説明

冷却装置を備えた鉄道車両

【課題】設計、製造が容易であるとともに、騒音の低減を図ることが可能な鉄道車両を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、鉄道車両は、車輪を支持する台車と、床板および天井壁を有し、台車上に支持された車両本体26と、車両本体の床下あるいは車両本体内に配設された電気機器と、電気機器を冷却する冷却装置40と、を備えている。冷却装置は、車両本体内に配設され、送風機室41を規定するハウジング42と、送風機室に配設され、送風機室内に開口する吸込口52を有する送風機44と、を備えている。送風機は、天井壁26cの肩部に形成された吸気口72と、天井壁の内面側に設けられ吸気室70とに接続され、前記吸気室を介して前記吸気口から吸気した冷却風を前記電気機器に導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、電気機器を冷却する冷却装置を備えた鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
レール上を走行する鉄道車両、例えば、電気機関車、電気式ディーゼル機関車は、車体内部に設けられた主変換装置、変圧器の油冷却器、制御装置、あるいは台車上に設けられた主電動機等、動作により発熱する種々の電気機器を備えている。このような発熱する電気機器を冷却するため、送風機から電気機器に冷却風を送り込む強制通風冷却が採用されている。
【0003】
台車に配置されている主電動機を冷却する冷却方式としては、大きく分けると、車体の、パンタグラフの下方などに配置された補機室と呼ばれる部位に配置した送風機から、車体台枠などに設けた風道により主電動機まで風を導くような、1台の送風機で複数の主電動機を冷却する方式と、各主電動機に対して個別に軸流送風機を設け、その送風機を各主電動機の上部近傍の機械室内に配置する方式とがある。後者の冷却方式の場合、主電動機は台車に配置されているため、送風機は台車のできるだけ近傍に配置することが、風道が最短になり、圧力損失も最小になることなどの面から好ましい。一方、車両のパンタグラフは、台車の回転中心から大きく外れないことが好ましいため、パンタグラフの下方に主電動機および送風機が配置されるのが一般的である。ただし、パンタグラフの下方領域には、パンタグラフのすり板と架線の磨耗粉が拡散しやすい。そのため、主電動機内部に磨耗粉が入って絶縁破壊の原因にならないよう、送風機の吸気口は、パンタグラフの真下となる屋根上面に設けるのではなく、車体の肩部などに設けるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ヨーロッパ特許公開公報EP0625456A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両の使用場所によっては、架線が極端に低く、車体の天井を凹ませてパンタグラフを配置する場合があり、あるいは、特別高圧を受電する交流車両などにおいて、車体の屋上に配置された特高機器と架線との離隔距離を確保するために、車体の屋根全体を低くする必要がある場合がある。このような場合、車体の肩部分に斜面がなくなってしまい、吸気口を設けることが構造的に不可能となる。
【0006】
そこで、車体の側構に吸気口を設ける方法が考えられるが、この構成は、設計、製造の両面とも容易でなく、車両の製造コストを上げる要因となる。また、腐食などの保守コストの面からも望ましくない。車体の側構に吸気口があると、必然的に送風機の配設位置が低くなり、送風機の出口から主電動機までの風道の構成に自由度がなくなる。そのため、設計や製造が容易でない。更に、車体の側面に吸気口があると、送風機から発せられる騒音が、車外の近隣住民に向けて放出されやすいので好ましくない。
【0007】
この発明は、以上の点に鑑みなされたもので、その課題は、設計、製造が容易であるとともに、騒音の低減を図ることが可能な鉄道車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、鉄道車両は、車輪を支持する台車と、床板および天井壁を有し、前記台車上に支持された車両本体と、前記車両本体の床下あるいは車両本体内に配設された電気機器と、前記電気機器を冷却する冷却装置と、を備え、前記冷却装置は、前記車両本体内に配設され、送風機室を規定するハウジングと、前記送風機室に配設され、前記送風機室内に開口する吸込口を有する送風機とを備え、前記送風機は、前記天井壁の肩部に形成された吸気口と、前記天井壁の内面側に設けられた吸気室とに接続され、前記吸気室を介して前記吸気口から吸気した冷却風を前記電気機器に導くようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る電気機関車を示す側面図。
【図2】図2は、図1の線A−Aに沿った電気機関車の断面図。
【図3】図3は、前記電気機関車の冷却装置を示す断面図。
【図4】図4は、第2の実施形態に係る電気機関車の冷却装置を示す断面図。
【図5】図5は、第3の実施形態に係る電気機関車の冷却装置を示す断面図。
【図6】図6は、第4の実施形態に係る電気機関車の冷却装置を示す断面図。
【図7】図7は、第5の実施形態に係る電気機関車の冷却装置を示す断面図。
【図8】図8は、第6の実施形態に係る電気機関車の冷却装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る鉄道車両、例えば、電気機関車について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電気機関車を示す側面図、図2は、図1の線A−Aに沿った電気機関車の断面図である。図1および図2に示すように、電気機関車10は、それぞれ車輪14および車軸15が設けられた一対の3軸台車16と、台車16上にばね19を介して支持された車体17と、を備えている。各台車16上で各車軸の近傍には主電動機18が載置されている。各台車16は、車体17に対して、枢軸の周りで回動可能に車体17に連結されている。主電動機18は、図示しないギアボックスおよびカップリングを介して回転力を車輪14に伝達できるように接続されている。車輪14はレール13上に載置されている。主電動機によって車輪14を回転することにより、電気機関車10はレール13上を走行する。
【0011】
なお、上述の電気機関車では、3軸台車を例に挙げて説明しているが、これに限らず、2軸台車など、他の構成を備えた台車であっても構わない。
【0012】
車体17は、車体台枠24と、車体台枠上に搭載された車両本体26と、車体台枠上の全面に渡って敷設され車体の床を構成した床板28と、を備えている。車体台枠24は、車体17の中央部を長手方向に沿って延びたセンターシル24a、センターシルの両側を車両の長手方向に沿ってそれぞれ延びた一対の側梁24b、車体の前後端部において、センターシルおよび一対の側梁を連結した前後一対の端梁、およびセンターシルと側梁との間を連結した複数の横梁24dおよび図示しない枕梁等を有し、鋼材により、形成されている。
【0013】
車両本体26は、車体台枠24上に立設され車体17の長手方向に延びた一対の側構26a、それぞれ側構26aの上端に設けられ車体17の長手方向全長に渡って延びる長桁26b、車両の前面および後面をそれぞれ形成した一対の端壁を有し、車体台枠24を覆って設けられている。また、車両本体26は、車両本体の上部開口を覆った天井壁26cを備えている。天井壁26cは、平坦に形成され床板28とほぼ平行に延びる屋根壁30aと、屋根壁の両側縁から床板28側に傾斜して延びる肩部30bと、を有している。そして、天井壁26cは、肩部30bの下端を車両本体26の長桁26bにボルト止めすることにより、車両本体26から取り外し可能に固定されている。
【0014】
車体17の長手方向一端側の屋根にはパンタグラフ21が設けられ、このパンダグラフは架線20と接触可能となっている。架線20からパンタグラフ21に供給された電力は、後述する他の電気機器に送られた後、直流から交流に変換され、図示しない配線を通して、各主電動機18に供給される。車体17の床下には、前述した主電動機18を含む種々の電気機器が設置されている。例えば、2つの台車16の間で、車体17の中央部の床下に、主変圧器32が艤装されている。
【0015】
車両本体26内において、床板28上には、種々の電気機器が設置されているとともに、電気機器の内、冷却を必要とする電気機器および主電動機18を冷却する複数の冷却装置が設けられている。電気機器として、例えば、それぞれ交流、直流を変換する複数の主変換装置34、制御装置、複数のブレーキ抵抗器36、補助電源等が床板上に載置されている。また、それぞれ対応する主電動機18を冷却するための複数の冷却装置40が設けられている。これらの冷却装置40は、それぞれ台車16に隣接して、床板28上に設置されている。
【0016】
図3は、冷却装置40を含む車両本体26を拡大して示している。図2および図3に示すように、主電動機18を冷却する冷却装置40は、例えば、矩形箱状に形成され送風機室41を規定しているハウジング42と、ハウジング内に収納された送風機44と、を備えている。ハウジング42は、例えば、強化プラスチック(FRP)、金属等により形成されている。ハウジング42は、その底壁42aが車両本体26の床板28上に設置され、その高さは、例えば、長桁26bとほぼ等しい高さ位置に形成されている。ハウジング42の上面は天井壁26cに向かって開口し、送風機室41に連通する通気口45を形成している。
【0017】
送風機44は、送風機台47により、送風機室41内に支持されている。送風機44は、シロッコファン、ターボファン等の静圧を得やすい遠心送風機を用いている。遠心送風機は、その軸方向に沿って空気を吸い込み、軸と直交する方向に空気を吐出する。送風機44は、回転羽根48、この回転羽根を覆った筒状の外ケース50、および外ケースに取り付けられ回転羽根48を回転駆動する電動機51を有している。送風機44は、回転羽根48および電動機51の回転軸が車体17の床板28とほぼ平行に延びた状態で配置されている。外ケース50には吸込口52が形成され、回転羽根48と対向している。この吸込口52は、送風機室41内に開口している。本実施形態において、送風機44は、吸込口52が車両本体26の内側を向くように配置されている。外ケース50の外周部に吐出口53が形成されている。一方、ハウジング42の底壁42aに排気口54が形成され、この排気口54と送風機44の吐出口53とが風道56により繋がれている。
【0018】
ハウジング42の下方において、床板28に排気口60が形成され、この排気口60は、風道62により主電動機18に繋がれている。排気口54、60の周囲において、ハウジング42の底壁42aと床板28との間に環状のパッキン63が挟持され、ハウジング42の排気口54は、床板28の排気口60に気密に連通している。
【0019】
上述したハウジング42は、送風機44、送風機台47、風道56とともに、取り外し可能なユニットとして予め車外で組み立てておき、電気機関車10の組立時にねじ止めなどにより、車両車体17に固定される。風道56と、車体の床下に設けられた風道62とは、パッキン63を介して気密に接続され、ハウジング42を車体に取付けるだけで風道56、62の気密性が確保される。
【0020】
前述したように、車体17の天井壁26cは車両本体に対して取り外し可能に構成され、電気機関車10の組立て時、天井壁26cを外した状態で、天井側から車両本体内に種々の電気機器、および冷却装置40のハウジング42を出し入れすることができる。天井壁26cは、長桁26bに設けられた取付け座64へ、取付けねじ66によりねじ止めされている。本実施形態において、冷却装置40は、その上部に天井壁26cの内面側に仕切り壁68によって形成された吸気室70が設けられている。また、天井壁26cの肩部30bに形成されて吸気室70に連通するための吸気口72を備え、吸気口72には吸気フィルタ74が取り付けられている。なお、吸気室70を冷却装置40とは区別して定義しているが、吸気室70を構成する部分を含めて冷却装置40として扱ってもよい。
【0021】
吸気室70の下面側には通気口70aが形成されている。そして、天井壁26cを車両本体26に上から取り付けることにより、吸気室70は、パッキン76を介して、ハウジング42の上端に連結され、吸気室70の通気口70aとハウジング42の通気口45とが気密に連通している。
【0022】
上記のように構成された冷却装置40によれば、送風機44を作動させることにより、吸気口72から吸気フィルタ74を通して吸気室70に外気が取り込まれ、通気口70a、45を通して送風機室41に送られる。送風機室41内の外気は、送風機44の吸気口52から送風機44内に吸気され、更に、吐出口53から風道56、62を通して、床下の主電動機18に送られる。そして、この外気により主電動機18が冷却される。
【0023】
このように、車両本体26の天井が低い場合でも、吸気口72を天井壁26cの肩部30bに設けることができ、更に、吸気口の大きさも充分に大きく確保することが可能となる。そのため、吸気口を車両本体の側構に設ける必要がなく、騒音の低減を図ることが可能となる。また、従来のように、吸気口から送風機まで風道を引き回し、かつ、接続設置する必要がなく、組立ておよび設計が容易となるとともに、充分な吸気スペースを容易に確保することができる。
【0024】
本実施形態においては、送風機室41と吸気室70との接合部は、車両本体26の長桁26bとほぼ同じ高さ位置にすることにより、斜めの接合面を廃して水平面で送風機室41と吸気室70とが接合される。そのため、組立て時、送風機室41と吸気室70とが前後左右にずれた場合でも、同一平面内でのずれが生じるだけとなる。このことから、吸気室70を規定している仕切り壁68の接合面とハウジング42の上端接合面との間に設けられたパッキン76の柔軟性により、上部から天井壁26cを被せるだけで、複雑な組立調整を要さずに、送風機室41と吸気室70とを容易に気密に接続することができる。
【0025】
本実施形態によれば、送風機44の吸込口52を車両本体の内側に向けてあるが、冷却する電気機器の位置、ここでは、主電動機18の位置と、主電動機までの風道62の構成によって吸込口52の向きを変更することができる。主電動機18の空気接続口は車体17の中心寄りになるのが一般的であり、送風機44の吸込口52を内側に向けて冷却風の吐出口を車体の中心寄りにしてあっても、さらに、風道62を曲げる必要がある。本実施形態によれば、風道56の曲げ部分については、予めハウジング42内に組込んでおくことが可能であり、車体の製造が容易になる。
【0026】
送風機44として遠心送風機を用いることにより、容易に必要な風量と静圧を得ることが可能であり、軸流送風機とほぼ同じ占有面積の中にハウジング42および送風機44を配置することが可能である。
【0027】
冷却風の吸気口72における風の通過速度ができるだけ低くなるように、車体側の長桁26bの高さ方向の位置を下方に下げ、吸気口の面積を大きくしている。長桁26bは車体17の強度を決める重要な構成部品であるから、車体17の長さや搭載する機器の重量などにより十分な検討をして、その位置と断面形状を決定する。長桁26bは、必ずしも車体17の最上部である必要はないので、車体全体の強度に注意しながら、その位置を決めることが可能である。吸気口72を大きく確保し、外気の通過速度を低く抑えることにより、吸気フィルタ74により、空気中の粉塵、ごみ等を確実に捕獲することができ、粉塵、ごみ等が主電動機に送られることを確実に防止することができる。同時に、吸気に伴う騒音を低減することが可能となる。
以上のことから、設計、製造が容易であるとともに、騒音の低減を図ることが可能な鉄道車両を提供することができる。
【0028】
次に、他の実施形態に係る電気機関車について説明する。以下に述べる、複数の他の実施形態において、第1の実施形態と同一の部分には、第1の実施形態と同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0029】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る電気機関車の冷却装置40を示している。この図に示すように、第2の実施形態によれば、冷却装置40は、送風機44の吐出口53からハウジング42の排気口54まで延びる風道56と、この風道内に設けられた慣性分離フィルタ80と、を備えている。
【0030】
被冷却物である主電動機18の出力が大きく、主電動機の冷却に必要な風量が非常に大きい場合、吸気口72の開口寸法を、吸気フィルタ74に対する空気の通過風速を十分に下げることができる程度まで大きくすることは困難になる。そこで、本実施形態では、送風機44の下流側で風道56内に慣性分離フィルタ80を設け、送風機44を通過した空気中の粉塵等を慣性分離フィルタ80で捕獲分離する。また、冷却装置40は、慣性分離フィルタ80で捕獲した粉塵等をハウジング42の外へ排出する排塵排出用の風道82を備えている。この風道82は、慣性分離フィルタ80から風道56を貫通し、ハウジング42の底壁42aまで伸び、底壁42aに形成された排出口83に連通している。排出口83は、車両本体の床板28に形成された排気口および排気ダクト84に連通している。
【0031】
慣性分離フィルタ80により捕獲分離された粉塵等は、排塵排出用の風道82、排出口83、排気ダクト84を通り、床下に排出される。
【0032】
ハウジング42は、送風機44、送風機台47、慣性分離フィルタ80、風道56、82も含め、予め車外で組み立てておき、電気機関車10の組立時にねじ止めなどにより、車両車体17に固定される。風道56、82と、車体の床下に設けられた風道62および排気ダクト84とは、パッキン63、85を介して気密に接続され、ハウジング42を車体に取付けるだけで風道56、62、86、排気ダクト84の気密性が確保される。
【0033】
上記のように構成された第2の実施形態においても、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、慣性分離フィルタ80を設けることにより、より確実に冷却空気中の粉塵等を除去し、被冷却物である主電動機18への悪影響を防止することができる。
【0034】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態に係る電気機関車の冷却装置40を示している。この図に示すように、第3の実施形態によれば、冷却装置40は、ハウジング42の通気口45に設けられ送風機44の上方に位置する慣性分離フィルタ80と、送風機室41内を慣性分離フィルタ80から底壁42aの近傍まで延びる排塵排出用の風道82と、送風機室41内で送風機44の下方に設けられ、その吸気口が風道82の下端に接続された塵埃排出用の遠心送風機86と、を備えている。遠心送風機86の吐出口は、ハウジング42の底壁42aに形成された排気口87に気密に接続され、更に、排気口87は、車両本体の床板28に形成された排気口および排気ダクト84に連通している。
【0035】
冷却装置40の動作時、送風機44により、外気が吸気口72から吸気フィルタ74を通して吸気室70に吸い込まれ、更に、慣性分離フィルタ80を通して送風機室41へ送られる。その際、空気中に残留する粉塵、ごみ等は、慣性分離フィルタ80により捕獲分離される。送風機室41内に導かれた外気は、吸込口52から送風機44内に吸い込まれ、吐出口から風道56、62を通して、被冷却物へ供給される。また、塵埃排出用の遠心送風機86が作動すると、慣性分離フィルタ80に捕獲された粉塵等は、排塵排出用の風道82を通して遠心送風機86側に吸い込まれ、更に、排気口87および排気ダクト84を通して床下に排出される。
【0036】
上記のように構成された第3の実施形態においても、ハウジング42は、送風機44、送風機台47、慣性分離フィルタ80、風道56、82、遠心送風機86も含め、予め車外で組み立てておき、電気機関車の組立時にねじ止めなどにより、車両車体17に固定することができる。その際、ハウジング42を車体に取付けるだけで、風道56および遠心送風機86の吐出口と、車体の床下に設けられた風道62および排気ダクト84とは、パッキン63、85を介して気密に接続される。これにより、車両および冷却装置40を容易に組み立てることができる。
【0037】
上記のように構成された第3の実施形態においても、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、慣性分離フィルタ80を設けることにより、より確実に冷却空気中の粉塵等を除去し、被冷却物である主電動機18への悪影響を防止することができる。
【0038】
(第4の実施形態)
図6は、第4の実施形態に係る電気機関車の冷却装置40を示している。この図に示すように、第4の実施形態によれば、騒音低減を目的として、冷却装置40の送風機室41内および吸気室70に吸音シートあるいは吸音材90が設けられている。例えば、ハウジング42の内面に吸音材90が貼付され、更に、吸気室70を規定している仕切り壁68の内面および天井壁26cの内面に吸音材90が貼付されている。
【0039】
電気機関車の組立て時、予めハウジング42の内面、および取り外された天井壁26c、仕切り壁68の内面に吸音材90を貼ることで、車体側の組立工程に影響することなく吸音材90を設けることができる。送風機44を送風機室41内に配置するために小型にした場合、送風機の回転数が高くなり騒音が生じる可能性があるが、送風機室41内に吸音材90を設けることで騒音の低減を図ることができる。吸気室70にも吸音材90を設けることにより、一層、騒音低減を図ることが可能となる。
【0040】
(第5の実施形態)
図7は、第5の実施形態に係る電気機関車の冷却装置40を示している。この図に示すように、第4の実施形態によれば、冷却装置40の上部に設けられた吸気室70は、仕切り壁に代えて、吸音ダクト92により規定されている。吸音ダクト92は、使用条件、用途などにより様々なものが開発されているので、ここでは任意の吸音ダクトを用いることができる。本実施形態のように、大型の吸音ダクト92を設けることが可能な場合には、送風機44の騒音を吸音ダクト92で吸収し、騒音がほとんど外部にもれることがない冷却装置40を実現することができる。この場合にも、予め、天井壁26cに吸音ダクト92を組込んでおき、送風機室41には吸音材を貼ったものにしておくことにより、電気機関車の組立工程に影響を与えることなく、容易に組立てることができる。
【0041】
(第6の実施形態)
図8は、第6の実施形態に係る電気機関車の冷却装置40を示している。この図に示すように、第6の実施形態によれば、車両本体の天井壁26cにおいて、肩部30bは、斜めに傾斜した傾斜面ではなく、屋根壁30aに対してほぼ垂直な垂直壁に形成されている。そして、冷却装置40の吸気口72は、この天井壁26cの垂直壁に形成されている。
【0042】
第6の実施形態においては、車両本体26の長桁26bの位置を変えることで、車体と天井壁26cとの切り放し位置を変えることができる。そのため、必ずしも車体の肩部に斜面を形成して吸気口を設ける必要がなく、車両限界96の形状に応じて、天井壁肩部30bを最適な形状にすることができる。
【0043】
上述した第2ないし第6の実施形態において、電気機関車の他の構成は、前述した第1の実施形態と同一である。そして、第2ないし第6の実施形態においても、設計、製造が容易であるとともに、騒音の低減を図ることが可能な鉄道車両を提供することができる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0045】
上述した実施形態では、冷却装置により主電動機を冷却する構成としたが、これに限らず、車両に設置された他の電気機器の冷却にも広く適用することができる。冷却装置の吸気口は、天井壁の反対側の肩部に設けても良い。更に、天井壁の内面側全体で吸気室を形成するようにしてもよい。冷却装置の送風機室は、雪切室の効果も兼ねることが可能である。例えば、送風機室の底面にパネル式のヒータを組み込むことにより、融雪も可能である。
【0046】
輸出車両など、日本の鉄道の車両限界よりも大きい車両であっても、長桁の位置を工夫することで日本国内の出荷港までの鉄道輸送時に使用する仮屋根の状態においては、日本の車両限界内に入れることが可能となり、鉄道での輸送が可能となる。ここでは小型で性能の高い遠心送風機を用いたが、これに限らず、他の方式の送風機を適用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…電気機関車、14…車輪、16…台車、17…車体、18…主電動機、
21…パンタグラフ、24…車体台枠、26…車両本体、26a…側構、
26b…長桁、26c…天井壁、28…床板、30b…肩部、40…冷却装置、
41…送風機室、42…ハウジング、44…送風機、56…風道、68…仕切り壁、
70…吸気室、72…吸気口、74…吸気フィルタ、80…慣性分離フィルタ、
82…風道、90…吸音材、92…吸音ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を支持する台車と、床板および天井壁を有し、前記台車上に支持された車両本体と、前記車両本体の床下あるいは車両本体内に配設された電気機器と、前記電気機器を冷却する冷却装置と、を備え、
前記冷却装置は、前記車両本体内に配設され、送風機室を規定するハウジングと、前記送風機室に配設され、前記送風機室内に開口する吸込口を有する送風機とを備え、前記送風機は、前記天井壁の肩部に形成された吸気口と、前記天井壁の内面側に設けられた吸気室とに接続され、前記吸気室を介して前記吸気口から吸気した冷却風を前記電気機器に導くことを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
前記吸気室は、吸音ダクトにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記冷却装置は、前記送風機から前記電気機器に冷却風を導く風道と、前記風道内に設けられた集塵フィルタと、前記集塵フィルタで捕獲された粉塵を前記ハウジングの外に導く排塵用の風道とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記冷却装置は、第2送風機をさらに備え、この第2送風機は、前記集塵フィルタで捕獲された粉塵を前記俳塵用の風道を介して排出することを特徴とする請求項3に記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記天井壁は、前記車両本体に対して取り外し可能に取り付けられ、前記天井壁の内面側に形成された吸気室は、封止材を介して前記送風機室に気密に連通していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の鉄道車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−101575(P2012−101575A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249149(P2010−249149)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)