説明

冷房装置

【課題】 生成した冷気を従来より効率よく屋内に吹き込ませることができる冷房装置を提供する。
【解決手段】 冷房装置10は、フレーム20と、フレーム20に搭載されて通気性および吸水性を有するガーゼ31〜33と、フレーム20に搭載されてガーゼ31〜33に浸み込ませる水を溜める上タンク40および下タンク50とを備え、ガーゼ31〜33に浸み込んだ水の気化熱によって空気を冷気にし、風によって屋外の空気をガーゼ31〜33を通して屋内に導入することによって冷気を屋内に吹き込ませる冷房装置であって、フレーム20は、窓枠100のレール100a、100bに取り付けられる上枠21および下枠22を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内を涼しくするための冷房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷房装置として、内部に水蒸発部材を収納して側面に複数の蒸散孔が設けられた筒体を複数離間して配置することによって、水蒸発部材での水の気化熱によって冷気を生成して、生成した冷気を屋内に吹き込ませて屋内を涼しくする日除け構造体が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−139452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の日除け構造体は、簾に代えて使用されるものであるので、窓付近に立て掛けられたり吊るされたりしても窓枠との間に隙間があるため、生成した冷気が屋内に流れるだけではなく前記隙間から屋外側にも逃げてしまう。したがって、前記従来の日除け構造体は、生成した冷気を効率よく屋内に吹き込ませることができないという問題がある。
【0004】
本発明は、前記従来の問題を解決するためになされたもので、生成した冷気を従来より効率よく屋内に吹き込ませることができる冷房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の冷房装置は、フレームと、前記フレームに搭載されて通気性および吸水性を有するシートと、前記フレームに搭載されて前記シートに浸み込ませる液体を溜めるタンクとを備え、前記シートに浸み込んだ前記液体の気化熱によって空気を冷気にし、風によって屋外の空気を前記シートを通して屋内に導入することによって前記冷気を屋内に吹き込ませる冷房装置であって、前記フレームは、窓枠のレールに取り付けられるレール取付部を有することを特徴とする。
【0006】
この構成により、本発明の冷房装置は、窓枠のレールに取り付けられるので、窓のうち開いている部分を従来より隙間なく覆うことができ、生成した冷気が屋外に逃げることを従来より抑えることができる。したがって、本発明の冷房装置は、生成した冷気を従来より効率よく屋内に吹き込ませることができる。
【0007】
本発明の冷房装置は、自然の風と、液体の気化熱とを利用した冷房であるので、強い風を受けたときに高い冷房能力が発揮される。ここで、前記従来の日除け構造体も、自然の風と、水の気化熱とを利用した冷房であるが、強い風を受けたときに姿勢が安定せず十分な冷房能力が発揮できない場合がある。すなわち、前記従来の日除け構造体は、窓付近に立て掛けられて設置される場合には、強い風を受けたときに倒れ易い。特に、前記従来の日除け構造体は、上部の給水槽に多量の水が貯められているときには、上部が重くなるので、強い風を受けたときに倒れ易い。前記従来の日除け構造体は、倒れた場合には冷房能力が発揮できない。また、前記従来の日除け構造体は、窓付近に吊るされて設置される場合には、強い風を受けて揺れ動き、窓枠との間の隙間が広がって冷気が屋外に逃げるため十分な冷房能力が発揮できない可能性がある。しかしながら、本発明の冷房装置は、窓枠のレールに取り付けられるので、強い風を受けたとしても姿勢が安定しており、強い風によって高い冷房能力を発揮することができる。
【0008】
前記従来の日除け構造体は、水蒸発部材での水の気化熱によって生成された冷気を屋内に吹き込ませるために、冷気を生成する水蒸発部材とは別の箇所、すなわち複数の筒体の間に、間隔が設けられている必要がある。しかしながら、本発明の冷房装置は、通気性および吸水性を有するシートを備えており、シートに浸み込んだ液体の気化熱によって空気を冷気にし、シートを通して屋外の空気を屋内に導入することによって冷気を屋内に吹き込ませるので、前記従来の日除け構造体の前記間隔のように冷気を生成する部分とは別の箇所に空気の通路を確保する必要がない。したがって、本発明の冷房装置は、冷気を生成する部分の面積を従来より拡大することができ、それによって冷房能力を従来より向上することができる。
【0009】
また、本発明の冷房装置の前記シートは、前記冷気を生成する部分の少なくとも一部が鉛直方向に対して傾いていることを特徴とすることが好ましい。
【0010】
この構成により、本発明の冷房装置は、シートのうち冷気を生成する部分(以下「冷気生成部分」という。)の少なくとも一部が鉛直方向に対して傾いているので、シートの冷気生成部分の全部が鉛直方向に配置されている構成と比較して、シートの冷気生成部分に浸み込んだ液体が重力によってシートの冷気生成部分をつたって流れ落ちる速度を遅らせることができる。したがって、本発明の冷房装置は、液体がシートの冷気生成部分に浸み込んでいる時間を増すことができ、冷房能力を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の冷房装置の前記タンクは、前記シートをつたって流れ落ちる前記液体を溜める上タンクと、前記シートをつたって流れ落ちた前記液体を溜める下タンクとを含み、前記シートは、前記下タンクに溜められた前記液体に一部が浸かる位置に配置されていることを特徴とすることが好ましい。
【0012】
本発明の冷房装置は、シートに上からのみ液体を供給する構成であるとき、例えばシートが上下方向に非常に長い場合に、シートをつたって流れ落ちた液体がシートの下部に達するまでに気化してしまうので、シートの下部まで液体が行き渡らない。一方、本発明の冷房装置は、シートに下からのみ液体を供給する構成であるとき、例えばシートが上下方向に非常に長い場合に、シートの吸水力のみによってはシートをつたって吸い上げられた液体がシートの上部に達することができないので、シートの上部まで液体が行き渡らない。しかしながら、本発明の冷房装置は、上タンクおよび下タンクの双方からシートに液体を供給することができるので、シートのうち液体が浸み込んでいる部分の面積を増やすことができる。したがって、本発明の冷房装置は、シートに上および下の何れか一方からのみ液体を供給する構成と比較して、シートのうち実際に冷気を生成する部分の面積を増やすことができ、冷房能力を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の冷房装置は、前記液体を上げるポンプを備え、前記タンクは、前記シートをつたって流れ落ちる前記液体を溜める上タンクと、前記シートをつたって流れ落ちた前記液体を溜める下タンクとを含み、前記ポンプは、前記液体を前記下タンクから前記上タンクに上げることを特徴とすることが好ましい。
【0014】
この構成により、本発明の冷房装置は、ポンプが無い構成と比較して、上タンクの液体が無くなるまでの時間を延長することができるので、上タンクからシートに液体を長時間供給することができ、冷房能力を長時間維持することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、生成した冷気を従来より効率よく屋内に吹き込ませることができる冷房装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
まず、本実施の形態に係る冷房装置の構成について説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る冷房装置10の背面側から見た斜視図である。図2〜図4は、それぞれ冷房装置10の正面図、左側面図、背面図である。図5は、図2のA−A矢視断面図のうち上タンク40の近傍の図である。図6は、図2のA−A矢視断面図のうち下タンク50の近傍の図である。図7は、図2のB−B矢視断面図である。
【0019】
図1〜図4に示すように、冷房装置10は、アルミ製のフレーム20と、通気性および吸水性を有するシートであってそれぞれ正面側、左側面側、右側面側に配置された綿製のガーゼ31〜33と、ガーゼ31〜33に浸み込ませる液体であってガーゼ31〜33をつたって流れ落ちる水90(図5参照。)を溜めるアルミ製またはFRP(Fiber Reinforced Plastics)製の上タンク40と、ガーゼ31〜33に浸み込ませる液体であってガーゼ31〜33をつたって流れ落ちた水90(図6参照。)を溜めるアルミ製またはFRP製の下タンク50と、水90を下タンク50から上タンク40に上げるポンプ60(図7参照。)と、下タンク50への水90の補給の必要性を使用者に通知する赤色ランプ70と、ポンプ60および赤色ランプ70に電力を供給する電源80(図7参照。)とを備えている。
【0020】
フレーム20は、上タンク40の上部にボルト81などで固定されて窓枠の網戸用のレールのうち上側のレールに取り付けられるレール取付部としての上枠21と、下タンク50の下部にボルト82などで固定されて窓枠の網戸用のレールのうち下側のレールに取り付けられるレール取付部としての下枠22と、左側面側に配置されて図示していないボルトなどで上枠21、下枠22、上タンク40および下タンク50に取り付けられたサイドカバー23と、右側面側に配置されて図示していないボルトなどで上枠21、下枠22、上タンク40および下タンク50に取り付けられたサイドカバー24と、図示していないボルトなどで上タンク40および下タンク50に取り付けられてサイドカバー23とともにガーゼ31をガイドする柱部材25と、図示していないボルトなどで上タンク40および下タンク50に取り付けられてサイドカバー24とともにガーゼ33をガイドする柱部材26と、上枠21、下枠22およびサイドカバー23にボルト83で固定された弓状の取っ手27と、上枠21、下枠22およびサイドカバー24にボルト84で固定された弓状の取っ手28と、下枠22および下タンク50にボルト85で取り付けられて下タンク50を支持する4つの支持具29とを有している。
【0021】
上枠21は、窓枠の網戸用のレールのうち上側のレールを入れる溝21aが形成されている。下枠22は、窓枠の網戸用のレールのうち下側のレールを入れる溝22aが形成されている。
【0022】
図5および図6に示すように、柱部材26には、ガーゼ31の幅方向の端のうち柱部材26側の端が挿入される溝26aが柱部材26の延在方向の全体に形成されている。ガーゼ31は、幅方向の端のうち柱部材26側の端が柱部材26に形成された溝26aに挿入され、後から溝26aに圧入された木材26bによって柱部材26に固定される。ここで、木材26bは、溝26aに圧入されることによってガーゼ31を溝26aに固定できる他の部材、例えば、コルク、段ボール、ゴムなどで代用されても良い。同様に、ガーゼ31は、幅方向の端のうち柱部材25側の端が柱部材25の図示していない溝に固定されている。ガーゼ32は、幅方向の端のうちサイドカバー23側の端がサイドカバー23の図示していない溝に固定されていて、幅方向の端のうち柱部材25側の端が柱部材25の図示していない溝に固定されている。ガーゼ33は、幅方向の端のうちサイドカバー24側の端がサイドカバー24の図示していない溝に固定されていて、幅方向の端のうち柱部材26側の端が柱部材26の図示していない溝に固定されている。ここで、ガーゼ31は、柱部材25、26、上タンク40および下タンク50に囲まれた部分であって空気に曝されて水90の気化熱によって冷気を生成する冷気生成部分31aが鉛直方向に対して傾いて柱部材25、26に固定されている。ガーゼ32は、サイドカバー23、柱部材25、上タンク40および下タンク50に囲まれた部分であって空気に曝されて水90の気化熱によって冷気を生成する冷気生成部分32aが鉛直方向に対して傾いてサイドカバー23および柱部材25に固定されている。ガーゼ33は、サイドカバー24、柱部材26、上タンク40および下タンク50に囲まれた部分であって空気に曝されて水90の気化熱によって冷気を生成する冷気生成部分33aが鉛直方向に対して傾いてサイドカバー24および柱部材26に固定されている。
【0023】
図5に示すように、上タンク40は、ガーゼ31を通すために幅方向(図5において紙面に直交する方向)に延在している長穴40aと、長穴40aの近傍に幅方向に複数配置された長穴40bとが底面に形成されている。長穴40aは、ガーゼ31が通された状態で木栓41によって塞がれている。なお、長穴40aは、木栓41以外の部材によって塞がれるようになっていても良い。例えば、長穴40aは、竹ひごによって塞がれるようになっていても良い。長穴40bは、スポンジ42が圧入されている。スポンジ42は、上部で上タンク40内の水90が浸み込むようになっており、下端で上タンク40の外部のガーゼ31に接触することによって、上タンク40内の水90をガーゼ31に供給するようになっている。また、上タンク40は、幅方向に延在されてガーゼ31を引っ掛ける支持棒43、44と、幅方向に延在されてガーゼ31の上端を固定する固定棒45とを有している。固定棒45は、幅方向に延在している溝45aが形成された外棒45bと、ガーゼ31を巻き込んだ状態で外棒45bの溝45aに圧入されることによって外棒45bとともにガーゼ31の上端を固定する内棒45cとを有している。スポンジ42は、上端に切り欠き42aが形成されており、切り欠き42a内に支持棒44が配置されることによって上端でガーゼ31に密着している。また、スポンジ42は、下端がガーゼ31の傾きに合わせて傾斜させられている。以上においては、ガーゼ31に関係する上タンク40の構造について説明したが、ガーゼ32、33に対する上タンク40の構造についても同様である。
【0024】
図6に示すように、下タンク50は、幅方向(図6において紙面に直交する方向)に延在されてガーゼ31を引っ掛ける支持棒51と、幅方向に延在されてガーゼ31の下端を固定する固定棒52とを有している。固定棒52の構造は、上述した固定棒45の構造と同様である。以上においては、ガーゼ31に関係する下タンク50の構造について説明したが、ガーゼ32、33に対する下タンク50の構造についても同様である。
【0025】
図5および図7に示すように、ポンプ60は、上タンク40内の上部に固定されており、電源80から図示していない導線を介して電力が供給されるようになっている。ポンプ60は、下タンク50に貯められた水90を吸い上げるためのホース61、62と、吸い上げた水90を上タンク40に導入するためのホース63とを有している。ホース61、62は、上タンク40の背面の上部に形成された穴40c、40dを通されて上タンク40の外部に出されて、それぞれサイドカバー23、24に沿わされて下タンク50の内部に伸ばされている。ポンプ60は、上タンク40に設置された図示していない水位センサによって上タンク40内の水90の水位が所定の水位を下回ったことが検出されると、ホース61、62を介して下タンク50内の水90を吸い上げてホース63を介して上タンク40内に導入するようになっている。
【0026】
図1に示すように、赤色ランプ70は、サイドカバー23に設置されており、電源80(図7参照。)から図示していない導線を介して電力が供給されるようになっている。赤色ランプ70は、下タンク50に設置された図示していない水位センサによって下タンク50内の水90の水位が所定の水位を下回ったことが検出されると、点灯することによって使用者に下タンク50への水90の補給を促すようになっている。ここで、赤色ランプ70は、下タンク50内の水90の水位がガーゼ31〜33の下端より下回る前に点灯するようになっている。すなわち、ガーゼ31〜33は、下タンク50に溜められた水90に下端が浸かる位置に配置されている。
【0027】
図7に示す電源80は、乾電池であり、上タンク40内の上部に固定されている。なお、電源80は、乾電池以外であっても良い。例えば、電源80は、上タンク40の外部に設置した太陽電池であっても良い。
【0028】
次に、冷房装置10の設置について説明する。
【0029】
図8、図9は、それぞれ窓枠100に設置された冷房装置10の平面図、正面図である。
【0030】
まず、図8に示すように、窓101、102は、窓枠100の幅方向の一方側に寄せられる。これによって、窓枠100の幅方向の他方側の空間(以下、「開口100c」という。)が開く。
【0031】
次いで、屋内110にいる使用者は、屋外120にある冷房装置10の取っ手27、28を窓枠100の開口100cを介して掴むことによって、冷房装置10を持つ。
【0032】
そして、使用者は、図9に示すように、窓枠100の網戸用のレールのうち上側のレール100aを上枠21の溝21a(図1参照。)内に入れ、窓枠100の網戸用のレールのうち下側のレール100bを下枠22の溝22a(図1参照。)内に入れることによって、窓枠100に冷房装置10を設置する。
【0033】
次に、冷房装置10の動作について説明する。
【0034】
使用者は、屋内110から窓枠100の開口100cを介して下タンク50内に水90を補給する。ここで、冷房装置10は、下タンク50内の水90の水位が所定の水位を下回っているとき、下タンク50に設置された水位センサの検出によって赤色ランプ70を点灯させることによって、使用者に下タンク50への水90の補給を促すようになっている。
【0035】
また、冷房装置10は、上タンク40内の水90の水位が所定の水位を下回っているとき、上タンク40に設置された水位センサの検出によってポンプ60にホース61、62を介して下タンク50から水90を吸い上げさせ、吸い上げさせた水90をホース63を介して上タンク40に導入させる。
【0036】
したがって、冷房装置10は、上タンク40および下タンク50に常に適切な量の水90が貯められている状態に維持することができる。
【0037】
上タンク40内の水90は、スポンジ42を介してガーゼ31に供給されるとともに、長穴40aおよび木栓41の隙間を介してもガーゼ31に供給される。また、下タンク50内の水90は、ガーゼ31の吸水性によってガーゼ31をつたって吸い上げられる。ガーゼ31について説明したが、ガーゼ32、33についても同様に、上タンク40および下タンク50から水90が供給される。
【0038】
そして、ガーゼ31〜33の冷気生成部分31a〜33aの近傍の空気は、ガーゼ31〜33に浸み込んだ水90の気化熱によって冷気にされる。また、屋外120の空気は、風によってガーゼ31〜33を通して屋内110に導入される。したがって、ガーゼ31〜33の冷気生成部分31a〜33aによって生成された冷気は、屋内110に吹き込む。
【0039】
なお、ガーゼ31〜33に供給された水90のうち気化できなかった水は、ガーゼ31〜33をつたって下タンク50に戻る。
【0040】
以上に説明したように、冷房装置10は、窓枠100の網戸用のレール100a、100bに取り付けられるので、窓のうち開いている部分、すなわち窓枠100の開口100cを従来より隙間なく覆うことができ、生成した冷気が屋外120に逃げることを従来より抑えることができる。したがって、冷房装置10は、生成した冷気を従来より効率よく屋内110に吹き込ませることができる。
【0041】
冷房装置10は、自然の風と、水90の気化熱とを利用した冷房であるので、強い風を受けたときに高い冷房能力が発揮される。ここで、前記従来の日除け構造体も、自然の風と、水の気化熱とを利用した冷房であるが、強い風を受けたときに姿勢が安定せず十分な冷房能力が発揮できない場合がある。すなわち、前記従来の日除け構造体は、窓付近に立て掛けられて設置される場合には、強い風を受けたときに倒れ易い。特に、前記従来の日除け構造体は、上部の給水槽に多量の水が貯められているときには、上部が重くなるので、強い風を受けたときに倒れ易い。前記従来の日除け構造体は、倒れた場合には冷房能力が発揮できない。また、前記従来の日除け構造体は、窓付近に吊るされて設置される場合には、強い風を受けて揺れ動き、窓枠との間の隙間が広がって冷気が屋外に逃げるため十分な冷房能力が発揮できない可能性がある。しかしながら、冷房装置10は、窓枠100のレール100a、100bに取り付けられるので、強い風を受けたとしても姿勢が安定しており、強い風によって高い冷房能力を発揮することができる。
【0042】
前記従来の日除け構造体は、水蒸発部材での水の気化熱によって生成された冷気を屋内110に吹き込ませるために、冷気を生成する水蒸発部材とは別の箇所、すなわち複数の筒体の間に、間隔が設けられている必要がある。しかしながら、冷房装置10は、通気性および吸水性を有するガーゼ31〜33を備えており、ガーゼ31〜33に浸み込んだ水90の気化熱によって空気を冷気にし、風によって屋外120の空気をガーゼ31〜33を通して屋内110に導入することによって冷気を屋内110に吹き込ませるので、前記従来の日除け構造体の前記間隔のように冷気を生成する部分とは別の箇所に空気の通路を確保する必要がない。したがって、冷房装置10は、冷気を生成する部分の面積を従来より拡大することができ、それによって冷房能力を従来より向上することができる。
【0043】
冷房装置10は、窓枠100の網戸用のレール100a、100bに取り付けることによって、窓枠100から窓101、102を取り外さないで使用することができる。なお、図10に示すように、窓枠100に網戸103が付いている場合であっても、網戸103を窓101、102側に寄せることによって、窓枠100から網戸103を外さずに冷房装置10を設置することができる。
【0044】
サイドカバー24は、本実施の形態において側面が平らであるが、窓枠100の縦枠100dのうち開口100c側の部分に突起100eが設けられている場合には、図11に示すように窓枠100の縦枠100dの突起100eと嵌合する溝24aが側面に設けられていても良い。この構成によって、冷房装置10は、サイドカバー24と窓枠100との密閉性が向上するので、冷房能力を向上することができる。サイドカバー24について説明したが、サイドカバー23についても同様である。
【0045】
冷房装置10は、正面、左側面および右側面の3面がガーゼで覆われているので、3方向からの風を受けることができ、1方向からの風のみを受けることができる構成と比較して、冷房能力を向上することができる。
【0046】
もちろん、冷房装置10は、1面のみがガーゼで覆われている構造であっても良い。
【0047】
冷房装置10は、ガーゼ31〜33の冷気生成部分31a〜33aが鉛直方向に対して傾いているので、ガーゼ31〜33の冷気生成部分31a〜33aの全部が鉛直方向に配置されている構成と比較して、ガーゼ31〜33の冷気生成部分31a〜33aに浸み込んだ水90が重力によってガーゼ31〜33の冷気生成部分31a〜33aをつたって流れ落ちる速度を遅らせることができる。したがって、冷房装置10は、水90がガーゼ31〜33の冷気生成部分31a〜33aに浸み込んでいる時間を増すことができ、冷房能力を向上させることができる。
【0048】
なお、ガーゼ31〜33は、冷気生成部分31a〜33aの全体が鉛直方向に対して傾いているが、冷気生成部分31a〜33aの一部分が鉛直方向に対して傾いていても良い。
【0049】
また、冷房装置10は、ガーゼ31〜33の冷気生成部分31a〜33aの全部が鉛直方向に対して傾いているが、ガーゼ31〜33の冷気生成部分31a〜33aの何れか1つ以上または全部が鉛直方向に延在させられていても良い。
【0050】
冷房装置10は、ガーゼ31〜33に上からのみ水90を供給する構成であるとき、例えばガーゼ31〜33が上下方向に非常に長い場合に、ガーゼ31〜33をつたって流れ落ちた水90がガーゼ31〜33の下部に達するまでに気化してしまうので、ガーゼ31〜33の下部まで水90が行き渡らない。一方、冷房装置10は、ガーゼ31〜33に下からのみ水90を供給する構成であるとき、例えばガーゼ31〜33が上下方向に非常に長い場合に、ガーゼ31〜33の吸水力のみによってはガーゼ31〜33をつたって吸い上げられた水90がガーゼ31〜33の上部に達することができないので、ガーゼ31〜33の上部まで水90が行き渡らない。しかしながら、冷房装置10は、上タンク40および下タンク50の双方からガーゼ31〜33に水90を供給することができるので、ガーゼ31〜33のうち水90が浸み込んでいる部分の面積を増やすことができる。したがって、冷房装置10は、ガーゼ31〜33に上および下の何れか一方からのみ水90を供給する構成と比較して、ガーゼ31〜33のうち実際に冷気を生成する部分の面積を増やすことができ、冷房能力を向上させることができる。
【0051】
冷房装置10は、ガーゼ31〜33をつたって下タンク50に流れ落ちた水90を上タンク40に上げるポンプ60を有しているので、ポンプ60が無い構成と比較して、上タンク40の水90が無くなるまでの時間を延長することができるので、上タンク40からガーゼ31〜33に水90を長時間供給することができ、冷房能力を長時間維持することができる。
【0052】
もちろん、冷房装置10は、ポンプ60を備えておらずに、上タンク40の水90も下タンク50の水90と同様に使用者に直接補給させるようになっていても良い。
【0053】
なお、冷房装置10は、上タンク40からスポンジを介してガーゼ31〜33に水90が供給されるようになっているが、他の構造によって上タンク40からガーゼ31〜33に水90が供給されるようになっていても良い。たとえば、冷房装置10は、上タンク40の底部に微小な穴を形成し、この穴を介して上タンク40からガーゼ31〜33に水90を垂らすようになっていても良い。
【0054】
また、冷房装置10は、上タンク40および下タンク50の双方からガーゼ31〜33に水90を供給するようになっているが、ガーゼ31〜33に上および下の何れか一方からのみ水90を供給するようになっていても良い。
【0055】
また、冷房装置10は、幅および高さが固定であるが、幅および高さの少なくとも一方が可変の構造であっても良い。
【0056】
また、冷房装置10は、通気性および吸水性を有するシートとして綿製のガーゼを有しているが、通気性および吸水性を有するシートであれば、綿製のガーゼ以外のものを有していても良い。
【0057】
また、冷房装置10は、気化熱を発生させる液体として水90を使用しているが、水以外の液体を使用するようになっていても良い。
【0058】
また、冷房装置10は、気化熱を発生させる水90に香り付けをすることによって、香りが付いた冷気を屋内110に吹き込ませることができる。
【0059】
また、冷房装置10は、例えばホース61、62に水90を磁化させる装置を取り付けるなどして水90を磁化させることによって、磁化水を含んだ冷気を屋内110に吹き込ませることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施の形態に係る冷房装置の背面側から見た斜視図である。
【図2】図1に示す冷房装置の正面図である。
【図3】図1に示す冷房装置の左側面図である。
【図4】図1に示す冷房装置の背面図である。
【図5】図2のA−A矢視断面図のうち上タンクの近傍の図である。
【図6】図2のA−A矢視断面図のうち下タンクの近傍の図である。
【図7】図2のB−B矢視断面図である。
【図8】窓枠に設置された図1に示す冷房装置の平面図である。
【図9】窓枠に設置された図1に示す冷房装置の正面図である。
【図10】網戸が取り付けられている窓枠に設置された図1に示す冷房装置の平面図である。
【図11】窓枠に設置された図1に示す冷房装置の平面断面図であって、窓枠の縦枠の近傍の図である。
【符号の説明】
【0061】
10 冷房装置
20 フレーム
21 上枠(レール取付部)
22 下枠(レール取付部)
31 ガーゼ(シート)
31a 冷気生成部分(冷気を生成する部分)
32 ガーゼ(シート)
32a 冷気生成部分(冷気を生成する部分)
33 ガーゼ(シート)
33a 冷気生成部分(冷気を生成する部分)
40 上タンク(タンク)
50 下タンク(タンク)
60 ポンプ
90 水(液体)
100 窓枠
100a、100b レール
110 屋内
120 屋外


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、前記フレームに搭載されて通気性および吸水性を有するシートと、前記フレームに搭載されて前記シートに浸み込ませる液体を溜めるタンクとを備え、前記シートに浸み込んだ前記液体の気化熱によって空気を冷気にし、風によって屋外の空気を前記シートを通して屋内に導入することによって前記冷気を屋内に吹き込ませる冷房装置であって、
前記フレームは、窓枠のレールに取り付けられるレール取付部を有することを特徴とする冷房装置。
【請求項2】
前記シートは、前記冷気を生成する部分の少なくとも一部が鉛直方向に対して傾いていることを特徴とする請求項1に記載の冷房装置。
【請求項3】
前記タンクは、前記シートをつたって流れ落ちる前記液体を溜める上タンクと、前記シートをつたって流れ落ちた前記液体を溜める下タンクとを含み、
前記シートは、前記下タンクに溜められた前記液体に一部が浸かる位置に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷房装置。
【請求項4】
前記液体を上げるポンプを備え、
前記タンクは、前記シートをつたって流れ落ちる前記液体を溜める上タンクと、前記シートをつたって流れ落ちた前記液体を溜める下タンクとを含み、
前記ポンプは、前記液体を前記下タンクから前記上タンクに上げることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷房装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−192146(P2009−192146A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33299(P2008−33299)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【特許番号】特許第4162705号(P4162705)
【特許公報発行日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(508047266)
【Fターム(参考)】