説明

冷却流路を有する針床

【課題】針床上で冷却が達成され得る可能性を開示することが本発明の目的である。
【解決手段】編み機の針床(1)は、セグメント化された構成を有する。セグメント(5、6)は、当接面(10、8)を介して互いに接する。例えばセグメント(6)に設けられた冷却流路は、境界面(10、8)の少なくとも一つから延びている。隣接するセグメント(5)は、これらの冷却流路をカバーし、それによって上記冷却流路を閉じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編み機のための針床に関する。
【背景技術】
【0002】
編み機は、例えば編成シリンダ(knitting cylinder)またはダイヤルの形の、あるいはまた平坦な針床の形の針床を備える。針床を冷却することが必要になり得る。これを達成するために、特許文献1は、ニードルシリンダの内周領域に環状の蓋によってシールされる溝を機械加工することを提案している。この蓋の上のコネクタは、冷却水の供給と排出とを可能にする。
【0003】
編み機のシリンダは、比較的大きな直径に達する可能性がある。この場合、環状の蓋もまた対応して大きな直径を有するであろう。発生する温度変動または他の影響に関係なく、上記の蓋は、編成シリンダとの永久的シール(密閉)を形成しなくてはならない。
【0004】
更に特許文献2からは、編成シリンダを冷却するために編成シリンダの内周にコイル状に延びて、または蛇行してこの編成シリンダ内に部分的に固定される冷却パイプを編成シリンダ上に設けることが知られている。
【0005】
更にこの文献参照は、編成シリンダの内周上で供給ラインと排出ラインとに接続された中空空間であって、円周方向に延びる矩形断面を有する中空空間を有する編成シリンダを開示している。
【特許文献1】独国特許第4024101C2号
【特許文献2】独国特許第3938685C2号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これを考慮して、針床上で冷却が達成され得る可能性を開示することが本発明の目的である。この目的は、可能な最も単純な様式で実現できて、信頼できる様式で機能する解決策によって達成されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1による針床によって達成される。
【0008】
本発明による針床は、当接面で互いに接する最小限2個のセグメントからなる。これらのセグメントは好ましくは、互いに接続される。例えばこれらは、当接面上で互いに接着されるか、あるいはこれらはまた適当な手段によって例えば、ねじによって互いに固定(brace)される。当接面は好ましくは、針床に設けられたニードルトリック(needle trick)にまで横切るように延びる。
【0009】
針床を冷却するために上記の針床のセグメントの少なくとも一つは、一つ以上の冷却流路を有する。その際に少なくとも一つの冷却流路は、これらのセグメントのうちの一つのセグメントの当接面に隣接する。これは簡単な製造の可能性を与える。例えば冷却流路は、当接面に向かって開いている溝として設計され得る。この溝および、したがってこの冷却流路は、隣接セグメントによって閉じられるが、この隣接セグメントは、平坦な、あるいは一様に輪郭形成された当接面でこの溝を橋渡しし、それによって上記の溝を閉じる。
【0010】
もし針床が編成シリンダであれば、そのセグメントは好ましくは、それらの当接面が軸方向に互いに隣接するように配置された単一部品または多数部品のリングである。もし針床がダイヤルであれば、そのセグメントは好ましくは、それらの当接面が半径方向に互いに隣接するように配置された単一部品または多数部品のリングである。両方の場合とも、冷却流路は、当接面に隣接する。その結果、セグメントはその次の隣接セグメントの冷却流路を閉じる。別の蓋、閉鎖手段などは、必要とされない。したがって冷却流路は、如何なる追加の設計空間も必要としない。更に、冷却剤がセグメントの冷却流路を、したがって針床を直接循環できるので、個別セグメントの、したがって針床全体の効果的な冷却が達成される。先行技術の場合のように、例えばパイプとセグメント本体との間の熱伝達を制限する境界面は存在しない。
【0011】
環状セグメントは、如何なる場合にも精密機械加工された寸法的に安定で比較的固い要素である。その結果、当接面上の冷却流路のシールは、如何なる技術的困難も表さない。
【0012】
基本的に冷却流路は、一つのセグメントの全周囲に連続的に延び得る。しかしながら好ましくは冷却流路は、個別セクションに分割され、各セクションは、当接面上で例えば20°、45°、60°といった特定の角度範囲に亘ってだけ延びて、それからこの環状セグメントの反対側に変わる。この様式で、高い機械的安定性は、高い冷却効率と結び付けられる。
【0013】
冷却剤、特に冷却油または冷却水を冷却流路に供給するために、また冷却剤を冷却流路から排出するために、好ましくは2個以上のコネクタが設けられる。これらは好ましくは、針床のニードルトリックに平行に整列しており、また冷却流路が設けられているセグメントから始まって、隣接セグメントを経由して、外側前面コネクタにまで延びる。編成シリンダの場合には上記後者のコネクタは好ましくは、下部環状前面に設けられる。ダイヤルの場合にはこれらのコネクタは好ましくは、最も大きな環状セグメントの外周面上に配置される。
【0014】
本発明による実施形態の更なる詳細は、図面、明細書または特許請求の範囲の主題事項である。本明細書は、本発明の基本的態様と種々雑多な状況とに限定される。更なる詳細は、補足的参照のために使用される図面から知ることができる。これらの図面は、本発明の例示的実施形態を示す。これらは、尺度的に正確ではなく、また理解のために必要とされる僅かな詳細部の図解に限定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、円形編み機の編成シリンダ2として構成された針床1を示す。その外周面にこの編成シリンダ2は、好ましくは互いに平行であって、また編成シリンダ2の回転軸3に平行であるニードルトリック4を有する。回転軸3とニードルトリック4は通常、垂直方向に延びる。
【0016】
編成シリンダ2は、回転軸3と同軸であって軸方向に互いに隣接するように配置された最小限2個の、しかしながら好ましくは3個以上の環状セグメント5、6、7からなる。セグメント5、6、7は好ましくは、全円周に亘って連続的に構成され、この程度まで一体のものからなる。しかしながらもし必要であれば、これらは、全周囲の一部だけに亘って延びるセクションから組み立てられることも可能である。
【0017】
セグメント6は、セグメント5、7間に配置される。上記のセグメント6は、反対の軸方向に向いた二つの当接面8、9を有しており、これらの当接面は図1では平坦な環状面として示されている。回転軸3は、当接面8、9が配置され得る平面に垂直な方向に延びる。しかしながらこれらの当接面はまた、回転軸3に関して同心である円錐上に配置されることも可能であり、あるいは輪郭形成されることもできる。
【0018】
セグメント5は、当接面8に相補的に構成されてこの当接面に当接する当接面10を有する。セグメント7は、当接面9に相補的に構成されてこの当接面に当接する当接面11を有する。ニードルトリック4は、セグメント5、6、7を越えて外側に沿って延びる。これらは、連続的または不連続的なニードルトリック側面を持ち得る。個別セグメント5、6、7の半径方向の厚さは、同じ寸法、または図示のように異なる寸法を持ち得る。好ましくは、セグメント5、7間に位置するセグメント6は、最大の半径方向の厚さを有する。セグメント6は好ましくは、ニードルトリック4内に収容された編成用具が動作時に編成ロック(knitting lock)に係合する軸方向位置に位置決めされる。編成ロックは、ニードルシリンダ2の周りにリングのように配置される。ニードルトリック内に、特にセグメント6の領域に保持された編成用具は、編成ロックと相互作用する足部として構成された適当な手段を備える。
【0019】
一つ以上のセグメント5、6、7には冷却流路12が設けられる。本例示的実施形態を参照するとセグメント6は、コネクタ13、14(図3)を介して冷却剤を供給することができる冷却流路12が設けられる。
【0020】
冷却流路12は、平坦な面8、9の少なくとも一つに隣接している。図2から明らかなように本例示的実施形態を参照すると、上記の冷却流路は当接面8と、更に当接面9にも隣接している。上記冷却流路は、当接面8と当接面9から交互に延びる溝15、16、17、18、19、20の形に構成される。各溝のエッジは、当接面8または9によって完全に囲まれる。溝15〜20は、回転軸3の周りに円弧を形成する。これらの数は、必要に応じて決定できる。しかしながらこの数は、図2、3に示されるように、より多くも、より少なくもできる。二つの異なる側の溝は内腔21、22(図3)によって互いに接続され、それによってコネクタ13からコネクタ14に延びて、こうして本質的にセグメント6の全周囲を取り囲むチェーンを形成する。
【0021】
当接面8、9、10、11は好ましくは、接着剤によって、他のシール剤によって、または単に密着嵌合(tight fit)によって、あるいはシール要素(例えばOリング)によって、互いにシールされることができるシール面である。その際に当接面10は、セグメント6の上側に設けられた溝15、16、17をシールする(図2)。これとは反対に当接面11は、下側の溝18、19、20をシールする(図2)。冷却流路は、二つの隣接するセグメント5、6および6、7それぞれの間に画定される。本例示的実施形態ではこれらは、セグメント6内に溝状ポケットとして構成され、単に隣接セグメント5、7によって閉じられる。しかしながら対応する当接面10、11に隣接する溝をセグメント5、7内に設けることも可能である。
【0022】
コネクタ13、14は好ましくは、セグメント6から回転軸3に平行な方向に、また隣接するセグメント7に設けられた内腔と整列して突き出る内腔として構成される。編成シリンダ2の回転を可能にするコネクタは、セグメント7の下側に設けられ得る。
【0023】
円形編み機におけるこれまでに説明された編成シリンダ2の機能は、従来の編成シリンダの機能と同様である。しかしながらそのセグメント6は、冷却剤、例えば冷却水または冷却油によって冷却される。セグメント6を冷却することによって、セグメント5、7も僅かに冷却される。熱交換は、当接面8、9、10、11を介して行われることができる。更に冷却剤は、セグメント6ばかりでなく、当接面10、11を介してセグメント5、7にも接触する。
【0024】
特にニードルロック(needle lock)の領域に発生する熱は、セグメント6を通って流れる冷却剤によって除去される。
【0025】
溝15〜20が異なるセグメント6、7、5に設けられる本発明による実施形態も可能である。これらの溝15〜20はそれから、内腔21、22に適切に接続され、それによって例えば内腔21はセグメント6からその当接面8を経由してセグメント5にその当接面10を経て延びる。これは同様に内腔22にも当てはまり、内腔22も溝15〜20を接続して、例えばセグメント6からその当接面9を経由してセグメント7までその当接面11を経て延びる。
【0026】
本発明による更なる実施形態が提供される。図4は、環状セグメント24、25からなるダイヤル23として構成された針床1を示す。セグメント5、6、7と同様にセグメント24、25は、これらが逆回転しないように、また回転軸3と同心的に配置されるように接続される。セグメント24、25は、当接面26、27を有しており、各々はセグメント24、25の内周および外周側面に形成され、互いに接触するペアとして位置決めされる。ニードルトリック28は、このように形成されたダイヤル23の上側に設けられて、回転軸3に対して半径方向に延びる。
【0027】
前述の例示的実施形態におけるように再び、少なくともセグメント24、25の一つを通って延びる一つ以上の冷却流路29、29’が設けられる。再び冷却流路29は、セグメント24、25の当接面26と当接面27とに交互に接するポケットとして構成された個別の溝29、29’に分割され得る。個別の冷却流路セクション間の接続は、セグメント24の冷却流路セクションとセグメント25の冷却流路セクションとの間の接続オリフィス39によって達成できる。接続オリフィス39の数は、流路セクションの数の関数である。セグメント24、25に位置決めされた二つの流路セクションは、一つの接続オリフィス39に接続される。より詳細には図示されていないコネクタは、冷却剤の供給と排出とを可能にする。所望であればこの原理は、図1による編成シリンダにも適用可能である。
【0028】
図6は、ダイヤル23のセグメント25を示す。その際にセグメント25は、完全に取り巻いている冷却流路29を有する。セグメント25の周りにはセグメント24(図示せず)が配置される。その際にセグメント24は、冷却流路29を有さない。上記セグメント24の当接面26は、セグメント25の当接面27に当接し、それによってセグメント25だけに設けられた冷却流路29の底部を形成する。冷却剤の好適な循環を達成するために冷却流路は、コネクタ13とコネクタ14との間にストリップ(細片)の形をした分離手段39を備える。この結果、コネクタ14を経由してセグメント25に導入される冷却剤が先ずセグメント25の周囲に沿って流れ、引き続いてコネクタ13を通って排出されることが保証される。その結果、可能な最善の冷却作用が達成される。
【0029】
セグメント25内の円周冷却流路29に加えてセグメント24がセグメント25の冷却流路29の反対側に配置される円周冷却流路29’を有することも可能である(図示せず)。この場合、冷却流路29’もまた分離手段39を含む。このような円周冷却流路はまた、編成シリンダ内にも実現可能である。
【0030】
図5は、適当な編成用具30、31を支持する編成シリンダ2とダイヤル23との相互作用を示す。明らかなように特に編成用具31は、種々の位置に足部34〜37を有することが可能であり、それによって編成シリンダ2を冷却するために中心のセグメント6の領域の冷却は十分である。更に図5から明らかなように、これらのセグメントは互いにシールされ得、これは適当な環状溝39によって潜在的に達成される。
【0031】
編み機の針床1は、セグメント化された構成を有する。セグメント5、6は、当接面10、8を介して互いに接する。例えばセグメント6に設けられた冷却流路は、境界面10、8の少なくとも一つから延びる。隣接するセグメント5は、これらの冷却流路をカバーし、それによって上記の冷却流路を閉じる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】編成シリンダの斜視切断模式図である。
【図2】図1による編成シリンダのセグメントの垂直断面斜視図である。
【図3】図2によるセグメントの平面図である。
【図4】ダイヤルの形の本発明の修正された実施形態の垂直断面斜視図である。
【図5】編成シリンダとダイヤルとのより詳細な更に単純化された垂直断面図である。
【図6】図4によるダイヤルのセグメントの斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 針床
2 編成シリンダ
3 回転軸
4 ニードルトリック
5 セグメント
6 セグメント
7 セグメント
8 当接面
9 当接面
10 当接面
11 当接面
12 冷却流路
13 コネクタ
14 コネクタ
15〜20 溝
21 内腔
22 内腔
23 ダイヤル
24 セグメント
25 セグメント
26 当接面
27 当接面
28 ニードルトリック
29 冷却流路
30 編成用具
31 編成用具
32〜37 足部
38 環状溝
39 分離ストリップ/分離手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
当接面(8、10)で互いに接する最小限2個のセグメント(5、6)を備え、
それによって前記セグメント(5、6)の少なくとも一つに少なくとも一つの冷却流路(12)が設けられており、前記冷却流路は一つのセグメント(6)の前記当接面(8)に隣接し、他のセグメント(5)によって閉鎖される、
編み機のための針床(1)。
【請求項2】
前記針床(1)は環状形のセグメント(5、6)を有する編成シリンダ(knitting cylinder)(2)であることを特徴とする、請求項1に記載の針床。
【請求項3】
前記針床(1)は環状形のセグメント(5、6)を有するダイヤル(2)であることを特徴とする、請求項1に記載の針床。
【請求項4】
前記冷却流路(12)は少なくともセクションにおいて前記当接面(8)に沿って延びることを特徴とする、請求項1に記載の針床。
【請求項5】
前記冷却流路(12、29)は環状セグメント(5、6、7、24、25)全体の周りに延びることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載の針床。
【請求項6】
前記セグメント(6)は互いに異なる方向に向いた二つの側に、他のセグメント(5、7)に接する当接面(8、9)を有することを特徴とする、請求項1に記載の針床。
【請求項7】
前記互いに異なる方向に向いた二つの側の各々は溝(15、16、17、18、19、20)の形の冷却流路セクションに接することを特徴とする、請求項6に記載の針床。
【請求項8】
前記冷却流路セクション(15、16、17、18、19、20)は互いに接続されることを特徴とする、請求項7に記載の針床。
【請求項9】
前記冷却流路(12)は前記一つの当接面に沿って、また前記他の当接面(8、9)に沿って交互に延びるように設けられることを特徴とする、請求項6に記載の針床。
【請求項10】
前記冷却流路(12)は液密(fluid−tight)であるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の針床。
【請求項11】
コネクタ(13、14)が前記冷却流路(12)に通じており、前記コネクタは少なくとも隣接するセグメント(7)を通って延びることを特徴とする、請求項1に記載の針床。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−150771(P2008−150771A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−325277(P2007−325277)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(304012943)グローツ−ベッカート コマンディトゲゼルシャフト (46)
【Fターム(参考)】