説明

冷却装置

【課題】高さが異なる複数の並列するコアを備えた異形パッケージで発生する振動および騒音を低減できる冷却装置を提供する。
【解決手段】装置本体21内に、高さが異なる複数の並列するコア22,23と、これらのコア22,23にわたって対向設置した冷却ファン24と、この冷却ファン24の周囲にあって複数のコア22,23を経て吸引した空気を冷却ファン24に導くシュラウド25とを設置する。このシュラウド25は、冷却ファン24の投影面が複数のコア22,23面に納まらないコア間段差部31を冷却ファン24の径方向外側へ角形に膨出させて形成した容積増加部32を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高さが異なる複数の並列するコアを備えた冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の冷却装置では、サイドバイサイドで並置された複数のコア(熱交換器本体)に対して、冷却ファンにより吸引される冷却風の流量配分が所定の配分となるように、特定のコアと冷却ファンとの間に、冷却風案内用のガイド部材を設けるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、図5に示されるように、小旋回ショベルのクーリングパッケージ1では、スペースの制約から、並列するクーリングユニット2,3の高さが異なる異形パッケージとなることがある。そのため、冷却ファン4の投影面が各クーリングユニット2,3のコア5,6に納まらず、振動・騒音の原因となっている。
【0004】
すなわち、冷却ファン4の翼が、高さの異なるコア5,6間に位置するコア間段差部7を通過する際に、翼面の圧力バランスが崩れ、振動が発生する。一方、冷却ファン4はできるだけ大きい方が、効率が良く、パッケージ幅に収まる最大のものを選択したいので、冷却ファン4の径を小さくして、冷却ファン4の翼がコア5,6でないコア間段差部7を通過しないようにすることは、望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−61308号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、異形パッケージでは、振動および騒音の発生により、オペレータの作業環境が悪化し、また、振動の発生により冷却ファンの軸受部分などの関連コンポーネントの耐久性が低下する問題がある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、高さが異なる複数の並列するコアを備えた異形パッケージで発生する振動および騒音を低減できる冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、高さが異なる複数の並列するコアと、これらのコアにわたって対向設置された冷却ファンと、この冷却ファンの周囲にあって複数のコアを経て吸引した空気を冷却ファンに導くシュラウドとを具備し、このシュラウドは、冷却ファンの投影面が複数のコア面に納まらないコア間段差部を冷却ファンの径方向外側へ膨出させて形成した容積増加部を備えた冷却装置である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、高さが異なる複数の並列するコアと、これらのコアにわたって対向設置された冷却ファンと、この冷却ファンの周囲にあって複数のコアを経て吸引した空気を冷却ファンに導くシュラウドと、このシュラウドにて冷却ファンの投影面が複数のコア面に納まらないコア間段差部に対してコア背後の空気を導くバイパス風路と具備した冷却装置である。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項2記載の冷却装置において、バイパス風路での圧力損失を調整する圧力損失調整部材を具備したものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された発明によれば、複数のコアを経て吸引した空気を冷却ファンに導くシュラウドは、複数のコア間であって冷却ファンの投影面内に設けられたコア間段差部を径方向外側へ膨出させて形成した容積増加部を備えているので、この容積増加部における蓄圧作用によって圧力の変動を抑制し、異形パッケージで発生する振動および騒音を低減できる。
【0012】
請求項2に記載された発明によれば、バイパス風路により、コア背後の空気を、シュラウドにて複数のコア間であって冷却ファンの投影面内に設けられたコア間段差部に導くことで、このコア間段差部における圧力の変動を抑制し、異形パッケージで発生する振動および騒音を低減できる。さらに、バイパス風路によりコア未通過で低温のままの空気を冷却ファンより吹出させ、外部の高温部も効率良く冷却できる。
【0013】
請求項3に記載された発明によれば、圧力損失調整部材によりバイパス風路に適切な圧力損失を生じさせることで、コアを通過する風量に影響を与えないように調整して、必要なコア通過風量を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本発明に係る冷却装置の一実施の形態を示す正面図、(b)はその対比従来例を示す正面図である。
【図2】(a)は同上冷却装置の斜視図、(b)はその対比従来例の斜視図である。
【図3】同上冷却装置が搭載された作業機械の斜視図である。
【図4】同上冷却装置の他の実施の形態を示す断面図である。
【図5】従来の冷却装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、図1乃至図3に示された一実施の形態、図4に示された他の実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
先ず、図1(a)、図2(a)および図3に示された一実施の形態を説明する。
【0017】
図3は、作業機械としての油圧ショベル11を示し、下部走行体12に対し旋回可能に設けられた上部旋回体13にキャブ14およびフロント作業装置15とともに、エンジン16および冷却装置としてのクーリングパッケージ17などが搭載されている。
【0018】
図1(a)および図2(a)は、クーリングパッケージ17を示し、背面に通気穴を有する装置本体21内に、高さが異なる複数の並列するコア22,23と、これらのコア22,23にわたって対向設置された冷却ファン24と、この冷却ファン24の周囲にあって複数のコア22,23を経て吸引した空気を冷却ファン24に導くシュラウド25とが設置されている。
【0019】
コア22,23の下部および上部には、エンジン冷却水または作動油などの被冷却流体を一時溜めるタンク26,27がそれぞれ設けられ、これらのタンク26,27には配管28,29が接続されている。
【0020】
このシュラウド25は、冷却ファン24の投影面が複数のコア22,23面に納まらないコア間段差部31を、図1(b)および図2(b)に示された対比従来例よりも冷却ファン24の径方向外側へ角形に膨出させて形成した容積増加部32を備えている。
【0021】
次に、この図1(a)および図2(a)に示された実施形態の作用効果を説明する。
【0022】
コア間段差部31は、冷却ファン24の径方向外側へ膨出形成した容積増加部32を備えているので、この容積増加部32における蓄圧作用によって、冷却ファン24の翼がコア間段差部31を通過するときの圧力変動を吸収し、抑制する。
【0023】
このように、複数のコア22,23を経て吸引した空気を冷却ファン24に導くシュラウド25は、複数のコア22,23間であって冷却ファン24の投影面内に設けられたコア間段差部31を径方向外側へ膨出させて形成した容積増加部32を備えているので、この容積増加部32における蓄圧作用によって圧力の変動を抑制し、異形パッケージで発生する振動および騒音を低減できる。
【0024】
以上のように、シュラウド25内の空間の拡大によって、高さが異なるコア22,23間の段差部におけるシュラウド25内の風量を確保して、ファン翼面の圧力バランスを確保するので、振動や騒音を低減でき、この振動および騒音の低減により、オペレータの作業環境を改善できる。また、振動の抑制により冷却ファン24の軸受などの、関連コンポーネントの寿命を延命できる。
【0025】
次に、図4に示された他の実施の形態を説明する。
【0026】
図4に示されたクーリングパッケージ17は、背面に通気穴20を有する装置本体21内に、高さが異なる複数の並列するコア22,23と、これらのコア22,23にわたって対向設置された冷却ファン24と、この冷却ファン24の周囲にあって複数のコア22,23を経て吸引した空気を冷却ファン24に導くシュラウド25とが設置されている。コア22,23の下部および上部には、エンジン冷却水または作動油などの被冷却流体を一時溜めるタンク26,27がそれぞれ設けられている。
【0027】
このシュラウド25にて冷却ファン24の投影面が複数のコア22,23面に納まらないコア間段差部31に対して仕切板35より後方のコア背後の空気を導くダクト36によりバイパス風路37が設けられている。
【0028】
このバイパス風路37には、このバイパス風路37での圧力損失を調整する圧力損失調整部材38が設けられている。この圧力損失調整部材38は、コア22,23での通気量を確保して冷却性能を維持するために設置するものであり、多数のパンチ穴を開けたパンチングメタル、メッシュパネル、ウレタンフォームなどを用いる。
【0029】
次に、図4に示された実施の形態の作用効果を説明する。
【0030】
冷却ファン24の吸引作用により、外部の空気が、装置本体の通気穴20からコア22,23の通風間隙を通って冷却ファン24に吸込まれ、反対側へ送風される。その際、冷却ファン24の投影面が複数のコア22,23面に納まらないコア間段差部31に対してバイパス風路37によりコア背後の空気を導くことで、コア間段差部31においてもコア22,23面と同様に通気性を確保し、圧力が変化しないようにする。
【0031】
この圧力は、バイパス風路37内に設置された圧力損失調整部材38によって調整する。すなわち、コア22,23面での圧力損失と同様の圧力損失が得られるように圧力損失調整部材38により調整して、コア間段差部31とコア22,23面とで同一の通過風量が得られるように調整する。
【0032】
そして、バイパス風路37により、コア背後の空気を、シュラウド25にて複数のコア22,23間であって冷却ファン24の投影面内に設けられたコア間段差部31に導くことで、このコア間段差部31における圧力の変動を抑制し、異形パッケージで発生する振動および騒音を低減できる。さらに、バイパス風路37によりコア未通過で低温のままの空気を冷却ファン24より吹出させ、外部の高温部、例えばエンジンルーム内のエンジンなども効率良く冷却できる。
【0033】
圧力損失調整部材38によりバイパス風路37に適切な圧力損失を生じさせることで、コア22,23を通過する風量に影響を与えないように調整して、必要なコア通過風量を確保できる。
【0034】
以上のように、バイパス風路37によって、高さが異なるコア22,23間の段差部に対するシュラウド25内の風量を確保して、ファン翼面の圧力バランスを確保するので、振動や騒音を低減でき、この振動および騒音の低減により、オペレータの作業環境を改善できる。また、エンジンルーム内に、バイパス風路37によってクーリングパッケージ未通過の低温の空気を導き、温度上昇を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の冷却装置は、油圧ショベルなどの作業機械、他の作業用車両、定置式動力装置の冷却装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
22,23 コア
24 冷却ファン
25 シュラウド
31 コア間段差部
32 容積増加部
37 バイパス風路
38 圧力損失調整部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さが異なる複数の並列するコアと、
これらのコアにわたって対向設置された冷却ファンと、
この冷却ファンの周囲にあって複数のコアを経て吸引した空気を冷却ファンに導くシュラウドとを具備し、
このシュラウドは、冷却ファンの投影面が複数のコア面に納まらないコア間段差部を冷却ファンの径方向外側へ膨出させて形成した容積増加部を備えた
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
高さが異なる複数の並列するコアと、
これらのコアにわたって対向設置された冷却ファンと、
この冷却ファンの周囲にあって複数のコアを経て吸引した空気を冷却ファンに導くシュラウドと、
このシュラウドにて冷却ファンの投影面が複数のコア面に納まらないコア間段差部に対してコア背後の空気を導くバイパス風路と
具備したことを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
バイパス風路での圧力損失を調整する圧力損失調整部材
を具備したことを特徴とする請求項2記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−159691(P2010−159691A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2421(P2009−2421)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)