説明

冷却装置及び真空冷却装置

【課題】多種に渡る被冷却物を真空下において効率よく冷却しつつ、冷凍機から被冷却物への振動を低減できるようにすることを目的とする。
【解決手段】支持体に固定された冷却部を有する冷凍機と、冷却部を介して被冷却物18を冷却する冷却装置において、被冷却物18と冷却部は、流動可能な冷媒で満たされた伸縮可能な配管9からなる構造体で繋がり、配管9の外周には、支持体側に固定された第一の磁性体5と配管9側に固定された第二の磁性体11とが配置され、第一の磁性体5と第二の磁性体11とが非接触に維持されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関し、特に、真空容器中で処理される基板やレーザー発振部などの被冷却物を冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍機を用いて、例えば、真空容器中で処理される基板やレーザー発振部などの被冷却物を冷却するには、通常は冷凍機の冷却部(熱伝導率の優れる金属製)に被冷却物を直接密着させることにより被冷却物を冷却する。
【0003】
また、被冷却物が振動を嫌うような物である場合には、冷凍機を被冷却物から離れた場所に設置し、冷凍機で冷却された液体冷却媒体を断熱処理された配管内を循環ポンプ等の動力を用いて圧送することで冷却する。
【0004】
このようにすることにより冷凍機からの振動を低減しつつ被冷却物を間接的に冷却する。
【0005】
また、特許文献1には、冷凍機本体と冷凍機本体に接する被冷却部との間に防振手段が設けられ、防振手段は、防振ゴム部材と複数の球状部材とからなる冷凍装置が開示されている。
【特許文献1】特開2000−146342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、大気中又は真空下において、冷凍機冷却部に被冷却物を固定して冷却する場合、冷凍機の運転振動が被冷却物へ伝達されてしまうことがあった。
【0007】
そのため、振動を嫌う被冷却物に対しては使用できなかった。
【0008】
また、冷凍機本体を被冷却物から離れた場所に設置し循環ポンプ等の動力を用いて圧送された冷媒で被冷却物を間接的に冷却する場合は、冷凍機本体と被冷却物の設置距離を大きく取ることが必要となる。そのため、特に真空容器内に装置を配置することは難しくなっていた。
【0009】
そこで、大気中に断熱処理をした長い配管を設置し、冷媒を圧送することとなるが、断熱処理を施した配管を使用しても、外気からの熱影響が大きく圧送中に冷媒温度が上昇してしまい、伝熱効率が低下してしまっていた。
【0010】
さらに、冷媒を強制的に圧送するためには循環ポンプ等の動力を必要とし、この循環ポンプの電動機等から発生する熱により冷媒温度が上昇してしまうこともあった。
【0011】
また、特許文献1に記載される技術では、真空容器に直接設置させ、真空容器と一体化して被冷却物を冷却する場合、冷凍機本体から被冷却物へ振動が伝わってしまうことがあった。
【0012】
そこで、本発明は、冷却装置において、多種に渡る被冷却物を特に真空下において効率よく冷却しつつ、冷凍機から被冷却物への振動を低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、支持体に固定された冷却部を有する冷凍機と、当該冷却部を介して被冷却物を冷却する冷却装置において、前記被冷却物と当該冷却部は、流動可能な冷媒で満たされた伸縮可能な配管からなる構造体で繋がり、当該配管の外周には、前記支持体側に固定された第一の磁性体と当該配管側に固定された第二の磁性体とが配置され、当該第一の磁性体と当該第二の磁性体とが非接触に維持されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、支持体が真空容器のような場合について、支持体である真空容器に固定された冷却部を有する冷凍機と、当該冷却部を介して当該真空容器内に配置された被冷却物を冷却する冷却装置において、前記被冷却物と当該冷却部は、流動可能な冷媒で満たされた伸縮可能な配管からなる構造体で繋がり、当該配管の外周には、前記真空容器側に固定された第一の磁性体と当該配管側に固定された第二の磁性体とが配置され、当該第一の磁性体と当該第二の磁性体とが非接触に維持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特に真空下においても、冷凍機を用いて被冷却物を効率良く冷却しつつ、冷凍機からの振動を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の実施形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態としての冷却装置の構成を示す断面図である。
【0018】
図1において、一点鎖線で囲われた部分が本実施の形態の冷却装置の要部1を示す。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態の冷却装置は、例えば、気体の圧縮と膨張を繰り返すことにより冷却部を形成する冷凍機と、冷却部を介して減圧可能な支持体である真空容器内に配置された被冷却物を冷却する真空冷却装置である。ただし、冷却装置として、冷凍機を支持できる機械的な強度を有するものであれば、支持体を真空容器に限定されるものではない。
【0020】
具体的には、冷凍機冷却部14を有する冷凍機本体12は、OリングA15、OリングB17でそれぞれシールされた、冷凍機真空フランジ部13、真空配管部2及び真空容器16からなる真空容器側の部材に固定されている。
【0021】
また、冷凍機冷却部14と接触している伝熱板A7及び伝熱板B8とが、伸縮可能な配管9の中の冷媒を封入して一つの構造体をなし、被冷却物18は、この構造体を介して冷凍機本体12に吊るされている状態になっている。
【0022】
伝熱板B8と被冷却物18との固定は、ネジ等の冶具が使用されるが、図1に記されているように、例えば、被冷却物18が冷凍機冷却部14と弾性体としてのばね10で保持されていてもよい。
【0023】
図1では、第一の磁性体としての磁性流体5を封入した筒状容器4が記され、支持体となっている真空容器側に固定されている。筒状容器4の内部には、抵抗を受けるためのオリフィス6を有していてもよい。
【0024】
また、第二の磁性体11は、第一の磁性体の磁力線が及び範囲内の配管9側に固定されている。
【0025】
特に、一点鎖線で囲まれた要部1は、真空配管部2と、伝熱部3と、第一の磁性体である磁性流体5が封入された筒状容器4とにより構成される。
【0026】
各部については以下に詳細に説明する。
【0027】
点線で囲われた伝熱部3は、以下のものから構成されている。冷凍機冷却部14にネジ等で密着される伝熱性の高い金属製の伝熱板A7と、被冷却物18にネジ等で密着される伝熱性の高い金属製の伝熱板B8と、配管9と、ばね10と、第二の磁性体11とである。
【0028】
配管9の内部には流動可能な気相液相混合冷媒が満たされている。伸縮可能な配管9は、真空配管部2の中空部における中心に位置するように配置されている。
【0029】
第一の磁性体である磁性流体5が封入された筒状容器4と第二の磁性体11は、両者間の磁気力の強さ及び均衡を考慮して互いに接触しないように配置されるため、真空配管部2からの振動を受けることがない。
【0030】
具体的には、筒状容器4は、中空部を有し、真空配管部2の内壁に固定され、配管9の外周を覆うように配置されている。第一の磁性体として、筒状容器4の内部には磁性流体5が封入され、筒状容器4の内壁には磁性流体の流れから抵抗力を受けるオリフィス6が設けられてもよい。
【0031】
永久磁石などの第二の磁性体11は、配管9の外周と筒状容器4の内壁との間の空間内に配置され、第一の磁性体である筒状容器4の内壁と所定の間隔を維持するように、それらの対称性や距離を考慮して設けられている。
【0032】
冷凍機本体12は、冷凍機真空フランジ部13でOリングA15を介して真空配管部2に接続され、真空配管部2と真空容器16が同様にOリングB17を介して接続される。このようにすることにより、真空配管部2内及び真空容器16内は図示していない真空排気機構により真空排気され真空状態となる。
【0033】
冷凍機冷却部14にネジ等を用いて伝熱板A7を密着させ、配管9及びばね10で繋がれた伝熱板B8を被冷却物18へネジ等を用いて支持させる。
【0034】
このようにすることにより、伝熱板A7及び配管9内に満たされた気相液相混合冷媒及び伝熱板B8を介してのみ被冷却物18が冷却される。
【0035】
さらに、冷凍機冷却部14に密着している伝熱板A7を被冷却物18に密着している伝熱板B8より上方に配置されるように構成する。
【0036】
このようにすることにより、伝熱板A7に近接する配管9内上部に滞留する気相状態の冷媒が冷却液化され配管9内下部へ移動する。そのため、配管9内下部の液相状態の冷媒においても温度変化による比重の違いにより自然対流する。
【0037】
このようになることから、最も低温に冷却された冷媒が常に下方の伝熱板B8近傍に集まり、高い伝熱効果を得ることができる。
【0038】
さらに、冷媒すべてが真空条件下に配置されているために外部からの熱影響を極めて小さくすることが可能となる。
【0039】
伝熱板A7及び伝熱板B8を介して冷凍機冷却部14と被冷却物18を繋いでいる配管9は、柔軟性のある蛇腹構造からなる金属配管でできており、冷凍機から直接伝わる振動を低減することができる。
【0040】
しかし、自由に動いてしまうために被冷却物18の位置が定まらず自由振動状態となる。
【0041】
そこで、ばね10を用いて伝熱板A7及び伝熱板B8を繋ぐことにより被冷却物18の上下方向の位置を任意に定めることができる。
【0042】
また、伝熱板B8の縁上に配置された第二の磁性体11及び第一の磁性体となる筒状容器4内の磁性流体5間の磁気力により被冷却物18の横方向の変位を抑えることができる。
【0043】
さらに、被冷却物18及び伝熱板B8が変位した場合、伝熱板B8の縁上に配置された第二の磁性体11の作用により、近傍に配置される第一の磁性体である磁性流体5が第二の磁性体11の動きに合わせて移動することとなる。
【0044】
筒状容器4内を磁性流体5が移動する際にオリフィス6によって発生する抵抗が第二の磁性体11へ反作用することにより、伝熱板B8及び被冷却物18の変位を減衰することもできる。
【0045】
被冷却物18の位置を制御する第一の磁性体となる筒状容器4内の磁性流体5と被冷却物18とが非接触構造であるために、冷凍機への熱負荷を低減しつつ冷却効率を高めることができる。
【0046】
配管9に満たされる冷却媒体の例として、常温から0℃程度までは水、−50℃程度までは二酸化炭素、−100℃程度まではブタンガス等が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、特に真空容器中で処理される基板やレーザー発振部を冷却する際に用いられる冷却装置に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態としての冷却装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 冷却装置の要部
2 真空配管部
3 伝熱部
4 筒状容器
5 磁性流体
6 オリフィス
7 伝熱板A
8 伝熱板B
9 配管
10 ばね
11 第二の磁性体
12 冷凍機本体
13 冷凍機真空フランジ部
14 冷凍機冷却部
15 OリングA
16 真空容器
17 OリングB
18 被冷却物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体に固定された冷却部を有する冷凍機と、当該冷却部を介して被冷却物を冷却する冷却装置において、
前記被冷却物と前記冷却部は、流動可能な冷媒で満たされた伸縮可能な配管からなる構造体で繋がり、
当該配管の外周には、前記支持体側に固定された第一の磁性体と当該配管側に固定された第二の磁性体とが配置され、当該第一の磁性体と当該第二の磁性体とが非接触に維持されることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記配管は、蛇腹構造を有する金属配管であることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記第一の磁性体は、磁性流体からなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の冷却装置。
【請求項4】
支持体である真空容器に固定された冷却部を有する冷凍機と、当該冷却部を介して当該真空容器内に配置された被冷却物を冷却する冷却装置において、
前記被冷却物と前記冷却部は、流動可能な冷媒で満たされた伸縮可能な配管からなる構造体で繋がり、
当該配管の外周には、前記真空容器側に固定された第一の磁性体と当該配管側に固定された第二の磁性体とが配置され、当該第一の磁性体と当該第二の磁性体とが非接触に維持されることを特徴とする真空冷却装置。
【請求項5】
前記配管は、蛇腹構造を有する金属配管であることを特徴とする請求項4記載の真空冷却装置。
【請求項6】
前記第一の磁性体は、磁性流体からなることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の真空冷却装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−156528(P2009−156528A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336763(P2007−336763)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(503421139)キヤノンアネルバテクニクス株式会社 (26)