冷却装置
【課題】この発明は、低温側循環回路に蓄熱回路を設けることで、冷却運転時や霜取時の電力を有効に利用できる冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却装置100は、高温側装置10と、低温側装置20と、高温側冷媒と低温側冷媒との間の熱交換を行う冷媒間熱交換器30と、低温側圧縮機21の吸入側圧力を検知する手段28と、低温側装置に設けられ、蓄熱を行う蓄熱回路56と、蓄熱された冷熱を過冷却に利用するための連結管58と、冷却装置の各機器を制御する制御装置40とを備える。
【解決手段】冷却装置100は、高温側装置10と、低温側装置20と、高温側冷媒と低温側冷媒との間の熱交換を行う冷媒間熱交換器30と、低温側圧縮機21の吸入側圧力を検知する手段28と、低温側装置に設けられ、蓄熱を行う蓄熱回路56と、蓄熱された冷熱を過冷却に利用するための連結管58と、冷却装置の各機器を制御する制御装置40とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、家庭用・業務用冷凍冷蔵庫、超低温冷蔵庫、冷凍冷蔵ショーケース冷却システム等に利用できる冷却装置に関するものであって、特に、複数の冷媒循環回路を多段構成した多元冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば高温側として冷媒循環回路を形成する高温側装置と、低温側として冷媒循環回路を形成する低温側装置とをそれぞれ形成して多段で構成した冷却装置がある(ここでは二段構成の二元冷却装置として記述する)。このような二元冷却装置では、高温側装置の蒸発器での冷媒の蒸発熱と低温側装置の凝縮器での冷媒の凝縮熱とを熱交換しながら、最終段となる低温側装置の蒸発器において冷却対象との熱交換を行うことにより冷却運転を行っている。これにより、低温側装置の蒸発器において、マイナス数十度の低温度の蒸発熱を効率良く得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−190917号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の二元冷却装置においては、夜間等の冷却負荷の軽い時に、通常の冷却運転を行う場合、冷却負荷に合わせた低い出力で低温側装置の圧縮機を駆動させると、圧縮機として効率の悪い運転となってしまう。また、圧縮機を効率が良いとされる出力で駆動させた場合、冷却負荷に対して不必要に大きな出力となってしまう。また、必要な時だけ圧縮機を駆動させるようにした場合においては、起動と停止を繰り返すこととなってしまう。いずれの場合においても、二元冷却装置においては、無駄に電力を消費することとなっていた。
【0005】
また、低温側装置の蒸発器において霜取を行う場合、例えば所定時間毎に冷却運転を停止し、低温側装置の蒸発器を霜取ヒータ等により加熱して、霜を溶かしている。このとき、霜取時にヒータを作動させることによって周囲温度が上昇して冷媒の温度が上昇し、冷媒の圧力が上昇してしまう。特に、特許文献1のように低温側装置の冷媒として二酸化炭素(以下、CO2)を用いている場合、霜取時に高温側の循環回路を停止させることでCO2冷媒の圧力が上昇して臨界圧力を超えてしまう可能性がある。そのため、霜取時に高温側の冷媒循環回路の圧縮機を動作させて、低温側装置の凝縮器を冷却することで、低温側冷媒の圧力上昇を防いでいる。
【0006】
また、一般的な冷却装置では、霜取時間は、例えば1回あたり30〜40分程度必要とし、定期的に1日あたり4〜5回程度の霜取を行う。したがって、高温側装置の圧縮機は1日あたり2〜3時間程度、余分に駆動することになり、無駄に電力を消費することとなっていた。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、冷却運転時や霜取時において、電力を有効に利用することができる冷却装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る冷却装置は、
高温側圧縮機、高温側凝縮器、高温側絞り装置および高温側蒸発器を配管接続して、高温側冷媒を循環させる高温側循環回路を形成する高温側装置と、
低温側圧縮機、低温側凝縮器、受液器、第1開閉手段、低温側絞り装置および低温側蒸発器を配管接続して、低温側冷媒を循環させる低温側循環回路を形成する低温側装置と、
高温側蒸発器および低温側凝縮器により構成し、高温側冷媒と低温側冷媒との間の熱交換を行う冷媒間熱交換器と、
受液器と第一開閉手段とを接続する配管から分岐され、第2開閉手段、蓄熱用絞り装置、蓄熱タンク内に封入された蓄熱媒体と熱交換を行う蓄熱用蒸発器、および第3開閉手段を順次配管接続して、低温側蒸発器と低温側圧縮機とを接続する配管に接続する蓄熱回路と、
蓄熱用蒸発器と第3開閉手段とを接続する配管から分岐され、逆止弁を介して第1開閉手段と低温側絞り装置とを接続する配管に接続する連結管と、
少なくとも、高温側圧縮機、高温側絞り装置、低温側圧縮機、第1開閉手段、低温側絞り装置、第2開閉手段、蓄熱用絞り装置、蓄熱用蒸発器、および第3開閉手段を制御する制御装置と
を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の冷却装置によれば、低温側循環回路に蓄熱回路を設けたので、冷却負荷の軽い時の冷却運転では、余剰冷媒を利用して冷却運転を行いながら蓄熱を行い、また、霜取時には低温側蒸発器の加熱を行いつつ蓄熱を行うことができ、蓄熱された熱量を冷却運転時に過冷却に利用できる。従って、冷却装置の電力を有効に利用することができて、冷却装置の電力の平準化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1における二元冷却装置の、通常冷却運転時の冷媒回路を表す図である。
【図2】この発明の実施の形態1における二元冷却装置の、蓄熱冷却運転時の動作を説明するフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1における二元冷却装置の、蓄熱冷却運転時の冷媒回路を表す図である。
【図4】この発明の実施の形態1における二元冷却装置の、過冷却運転時の動作を説明するフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1における二元冷却装置の、過冷却運転時の冷媒回路を表す図である。
【図6】この発明の実施の形態1における二元冷却装置の、運転状態による各機器の作動を示す表である。
【図7】この発明の実施の形態1における二元冷却装置の、通常冷却運転時と過冷却運転時の冷媒状態の推移を説明するp−h線図である。
【図8】この発明の実施の形態1における二元冷却装置の、冷却運転停止時の冷媒回路を表す図である。
【図9】この発明の実施の形態2における二元冷却装置の、霜取時の一連の動作を説明するフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態2における二元冷却装置の、ポンプダウン運転を行う時の冷媒回路を表す図である。
【図11】この発明の実施の形態2における二元冷却装置の、第1の蓄熱霜取運転時の冷媒回路を表す図である。
【図12】この発明の実施の形態2における二元冷却装置の、第2の蓄熱霜取運転時の冷媒回路を表す図である。
【図13】この発明の実施の形態2における二元冷却装置の、運転状態による各機器の作動を示す表である。
【図14】この発明の実施の形態3における二元冷却装置の冷媒回路構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の本実施の形態における二元冷却装置の冷媒回路を表す図である。図1に示すように、本実施の形態における二元冷却装置100は、高温側装置10と低温側装置20とを有し、それぞれ独立して冷媒を循環させる冷媒循環回路を構成する。高温側装置10は、高温側圧縮機11と、高温側凝縮器12と、高温側絞り装置13と、高温側蒸発器14とを直列に配管で接続し、冷媒を循環させる高温側循環回路1aを構成している。一方、低温側装置20は、低温側圧縮機21と、低温側凝縮器22と、受液器23と、第1開閉手段24と、低温側絞り装置25と、低温側蒸発器26とを直列に配管で接続し、冷媒を循環させる低温側循環回路2aを構成している。そして、高温側循環回路1aおよび低温側循環回路2aを二段構成とするために、高温側蒸発器14と低温側凝縮器22とを、それぞれ通過する冷媒間での熱交換を可能にするよう構成した冷媒間熱交換器としてのカスケードコンデンサ30を設けている。また、二元冷却装置100全体の運転制御を行う制御装置40を有している。
【0012】
更に、受液器23と第1開閉手段24とを接続する配管から分岐されて、第2開閉手段51と、蓄熱用絞り装置52と、冷熱が蓄熱される蓄熱媒体55が封入された蓄熱タンク50内に配置された蓄熱用蒸発器53と、第3開閉手段54とを直列に配管で接続し、低温側圧縮機21の吸入側配管に接続される蓄熱回路56が形成されている。さらに、蓄熱タンク50と第3開閉手段54とを接続する配管から分岐され、冷媒の流れを一方向にのみ許容する逆止弁57を介し、逆止弁57の冷媒流れ方向下流側で、第1開閉手段24と低温側絞り装置25とを接続する配管に接続される連結管58が形成される。
【0013】
このような構成の二元冷却装置100において、高温側循環回路1aを循環する冷媒(以下、高温側冷媒という)として、例えばR410A、R32、R404A、HFO−1234yf、プロパン、イソブタン、二酸化炭素、アンモニア等が用いられる。地球温暖化に対する影響が小さい他の自然冷媒や、冷媒量を極力抑えた、効率のよい他のHFC冷媒等を用いてもよい。また、低温側循環回路2aを循環する冷媒(以下、低温側冷媒という)として上記冷媒を用いてもよいが、本実施の形態では、地球温暖化に対する影響が小さい二酸化炭素(CO2)を用いる。一般的に、CO2は、飽和圧が高く、臨界点が低い(31℃)ため、二元冷却装置での低温側冷媒に適しており、冷却温度として極低温が得られやすい。
【0014】
二元冷却装置100の各構成機器についてさらに詳しく説明する。高温側圧縮機11は、高温側冷媒を吸入して圧縮し、高温・高圧の状態にして吐出するものであって、例えばインバータ等により回転数を制御し、高温側冷媒の吐出量を調整可能な圧縮機で構成するとよい。高温側凝縮器12は、送風機(図示せず)により供給される空気と高温側冷媒との間で熱交換を行い、高温側冷媒を凝縮させて液化させるものである。
【0015】
高温側絞り装置13は、制御装置40からの指示に基づいて開度調整される流量制御装置で構成され、高温側冷媒を膨張させて減圧させるものである。例えば、電子式膨張弁等で構成することが最適であるが、毛細管(キャピラリチューブ)、感温式膨張弁等で構成してもよい。高温側蒸発器14は、カスケードコンデンサ30において高温側冷媒が通過する伝熱管等であって、低温側冷媒との熱交換により高温側冷媒を蒸発させてガス化するものである。
【0016】
一方、低温側装置20において、低温側圧縮機21は、低温側冷媒を吸入して圧縮し、高温・高圧の状態にして吐出するものであって、例えばインバータ等により回転数を制御し、低温側冷媒の吐出量を調整可能な圧縮機で構成するとよい。低温側圧縮機21の吸入側配管には、低温側冷媒の圧力を検知する圧力検知手段としての吸入側圧力センサー28が設けられている。
【0017】
低温側凝縮器22は、カスケードコンデンサ30において低温側冷媒が通過する伝熱管等であって、高温側冷媒との熱交換により低温側冷媒を凝縮させて液化するものである。
【0018】
受液器23は、余剰冷媒を溜めておくためのものであり、低温側循環回路2a内の全冷媒を回収可能な容量を有している。また、第1開閉手段24は、開閉によって低温側循環回路2aにおける低温側冷媒の流れを制御するものであって、電磁弁等が用いられる。
【0019】
低温側絞り装置25は、制御装置40からの指示に基づいて開度調整される流量制御装置で構成され、低温側冷媒を膨張させて減圧させるものである。例えば、電子式膨張弁等で構成することが最適であるが、毛細管(キャピラリチューブ)、感温式膨張弁等で構成してもよい。
【0020】
低温側蒸発器26は、送風機(図示せず)から供給される負荷側の空気と低温側冷媒との間で熱交換を行い、低温側冷媒を蒸発してガス化するものであり、それによりショーケースの庫内等、冷却対象(負荷)を冷却する。また、加熱手段としての霜取ヒータ27は、低温側蒸発器26に直接、またはドレンパン等の周辺部分に取り付けられ、霜取時に通電されることで発熱して、低温側蒸発器26およびその周辺部分に付いた霜を溶かす。
【0021】
カスケードコンデンサ30は、高温側蒸発器14と低温側凝縮器22とを有して、高温側冷媒と低温側冷媒とを熱交換可能にするものであり、例えばプレート熱交換器や二重管熱交換器等で構成される。
【0022】
第2開閉手段51、第3開閉手段54は、開閉によって蓄熱回路56における低温側冷媒の流れを制御するものであって、電磁弁等が用いられる。蓄熱用絞り装置52は、制御装置40からの指示に基づいて開度調整を行う流量制御装置で構成され、低温側冷媒を膨張させて減圧させるものである。例えば、電子式膨張弁等で構成することが最適であるが、毛細管(キャピラリチューブ)、感温式膨張弁等で構成してもよい。
【0023】
蓄熱用蒸発器53は、蓄熱タンク50内に配置され、蓄熱タンク50内に封入された蓄熱媒体55と熱交換して、低温側冷媒を蒸発ガス化するものである。一方の蓄熱媒体55は、低温側冷媒と熱交換して冷熱を蓄熱する。なお、本実施の形態では、蓄熱タンク50内の蓄熱媒体55として水を使用するが、ブライン等を用いても良い。
【0024】
なお、蓄熱用蒸発器53として、圧力損失の大きい分配器や分流管等を使用しないことが望ましい。これは、蓄熱媒体55として水を使用した時、熱伝導率が低い氷が伝熱面に生成して着氷量が増加して氷自体が熱抵抗体として作用し、運転の経過とともに伝熱特性が悪化して、装置の運転効率が低下するという問題があるからである。
【0025】
制御装置40は、二元冷却装置100における各機器の動作を制御する。ここで、各機器とは、高温側圧縮機11、高温側絞り装置13、低温側圧縮機21、第1開閉手段24、低温側絞り装置25、霜取ヒータ27、吸入側圧力センサー28、第2開閉手段51、蓄熱用絞り装置52、蓄熱用蒸発器53、第3開閉手段54などである。なお、制御装置40は、高温側装置10、低温側装置20をそれぞれ制御する2台の制御装置で構成するようにしてもよいし、二元冷却装置100の外部から通信などで制御を行うようにしても良い。
【0026】
次に、二元冷却装置100の通常冷却運転時の動作について説明する。通常冷却運転は、高温側循環回路1aおよび低温側循環回路2aにおいて、図1で矢印で示すように冷媒が流れ、低温側蒸発器26の蒸発熱によって負荷を冷却する運転を行う。高温側循環回路1aでは高温側冷媒は、高温側圧縮機11から高温高圧の状態で吐出され、高温側凝縮器12で凝縮液化される。更に、高温側絞り装置13で膨張減圧されて、高温側蒸発器14で、低温側凝縮器22に流れる低温側冷媒と熱交換して蒸発ガス化されて、高温側圧縮機11に戻り吸入される。
【0027】
一方、低温側循環回路2aでは低温側冷媒は、低温側圧縮機21から高温高圧の状態で吐出され、低温側凝縮器22に流入し、高温側蒸発器14に流れる高温側冷媒と熱交換して凝縮液化され、受液器23に蓄えられる。受液器23を出た液冷媒は、開放された第1開閉手段24を通り、低温側絞り装置25で減圧された後、低温側蒸発器26で蒸発ガス化されて、低温側圧縮機21に戻り吸入される。通常冷却運転時は、第2開閉手段51は閉止されており、蓄熱回路56および連結管58に低温側冷媒は流れない。このとき、第3開閉手段54は閉止しても良いが、開放したままとしておくことで、不必要に開閉動作をさせずに済むため、本実施の形態では、第3開閉手段54は開放しておく。
【0028】
次に、冷却負荷が軽い時や、各電力会社が割安に設定している夜間(夜10時から朝8時まで)に、発生している余剰冷媒を利用して冷熱を蓄熱しつつ負荷の冷却を行う蓄熱冷却運転を行う時の動作について説明する。一般的に、夜間は昼間と比較して冷却負荷が軽いため、二元冷却装置100の冷凍能力を100%利用する必要が無く、余剰冷媒が発生していることが多い。
【0029】
本実施の形態の蓄熱冷却運転時の動作を表す図2のフローチャートを用いて、二元冷却装置100の動作について説明する。また、このときの高温側循環回路1aおよび低温側循環回路2aにおける冷媒の流れを、図3において矢印で示す。図6は、二元冷却装置100における各機器の、運転状態毎の作動を表に示したものである。
【0030】
高温側循環回路1aにおいては、通常冷却運転時と同様、高温側圧縮機11から吐出された高温側冷媒は、高温側凝縮器12で凝縮液化され、高温側絞り装置13で減圧された後、高温側蒸発器14で蒸発ガス化されて、高温側圧縮機11に戻る。
【0031】
まず、吸入側圧力センサー28により、低温側圧縮機21の吸入側圧力(低圧圧力)Psを検知する(S1)。そして、制御装置40は、予め算出され、負荷側温度(低温側蒸発器26の表面温度)の維持のために必要な基準圧力Pnと、検知した吸入側圧力Psを比較し、吸入側圧力Psが基準圧力Pn未満のときは、余剰冷媒があると判断する(S2)。吸入側圧力Psが基準圧力Pn以上のときは、通常冷却運転を継続する。
【0032】
このとき、第2開閉手段51を開放し、蓄熱用絞り装置52の開度を調整して、蓄熱冷却運転を実施する(S3)。このとき、低温側循環回路2aにおいては、低温側圧縮機21から吐出された低温側冷媒が、低温側凝縮器22で凝縮液化され、受液器23を通過した後に分流される。分流された低温側冷媒の一方は、第1開閉手段24を通過して、低温側絞り装置25で減圧され、低温側蒸発器26で蒸発ガス化された後、低温側圧縮機21に戻る。また、分流された低温側冷媒の他方は、蓄熱回路56に流入し、第2開閉手段51を通過して、蓄熱用絞り装置52で減圧され、蓄熱用蒸発器53で蒸発ガス化される。そして、第3開閉手段54を通過した後、低温側蒸発器26で蒸発ガス化された低温側冷媒と合流して、低温側圧縮機21に戻る。尚、連結管58には逆止弁57があるため、圧力差により低温側冷媒は流れることはない。
【0033】
また、蓄熱用絞り装置52の開度は、余剰冷媒量に応じて調整すればよい。そして、蓄熱タンク50内に設置され、蓄熱媒体の蓄熱量を検知する蓄熱量検知センサー(図示せず)によって検知された蓄熱量Tsが、予め設定された限界蓄熱量Tnに達したら(S4)、制御装置40は蓄熱タンク50には十分に冷熱が蓄熱されたと判断して、蓄熱冷却運転を終了し、通常冷却運転に戻る。蓄熱量検知センサーは、蓄熱媒体55に水を使用していれば、例えば、水位を検知する水位センサーなどを利用すると良い。
【0034】
次に、蓄熱された冷熱を利用して、昼間や冷却負荷が高い時に、過冷却運転を行う動作について、図4のフローチャートを用いて説明する。また、このときの高温側循環回路1aおよび低温側循環回路2aにおける冷媒の流れを、図5において矢印で示す。このとき、高温側循環回路1aにおいては、通常冷却運転時と同様、高温側圧縮機11から吐出された高温側冷媒は、高温側凝縮器12で凝縮液化され、高温側絞り装置13で減圧された後、高温側蒸発器14で蒸発ガス化されて、高温側圧縮機11に戻る。
【0035】
低温側循環回路2aにおいては、まず、吸入側圧力センサー28により、低温側圧縮機21の吸入側圧力Psを検知する(S11)。そして、制御装置40は、基準圧力Pnよりも大きい所定圧力Pmと、検知した吸入側圧力Psを比較し、吸入側圧力Psが所定圧力Pm以上のときは、冷却負荷が高くなっていると判断する(S12)。
【0036】
次に、制御装置40は、蓄熱タンク50内に設置された蓄熱量検知センサー(図示せず)によって検知された蓄熱量Tsが、予め設定された基準蓄熱量Th以上のとき、過冷却運転を行うのに充分な冷熱が蓄熱タンク50に蓄熱されていると判断し(S13)、第1開閉手段24および第3開閉手段54を閉止し、第2開閉手段51を開放して蓄熱用絞り装置52を開放し、過冷却運転を実施する(S14)。このとき、蓄熱用蒸発器53は、蒸発器ではなく、熱交換器として作用する。
【0037】
このとき、低温側循環回路2aにおいては、低温側圧縮機21から吐出された低温側冷媒は、低温側凝縮器22で凝縮液化され、受液器23を通過する。そして、低温側冷媒は、開放された第2開閉手段51および蓄熱用絞り装置52を通過して、蓄熱タンク50に流入し、蓄熱された冷熱によって過冷却される。そして、連結管58に設けられた逆支弁57を通過した後、低温側絞り装置25で減圧膨張され、低温側蒸発器26で蒸発ガス化されて、低温側圧縮機21に戻る。
【0038】
そして、制御装置40は、蓄熱タンク50内に設置された蓄熱量検知センサー(図示せず)によって検知された蓄熱量Tsが、予め設定された基準蓄熱量Th未満となったら、蓄熱タンク50の冷熱が全て消費されたと判断し(S15)、第1開閉手段24および第3開閉手段54を開放し、第2開閉手段51を閉止して、通常冷却運転に戻る(S16)。なお、過冷却運転を行わない通常冷却運転時に吸入側圧力Psが上昇して、予め設定され、所定圧力Pmよりも大きい限界圧力Pmaxを超えると、二元冷却装置100は異常停止するようにされている。Pmaxは、低温側循環回路2aにおいて、内圧上昇によって配管が破壊されない程度に予め設定された値(例えば、4MPa)である。
【0039】
本実施の形態によれば、夜間や冷却負荷の軽い時の余剰冷媒を利用して蓄熱冷却運転を実施し、昼間などの冷却負荷の高い時に過冷却として利用できるので、電力を有効に消費することができるうえ、電力の負荷を平準化できる冷却システムを得ることができる。
【0040】
なお、低温側循環回路2a内に蓄熱用蒸発器53を備えているので、負荷としての冷却対象が日配や生鮮等の冷蔵用途である場合、低温側蒸発器26の蒸発温度がマイナス10℃程度であるため、氷が生成しやすく、氷蓄熱を行うには効果的である。このとき、高温側蒸発器14の蒸発温度は5〜15℃程度であるため、氷の生成には適切な温度でなく、高温側循環回路1aに蓄熱用蒸発器を配置しても効果はあまりない。また、マイナス40℃以下の温度帯で使用する冷凍用途であっても、蓄熱用蒸発器53の出口側に蒸発圧力を調整する調整弁等を備えることで、氷蓄熱を効果的に行うことができる。
【0041】
冷媒の相変化と圧力の関係を示す図7のp−h線図にしたがって、通常冷却運転時と過冷却運転時の冷媒状態の推移を説明する。通常冷却運転時、低温側冷媒は、低温側圧縮機21に吸入されるA1の状態から、低温側圧縮機21により圧縮されてA2の状態となり、低温側凝縮器22で凝縮液化されてA3の状態となる。さらに、受液器23を通り、低温側絞り装置25で減圧膨張されてA4の状態となり、低温側蒸発器26で蒸発ガス化されてA1の状態に戻る。このとき、二元冷却装置100としての冷凍効果は、A1とA4(A3)とのエンタルピ(熱含量)の差q1となる。
【0042】
一方、過冷却運転時、低温側冷媒は、低温側圧縮機21に吸入されるA1の状態から、低温側圧縮機21により圧縮されてA2の状態となり、低温側凝縮器22で凝縮液化されてA3の状態となる。そして、受液器23を通った後、第2開閉手段51および蓄熱用絞り装置52を介して、蓄熱用蒸発器53を通過する。このとき、蓄熱タンク50内の蓄熱媒体55に蓄熱された冷熱によって冷却され、B3の状態となる。つまり、過冷却されるのである。過冷却された低温側冷媒は、低温側絞り装置25で減圧膨張されてB4の状態となり、低温側蒸発器26で蒸発ガス化されてA1の状態に戻る。このとき、二元冷却装置100としての冷凍効果は、A1とB4(B3)とのエンタルピの差q2となる。
【0043】
このように、低温側循環回路2aに蓄熱回路56を設けることで、霜取時の低温側冷媒の圧力上昇を抑えながら蓄熱し、蓄熱された冷熱を過冷却運転に利用することができる。通常冷却運転時と比較して本発明の過冷却運転では、冷凍効果はq1とq2の差(q2−q1)分だけ向上させることができ、その結果、二元冷却装置100における冷却能力(一般的に、約20%)も向上させることができるのである。
【0044】
ここで、本実施の形態における蓄熱タンク50について説明する。ここでは、蓄熱媒体55として、水を使用することとする。また、二元冷却装置100の容量が、一般的によく使われる冷却機容量の15kW(20馬力)程度とする。この二元冷却装置100を、冷却対象の負荷が生鮮や日配等冷蔵用途で使用する場合、低温側蒸発器26の蒸発温度の平均は約マイナス10度のため、二元冷却装置100の冷凍能力は約40kWである。夜間の負荷は、一般的に約60%程度であって、このとき二元冷却装置100は約24kWの冷凍能力が必要であるので、残り約16kW分の冷凍能力を蓄熱冷却運転に利用することができる。
【0045】
仮に、冷凍能力16kWで、夜間10時間、蓄熱冷却運転を継続したとすると、16(kW)×10(時間)×3600(秒)=576MJの熱量が得られることとなる。したがって、氷の融解の潜熱が333.55(kJ/kg)であるので、576(MJ)/333.55(MJ/kg)=1727(kg)の氷を生成することができる。つまり、蓄熱タンク50内に1727kgの水を封入しておけば、蓄熱冷却運転を夜間中継続することができる。
【0046】
したがって、蓄熱タンク50に1727kgの水を封入したとすると、蓄熱タンク50の筐体は、仮に横幅、奥行きがそれぞれ1mとすると高さが1.727mとなる。一般的な二元冷却装置の大きさが横幅1〜2m、高さが1.5m程度であるので、蓄熱タンク50は、二元冷却装置100と近接させて並べて設置したり、蓄熱タンク50を設置した上に二元冷却装置100を載置する等するのがよく、これにより設置スペースを有効に利用することができる。もちろん、蓄熱タンク50の容量は、必要な蓄熱量に応じて変えればよいことは言うまでもなく、後述する実施の形態2、3でも同様である。
【0047】
なお、二元冷却装置100を運転する必要が無い場合、第1開閉手段24および第2開閉手段51を閉止し、第3開閉手段54を開放としておくのがよい。冷却運転停止時の、二元冷却装置100の冷媒回路を図8に示す。これは、二元冷却装置100が停止中も、蓄熱用蒸発器53の低温側冷媒の温度または圧力を検知しておけば、蓄熱された冷熱により低温側冷媒が冷却されるため、低温側循環回路2a内の圧力上昇を防ぐことができるからである。また、二元冷却装置100を停止させる前に、後述するポンプダウン運転を行うようにすれば、低温側冷媒を回収してから停止するので、低温側冷媒の圧力上昇を抑制することができ、長期間停止させることができる。
【0048】
実施の形態2.
以上の実施の形態1では、冷却負荷が軽い時や、各電力会社が割安に設定している夜間に、蓄熱回路56を用いて蓄熱冷却運転を行い、冷却負荷が高い時や昼間に、蓄熱冷却運転で蓄熱された冷熱を過冷却として活用する場合について記述した。本実施の形態では、低温側蒸発器26の霜取を行いながら冷熱を蓄熱する蓄熱霜取運転について説明する。なお、実施の形態1と同じものについては、同じ符号を付している。
【0049】
霜取運転の一連の運転動作を表す図9のフローチャートを用いて、本実施の形態における二元冷却装置100の動作について説明する。また、このときの高温側循環回路1aおよび低温側循環回路2aにおける冷媒の流れを、図10、図11、および図12において矢印で示す。図13は、二元冷却装置100における各機器の、運転状態毎の作動を表に示したものである。
【0050】
まず、霜取運転の開始が制御装置40から指示されると、低温側蒸発器26および配管内に残った液冷媒を受液器23に回収する、いわゆるポンプダウン運転を行う。制御装置40が、例えば低温側圧縮機21において冷却運転開始からの運転積算時間が所定時間(例えば、4時間)を経過したものと判断すると(S21)、高温側圧縮機11を停止し、第1開閉手段24を閉止して、受液器23からの低温側冷媒を低温側蒸発器26に流入させないようにする(S22)。
【0051】
そして、吸入側圧力センサー28により検知した吸入側圧力Psが予め設定された規定圧力Pe(例えば、1〜2MPa)以下になると判断するまで、低温側圧縮機21を駆動させる(S23)。これにより、低温側蒸発器26において低温側冷媒を蒸発させ、できる限り低温側冷媒を流出させるようにする。流出した低温側冷媒は、低温側圧縮機21から吐出されて、低温側凝縮器22に流入し凝縮液化して、受液器23で回収される。
【0052】
霜取前にポンプダウン運転を行うことで、低温側蒸発器26内の低温側冷媒が低減された状態で低温側蒸発器26を加熱するため、低温側冷媒の圧力上昇を最小限に抑えることができる。また、霜取時の低温側蒸発器26内の低温側冷媒の量を減らすことができるので、低温側冷媒に奪われる霜取ヒータ27の熱量が少なく、霜取ヒータ27を少ない熱量で作動させることができて、電力消費を抑えることができる。
【0053】
吸入側圧力Psが規定圧力Pe以下になると、制御装置40は、受液器23に低温側冷媒が適切に回収されたと判断して、低温側圧縮機21を停止して、低温側絞り装置25を閉止し、霜取ヒータ27に通電して低温側蒸発器26を加熱し、霜取を行う(S24)。このとき、低温側蒸発器26および周辺の配管に残った低温側冷媒は、霜取ヒータ27の加熱により温度が上昇するが、第3開閉手段54を介して蓄熱タンク50内に流入し、蓄熱媒体55と熱交換して冷熱を蓄熱する。これにより、高温側圧縮機11および低温側圧縮機21を停止していても、霜取時の低温側冷媒の圧力上昇を防ぎつつ、霜取ヒータ27による電力を有効に利用して冷熱を蓄熱することができる。
【0054】
次に、制御装置40は、予め設定された所定圧力Pmと、吸入側圧力Psを比較し、圧力Psが所定圧力Pm以上になったと判断したら(S25)、第2開閉手段51を開放して蓄熱用絞り装置52の開度を調整し、低温側圧縮機21を駆動させ、第1の蓄熱霜取運転を行う(S26)。所定圧力Pmは、例えば、蓄熱タンク50に蓄熱された冷熱が全て消費され、低温側圧縮機21の吸入側圧力が上昇し始めるときの値であるとする。
【0055】
このとき、低温側冷媒は、受液器23の液冷媒が第2開閉手段51を介して蓄熱用絞り装置52に流れて減圧膨張され、蓄熱タンク50内に配置された蓄熱用蒸発器53に流入する。蓄熱用蒸発器53に流入した低温側冷媒は、蓄熱タンク50内に封入された蓄熱媒体55と熱交換されて蒸発ガス化され、第3開閉手段54を介して低温側圧縮機21に戻る。このとき、高温側圧縮機11は停止させているため、低温側圧縮機21は凝縮温度が急激に上昇してしまわない程度の周波数で駆動する。これにより、高温側圧縮機11を駆動させずに、蓄熱を行いながら霜取を行うことができ、不要な電力を消費させずに済む。
【0056】
さらに、制御装置40は、予め設定された限界圧力Pmaxと、吸入側圧力Psを比較し、吸入側圧力Psが限界圧力Pmax以上になったと判断したら(S27)、高温側圧縮機11を駆動させ、第2の蓄熱霜取運転を行う(S28)。これにより、高温側蒸発器14で低温側冷媒を冷却して圧力上昇を抑えながら、霜取をしつつ、最大の出力で蓄熱を行うことができる。
【0057】
このように、ポンプダウン運転後の霜取時に、吸入側圧力センサー28の検知圧力に応じて高温側圧縮機11および低温側圧縮機21を適宜駆動させるので、低温側冷媒の圧力上昇を防ぎつつ、圧縮機の駆動による無駄な電力消費を防ぎ、有効に電力を利用することができる。
【0058】
なお、本実施の形態では、吸入側圧力センサー28の検知圧力に基づいて段階的に高温側圧縮機11および低温側圧縮機21の駆動を制御したが、唯一の所定圧力値に基づいて制御してももちろん構わない。なお、蓄熱タンク50内に十分に冷熱が蓄熱されている時は、それ以上の蓄熱を行う必要が無いため、高温側圧縮機11と低温側圧縮機21の運転を停止してもよく、このようにしても、蓄熱媒体55に蓄熱された冷熱によって、低温側冷媒の圧力上昇を抑制することができる。
【0059】
そして、例えば、低温側蒸発器26の表面温度を検知する温度センサー(図示せず)が所定温度以上を検知したら(S29)、制御装置40は霜取が終了したと判断し、霜取ヒータ27の通電を停止する(S30)。そして、通常冷却運転に戻る。なお、霜取が終了したと判断する低温側蒸発器26表面の所定温度は、例えば、10℃以上としている。これは、低温側蒸発器26の表面が0℃以上となって霜が溶けても、例えばドレンパン(図示せず)等の周辺に霜が残っていたり、残った水が再び凍ってしまわないように、しばらく霜取ヒータ27を加熱して、確実に霜を溶かすためである。
【0060】
なお、S24およびS26の後において、低温側蒸発器26の霜取が完了すれば、通常冷却運転に戻るのは言うまでもなく、低温側蒸発器26の表面温度を検知する温度センサー(図示せず)による検知温度で判断する。霜取が終了したら、通常冷却運転に戻る。または、冷却負荷が高いと判断した場合は、霜取後すぐに過冷却運転を行うようにしてもよい。過冷却運転については、実施の形態1と同様である。
【0061】
以上のように、本実施の形態に係る二元冷却装置100においては、低温側蒸発器26を加熱して霜取しつつ、低温側循環回路2a内に蓄熱回路を備えて蓄熱霜取運転を行うことで、冷却運転時には蓄熱タンク50に蓄熱された冷熱を低温側循環回路2aの過冷却運転に利用できるので、二元冷却装置100として有効に電力を利用することができるのである。
【0062】
また、低温側蒸発器26の霜取時の圧力上昇を監視しながら冷熱を蓄熱するので、CO2冷媒の臨界圧力を超えてしまうようなことがない。つまり、霜取時であっても、低温側循環回路2a内の冷媒圧力を、例えば従来から使用しているHFC冷媒程度の圧力(例えば、4MPa)以下に抑えることができる。したがって、設計においては、低温側蒸発器26の低温側冷媒の耐圧を低く見積もることができ、低温側蒸発器26の伝熱管として使用する銅配管の肉厚を例えば約半分にすることができて、安価で、現地冷媒工事も容易な二元冷却装置を提供することができる。
【0063】
また、従来は、霜取時に低温側装置の冷媒圧力を上昇させない他の方法として、低温側装置に安全弁を設けて圧力上昇時に大気放出を行ったり、冷却装置の近傍に膨張タンクを設置したり、低温側装置に温度を保持する用途としての冷却機を別に設置する等の対策が考えられていたが、本実施の形態では簡易な構成で、霜取時の冷媒圧力の上昇を抑えることができる。
【0064】
また、本実施の形態では、低温側蒸発器26の霜取時、霜取ヒータ27に通電させることで加熱して、霜を溶かすようにしたが、例えば、低温側圧縮機21から吐出される高温高圧の低温側冷媒を低温側蒸発器26に流すことで、低温側蒸発器26を凝縮器として作用させ、凝縮熱により霜を溶かすようにしてもよい(ホットガスデフロスト)。
【0065】
実施の形態3.
図14は、本実施の形態に係る二元冷却装置200を示すものであって、蓄熱タンク50内に過冷却コイル60を設け、過冷却コイル60の一端を高温側凝縮器12の冷媒流出側配管に接続し、他端を高温側絞り装置13の冷媒流入側配管に接続するよう構成したものである。なお、実施の形態1、2と同じものについては、同じ符号を付している。
【0066】
このように構成することで、低温側循環回路2aにおいて霜取時や夜間等の冷却負荷の軽い時に蓄熱された冷熱を、高温側循環回路1bの過冷却にも利用することができるので、高温側圧縮機11を容量が小さいもので賄うことができ、電力を有効に活用できる。また、高温側循環回路1bに循環させる冷媒充填量を少なくすることができるため、CO2やアンモニア等の自然冷媒に比べて、効率は良いが比較的地球温暖化係数(GWP)の高いHFC系冷媒を利用しても、環境負荷を低減することができる。
【0067】
なお、過冷却コイル60は、蓄熱タンク50に蓄熱された冷熱と熱交換するよう構成していればよく、蓄熱タンク50内に設置しなくてもよい。また、高温側循環回路1bから過冷却コイル60と接続される配管の長さは、極力短くするのが良く、高温側凝縮器12と蓄熱タンク50を近接して配置する方がよい。つまり、蓄熱タンク50を二元冷却装置200に併設する等、近接して配置するのが良い。
【0068】
上述の実施の形態は、霜取時と、夜間等の冷却負荷の軽い時に蓄熱を行う形態を個別に説明したが、必要に応じて各動作(通常冷却運転、蓄熱冷却運転、霜取蓄熱運転、運転停止、および過冷却運転)を組合せて冷却装置を動作させても良く、これにより、より無駄な電力消費を防ぎ、電力を有効に利用できる。また、上述の実施の形態は、二元冷却装置で説明したが多段構成の多元冷却装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
10 高温側装置、11 高温側圧縮機、12 高温側凝縮器、13 高温側絞り装置、14 高温側蒸発器、20 低温側装置、21 低温側圧縮機、22 低温側凝縮器、23 受液器、24 第1開閉手段、25 低温側絞り装置、26 低温側蒸発器、27 霜取ヒータ、28 吸入側圧力センサー、30 カスケードコンデンサ、50 蓄熱タンク、51 第2開閉手段、52 蓄熱用絞り装置、53 蓄熱用蒸発器、54 第3開閉手段、55 蓄熱媒体、56 蓄熱回路、57 逆止弁、58 連結管、60 過冷却コイル。
【技術分野】
【0001】
この発明は、家庭用・業務用冷凍冷蔵庫、超低温冷蔵庫、冷凍冷蔵ショーケース冷却システム等に利用できる冷却装置に関するものであって、特に、複数の冷媒循環回路を多段構成した多元冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば高温側として冷媒循環回路を形成する高温側装置と、低温側として冷媒循環回路を形成する低温側装置とをそれぞれ形成して多段で構成した冷却装置がある(ここでは二段構成の二元冷却装置として記述する)。このような二元冷却装置では、高温側装置の蒸発器での冷媒の蒸発熱と低温側装置の凝縮器での冷媒の凝縮熱とを熱交換しながら、最終段となる低温側装置の蒸発器において冷却対象との熱交換を行うことにより冷却運転を行っている。これにより、低温側装置の蒸発器において、マイナス数十度の低温度の蒸発熱を効率良く得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−190917号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の二元冷却装置においては、夜間等の冷却負荷の軽い時に、通常の冷却運転を行う場合、冷却負荷に合わせた低い出力で低温側装置の圧縮機を駆動させると、圧縮機として効率の悪い運転となってしまう。また、圧縮機を効率が良いとされる出力で駆動させた場合、冷却負荷に対して不必要に大きな出力となってしまう。また、必要な時だけ圧縮機を駆動させるようにした場合においては、起動と停止を繰り返すこととなってしまう。いずれの場合においても、二元冷却装置においては、無駄に電力を消費することとなっていた。
【0005】
また、低温側装置の蒸発器において霜取を行う場合、例えば所定時間毎に冷却運転を停止し、低温側装置の蒸発器を霜取ヒータ等により加熱して、霜を溶かしている。このとき、霜取時にヒータを作動させることによって周囲温度が上昇して冷媒の温度が上昇し、冷媒の圧力が上昇してしまう。特に、特許文献1のように低温側装置の冷媒として二酸化炭素(以下、CO2)を用いている場合、霜取時に高温側の循環回路を停止させることでCO2冷媒の圧力が上昇して臨界圧力を超えてしまう可能性がある。そのため、霜取時に高温側の冷媒循環回路の圧縮機を動作させて、低温側装置の凝縮器を冷却することで、低温側冷媒の圧力上昇を防いでいる。
【0006】
また、一般的な冷却装置では、霜取時間は、例えば1回あたり30〜40分程度必要とし、定期的に1日あたり4〜5回程度の霜取を行う。したがって、高温側装置の圧縮機は1日あたり2〜3時間程度、余分に駆動することになり、無駄に電力を消費することとなっていた。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、冷却運転時や霜取時において、電力を有効に利用することができる冷却装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る冷却装置は、
高温側圧縮機、高温側凝縮器、高温側絞り装置および高温側蒸発器を配管接続して、高温側冷媒を循環させる高温側循環回路を形成する高温側装置と、
低温側圧縮機、低温側凝縮器、受液器、第1開閉手段、低温側絞り装置および低温側蒸発器を配管接続して、低温側冷媒を循環させる低温側循環回路を形成する低温側装置と、
高温側蒸発器および低温側凝縮器により構成し、高温側冷媒と低温側冷媒との間の熱交換を行う冷媒間熱交換器と、
受液器と第一開閉手段とを接続する配管から分岐され、第2開閉手段、蓄熱用絞り装置、蓄熱タンク内に封入された蓄熱媒体と熱交換を行う蓄熱用蒸発器、および第3開閉手段を順次配管接続して、低温側蒸発器と低温側圧縮機とを接続する配管に接続する蓄熱回路と、
蓄熱用蒸発器と第3開閉手段とを接続する配管から分岐され、逆止弁を介して第1開閉手段と低温側絞り装置とを接続する配管に接続する連結管と、
少なくとも、高温側圧縮機、高温側絞り装置、低温側圧縮機、第1開閉手段、低温側絞り装置、第2開閉手段、蓄熱用絞り装置、蓄熱用蒸発器、および第3開閉手段を制御する制御装置と
を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の冷却装置によれば、低温側循環回路に蓄熱回路を設けたので、冷却負荷の軽い時の冷却運転では、余剰冷媒を利用して冷却運転を行いながら蓄熱を行い、また、霜取時には低温側蒸発器の加熱を行いつつ蓄熱を行うことができ、蓄熱された熱量を冷却運転時に過冷却に利用できる。従って、冷却装置の電力を有効に利用することができて、冷却装置の電力の平準化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1における二元冷却装置の、通常冷却運転時の冷媒回路を表す図である。
【図2】この発明の実施の形態1における二元冷却装置の、蓄熱冷却運転時の動作を説明するフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1における二元冷却装置の、蓄熱冷却運転時の冷媒回路を表す図である。
【図4】この発明の実施の形態1における二元冷却装置の、過冷却運転時の動作を説明するフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1における二元冷却装置の、過冷却運転時の冷媒回路を表す図である。
【図6】この発明の実施の形態1における二元冷却装置の、運転状態による各機器の作動を示す表である。
【図7】この発明の実施の形態1における二元冷却装置の、通常冷却運転時と過冷却運転時の冷媒状態の推移を説明するp−h線図である。
【図8】この発明の実施の形態1における二元冷却装置の、冷却運転停止時の冷媒回路を表す図である。
【図9】この発明の実施の形態2における二元冷却装置の、霜取時の一連の動作を説明するフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態2における二元冷却装置の、ポンプダウン運転を行う時の冷媒回路を表す図である。
【図11】この発明の実施の形態2における二元冷却装置の、第1の蓄熱霜取運転時の冷媒回路を表す図である。
【図12】この発明の実施の形態2における二元冷却装置の、第2の蓄熱霜取運転時の冷媒回路を表す図である。
【図13】この発明の実施の形態2における二元冷却装置の、運転状態による各機器の作動を示す表である。
【図14】この発明の実施の形態3における二元冷却装置の冷媒回路構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の本実施の形態における二元冷却装置の冷媒回路を表す図である。図1に示すように、本実施の形態における二元冷却装置100は、高温側装置10と低温側装置20とを有し、それぞれ独立して冷媒を循環させる冷媒循環回路を構成する。高温側装置10は、高温側圧縮機11と、高温側凝縮器12と、高温側絞り装置13と、高温側蒸発器14とを直列に配管で接続し、冷媒を循環させる高温側循環回路1aを構成している。一方、低温側装置20は、低温側圧縮機21と、低温側凝縮器22と、受液器23と、第1開閉手段24と、低温側絞り装置25と、低温側蒸発器26とを直列に配管で接続し、冷媒を循環させる低温側循環回路2aを構成している。そして、高温側循環回路1aおよび低温側循環回路2aを二段構成とするために、高温側蒸発器14と低温側凝縮器22とを、それぞれ通過する冷媒間での熱交換を可能にするよう構成した冷媒間熱交換器としてのカスケードコンデンサ30を設けている。また、二元冷却装置100全体の運転制御を行う制御装置40を有している。
【0012】
更に、受液器23と第1開閉手段24とを接続する配管から分岐されて、第2開閉手段51と、蓄熱用絞り装置52と、冷熱が蓄熱される蓄熱媒体55が封入された蓄熱タンク50内に配置された蓄熱用蒸発器53と、第3開閉手段54とを直列に配管で接続し、低温側圧縮機21の吸入側配管に接続される蓄熱回路56が形成されている。さらに、蓄熱タンク50と第3開閉手段54とを接続する配管から分岐され、冷媒の流れを一方向にのみ許容する逆止弁57を介し、逆止弁57の冷媒流れ方向下流側で、第1開閉手段24と低温側絞り装置25とを接続する配管に接続される連結管58が形成される。
【0013】
このような構成の二元冷却装置100において、高温側循環回路1aを循環する冷媒(以下、高温側冷媒という)として、例えばR410A、R32、R404A、HFO−1234yf、プロパン、イソブタン、二酸化炭素、アンモニア等が用いられる。地球温暖化に対する影響が小さい他の自然冷媒や、冷媒量を極力抑えた、効率のよい他のHFC冷媒等を用いてもよい。また、低温側循環回路2aを循環する冷媒(以下、低温側冷媒という)として上記冷媒を用いてもよいが、本実施の形態では、地球温暖化に対する影響が小さい二酸化炭素(CO2)を用いる。一般的に、CO2は、飽和圧が高く、臨界点が低い(31℃)ため、二元冷却装置での低温側冷媒に適しており、冷却温度として極低温が得られやすい。
【0014】
二元冷却装置100の各構成機器についてさらに詳しく説明する。高温側圧縮機11は、高温側冷媒を吸入して圧縮し、高温・高圧の状態にして吐出するものであって、例えばインバータ等により回転数を制御し、高温側冷媒の吐出量を調整可能な圧縮機で構成するとよい。高温側凝縮器12は、送風機(図示せず)により供給される空気と高温側冷媒との間で熱交換を行い、高温側冷媒を凝縮させて液化させるものである。
【0015】
高温側絞り装置13は、制御装置40からの指示に基づいて開度調整される流量制御装置で構成され、高温側冷媒を膨張させて減圧させるものである。例えば、電子式膨張弁等で構成することが最適であるが、毛細管(キャピラリチューブ)、感温式膨張弁等で構成してもよい。高温側蒸発器14は、カスケードコンデンサ30において高温側冷媒が通過する伝熱管等であって、低温側冷媒との熱交換により高温側冷媒を蒸発させてガス化するものである。
【0016】
一方、低温側装置20において、低温側圧縮機21は、低温側冷媒を吸入して圧縮し、高温・高圧の状態にして吐出するものであって、例えばインバータ等により回転数を制御し、低温側冷媒の吐出量を調整可能な圧縮機で構成するとよい。低温側圧縮機21の吸入側配管には、低温側冷媒の圧力を検知する圧力検知手段としての吸入側圧力センサー28が設けられている。
【0017】
低温側凝縮器22は、カスケードコンデンサ30において低温側冷媒が通過する伝熱管等であって、高温側冷媒との熱交換により低温側冷媒を凝縮させて液化するものである。
【0018】
受液器23は、余剰冷媒を溜めておくためのものであり、低温側循環回路2a内の全冷媒を回収可能な容量を有している。また、第1開閉手段24は、開閉によって低温側循環回路2aにおける低温側冷媒の流れを制御するものであって、電磁弁等が用いられる。
【0019】
低温側絞り装置25は、制御装置40からの指示に基づいて開度調整される流量制御装置で構成され、低温側冷媒を膨張させて減圧させるものである。例えば、電子式膨張弁等で構成することが最適であるが、毛細管(キャピラリチューブ)、感温式膨張弁等で構成してもよい。
【0020】
低温側蒸発器26は、送風機(図示せず)から供給される負荷側の空気と低温側冷媒との間で熱交換を行い、低温側冷媒を蒸発してガス化するものであり、それによりショーケースの庫内等、冷却対象(負荷)を冷却する。また、加熱手段としての霜取ヒータ27は、低温側蒸発器26に直接、またはドレンパン等の周辺部分に取り付けられ、霜取時に通電されることで発熱して、低温側蒸発器26およびその周辺部分に付いた霜を溶かす。
【0021】
カスケードコンデンサ30は、高温側蒸発器14と低温側凝縮器22とを有して、高温側冷媒と低温側冷媒とを熱交換可能にするものであり、例えばプレート熱交換器や二重管熱交換器等で構成される。
【0022】
第2開閉手段51、第3開閉手段54は、開閉によって蓄熱回路56における低温側冷媒の流れを制御するものであって、電磁弁等が用いられる。蓄熱用絞り装置52は、制御装置40からの指示に基づいて開度調整を行う流量制御装置で構成され、低温側冷媒を膨張させて減圧させるものである。例えば、電子式膨張弁等で構成することが最適であるが、毛細管(キャピラリチューブ)、感温式膨張弁等で構成してもよい。
【0023】
蓄熱用蒸発器53は、蓄熱タンク50内に配置され、蓄熱タンク50内に封入された蓄熱媒体55と熱交換して、低温側冷媒を蒸発ガス化するものである。一方の蓄熱媒体55は、低温側冷媒と熱交換して冷熱を蓄熱する。なお、本実施の形態では、蓄熱タンク50内の蓄熱媒体55として水を使用するが、ブライン等を用いても良い。
【0024】
なお、蓄熱用蒸発器53として、圧力損失の大きい分配器や分流管等を使用しないことが望ましい。これは、蓄熱媒体55として水を使用した時、熱伝導率が低い氷が伝熱面に生成して着氷量が増加して氷自体が熱抵抗体として作用し、運転の経過とともに伝熱特性が悪化して、装置の運転効率が低下するという問題があるからである。
【0025】
制御装置40は、二元冷却装置100における各機器の動作を制御する。ここで、各機器とは、高温側圧縮機11、高温側絞り装置13、低温側圧縮機21、第1開閉手段24、低温側絞り装置25、霜取ヒータ27、吸入側圧力センサー28、第2開閉手段51、蓄熱用絞り装置52、蓄熱用蒸発器53、第3開閉手段54などである。なお、制御装置40は、高温側装置10、低温側装置20をそれぞれ制御する2台の制御装置で構成するようにしてもよいし、二元冷却装置100の外部から通信などで制御を行うようにしても良い。
【0026】
次に、二元冷却装置100の通常冷却運転時の動作について説明する。通常冷却運転は、高温側循環回路1aおよび低温側循環回路2aにおいて、図1で矢印で示すように冷媒が流れ、低温側蒸発器26の蒸発熱によって負荷を冷却する運転を行う。高温側循環回路1aでは高温側冷媒は、高温側圧縮機11から高温高圧の状態で吐出され、高温側凝縮器12で凝縮液化される。更に、高温側絞り装置13で膨張減圧されて、高温側蒸発器14で、低温側凝縮器22に流れる低温側冷媒と熱交換して蒸発ガス化されて、高温側圧縮機11に戻り吸入される。
【0027】
一方、低温側循環回路2aでは低温側冷媒は、低温側圧縮機21から高温高圧の状態で吐出され、低温側凝縮器22に流入し、高温側蒸発器14に流れる高温側冷媒と熱交換して凝縮液化され、受液器23に蓄えられる。受液器23を出た液冷媒は、開放された第1開閉手段24を通り、低温側絞り装置25で減圧された後、低温側蒸発器26で蒸発ガス化されて、低温側圧縮機21に戻り吸入される。通常冷却運転時は、第2開閉手段51は閉止されており、蓄熱回路56および連結管58に低温側冷媒は流れない。このとき、第3開閉手段54は閉止しても良いが、開放したままとしておくことで、不必要に開閉動作をさせずに済むため、本実施の形態では、第3開閉手段54は開放しておく。
【0028】
次に、冷却負荷が軽い時や、各電力会社が割安に設定している夜間(夜10時から朝8時まで)に、発生している余剰冷媒を利用して冷熱を蓄熱しつつ負荷の冷却を行う蓄熱冷却運転を行う時の動作について説明する。一般的に、夜間は昼間と比較して冷却負荷が軽いため、二元冷却装置100の冷凍能力を100%利用する必要が無く、余剰冷媒が発生していることが多い。
【0029】
本実施の形態の蓄熱冷却運転時の動作を表す図2のフローチャートを用いて、二元冷却装置100の動作について説明する。また、このときの高温側循環回路1aおよび低温側循環回路2aにおける冷媒の流れを、図3において矢印で示す。図6は、二元冷却装置100における各機器の、運転状態毎の作動を表に示したものである。
【0030】
高温側循環回路1aにおいては、通常冷却運転時と同様、高温側圧縮機11から吐出された高温側冷媒は、高温側凝縮器12で凝縮液化され、高温側絞り装置13で減圧された後、高温側蒸発器14で蒸発ガス化されて、高温側圧縮機11に戻る。
【0031】
まず、吸入側圧力センサー28により、低温側圧縮機21の吸入側圧力(低圧圧力)Psを検知する(S1)。そして、制御装置40は、予め算出され、負荷側温度(低温側蒸発器26の表面温度)の維持のために必要な基準圧力Pnと、検知した吸入側圧力Psを比較し、吸入側圧力Psが基準圧力Pn未満のときは、余剰冷媒があると判断する(S2)。吸入側圧力Psが基準圧力Pn以上のときは、通常冷却運転を継続する。
【0032】
このとき、第2開閉手段51を開放し、蓄熱用絞り装置52の開度を調整して、蓄熱冷却運転を実施する(S3)。このとき、低温側循環回路2aにおいては、低温側圧縮機21から吐出された低温側冷媒が、低温側凝縮器22で凝縮液化され、受液器23を通過した後に分流される。分流された低温側冷媒の一方は、第1開閉手段24を通過して、低温側絞り装置25で減圧され、低温側蒸発器26で蒸発ガス化された後、低温側圧縮機21に戻る。また、分流された低温側冷媒の他方は、蓄熱回路56に流入し、第2開閉手段51を通過して、蓄熱用絞り装置52で減圧され、蓄熱用蒸発器53で蒸発ガス化される。そして、第3開閉手段54を通過した後、低温側蒸発器26で蒸発ガス化された低温側冷媒と合流して、低温側圧縮機21に戻る。尚、連結管58には逆止弁57があるため、圧力差により低温側冷媒は流れることはない。
【0033】
また、蓄熱用絞り装置52の開度は、余剰冷媒量に応じて調整すればよい。そして、蓄熱タンク50内に設置され、蓄熱媒体の蓄熱量を検知する蓄熱量検知センサー(図示せず)によって検知された蓄熱量Tsが、予め設定された限界蓄熱量Tnに達したら(S4)、制御装置40は蓄熱タンク50には十分に冷熱が蓄熱されたと判断して、蓄熱冷却運転を終了し、通常冷却運転に戻る。蓄熱量検知センサーは、蓄熱媒体55に水を使用していれば、例えば、水位を検知する水位センサーなどを利用すると良い。
【0034】
次に、蓄熱された冷熱を利用して、昼間や冷却負荷が高い時に、過冷却運転を行う動作について、図4のフローチャートを用いて説明する。また、このときの高温側循環回路1aおよび低温側循環回路2aにおける冷媒の流れを、図5において矢印で示す。このとき、高温側循環回路1aにおいては、通常冷却運転時と同様、高温側圧縮機11から吐出された高温側冷媒は、高温側凝縮器12で凝縮液化され、高温側絞り装置13で減圧された後、高温側蒸発器14で蒸発ガス化されて、高温側圧縮機11に戻る。
【0035】
低温側循環回路2aにおいては、まず、吸入側圧力センサー28により、低温側圧縮機21の吸入側圧力Psを検知する(S11)。そして、制御装置40は、基準圧力Pnよりも大きい所定圧力Pmと、検知した吸入側圧力Psを比較し、吸入側圧力Psが所定圧力Pm以上のときは、冷却負荷が高くなっていると判断する(S12)。
【0036】
次に、制御装置40は、蓄熱タンク50内に設置された蓄熱量検知センサー(図示せず)によって検知された蓄熱量Tsが、予め設定された基準蓄熱量Th以上のとき、過冷却運転を行うのに充分な冷熱が蓄熱タンク50に蓄熱されていると判断し(S13)、第1開閉手段24および第3開閉手段54を閉止し、第2開閉手段51を開放して蓄熱用絞り装置52を開放し、過冷却運転を実施する(S14)。このとき、蓄熱用蒸発器53は、蒸発器ではなく、熱交換器として作用する。
【0037】
このとき、低温側循環回路2aにおいては、低温側圧縮機21から吐出された低温側冷媒は、低温側凝縮器22で凝縮液化され、受液器23を通過する。そして、低温側冷媒は、開放された第2開閉手段51および蓄熱用絞り装置52を通過して、蓄熱タンク50に流入し、蓄熱された冷熱によって過冷却される。そして、連結管58に設けられた逆支弁57を通過した後、低温側絞り装置25で減圧膨張され、低温側蒸発器26で蒸発ガス化されて、低温側圧縮機21に戻る。
【0038】
そして、制御装置40は、蓄熱タンク50内に設置された蓄熱量検知センサー(図示せず)によって検知された蓄熱量Tsが、予め設定された基準蓄熱量Th未満となったら、蓄熱タンク50の冷熱が全て消費されたと判断し(S15)、第1開閉手段24および第3開閉手段54を開放し、第2開閉手段51を閉止して、通常冷却運転に戻る(S16)。なお、過冷却運転を行わない通常冷却運転時に吸入側圧力Psが上昇して、予め設定され、所定圧力Pmよりも大きい限界圧力Pmaxを超えると、二元冷却装置100は異常停止するようにされている。Pmaxは、低温側循環回路2aにおいて、内圧上昇によって配管が破壊されない程度に予め設定された値(例えば、4MPa)である。
【0039】
本実施の形態によれば、夜間や冷却負荷の軽い時の余剰冷媒を利用して蓄熱冷却運転を実施し、昼間などの冷却負荷の高い時に過冷却として利用できるので、電力を有効に消費することができるうえ、電力の負荷を平準化できる冷却システムを得ることができる。
【0040】
なお、低温側循環回路2a内に蓄熱用蒸発器53を備えているので、負荷としての冷却対象が日配や生鮮等の冷蔵用途である場合、低温側蒸発器26の蒸発温度がマイナス10℃程度であるため、氷が生成しやすく、氷蓄熱を行うには効果的である。このとき、高温側蒸発器14の蒸発温度は5〜15℃程度であるため、氷の生成には適切な温度でなく、高温側循環回路1aに蓄熱用蒸発器を配置しても効果はあまりない。また、マイナス40℃以下の温度帯で使用する冷凍用途であっても、蓄熱用蒸発器53の出口側に蒸発圧力を調整する調整弁等を備えることで、氷蓄熱を効果的に行うことができる。
【0041】
冷媒の相変化と圧力の関係を示す図7のp−h線図にしたがって、通常冷却運転時と過冷却運転時の冷媒状態の推移を説明する。通常冷却運転時、低温側冷媒は、低温側圧縮機21に吸入されるA1の状態から、低温側圧縮機21により圧縮されてA2の状態となり、低温側凝縮器22で凝縮液化されてA3の状態となる。さらに、受液器23を通り、低温側絞り装置25で減圧膨張されてA4の状態となり、低温側蒸発器26で蒸発ガス化されてA1の状態に戻る。このとき、二元冷却装置100としての冷凍効果は、A1とA4(A3)とのエンタルピ(熱含量)の差q1となる。
【0042】
一方、過冷却運転時、低温側冷媒は、低温側圧縮機21に吸入されるA1の状態から、低温側圧縮機21により圧縮されてA2の状態となり、低温側凝縮器22で凝縮液化されてA3の状態となる。そして、受液器23を通った後、第2開閉手段51および蓄熱用絞り装置52を介して、蓄熱用蒸発器53を通過する。このとき、蓄熱タンク50内の蓄熱媒体55に蓄熱された冷熱によって冷却され、B3の状態となる。つまり、過冷却されるのである。過冷却された低温側冷媒は、低温側絞り装置25で減圧膨張されてB4の状態となり、低温側蒸発器26で蒸発ガス化されてA1の状態に戻る。このとき、二元冷却装置100としての冷凍効果は、A1とB4(B3)とのエンタルピの差q2となる。
【0043】
このように、低温側循環回路2aに蓄熱回路56を設けることで、霜取時の低温側冷媒の圧力上昇を抑えながら蓄熱し、蓄熱された冷熱を過冷却運転に利用することができる。通常冷却運転時と比較して本発明の過冷却運転では、冷凍効果はq1とq2の差(q2−q1)分だけ向上させることができ、その結果、二元冷却装置100における冷却能力(一般的に、約20%)も向上させることができるのである。
【0044】
ここで、本実施の形態における蓄熱タンク50について説明する。ここでは、蓄熱媒体55として、水を使用することとする。また、二元冷却装置100の容量が、一般的によく使われる冷却機容量の15kW(20馬力)程度とする。この二元冷却装置100を、冷却対象の負荷が生鮮や日配等冷蔵用途で使用する場合、低温側蒸発器26の蒸発温度の平均は約マイナス10度のため、二元冷却装置100の冷凍能力は約40kWである。夜間の負荷は、一般的に約60%程度であって、このとき二元冷却装置100は約24kWの冷凍能力が必要であるので、残り約16kW分の冷凍能力を蓄熱冷却運転に利用することができる。
【0045】
仮に、冷凍能力16kWで、夜間10時間、蓄熱冷却運転を継続したとすると、16(kW)×10(時間)×3600(秒)=576MJの熱量が得られることとなる。したがって、氷の融解の潜熱が333.55(kJ/kg)であるので、576(MJ)/333.55(MJ/kg)=1727(kg)の氷を生成することができる。つまり、蓄熱タンク50内に1727kgの水を封入しておけば、蓄熱冷却運転を夜間中継続することができる。
【0046】
したがって、蓄熱タンク50に1727kgの水を封入したとすると、蓄熱タンク50の筐体は、仮に横幅、奥行きがそれぞれ1mとすると高さが1.727mとなる。一般的な二元冷却装置の大きさが横幅1〜2m、高さが1.5m程度であるので、蓄熱タンク50は、二元冷却装置100と近接させて並べて設置したり、蓄熱タンク50を設置した上に二元冷却装置100を載置する等するのがよく、これにより設置スペースを有効に利用することができる。もちろん、蓄熱タンク50の容量は、必要な蓄熱量に応じて変えればよいことは言うまでもなく、後述する実施の形態2、3でも同様である。
【0047】
なお、二元冷却装置100を運転する必要が無い場合、第1開閉手段24および第2開閉手段51を閉止し、第3開閉手段54を開放としておくのがよい。冷却運転停止時の、二元冷却装置100の冷媒回路を図8に示す。これは、二元冷却装置100が停止中も、蓄熱用蒸発器53の低温側冷媒の温度または圧力を検知しておけば、蓄熱された冷熱により低温側冷媒が冷却されるため、低温側循環回路2a内の圧力上昇を防ぐことができるからである。また、二元冷却装置100を停止させる前に、後述するポンプダウン運転を行うようにすれば、低温側冷媒を回収してから停止するので、低温側冷媒の圧力上昇を抑制することができ、長期間停止させることができる。
【0048】
実施の形態2.
以上の実施の形態1では、冷却負荷が軽い時や、各電力会社が割安に設定している夜間に、蓄熱回路56を用いて蓄熱冷却運転を行い、冷却負荷が高い時や昼間に、蓄熱冷却運転で蓄熱された冷熱を過冷却として活用する場合について記述した。本実施の形態では、低温側蒸発器26の霜取を行いながら冷熱を蓄熱する蓄熱霜取運転について説明する。なお、実施の形態1と同じものについては、同じ符号を付している。
【0049】
霜取運転の一連の運転動作を表す図9のフローチャートを用いて、本実施の形態における二元冷却装置100の動作について説明する。また、このときの高温側循環回路1aおよび低温側循環回路2aにおける冷媒の流れを、図10、図11、および図12において矢印で示す。図13は、二元冷却装置100における各機器の、運転状態毎の作動を表に示したものである。
【0050】
まず、霜取運転の開始が制御装置40から指示されると、低温側蒸発器26および配管内に残った液冷媒を受液器23に回収する、いわゆるポンプダウン運転を行う。制御装置40が、例えば低温側圧縮機21において冷却運転開始からの運転積算時間が所定時間(例えば、4時間)を経過したものと判断すると(S21)、高温側圧縮機11を停止し、第1開閉手段24を閉止して、受液器23からの低温側冷媒を低温側蒸発器26に流入させないようにする(S22)。
【0051】
そして、吸入側圧力センサー28により検知した吸入側圧力Psが予め設定された規定圧力Pe(例えば、1〜2MPa)以下になると判断するまで、低温側圧縮機21を駆動させる(S23)。これにより、低温側蒸発器26において低温側冷媒を蒸発させ、できる限り低温側冷媒を流出させるようにする。流出した低温側冷媒は、低温側圧縮機21から吐出されて、低温側凝縮器22に流入し凝縮液化して、受液器23で回収される。
【0052】
霜取前にポンプダウン運転を行うことで、低温側蒸発器26内の低温側冷媒が低減された状態で低温側蒸発器26を加熱するため、低温側冷媒の圧力上昇を最小限に抑えることができる。また、霜取時の低温側蒸発器26内の低温側冷媒の量を減らすことができるので、低温側冷媒に奪われる霜取ヒータ27の熱量が少なく、霜取ヒータ27を少ない熱量で作動させることができて、電力消費を抑えることができる。
【0053】
吸入側圧力Psが規定圧力Pe以下になると、制御装置40は、受液器23に低温側冷媒が適切に回収されたと判断して、低温側圧縮機21を停止して、低温側絞り装置25を閉止し、霜取ヒータ27に通電して低温側蒸発器26を加熱し、霜取を行う(S24)。このとき、低温側蒸発器26および周辺の配管に残った低温側冷媒は、霜取ヒータ27の加熱により温度が上昇するが、第3開閉手段54を介して蓄熱タンク50内に流入し、蓄熱媒体55と熱交換して冷熱を蓄熱する。これにより、高温側圧縮機11および低温側圧縮機21を停止していても、霜取時の低温側冷媒の圧力上昇を防ぎつつ、霜取ヒータ27による電力を有効に利用して冷熱を蓄熱することができる。
【0054】
次に、制御装置40は、予め設定された所定圧力Pmと、吸入側圧力Psを比較し、圧力Psが所定圧力Pm以上になったと判断したら(S25)、第2開閉手段51を開放して蓄熱用絞り装置52の開度を調整し、低温側圧縮機21を駆動させ、第1の蓄熱霜取運転を行う(S26)。所定圧力Pmは、例えば、蓄熱タンク50に蓄熱された冷熱が全て消費され、低温側圧縮機21の吸入側圧力が上昇し始めるときの値であるとする。
【0055】
このとき、低温側冷媒は、受液器23の液冷媒が第2開閉手段51を介して蓄熱用絞り装置52に流れて減圧膨張され、蓄熱タンク50内に配置された蓄熱用蒸発器53に流入する。蓄熱用蒸発器53に流入した低温側冷媒は、蓄熱タンク50内に封入された蓄熱媒体55と熱交換されて蒸発ガス化され、第3開閉手段54を介して低温側圧縮機21に戻る。このとき、高温側圧縮機11は停止させているため、低温側圧縮機21は凝縮温度が急激に上昇してしまわない程度の周波数で駆動する。これにより、高温側圧縮機11を駆動させずに、蓄熱を行いながら霜取を行うことができ、不要な電力を消費させずに済む。
【0056】
さらに、制御装置40は、予め設定された限界圧力Pmaxと、吸入側圧力Psを比較し、吸入側圧力Psが限界圧力Pmax以上になったと判断したら(S27)、高温側圧縮機11を駆動させ、第2の蓄熱霜取運転を行う(S28)。これにより、高温側蒸発器14で低温側冷媒を冷却して圧力上昇を抑えながら、霜取をしつつ、最大の出力で蓄熱を行うことができる。
【0057】
このように、ポンプダウン運転後の霜取時に、吸入側圧力センサー28の検知圧力に応じて高温側圧縮機11および低温側圧縮機21を適宜駆動させるので、低温側冷媒の圧力上昇を防ぎつつ、圧縮機の駆動による無駄な電力消費を防ぎ、有効に電力を利用することができる。
【0058】
なお、本実施の形態では、吸入側圧力センサー28の検知圧力に基づいて段階的に高温側圧縮機11および低温側圧縮機21の駆動を制御したが、唯一の所定圧力値に基づいて制御してももちろん構わない。なお、蓄熱タンク50内に十分に冷熱が蓄熱されている時は、それ以上の蓄熱を行う必要が無いため、高温側圧縮機11と低温側圧縮機21の運転を停止してもよく、このようにしても、蓄熱媒体55に蓄熱された冷熱によって、低温側冷媒の圧力上昇を抑制することができる。
【0059】
そして、例えば、低温側蒸発器26の表面温度を検知する温度センサー(図示せず)が所定温度以上を検知したら(S29)、制御装置40は霜取が終了したと判断し、霜取ヒータ27の通電を停止する(S30)。そして、通常冷却運転に戻る。なお、霜取が終了したと判断する低温側蒸発器26表面の所定温度は、例えば、10℃以上としている。これは、低温側蒸発器26の表面が0℃以上となって霜が溶けても、例えばドレンパン(図示せず)等の周辺に霜が残っていたり、残った水が再び凍ってしまわないように、しばらく霜取ヒータ27を加熱して、確実に霜を溶かすためである。
【0060】
なお、S24およびS26の後において、低温側蒸発器26の霜取が完了すれば、通常冷却運転に戻るのは言うまでもなく、低温側蒸発器26の表面温度を検知する温度センサー(図示せず)による検知温度で判断する。霜取が終了したら、通常冷却運転に戻る。または、冷却負荷が高いと判断した場合は、霜取後すぐに過冷却運転を行うようにしてもよい。過冷却運転については、実施の形態1と同様である。
【0061】
以上のように、本実施の形態に係る二元冷却装置100においては、低温側蒸発器26を加熱して霜取しつつ、低温側循環回路2a内に蓄熱回路を備えて蓄熱霜取運転を行うことで、冷却運転時には蓄熱タンク50に蓄熱された冷熱を低温側循環回路2aの過冷却運転に利用できるので、二元冷却装置100として有効に電力を利用することができるのである。
【0062】
また、低温側蒸発器26の霜取時の圧力上昇を監視しながら冷熱を蓄熱するので、CO2冷媒の臨界圧力を超えてしまうようなことがない。つまり、霜取時であっても、低温側循環回路2a内の冷媒圧力を、例えば従来から使用しているHFC冷媒程度の圧力(例えば、4MPa)以下に抑えることができる。したがって、設計においては、低温側蒸発器26の低温側冷媒の耐圧を低く見積もることができ、低温側蒸発器26の伝熱管として使用する銅配管の肉厚を例えば約半分にすることができて、安価で、現地冷媒工事も容易な二元冷却装置を提供することができる。
【0063】
また、従来は、霜取時に低温側装置の冷媒圧力を上昇させない他の方法として、低温側装置に安全弁を設けて圧力上昇時に大気放出を行ったり、冷却装置の近傍に膨張タンクを設置したり、低温側装置に温度を保持する用途としての冷却機を別に設置する等の対策が考えられていたが、本実施の形態では簡易な構成で、霜取時の冷媒圧力の上昇を抑えることができる。
【0064】
また、本実施の形態では、低温側蒸発器26の霜取時、霜取ヒータ27に通電させることで加熱して、霜を溶かすようにしたが、例えば、低温側圧縮機21から吐出される高温高圧の低温側冷媒を低温側蒸発器26に流すことで、低温側蒸発器26を凝縮器として作用させ、凝縮熱により霜を溶かすようにしてもよい(ホットガスデフロスト)。
【0065】
実施の形態3.
図14は、本実施の形態に係る二元冷却装置200を示すものであって、蓄熱タンク50内に過冷却コイル60を設け、過冷却コイル60の一端を高温側凝縮器12の冷媒流出側配管に接続し、他端を高温側絞り装置13の冷媒流入側配管に接続するよう構成したものである。なお、実施の形態1、2と同じものについては、同じ符号を付している。
【0066】
このように構成することで、低温側循環回路2aにおいて霜取時や夜間等の冷却負荷の軽い時に蓄熱された冷熱を、高温側循環回路1bの過冷却にも利用することができるので、高温側圧縮機11を容量が小さいもので賄うことができ、電力を有効に活用できる。また、高温側循環回路1bに循環させる冷媒充填量を少なくすることができるため、CO2やアンモニア等の自然冷媒に比べて、効率は良いが比較的地球温暖化係数(GWP)の高いHFC系冷媒を利用しても、環境負荷を低減することができる。
【0067】
なお、過冷却コイル60は、蓄熱タンク50に蓄熱された冷熱と熱交換するよう構成していればよく、蓄熱タンク50内に設置しなくてもよい。また、高温側循環回路1bから過冷却コイル60と接続される配管の長さは、極力短くするのが良く、高温側凝縮器12と蓄熱タンク50を近接して配置する方がよい。つまり、蓄熱タンク50を二元冷却装置200に併設する等、近接して配置するのが良い。
【0068】
上述の実施の形態は、霜取時と、夜間等の冷却負荷の軽い時に蓄熱を行う形態を個別に説明したが、必要に応じて各動作(通常冷却運転、蓄熱冷却運転、霜取蓄熱運転、運転停止、および過冷却運転)を組合せて冷却装置を動作させても良く、これにより、より無駄な電力消費を防ぎ、電力を有効に利用できる。また、上述の実施の形態は、二元冷却装置で説明したが多段構成の多元冷却装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
10 高温側装置、11 高温側圧縮機、12 高温側凝縮器、13 高温側絞り装置、14 高温側蒸発器、20 低温側装置、21 低温側圧縮機、22 低温側凝縮器、23 受液器、24 第1開閉手段、25 低温側絞り装置、26 低温側蒸発器、27 霜取ヒータ、28 吸入側圧力センサー、30 カスケードコンデンサ、50 蓄熱タンク、51 第2開閉手段、52 蓄熱用絞り装置、53 蓄熱用蒸発器、54 第3開閉手段、55 蓄熱媒体、56 蓄熱回路、57 逆止弁、58 連結管、60 過冷却コイル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温側圧縮機、高温側凝縮器、高温側絞り装置および高温側蒸発器を配管接続して、高温側冷媒を循環させる高温側循環回路を形成する高温側装置と、
低温側圧縮機、低温側凝縮器、受液器、第1開閉手段、低温側絞り装置および低温側蒸発器を配管接続して、低温側冷媒を循環させる低温側循環回路を形成する低温側装置と、
前記高温側蒸発器および前記低温側凝縮器により構成し、前記高温側冷媒と前記低温側冷媒との間の熱交換を行う冷媒間熱交換器と、
前記受液器と前記第一開閉手段とを接続する配管から分岐され、第2開閉手段、蓄熱用絞り装置、蓄熱タンク内に封入された蓄熱媒体と熱交換を行う蓄熱用蒸発器、および第3開閉手段を順次配管接続して、前記低温側蒸発器と前記低温側圧縮機とを接続する配管に接続する蓄熱回路と、
前記蓄熱用蒸発器と前記第3開閉手段とを接続する配管から分岐され、逆止弁を介して前記第1開閉手段と前記低温側絞り装置とを接続する配管に接続する連結管と、
少なくとも、前記高温側圧縮機、前記高温側絞り装置、前記低温側圧縮機、前記第1開閉手段、前記低温側絞り装置、前記第2開閉手段、前記蓄熱用絞り装置、前記蓄熱用蒸発器、および前記第3開閉手段を制御する制御装置と
を備えた冷却装置。
【請求項2】
前記低温側蒸発器の加熱を行う加熱手段を備え、
前記制御装置は、前記第1開閉手段を閉止し、前記第2開閉手段および前記第3開閉手段を開放して、前記加熱手段により前記低温側蒸発器を加熱するとともに、前記低温側圧縮機を駆動させる請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記低温側圧縮機吸入側の前記低温側冷媒の圧力を検知する圧力検知手段を備え、
前記制御装置は、前記圧力検知手段により検知された圧力に応じて、前記低温側圧縮機および前記高温側圧縮機の駆動を制御する請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記冷却装置が運転を停止している時、前記制御装置は、前記第1開閉手段および前記第2開閉手段を閉止し、前記第3開閉手段を開放する請求項1に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記低温側蒸発器の加熱を行う加熱手段と、
前記低温側圧縮機吸入側の前記低温側冷媒の圧力を検知する圧力検知手段とを備え、
前記制御装置は、前記圧力検知手段により検知された圧力が、予め設定された規定圧力未満の時、前記加熱手段により前記低温側蒸発器を加熱する請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記低温側圧縮機吸入側の前記低温側冷媒の圧力を検知する圧力検知手段を備え、
前記冷却装置が、負荷を冷却する運転を行っている時、
前記制御装置は、前記圧力検知手段で検知された圧力が、前記低温側蒸発器の蒸発温度の維持に必要な圧力未満の場合は、前記第1開閉手段、前記第2開閉手段、および前記第3開閉手段を開放する請求項1に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記蓄熱媒体に蓄熱された冷熱と熱交換を行う過冷却コイルを備え、
前記過冷却コイルの一端を前記高温側凝縮器の冷媒流出側配管に接続し、他端を前記高温側絞り装置の冷媒流入側配管に接続する請求項1に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記蓄熱媒体に冷熱が蓄熱された状態で、前記冷却装置が、負荷を冷却する運転を行う時、
前記制御装置は、前記第1開閉手段および前記第3開閉手段を閉止し、前記第2開閉手段を開放する請求項1ないし3、6、7のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項9】
前記低温側冷媒が、二酸化炭素である請求項1ないし7のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項1】
高温側圧縮機、高温側凝縮器、高温側絞り装置および高温側蒸発器を配管接続して、高温側冷媒を循環させる高温側循環回路を形成する高温側装置と、
低温側圧縮機、低温側凝縮器、受液器、第1開閉手段、低温側絞り装置および低温側蒸発器を配管接続して、低温側冷媒を循環させる低温側循環回路を形成する低温側装置と、
前記高温側蒸発器および前記低温側凝縮器により構成し、前記高温側冷媒と前記低温側冷媒との間の熱交換を行う冷媒間熱交換器と、
前記受液器と前記第一開閉手段とを接続する配管から分岐され、第2開閉手段、蓄熱用絞り装置、蓄熱タンク内に封入された蓄熱媒体と熱交換を行う蓄熱用蒸発器、および第3開閉手段を順次配管接続して、前記低温側蒸発器と前記低温側圧縮機とを接続する配管に接続する蓄熱回路と、
前記蓄熱用蒸発器と前記第3開閉手段とを接続する配管から分岐され、逆止弁を介して前記第1開閉手段と前記低温側絞り装置とを接続する配管に接続する連結管と、
少なくとも、前記高温側圧縮機、前記高温側絞り装置、前記低温側圧縮機、前記第1開閉手段、前記低温側絞り装置、前記第2開閉手段、前記蓄熱用絞り装置、前記蓄熱用蒸発器、および前記第3開閉手段を制御する制御装置と
を備えた冷却装置。
【請求項2】
前記低温側蒸発器の加熱を行う加熱手段を備え、
前記制御装置は、前記第1開閉手段を閉止し、前記第2開閉手段および前記第3開閉手段を開放して、前記加熱手段により前記低温側蒸発器を加熱するとともに、前記低温側圧縮機を駆動させる請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記低温側圧縮機吸入側の前記低温側冷媒の圧力を検知する圧力検知手段を備え、
前記制御装置は、前記圧力検知手段により検知された圧力に応じて、前記低温側圧縮機および前記高温側圧縮機の駆動を制御する請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記冷却装置が運転を停止している時、前記制御装置は、前記第1開閉手段および前記第2開閉手段を閉止し、前記第3開閉手段を開放する請求項1に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記低温側蒸発器の加熱を行う加熱手段と、
前記低温側圧縮機吸入側の前記低温側冷媒の圧力を検知する圧力検知手段とを備え、
前記制御装置は、前記圧力検知手段により検知された圧力が、予め設定された規定圧力未満の時、前記加熱手段により前記低温側蒸発器を加熱する請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記低温側圧縮機吸入側の前記低温側冷媒の圧力を検知する圧力検知手段を備え、
前記冷却装置が、負荷を冷却する運転を行っている時、
前記制御装置は、前記圧力検知手段で検知された圧力が、前記低温側蒸発器の蒸発温度の維持に必要な圧力未満の場合は、前記第1開閉手段、前記第2開閉手段、および前記第3開閉手段を開放する請求項1に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記蓄熱媒体に蓄熱された冷熱と熱交換を行う過冷却コイルを備え、
前記過冷却コイルの一端を前記高温側凝縮器の冷媒流出側配管に接続し、他端を前記高温側絞り装置の冷媒流入側配管に接続する請求項1に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記蓄熱媒体に冷熱が蓄熱された状態で、前記冷却装置が、負荷を冷却する運転を行う時、
前記制御装置は、前記第1開閉手段および前記第3開閉手段を閉止し、前記第2開閉手段を開放する請求項1ないし3、6、7のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項9】
前記低温側冷媒が、二酸化炭素である請求項1ないし7のいずれかに記載の冷却装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−83407(P2013−83407A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224629(P2011−224629)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
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