説明

冷菓およびその製造方法

【課題】 良好な食感を長期間維持することができる冷菓を安価に製造可能な冷菓の製造方法を提供する。
【解決手段】 底面20a周縁を囲む側壁20bを有する可食容器20の内面に、チョコレート類からなる防湿層を形成する防湿層形成工程を備える冷菓の製造方法であって、防湿層形成工程は、皿形の回転円盤2の前面に液状のチョコレート類を供給しながら回転円盤2を回転させることにより、供給されたチョコレート類を遠心力により微粒化し、微粒化されたチョコレート類を可食容器20に対する回転円盤2の相対的な移動により可食容器20の内面に塗布する第1の塗布工程及び第2の塗布工程を備えており、これら第1の塗布工程及び第2塗布工程は、同一の可食容器20に対して、回転円盤2の回転方向を互いに逆方向にして順次行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷菓およびその製造方法に関し、より詳しくは、一対の可食容器の間にアイスクリーム類が収容されてなる冷菓およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の冷菓として、例えば、特許文献1に開示されているように、アイスクリームが最中の皮で覆われた最中アイス菓子が知られている。この最中アイス菓子は、アイスクリームから最中皮への水分移行による食感の低下を防止するため、内面にチョコレートコーティングが施されている。チョコレートコーティングの方法として、溶融チョコレートを間歇的に噴射するホットエアレスパルススプレー法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−147524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上述のようにチョコレートコーティングをスプレー法によって行う場合、塗布された部分の輪郭が不明瞭になりやすいため、特に最中皮の側壁端部に塗り残しが生じていた。このため、塗り残しの部分からアイスクリームの水分が最中皮に移行して全体に拡がり、最中皮が本来有するぱりっと感が失われやすいという問題があった。
【0004】
また、スプレーされたチョコレートの微粒子は空気中に拡散されるため、回収して再利用することが困難であり、製造コストの面でも問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、良好な食感を長期間維持することができる冷菓の提供を目的とし、更に、このような冷菓を安価に製造可能な冷菓の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、底面周縁を囲む側壁を有する可食容器の内面に、チョコレート類からなる防湿層を形成する防湿層形成工程と、一対の前記可食容器における前記防湿層の間にアイスクリーム類を収容する内容物収容工程とを備える冷菓の製造方法であって、前記防湿層形成工程は、皿形の回転円盤の前面に液状のチョコレート類を供給しながら該回転円盤を回転させることにより、供給されたチョコレート類を遠心力により微粒化し、該微粒化されたチョコレート類を、前記可食容器に対する前記回転円盤の相対的な移動により前記可食容器の内面に塗布する第1の塗布工程及び第2の塗布工程を備えており、前記第1の塗布工程及び第2の塗布工程は、同一の前記可食容器に対して、前記回転円盤の回転方向を互いに逆方向にして順次行われる冷菓の製造方法により達成される。
【0007】
この冷菓の製造方法において、前記第1の塗布工程及び第2の塗布工程は、前記回転円盤の外周がフードにより覆われた状態で行われることが好ましく、前記フードの内面に沿って流れ落ちるチョコレート類を回収することが好ましい。この場合、前記フードの内面には、前記可食容器の側壁上縁部を覆うように突出するガード部が設けられていることが更に好ましい。
【0008】
また、前記第1の塗布工程及び第2の塗布工程は、前記可食容器に対して前記回転円盤を相対的に移動させる際に、前記可食容器における側壁内面塗布時の移動速度を、底面塗布時の移動速度よりも低くすることが好ましい。
【0009】
また、本発明の前記目的は、底面周縁を囲む側壁を有する一対の可食容器と、一対の前記可食容器の間に収容されたアイスクリーム類と、前記可食容器とアイスクリーム類との間に介在されたチョコレート類からなる防湿層とを備える冷菓であって、前記防湿層は、前記各可食容器の底面及び側壁内面の全体にわたって隙間なく形成されている冷菓により達成される。
【0010】
この冷菓において、前記可食容器の側壁内面における前記防湿層の最大厚みは、底面における前記防湿層の最大厚みと略同じであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、良好な食感を長期間維持することができる冷菓を提供することができ、更に、このような冷菓を安価に製造可能な冷菓の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る冷菓の製造方法に用いるコーティング装置を一部断面で示す概略構成図である。
【0013】
図1に示すように、コーティング装置1は、円錐状のテーパ部2aを有する皿形の回転円盤2の裏面中心にモータ4の回転軸4aが結合されており、供給管6を介して回転円盤2の前面にチョコレート類を供給可能に構成されている。回転円盤2の外周はフード8により覆われている。フード8は、図2にX−X断面図で示すように、平板がホームベース形に折り曲げられて形成され、下端部が回転円盤2の両側において鉛直下方に延びており、後述するように、内面から突出する一対のガード部8a,8bを備えている。モータ4、供給管6及びフード8は、ブラケット(図示せず)などを介して一体化されている。
【0014】
このように構成されたコーティング装置1は、サーボモータによりボールねじ軸を回転させてアームを一軸方向に移動させる公知の単軸ロボット(図示せず)によって図1の矢示方向(左右方向)に往復動可能となっており、サーボモータの制御によりコーティング装置1の移動速度を調整することができる。
【0015】
次に、上記コーティング装置1を用いて可食容器にチョコレート類を塗布する方法を説明する。まず、図1に示すように、可食容器20を水平台10の上面に載置する。可食容器20は、内容物となるアイスクリーム類の全体を収容できるように底面20aの周縁を囲む側壁20bを有する形状を有し、側壁20bの内面は先端外方に拡がる傾斜面とされており、底面20aが上方を向くように載置される。可食容器20の平面視における形状は、矩形状であることが好ましい。可食容器20の材料は特に限定されないが、小麦粉などを主原料とする吸湿性の高い可食容器の場合に特に効果的である。このような可食容器20の一例として、最中皮を挙げることができる。
【0016】
次に、可食容器20の上方にコーティング装置1を配置し、モータ4の作動により回転円盤2を回転させた状態で、供給管6から液状のチョコレート類を供給しながら可食容器20の長手方向に沿ってコーティング装置1を移動させる。あるいは、コーティング装置1の位置を固定したまま、可食容器20を移動させるようにしてもよい。回転円盤2に供給されたチョコレート類は、図2に示すように、矢示方向の回転による遠心力を受けてテーパ部2aに沿って外方へ移動し、微粒化されて回転円盤2の外周部から破線pで示すように全方向に放出され、可食容器20の内面に塗布される。
【0017】
チョコレート類は、チョコレートや準チョコレートなどが含まれるが、原材料として食用油脂を含み防湿性を有するものであれば特に限定されるものではない。また、円盤2の直径は、可食容器20の幅長さ(図2における左右方向の長さ)を考慮して適宜設定すればよいが、大きすぎると塗布効率が低下する一方、小さすぎると可食容器20全体への塗布が困難になることから、可食容器20の幅長さ1に対する寸法比を80〜150%とすることが好ましく、90〜110%とすることがより好ましい。
【0018】
コーティング装置1の移動は、回転円盤2が可食容器20の長手方向一方端部から他方端部まで移動するように行うが、単軸ロボットの駆動制御により、側壁20bの内面(図1におけるA−B間及びC−D間)における塗布時の移動速度を、底面20a(図1におけるB−C間)における塗布時の移動速度よりも低くすることが好ましい。幅方向に延びる側壁20b内面への塗布は底面20aへの塗布に比べて一般には困難であるが、コーティング装置1の移動を上記のように制御することによって、塗布厚みの均一化を図ることができる。
【0019】
本実施形態においては、回転円盤2の外周がフード8により覆われているため、微粒化されて回転円盤2から勢いよく放出されたチョコレート類は、可食容器20に塗布されなかったものがフード8に衝突して、フード8の内面に沿って落下する。したがって、フード8の下方に回収受部12を設置することにより、使用されなかったチョコレート類を効率よく回収して再利用することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0020】
回転円盤2の回転数は、供給されるチョコレート類の粘度などを考慮して適宜設定すればよいが、低すぎると粒径が大きくなって可食容器20に隙間なく塗布することが困難になる一方、高すぎると霧化の促進により空気中に拡散して回収率の低下や可食容器20外面の汚染を招くおそれがあることから、1500〜5000rpmが好ましく、2500〜3500rpmがより好ましい。
【0021】
また、本実施形態においては、図2に示すように、フード8の内面から斜め上方に突出して、可食容器20の長手方向に延びる側壁20bの上縁部20cをそれぞれ覆うガード部8a,8bが設けられており、この上縁部20cにチョコレート類が堆積するのを防止している。すなわち、図2に示すように回転円盤2が右回りに回転する場合には、右側のガード部8bによって右側側壁20bの上縁部20cへのチョコレート類の堆積が防止されるので、側壁20bの外面側へのチョコレート類の垂れが抑制されて、歩留まりを良好にすることができる。
【0022】
こうして、可食容器20の全体にわたってコーティング装置1を移動させると、可食容器20の底面20aには塗布層が略均一に形成されるが、長手方向に延びる側壁20bは、図2において左側の内面には良好な塗布層が形成される一方、右側の内面には塗り残しが生じる。また、可食容器20の底面20aに凹凸が形成されていると、図2に示すように、回転円盤2が右回りに回転する場合、凹凸の側面のうち右側に露出する部分には塗布が良好に行われる一方、左側に露出する部分は塗布が不十分となる。
【0023】
そこで、次の工程においては、回転円盤2の回転方向を逆方向にして、コーティング装置1を可食容器20の長手方向に沿って他方端部から一方端部へ移動させ、上記と同様にしてチョコレート類の塗布を行う。すなわち、図3に示すように、回転円盤2が矢示のように左回りに回転することにより、長手方向に延びる側壁20bは、前工程で塗り残しが生じていた右側の内面に良好な塗布層が形成される。同様に、底面20aに凹凸が形成されている場合でも、前工程の回転方向とは逆方向に回転円盤2が回転することにより、前工程で不十分であった左側への露出部分に塗布が良好に行われる。
【0024】
このように、同一の可食容器20に対して、2度の塗布工程が回転円盤2の回転方向を互いに逆にして順次行われることにより、可食容器20の底面20a及び側壁20b内面の全体にわたって、チョコレート類からなる防湿層を隙間なく形成することができる。防湿層は、底面20a及び側壁20bの内面において厚みが略均一となるように形成されており、少なくともそれぞれの最大厚みは略同じである。2度の塗布工程により形成される防湿層の厚みは、0.05〜6.0mmであることが好ましく、0.5〜3.0mmがより好ましい。
【0025】
この後は、従来と同様にして、一対の可食容器20における防湿層の間にアイスクリーム類を充填することにより、内容物が可食容器20により覆われた冷菓が完成する。アイスクリーム類には、アイスクリーム以外に、アイスクリームよりも乳固形分又は乳脂肪分が少ないアイスミルクやラクトアイス、氷菓なども含まれる。
【0026】
こうして得られた冷菓は、可食容器20の内面全体が防湿層により隙間なくコーティングされているため、内容物であるアイスクリーム類から可食容器20への水分移行を確実に防止することができ、可食容器20の食感を長期間良好に維持することができる。
【0027】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、回転円盤2の前面形状は、本実施形態のように円錐状のテーパ部2aに限定されるものではなく、一例を挙げると、図4に示すような、滑らかな曲面からなる前面102aを有する回転円盤102としてもよい。
【0028】
また、本実施形態においては、1つの可食容器20に対し、同一のコーティング装置1を用いて、回転円盤2の回転方向が互いに異なる2度の塗布工程を行っているが、複数のコーティング装置1によって各塗布工程をそれぞれ行うようにしてもよい。例えば、図5に示すように、複数のコーティング装置1を2つのグループ(符号E及びF)に分けて、同一のグループ内では回転円盤2の回転方向を予め設定された同じ方向とし、グループ間で回転方向が逆方向となるようにする。そして、複数の可食容器20を一定の間隔で直線状に配置し、全ての可食容器20が各グループE,Fのコーティング装置1によりそれぞれ一度ずつ塗布されるようにコンベア30で搬送することで、防湿層を有する可食容器20を効率よく製造することができる。この場合、可食容器20の幅方向(図面を貫通する方向)にも可食容器20及びコーティング装置1を並設し、可食容器20の搬送及びコーティング装置1の作動を一体的に行うことにより、更なる製造効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷菓の製造方法に用いるコーティング装置を一部断面で示す概略構成図である。
【図2】図1におけるX−X断面図であり、作動状態の一例を示す図である。
【図3】図1におけるX−X断面図であり、作動状態の他の例を示す図である。
【図4】図1に示すコーティング装置の要部の変形例を示す図である。
【図5】図1に示すコーティング装置を用いた設備の一例を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 コーティング装置
2 回転円盤
4 モータ
6 供給管
8 フード
20 可食容器
20a 底面
20b 側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面周縁を囲む側壁を有する可食容器の内面に、チョコレート類からなる防湿層を形成する防湿層形成工程と、
一対の前記可食容器における前記防湿層の間にアイスクリーム類を収容する内容物収容工程とを備える冷菓の製造方法であって、
前記防湿層形成工程は、皿形の回転円盤の前面に液状のチョコレート類を供給しながら該回転円盤を回転させることにより、供給されたチョコレート類を遠心力により微粒化し、該微粒化されたチョコレート類を、前記可食容器に対する前記回転円盤の相対的な移動により前記可食容器の内面に塗布する第1の塗布工程及び第2の塗布工程を備えており、
前記第1の塗布工程及び第2の塗布工程は、同一の前記可食容器に対して、前記回転円盤の回転方向を互いに逆方向にして順次行われる冷菓の製造方法。
【請求項2】
前記第1の塗布工程及び第2の塗布工程は、前記回転円盤の外周がフードにより覆われた状態で行われ、前記フードの内面に沿って流れ落ちるチョコレート類を回収する請求項1に記載の冷菓の製造方法。
【請求項3】
前記フードの内面には、前記可食容器の側壁上縁部を覆うように突出するガード部が設けられている請求項2に記載の冷菓の製造方法。
【請求項4】
前記第1の塗布工程及び第2の塗布工程は、前記可食容器に対して前記回転円盤を相対的に移動させる際に、前記可食容器における側壁内面塗布時の移動速度を、底面塗布時の移動速度よりも低くする請求項1から3のいずれかに記載の冷菓の製造方法。
【請求項5】
底面周縁を囲む側壁を有する一対の可食容器と、
一対の前記可食容器の間に収容されたアイスクリーム類と、
前記可食容器とアイスクリーム類との間に介在されたチョコレート類からなる防湿層とを備える冷菓であって、
前記防湿層は、前記各可食容器の底面及び側壁内面の全体にわたって隙間なく形成されている冷菓。
【請求項6】
前記可食容器の側壁内面における前記防湿層の最大厚みが、底面における前記防湿層の最大厚みと略同じである請求項5に記載の冷菓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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