説明

冷感マット

【課題】冷蔵庫で冷却したり氷を使用したりしなくても、簡便に、且つ効果的に体熱を吸収することができ、さらに、中材の結晶粒の固形化を解消することができる、頭部等に対する違和感を生ずることのない冷感マットを提供する。
【解決手段】上面材2と、下面材3と、上面材2と下面材3との間に挟持された中材4と、を備える冷感マット1である。中材4が、水、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムおよび炭素粉末10の混合物である。上面材2と下面材3とが、高周波加工にて熱溶着されてなることが好ましく、高周波加工にて形成された熱溶着部9は、マット長手方向の複数箇所にて形成されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫で冷却したり氷を使用したりしなくても、簡便に、且つ効果的に体熱を吸熱するとともに、中材の結晶粒の固形化を解消することができる冷感マットに関する。
【背景技術】
【0002】
夏季の寝苦しい夜などには、頭部や頸部の下に保冷枕や氷嚢枕等を敷設すると快適な睡眠を得ることができる。一般的な保冷枕内にはゲル状の保冷材が収容されており、冷蔵庫で冷却した状態で使用される。また、氷嚢枕は、氷嚢内に水および氷を収納して、タオル等のカバーを被せて使用される。
【0003】
しかし、一般的な保冷枕においては、使用中に内部の保冷材が溶けて保冷効果が低下するという問題があった。また、氷嚢枕においては、使用可能な状態にするまで手間が掛かるとともに、氷が溶けた際には新しい氷を追加しなければならないという欠点があった。
【0004】
これらの問題に対し、本出願人により、冷蔵庫で冷却したり氷を使用したりしなくても、簡便に、且つ効果的に体熱を吸熱することができる冷感マットが既出願されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1には、上面材と、下面材と、上面材と下面材との間に挟持された中材とからなり、前記中材が、塩化カルシウム6水和物からなる冷感マットが開示されており、かかる上面材と下面材とは超音波加工にて熱溶着されている。
【0006】
また、前記冷感マットに関連する先行技術として、本出願人により、使用の直後において、中材の違和感を解消することができる冷感マット6も既出願されている(例えば特許文献2参照)。
【0007】
特許文献2には、上面材と、下面材と、上面材と下面材との間に挟持された中材と、を備える冷感マットにおいて、前記中材が、硫酸ナトリウム水和物と塩化ナトリウムとを含む冷感マットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3151748号公報(実用新案登録請求の範囲等)
【特許文献2】実用新案登録第3157824号公報(実用新案登録請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上掲特許文献1に記載された冷感マットにおいては、中材として塩化カルシウム6水和物を使用したことで、低コストで製造することができるとともに、冷蔵庫で冷却したり氷を使用したりしなくても、簡便に、且つ効果的に体熱を吸収することが可能になるという利点を有する。しかしながら、かかる冷感マットは、使用していない状態では、中材の結晶粒が大形状となるため、中材が融解されるまでの間、使用の直後は頭部や頸部に対し違和感を感ずという問題があった。
【0010】
また、上掲特許文献2に記載された冷感マットにおいては、中材に硫酸ナトリウム水和物と塩化ナトリウムとを使用したことで、使用直後において、上述のような中材の違和感を解消することができるが、多少の結晶の発生は避けられず、完全に違和感を解消するまでには至らなかった。
【0011】
そこで本発明の目的は、上記問題点を解消して、冷蔵庫で冷却したり氷を使用したりしなくても、簡便に、且つ効果的に体熱を吸収することができ、さらに、中材の結晶粒の固形化を解消することができ、頭部や頸部に対する違和感を生ずることのない冷感マットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の冷感マットは、上面材と、下面材と、該上面材と下面材との間に挟持された中材と、を備える冷感マットにおいて、前記中材が、水、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムおよび炭素粉末の混合物であることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の冷感マットにおいては、炭素粉末の配合量が中材全体に対し、0.5〜5%質量であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の冷感マットにおいては、前記上面材と下面材とが、高周波加工にて熱溶着されてなることが好ましい。この場合、高周波加工にて形成された熱溶着部を、マット長手方向の複数箇所にて形成する。
【0015】
さらに、本発明の冷感マットにおいては、前記上面材および/または下面材に、防水加工が施されていることが好ましく、前記上面材および/または下面材に、防カビ加工が施されていることも好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、冷蔵庫で冷却したり氷を使用したりしなくても、簡便に、且つ効果的に体熱を吸収することができ、さらに、中材の結晶粒の固形化を解消することができる、頭部や頸部に対する違和感を生ずることのない冷感マットを実現することが可能である。
【0017】
また、上面材と下面材とを、高周波加工にてマット長手方向の複数箇所にて熱溶着させることで、使用中に中材の偏りが生じることがなく、さらに、小さく折り畳むことが可能になり、携帯や収納が容易になる。
【0018】
さらに、上面材および/または下面材に防水加工や防カビ加工を施すことで、湿気によりカビや雑菌の発生を防止できる効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の冷感マットの一好適例を示す全体斜視図である。
【図2】図1に示す冷感マットの拡大断面図である。
【図3】(a)は従来の中材の冷却後の状態、(b)は本発明における中材の冷却後の状態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明における冷感マットの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1に、本発明の冷感マット1の一好適例の全体斜視図を、図2に、その拡大断面図を、それぞれ示す。図示する冷感マット1は、上面材2と、下面材3と、これら上面材2と下面材3との間に挟持された中材4と、を備えるものであり、中材4は水、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムおよび炭素粉末10からなる。
【0021】
かかる構成としたことで、本発明の冷感マット1は、冷蔵庫で冷却したり氷を使用したりしなくても、簡便に、且つ効果的に体熱を吸収することができる。また、炭素粉末10を配合したことにより、中材4の結晶粒の固形化を良好に解消することが可能となり、頭部や頸部等に対する違和感を生ずることがない。
【0022】
本発明の所望の効果を得る上で、水100質量部に対し、硫酸ナトリウムは30〜90質量部、塩化ナトリウムは10〜40質量部とすることが好ましい。また、炭素粉末は中材全体に対し0.5〜5質量%であることが好ましく、特に好ましくは1質量%程度である。
【0023】
図示する例では、上面材2および下面材3はいずれも二層構造からなる。上面材2は、外側に配設されるポリエステルからなる外層シート5と、内側に配設される塩化ビニルからなる内層シート6とからなり、また、下面材3は、外側に配設されるポリエステルからなる外層シート7と、内側に配設される塩化ビニルからなる内層シート8からなる。これら上面材2を構成する外層シート5および内層シート6と、下面材3を構成する外層シート7および内層シート8とは、それぞれホットメルト溶着剤を介して接着されている。また、上面材2と下面材3との周縁は熱溶着加工にて接合されている。
【0024】
上面材2と下面材3との間には、前述したように、水、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムおよび炭素粉末10からなる混合物の中材4が封入されている。
【0025】
硫酸ナトリウムは、通常、乾燥剤として用いられており、人体に対して安全性の高い物質として知られている。また硫酸ナトリウムの水溶液は、加熱すると約32℃までは溶解度が温度に比例して上がり続けるが、この温度に達すると水和物としての結晶(NaSO・10HO)ではなく、NaSOの結晶へと変化する。また、硫酸ナトリウムは、
融解の際、周囲の熱を吸熱し温度を下げることで、寒剤として高い効果が得られる。
【0026】
本発明によれば、中材4の一部として硫酸ナトリウムを封入し、かかる中材4を使用した冷感マット1を身体下部に敷設することで、体温により硫酸ナトリウム水溶液の溶解度が上昇する。そのことにより、冷感マット1が身体から発生される熱を効率よく吸水するので、使用者は心地よい冷感を得ることができる。
【0027】
また、硫酸ナトリウムとともに中材4を構成する塩化ナトリウムは、工業的に大量に消費されているものを好適に使用することができる。
【0028】
中材4の一部として塩化ナトリウムを混合することで、結晶状態の中材4が大粒化することなく、使用の直後における中材4の違和感を解消することが可能となる。
【0029】
さらに、かかる中材4に、炭素粉末10を配合することにより、中材4が周囲の体熱を吸熱する際、硫酸ナトリウムと塩化ナトリウムの粒子間に炭素粉末10が配置され、結晶粒の固形化を防ぐことができる。炭素粉末10は、黒炭、備長炭等の木炭や、竹炭、活性炭、ヤシガラ炭等、有機物を炭素化させたものを粉末状にして形成されたものであればよく、特に制限されるものではない。また、既に炭素化された黒鉛を粉末にしてもよい。
【0030】
本発明の冷感マット1においては、炭素粉末10を、水、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムの混合物中に均一に分散させて混合する。なお、炭素粉末10の粉末の粒度は特に限定されるものではないが、2〜200μmのものが好ましい。
【0031】
図2に示すように、本発明の冷感マットにおいては、上面材2と下面材3とが、高周波加工にて好適に熱溶着されている。高周波加工は、熱融着性素材に高周波エネルギーを加えることにより、被溶着物の一部を溶解し結合させる溶着加工である。高周波加工を用いることで、上面材2と下面材3とを熱溶着した箇所には、熱溶着部9が形成される。
【0032】
熱溶着部9は、上面材2と下面材3の周囲、および、マット長手方向の複数箇所にて形成することが好ましい。図示するように、熱溶着部9を、マット長手方向の複数箇所にて、平行状態で形成することで、使用中において中材4の偏りが生じることがなくなる。また、熱溶着部9の形成により、冷感マット1を三つ折りに折り畳むことや、六つ折りに折り畳むことも可能となるので、携帯や収納が容易になるというメリットも得られる。
【0033】
また、上面材2および/または下面材3には、防水加工を施す。上面材2および/または下面材3に防水加工を施すことにより、身体からの発汗による汗が中材4まで浸透すると共に、内材4が滲み出ることがなくなり、湿気によるカビや雑菌の発生を防止する効果が得られる。防水加工は、表面を防水性を有する材料により被覆するか、または疎水化して、水の浸透を防ぐ加工であり、油脂やワックス、液状の合成樹脂、シリコーン等素材が使用される。防水加工は、上面材2の外層シート5の表面と、下面材3の外層シート7の表面とに、それぞれ施す。
【0034】
さらに、上面材2および/または下面材3には、防カビ加工を施すことが好ましい。上面材2および/または下面材3に防カビ加工を施すことにとで、冷感マット1の表面にカビや雑菌が発生することを防止できる。防カビ加工は、銀、銅、亜鉛、ゼオライト、キトサン等の天然系抗菌剤や、酸化チタン等の無機系の素材を、塗布するかシート内に練り込むことにより防カビ加工を施すことができる。
【0035】
本発明の冷感マット1は、夏季の寝苦しい夜などに快適な睡眠を得るために、頭部や頸部の下に敷設させる枕としての使用はもとより、ベッドパッドや敷布団パッド、クッションパッド等に幅広く利用することができる。また、その他にも、ノート型パソコンの下に敷設させることで、パソコンから放出される熱気を吸収して、好適な条件での使用が実現できる。
【0036】
なお、本発明の冷感マット1の大きさについては、特に限定されるものではなく、枕に使用する小型のタイプから、ベッドパットに使用する大型サイズのものまで、用途に応じて、適宜寸法とすることができる。その一例として、30cm×15cmの小型パットから、90cm×140cmの大型パットとしての冷感パットを形成することができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
水、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、および炭素粉末の配合比率(質量比)が55.0:36.3:6.3:2.4とした混合物の中材4を準備した。
【0038】
図3の(a)は、比較のため、上記中材4内に炭素粉末10を配合していない中材4であり、(b)は、中間中材4内に炭素粉末10を配合した上記中材4であって、ともに、保温ケース内において60℃で2時間保持し、その後、25℃で2時間維持した状態を示す。
【0039】
図示するように、炭素粉末10を配合していない中材4内には、固形化された結晶粒11が検出されたのに対し、炭素粉末10を配合させた中材4においては、結晶粒は確認されなかった。
【0040】
なお、溶解温度と凝固温度の差を大きく、さらに凝固時間を長く設定すると、炭素粉末10を配合していない中材4内は、固形化された結晶粒11の量が増え、バリバリとした肌触りとなったが、炭素粉末10を配合した本発明に係るの中材4には、それ程の変化は見られなかった。
【符号の説明】
【0041】
1 冷感マット
2 上面材
3 下面材
4 中材
5 外層シート
6 内層シート
7 外層シート
8 内層シート
9 熱溶着部
10炭素粉末
11 結晶粒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面材と、下面材と、該上面材と下面材との間に挟持された中材と、を備える冷感マットにおいて、前記中材が、水、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムの混合物および炭素粉末の混合物であることを特徴とする冷感マット。
【請求項2】
前記炭素粉末の配合量が中材全体に対し0.5〜5%である請求項1記載の冷感マット。
【請求項3】
前記上面材と下面材とが、高周波加工にて熱溶着されてなる請求項1または2記載の冷感マット。
【請求項4】
高周波加工にて形成された熱溶着部が、マット長手方向の複数箇所にて形成されている請求項3記載の冷感マット。
【請求項5】
前記上面材および/または下面材に、防水加工が施されている請求項1〜4のうちいずれか一項記載の冷感マット。
【請求項6】
前記上面材および/または下面材に、防カビ加工が施されている請求項1〜5のうちいずれか一項記載の冷感マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−147933(P2012−147933A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8671(P2011−8671)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(511017243)株式会社ムーブニック (1)
【Fターム(参考)】