説明

冷却管およびそれを備えた冷却装置

【課題】 気化熱を利用した環境に優しい冷却技術でありながら、室内外のインテリアとしても使用できるデザイン性の高い冷却技術を提供することにある。
【解決手段】 冷却管6は、金属製パイプを長手方向に削り取った状態(切欠部9)で断面は半円形状態にした筒体8と、水槽7の中に立てた筒体8の中に毛細管現象の発生しやすい素材を紐状にして吊した浸透材10からなる。この浸透材10は水槽7の中の水11に接触することにより水11を上部へ上昇させ、水11は筒体8の温度により蒸発現象を発生し空気中に気化する。そして、この気化熱で筒体8周囲の温度を下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、気化熱を利用した環境に優しい冷却技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気化熱を利用した環境に優しい冷却技術としては、例えば、特許文献1〜3に開示されたものがある。
特許文献1には、ブラインドを通過する風を気化熱により冷却し、室内に涼風を導き、室内の気温を低下させる冷却技術が開示されている。
また、特許文献2には、ガラス窓を取り外し、窓枠に取り付け可能なパネルであって、そのパネルの両面に光触媒を塗布し、光触媒の特性の親水性を活用して、水の水滴化を阻止し水の膜を形成させ、水の膜に振動を加え水の気化を促進し、その気化熱を活用して室内の温度を冷却する冷却技術が開示されている。
さらに、特許文献3には、光触媒を建築物の表面にコーティングし、少量の水を流して汚れを洗浄しながら気化熱により室内の冷房効果を高める冷却技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−045387号公報
【特許文献2】特開2006−057980号公報
【特許文献3】特開2004−360292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対して、本願発明者は、上記従来技術と同じように気化熱を利用した環境に優しい冷却技術でありながら、室内外のインテリアとしても使用できるデザイン性の高い冷却技術の提供を目的として、本願発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための第1の発明は、中空の筒体と、当該筒体内の長手方向に水を浸透させる浸透材とを備え、当該浸透材に浸透させた水を筒体の表面温度で気化させることによって生じた気化熱で筒体周囲の温度を下げることを特徴とする冷却管である。
第2の発明は、浸透材が、毛細管現象を生じる材質からなることを特徴とする同冷却管である。
第3の発明は、筒体の長手方向に切欠部を形成したことを特徴とする同冷却管である。
第4の発明は、筒体の内側又は/及び外側に照明装置又は塗装を設けたことを特徴とする同冷却管である。
第5の発明は、上記第1から第4の冷却管を複数本備えたことを特徴とする冷却装置である。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)本願発明の冷却管は「筒体」と「浸透材」を備えており、外部の温度に熱せられた筒体は温度が上昇し、それによって浸透材の水分の蒸発が促され気化し、その気化熱により筒体(冷却管)周囲の温度が下がる仕組みとなっている。このため、ランニングコストは最低限「水」と「クリーニング」だけで済み、まさに環境に優しい(温暖化抑制=CO2削減)新規な冷却技術を提供できる。
(2)浸透材に毛細管現象を生じる材質を用いることで、筒体内の長手方向に配置された浸透材に、自然の力を利用して水を浸透させることができるので、水の浸透に電気等動力を必要としない。
(3)筒体の長手方向に切欠部を形成したことで、水の気化をより促進させることができるとともに、空気に触れさせる範囲を多くさせることができる。それによって、周りの温度に触れる範囲が多いため気化熱を多く必要とし、空気温度をより下げることができる。
(4)筒体の内側又は/及び外側に照明装置又は塗装を設けたことで、冷却管を装飾部材としても使用できる。
(5)冷却管を複数本備えたことで、冷却管と冷却管の間を通過する空気が冷やされ涼しい風を得ることのできる環境に優しい(温暖化抑制=CO2削減)新規な冷却装置を提供できる。また、冷却管単体自体がデザイン性にも優れているので、この冷却管を複数本備えた冷却装置は、室内外のインテリアとしても使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本願発明に係る冷却管を示す説明用斜視図。
【図2】本願発明に係る冷却管を示す説明用断面図。
【図3】本願発明に係る冷却装置(格子戸)を示す説明図(外側正面図)。
【図4】本願発明に係る冷却装置(格子戸)を示す説明図(内側正面図)。
【図5】本願発明に係る冷却装置(引き戸)を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本願発明に係る冷却管を示す説明用斜視図である。図1に示すように、冷却管6は、金属製パイプを長手方向に削り取った状態(切欠部9)で断面は半円形状態にした筒体8と、水槽7の中に立てた筒体8の中に毛細管現象の発生しやすい素材を紐状にして吊した浸透材10からなる。この浸透材10は水槽7の中の水11に接触することにより水11を上部へ上昇させる。水11は筒体8の温度により蒸発現象を発生し空気中に気化する。より気化を促進させるためと空気に触れさせる範囲を多くさせるため筒体8に形成された切欠部9は、周りの温度に触れる範囲が多いため気化熱を多く必要とするから空気温度が下がる。しかも、水の気化熱利用の空調は室内の温度を不必要に下げず、窓や扉の開閉で外気が部屋に侵入しても不快感を与えない。機械エネルギーを必要としないうえ、人間にとっても優しい空調といえる。
【0009】
なお、筒体8の材質については、熱伝導性の高い金属製のもの(アルミニウム,ステンレス等)が好ましいが、ガラス製,磁器・陶器製,樹脂製,ゴム製,化学素材製,紙製,コンクリート製,木・竹等の自然物,またはこれらに類似するものなどが含まれ、時に限定されるものではない。
また、筒体8の形状についても、円形,楕円形,三角・四角形等の多角形,菱形、その他あらゆる形状が含まれ、特に限定されるものではない。
浸透材10の「毛細管現象の発生しやすい素材」については、毛細管現象を起こす細い空間を備えたものであれば特に限定されるものではない。
【0010】
図2は、本願発明に係る冷却管を示す説明用断面図である。毛細管現象を発生する浸透材10は、中空体の筒体8内に吊せるようにその下部は留め具15に掛け、その上部はバネ14に掛ければ常時弛まずピンと張れ、メンテナンス時には取り外し・取り付けが可能である。なお、浸透材10による給水は、下部(水槽7)からの毛細管現象だけでなく、上部、中間部からの注水をした場合の毛細管現象も含まれる(図示省略)。
【0011】
図3は、本願発明に係る冷却装置を格子戸として利用した状態を示す説明図(外側正面図)である。符号1は格子戸の外枠であって、符号12は外枠の上端に位置する上部枠であって内部に毛細管現象を発生する浸透材10の吊り下げ装置(バネ14)を備えている。符号7は、格子戸の外枠1の下端に位置する下部枠で、ここが常時水の補給できる水槽となっている。この水槽7には外部に設置した水タンク又は水道管等(図示省略)から水の補給ができるようにしてもよい。また、符号13は、格子戸の隙間、すなわち冷却管6と冷却管6の間の空間を表す。
【0012】
図4は、本願発明に係る冷却装置を格子戸として利用した状態を示す説明図(内側正面図)である。切欠部9を形成した筒体8の中に毛細管現象の生じる紐状の浸透材10を筒体8に触れさせないように取り付ける。この時、留め具15とバネ14を用いることで、浸透材10が弛まないように張ることができるとともに、メンテナンス時の浸透材10の取り外し・取り付けが容易になる。外枠1の下端に位置する下部枠を水槽7としてここに常時水を満たし、毛細管現象で浸透材10に水分が含まれると筒体8が周囲の温度で熱せられ、浸透材10に含まれた水分が蒸発するため、常時水の補給は必要である。符号13は上記の通り格子戸の隙間、すなわち冷却管6と冷却管6の間の空間であり、適度な光が格子の内側に差し込み、風も通り抜ける。格子戸の内側の温度は外側の温度よりも気化熱を奪って温度が下がる。
【0013】
図8は、本願発明に係る冷却装置(引き戸)を示す説明図である。図3及び図4に示す格子戸を使って引き戸に利用することができる。格子戸の上部枠12に引き戸用上部枠16の仕掛けをつける。引き戸用下部枠には水槽7の下に戸車5を付けた台車17を取り付ける。格子戸を数枚引き戸にする場合の水槽7の形状を符号18に開口部を設ける仕掛けにすると、水槽7に水11が補給される。
【0014】
以上、図3および図4では格子戸(引き戸を含む)を例に挙げて説明したが、冷却装置の使用方法はこれに限定されるものではない。天井の高い吹き抜けのある部屋などの冷房は冷たい空気は重いため下に下がり、上部の温度は下がらず空調に費用がかかるが、本願発明に係る冷却管を天井から床まで直立させて設置すれば、天井近くも床下も同じ気化熱効果が期待できる。この冷却管を回り階段の真中に数本隙間を空けて設置することにより、部屋のデザイン効果と空調効果が期待できる上、上部空間と下部空間の温度差が少ないし空調のランニングコストが低額である(水の補給、メンテナンスは埃で汚れる浸透材の清掃か交換が見込まれる程度)。また、冷却管および冷却装置を縦方向に使用するだけでなく、横方向(水平方向)に使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本願発明に係る冷却管および冷却装置では、真夏の暑い季節に打ち水の涼しい心地良さが体感できる。建物の窓や掃き出し戸にも応用できるが、軒先が迫り出している通路の外側にも設置すれば涼しい通路にもなる。また、建物内だけでなく、外部に設置することも可能であり、庭の東屋,回廊などにも利用できる。中近東の暑い地方にも低価格で設置して、涼しい効果が望める。
【0016】
地球温暖化が進む中、益々夏場の空調が必要となり、住宅密集地では外気温度が上昇して、空調設備が無くてはならない状況である。必要なエネルギー量は膨大になっているため、埋蔵エネルギーの不使用、限りある資源を浪費しない、地球温暖化をいかに阻止するかは人類の課題となっている。しかし、人間の欲望には限りがないので地球を食いつぶすような状態である。誰でも快適に住むことを望むためエネルギーの消費が増大している現状を鑑み憂い、暑さ対策の方法で機械装置を使わない気化熱を応用した冷却技術であり、外部にも使える冷却技術であるため、砂漠のある中近東でも利用できるものである。
【符号の説明】
【0017】
1 外枠
5 戸車
6 冷却管
7 水槽(下部枠)
8 筒体
9 切欠部
10 浸透材
11 水
12 上部枠
13 空間(格子戸の隙間)
14 バネ
15 留め具
16 引き戸用上部枠
17 台車
18 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の筒体と、当該筒体内の長手方向に水を浸透させる浸透材とを備え、当該浸透材に浸透させた水を筒体の表面温度で気化させることによって生じた気化熱で筒体周囲の温度を下げることを特徴とする冷却管。
【請求項2】
浸透材は、毛細管現象を生じる材質からなることを特徴とする請求項1記載の冷却管。
【請求項3】
筒体の長手方向に切欠部を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の冷却管。
【請求項4】
筒体の内側又は/及び外側に照明装置又は塗装を設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の冷却管。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の冷却管を複数本備えたことを特徴とする冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−175120(P2010−175120A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17255(P2009−17255)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(506100945)
【Fターム(参考)】