説明

冷媒回路装置及び自動販売機

【課題】気液分離器に流入する冷媒クオリティが変化しても気相冷媒管路への液相冷媒の流入を抑制して、冷却効率の低下を防止することができる冷媒回路装置及び自動販売機を提供すること。
【解決手段】蒸発器21と、蒸発器21で蒸発した冷媒を圧縮する圧縮機22と、圧縮機22で圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器23と、凝縮器23で凝縮した冷媒を断熱膨張させる膨張機構24と、膨張機構24で断熱膨張した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離し、液相冷媒管路31を通じて液相冷媒を蒸発器21に送出する一方、気相冷媒管路32を通じて気相冷媒を圧縮機22に送出する気液分離器25とを備えた冷媒回路10を有する冷媒回路装置において、気相冷媒管路32を構成し、かつ自身の下流側の下流側冷媒温度が自身の上流側の上流側冷媒温度よりも高くなる態様で気相冷媒管路32における冷媒の流量を制御する流量制御弁33を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒回路装置及び自動販売機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動販売機等に適用される冷媒回路装置として、蒸発器、圧縮機、凝縮器及び膨張機構が冷媒管路で順次接続されて構成された冷媒回路を有するものが知られている。蒸発器は、自動販売機の商品収容庫の内部に配設されている。この蒸発器は、供給された冷媒を蒸発させることにより、商品収容庫の内部空気(内部雰囲気)を冷却するものである。圧縮機は、自動販売機本体内であって商品収容庫の外部となる個所、例えば機械室に配設されており、蒸発器で蒸発した冷媒を吸引し、吸引した冷媒を圧縮して高温高圧の状態にして吐出するものである。凝縮器は、圧縮機と同様に自動販売機本体内であって商品収容庫の外部となる個所(機械室等)に配設されている。この凝縮器は、圧縮機から吐出された冷媒を凝縮させることにより、周囲空気を加熱するものである。膨張機構は、圧縮機及び凝縮器と同様に自動販売機本体内であって商品収容庫の外部となる個所(機械室等)に配設されている。この膨張機構は、凝縮器で凝縮した冷媒を減圧して断熱膨張させるためのものである。
【0003】
このような冷媒回路においては、上記膨張機構で断熱膨張した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離し、かつ液相冷媒管路を通じて液相冷媒を蒸発器に送出する一方、気相冷媒管路を通じて気相冷媒を圧縮機に送出する気液分離器が設けられたものが知られている。
【0004】
かかる冷媒回路を有する冷媒回路装置では、気液分離器が膨張機構で断熱膨張した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離し、液相冷媒を蒸発器に送出する一方、気相冷媒を圧縮機に送出することで、断熱膨張して生じた気相冷媒の大部分が蒸発器を通過してから圧縮機に吸引される事態を回避し、膨張機構から蒸発器を介して圧縮機に流れる冷媒の圧力損失の低減化を図っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−249455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した冷媒回路装置において気相冷媒管路における流体抵抗は、次のようにして設定されている。すなわち、気液分離器における全流入冷媒流量に対する気相冷媒管路へ流出する冷媒流量の比(以下、冷媒流量比ともいう)が、設計上想定される気液分離器に流入する冷媒のクオリティ(気相冷媒の質量流量比率)と同等となるように一意に設定されている。よって、気液分離器に流入する冷媒クオリティが冷媒流量比と同等の場合には、所望の比率にて気液分離を行うことができる。
【0007】
しかしながら、冷媒回路装置の設置環境等の諸条件により気液分離器に流入する冷媒クオリティが変動することがある。そのため、上述したように気相冷媒管路における流体抵抗が一意に設定されていると、気液分離器に流入する冷媒クオリティが低下した場合、気相冷媒管路に気相冷媒の流れに追従しやすい微細な液滴(液相冷媒)が流入してしまい、冷却効率の低下を招来する問題があった。
【0008】
尚、特許文献1に提案されている冷媒回路装置においては、気相冷媒管路に該気相冷媒管路を通過する冷媒の流量を調整する流量調整手段が設けられているが、この流量調整手段は、冷媒回路における蒸発器の駆動数に応じて流量を調整するものであり、気液分離器に流入する冷媒クオリティの変動に応じた流量調整を行うことはできない。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みて、気液分離器に流入する冷媒クオリティが変化しても気相冷媒管路への液相冷媒の流入を抑制して、冷却効率の低下を防止することができる冷媒回路装置及び自動販売機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る冷媒回路装置は、対象室の内部に配設され、かつ供給された冷媒を蒸発させて該対象室の内部雰囲気を冷却する蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した冷媒を吸引して圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を導入して凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器で凝縮した冷媒を断熱膨張させる膨張機構と、前記膨張機構で断熱膨張した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離し、液相冷媒管路を通じて液相冷媒を前記蒸発器に送出する一方、気相冷媒管路を通じて気相冷媒を前記圧縮機に送出する気液分離器とを備えた冷媒回路を有する冷媒回路装置において、前記気相冷媒管路を構成し、かつ自身の下流側の下流側冷媒温度が自身の上流側の上流側冷媒温度よりも高くなる態様で該気相冷媒管路における冷媒の流量を制御する流量制御手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2に係る冷媒回路装置は、上述した請求項1において、前記流量制御手段は、前記下流側冷媒温度が前記上流側冷媒温度以下となる場合には、前記気相冷媒管路における流体抵抗を増大させて冷媒流量を減少させる一方、前記下流側冷媒温度が前記上流側冷媒温度よりも高い場合には、前記気相冷媒管路における流体抵抗を維持して冷媒流量を保持することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3に係る自動販売機は、上述した請求項1又は請求項2に記載の冷媒回路装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、気相冷媒管路を構成する流量制御手段が、自身の下流側の下流側冷媒温度が自身の上流側の上流側冷媒温度よりも高くなる態様で気相冷媒管路における冷媒の流量を制御するので、気液分離器に流入する冷媒クオリティが変化して低下した場合にも、気相冷媒管路への液相冷媒の流入を抑制でき、これにより蒸発器への液相冷媒の流量低下を防止できる。従って、気液分離器に流入する冷媒クオリティが変化しても気相冷媒管路への液相冷媒の流入を抑制して、冷却効率の低下を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1である冷媒回路装置が適用された自動販売機(本発明の実施の形態である自動販売機)の内部構造を正面から見た場合を示す説明図である。
【図2】図2は、図1に示した自動販売機の内部構造を示すものであり、右側の商品収容庫の断面側面図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示した自動販売機に適用された冷媒回路装置を概念的に示す概念図である。
【図4】図4は、図3に示した冷媒回路装置の特徴的な制御系を模式的に示すブロック図である。
【図5】図5は、図3に示した冷媒回路装置においてCCC運転を行う場合の冷媒の流れを概念的に示す概念図である。
【図6】図6は、図3に示した冷媒回路装置においてHCC運転を行う場合の冷媒の流れを概念的に示す概念図である。
【図7】図7は、図4に示した流量制御部が実施する流量制御処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の実施の形態2である冷媒回路装置を概念的に示す概念図である。
【図9】図9は、図8に示した冷媒回路装置の特徴的な制御系を模式的に示すブロック図である。
【図10】図10は、図8に示した冷媒回路装置においてCCC運転を行う場合の冷媒の流れを概念的に示す概念図である。
【図11】図11は、図8に示した冷媒回路装置においてHCC運転を行う場合の冷媒の流れを概念的に示す概念図である。
【図12】図12は、図9に示した流量制御部が実施する流量制御処理の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る冷媒回路装置及び自動販売機の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1である冷媒回路装置が適用された自動販売機(本発明の実施の形態である自動販売機)の内部構造を正面から見た場合を示す説明図である。ここで例示する自動販売機は、本体キャビネット1を備えている。
【0017】
本体キャビネット1は、前面が開口した直方状の形態を成すものである。この本体キャビネット1には、その内部に例えば2つの断熱仕切板2によって仕切られた3つの独立した商品収容庫3が左右に並んだ態様で設けてある。この商品収容庫3は、缶入り飲料やペットボトル入り飲料等の商品を所望の温度に維持した状態で収容するためのもので、断熱構造を有している。
【0018】
図2は、図1に示した自動販売機の内部構造を示すものであり、右側の商品収容庫3の断面側面図である。尚、ここでは右側の商品収容庫3(以下、適宜右庫3aとも称する)の内部構造について示すが、中央の商品収容庫3(以下、適宜中庫3bとも称する)及び左側の商品収容庫3(以下、適宜左庫3cとも称する)の内部構造も右庫3aと略同じような構成である。尚、本明細書における右側とは、自動販売機を正面から見た場合の右方を示し、左側とは、自動販売機を正面から見た場合の左方を示す。
【0019】
かかる図2に示すように、本体キャビネット1の前面には、外扉4及び内扉5が設けてある。外扉4は、本体キャビネット1の前面開口を開閉するためのものであり、内扉5は、商品収容庫3の前面を開閉するためのものである。この内扉5は、上下に分割してあり、上側の扉5aは商品を補充する際に開閉するものである。
【0020】
上記商品収容庫3には、商品収納ラック6、搬出機構7及び搬出シュータ8が設けてある。商品収納ラック6は、商品を上下方向に沿って並ぶ態様で収納するためのものである。搬出機構7は、商品収納ラック6の下部に設けてあり、この商品収納ラック6に収納された商品群の最下位にある商品を1つずつ搬出するためのものである。搬出シュータ8は、搬出機構7から搬出された商品を外扉4に設けられた商品取出口4aに導くためのものである。
【0021】
図3は、図1及び図2に示した自動販売機に適用された冷媒回路装置を概念的に示す概念図である。ここで例示する冷媒回路装置は、内部に冷媒(例えばR134a等)を封入した冷媒回路10を有している。かかる冷媒回路10は、主経路20と加熱経路40とを備えて構成してある。
【0022】
主経路20は、蒸発器21、圧縮機22、凝縮器23、膨張機構24及び気液分離器25を冷媒管路26にて順次接続して構成してある。
【0023】
蒸発器21は、複数(図示の例では3つ)設けてあり、それぞれが各商品収容庫3の内部低域であって背面ダクトD(図2参照)の前面側に配設してある。右庫3aに配設された蒸発器21(以下、右蒸発器21aとも称する)、中庫3bに配設された蒸発器21(以下、中蒸発器21bとも称する)及び左庫3cの内部に配設された蒸発器21(以下、左蒸発器21cとも称する)には、各入口に分配器27によって3つに分岐された冷媒管路26が連通する態様で接続してある。これら蒸発器21は、通過する冷媒を蒸発させて対象となる商品収容庫3(右庫3a、中庫3b、左庫3c)の内部空気を冷却するものである。
【0024】
各蒸発器21の入口に連通する態様で接続された冷媒管路26には、その途中に低圧電磁弁281,282,283が設けてある。低圧電磁弁281,282,283は、開閉可能な弁体であり、図示せぬ制御ユニットから開指令が与えられた場合には開成して冷媒の通過を許容する一方、閉指令が与えられた場合には閉成して冷媒の通過を規制するものである。
【0025】
また、各蒸発器21には、各出口に連通する態様で冷媒管路26が接続してあり、これら冷媒管路26は、第1合流点P1で合流し、圧縮機22の吸引口に連通する態様で該圧縮機22に接続してある。
【0026】
圧縮機22は、図2にも示すように機械室9に配設してある。機械室9は、本体キャビネット1の内部であって商品収容庫3と区画され、かつ商品収容庫3の下方側の室である。この圧縮機22は、吸引口を通じて冷媒を吸引し、吸引した冷媒を圧縮して高温高圧の状態にして吐出口より吐出するものである。
【0027】
凝縮器23は、図2にも示すように圧縮機22と同様に機械室9に配設してある。この凝縮器23は、通過する冷媒を凝縮させるものである。より詳細に説明すると、圧縮機22で圧縮され、かつ吐出口から吐出されて冷媒管路26を通じて送出された冷媒を周囲空気と熱交換させて凝縮させるものである。この凝縮器23と圧縮機22とを接続する冷媒管路26には、三方弁29が設けてある。かかる三方弁29については後述する。
【0028】
膨張機構24は、例えば膨張弁やキャピラリーチューブにより構成してあり、自身の入口に連通する態様で接続された冷媒管路26から供給された冷媒を減圧して断熱膨張させるものである。この膨張機構24の入口に連通する態様で接続された冷媒管路26は、圧縮機22の吸引口に連通する態様で接続された冷媒管路26との間で互いの冷媒管路26を通過する冷媒どうしが熱交換可能な内部熱交換器30を構成している。
【0029】
気液分離器25は、自身の入口251に連通する態様で接続された冷媒管路26が膨張機構24の出口に連通する態様で該膨張機構24に接続してある。この気液分離器25は、該冷媒管路26を通じて供給された冷媒、すなわち膨張機構24で断熱膨張された冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離させるものである。
【0030】
上記気液分離器25は、入口251の他、分離した液相冷媒を吐出する液相冷媒出口252と、分離した気相冷媒を吐出する気相冷媒出口253とを有しており、液相冷媒出口252に連通する態様で液相冷媒管路31が接続してあるとともに、気相冷媒出口253に連通する態様で気相冷媒管路32が連通してある。
【0031】
液相冷媒管路31は、一端が液相冷媒出口252に連通する態様で気液分離器25に接続する一方、他端が分配器27に接続し、液相冷媒出口252を通じて吐出された液相冷媒を分配器27に向けて通過させるものである。
【0032】
気相冷媒管路32は、一端が気相冷媒出口253に連通する態様で気液分離器25に接続する一方、他端が、圧縮機22に接続された冷媒管路26の第1合流点P1から内部熱交換器30までの間の第2合流点P2で該冷媒管路26に合流する態様で接続し、気相冷媒出口253を通じて吐出された気相冷媒を圧縮機22に向けて通過させるものである。
【0033】
つまり、気液分離器25は、膨張機構24で断熱膨張した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離し、液相冷媒管路31を通じて液相冷媒を蒸発器21に送出する一方、気相冷媒管路32を通じて気相冷媒を圧縮機22に送出するものである。
【0034】
このような気相冷媒管路32には、その途中に例えばパルス駆動式弁である流量制御弁33が設けてある。この流量制御弁33は、上記気相冷媒管路32を構成する要素であり、図4に示す流量制御部34によりその開度が調整され、気相冷媒管路32を通過する冷媒流量を制御するための弁体である。
【0035】
また気相冷媒管路32においては、流量制御弁33の上流側に上流側冷媒温度センサS1が設けてあるとともに、流量制御弁33の下流側に下流側冷媒温度センサS2が設けてある。上流側冷媒温度センサS1は、気液分離器25の気相冷媒出口253から吐出された冷媒の温度、すなわち上流側冷媒温度T1を検出する検出手段であり、検出結果を流量制御部34に検出信号として与えるものである。下流側冷媒温度センサS2は、流量制御弁33を通過した冷媒の温度、すなわち下流側冷媒温度T2を検出する検出手段であり、検出結果を流量制御部34に検出信号として与えるものである。
【0036】
加熱経路40は、庫内熱交換器41及び庫外熱交換器42を冷媒配管43で順次接続して構成してある。庫内熱交換器41は、左庫3cの内部において左蒸発器21cに隣接する態様で配設してある。この庫内熱交換器41の入口側には、上記三方弁29に接続された冷媒配管43が接続してある。
【0037】
ここで三方弁29は、圧縮機22で圧縮した冷媒を凝縮器23に送出する第1送出状態と、圧縮機22で圧縮した冷媒を庫内熱交換器41に送出する第2送出状態との間で択一的に切り換え可能なバルブ手段である。かかる三方弁29の切換動作は、制御ユニットから与えられる指令に応じて行われる。
【0038】
このような庫内熱交換器41は、冷媒配管43を通じて圧縮機22で圧縮された冷媒が供給された場合、該冷媒を凝縮させることで左庫3cの内部空気を加熱するものである。
【0039】
庫外熱交換器42は、機械室9において凝縮器23に隣接する態様で配設してある。この庫外熱交換器42の入口側には、庫内熱交換器41の出口側に接続された冷媒配管43が接続してある。つまり、庫内熱交換器41で凝縮した冷媒が冷媒配管43を通じて供給される。この庫外熱交換器42は、庫内熱交換器41から供給された冷媒と周囲空気との間で熱交換を行わせて、該冷媒を放熱させるものである。
【0040】
また、庫外熱交換器42の出口側には、主経路20における凝縮器23の出口側に接続された冷媒管路26に合流する態様で接続された冷媒配管43が接続してある。
【0041】
流量制御部34は、メモリ35に格納されたプログラムやデータに従って流量制御弁33の開度を調整するものであり、図4に示すように入力処理部341、比較部342及び弁駆動処理部343を備えて構成してある。尚、流量制御部34は、低圧電磁弁281,282,283や三方弁29の駆動を制御する制御ユニットと一体的に構成されるものであっても良いし、かかる制御ユニットとは独立して構成されるものであっても良い。
【0042】
入力処理部341は、上流側冷媒温度センサS1及び下流側冷媒温度センサS2から与えられる検出信号を入力するものである。比較部342は、入力処理部341を通じて入力された下流側冷媒温度センサS2の検出温度(下流側冷媒温度T2)が上流側冷媒温度センサS1の検出温度(上流側冷媒温度T1)よりも高いか否かを比較するものである。弁駆動処理部343は、流量制御弁33に指令を与えて開度を維持若しくは減少させるものである。
【0043】
尚、図中の符号H、F1及びF2は、それぞれヒータ、庫内送風ファン及び庫外送風ファンである。ヒータHは、中庫3bに配設してあり、駆動して通電状態となることにより中庫3bの内部空気を加熱する加熱手段である。庫内送風ファンF1は、各商品収容庫3に配設してあり、駆動することにより蒸発器21等の周囲を通過した空気を商品収容庫3の内部で循環させるものである。庫外送風ファンF2は、凝縮器23の近傍に配設してあり、駆動することにより凝縮器23(若しくは庫外熱交換器42)の周囲に外気を通過させるものである。
【0044】
以上のような構成を有する冷媒回路装置は、次のようにして商品収容庫3に収容された商品を冷却、あるいは加熱する。
【0045】
まず、CCC運転(すべての商品収容庫3の内部空気を冷却する運転)を行う場合について説明する。この場合、制御ユニットは三方弁29を第1送出状態にさせ、低圧電磁弁281,282,283に対して開指令を与える。これにより圧縮機22で圧縮された冷媒は図5に示すように循環する。
【0046】
すなわち、圧縮機22で圧縮された冷媒は、第1送出状態にある三方弁29を通過して凝縮器23に至る。凝縮器23に至った冷媒は、該凝縮器23を通過中に、周囲空気(外気)に放熱して凝縮する。凝縮器23で凝縮した冷媒は、膨張機構24で断熱膨張し、気液分離器25に至る。
【0047】
かかる気液分離器25において、冷媒は液相冷媒と気相冷媒とに分離される。これにより液相冷媒は、液相冷媒管路31を通過した後、分配器27を介して右蒸発器21a、中蒸発器21b及び左蒸発器21cに至る一方、分離された気相冷媒は、気相冷媒管路32を通過する。
【0048】
各蒸発器21に至った冷媒は、各蒸発器21で蒸発して商品収容庫3の内部空気から熱を奪い、該内部空気を冷却する。冷却された内部空気は、各庫内送風ファンF1の駆動により内部を循環し、これにより各商品収容庫3に収容された商品は、循環する内部空気に冷却される。各蒸発器21で蒸発した冷媒は、第1合流点P1で合流した後、第2合流点P2で気相冷媒管路32を通過した気相冷媒と合流して圧縮機22に吸引され、圧縮機22に圧縮されて上述した循環を繰り返す。
【0049】
次に、HCC運転(左庫3cの内部空気を加熱し、右庫3a及び中庫3bの内部空気を冷却する運転)を行う場合について説明する。この場合、制御ユニットは、三方弁29を第2送出状態にさせ、低圧電磁弁283に対して閉指令を与え、低圧電磁弁281,282に対して開指令を与える。これにより圧縮機22で圧縮された冷媒は、図6に示すように循環する。
【0050】
すなわち、圧縮機22で圧縮された冷媒は、第2送出状態である三方弁29を通過して庫内熱交換器41に至る。庫内熱交換器41に至った冷媒は、該庫内熱交換器41を通過中に、左庫3cの内部空気と熱交換し、該内部空気に放熱して凝縮する。これにより左庫3cの内部空気を加熱する。加熱された内部空気は、庫内送風ファンF1の駆動により、左庫3cの内部を循環し、これにより左庫3cに収容された商品は、循環する内部空気に加熱される。
【0051】
庫内熱交換器41で凝縮した冷媒は、庫外熱交換器42に至り、該庫外熱交換器42で周囲空気に放熱した後、冷媒配管43を通過して主経路20に戻る。主経路20に戻った冷媒は、膨張機構24で断熱膨張し、気液分離器25に至る。
【0052】
かかる気液分離器25において、冷媒は液相冷媒と気相冷媒とに分離される。これにより液相冷媒は、液相冷媒管路31を通過した後、分配器27を介して右蒸発器21a及び中蒸発器21bに至る一方、分離された気相冷媒は、気相冷媒管路32を通過する。
【0053】
右蒸発器21a及び中蒸発器21bに至った冷媒は、右蒸発器21a及び中蒸発器21bで蒸発して右庫3a及び中庫3bの内部空気から熱を奪い、該内部空気を冷却する。冷却された内部空気は、各庫内送風ファンF1の駆動により内部を循環し、これにより右庫3a及び中庫3bに収容された商品は、循環する内部空気に冷却される。右蒸発器21a及び中蒸発器21bで蒸発した冷媒は、第1合流点P1で合流した後、第2合流点P2で気相冷媒管路32を通過した気相冷媒と合流して圧縮機22に吸引され、圧縮機22に圧縮されて上述した循環を繰り返す。
【0054】
上述したCCC運転やHCC運転を行う場合において、冷媒回路装置を構成する流量制御部34は、所定のタイムスケジュールに従って次のような流量制御処理を実施する。図7は、流量制御部34が実施する流量制御処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0055】
この流量制御処理において流量制御部34は、入力処理部341を通じて上流側冷媒温度センサS1及び下流側冷媒温度センサS2から与えられた検出信号を入力した場合、すなわち上流側冷媒温度T1及び下流側冷媒温度T2が検出された場合(ステップS101:Yes)、比較部342を通じて下流側冷媒温度T2が上流側冷媒温度T1よりも高いか否かを比較する(ステップS102)。
【0056】
下流側冷媒温度T2が上流側冷媒温度T1よりも高い場合(ステップS102:Yes)、流量制御部34は、弁駆動処理部343を通じて流量制御弁33に開度維持指令を与えて開度を維持し(ステップS103)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0057】
これによれば、流量制御弁33の開度を維持することで気相冷媒管路32における流体抵抗を維持することができ、かかる気相冷媒管路32の冷媒流量を保持することができる。
【0058】
一方、下流側冷媒温度T2が上流側冷媒温度T1以下となる場合(ステップS102:No)、流量制御部34は、弁駆動処理部343を通じて流量制御弁33に開度減少指令を与えて開度を減少させ(ステップS104)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0059】
これによれば、流量制御弁33の開度が減少することで気相冷媒管路32における流体抵抗を増大させて冷媒流量を減少させることができる。
【0060】
このような流量制御処理においては、流量制御部34は、下流側冷媒温度T2が上流側冷媒温度T1よりも高くなる態様で気相冷媒管路32における冷媒の流量を制御している。
【0061】
以上説明したような本実施の形態1である冷媒回路装置によれば、所定のタイムスケジュールで行われる流量制御処理において、流量制御部34が、下流側冷媒温度T2が上流側冷媒温度T1よりも高くなる態様で気相冷媒管路32における冷媒の流量を制御しているので、気液分離器25に流入する冷媒クオリティが変化して低下した場合にも、気相冷媒管路32への液相冷媒の流入を抑制でき、これにより蒸発器21への液相冷媒の流量低下を防止できる。従って、気液分離器25に流入する冷媒クオリティが変化しても気相冷媒管路32への液相冷媒の流入を抑制して、冷却効率の低下を防止することができる。
【0062】
また、上記冷媒回路装置を備える自動販売機においても、気液分離器25に流入する冷媒クオリティが変化して低下した場合にも、気相冷媒管路32への液相冷媒の流入を抑制でき、これにより蒸発器21への液相冷媒の流量低下を防止できる。従って、気液分離器25に流入する冷媒クオリティが変化しても気相冷媒管路32への液相冷媒の流入を抑制して、冷却効率の低下を防止することができる。
【0063】
<実施の形態2>
図8は、本発明の実施の形態2である冷媒回路装置を概念的に示す概念図である。ここで例示する冷媒回路装置は、上述した実施の形態1である冷媒回路装置と同様に図1及び図2に示した自動販売機に適用されるものであり、内部に冷媒(例えばR134a等)を封入した冷媒回路11を有している。尚、以下において、上述した実施の形態1と同様の構成を有するものには同一の符号を適宜付して説明する。
【0064】
上記の冷媒回路装置を構成する冷媒回路11は、主経路200と加熱経路40とを備えて構成してある。
【0065】
主経路200は、蒸発器21、圧縮機22、凝縮器23、膨張機構24及び気液分離器25を冷媒管路26にて順次接続して構成してある。
【0066】
蒸発器21は、複数(図示の例では3つ)設けてあり、それぞれが各商品収容庫3の内部低域であって背面ダクトD(図2参照)の前面側に配設してある。右庫3aに配設された蒸発器21(以下、右蒸発器21aとも称する)、中庫3bに配設された蒸発器21(以下、中蒸発器21bとも称する)及び左庫3cの内部に配設された蒸発器21(以下、左蒸発器21cとも称する)には、各入口に分配器27によって3つに分岐された冷媒管路26が連通する態様で接続してある。これら蒸発器21は、通過する冷媒を蒸発させて対象となる商品収容庫3(右庫3a、中庫3b、左庫3c)の内部空気を冷却するものである。
【0067】
各蒸発器21の入口に連通する態様で接続された冷媒管路26には、その途中に低圧電磁弁281,282,283が設けてある。低圧電磁弁281,282,283は、開閉可能な弁体であり、図示せぬ制御ユニットから開指令が与えられた場合には開成して冷媒の通過を許容する一方、閉指令が与えられた場合には閉成して冷媒の通過を規制するものである。
【0068】
また、各蒸発器21には、各出口に連通する態様で冷媒管路26が接続してあり、これら冷媒管路26は、第1合流点P1で合流し、圧縮機22の吸引口に連通する態様で該圧縮機22に接続してある。
【0069】
圧縮機22は、機械室9に配設してある。機械室9は、本体キャビネット1の内部であって商品収容庫3と区画され、かつ商品収容庫3の下方側の室である。この圧縮機22は、吸引口を通じて冷媒を吸引し、吸引した冷媒を圧縮して高温高圧の状態にして吐出口より吐出するものである。
【0070】
凝縮器23は、圧縮機22と同様に機械室9に配設してある。この凝縮器23は、通過する冷媒を凝縮させるものである。より詳細に説明すると、圧縮機22で圧縮され、かつ吐出口から吐出されて冷媒管路26を通じて送出された冷媒を周囲空気と熱交換させて凝縮させるものである。この凝縮器23と圧縮機22とを接続する冷媒管路26には、三方弁29が設けてある。かかる三方弁29については後述する。
【0071】
膨張機構24は、例えば膨張弁やキャピラリーチューブにより構成してあり、自身の入口に連通する態様で接続された冷媒管路26から供給された冷媒を減圧して断熱膨張させるものである。この膨張機構24の入口に連通する態様で接続された冷媒管路26は、圧縮機22の吸引口に連通する態様で接続された冷媒管路26との間で互いの冷媒管路26を通過する冷媒どうしが熱交換可能な内部熱交換器30を構成している。
【0072】
気液分離器25は、自身の入口251に連通する態様で接続された冷媒管路26が膨張機構24の出口に連通する態様で該膨張機構24に接続してある。この気液分離器25は、該冷媒管路26を通じて供給された冷媒、すなわち膨張機構24で断熱膨張された冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離させるものである。
【0073】
上記気液分離器25は、入口251の他、分離した液相冷媒を吐出する液相冷媒出口252と、分離した気相冷媒を吐出する気相冷媒出口253とを有しており、液相冷媒出口252に連通する態様で液相冷媒管路31が接続してあるとともに、気相冷媒出口253に連通する態様で気相冷媒管路320が連通してある。
【0074】
液相冷媒管路31は、一端が液相冷媒出口252に連通する態様で気液分離器25に接続する一方、他端が分配器27に接続し、液相冷媒出口252を通じて吐出された液相冷媒を分配器27に向けて通過させるものである。
【0075】
気相冷媒管路320は、一端が気相冷媒出口253に連通する態様で気液分離器25に接続された気相流入配管321と、この気相流入配管321の他端にそれぞれが並列となる態様で接続された複数(図示の例では3つ)の気相配管322,323,324とを備えて構成してある。これら気相配管322,323,324は、例えばキャピラリーチューブから構成されるもので、それぞれ流体抵抗が異なるものである。以下においては、流体抵抗が最も小さい気相配管を第1気相配管322、流体抵抗が最も大きい気相配管を第3気相配管324、流体抵抗が第1気相配管322よりも大きく第3気相配管324よりも小さい気相配管を第2気相配管323とする。
【0076】
第1気相配管322は、一端が気相流入配管321の他端に接続する一方、他端が、圧縮機22に接続された冷媒管路26の第1合流点P1から内部熱交換器30までの間の第2合流点P2で該冷媒管路26に合流する態様で接続している。この第1気相配管322には、その途中に第1流量電磁弁331が設けてある。この第1流量電磁弁331は、開閉可能な弁体であり、図9に示す流量制御部36から開指令が与えられた場合には開成して冷媒の通過を許容する一方、閉指令が与えられた場合には閉成して冷媒の通過を規制するものである。
【0077】
第2気相配管323は、一端が気相流入配管321の他端に接続する一方、他端が、圧縮機22に接続された冷媒管路26の第1合流点P1から内部熱交換器30までの間の第3合流点P3で該冷媒管路26に合流する態様で接続している。この第2気相配管323には、その途中に第2流量電磁弁332が設けてある。この第2流量電磁弁332は、開閉可能な弁体であり、図9に示す流量制御部36から開指令が与えられた場合には開成して冷媒の通過を許容する一方、閉指令が与えられた場合には閉成して冷媒の通過を規制するものである。
【0078】
第3気相配管324は、一端が気相流入配管321の他端に接続する一方、他端が、圧縮機22に接続された冷媒管路26の第1合流点P1から内部熱交換器30までの間の第4合流点P4で該冷媒管路26に合流する態様で接続している。この第3気相配管324には、その途中に第3流量電磁弁333が設けてある。この第3流量電磁弁333は、開閉可能な弁体であり、図9に示す流量制御部36から開指令が与えられた場合には開成して冷媒の通過を許容する一方、閉指令が与えられた場合には閉成して冷媒の通過を規制するものである。
【0079】
このような気液分離器25は、膨張機構24で断熱膨張した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離し、液相冷媒管路31を通じて液相冷媒を蒸発器21に送出する一方、気相冷媒管路320を通じて気相冷媒を圧縮機22に送出するものである。
【0080】
また気相冷媒管路320においては、気相流入配管321に上流側冷媒温度センサS1が設けてあるとともに、第1気相配管322の第1流量電磁弁331の下流側に第1下流側冷媒温度センサS3、第2気相配管323の第2流量電磁弁332の下流側に第2下流側冷媒温度センサS4、並びに第3気相配管324の第3流量電磁弁333の下流側に第3下流側冷媒温度センサS5が設けてある。
【0081】
上流側冷媒温度センサS1は、気液分離器25の気相冷媒出口253から吐出された冷媒の温度、すなわち上流側冷媒温度T1を検出する検出手段であり、検出結果を流量制御部36に検出信号として与えるものである。
【0082】
第1下流側冷媒温度センサS3は、第1気相配管322を通過した冷媒の温度、すなわち第1下流側冷媒温度t2を検出する検出手段であり、検出結果を流量制御部36に検出信号として与えるものである。
【0083】
第2下流側冷媒温度センサS4は、第2気相配管323を通過した冷媒の温度、すなわち第2下流側冷媒温度t3を検出する検出手段であり、検出結果を流量制御部36に検出信号として与えるものである。
【0084】
第3下流側冷媒温度センサS5は、第3気相配管324を通過した冷媒の温度、すなわち第3下流側冷媒温度t4を検出する検出手段であり、検出結果を流量制御部36に検出信号として与えるものである。
【0085】
加熱経路40は、庫内熱交換器41及び庫外熱交換器42を冷媒配管43で順次接続して構成してある。庫内熱交換器41は、左庫3cの内部において左蒸発器21cに隣接する態様で配設してある。この庫内熱交換器41の入口側には、上記三方弁29に接続された冷媒配管43が接続してある。ここで三方弁29は、圧縮機22で圧縮した冷媒を凝縮器23に送出する第1送出状態と、圧縮機22で圧縮した冷媒を庫内熱交換器41に送出する第2送出状態との間で択一的に切り換え可能なバルブ手段である。かかる三方弁29の切換動作は、制御ユニットから与えられる指令に応じて行われる。
【0086】
このような庫内熱交換器41は、冷媒配管43を通じて圧縮機22で圧縮された冷媒が供給された場合、該冷媒を凝縮させることで左庫3cの内部空気を加熱するものである。
【0087】
庫外熱交換器42は、機械室9において凝縮器23に隣接する態様で配設してある。この庫外熱交換器42の入口側には、庫内熱交換器41の出口側に接続された冷媒配管43が接続してある。つまり、庫内熱交換器41で凝縮した冷媒が冷媒配管43を通じて供給される。この庫外熱交換器42は、庫内熱交換器41から供給された冷媒と周囲空気との間で熱交換を行わせて、該冷媒を放熱させるものである。
【0088】
また、庫外熱交換器42の出口側には、主経路200における凝縮器23の出口側に接続された冷媒管路26に合流する態様で接続された冷媒配管43が接続してある。
【0089】
流量制御部36は、メモリ37に格納されたプログラムやデータに従って第1流量電磁弁331、第2流量電磁弁332、第3流量電磁弁333の開閉を制御するものであり、図9に示すように入力処理部361、比較部362及び弁駆動処理部363を備えて構成してある。尚、流量制御部36は、低圧電磁弁281,282,283や三方弁29の駆動を制御する制御ユニットと一体的に構成されるものであっても良いし、かかる制御ユニットとは独立して構成されるものであっても良い。
【0090】
入力処理部361は、上流側冷媒温度センサS1、第1下流側冷媒温度センサS3、第2下流側冷媒温度センサS4、第3下流側冷媒温度センサS5から与えられる検出信号を入力するものである。比較部362は、入力処理部361を通じて入力されたもののうち対象となる下流側冷媒温度センサS3,S4の検出温度(下流側冷媒温度t2,t3)が上流側冷媒温度センサS1の検出温度(上流側冷媒温度T1)よりも高いか否かを比較するものである。弁駆動処理部363は、いずれかの流量電磁弁331,332,333に開指令を与える一方、他方の流量電磁弁331,332,333に閉指令を与えるものである。
【0091】
尚、図中の符号H、F1及びF2は、それぞれヒータ、庫内送風ファン及び庫外送風ファンである。ヒータHは、中庫3bに配設してあり、駆動して通電状態となることにより中庫3bの内部空気を加熱する加熱手段である。庫内送風ファンF1は、各商品収容庫3に配設してあり、駆動することにより蒸発器21等の周囲を通過した空気を商品収容庫3の内部で循環させるものである。庫外送風ファンF2は、凝縮器23の近傍に配設してあり、駆動することにより凝縮器23(若しくは庫外熱交換器42)の周囲に外気を通過させるものである。
【0092】
以上のような構成を有する冷媒回路装置は、次のようにして商品収容庫3に収容された商品を冷却、あるいは加熱する。
【0093】
まず、CCC運転(すべての商品収容庫3の内部空気を冷却する運転)を行う場合について説明する。この場合、制御ユニットは三方弁29を第1送出状態にさせ、低圧電磁弁281,282,283に対して開指令を与える。尚、ここでは第1流量電磁弁331が開成し、第2流量電磁弁332及び第3流量電磁弁333が閉成しているものとする。これにより圧縮機22で圧縮された冷媒は図10に示すように循環する。
【0094】
すなわち、圧縮機22で圧縮された冷媒は、第1送出状態にある三方弁29を通過して凝縮器23に至る。凝縮器23に至った冷媒は、該凝縮器23を通過中に周囲空気(外気)に放熱して凝縮する。凝縮器23で凝縮した冷媒は、膨張機構24で断熱膨張して気液分離器25に至る。
【0095】
かかる気液分離器25において、冷媒は液相冷媒と気相冷媒とに分離される。これにより液相冷媒は、液相冷媒管路31を通過した後、分配器27を介して右蒸発器21a、中蒸発器21b及び左蒸発器21cに至る一方、分離された気相冷媒は、気相冷媒管路320(気相流入配管321及び第1気相配管322)を通過する。
【0096】
各蒸発器21に至った冷媒は、各蒸発器21で蒸発して商品収容庫3の内部空気から熱を奪い、該内部空気を冷却する。冷却された内部空気は、各庫内送風ファンF1の駆動により内部を循環し、これにより各商品収容庫3に収容された商品は、循環する内部空気に冷却される。各蒸発器21で蒸発した冷媒は、第1合流点P1で合流した後、第2合流点P2で気相冷媒管路320を通過した気相冷媒と合流して圧縮機22に吸引され、圧縮機22に圧縮されて上述した循環を繰り返す。
【0097】
次に、HCC運転(左庫3cの内部空気を加熱し、右庫3a及び中庫3bの内部空気を冷却する運転)を行う場合について説明する。この場合、制御ユニットは、三方弁29を第2送出状態にさせ、低圧電磁弁283に対して閉指令を与え、低圧電磁弁281,282に対して開指令を与える。尚、この場合でも第1流量電磁弁331が開成し、第2流量電磁弁332及び第3流量電磁弁333が閉成しているものとする。これにより圧縮機22で圧縮された冷媒は、図11に示すように循環する。
【0098】
すなわち、圧縮機22で圧縮された冷媒は、第2送出状態である三方弁29を通過して庫内熱交換器41に至る。庫内熱交換器41に至った冷媒は、該庫内熱交換器41を通過中に左庫3cの内部空気と熱交換し、該内部空気に放熱して凝縮する。これにより左庫3cの内部空気を加熱する。加熱された内部空気は、庫内送風ファンF1の駆動により、左庫3cの内部を循環し、これにより左庫3cに収容された商品は、循環する内部空気に加熱される。
【0099】
庫内熱交換器41で凝縮した冷媒は、庫外熱交換器42に至り、該庫外熱交換器42で周囲空気に放熱した後、冷媒配管43を通過して主経路200に戻る。主経路200に戻った冷媒は、膨張機構24で断熱膨張し気液分離器25に至る。
【0100】
かかる気液分離器25において、冷媒は液相冷媒と気相冷媒とに分離される。これにより液相冷媒は、液相冷媒管路31を通過した後、分配器27を介して右蒸発器21a及び中蒸発器21bに至る一方、分離された気相冷媒は、気相冷媒管路320(気相流入配管321及び第1気相配管322)を通過する。
【0101】
右蒸発器21a及び中蒸発器21bに至った冷媒は、右蒸発器21a及び中蒸発器21bで蒸発して右庫3a及び中庫3bの内部空気から熱を奪い、該内部空気を冷却する。冷却された内部空気は、各庫内送風ファンF1の駆動により内部を循環し、これにより右庫3a及び中庫3bに収容された商品は、循環する内部空気に冷却される。右蒸発器21a及び中蒸発器21bで蒸発した冷媒は、第1合流点P1で合流した後、第2合流点P2で気相冷媒管路320を通過した気相冷媒と合流して圧縮機22に吸引され、圧縮機22に圧縮されて上述した循環を繰り返す。
【0102】
上述したCCC運転やHCC運転を行う場合において、冷媒回路装置を構成する流量制御部36は、所定のタイムスケジュールに従って次のような流量制御処理を実施する。図12は、流量制御部36が実施する流量制御処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0103】
この流量制御処理において流量制御部36は、第1流量電磁弁331のみが開成している場合において(ステップS201:Yes)、入力処理部361を通じて上流側冷媒温度センサS1及び第1下流側冷媒温度センサS3から与えられた検出信号を入力したとき、すなわち上流側冷媒温度T1及び第1下流側冷媒温度t2が検出されたとき(ステップS202:Yes)、比較部362を通じて第1下流側冷媒温度t2が上流側冷媒温度T1よりも高いか否かを比較する(ステップS203)。
【0104】
第1下流側冷媒温度t2が上流側冷媒温度T1よりも高い場合(ステップS203:Yes)、流量制御部36は、弁駆動処理部363を通じて第1流量電磁弁331の開成を維持し(ステップS204)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0105】
これによれば、第1流量電磁弁331の開成を維持することで気相流入配管321を通過する気相冷媒は第1気相配管322を通過し続けることとなり、気相冷媒管路320における流体抵抗を維持することができ、かかる気相冷媒管路320での冷媒流量を保持することができる。
【0106】
上記ステップS203において第1下流側冷媒温度t2が上流側冷媒温度T1以下となる場合(ステップS203:No)、流量制御部36は、弁駆動処理部363を通じて第1流量電磁弁331に閉指令を与えて閉成させるとともに、第2流量電磁弁332に開指令を与えて開成させ(ステップS205,ステップS206)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0107】
これによれば、気相流入配管321を通過する気相冷媒が第1気相配管322よりも流体抵抗の大きい第2気相配管323を通過することとなり、気相冷媒管路320における流体抵抗を増大させて冷媒流量を減少させることができる。
【0108】
一方、流量制御処理において、第2流量電磁弁332のみが開成している場合(ステップS201:No,ステップS207:Yes)、流量制御部36は、入力処理部361を通じて上流側冷媒温度センサS1及び第2下流側冷媒温度センサS4から与えられた検出信号を入力したとき、すなわち上流側冷媒温度T1及び第2下流側冷媒温度t3が検出されたとき(ステップS208:Yes)、比較部362を通じて第2下流側冷媒温度t3が上流側冷媒温度T1よりも高いか否かを比較する(ステップS209)。
【0109】
第2下流側冷媒温度t3が上流側冷媒温度T1よりも高い場合(ステップS209:Yes)、流量制御部36は、弁駆動処理部363を通じて第2流量電磁弁332の開成を維持し(ステップS210)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0110】
これによれば、第2流量電磁弁332の開成を維持することで気相流入配管321を通過する気相冷媒は第2気相配管323を通過し続けることとなり、気相冷媒管路320における流体抵抗を維持することができ、かかる気相冷媒管路320での冷媒流量を保持することができる。
【0111】
上記ステップS209において第2下流側冷媒温度t3が上流側冷媒温度T1以下となる場合(ステップS209:No)、流量制御部36は、弁駆動処理部363を通じて第2流量電磁弁332に閉指令を与えて閉成させるとともに、第3流量電磁弁333に開指令を与えて開成させ(ステップS211,ステップS212)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0112】
これによれば、気相流入配管321を通過する気相冷媒が第2気相配管323よりも流体抵抗の大きい第3気相配管324を通過することとなり、気相冷媒管路320における流体抵抗を増大させて冷媒流量を減少させることができる。
【0113】
ところで、流量制御処理において第3流量電磁弁333のみが開成している場合(ステップS201:No,ステップS207:No)、流量制御部36は上記処理を実施することなく、手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0114】
このような流量制御処理においては、流量制御部36は、下流側冷媒温度(第1下流側冷媒温度t2又は第2下流側冷媒温度t3)が上流側冷媒温度T1よりも高くなる態様で気相冷媒管路320における冷媒の流量を制御している。
【0115】
以上説明したような本実施の形態2である冷媒回路装置によれば、所定のタイムスケジュールで行われる流量制御処理において、流量制御部36が、下流側冷媒温度t2,t3が上流側冷媒温度T1よりも高くなる態様で気相冷媒管路320における冷媒の流量を制御しているので、気液分離器25に流入する冷媒クオリティが変化して低下した場合にも、気相冷媒管路320への液相冷媒の流入を抑制でき、これにより蒸発器21への液相冷媒の流量低下を防止できる。従って、気液分離器25に流入する冷媒クオリティが変化しても気相冷媒管路320への液相冷媒の流入を抑制して、冷却効率の低下を防止することができる。
【0116】
また、上記冷媒回路装置を備える自動販売機においても、気液分離器25に流入する冷媒クオリティが変化して低下した場合にも、気相冷媒管路320への液相冷媒の流入を抑制でき、これにより蒸発器21への液相冷媒の流量低下を防止できる。従って、気液分離器25に流入する冷媒クオリティが変化しても気相冷媒管路320への液相冷媒の流入を抑制して、冷却効率の低下を防止することができる。
【0117】
以上、本発明の好適な実施の形態1及び実施の形態2について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0118】
上述した実施の形態1及び実施の形態2では、CCC運転及びHCC運転を行う場合について説明したが、本発明においては、HHC運転を行う場合にも流量制御処理を実施するようにしても良い。
【0119】
また、上述した実施の形態1及び実施の形態2では、流量制御処理において、下流側冷媒温度T2(若しくはt2,t3)が上流側冷媒温度T1よりも高い場合に流量制御弁33の開度を維持、あるいは開成中の流量電磁弁331(332)の開成を維持するようにしていたが、本発明においては、かかる流量制御処理において、下流側冷媒温度T2(若しくはt2,t3)が上流側冷媒温度T1よりも高い場合には、流量制御弁33の開度を増大させる処理、あるいは開成中の流量電磁弁332を閉成させてより流体抵抗の低い気相配管322に配設された流量電磁弁331を開成させる処理を必要に応じて組み合わせるようにしても良い。これによれば、気液分離器25に流入する冷媒の冷媒クオリティが変化して上昇した場合に、液相冷媒管路31に気相冷媒が流入してその下流側の蒸発器21での圧力損失が増大してしまうことを回避することができる。
【符号の説明】
【0120】
1 本体キャビネット
3 商品収容庫
3a 右庫
3b 中庫
3c 左庫
10 冷媒回路
20 主経路
40 加熱経路
21 蒸発器
22 圧縮機
23 凝縮器
24 膨張機構
25 気液分離器
26 冷媒管路
27 分配器
29 三方弁
31 液相冷媒管路
32 気相冷媒管路
33 流量制御弁
34 流量制御部
341 入力処理部
342 比較部
343 弁駆動処理部
35 メモリ
S1 上流側冷媒温度センサ
S2 下流側冷媒温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象室の内部に配設され、かつ供給された冷媒を蒸発させて該対象室の内部雰囲気を冷却する蒸発器と、
前記蒸発器で蒸発した冷媒を吸引して圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された冷媒を導入して凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮した冷媒を断熱膨張させる膨張機構と、
前記膨張機構で断熱膨張した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離し、液相冷媒管路を通じて液相冷媒を前記蒸発器に送出する一方、気相冷媒管路を通じて気相冷媒を前記圧縮機に送出する気液分離器と
を備えた冷媒回路を有する冷媒回路装置において、
前記気相冷媒管路を構成し、かつ自身の下流側の下流側冷媒温度が自身の上流側の上流側冷媒温度よりも高くなる態様で該気相冷媒管路における冷媒の流量を制御する流量制御手段を備えたことを特徴とする冷媒回路装置。
【請求項2】
前記流量制御手段は、前記下流側冷媒温度が前記上流側冷媒温度以下となる場合には、前記気相冷媒管路における流体抵抗を増大させて冷媒流量を減少させる一方、前記下流側冷媒温度が前記上流側冷媒温度よりも高い場合には、前記気相冷媒管路における流体抵抗を維持して冷媒流量を保持することを特徴とする請求項1に記載の冷媒回路装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の冷媒回路装置を備えたことを特徴とする自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−220067(P2012−220067A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84723(P2011−84723)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)