説明

冷媒液供給システムを支援するための液頭の増加を可能にする装置および方法

本開示は、冷媒液供給システムを支援するための液頭の増加を可能にする冷凍装置および方法に関する。この冷凍装置は、冷媒液容器(2)と、下降管(4)と、上昇管(6)とを備え、下降管(4)は下方に延びて上昇管(6)との接続部に達しており、上昇管(6)は下降管(4)との接続部から上方に延びている。冷凍装置は、さらに、上昇管(6)の下流側に接続された入り口(12)と、戻り管(10)を介して冷媒液容器(2)に接続された出口(14)とを有する蒸発器(8)と、上昇管(6)に接続されてガスを供給するガスインジェクタ(16)とを備え、これにより、ガスを冷媒液と一緒に上昇管(6)内で上昇させることで、冷媒液の密度に対して冷媒液とガスとの混合物の総密度を低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒液供給システムを支援するための液頭の増加を可能にする冷凍装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍システムにおける蒸発器の冷媒側の圧力降下は、物理設計、動作条件、冷媒供給量、および冷媒の種類によって変わる。
【0003】
低容量システムまたは重力供給容器から冷媒液を供給する場合、冷媒を蒸発器の冷媒ループに循環させるための液圧は、利用可能な液頭によって提供される。
【0004】
提供される液頭は、蒸発器ループの長さが長すぎる、熱負荷が高すぎる、蒸発温度が低すぎる、あるいはループの管径が小さすぎるなど、様々な理由により、十分な量の冷媒を蒸発器ループに循環させるのに十分な高さではない場合がある。蒸発器より上の高さが限られている、あるいは蒸発器に接続する冷媒管における流量制限が高すぎることがあるなど様々な理由で、利用可能な液頭が制限されることがある。蒸発器への冷媒流量が低くなりすぎると、その効率が大幅に低減する。
【0005】
特許文献1にサーモサイホンが記載されている。このサーモサイホンでは、上昇管と下降管における密度差を利用して冷媒が自己循環する。ヒータに通電して気体ポンプを作動させると、冷媒液が加熱され、蒸発器の出口側からガス化した作動流体がバイパス管を介して吸入されて、気泡ポンプのノズルに供給され、このノズルの先端部から上昇管内に放出される。放出されたガス化した作動流体は、気泡となって上昇管を上昇する。その結果、一方の液体の作動流体と他方の気泡が混入した作動流体の間の密度差と、気泡の上昇によって生じる上昇流とによって、気泡が混入した作動流体が蒸発器に流入し、この蒸発器において周囲から熱を奪って気化し、下降管を下がって凝縮器で周囲に熱を放出して液化する。
【0006】
特許文献2に自然循環式沸騰冷却装置が記載されている。この冷却装置は、上昇管と下降管とを含む閉鎖循環回路を備えている。冷媒液は、沸騰温度を超えるようにヒータで加熱されて、気泡を発生する。気泡の発生によって、上昇管内の気液混合二相冷媒と下降管内の液単相冷媒との間に密度差が生じる。この密度差によって、冷媒液は閉鎖循環回路内を循環する。気液混合二相冷媒の流れは放熱部に導かれて冷却され、この冷却により気液混合二相冷媒は液単相冷媒となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−211381号明細書
【特許文献2】特開昭59−94444号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、あらゆる冷媒液供給システムを支援するための液頭の増加を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、独立請求項に記載の冷凍装置および方法によって達成される。
【0010】
冷凍装置が提供される。この冷凍装置は、冷媒液容器と、下降管および上昇管を備え、下降管は下方に延びて上昇管との接続部に達しており、上昇管は下降管との接続部から上方に延びている。冷凍装置は、さらに、上昇管の下流側に接続された入り口と、戻り管を介して冷媒液容器に接続された出口とを有する蒸発器を備える。さらに、冷凍装置は、上昇管に接続されたガスインジェクタを備える。このガスインジェクタは、ガスを供給するように構成されており、これにより、ガスを冷媒液と一緒に上昇管内で上昇させることで、冷媒液の密度に対して冷媒液とガスとの混合物の総密度を低くする。
【0011】
この冷凍装置によると、あらゆる冷媒液供給システムを支援するための液頭の増加が可能である。作動中には、冷媒液の流れが、冷媒液容器から下降管、上昇管、蒸発器、および戻り管を経由して、冷媒液容器に戻るように導かれる。冷媒液の密度と重力によって、冷媒液容器および下降管内で、冷媒液面下の深さに比例する液圧が発生する。ある点における圧力は、それより上の冷媒液の高さと冷媒液の密度に比例する。ガスインジェクタは上昇管にガスを供給するように適合されている。ガスは、上昇管内でガスを冷媒と一緒に上昇させるために供給され、これにより、冷媒の密度に対して冷媒とガスの混合物の総密度が低くなる。従って、少なくともガスインジェクタによりガスが注入される点より上方における、上昇管の任意の点での圧力は、下降管の同じ高さの対応する点における圧力よりも高くなる。あるいは、上昇管における液の高さが、同じ圧力を提供する下降管における液の高さよりも高くなる。従って、冷媒液供給システムにおいて液頭が増加される。
【0012】
冷凍装置は、さらに、上昇管の下流側かつ蒸発器の上流側に配置された気液分離器を備えていてもよい。上昇管の下流側かつ蒸発器の上流側に配置された気液分離器は、気体と液体とを分離する。液体の流れは蒸発器の入口に誘導され、一方、ガスはガスパージ管に誘導される。従って、気液分離器によって、液体のみが、あるいは蒸気はあるとしても限られた量のみが、蒸発器に送られることが保証される。蒸発器に液体のみを誘導することにより、気液混合物を蒸発器に供給する場合に比較して、蒸発器の効率が向上する。
【0013】
冷凍装置は、さらに、気液分離器に接続された圧力調整装置を備えていてもよい。この圧力調整装置によって、気液分離器からガスが流れるようにすることができる。さらに、この圧力調整装置により、気液分離器内の圧力が調整される。
【0014】
気液分離器からのガスは、直接、あるいは戻り管を介して、冷媒液容器に再循環させてもよい。ガスを再循環させることにより、ガスを再利用することができる。
【0015】
気液分離器からのガスは、ガスインジェクタに再循環させてもよい。ガスを再循環させることにより、ガスを再利用することができる。
【0016】
気液分離器には、ガス抜き部が接続されていてもよい。ガス抜き部を通してガスを再循環させてもよい。ガス抜き部を通して放出されたガスは、周囲に放出させることもできる。
【0017】
さらに、冷媒液容器は、ガス抜き部を備えていてもよい。この場合、ガス抜き部を通してガスを再循環させてもよい。ガス抜き部を通して放出されたガスはまた、周囲に放出してもよい。
【0018】
ガスインジェクタにより供給されるガスは、加圧されていてもよい。供給されるガスは、内部または外部の圧縮機により加圧してもよい。圧縮ガスは、上昇管内の圧力よりも高い圧力を有してもよい。上昇管内の圧力よりも高い圧力を有するガスを供給することにより、ガスインジェクタに液体が入り込む危険性が低減される。
【0019】
ガスは冷媒蒸気であってよい。冷媒蒸気を用いると、冷媒に異物が混入することがない。
【0020】
ガスは空気であってよい。空気を用いることにより、簡単な装置が実現される。
【0021】
さらに、冷凍装置において冷媒液を循環させる方法が提供される。この方法は、冷媒液の流れを、冷媒液容器から、下降管、上昇管、蒸発器、および戻り管を経由して冷媒液容器に戻るように導くことと、上昇管に接続されたガスインジェクタによりガスを供給することであって、これにより、ガスを冷媒液と一緒に上昇管内で上昇させることで、冷媒液の密度に対して冷媒液とガスとの混合物の総密度を低くすることとを含んでいる。
【0022】
この方法は、さらに、蒸発器の上流側に配置された気液分離器において、上記供給されたガスを冷媒液から分離することを含んでもよい。
【0023】
この方法は、さらに、気液分離器内の圧力を、圧力調整装置によって調整することを含んでもよい。
【0024】
この方法は、さらに、気液分離器からのガスを、戻り管または冷媒液容器に再循環させることを含んでもよい。
【0025】
この方法は、さらに、ガスインジェクタによりガスを供給する前に、そのガスを加圧することを含んでもよい。
【0026】
供給されるガスは、冷媒蒸気であってよい。
【0027】
この方法は、さらに、冷媒液容器から冷媒蒸気を放出させることと、その放出された冷媒蒸気をガスインジェクタに供給することとを含むんでもよい。
【0028】
本発明の更なる適用範囲は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、当然のことながら、発明の好ましい実施形態を示す詳細な説明および具体例は、単なる例として提供されるものであり、当業者には、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない種々の変更および変形が、この詳細な説明から明らかになるであろう。
【0029】
本発明について、例として、本発明の好ましい実施形態を示す添付の概略図を参照して、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による冷凍装置を示している。
【図2】図2は、本発明の一実施形態による冷凍装置を示している。
【図3】図3は、本発明の一実施形態による冷凍装置を示している。
【図4】図4は、本発明の一実施形態による冷凍装置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、冷媒液供給システムを支援するための液頭の増加を可能にする冷凍装置および方法に関するものである。冷媒液供給システムは、低容量システムであっても、あるいは重力供給式システムであってもよい。また、本発明は、ポンプ供給式システムを支援するために液頭を増加させることができるだけではなく、それ自体冷媒液または何らかの液体を送るため利用することができる、ということについて言及しなければならない。
【0032】
図1を参照すると、この図は本発明の一実施形態による冷凍装置1を示している。この冷凍装置1は、冷媒液容器2、下降管4、上昇管6、蒸発器8、および戻り管10を備えている。下降管4は、冷媒液容器2から下方に延びて、上昇管6との接続部に達している。下降管4は、垂直位置に配置されていても、傾斜位置に配置されていても、これらを組み合わせて配置されていてもよい。下降管4は水平部分さえ有していてもよい。また、下降管4は、冷媒液容器2内の冷媒液の表面より下方で、冷媒液容器2に接続している。上昇管6は、下降管4との接続部から上方に延びている。上昇管6は、垂直位置に配置されていても、傾斜位置に配置されていても、これらを組み合わせて配置されていてもよい。上昇管6は水平部分さえ有していてもよい。蒸発器8は、上昇管6の下流側に接続している入口12と、戻り管10を介して冷媒液容器2に接続している出口14とを有している。戻り管10は、垂直位置、水平位置、傾斜位置に配置されていても、これらを組み合わせて配置されていてもよい。冷媒液が冷媒液容器2の中に収容されている。冷媒液の液位は、蒸発器8よりも上位であるか、蒸発器と同位であるか、あるいは蒸発器より下位であるか、このいずれかである。
【0033】
作動時には、冷媒液の流れが、冷媒液容器2から、下降管4、上昇管6、蒸発器8、戻り管10を経由して、冷媒液容器2に戻るように導かれる。
【0034】
冷媒液は、当業者に知られているいずれかの適当な冷媒液であってよい。冷媒液の例はアンモニアである。
【0035】
冷凍装置1は、さらに、上昇管6に接続されたガスインジェクタ16を備えている。ガスインジェクタ16は上昇管6にガスを供給するように適合されている。ガスは、上昇管6内でガスを冷媒と一緒に上昇させるために供給され、これにより、冷媒の密度ρに対して冷媒とガスの混合物の総密度ρが低くなる。供給されるガスは、加圧されていてもよい。ガスは、例えばガス圧縮機28および/または圧力容器を用いて、さらに加圧してもよい。ガス圧縮機28は、外部あるいは内部に配置してもよい。圧力容器は、外部あるいは内部に配置してもよい。一実施形態によると、供給されるガスは空気であってよい。別の実施形態によると、供給されるガスは冷媒蒸気であってよい。冷媒蒸気を用いると、冷媒に異物が混入することがない。
【0036】
冷凍装置1は、さらに、気液分離器18を備えている。気液分離器18は、上昇管6の下流側かつ蒸発器8の上流側に配置されている。気液分離器18は、液体の流れを蒸発器8の入口12に誘導し、ガスパージ管22を通してガスを誘導する。ガスは、冷媒液容器2に戻るように誘導されてもよい。この場合、ガスパージ管22は、冷媒液容器2に直接接続されてもよく、あるいは、図1のように、戻り管10を介して間接的に冷媒液容器2に接続されてもよい。あるいは、これに代えて、気液分離器18で分離されたガスは、第1のガス抜き部(図示せず)に誘導されてもよい。第1のガス抜き部の出口は、さらに圧縮機の吸入側に接続していてもよい。この圧縮機は、上記の圧縮機28であってよい。気液分離器から誘導されるガスは、乾燥ガスであってもよく、あるいはガスと冷媒液の混合であってもよい。
【0037】
一実施形態によると、気液分離器18で分離されたガスの一部を、ガスインジェクタ16に再循環させてもよい。この場合、気液分離器18で分離されたガスの残りは、冷媒液容器2に直接、または戻り管10を介して間接的に再循環させてもよく、あるいは周囲に放出してもよい。
【0038】
冷凍装置1は、さらに、圧力調整装置20を備えている。圧力調整装置20は、気液分離器18に接続されている。圧力調整装置20は、ガスパージ管22の中に組み込まれている。圧力調整装置20は、気液分離器18からガスが流れるようにすると共に、気液分離器18における圧力を調整するために用いられる。第1のガス抜き部が用いられる場合、それを圧力調整装置20の下流側に接続してもよい。
【0039】
上述のように、気液分離器18から誘導されたガスは、冷媒液容器2に戻るように誘導される。この場合、気液分離器18からのガスは、直接、冷媒液容器2に再循環させてもよく、あるいは、図1のように、戻り管10を介して間接的に冷媒液容器2に再循環させてもよい。
【0040】
冷媒液容器2は、冷媒蒸気から冷媒液を分離するための手段を含んでもよい。冷媒液容器2には第2のガス抜き部24を接続してもよい。ガス抜き部24の出口は、さらに冷凍圧縮機(図示せず)の吸入側に接続させてもよい。この場合、冷媒蒸気は、圧縮されて液相に戻り、冷媒液容器2に再循環されてもよい。あるいは、これに代えて、冷媒蒸気をガスインジェクタ16に供給し、ガスインジェクタ16により供給されるガスとして使用してもよい。また、冷媒蒸気は、ガスインジェクタ16においてさらに使用するため、圧縮機28に供給してもよい。
【0041】
冷凍装置1は、さらに、冷媒液容器2に直接接続されているか、あるいは戻り管10に接続されている冷媒送り込み管26を備えていてもよい。送り込み管26は、蒸発して冷凍装置1から出ていった冷媒を補給するために用いられる。蒸発した冷媒は、上記の第1および第2のガス抜き部のどちらかを介して冷凍装置1から出ていくことができる。
【0042】
冷凍装置1で使用するガスは、冷媒蒸気であると仮定する。この場合、図1に示す冷凍装置1の機能は、次のように説明することができる。
【0043】
冷媒液が冷媒液容器2の中に収容されている。冷媒液の密度ρと重力によって、冷媒液容器2および下降管4内の圧力が、冷媒液面下の深さに比例して増加する。ある点における圧力は、それより上の冷媒液の高さと冷媒液の密度に比例する。従って、点Aから点Bへの圧力の増加は、次のようになる。
ρ×g×h,
ここで、ρは液体密度、gは重力加速度定数、hは点Aと点Bの間の高さである。
【0044】
点Cでの静圧は点Bでの圧力に等しく、それは、これらの点が同じ高さにあるからある。点Cにおいてガスインジェクタ16により冷媒蒸気が注入され、かなり低い密度をもつ冷媒蒸気泡が冷媒液と一緒に上昇管6内を上昇する。
【0045】
その結果得られる冷媒液とガスとの混合物の密度ρは、純粋な冷媒液の密度ρよりも低くなり、従って、点Aと物理的に同じ高さにある点Dにおける圧力pは、次のようになる。
p(D)=p(A)+h×g×ρ−h×g×ρ
ここで、p(A)は点Aにおける圧力、p(D)は点Dにおける圧力である。
【0046】
ρはρよりも大きい数なので、点Dにおける圧力p(D)が点Aにおける圧力p(A)よりも高いことは明らかである。このように、増加する圧力は、高さhと、点Cにおいてガスインジェクタ16により注入されるガスの流れによって生じる密度差とに依存する。
【0047】
上昇管6の端において、気液分離器18により、液体の流れは蒸発器8の入口12へ誘導され、冷媒蒸気はガスパージ管22を通って冷媒液容器2に戻るように誘導される。
【0048】
ガスパージ管22を介して気液分離器18に接続されている圧力調整装置20により、気液分離器18内の圧力が調整される。気液分離器18から誘導された蒸気は、次に戻り管10を通って冷媒液容器2に戻るように誘導される。このように、圧力調整装置20からの蒸気は、冷媒液容器2に戻るように再循環される。
【0049】
蒸発器において冷媒は周囲から熱を奪い、そして蒸発器8の出口14から出ていくのは、通常、冷媒蒸気と冷媒液の混合流であり、これは、戻り管10を通って液体容器2に戻される。
【0050】
液体から蒸気を分離するための手段を含んでもよい液体容器2からは、ガス抜き部24を通して蒸気を放出させることができる。ガス抜き部24の出口は、さらに冷凍圧縮機(図示せず)の吸入側に接続されていてもよい。この場合、冷媒蒸気は圧縮されて液相に戻り、冷媒液容器2に再循環されてもよい。あるいは、これに代えて、冷媒蒸気をガスインジェクタ16に供給し、ガスインジェクタ16により供給されるガスとして使用してもよい。また、冷媒蒸気を、ガスインジェクタ16においてさらに使用するため、圧縮機28に供給してもよい。
【0051】
さらに、注目すべきことは、冷媒液は、ガスインジェクタ16によって供給することもできるということであり、この場合、気液混合二相流の形態で供給される。冷媒液は、加圧されてもよく、そして、膨張により少なくとも部分的にガス化されてもよい。液体の圧力を減少させ、そして膨張により液体の一部をガス化する。一実施形態によると、冷媒液は、バルブにより膨張させてよく、その後にガスインジェクタ16を介して上昇管6に供給してもよい。ガスインジェクタ16により冷媒液を気液混合二相流の形態で供給すると、点Dにおける圧力は、密度差によって増加するだけではなく、冷媒液を注入することにより噴射効果が得られることによっても増加する。
【0052】
上記において、図1を参照して発明の冷凍装置1の基本原理を示した。図2、3および4は、本発明に係る冷凍装置1の別の実施形態を示している。図2、3および4に示す実施形態による冷凍装置の基本原理は、図1に示す実施形態の場合と同様である。
【0053】
ここで図2は、発明の冷凍装置1の別の実施形態を示しており、この場合、冷媒液容器2が下降管4として使用されており、上昇管6は、下降管4として使用される冷媒液容器2の内部に配置されている。従って、下降管4は、冷媒液容器2の壁と上昇管6の壁によって形成されている。冷媒液容器2の壁は環状であってよい。また、上昇管6の壁も環状であってよい。上昇管6は、冷媒液容器2内で中央に位置していてもよい。あるいは、上昇管6は、液体容器2の片側寄りの位置にあってもよい。下降管4は、下方に延びて、上昇管6との接続部に達している。上昇管6は、下降管4との接続部から上方に延びている。前述のように、上昇管6は、垂直位置に配置されていても、傾斜位置に配置されていても、これらを組み合わせて配置されていてもよい。さらに上昇管6は水平部分さえ有していてもよい。蒸発器8は、上昇管6の下流側に接続された入口12と、戻り管10を介して冷媒液容器2に接続された出口14とを有している。戻り管10は、垂直位置、水平位置、傾斜位置に配置されていても、これらを組み合わせて配置されていてもよい。冷媒液が冷媒液容器2の中に収容されている。冷媒液の液位は、蒸発器8よりも上位であるか、蒸発器と同位であるか、あるいは蒸発器より下位であるか、このいずれかである。冷凍装置1は、さらに、上昇管6に接続されたガスインジェクタ16を備えている。ガスインジェクタ16は上昇管6にガスを供給するように適合されている。ガスは、上昇管6内でガスを冷媒と一緒に上昇させるために供給され、これにより、冷媒の密度に対して冷媒とガスの混合物の総密度が低くなり、これによって、上記の内容に従い、上昇管6内の圧力が増加する。この実施形態の冷凍装置1は、さらに気液分離器18を備えている。気液分離器18は、上昇管6の下流側かつ蒸発器8の上流側に配置されている。気液分離器18は、液体の流れを蒸発器8の入口12に誘導し、ガスパージ管22を通してガスを誘導する。ガスは、冷媒液容器2に戻るように誘導されてもよい。気液分離器18のより詳細な説明については、上記を参照することができる。また、この実施形態の冷凍装置1は、さらに圧力調整装置20も備えている。圧力調整装置20は、気液分離器18に接続されている。圧力調整装置20は、ガスパージ管22の中に組み込まれている。圧力調整装置20は、気液分離器18からガスが流れるようにすると共に、気液分離器1内の圧力を調整するために用いられる。
【0054】
図2による発明の冷凍装置1の設計の利点は、冷凍装置1をコンパクトにできるということである。
【0055】
次に図3は、発明の冷凍装置1のさらに別の実施形態を示している。図2に示す実施形態の場合と同様に、冷媒液容器2が下降管4として使用されており、上昇管6は、下降管4として使用される冷媒液容器2の内部に配置されている。従って、下降管4は、冷媒液容器2の壁と上昇管6の壁によって形成されている。冷媒液容器2の壁は環状であってよい。また、上昇管6の壁も環状であってよい。上昇管6は、冷媒液容器2内で中央に位置していてもよい。あるいは、上昇管6は、液体容器2の片側寄りの位置にあってもよい。下降管4は、下方に延びて、上昇管6との接続部に達している。上昇管6は、下降管4との接続部から上方に延びている。前述のように、上昇管6は、垂直位置に配置されていても、傾斜位置に配置されていても、これらを組み合わせて配置されていてもよい。さらに上昇管6は水平部分さえ有していてもよい。蒸発器8は、上昇管6の下流側に接続された入口12と、戻り管10を介して冷媒液容器2に接続された出口14とを有している。戻り管10は、垂直位置、水平位置、傾斜位置に配置されていても、これらを組み合わせて配置されていてもよい。冷媒液が冷媒液容器2の中に収容されている。冷媒液の液位は、蒸発器8よりも上位であるか、蒸発器と同位であるか、あるいは蒸発器より下位であるか、このいずれかである。冷凍装置1は、さらに、上昇管6に接続されたガスインジェクタ16を備えている。ガスインジェクタ16は上昇管6にガスを供給するように適合されている。ガスは、上昇管6内でガスを冷媒と一緒に上昇させるために供給され、これにより、冷媒の密度に対して冷媒とガスの混合物の総密度が低くなり、これによって、上記の内容に従い、上昇管6内の圧力が増加する。この実施形態は、さらに、一端が上昇管6に接続され、他端が冷媒液容器2の内部に配置された導管を備えている。冷媒液容器2の内部に配置されている端は開いている。また、冷媒液容器2の内部に配置されているこの開口端は、冷媒液容器2内の冷媒液の液面よりも上にある。従って、ガスインジェクタ16により供給されたガスが、冷媒液から抜け出て、冷媒液容器2に供給されていてもよい。このように、一端が上昇管6に接続され、他端が冷媒液容器2の内部に配置された導管によって、気液分離器18を形成している。
【0056】
図3による発明の冷凍装置1の設計の利点は、それをコンパクトにできるということである。
【0057】
次に図4は、発明の冷凍装置1のさらに別の実施形態を示している。この実施形態の冷凍装置1は、さらに第2の下降管5を備えている。図2および3に示す実施形態と同様に、冷媒液容器2が下降管4として使用されており、上昇管6は、下降管4として使用される冷媒液容器2の内部に配置されている。下降管4は、冷媒液容器2の壁と、上昇管6の壁と、第2の下降管5の壁とにより形成されている。冷媒液容器2の壁は環状であってよい。また、上昇管6の壁も環状であってよい。さらに、第2の下降管5の壁も環状であってよい。下降管4は、下方に延びて、上昇管6との接続部に達している。上昇管6は、下降管4との接続部から上方に延びている。前述のように、上昇管6は、垂直位置に配置されていても、傾斜位置に配置されていても、これらを組み合わせて配置されていてもよい。さらに上昇管6は水平部分さえ有していてもよい。上昇管6は、第2の下降管5の入口に接続されている。
【0058】
第2の下降管5の上端は開いており、このようにして、気液分離器18を形成している。
【0059】
図4に示す実施形態によると、上昇管6は、冷媒液を第2の下降管5に送り込むために用いられる。従って、第2の下降管5は、上昇管6の下流に配置されている。第2の下降管5の入口は、冷媒液容器2すなわち下降管4内の冷媒液の液面よりも上に位置している。第2の下降管5は、下方に延びて、蒸発器8の入口12との接続部に達している。第2の下降管5は、垂直位置に配置されていても、傾斜位置に配置されていても、これらを組み合わせて配置されていてもよい。さらに第2の下降管5は水平部分さえ有していてもよい。
【0060】
上記と同様の基本的考え方を用いて、第2の下降管5の入口まで冷媒液を押し揚げる。この場合、ガスを供給するためのガスインジェクタ16が上昇管6に接続され、これにより、ガスを冷媒と一緒に上昇管6内に上昇させることで、冷媒の密度に対して冷媒とガスの混合物の総密度が低くなり、これによって、上記の内容に従い、上昇管6内の冷媒液の液位を上昇させることができる。通常動作時で、ガスが供給されていないときの上昇管6内の冷媒液の液位と比較して2倍の高さに、上昇管6内の冷媒液の液位を上昇させることができる。
【0061】
蒸発器8は、第2の下降管5の下流側に接続された入口12と、戻り管10を介して冷媒液容器2に接続された出口14とを有している。戻り管10は、垂直位置、水平位置、傾斜位置に配置されていても、これらを組み合わせて配置されていてもよい。
【0062】
図4による発明の冷凍装置1の設計の利点は、それをコンパクトにできるということである。図4による発明の冷凍装置1の設計の別の利点は、高さが下方に増大しないことである。
【0063】
当然のことながら、本発明は、提示した実施形態に限定されるものではない。従って、本発明の範囲内で種々の変更および変形が考えられる。例えば、図4に関連して説明した実施形態を、図1で説明した実施形態と組み合わせることができる。このような組み合わせによって、冷媒液を循環させるための圧力が増加した実施形態が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒液容器(2)と、
下降管(4)および上昇管(6)であって、前記下降管(4)は下方に延びて前記上昇管(6)との接続部に達しており、前記上昇管(6)は前記下降管(4)との前記接続部から上方に延びている、下降管(4)および上昇管(6)と、
前記上昇管(6)の下流側に接続された入り口(12)と、戻り管(10)を介して前記冷媒液容器(2)に接続された出口(14)とを有する、蒸発器(8)と、
前記上昇管(6)に接続されてガスを供給することにより、ガスを冷媒液と一緒に前記上昇管(6)内で上昇させることで、冷媒液の密度に対して冷媒液とガスとの混合物の総密度を低くするガスインジェクタ(16)と
を備える冷凍装置。
【請求項2】
前記上昇管(6)の下流側かつ前記蒸発器(8)の上流側に配置された気液分離器(18)をさらに備える、請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記気液分離器(18)からガスが流れるようにすると共に、前記気液分離器(18)内の圧力を調整するために、前記気液分離器(18)に接続される圧力調整装置(20)をさらに備える、請求項2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記気液分離器(18)からのガスを、前記戻り管(10)または前記冷媒液容器(2)に再循環させるように構成されている、請求項2または3に記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記気液分離器(18)からのガスを、前記ガスインジェクタ(16)に再循環させるように構成されている、請求項2ないし4のいずれか1つに記載の冷凍装置。
【請求項6】
前記冷媒液容器(2)がガス抜き部(24)を備えている、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の冷凍装置。
【請求項7】
前記ガスインジェクタ(16)が加圧ガスを供給するように構成されている、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の冷凍装置。
【請求項8】
外部で加圧されたガス源への接続部をさらに備える、請求項7に記載の冷凍装置。
【請求項9】
前記ガスが冷媒蒸気である、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の冷凍装置。
【請求項10】
前記ガスが空気である、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の冷凍装置。
【請求項11】
冷凍装置において冷媒液を循環させる方法であって、
冷媒液の流れを、冷媒液容器(2)から、下降管(4)、上昇管(6)、蒸発器(8)、および戻り管(10)を経由して前記冷媒液容器(2)に戻るように導くことと、
前記上昇管(6)に接続されたガスインジェクタ(16)によりガスを供給することであって、これにより、ガスを冷媒液と一緒に前記上昇管(6)内で上昇させることで、冷媒液の密度に対して冷媒液とガスとの混合物の総密度を低くすることと
を含む方法。
【請求項12】
前記蒸発器(8)の上流側に配置された気液分離器(18)において、前記供給されたガスを冷媒液から分離することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記気液分離器(18)内の圧力を、圧力調整装置(20)によって調整することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記気液分離器(18)からのガスを、前記戻り管(10)または前記冷媒液容器(2)に再循環させることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ガスインジェクタ(16)によりガスを供給する前に、そのガスを加圧することをさらに含む、請求項11ないし14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
前記ガスが冷媒蒸気である、請求項11ないし15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記冷媒液容器(2)から冷媒蒸気を放出させることと、その放出された冷媒蒸気を前記ガスインジェクタ(16)に供給することと
をさらに含む、請求項11ないし16のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−532304(P2012−532304A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517457(P2012−517457)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/SE2010/050724
【国際公開番号】WO2011/002402
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(511314164)ジョン ビーン テクノロジーズ アーベー (1)
【Fターム(参考)】