説明

冷却装置

【課題】大気とブラインとの接触を極力回避するとともに、ブラインの使用量を少なくすることができる冷却装置を提供する。
【解決手段】冷凍機20の低温冷媒とブラインとを熱交換させてブラインを冷却する熱交換器31と、熱交換器で冷却されたブラインを貯留するブラインタンク32と、ブラインタンク内のブラインを循環ポンプ33を介して発熱体12の冷却回路34に供給するブライン供給経路35と、発熱体の冷却回路からブラインを熱交換器に回収するブライン回収経路36とを備えたブライン循環経路30を有するとともに、ブラインタンクの上方にリザーブタンク27を備え、リザーブタンクとブラインタンクとの間には、ブラインタンクの上部とリザーブタンクの上部とを接続するガス抜き経路38と、ブラインタンクの下部とリザーブタンクの下部とを接続するブライン補給経路39とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関し、詳しくは、冷凍機によって低温状態としたブラインを循環させて発熱体を冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却負荷(発熱体)を冷却するための冷却装置として、冷却媒体(ブライン、不凍液)を貯留した蓄熱槽の内部に冷凍サイクルにおける冷凍機の蒸発器を設けるとともに、蓄熱槽内のブラインを冷却負荷(発熱体)に循環させる循環路を設け、冷凍機によって冷却したブラインを介して発熱体を冷却する冷却システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−106924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、蒸発器を設けた蓄熱槽内にブラインを貯留した状態で使用するため、大量のブラインを必要とするだけでなく、ブラインの液面が流動する状態となっているので大気とブラインとの接触機会が多く、ブラインが大気中の水分を吸収して変質することがあった。また、蓄熱槽や循環路を完全に密閉して大気との接触を遮断しようとすると、ブラインの熱膨張、熱収縮による体積変化による圧力変化で蓄熱槽や配管設備などが破損するおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、大気とブラインとの接触を極力回避するとともに、ブラインの使用量を少なくすることができる冷却装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の冷却装置は、冷凍機の低温冷媒との熱交換によって低温状態としたブラインを循環させて発熱体を冷却するための冷却装置において、前記低温冷媒と前記ブラインとを熱交換させてブラインを冷却する熱交換器と、該熱交換器で冷却されたブラインを貯留するブラインタンクと、該ブラインタンク内のブラインを循環ポンプを介して前記発熱体の冷却回路に供給するブライン供給経路と、前記発熱体の冷却回路からブラインを前記熱交換器に回収するブライン回収経路とを備えたブライン循環経路を有するとともに、前記ブラインタンクの上方にリザーブタンクを備え、該リザーブタンクと前記ブラインタンクとの間には、ブラインタンクの上部とリザーブタンクの上部とを接続するガス抜き経路と、ブラインタンクの下部とリザーブタンクの下部とを接続するブライン補給経路とが設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の冷却装置によれば、冷却運転中のブラインは、熱交換器、ブラインタンク、ブライン供給経路、発熱体、ブライン回収経路からなる密閉されたブライン循環経路を循環する状態となるので、大気とブラインとの接触を断つことができ、大気中の水分によるブラインの劣化を防止することができる。また、冷凍機の低温冷媒とブラインとの熱交換を熱交換器で行うので、前述のように冷凍機の蒸発器を蓄熱槽内に設ける場合に比べてブラインタンクの小型化を図ることができ、ブラインの使用量を大幅に少なくすることができる。さらに、ブラインの使用量が低減することで、ブライン全体の温度を短時間で均一化することができるので、装置の起動から定常運転に至るまでの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の冷却装置の一形態例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本形態例に示す冷却装置11は、冷凍機20の低温冷媒との熱交換によって低温状態としたブラインをブライン循環経路30に循環させて発熱体12を冷却するためのものであって、圧縮機21、凝縮器22、膨張器23及び蒸発器24を備えた冷凍サイクルを構成する冷凍機20と、該冷凍機20の蒸発器24で低温冷媒と熱交換したブラインを循環させるブライン循環経路30とを有している。
【0010】
ブライン循環経路30は、前記蒸発器24を組み込むとともにブライン冷却流路31aを組み込んで蒸発器24内を流れる低温冷媒とブラインとを間接熱交換させてブラインを冷却する熱交換器31と、該熱交換器31で冷却された低温のブラインを貯留するブラインタンク32と、該ブラインタンク32内の低温のブラインを循環ポンプ33を介して前記発熱体12の冷却回路34に供給するブライン供給経路35と、該発熱体12の冷却回路34からブラインを前記熱交換器31に回収するブライン回収経路36とを備えるとともに、前記ブラインタンク32の上方に配置されたリザーブタンク37を備えている。
【0011】
リザーブタンク37と前記ブラインタンク32との間には、ブラインタンク32の上部とリザーブタンク37の上部とを接続するガス抜き経路38と、ブラインタンク32の下部とリザーブタンク37の下部とを接続するブライン補給経路39とが設けられており、ブライン補給経路39は、ブラインタンク32の下方にトラップ構造を形成し、ブラインタンク32とリザーブタンク37との間のブラインの流れを抑えるようにしている。また、リザーブタンク37は、基本的に密閉された状態で形成されており、着脱可能な蓋37aに極めて小径の通気孔が設けられている。
【0012】
このように形成した冷却装置11による発熱体12の冷却運転は、以下のようにして行われる。まず、冷凍機20を始動して圧縮機21による冷媒の圧縮を開始し、圧縮機21で高圧に圧縮したガス状高温高圧冷媒を凝縮器22に導入し、ファン22aから送風される大気と熱交換させてガス状高温高圧冷媒を凝縮させることにより液状中温高圧冷媒とする。次に、この液状中温高圧冷媒を膨張弁などの膨張器23で膨張させて液状中温低圧冷媒とし、液状中温低圧冷媒を蒸発器24で蒸発させることによってガス状低温低圧冷媒とする。蒸発器24を出たガス状低温低圧冷媒は、圧縮機21に吸入されて圧縮され、ガス状高温高圧冷媒となって冷凍サイクル内を循環する。
【0013】
ブライン循環経路30では、循環ポンプ33を始動して該ブライン循環経路30内にブラインを循環させ、熱交換器31において、前記蒸発器24を流れるガス状低温低圧冷媒によってブライン冷却流路31aを流れるブラインを冷却することにより、あらかじめ設定された低温状態の低温ブラインとする。ブライン循環経路30内を循環するブラインの温度は、ブライン供給経路35に設けた温度計40によって確認される。
【0014】
熱交換器31を出た低温ブラインは、経路41を通ってブラインタンク32に流入し、ブラインタンク32の下部から循環ポンプ33に吸入され、ブライン供給経路35を通って発熱体12の冷却回路34に送り出される。冷却回路34で発熱体12を冷却することによって昇温したブラインは、ブライン回収経路36を通って熱交換器31のブライン冷却流路31aに循環する。
【0015】
循環するブライン中に発生した気泡は、ブラインタンク32内で液面上に浮上し、ガス抜き経路38を通ってリザーブタンク37に回収される。また、蒸発や熱収縮によってブライン循環経路30内を循環するブラインの体積が減少した際には、リザーブタンク37内のブラインが自重でブライン補給経路39を流下し、下方に位置するブラインタンク32内に補給される。逆に熱膨張でブラインの体積が増加した場合は、大気圧状態のリザーブタンク37とブライン循環経路30との圧力差に応じてブラインタンク32内のブラインがガス抜き経路38やブライン補給経路39を通ってリザーブタンク37に回収される。リザーブタンク37内の圧力は、蓋37aに設けた通気孔から大気を吸入したり、リザーブタンク37内のガスを放出することにより、大気圧状態に保持される。
【0016】
このようにして熱交換器31で冷却した低温のブラインを循環させて発熱体12の冷却を行う際に、ブラインと大気との接触はリザーブタンク37内のブラインの液面に限られており、リザーブタンク37の気相は、蓋37aに設けた小径の通気孔のみで大気と連通した状態になっており、リザーブタンク37内への大気の流入がほとんどない状態となっているので、周辺大気中の水分がリザーブタンク37の気相中に混入してブラインに吸収されることを抑えることができる。また、蒸発したブラインの蒸気がリザーブタンク37から大気中に放出されることも抑えることができるので、安全性や作業性を向上させることができる。
【0017】
さらに、リザーブタンク37は、低温のブラインが連続して流れるブライン循環経路30とは切り離された状態となっており、循環するブラインがリザーブタンク37内に流入したり、リザーブタンク37からブライン循環経路30にブラインが流出したりすることがほとんどないため、リザーブタンク37内のブラインが吸湿しにくい常温状態になっていることから、ブラインの水分吸収量を大幅に少なくすることができる。これにより、水分の吸収によるブラインの変質を抑えてブラインのライフサイクルを大幅に延長することができる。さらに、リザーブタンク37は、低温のブラインがほとんど流入しないので断熱構造を採用する必要がなく、製作コストの上昇を抑えることができる。
【0018】
また、前記ブラインタンク32は、ブライン循環経路30を循環するブラインの流速を一時的に遅くしてブライン内に混入した気泡をタンク上部に分離可能な形状及び容積とすればよく、従来のように蒸発器を槽内部に設けた蓄熱槽に比べてブラインタンク32内に貯留するブラインの量を大幅に少なくすることができる。これにより、ブライン循環経路30を含めた全体的なブラインの所要量を少なくでき、ブラインにおける初期コストや保守コストの低減、循環するブラインを冷却するために要する時間の短縮、冷凍機20の消費電力量の削減などを図ることができるとともに、冷却装置11の小型化及び低価格化を図ることができる。したがって、実験台の下などの狭い場所にも冷却装置11を設置することが可能となり、装置の起動から冷却運転に至る時間の短縮により、各種実験の効率を向上させることができる。
【0019】
ブライン循環経路30及びリザーブタンク37内のブラインの抜き取りは、ブラインタンク32の下部にブライン抜き取り経路42を設けておくことによって容易に行うことができ、また、ブライン循環経路30内の洗浄は、リザーブタンク37から洗浄液を注入しながら循環ポンプ33を運転してブライン循環経路30内に洗浄液を流し、ブラインタンク32の直前の経路41に設けた洗浄液排出経路43から洗浄液を排出することによって容易に行うことができる。
【0020】
なお、冷凍機20には、市販の各種冷凍機を採用することができ、前記熱交換器31にも、市販の各種熱交換器を使用することが可能である。また、発熱体12の冷却回路34は、発熱体12の形状などに応じて適宜な構造を採用することができる。さらに、発熱体12の温度制御が必要な場合は、従来からこの種の冷却装置に採用されている制御手段を採用することができ、例えば、インバータ制御によって圧縮機21や循環ポンプ33の回転数を制御するなどの方法も採用可能である。
【符号の説明】
【0021】
11…冷却装置、12…発熱体、20…冷凍機、21…圧縮機、22…凝縮器、22a…ファン、23…膨張器、24…蒸発器、30…ブライン循環経路、31…熱交換器、31a…ブライン冷却流路、32…ブラインタンク、33…循環ポンプ、34…冷却回路、35…ブライン供給経路、36…ブライン回収経路、37…リザーブタンク、37a…蓋、38…ガス抜き経路、39…ブライン補給経路、40…温度計、41…経路、42…ブライン抜き取り経路、43…洗浄液排出経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍機の低温冷媒との熱交換によって低温状態としたブラインを循環させて発熱体を冷却するための冷却装置において、前記低温冷媒と前記ブラインとを熱交換させてブラインを冷却する熱交換器と、該熱交換器で冷却されたブラインを貯留するブラインタンクと、該タンク内のブラインを循環ポンプを介して前記発熱体の冷却回路に供給するブライン供給経路と、前記発熱体の冷却回路からブラインを前記熱交換器に回収するブライン回収経路とを備えたブライン循環経路を有するとともに、前記ブラインタンクの上方にリザーブタンクを備え、該リザーブタンクと前記ブラインタンクとの間には、ブラインタンクの上部とリザーブタンクの上部とを接続するガス抜き経路と、ブラインタンクの下部とリザーブタンクの下部とを接続するブライン補給経路とが設けられていることを特徴とする冷却装置。

【図1】
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