、冷却ベース板81のペルチェユニット6と接する面の反対側の面(冷却フィン82を備える場合であれば、複数の冷却フィン82が突出する面)上に、結露水10が生成され、重力により下端に向けてその面上を伝って落下し、下端まで伝った後で冷却ベース板81から重力により下方へ滴下される。
【0033】
なお、対向電極3は、水印加電極2との電位差を一定に保つために設置しているが、対向電極3を設置しないで気中との放電(気中の浮遊電位との放電)で静電ミスト1を発生させるようにしてもよい。また、この静電霧化装置100を搭載する機器のあらかじめ電位が0V近辺にある部材(例えば、空気調和機の室内機に搭載するとして、室内機内部に設置される室内熱交換器)を対向電極3の代替として用いて、水印加電極2との電位差を保つようにして静電ミスト1を生成するようにしてもよい。
【0034】
この静電霧化装置100では、放熱部7および冷却部8に重力方向、すなわち上方から下方への空気流が通過するが、冷却部8における吸熱量低下を防止して効率よく冷却フィン82の温度を下げるために、冷却部8への通風量(通過する空気流の量)は、放熱部7に比べて少なくしている。その実現手段としては、放熱部7はその上流側を開放状態にして放熱部7を通過する空気流に通風抵抗を与えないが、冷却部8側では、上流側に囲いやリブなどを設けて流入口の開口を制限して通風量を下げる。このように通風量を下げて冷却部8を通過する空気流の流速を0.2〜0.4m/s程度の微風状態まで小さくし、空気流が冷却熱を奪って流出してしまうことを避けている。この結果、冷却フィン82を効率よく冷却できる。通過風速は除湿能力との関係で適宜決定する。
【0035】
そして流速はたいへん小さいが、冷却部8には空気流が存在するので、水分を含んだ新しい空気が入れ替わるように流入することになり、冷却部8周囲の空気が乾燥してしまうことがなく、効率よく冷却された冷却フィン82の表面には、結露水10が安定して生成される。
【0036】
水印加電極2は金属多孔質体から成るものなので、胴部28の上面のどこに結露水10が滴下されても、受け取った水を先端霧化部29に搬送する性質を持っている。すなわち、水印加電極2自身が、水受け取り部であり、水搬送手段であり、かつ霧化部(静電ミスト1の発生部)である、というように、三つの機能を備えている。このため、素早く水を先端霧化部29に集めて、効率よく正確に安定して静電霧化させることができる、という効果を有する。
【0037】
この静電霧化装置100では、冷却部8と、冷却部8に向かって露出している胴部28の上面との間には、空間以外に、冷却部8から滴下する水を集める集水部材や滴下する水を胴部28に案内するガイド部材、また、滴下する水を胴部28に至る前に一時的に溜めておく保水部材などを介在させず、直接的に重力により結露水10を胴部28上面に滴下する。冷却部8から胴部28への水の移動を妨げる要素は何もない。これにより、冷却部8にて生成された結露水10を、短時間で素早く確実に水印加電極2へと供給することができる。
【0038】
***実施の形態1の静電霧化装置150***
次に、図3、図4、図5、図6を用いて、実施の形態1の変形例について説明する。
変形例1の静電霧化装置150が、例えば、空気調和機に搭載した場合に特に好適であるので、変形例1の静電霧化装置150について詳細に説明する。静電霧化装置150を構成する主要な要素は、以下に示す通りである。
【0039】
(1)水供給部700:水供給部700は、既に説明したペルチェユニット6と、そのペルチェユニット6の放熱面に接する放熱部7と、放熱面の反対側に位置する冷却面に接する冷却部8で構成される。ペルチェユニット6は、低電圧電源部5に電気的に接続するリード線6aを有する。
【0040】
(2)冷却部保持枠63:冷却部保持枠63は、樹脂製であり、水供給部700の冷却部8を放熱部7に係合により固定する。詳細は後述する。
【0041】
(3)水供給部保持枠60:水供給部保持枠60は、冷却部8が冷却部保持枠63で放熱部7に固定された水供給部700を、冷却部8側から保持する。冷却部8が冷却部収納部60aに収納される。また、放熱部7が放熱部収納部60bに収納される。冷却部8は、空気流の上流側が水供給部保持枠60で覆われ、幅方向に複数設けられた空気量調整穴61(空気量調整部)によって通過風速および通過風量が制御される。さらに、水供給部保持枠60は、ペルチェユニット6のリード線6a及び水印加電極2に給電端子25を介して接続するリード線25aを口出しするリード線口出し部60cを備える。
【0042】
(4)水供給部抑え枠90:図3に示す水供給部抑え枠90は、冷却部保持枠63と同様樹脂製であり、冷却部保持枠63との間に水供給部700を挟持する。水供給部抑え枠90と冷却部保持枠63との係合は、爪と孔とで行う。また、水供給部抑え枠90は、冷却部保持枠63と同様にペルチェユニット6のリード線6a及び水印加電極2のリード線25aを口出しするリード線口出し部90aを備える。水供給部保持枠60のリード線口出し部60cと水供給部抑え枠90のリード線口出し部90aとで、ペルチェユニット6のリード線6a及び水印加電極2のリード線25aを挟持する。
【0043】
(5)水印加電極2:既に説明済みの図1の静電霧化装置100の水印加電極2と同じものである。但し、静電霧化装置150では、水印加電極2の先端霧化部29が、冷却フィン82の突出方向の面とは反対側の長辺方向側面上に、すなわち放熱部7のフィン突出方向に突出するように配置されている。水印加電極2には、給電端子25を介してリード線25aが接続される。
【0044】
(6)保持枠70:図3に示す保持枠70は、水印加電極2を下方から保持する部材である。保持枠70は外周と胴部28の短辺方向に横断する2つの格子を有して、上面に大きな四角形状の開口を持った箱型形状をしている。短辺方向に伸びた2つの格子は水印加電極2の胴部28を支えるが、2つの格子の間隔は胴部28の長手幅より充分に短い幅をしている。また、保持枠70の下部には、対向電極3を保持する対向電極保持部が形成されている。
【0045】
(7)対向電極3:既に説明済みの図1の静電霧化装置100の対向電極3と同じものである。対向電極3は、保持枠70の対向電極保持部にネジ3cにより固定される。また、対向電極3には接地用のリード線3bが接続される。
【0046】
(8)風防止壁30:風防止壁30は、保持枠70の上部に係合して、水印加電極2を保持枠70とで挟持する。風防止壁30は、水印加電極2の先端霧化部29及び対向電極3を覆う庇と、先端霧化部29の胴部28に対する付け根部分および胴部28の長辺を上方から抑えながら天面方向に向かって伸びて形成されている垂直壁とを備える。
【0047】
胴部28を冷却部8の重力方向下方に配置し、一方、先端霧化部29をペルチェユニット6もしくは放熱部7の重力方向下方に設けている。
【0048】
また、先端霧化部29と所定の距離を介して対向電極3が、放熱部7の下方に設けられる。
【0049】
水印加電極2は、先端霧化部29の根元部分(胴部28に接続する部分)を保持枠70と、風防止壁30の垂直壁30bとで挟持されて位置決めされている。
【0050】
水供給部700の放熱部7は、風がよく通るように空気中に露出している。水供給部700の冷却部8は、過度の空気流入による冷却フィン82の温度上昇を防止するために水供給部保持枠60で覆われ、幅方向に複数設けられた空気量調整穴61によって通過風速および通過風量が制御されている。
【0051】
冷却フィン82の下方には、空間のみを介して水印加電極2の胴部28が設けられている。冷却フィン82から滴下した水滴(結露水10)は、樹脂枠(風防止壁30)などに触れることなく直接胴部28に滴下される。冷却部8を通過した風は、水印加電極2の先端霧化部29の先端29aを通過しないので、水印加電極2の周囲に設けられた複数の開口を通って下方に通り抜けていく。
【0052】
***実施の形態1の空気調和機50***
これより、本実施の形態の静電霧化装置100、150のいずれかを、空気調和機50の内部に搭載した場合について説明する。
図7は実施の形態1を示す図で、静電霧化装置を備えた空気調和機50の縦断面図である。
【0053】
図7に示す空気調和機50は、一般的な壁掛け型のものである。
【0054】
空気調和機50は、室内空気を吸い込む吸い込み口41と、調和空気を室内へ吹き出す吹き出し口42と、室内空気から調和空気を生成する逆V字型の熱交換器51(前面上部熱交換器51a、前面下部熱交換器51b、背面熱交換器51cからなる)と、熱交換器51で結露した水を受けるドレンパン40(二箇所)と、送風ファン43とを備えている。空気調和機50本体の上方に位置する吸い込み口41から送風ファン43の回転によって流入した室内空気は、熱交換器51を通過する際に冷凍サイクルの冷媒と熱交換されて温度湿度が調節されて、送風ファン43を通過して、下方に位置する吹き出し口42から調和空気となって室内に吹き出される。
【0055】
吹き出し口42には、吹き出される調和空気の風向を変更できる左右風向板44と上下風向板45が設置されていて、吹き出し流の吹き出し方向が調整されている。吹き出し流の左右方向の風向を変更可能な左右風向板44が、吹き出し流の上下方向の風向を変更可能な上下風向板45の上流側に位置している。また、ドレンパン40で回収した熱交換器51の結露水は、図示しないドレンホースを通って、屋外に排出される。
【0056】
ここで、この空気調和機50では、静電霧化装置を、前面下部熱交換器51bの風上側(上流側)、もしくは背面熱交換器51cの風上側(上流側)のいずれかであって、ドレンパン40の上方に設置している。ドレンパン40の上方に静電霧化装置100、150のいずれかを設置すれば、冷却部8の結露水10が多量であって余剰水分が生じた場合であっても、ドレンパン40がそのような余剰水分を受け取って、熱交換器51の結露水といっしょに屋外へ排出するので、設置した静電霧化装置の余剰水分が室内へ漏れ出す恐れがない。
【0057】
空気調和機50に静電霧化装置を設置することにより、静電霧化装置から放出された多量の静電ミスト1を、吸い込み口41から吸い込まれた室内空気といっしょに熱交換器51を通過させ、吹き出し口42から調和空気ととともに、室内へ放出させることができる。送風ファン43の回転によって生成される調和空気の吹き出し流に乗って、調和空気とともに静電ミスト1も室内へと放出されるのである。
【0058】
以上のように、空気調和機50は、室内空気を吸い込む吸い込み口と、この吸い込み口から吸い込まれた室内空気と冷凍サイクルの冷媒とを熱交換させ、室内空気から調和空気を生成する熱交換器と、前記調和空気を室内へ吹き出す吹き出し口と、前記熱交換器で結露した水を受けるドレンパンと、前記吸い込み口の下流側であって、前記熱交換器の上流側に、かつ前記ドレンパンの上方に、水供給部700が重力方向と平行に、放熱部が前記熱交換器に対向するように設置された静電霧化装置とを備え、前記静電霧化装置が生成した静電ミストを、前記吹き出し口から前記調和空気とともに室内に放出することを特徴とする。
【0059】
静電霧化装置100、150のいずれかを備えた空気調和機50について、更に詳細に述べる。
【0060】
熱交換器51の風上側に静電霧化装置100、150のいずれかを設置するにあたって、いずれの場合であっても、冷却フィン82や放熱部7のフィンの積層方向が空気調和機50本体の左右方向となるように配置するのがよい。これにより吸い込み口41からの吸い込み空気流が、フィン(冷却フィン82や放熱部7のフィン)に沿って流れるようになって放熱部7の放熱が促進され、冷却部8へスムーズに風が流れて冷却フィン82上で結露量が増加する。
【0061】
また、フィン容積を増加する場合には、幅方向に伸ばせばよく、製造が容易な短いフィン高さのまま実現することができ、全体の奥行きを増やすことなく少ないスペースに設置できる。
【0062】
放熱部7は、熱交換器51に対向した位置に略平行に配置される。この時、所定の隙間(少なくとも4mm以上)を空けることで、放熱部7に対する熱交換器51の暖房時に起こる熱影響を少なくすることができる。熱影響を受けると放熱部7での放熱がされにくくなり、冷却部8での冷却能力が下がってしまう。
【0063】
吸い込み口41からの吸い込み空気流は、熱交換器51に近いほど風速が早い。前面下部熱交換器51bの風上側に、厚み10〜30mm前後の静電霧化装置100,150のいずれかを前面下部熱交換器51bと4〜10mm程度の距離をおいて設置した場合、前面下部熱交換器51bの近傍の風速は、前面パネル46に近い側に比べて2倍程度早い。
【0064】
また、背面熱交換器51cの風上側に設置した場合も同様に、背面熱交換器51cの近傍の風速は、背面カバー47に近い側に比べて2倍程度早い。
【0065】
放熱部7が熱交換器51と向き合うように配置した方が、放熱部7を通過する空気(室内吸い込み空気)流の流量が多くなり、放熱がより促進されてよい。
【0066】
また、冷却部8が熱交換器51から遠く、前面パネル46または背面カバー47に近い側に配置された方が、冷却部8を通過する空気(室内吸い込み空気)流の流量を放熱部7に比べて抑制することができ、吸熱能力を冷却部8の通過風が奪うことなく、冷却フィン82の温度を露点以下まで下げることができる。
【0067】
更に、放熱部7は風がよく通るように空気中に露出していて、冷却部8は過度の空気流入を防止するために水供給部保持枠60で覆われ、冷却フィン82の風上にあって幅方向に一つまたは複数個設けられた空気量調整穴61によって通過風速および通過風量を制御している。
【0068】
このように構成することで、放熱部7の容積を抑えて省スペース性を損なわずに、充分に放熱することができ、冷却部8の温度を充分に低下させて暖房時のような乾燥条件でも結露水を得ることができる。
【0069】
この効果は、前面上部熱交換器51aの風上側に静電霧化装置100、150のいずれかを設置した場合にも得ることができるが、前面上部熱交換器51aの風上側では冷却部8を通過する風が速いため、より空気量調整穴61の開口を小さくする必要がある。空気量の調整は、風速を低下させて風量を低下させることが目的であるので、空気量調整穴61である必要はなく、邪魔となるリブなどを設けて空気量を調整しても良い。
【0070】
また、静電霧化装置100、150のいずれかにより生成される静電ミスト1は、この静電霧化装置が搭載される空気調和機50が設置される室内の空気中の水分を原料としているので、すなわち、室内空気中の水分を結露させ、それを霧化して室内に放出しているものであるので、室内の絶対湿度が上昇することがない。そのため、室内の壁や窓に放出された静電ミスト1に起因した結露が生じることがない。よって、結露による室内の壁等のカビの発生を回避しながら、人の肌水分の蒸発を抑制し、肌表皮水分量を増加させることが可能となる。
【0071】
ペルチェユニット6の両面には、放熱部7と冷却部8を備えるが、冷却部8は放熱部7よりも容量が充分に小さい。放熱部7は放熱量が増えるのでスペースが許す限り大きくするのがよいが、冷却部8は小さくしすぎると表面温度は下がるものの、通過する風量が少なくなるために除湿量(結露量)が低下する。逆に、大きすぎると通過風量が多くなり除湿量(結露量)が増えるものの、通過する空気に吸熱能力を持っていかれてしまうため、表面の温度が充分に下がらない。必要な除湿量に応じて、冷却部8の容量を決めればよいが、冬場(暖房時)の絶対湿度は非常に低く、露点温度は概ね10℃以下であり、相対湿度20%〜30%RHの悪条件では2〜5℃程度である。従って、冷却フィン82の温度を0℃近傍まで下げないと静電ミスト1の原料となる結露水を得ることはできないため、冷却フィン82の容量は放熱部7に比べて充分に小さくするのが好ましい。
【0072】
実施の形態1では、図2に示すように、冷却部8の横幅を放熱部7の横幅より十分小さくする。また、冷却部8の縦幅も放熱部7の縦幅より小さくする。冷却部8を効率よく冷やすために、冷却部8の大きさとペルチェユニット6の大きさを略等しくするとよいが、冷却部8が小さいために、冷却部8の上部または下部または左右には、放熱部7が、ペルチェユニット6の放熱面と接する面に、ペルチェユニット6から放熱露出部73が露出する。
【0073】
放熱露出部73は、放熱部7の土台となる放熱ベース板71の裏面(放熱フィン72を有しない面)であって、ペルチェユニット6を有する面(ペルチェユニットの放熱面と接する面)のペルチェユニット6から露出している部分である。放熱露出部73と冷却部8の距離は、ペルチェユニット6の厚みほどしか離れていないので、1mm〜数ミリ程度の空間距離しかない。本実施の形態では、最短距離は2〜3mmほどである。
【0074】
空気調和機50に設置された状態では、水供給部700を構成するペルチェユニット6、放熱ベース板71、放熱露出部73、放熱フィン72、冷却ベース板81、冷却フィン82は、重力方向に略平行に設置されている。このようにすることで、水供給部700に吸込み口からの空気が、滑らかに水供給部700を通過して空気量を増やすことができて、かつ、空気流を妨げて圧力損失をあげてしまって、空気調和機の送風機の消費電力を上げてしまうことがないため、省エネルギーに貢献できる。
【0075】
また、水供給部700を重力方向に略平行に設置するほうが、ペルチェユニット6、放熱部7、冷却部8をあわせた厚みを薄くすることができて、コンパクトで省スペースに構成できる。
【0076】
***実施の形態1の断熱部12***
次に、図8、図9を用いて、実施の形態1の断熱部12について説明する。
図8に略コの字状に形成した断熱部12aを用いた場合、図9に略ロの字状に形成した断熱部12bを用いた場合を示す。
【0077】
放熱露出部73を流れた空気が、熱対流によって冷却部8に接する空気に混ざると、放熱した暖かい空気が冷却部8の吸熱を妨げてしまい、除湿能力が低下する。また、放熱露出部73から発せられる熱放射によって、冷却部近傍の温度が上がって吸熱を妨げてしまい、除湿能力が低下する。除湿能力が低下すると、結露量が減少するため、水印加電極に水が滴下されるまでの時間が長くなり、ミストが素早く生成できない。
【0078】
そこで、放熱面がペルチェユニットから露出している放熱露出部73に、断熱作用を有するシートで構成された断熱部12を接着する。断熱部12は、放熱露出部からの熱が大気に伝搬しないように、少なくとも放熱露出部の一部を覆う薄い膜・薄い層である。断熱部12は、空気より熱抵抗が高い素材を用いる。
【0079】
断熱部12は、前記ペルチェユニット6の放熱面の形状と略同形状の切り欠き部を有する略コの字状または略ロの字状の断熱膜・断熱層である。
断熱部12の厚みは、ペルチェユニット6の厚みよりも小さい。
【0080】
断熱部12により、冷却部8周囲にある放熱露出部73が空気中に露出しないため、放熱露出部73からの熱対流や熱放射(輻射熱)を遮ることができて、冷却部8の冷却効率が高まり、結露水を素早く得られる効果が得られる。または、放熱露出部73からの熱対流や熱放射(輻射熱)が無いことで、必要な吸熱量が減少され、少ないエネルギーでも十分な吸熱能力(除湿能力)を得ることができて、省エネルギー化できる効果が得られる。
【0081】
断熱作用を有する断熱シート(断熱部12)は、放熱露出部73の表面から隙間を空けて設置すると、隙間から熱が冷却部8に移動するため、図8、図9に示すように、断熱シートは、放熱部7の放熱露出部73の表面に接着させるのがよい。これにより、放熱部7で放熱に寄与する部位を放熱フィン72に限定することができて、放熱露出部73からの熱対流や熱放射を抑制することができるという効果が得られる。
【0082】
断熱部12は、放熱露出部73を隠すだけでなく、熱通過量を抑制することで、より一層の冷却効率を高めることができる。冷却部8の面積が30平方mm〜300平方mm程度の素子において、周囲の放熱露出部73を断熱作用または遮熱作用を有する断熱シートで覆う。シート厚み0.2mm、熱抵抗10℃/W程度では断熱材料を通過した熱が熱放射を与えるため十分な効果が得られなかったが、シート厚み0.5mm以上、熱抵抗30℃/W程度又は熱抵抗30℃/W以上では十分な効果が得られた。
【0083】
断熱部12に断熱シートを使用する場合は、PVC(ポリ塩化ビニル:polyvinyl chloride)、レーヨン、ナイロンなど汎用的なシートを用いてよい。その場合は、熱抵抗を確認して足りなければ厚みを厚くする。または、ウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、架橋ポリエチレン、など空気より熱抵抗が高い素材を用いれば断熱効果は更に高い。
【0084】
また、断熱部12に断熱シートを使用する場合は、あらかじめペルチェユニット6の接着部分に相当する部分をくりぬいた断熱部12を使用する。ペルチェユニット6は、概ね四角形状であるので、四角を切り取った断熱部12は、略コの字状断熱部12aあるいは略ロの字状断熱部12bとなる。これは、断熱部12を接着する工程において、はじめに断熱シートを放熱露出部73に接着してから、ペルチェユニット6を放熱露出部73に接着するためである。
【0085】
なお、断熱部12に断熱シートを用いる場合を説明したが、断熱部12を空気よりも伝熱効果が小さい塗料または接着剤で構成してもよい。
【0086】
断熱部12に塗料を使用する場合は、セラミックを含有した断熱性を有する塗料が挙げられる。これらを0.5mm厚み程度塗布すれば十分な効果が得られる。
【0087】
断熱部12に接着剤を使用する場合は、ペルチェユニット6を放熱部7に接着する際の接着剤を用いれば、別の材料を用意することなく、少ない生産工程で、断熱作用を得ることができる。このとき、接着剤にはシリコンやエポキシ等が含有されており、これらが放熱露出部73を覆うことで断熱作用を及ぼすことができる。
【0088】
***実施の形態1の冷却部保持枠63***
水供給部700は、リード線を有するペルチェユニット6と、その放熱面に接する放熱部7と、ペルチェユニット6の放熱面の反対側に位置する冷却面に接する冷却ベース板81を有している。
また、水供給部700は、この冷却ベース板81の面上に前記水印加電極へ供給する水となる結露水を生成する冷却部8を有している。
図10、図11、図12に示すように、水供給部700は、さらに、放熱部7にひっかけられて取り付けられ、冷却ベース板81の端を放熱部側におさえるようにして冷却部を放熱部に固定する冷却部保持枠63を備えている。
冷却部保持枠63は、全体として額縁形状、窓枠形状をしており、中央に、冷却ベース板81と同じ形状であって、冷却ベース板81を露出させる開口部80を有している。
開口部80の左右には冷却部押さえ部69があり、冷却部押さえ部69は、冷却部8の端部をペルチェユニット6の冷却面の方向へと押さえつけるものであり、具体的には、冷却ベース板81の左右端をペルチェユニット6と放熱部7に押さえつけている。
冷却部保持枠63は、天面(空気流の上流側の側面)または、空気流と平行な側面に、リード線を口出しするリード線口出し部60cを有している。
冷却部保持枠63は、4つのコーナーにL字状のアームと4つの爪64を有している。爪64は、放熱部7の放熱フィン72の間にある放熱ベース板71にひっかけられ、冷却部保持枠63が放熱部7に取り付けられる。前記開口部80から前記冷却ベース板81を露出させるとともに、リード線口出し部60cからリード線6aを天面または側面に口出しする。
冷却部保持枠63の開口部80から天面に向かって、カバー部67がある。
カバー部67は、放熱ベース板71の冷却部8の空気流の上流側の断熱部12をカバーするものであり、断熱部12から漏れ出る熱が冷却部8に来ないようにしているカバーである。
【0089】
リード線6aは、重力方向に出すと滴下水で濡れたり、スペース的に邪魔になったりするので、天面方向または横方向(幅方向)から取り出す。横方向の場合は水が横に伝わる可能性があるので、天面方向が望ましい。
【0090】
まず、はじめに断熱シートを放熱露出部73に接着してから、ペルチェユニット6を放熱露出部73に接着する。
こうすることで、リード線6aの下(リード線と放熱露出部の間)に断熱部12が入り込むので、放熱露出部73に断熱部12が密着する。逆に、リード線6aの上から断熱部12を接着すると、断熱部12が接着できない部位が発生して確実に接着できない。また、断熱部12がよれて経年的に剥がれやすくなる。このような不具合を防止できる。
【0091】
また、ペルチェユニット6を接着する際に、ペルチェユニット6を接着する場所とペルチェユニット6の周囲の断熱部12の端部とに接着剤を塗布する。図10に示すように、ペルチェユニット6と断熱部12との間に放熱露出部73が露出している場合には、その露出している放熱露出部73にも接着剤を塗布する。接着剤は断熱作用のある接着剤を用いる。
あらかじめ接着した断熱部12の端部にオーバーラップさせて、ペルチェユニット6を接着するための接着剤を流し込むことができて、放熱露出部73がわずかであっても空気中に露出することが無いという効果を有する。
【0092】
逆に、ペルチェユニット6を接着した後に断熱部12を接着する場合は、断熱部12が冷却部8にひっかかって断熱部12を接着しにくいといった不具合や、ペルチェユニット6の根元部分にうまく断熱部12が接着できずにペルチェユニット6の根元部分に放熱露出部73が露出した空気露出部が生まれるといった不具合や、ペルチェ素子から伸びるリード線を避けて断熱部12を接着しなくてはいけない不具合や、リード線に邪魔されて空気露出部が生まれるといった不具合が起こりえるので好ましくない。
【0093】
図8に示した略コの字状に形成した断熱部12aを用いた場合と、図9に示した略ロの字状に形成した断熱部12bを用いた場合とのいずれの場合も、断熱部12を放熱露出部73に接着する工程を経てから、ペルチェユニット6を放熱露出部73に接着する工程を実施することで、これらの不具合を解消して、放熱露出部73を空気に曝すことなく確実に断熱することができる。
【0094】
また、略コの字状に形成した断熱部12a、または、略ロの字状に形成した断熱部12bを用いることで、ペルチェユニット6の天面方向に位置する断熱部12がペルチェユニット6の上部にひっかかるので、例え一部の接着剤が剥がれても、断熱部12が落ちることが無い。
【0095】
ペルチェユニット6から天面または側面方向に口出しされたリード線の下側に断熱部12が潜り込むことになるが、その際に、断熱部12があまりにもペルチェユニット6のリード線接続部6bに近接しすぎると、リード線接続部6bに応力や負荷がかかって、長期的な信頼性が得られなかったり、リード線が盛り上がったり折れ曲がったりしてしまう。
【0096】
そこで、図10に示すように、断熱部12とペルチェユニット6のリード線接続部6bまたはリード線接続部6bがある辺または面とは所定の距離を設けて接着する。また、断熱部12は、柔軟な素材で形成する。
このようにすることで、ペルチェユニット6から出たリード線は断熱部12にリード線接続部6b近傍で急に盛り上がって折れ曲がることはなく、応力や負荷が集中的にかからない。所定の距離は、少なくとも0.5mm以上で、好ましくは1mm程度あると好ましい。
【0097】
ただし、放熱露出部73が増加することになるので、断熱部12を接着した後からペルチェユニット6を貼り付けて接着剤を流し込んで、接着剤を断熱部12にオーバーラップさせることで、放熱露出部73を確実に塞ぐ必要がある。
断熱部12とペルチェユニット6のリード線接続部6bとの間には所定の距離を設けて、または、断熱部12とリード線接続部6bがある辺または面との間には所定の距離を設けて、断熱部12が放熱露出部73に接着されていて、断熱部12が放熱露出部73に接着された後で、ペルチェユニット6を放熱露出部73に接着される工程を有するので、断熱部12とペルチェユニット6のリード線接続部6bとの間に位置する放熱露出部73は接着剤が覆っている。
【0098】
また、断熱部12とペルチェユニット6のリード線が無い部分またはリード線がない辺または面との距離は、断熱部12とペルチェユニット6のリード線接続部6bまたはリード線接続部6bがある辺または面との距離よりも小さくする。
または、断熱部12とペルチェユニット6のリード線接続部6bまたはリード線接続部6bがある辺または面との距離は、断熱部12とペルチェユニット6のリード線が無い部分またはリード線が無い辺または面との距離よりも大きくする。
このように、リード線接続部6bが有る部分と前記断熱部12との間隙幅は、前記ペルチェユニット6のリード線が無い部分と前記断熱部12との間隙幅よりも大きい。さらに、断熱部12とペルチェユニット6との間隙に位置する前記放熱露出部73は、接着剤で覆われている。
こうすることで、放熱露出部73の露出を増加させること無く、断熱部12を接着できる。断熱部12とペルチェユニット6のリード線が無い部分との距離は、断熱効果から考えれば0mmが好ましく、接着しやすい効果を得るために0.3mm程度としてもよい。
【0099】
いずれの場合も、経年的に断熱部12の接着が剥がれる懸念があるため、断熱部12を放熱部側に固定する。固定する方法としては、図10、図11、図12に示す、樹脂製の冷却部保持枠63を用いる。冷却部保持枠63は、上下に爪64を備えていて、断熱部12の一部を押さえながら、上下とも放熱部7の一部にひっかけて固定する。詳細には、放熱部7の放熱フィン72の上下面とベース板で形成される隙間にひっかけることができて、バネ力が働いて固定される。または、冷却部保持枠63を断熱部12の一部に押し当てた状態で、放熱部7の一部を介して金属ワイヤー等で応力をかけながらつなげて冷却部保持枠63を固定しても良い。その時にもワイヤーを冷却部保持枠63の上部と下部にひっかけるようにして、バネ力で固定する。
【0100】
冷却部保持枠63が断熱部12を押さえる部分(断熱部押さえ部15)は、断熱部12が剥がれた場合に冷却部8を覆ってしまったり、冷却部8の周辺に落下してしまったりしないように、冷却部8の上部や左右部など冷却部8の周囲の断熱部12を押さえるのがよい。断熱部押さえ部15は、断熱部12の一部を放熱露出部73へ押さえつける子のである。落下を防止する観点から、断熱部押さえ部15は、放熱部7の高さ方向(縦方向)に長く、少なくとも断熱部12(放熱露出部73)の高さ方向の半分の長さを有するリブで、少なくとも冷却部8の左右2箇所の断熱部12をバネ力で押さえるのが良い。
【0101】
冷却部保持枠63が断熱部押さえ部15で断熱部12を押さえてしまうのが好ましいが、押さえなくても、落下防止であれば、断熱部12が例え剥がれても落下しない程度に断熱部12と少しの隙間を空けるか、もしくは応力をかけない程度にぎりぎり当たるような距離で、冷却部保持枠63を設置しても良い。その際は、断熱部12(放熱露出部73)の高さ方向(縦方向)の全部を覆うように設置するのがよい。こうするとこで、断熱部12をバネ力の圧力でつぶさないので、断熱部12の厚さが維持でき高い断熱効果が得られる。
【0102】
断熱部12を放熱露出部73側に固定することで、断熱部12の接着が弱くなった際にも、断熱部12の位置を固定することができ、長期に渡って断熱作用を持続させることができる効果を有する。また、断熱部12の一部が剥がれてしまって、冷却部8を覆ってしまって結露水が得られなくなるといった不具合がない。また、断熱部12の一部が下方に配置された高電圧部に落下して火種になることがない。
【0103】
ところで、冷却部8は、ペルチェユニット6にシリコンやエポキシなどを原料とした水密防止の効果を持った接着剤によって保持されている。同様に放熱部7も、接着剤を用いてペルチェユニット6に固定されている。
【0104】
水供給部700は重力方向に略平行に設置されているので、仮に、温度が低い冷却の繰り返しや10年以上といった長期使用による劣化によってペルチェユニット6への接着が剥がれた場合には、接着部と同様に冷却部8が落下する。そこで、冷却部保持枠63を用いて、冷却部8の一部であって冷却フィン82が無い冷却ベース板81の左右端をおさえて、落下防止をしている。前述したとおり、冷却部保持枠63は、上下部に爪64を二つ備えて放熱部7のフィン上下面とベース板で形成される隙間にひっかけることができる。冷却部保持枠63は、冷却部押さえ部69を備えて、冷却部の左右端を押さえることで、冷却部8への空気流を遮ることが無い。冷却部押さえ部69は、冷却部保持枠63の一部であり、直方体や円形のリブで構成される。
【0105】
冷却部保持枠63を用いれば、ひとつのパーツで、断熱部12と冷却部8の落下防止をすることができて、省スペースかつ安価に構成できる。断熱部12と冷却部8とは、冷却部保持枠63を介して放熱部7に背負われて、上下左右で固定される。そのため、接着剤強度に関係なく、落下が助長されることも、また位置がずれることもなく、長期に渡って性能を発揮することができる。
なお、断熱部12と冷却部8の押さえをそれぞれ別々なパーツで行ってもよい。冷却部8の押さえのみを冷却部保持枠63で行い、断熱部12の押さえを断熱部保持枠という部品で行ってもよい。断熱部保持枠の形状は、冷却部保持枠63から冷却部押さえ部69を除いた形状となる。
【0106】
また、ペルチェユニット6や冷却部8を放熱部7にネジなどで固定する場合に比べて、樹脂製の保持枠は熱伝導性が悪いので、放熱部7の熱が冷却部8に伝わり難く、吸熱性能を著しく落とすことがない。
【0107】
また、冷却部8に放熱露出部73が通過した風が回り込まないように、図11に示すように、冷却部8の左右に1対の遮断壁62(図4、図5も参照)を設けた。冷却部8の左右の遮断壁62により、放熱露出部73を通過した空気は冷却部8に触れることなく下方に流れていく。遮断壁62は、水供給部保持枠60に冷却フィン82と平行に水供給部保持枠60から、放熱部7側に突出している。
【0108】
遮断壁62を断熱部12の上に立てることで、放熱露出部73が空気中に露出することが無い。1対の遮断壁62の距離を断熱部12の幅よりも小さくして、遮断壁62が断熱部12に触れていると更に好ましい。又は、遮断壁62により、断熱部押さえ部15と同様に、断熱部12を押さえてもよい。
遮断壁62は、放熱部7の高さ方向(縦方向)と同じかそれ以上の長さがある。したがって、断熱部12の高さ方向(縦方向)全体にわたって、断熱部12を押さえることができる。
【0109】
また、上部にも遮断壁62を設けることで、上部からの放熱フィン72の熱対流や熱放射の影響をなくすことができる。その際には、冷却部8に空気を通す必要があるため、空気量を調整した穴(図4の空気量調整穴61)が設けられる。
同時に下部にも遮断壁を設けてもよく、空気を通す空気抜き穴が空けられる。上下左右を遮断壁で囲えば、更に熱対流や熱放射の影響をなくすことができる。
【0110】
冷却部8の上部にある放熱露出部73には、断熱部12が接着されているが、断熱材の熱抵抗が低い場合には、わずかに熱が通過してくる。また、断熱材が剥がれた時には、直接冷却部に落下してしまって、冷却フィンが使用できなくなり、除湿する機能を損なう恐れが高い。
【0111】
そこで、特に、冷却部8の重力方向の上流側にある放熱露出部73に接着された断熱材においては、その上から、樹脂製のカバー部67を用いて覆うことで、わずかな通過熱を抑制して、かつ、剥がれた断熱材が細かくなって冷却部に落下しないようにする。カバー部67は、前述の冷却部保持枠の一部を用いて形成すればよい。その際に、冷却部8に空気がよく流入するように、冷却部8の土台(冷却ベース板81)および冷却フィン82が露出するようにカバー部67の厚みを調整する。冷却ベース板81からの冷却フィン82の高さよりもカバー部67の樹脂厚みを薄くすると冷却フィン82の間に空気が流入しやすい。カバー部67の樹脂厚みは、ペルチェユニット6と冷却ベース板81との合計の厚み以下が望ましい。カバー部67の樹脂厚みは、ペルチェユニット6の厚み以下がより望ましい。
【0112】
もしくは、図13に示すように、冷却部8の重力方向の上流側にある放熱露出部73自体が存在しないようにするために、冷却部8の重力方向の上端部と、前記放熱部7の重力方向の上端部を揃えてもよい。この時、高い吸熱性能を得るため、冷却部8の重力方向の高さは、前記放熱部7の重力方向の高さより小さくする。冷却部8の重力方向の上端部と、前記放熱部の重力方向の上端部を揃えることで、冷却部8の重力方向の上流側には断熱部12が不要になり、断熱部12に剥がれや冷却部8への落下を懸念する必要が無い。また、断熱材を通過する熱もないため、より冷却性能が高まる。
図13の場合、断熱部12は、冷却部8の重力方向の下端部まである場合を示している。図13の場合、冷却部8の下流(及び冷却部8の下流の左右)の放熱露出部73を覆う必要はなく、断熱部12の部材を節約することが出来る。また、冷却部8の下流とその左右の放熱露出部73からも放熱が促進できる。
また、図13の場合、断熱部12は、放熱ベース板71の天面(上流側面)まで、覆っている場合を示している。このため、放熱ベース板71の天面(上流側面)からの熱も遮断することが出来る。
なお、図13の場合でも、図8に示した略コの字状に形成した断熱部12aを上下逆にして用いることが出来る。
【0113】
実施の形態2.
(冷却部保持枠63の変形例)
別の課題として、冷却部8の上流側に密接する位置に樹脂製のカバー部67をおいてしまうと、カバー部67の厚みが風をさえぎってしまうため、冷却部8に風が流入しにくくなり、結露量が低下するという課題がある。
【0114】
そこで、冷却部8に開口部89を設けるとともに、冷却部8の上流側には四角形状の開口部88であって、冷却部の上流側に開放している開口部88を設ける。実施の形態2の開口部80は、冷却部8を露出させる開口部89と、開口部89から冷却部8の上流側に拡大した開口部88とを合わせた開口である。開口部89と、開口部88とは連続しており人との開口を形成している。
このように、実施の形態2の冷却部保持枠63の開口部80は、冷却部8の面積より大きい面積の開口を有し、少なくとも冷却部の上流(一方向)側において断熱部12を露出させる。
開口部89の開口形状は、冷却部8の冷却ベース板81と(ほぼ)同じ形状であるが、開口部88の開口形状は、三角形、ホームベース形でもよいが、四角形が望ましい。
【0115】
図14に示すように、実施の形態2の開口部80は、冷却部8を露出させる開口部88と、冷却部8の上流側にある断熱部12を露出させる開口部89とからなる。開口部88と開口部89とが空気流の方向に連続しておりひとつの開口を提供している。
実施の形態2の開口部80は、前記冷却ベース板81の面積より大きい面積の開口を有し、冷却部8を通過する空気流に対して前記冷却部8の上流側では、前記断熱部12が露出している。
【0116】
放熱部7上に断熱部12を接着して、次にペルチェユニット6を接着して、その次に冷却部保持枠63または冷却部保持枠63を上からはめて冷却部8または断熱部12を固定する。すると、冷却部保持枠63の開口部88から冷却部8が空気中に露出される。
開口部89からは、断熱部12が、放熱露出部73を覆って露出している。リード線6aを上流方向に取り出していれば、開口部89からはリード線6aも露出する。
冷却部保持枠63には、リード線口出し部60cが備えられており、冷却部保持枠63により、上流側または横側または側面側へ取り出すリード線の方向を固定することもできる。開口部89は、冷却部8のすぐ上流側にあるが、断熱部12が貼られているため、放熱露出部73からの暖かい空気が冷却部8に流れ込むことは無く、冷却性能が落ちない効果がある。
【0117】
この時、断熱部12の厚みは、ペルチェユニット6の厚みと冷却ベース板81の厚みを足した厚みよりも小さい。こうすることで風が冷却ベース板81にスムーズに流入して、冷却ベース板81に風が触れるため、十分な結露量を確保することが出来る。
【0118】
***実施の形態2の冷却部押さえ部69***
冷却部保持枠63は、冷却部8の両側面にある冷却端部83をおさえている。冷却端部83は、左右にある土台(冷却ベース板81)部分でもよいし、最も左右に位置する冷却フィン82でもよい。冷却部保持枠63は、冷却部8の側面に位置する断熱部12の端部をおさえている。こうすることで、冷却部8に風がきれいに流入するので、結露量が低下することが無い。
【0119】
図14に示すように、冷却部保持枠63は、前記冷却部の端部を抑える2個の冷却部押さえ部69を有している。
冷却部保持枠63の冷却部押さえ部69で冷却端部83を押さえる位置は、冷却端部83の上流側を2箇所おさえて、下流側は開放状態にするとよい。こうすることで、冷却端部83および冷却端部83に面した冷却フィン82も結露部位として使用することができて、より多くの水を回収することが出来るという効果がある。
逆に、冷却端部83の下流側を冷却部保持枠63の一部で覆ったり、おさえたりすると、結露水がせき止められて、水印加電極2に落下しない。
冷却フィンはなるべく体積が小さい方が、同じ吸熱能力では、より冷却部8の温度が低下できるので環境温度との温度差がとれて結露させる場合に好ましい。しかし、冷却部8を小さくすると表面積が小さくなって結露面が減るため、冷却端部83の上流側をおさえて、下流側は開放状態にすることが、より小さい体積で温度を低下させて、かつ、たくさんの結露水を得たい場合に有効である。冷却端部83近傍で得られる水も有効に活用できる。また、同等の結露量を得るための冷却部8の冷却フィン82の体積が小さくなるのでコストも抑えられる。
【0120】
***実施の形態2の冷却部押さえ部69の変形例***
図15に示すように、冷却部保持枠63は、前記冷却部の4角を抑える4個の冷却部押さえ部69を有してもよい。
冷却部保持枠63の冷却部押さえ部69で冷却端部83を押さえる位置は、冷却端部83の上流端と下流端との4箇所をおさえて、その他は開放状態にするとよい。こうすることで、冷却端部83および冷却端部83に面した冷却フィン82も結露部位として使用することができて、より多くの水を回収することが出来るという効果がある。
【0121】
あるいは、図示していないが、冷却部保持枠63の冷却部押さえ部69で冷却端部83を押さえる位置は、冷却端部83の上流端と中間端との4箇所をおさえて、その他は開放状態にするとよい。こうすることで、下流側は開放状態になり、より多くの水を回収することが出来るという効果がある。
【0122】
以上のように、冷却部保持枠63は、少なくとも冷却部8の一部と少なくとも断熱部12の一部を露出させる開口部80(開口部88と89)と、少なくとも冷却部8の端部の一部をペルチェユニットの冷却面に押さえつける冷却部押さえ部69と、少なくとも断熱部の一部を放熱露出部に押さえつける断熱部押さえ部15とを有する。
【0123】
図16に示すように、冷却部保持枠63のリード線口出し部60cを冷却部8の横幅より左右に大きく開口形成してもかまわない。リード線口出し部60cは、本来であれば、リード線2本が通る開口があればよいが、図16に示すように、大きく左右に爪64まで開口することにより、リード線口出し部60cから、空気が流入でき、冷却部8に多くの空気流を導くことが出来る。
【0124】
図17に示すように、冷却部保持枠63の形状を枠状・窓状ではなく、冷却部8の上流にカバー部を全てなくし、U字状にしてもよい。図17に示すように、冷却部8の上流を全て開口・開放することにより、遮蔽されることなく空気が流入でき、冷却部8に多くの空気流を導くことが出来る。
【0125】
実施の形態3.
(目印線14の形成)
断熱部12を放熱露出部73に接着する際に、接着位置がずれると、放熱露出部73がわずかに空気中に露出してしまったり、後の工程でペルチェユニット6が接着しにくかったり、放熱部からはみ出して、別の部材と干渉してしまったり、といった懸念がある。
【0126】
そこで、図18に示すように、放熱部7が有する放熱露出部73には、断熱部12を接着するための位置を指定する目印線14を形成する。放熱部7は、伝熱がよく汎用的なアルミニウムを使用している。放熱部7は、通常2次元断面が同一形状となるような金型を用いた押し出し成形により形成される。放熱部7の金型の一部を四角形に彫るか盛るかすることで、2次元断面は凹部または凸部ができる。このような金型でアルミニウムの放熱部7を形成すると、放熱露出部73に目印線となる凹部または凸部が形成できる。
【0127】
凹部または凸部から成る目印線14は、放熱露出部73の冷却部8の幅方向に少なくとも片側だけに1本、好ましくは冷却部8の左右に1本ずつ合計2本設けられて、断熱部12を接着する際のガイドとなる。略コの字状または略ロの字状の断熱部12の左右端と放熱部7に設けた目印線が一致するように接着する。
【0128】
目印線14は、凸部であると、その凸部分に断熱部が乗ってしまって、断熱部と放熱露出部の間に隙間が生まれたり、断熱部がゆがんだりする可能性があるので、凹部の方が好ましい。凹部であれば、まっすぐに断熱部を貼ることができる。
【0129】
このようにすることで、断熱部12の使用面積を限定することができ、断熱部の面積を少なくできる。また、放熱露出部73の端部は断熱部12を貼らないようにして、爪代わりにした放熱露出部73の端部を放熱部の保持枠にはめて固定具として使用するなど、断熱部12の厚みが邪魔になることなく別の目的に使用することができる。
【0130】
あらかじめ放熱露出部73に、断熱部12を接着するための位置を指定する目印線14を形成しておくことで、ずれることなく確実に指定の位置に断熱部12を接着することができ、放熱露出部73がわずかに空気中に露出してしまったり、後の工程でペルチェユニット6が接着しにくかったり、放熱部からはみ出して別の部材と干渉してしまうことがない、という種々の効果を得られる。
【0131】
また、断熱部12を接着するための位置を指定する目印線14の他に、ペルチェユニット6を接着する位置を指定する目印線を、断熱部12を接着するための位置を指定する目印線14と平行に設置することで、ペルチェユニット6の位置がずれることなく確実に接着することができる。その場合は、それぞれ1本ずつ、少なくとも2本以上の線が放熱露出部73に備えられる。
【0132】
また、空気調和機に設置する際、吸込み口およびフィルターの下流側であって、熱交換器の上流側であって、ドレンパンの上方という狭小なスペースに設置する場合であっても、水供給部700を重力方向と平行にして設置したため、冷却部8とペルチェユニット6と放熱部7からなる厚みが非常に薄くなり、設置がしやすい。冷却部8も放熱部7も厚みは5mm程度であって、足りないヒートシンク容積は空気調和機の幅方向に伸ばせばよく、ペルチェユニット6も厚みはわずか2〜3mmであるので、合計厚みは10〜20mm程度で構成ができる。
【0133】
また、断熱部12を放熱露出部73に接着して、冷却部8の左右両側を、冷却部を露出させたまま、冷却部保持枠63で固定したので、厚みが増えることなく、水供給部700と断熱部12と冷却部保持枠63を1つのユニット化することができて、省スペース、かつ、簡単に空気調和機に組み込むことができるという効果が得られる。
【0134】
以上のように、この実施の形態に係る静電霧化装置は、水供給部700と、前記水供給部700から供給された水を受け取り、高電圧が印加されることで、この水を先端霧化部で霧化させる水印加電極と、を有し静電ミストを生成する静電霧化装置を説明した。
この実施の形態に係る水供給部700(冷却機器600)は、ペルチェユニット6と、その放熱面に接する放熱部7と、放熱面の反対側に位置する冷却面に接し、水印加電極へ供給する水となる結露水を生成する冷却部8と、を備えている。
放熱部7が、ペルチェユニット6の放熱面と接する面に、ペルチェユニット6から露出している放熱露出部73を有する。
放熱露出部73は、設置される面が重力方向と略平行であるとともに、放熱部7が露出しないように断熱部12が接着されている。
断熱部12は、前記ペルチェユニット6の接着部分を除いた略コの字状または略ロの字状に形成される。
断熱部12を放熱露出部73に接着してから、ペルチェユニット6を放熱露出部73に接着する工程を有し、ペルチェユニット6の天面方向または横方向に取り出すリード線6aと放熱露出部73の間に断熱部12が位置し、冷却部保持枠63を用いて、放熱部側に固定するので、放熱部7からの熱対流や熱放射の影響を確実に削減し、水供給部700に備えられた冷却部8の除湿性能を向上して、少ないエネルギーで、多量の結露水を素早く得ることができ、断熱部が剥がれたり落下したりすることが無く、小さな厚みかつ省スペースで、長期に渡って、安定して静電ミストを生成できる、という効果を有する。
【0135】
前述した実施の形態で述べた水供給部700は、冷却機器600の一例である。冷却機器600は水を供給するものである必要はなく、単に、冷却部8で冷却作用を提供するものであってもよい。水供給部700が水を供給する場合でも、重力により滴下する場合でなくてもよく、水路を流れるようにしてもよいし、水だめにためるようにしてもよいし、毛細管現象により水を伝搬する場合でもよい。
【0136】
前述した実施の形態で述べた冷却機器600は、静電霧化装置100、150に使用される場合に限らず、冷却装置、温度制御機、電池、発電機などに使用される場合でもよい。
【0137】
前述した実施の形態で述べた静電霧化装置100、150は、空気調和機50に使用される場合に限らず、冷蔵庫、加湿器、掃除機、空気清浄機、扇風機などに使用される場合でもよい。
【0138】
前述した実施の形態で述べた構成や部品は、適宜、組み合わせて使用することが出来る。
【符号の説明】
【0139】
1 静電ミスト、2 水印加電極、3 対向電極、3a 開口、3b リード線、3c ネジ、4 高電圧電源部、5 低電圧電源部、6 ペルチェユニット、6a リード線、6b リード線接続部、7 放熱部、71 放熱ベース板、72 放熱フィン、73 放熱露出部、8 冷却部、81 冷却ベース板、82 冷却フィン、83 冷却端部、10 結露水、12 断熱部、12a 略コの字状断熱部、12b 略ロの字状断熱部、14 目印線、15 断熱部押さえ部、28 胴部、29 先端霧化部、29a 先端、30 風防止壁、40 ドレンパン、41 吸い込み口、42 吹き出し口、43 送風ファン、44 左右風向板、45 上下風向板、46 前面パネル、47 背面カバー、50 空気調和機、51 熱交換器、51a 前面上部熱交換器、51b 前面下部熱交換器、51c 背面熱交換器、60 水供給部保持枠、60a 冷却部収納部、60b 放熱部収納部、60c リード線口出し部、61 空気量調整穴、62 遮断壁、63 冷却部保持枠、64 爪、67 カバー部、69 冷却部押さえ部、70 保持枠、80 開口部、88 開口部、89 開口部、100 静電霧化装置、150 静電霧化装置、600 冷却機器、700 水供給部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱面と、この放熱面の反対側に位置する冷却面とを有するペルチェユニットと、
前記放熱面に接し前記放熱面より面積が大きい放熱ベース板を有し、この放熱ベース板の前記放熱面と接する面に、前記放熱面から露出する放熱露出部が形成される放熱部と、
前記冷却面に接する冷却部と、
前記放熱露出部からの熱が大気に伝搬しないように、前記放熱露出部の一部を覆う断熱部と、
前記冷却部の一部を露出させる開口部と、前記冷却部の端部を前記冷却面の方向へと押さえつける冷却部押さえ部と、前記断熱部の一部を前記放熱露出部へ押さえつける断熱部押さえ部とを有する冷却部保持枠と
を備えたことを特徴とする冷却機器。
【請求項2】
前記断熱部は、前記放熱面の形状と略同形状の切り欠き部を有する略コの字状または略ロの字状の断熱膜であり、
前記断熱部の厚みは、前記ペルチェユニットの厚みよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の冷却機器。
【請求項3】
前記冷却部が、前記冷却面に接する冷却ベース板を有するとともに、
前記冷却部保持枠の開口部は、前記冷却ベース板の面積より大きい面積の開口を有し、
前記冷却部を通過する空気流に対して前記冷却部の上流側では、前記断熱部が露出していることを特徴とする請求項1又は2記載の冷却機器。
【請求項4】
前記放熱ベース板は、前記断熱部の配置位置を指定する目印線を有し、
この目印線は、前記放熱露出部に形成された凹部または凸部であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の冷却機器。
【請求項5】
前記ペルチェユニットは、一側面にリード線をつなぐリード線接続部を有し、
このリード線接続部が有る部分と前記断熱部との間隙幅は、前記ペルチェユニットのリード線が無い部分と前記断熱部との間隙幅よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の冷却機器。
【請求項6】
前記ペルチェユニットは、リード線を有し、
前記断熱部は、前記リード線と前記放熱露出部の間に配置されたことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の冷却機器。
【請求項7】
前記断熱部と前記ペルチェユニットとの間隙に位置する前記放熱露出部は、接着剤で覆われていることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の冷却機器。
【請求項8】
請求項1〜7いずれかに記載の冷却機器と、
前記冷却部で結露水を生成する水供給部と、
この水供給部で生成された結露水を受け取り、高電圧が印加されることで、この結露水を霧化させ静電ミストを生成する水印加電極と
を備えたことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項9】
請求項8に記載の静電霧化装置を備え、
前記静電霧化装置が生成した静電ミストを、吹き出し口から調和空気とともに放出することを特徴とする空気調和機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2013−53830(P2013−53830A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194116(P2011−194116)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】