説明

冷却空気供給方法及び供給設備

【課題】重量及び容積が限定される駐機場脇又は車上に積載される場合においても、圧縮熱による温度上昇分に対応できる高能力の冷却空気供給設備を実現する。
【解決手段】中空ハウジング12に加圧押込み型送風機14で外気aを導入し、熱交換部16を空気流路に配設して外気を冷却し、冷却した空気cを使用先(駐機航空機)116に供給する冷却空気供給設備10であって、該加圧押込み型送風機で中空ハウジング12の内部に形成された大気圧以上の静圧により、該中空ハウジングの底部12aに設けられた排水口22,28,32から該中空ハウジングの底部に溜まった結露水を該静圧により該排水口から結露水タンク20に導入し、該結露水タンクに貯留された結露水を熱交換部16の最上流に配置された予冷熱交換部18に供給して中空ハウジング12内に導入された外気aを予冷するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐機中の航空機、その他冷却空気を必要とする所に冷却空気を送気する冷却空気供給方法及び供給設備に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機が駐機場など地上にいるとき、航空機のキャビンや航空機内部に搭載された機器を冷却する必要があり、このような航空機の内部の冷却には従来より冷却空気が用いられている。特に近年の航空機の運用状況では、駐機して乗客を降ろしてから次の乗客を乗せるまでの時間を短縮し、航空機の運用効率を高めることが求められていることから、低温の冷却空気を供給して冷却時間を短縮することが必要となる。
【0003】
航空機は、成層圏等の高空を飛行する関係から、機体は高い気密度をもつように製作されている。そのため、航空機に低温の冷却空気を効率良く供給するためには、外気を加圧押込み型送風機の送気用ブロアで1、000mmAq以上の高圧にして送気する必要がある。しかし、外気を送気用ブロアで圧縮すると、外気は10℃以上昇温されて冷却用熱交換器に導入される。
【0004】
例えば、特許文献1(特開平3−291430号公報)には、駐機航空機に冷却空気を供給する空調ユニットが開示されている。この方法は、送風機によって送られる外気を送風機と冷水を用いた熱交換器の間に設けられたヒートパイプによって冷却することにより、送風機によって生じた圧縮熱を除去し、その後、外気を冷水熱交換器で冷水と熱交換させることにより、冷水熱交換器の冷却負荷を軽減するようにしたものである。
【0005】
特許文献2(特開2004−232979号公報)には、航空機等が駐機場にいるときに、内部に搭載された機器などを冷却する冷房装置が開示されている。この冷房装置は、送風機の前後にプレクーラとアフタクーラとを直列に配置し、予備冷却と本冷却とによって導入した空気を冷却することで、空気の冷却効率を向上させるようにしたものである。
さらに、特許文献3(特開2008−39208号公報)には、駐機航空機等に冷却空気を送気する冷却空気供給設備において、霜の発生を最小限に抑えて、長時間連続して低温の空気を効率よく供給できるようにした装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−291430号公報
【特許文献2】特開2004−232979号公報
【特許文献3】特開2008−39208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1〜3に開示された方法は、いずれも、高気密構造を有する航空機の機体に冷却空気を送るため、送気用ブロアで圧縮した冷却空気を機体に供給している。しかし、外気が送気用ブロアで圧縮されるため、そこで圧縮熱により10℃程度昇温する。この昇温された外気を冷却空気供給設備で冷却するので冷却効率が低下するという問題がある。
近年では、冷却空気の体積を縮小して冷却効率を高めるため、送気用ブロアで外気をさらに高圧に圧縮して冷却する場合もあり、この場合、外気は40〜50℃程度昇温される。この高温の外気を−2〜−4℃に冷却して駐機航空機に供給する冷却能力が求められている。
【0008】
駐機航空機に供給する冷却空気供給設備は、大きな国際空港では建物内に設置される場合もはあるが、多くは、屋外駐機場脇、又は任意の駐機場に対応するため、重量及び容積が限定される車上に積載されている。そのため、送気用ブロアで昇温された40〜50℃程度の冷却負荷の増加分に対応するために冷凍機及び熱交換器等の冷凍機器を大きくすることができないという問題がある。
【0009】
従って、本発明は、冷却空気供給設備を屋外駐機場脇、又は重量及び容積が限定される車上に積載する場合においても、圧縮熱による送風空気の温度上昇分に対応できる高能力の冷却空気供給設備を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の冷却空気供給方法は、
中空ハウジングに加圧押込み型送風機で外気を導入して該中空ハウジング内に空気流路を形成させ、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を備えて冷凍サイクルを構成する冷凍機の該蒸発器として機能する熱交換器を該空気流路に配設して外気を冷却し、冷却した空気を該中空ハウジングに設けた冷却空気供給ダクトを介して使用先に供給するようにした冷却空気供給方法において、
前記加圧押込み型送風機により前記中空ハウジングの内部に大気圧以上の静圧を形成させ、該中空ハウジングの底部に溜まった結露水を該静圧により該中空ハウジングの底部に開口した排水口及び該排水口に接続された排水管を介して結露水タンクに導入し、
該結露水タンクに貯留された結露水を前記熱交換器より上流側の空気流路に配設された予冷熱交換部に供給し、結露水と外気とを熱交換して送風空気を予冷するようにしたものである。
【0011】
本発明方法は、外気の冷却によって生じる結露水を利用して外気を予冷するようにしたものである。その際、加圧押込み型送風機により中空ハウジング内に生じた大気圧以上の静圧を利用して結露水を結露水タンクに導入する。そのため、結露水を結露水タンクに送るために何らの動力も必要としない。
【0012】
そして、結露水タンクから結露水を予冷熱交換部に供給し、送風機による圧縮作用で昇温した外気と結露水とを熱交換させ、結露水の気化熱を外気から奪って外気を予冷するので、外気から圧縮熱を効率良く除去することができる。その後、外気を冷凍機を構成する熱交換器により本冷却するので、冷凍機や熱交換器等の冷凍機器の冷却能力を増大させることなく、外気を所要の低温まで冷却できる。従って、これら冷凍機器を屋外駐機場脇に設けたり、あるいは車両に搭載できる範囲に小型に維持できるため、任意の場所に駐機された航空機の冷却に対応できる。
なお、熱交換器として、熱交換効率が高いプレートフィンチューブ型熱交換器を用いるとよい。
【0013】
本発明方法において、前記排水管に流量調整弁を設け、該排水管を流れる結露水の流量を調節することにより、前記排水管に空気が混入するのを防止するようにするとよい。
該流量調整弁の絞り効果により、中空ハウジング内を高静圧状態に維持し、中空ハウジング内の空気が排水口から排水管に混入するのを防止し、結露水のみを結露水タンクに回収できる。これによって、結露水を効率良く収集できると共に、結露水を予冷熱交換部に供給するのが容易になる。
【0014】
さらに、前記排水管を透明な材質のホースで構成し、該ホース内の混入空気の有無を外部から目視可能にするとよい。これによって、該ホース内を目視しながら流量調整弁の絞り度の調整が可能になり、排水管に空気を侵入させないための流量調整弁の操作が容易になる。
【0015】
また、複数個の排水口及び排水管を空気流路の上流側から下流側に亘って分散配置し、各排水管を結露水タンク又は該結露水タンクの上流側で該結露水タンクに接続された排水本管に夫々個別に接続すると共に、該結露水タンク又は排水本管との接続部に対して上方から高低差をもうけて供給することにより、逆流を防止するようにするとよい。
各排水口で空気圧が異なるため、各排水管を接続すると、結露水の逆流が生じるおそれがある。前記とすることにより、これを防止できる。
【0016】
次に、前記本発明方法の実施に直接使用可能な本発明の冷却空気供給設備は、
中空のハウジングと、該中空ハウジングに外気を導入する加圧押込み型送風機と、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を備えて冷凍サイクルを構成する冷凍機とを備え、該蒸発器として機能する熱交換器を該空気流路に配設して外気を冷却し、冷却した空気を該中空ハウジングに設けた冷却空気供給ダクトを介して使用先に供給するようにした冷却空気供給設備において、
前記熱交換器を配設した中空ハウジングの底部に設けられた結露水の排水口、及び該排出口に排水管を介して設けられた結露水タンクと、
該中空ハウジング内の該熱交換器より上流側の空気流路に設けられた伝熱管からなる予冷熱交換部とを備え、
前記加圧押込み型送風機により中空ハウジングの内部に形成された大気圧以上の静圧により該中空ハウジングの底部に溜まった結露水を該排水口から該結露水タンクに導入し、該結露水タンクに貯留された結露水を該予冷熱交換部に供給して外気を予冷するように構成したものである。
【0017】
本発明装置では、中空ハウジング内の静圧が加圧押込み型送風機による圧縮作用によって大気圧以上となる。外気の冷却によって生じた結露水をこの静圧を利用して結露水タンクに導入できるので、結露水を結露水タンクに導入するのに何らの動力を必要としない。
結露水タンクに一旦貯留された結露水は、熱交換器より上流側の空気流路に配設された予冷熱交換部に供給され、そこで結露水と外気を熱交換し、結露水の気化熱を外気から奪って外気を予冷する。
そのため、送風機による圧縮熱を付与された外気から該圧縮熱を予冷熱交換部で効率良く除外でき、その後、冷凍機を構成する熱交換器で本冷却するので、冷却効果を向上できる。
【0018】
従って、冷凍機器を大型化することなく、冷却能力を向上できるので、冷却空気供給設備を屋外駐機場脇に設けたり、あるいは車両に搭載できる範囲に小型に維持できるため、任意の場所に駐機された航空機の冷却に対応できる。
【0019】
本発明装置において、前記予冷熱交換部を構成する伝熱管の内面に接するように円筒形状のメッシュ部材を設け、該メッシュ部材に結露水を保有させるようにして結露水と外気との熱交換効率を向上させるように構成するとよい。該メッシュ部材として、例えば、金網等を用いるとよい。
該メッシュ部材のメッシュウィック効果により、結露水を伝熱管の内周面に常時接した状態で流動させておくことができるので、冷却効果を向上できる。
【0020】
また、本発明装置において、結露水タンクを密閉タンクとし、該結露水タンクの高さ方向中間部に前記排水管の開口を設けると共に、底部に前記予冷熱交換部に結露水を供給する配管の開口を設けるようにするとよい。
これによって、中空ハウジング内の高静圧を利用した結露水の結露水タンクへの回収と、予冷熱交換部への結露水の供給が容易になる。
【0021】
また、本発明装置において、予冷熱交換部を構成する伝熱管の上流側と下流側にヘッダを設け、結露水を該下流側ヘッダから上流側ヘッダに向けて流し、外気に対して対向流を形成させるように構成するとよい。
これによって、外気と結露水とのカウンターフロー効果で、予冷熱交換部の入口から出口まで外気と結露水との温度差を維持できるため、予冷熱交換部における導入外気の冷却効果を向上できる。
【0022】
また、本発明装置において、前記中空ハウジング、前記送風機及び前記冷凍機を単一の車両内に収納し、該車両を駐機航空機の近くに駐車させ、前記冷却空気供給ダクトを介して該駐機航空機に冷却空気を供給するように構成するとよい。
これによって、冷却空気供給設備を自由な場所に移動させることができるため、航空機の駐機場所に係わらず、冷却空気を供給することが可能となる。
本発明装置では、加圧押込み型送風機の圧縮作用で付与された外気の圧縮熱を予冷熱交換部で除去しているので、冷凍機や熱交換器等の冷凍機器を大型化することなく冷却能力を向上できるので、冷却空気供給設備を単一の車両に搭載できる。
【発明の効果】
【0023】
以上記載のごとく本発明方法によれば、中空ハウジングに加圧押込み型送風機で外気を導入して該中空ハウジング内に空気流路を形成させ、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を備えて冷凍サイクルを構成する冷凍機の該蒸発器として機能する熱交換器を該空気流路に配設して外気を冷却し、冷却した空気を該中空ハウジングに設けた冷却空気供給ダクトを介して使用先に供給するようにした冷却空気供給方法において、前記加圧押込み型送風機により前記中空ハウジングの内部に大気圧以上の静圧を形成させ、該中空ハウジングの底部に溜まった結露水を該静圧により該中空ハウジングの底部に開口した排水口及び該排水口に接続された排水管を介して結露水タンクに導入し、該結露水タンクに貯留された結露水を前記熱交換器より上流側の空気流路に配設された予冷熱交換部に供給し、結露水と外気とを熱交換して外気を予冷するようにしたことにより、加圧押込み型送風機の圧縮作用で昇温された外気の圧縮熱を、冷熱源として結露水を用いた予冷熱交換部で結露水の気化熱を利用して効率良く除去できるため、冷凍機及び熱交換器等の冷凍機器の大型化による冷却能力の増大を図る必要がなく、屋外駐機場脇に設けたり又は車上に積載できる範囲に小型に維持できる。
従って、本発明方法によって、重量及び容積が限定される車上に積載される場合においても、冷却能力を維持できるので、駐機航空機等任意の場所にある使用先に冷却空気を供給できる。
【0024】
また、本発明装置によれば、中空のハウジングと、該中空ハウジングに外気を導入する加圧押込み型送風機と、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を備えて冷凍サイクルを構成する冷凍機とを備え、該蒸発器として機能する熱交換器を該空気流路に配設して外気を冷却し、冷却した空気を該中空ハウジングに設けた冷却空気供給ダクトを介して使用先に供給するようにした冷却空気供給設備において、前記熱交換器を配設した中空ハウジングの底部に設けられた結露水の排水口、及び該排出口に排水管を介して設けられた結露水タンクと、該中空ハウジング内の該熱交換器より上流側の空気流路に設けられた伝熱管からなる予冷熱交換部とを備え、前記加圧押込み型送風機により中空ハウジングの内部に形成された大気圧以上の静圧により該中空ハウジングの底部に溜まった結露水を該排水口から該結露水タンクに導入し、該結露水タンクに貯留された結露水を該予冷熱交換部に供給して外気を予冷するように構成したことにより、前記本発明方法と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る冷気供給設備の正面視全体概略構成図である。
【図2】前記冷気供給設備の平面図である。
【図3】図2中のA−A線に沿う側面断面図である。
【図4】前記冷気供給設備の予冷熱交換部18の斜視図である。
【図5】前記予冷熱交換部18の伝熱管38の斜視図である。
【図6】前記冷気供給設備に用いられるボール弁68の断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係り、冷気供給設備を用いた駐機航空機への冷却空気の供給の概略構成図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係り、冷気供給設備を駐機場脇に設置して、駐機航空機へ冷却空気を供給する状態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。但しこの実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではない。
【0027】
(実施形態1)
本発明の第1実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る冷却空気供給設備の概略構成図である。図1において、本実施形態の冷却空気供給設備10は、冷却手段が設けられ外気を導入して冷却し冷気をつくる中空ハウジング12と、中空ハウジング12に冷熱源となる冷媒を供給する冷凍機80とからなる。図2は中空ハウジング12の平面視概略図であり、図3は図2中のA−A線に沿う側面断面図である。
【0028】
図1において、冷凍機80は、冷媒循環路82と、冷媒循環路82に介設された圧縮機84及び凝縮器86と、冷媒循環路82に並列に接続された配管92及び94に夫々介設された膨張弁88a及び88bと、配管92及び94に夫々介設され、蒸発器として機能し中空ハウジング12の空気流路に配設され外気と熱交換して外気を冷却する第1熱交換ブロック90a及び第2熱交換ブロック90bとで構成されている。凝縮器86には、凝縮器86に冷風を与えて冷媒を凝縮させるファン96が設けられている。
【0029】
本実施形態では用いなかったが、圧縮機84の下流側且つ凝縮器86の上流側の冷媒循環路82にオイルを分離するオイルセパレータを設けたり、凝縮器86の下流側且つ膨張弁88a、88bの上流側の冷媒循環路82に、凝縮器86で凝縮した冷媒を貯留すると共に液相冷媒と気相冷媒とを分離するレシーバータンクを設けてもよい。
【0030】
中空ハウジング12の一端(入口側)には加圧押込み型送風機14が設けられ、ここから空気(外気)aが中空ハウジング12の内部に導入される。中空ハウジング12の中央には、空気流路の上流側から順に配設された予冷熱交換部18、第1熱交換ブロック90a及び第2熱交換ブロック90bからなる熱交換部16が構成されている。空気(外気)aは加圧押込み型送風機14によって高圧となって熱交換部16に導入される。
そのため、中空ハウジング12内は、大気圧以上の静圧が形成される。この静圧によって冷却空気を駐機航空機などの使用先に送る圧力勾配が発生し、中空ハウジング12内で外気aは矢印b方向に流れる。
【0031】
空気(外気)aは熱交換部16で冷却されるため、熱交換部16で結露水が発生する。熱交換部16の下方の中空ハウジング12の底面12aに、結露水を集める凹溝22が設けられ、凹溝22に開口する第1排水管26が設けられている。第1排水管26の他端は、排水本管24との接続部に対し高低差をもうけて上方から接続され、排水本管24を介して中空ハウジング12の上方に設けられた結露水タンク20に接続されている。
【0032】
凹溝22とは異なる場所の中空ハウジング12の底面12aに開口する排水口30が設けられると共に、排水口30に第2排水管28が接続されている。第2排水管28の他端は、第1排水管26と同様に、排水本管24との接続部に対し高低差をもうけて上方から排水本管24に接続されている。さらに、凹溝22及び開口30とは異なる場所で中空ハウジング12の底面12aに開口する排水口34が設けられると共に、排水口34に第3排水管32が接続されている。第3排水管32の他端は、第1および第2排水管26,28と同様に、排水本管24との接続部に対し高低差をもうけて上方から排水本管24に接続されている。排水本管24は結露水タンク20の高さ方向中間部に接続されている。
【0033】
送風空気が流れる凹溝22と、送風空気が流れない排水口30及び34とでは圧力が異なるため、第1〜第3排水管26,28,32を直接接続すると、逆流が生じるおそれがある。これを防ぐため、第1,2および第3排水管26,28,32は、排水本管24まで個別に配設され、さらに排水本管24との接続部に対し高低差をもうけて上方から排水本管24に接続されている。
【0034】
図2及び図3に示すように、第1熱交換ブロック90a及び第2熱交換ブロック90bは、空気流路の流れ方向(矢印b方向)に向けて並設された多数のプレートフィン98と、プレートフィン98間に架設された複数の蛇行配管100と、熱交換ブロックの一側に立設された下流側ヘッダ102及び上流側ヘッダ104で構成されている。下流側ヘッダ102は蛇行配管100の下流端に接続され、上流側ヘッダ104は蛇行配管100の上流端に接続されている。
【0035】
そして、冷媒を配管92又は94から下流側ヘッダ102に供給し、蛇行配管100を経て上流側ヘッダ104から排出する。このように、冷媒を空気(外気)aとカウンタフローさせることにより、蛇行配管100の入口から出口に亘り冷媒と空気(外気)aとの間に温度差を保つことができ、空気(外気)aの冷却効果を向上できる。
【0036】
次に、図4及び図5により、予冷熱交換部18の構成を説明する。図4において、予冷熱交換部18は、空気(外気)aの流れ方向と平行に並設された多数のプレートフィン36と、プレートフィン36間に架設された複数の伝熱管38と、プレートフィン群の一側に立設された下流側ヘッダ40及び上流側ヘッダ42とで構成されている。下流側ヘッダ40は上流側ヘッダ42より空気(外気)aの流れ方向下流側に配置されている。伝熱管38は、下流側ヘッダ40からプレートフィン36を横切るように延設され、ヘッダ配置側と反対側で逆方向に一段上方に屈曲して上流側ヘッダ42に接続されている。
【0037】
結露水タンク20の底部には、結露水タンク20から結露水wを予冷熱交換部18に供給する配管44が接続され、配管44の他端は、下流側ヘッダ40の最下部に接続されている。上流側ヘッダ42の上端には、空気(外気)aと熱交換した後の結露水を排出本管46に排出する排出管48が設けられている。
【0038】
図5に示すように、伝熱管38の内部に、円筒形状をなしメッシュ状の金網39が挿入されている。金網39の外周面は伝熱管38の内周面に接するように配置され、金網39のメッシュ度は、例えば80メッシュとしている。金網39を伝熱管38内に挿入しておくことで、結露水が金網39に保有され、結露水が常に伝熱管38の内周面に接して流動するので、結露水と空気(外気)aとの熱交換効率を高め、空気(外気)aの冷却効果を向上できる。
【0039】
図1において、配管44には、メンテナンス時等において伝熱管38内の結露水wを直接排出本管46に排出する排出管50が接続されている。第1排水管26、第2排水管28及び第3排水管32には、夫々流量調整弁52、54及び56が介設されている。排出管50には開閉のための電磁弁58及び流量調整弁59が介設されている。第1〜第3排水管26,28又は32は、流量調整弁52,54又は56の取付部を除いて透明な材質のホースで構成され、内部を流れる結露水を目視できるようになっている。
【0040】
中空ハウジング12の出口部に設けられた傾斜面12cには、空気(外気)aが熱交換部16で冷却された冷却空気cを駐機航空機等に送る冷却空気供給ダクト60が接続されている。中空ケーシング12の入口部の傾斜面12bには、結露水を排出本管46に排出する排出管62が設けられ、排出管62には流量調整弁64が介設されている。冷却空気供給ダクト60の下方の傾斜面12cには、結露水を排出本管46に排出する排出管63が設けられ、排出管63には流量調整弁65が介設されている。
また、第1排水管26と排出本管46とを接続する排出管66が設けられ、排出管66には電動モータ68aで作動するボール弁68が介設されている。また、排出管48には流量調整弁49が介設されている。
【0041】
次に、ボール弁68の構成を図6により説明する。図6において、ボール弁68は、電動モータ68aの出力軸に一体結合した軸70と、軸70に一体形成されたボール弁体72とを備え、ボール弁体72を駆動させることで配管66の開閉を行なう。ボール弁68を用いることにより、配管66流れる結露水にごみなどの夾雑物が混じっていても、ボール弁体72に夾雑物が詰まることがなく、排出管66の開閉を故障なく行なうことができる。
【0042】
かかる構成の本実施形態において、加圧押込み型送風機14によって中空ハウジング12内に導入された空気(外気)aは、熱交換部16で冷却された後、冷却空気cとなって冷気供給ダクト60から駐機航空機等の使用先に供給される。
外気aは、加圧押込み型送風機14によって中空ハウジング12内で大気圧以上の高圧となると共に、加圧押込み型送風機14による圧縮で中空ハウジング外の空気温度より40〜50℃程度昇温されて熱交換部16の最上流側にある予冷熱交換部18に導入される。
【0043】
外気aは、予冷熱交換部18、第1熱交換ブロック90a及び第2熱交換ブロック90bからなる熱交換部16を流れる際に、冷凍機80の冷媒の気化潜熱で冷却され、そのとき飽和水蒸気以上の水蒸気が凝縮して結露水が発生する。
結露水は、熱交換部16の下方で中空ハウジング12の底面12aに溜まり、中空ハウジング12内に形成された大気圧以上の静圧により、凹溝22及び排水口30及び34から第1排水管26、第2排水管28及び第3排水管32に押し出される。そして、結露水は結露水タンク20に到達し、結露水タンク20に貯留される。
【0044】
この際、前記第1〜第3排水管に設けられた流量調整弁52,54、及び56で結露水の流量を調節し、該第1〜第3排水管に空気(外気)aが混入するのを防止する。第1〜第3排水管26,28及び32は、透明な材質で構成されているので、空気(外気)aの混入有無を目視できる。
【0045】
結露水タンク20に貯留された結露水wは、重力により配管44を介して予冷熱交換部18の下流側ヘッダ40の最下部に供給される。その後、結露水wは伝熱管38に分流導入されて、ヘッダ配置場所と反対側のリターン部のベント部で1段上方の伝熱管38に導入されて、上流側ヘッダ42に集合する。結露水は伝熱管38を流れる時、空気(外気)aと熱交換し、空気(外気)aから気化熱を奪って空気(外気)aを冷却する。
その後、空気(外気)aの圧縮熱により気化した結露水の蒸気は、上流側ヘッダ42の上端部に接続された排出管48を経て排出本管46に流れ、装置外に排出される。
【0046】
本実施形態によれば、予冷熱交換部18で、空気(外気)aから結露水wの気化熱を奪うことで空気(外気)aの圧縮熱を効率良く除去できる。また、予冷熱交換部18を構成する伝熱管38の内部には金網39が配置されているので、金網39のメッシュウィック効果により、金網39に結露水を常時保有させ、結露水を伝熱管内壁面に常時接触させておくことができる。これによって、外気aと結露水との熱交換効率を高め、外気aの冷却効果をさらに高めることができる。
予冷熱交換部18では、下流側ヘッダ40から上流側ヘッダ42に結露水を流通させるようにしているので、気化した結露水の蒸気を容易に排出管48に集めることができると共に、外気aに対して結露水がカウンタフローとなる。そのため、上流から下流まで結露水と外気aとの温度差を確保することができ、高い熱交換効率を得ることができる。
【0047】
さらに、結露水を下流側ヘッダ40の最下端部に供給し、結露水を下流側ヘッダ40の上方に向けて供給すると共に、伝熱管38の内部でも結露水を下方から上方に向けて流動させているので、予冷熱交換部18での結露水の流れ速度を抑えることができ、これによって、外気aとの熱交換時間を確保し、熱交換効率を向上できる。
また、熱交換部16を構成する予冷熱交換部18、第1熱交換ブロック90a及び第2熱交換ブロック90bでは、いずれもプレートフィンチューブ型熱交換器を用いているので、高い熱交換効率を達成できる。
【0048】
このように、本実施形態では、外気aを昇温させた圧縮熱を予冷熱交換部18で効率良く除去することができるので、外気aを−4〜−2℃まで冷却できる。従って、冷却能力向上のために熱交換部16や冷凍機80等の冷凍機器の大型化を必要としない。
従って、冷却空気供給設備を屋外駐機場脇に設けたり、又は車両に搭載できる範囲に小型に維持できるため、任意の場所に駐機された航空機等の移動体の冷却に対応できる。
【0049】
また、第1〜第3排水管26,28及び32に流量調整弁52,54及び56を設け、これら排水管を流れる結露水の流量を調節することにより、該流量調整弁の絞り効果により、中空ハウジング12内を高静圧状態に維持し、中空ハウジング内の空気(外気)aが凹溝22及び排水口30、34から該排水管に混入するのを防止し、結露水のみを結露水タンク20に回収できる。これによって、結露水を効率良く結露水タンク20に収集できると共に、結露水を予冷熱交換部18に供給するのが容易になる。
【0050】
さらに、第1〜第3排水管26,28及び32を透明な材質のホースで構成し、該ホース内の混入空気の有無を外部から目視可能であるので、該ホース内を目視しながら流量調整弁の絞り度の調整が可能になり、該排水管に空気(外気)aを侵入させないための流量調整弁の操作が容易になる。
また、管内圧力が異なる第1〜第3排水管26,28及び32を直接接続せずに、該第1〜第3排水管を夫々個別に排水本管24と接続し、かつ排水本管24との接続部に対し高低差をもうけて上方から排水本管24に接続したことにより、該該第1〜第3排水管内での結露水の逆流を防止できる。
【0051】
また、結露水タンク20を密閉タンクとし、結露水タンク20の高さ方向中間部に排水本管24を接続すると共に、結露水タンク20の底面に予冷熱交換部18に結露水を供給する配管44を接続しているので、中空ハウジング12内の高静圧を利用した結露水の結露水タンク20への回収と、予冷熱交換部18への結露水の供給が容易になる。
【0052】
また、加圧押込み型送風機14の圧縮作用により、結露水を結露水タンク20に導入すると共に、結露水タンク20に貯留した結露水を重力により予冷熱交換部18に供給できるので、何らの動力を必要としない。
【0053】
(実施形態2)
次に、前記第1実施形態で説明した冷却空気供給設備を用いた、駐機航空機への冷却空気供給の一例について説明する。図7は、本発明の冷気供給設備を用いて駐機航空機へ冷却空気を供給する状態を示す概略構成図である。例えば、前記第1実施形態で用いた冷凍機80、予冷熱交換部18を含む熱交換部16、加圧押込み型送風機14から構成される冷却空気供給設備10と、加圧押込み型送風機14、冷凍機80を構成する圧縮機84等の駆動に必要な電気を供給する発電機114が1つの車体110に収められており、該車体110は、車体110と連結された運転席112で移動可能な構成となっている。
このように構成することで、駐機航空機116の駐機位置に係わらず、冷却空気供給設備10を移動して駐機航空機116へ冷却空気を供給することができる。
【0054】
そして、駐機航空機116への冷却空気cの供給は、冷却空気供給装置10を収めた車体110を駐機航空機116の近くに駐車させ、熱交換部16で冷却した空気(外気)aを、冷気供給ダクト60及び該冷気供給ダクト60と駐機航空機116に接続したホース118によって駐機航空機116に供給することで、駐機航空機116のキャビンや航空機内部に搭載された機器を冷却する。即ち、空気(外気)aは、加圧押込み型送風機14→熱交換部16→冷気供給ダクト60→ホース118→駐機航空機116の経路を通って、冷却空気cになり、駐機航空機116の冷却に用いられている。
【0055】
このように、本発明の冷却空気供給設備10は、大型化することなく冷却能力を維持できるので、ひとつの車両に搭載可能であるため、任意の場所に駐機した駐機航空機に対して冷却空気cを供給するのが容易になる。
【0056】
(実施形態3)
図8は、本発明の第3実施形態に係り、前記第1実施形態の冷却空気供給設備10及び冷凍機80を屋外駐機場120の脇に設置し、駐機航空機116に冷却空気cを供給する例を示す。図8において、本実施形態では、前記第2実施形態と比べて、外部電源から外部電力を冷却空気供給装置10及び冷凍機80に供給するようにしているので、発電機114の設置を不要とする利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によって、十分な冷却能力を維持して冷却空気供給設備を重量及び容積が限定される車上に積載可能になるので、駐機航空機等移動体への冷却空気の供給を任意の場所で行なうことができる。
【符号の説明】
【0058】
10 冷却空気供給設備
12 中空ハウジング
12a 中空ハウジング底面
14 加圧押込み型送風機
18 予冷熱交換部
20 結露水タンク
22 凹溝
26 第1排水管
28 第2排水管
32 第3排水管
30,34 排水口
38 伝熱管
39 金網(メッシュ部材)
40 下流側ヘッダ
42 上流側ヘッダ
44 配管
52,54,56 流量調整弁
60 冷気供給ダクト
80 冷凍機
84 圧縮機
86 凝縮器
88a、88b 膨張弁
90a 第1熱交換ブロック(蒸発器)
90b 第2熱交換ブロック(蒸発器)
110 車体
116 駐機航空機
a 空気(外気)
c 冷却空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空ハウジングに加圧押込み型送風機で外気を導入し該中空ハウジング内に空気流路を形成させ、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を備えて冷凍サイクルを構成する冷凍機の該蒸発器として機能する熱交換器を該空気流路に配設して外気を冷却し、冷却した空気を該中空ハウジングに設けた冷却空気供給ダクトを介して使用先に供給するようにした冷却空気供給方法において、
前記加圧押込み型送風機により前記中空ハウジングの内部に大気圧以上の静圧を形成させ、該中空ハウジングの底部に溜まった結露水を該静圧により該中空ハウジングの底部に開口した排水口及び該排水口に接続された排水管を介して結露水タンクに導入し、
該結露水タンクに貯留された結露水を前記熱交換器より上流側の空気流路に配設された予冷熱交換部に供給し、結露水と外気とを熱交換して送風空気を予冷するようにしたことを特徴とする冷却空気供給方法。
【請求項2】
前記排水管に流量調整弁を設け、該排水管を流れる結露水の流量を調節することにより、前記排水管に空気が混入するのを防止するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の冷却空気供給方法。
【請求項3】
前記排水管を透明な材質のホースで構成し、該ホース内の混入空気の有無を外部から目視可能にしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷却空気供給方法。
【請求項4】
複数個の前記排水口及び排水管を空気流路の上流側から下流側に亘って分散配置し、各排水管を前記結露水タンク又は該結露水タンクの上流側で該結露水タンクに接続された排水本管に夫々個別に接続すると共に、
該結露水タンク又は排水本管との接続部に対して上方から高低差をもうけて供給することにより、逆流を防止するようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の冷却空気供給方法。
【請求項5】
中空のハウジングと、該中空ハウジングに外気を導入する加圧押込み型送風機と、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を備えて冷凍サイクルを構成する冷凍機とを備え、該蒸発器として機能する熱交換器を該空気流路に配設して外気を冷却し、冷却した空気を該中空ハウジングに設けた冷却空気供給ダクトを介して使用先に供給するようにした冷却空気供給設備において、
前記熱交換器を配設した中空ハウジングの底部に設けられた結露水の排水口、及び該排出口に排水管を介して設けられた結露水タンクと、
該中空ハウジング内の該熱交換器より上流側の空気流路に設けられた伝熱管からなる予冷熱交換部とを備え、
前記加圧押込み型送風機により中空ハウジングの内部に形成された大気圧以上の静圧により該中空ハウジングの底部に溜まった結露水を該排水口から該結露水タンクに導入し、該結露水タンクに貯留された結露水を該予冷熱交換部に供給して外気を予冷するように構成したことを特徴とする冷却空気供給設備。
【請求項6】
前記予冷熱交換部を構成する伝熱管の内面に接するように円筒形状のメッシュ部材を設け、該メッシュ部材に結露水を保有させるようにして結露水と外気との熱交換効率を向上させるように構成したことを特徴とする請求項5に記載の冷却空気供給設備。
【請求項7】
前記結露水タンクを密閉タンクとし、該結露水タンクの高さ方向中間部に前記排水管の開口を設けると共に、底部に前記予冷熱交換部に結露水を供給する配管の開口を設けたことを特徴とする請求項5に記載の冷却空気供給設備。
【請求項8】
前記予冷熱交換部を構成する伝熱管の上流側と下流側にヘッダを設け、結露水を該下流側ヘッダから上流側ヘッダに向けて流し、外気に対して対向流を形成させるように構成したことを特徴とする請求項5に記載の冷却空気供給設備。
【請求項9】
前記中空ハウジング、前記送風機及び前記冷凍機を単一の車両内に収納し、該車両を駐機航空機の近くに駐車させ、前記冷却空気供給ダクトを介して該駐機航空機に冷却空気を供給するように構成したことを特徴とする請求項4〜8のいずれかの項に記載の冷却空気供給設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−169301(P2010−169301A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11408(P2009−11408)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】