説明

冷菓調理装置

【課題】構造が簡単であり、コストが掛からない冷菓調理装置を提供する。
【解決手段】冷菓を調理する金属製の冷却皿14と、冷却皿14の底面裏面側に接続され冷媒が循環する銅管等から成る蒸発器26と、蒸発器26を冷却する冷凍装置とを備える。冷却皿14の裏面に伝熱セメント28により蒸発器26を接合し、蒸発器26の周囲全面を伝熱セメント28により覆う。伝熱セメント28は、セメント成分中に熱伝導率の大きいセラミックス粉末及び金属粉末の少なくとも一方を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アイスクリームやシャーベットなどの冷菓を調理製造する冷菓調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、アイスクリームやシャーベットなどの冷菓は、冷菓メーカにより製造され、調理済みの冷菓が小売店等で販売されるのが一般的である。一方、氷菓は基本的には家庭のフリーザー等で製造可能であり、家庭で比較的簡単に製造することができるような氷菓材料やそのための専用器具も販売されている。
【0003】
その他、冷菓を店頭において調理の実演を行いながら販売ができるようにするために、特許文献1〜3に開示されているように、種々の冷菓調理器も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案出願公告平1−30070号公報
【特許文献2】特開平5−328906号公報
【特許文献3】特開2007−78333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、工場生産される氷菓は、画一的であり、使用材料が限られ、多くの人々の要望に個々に答えることができるものではない。また、家庭で作ることができる氷菓も種類が限られ、製造も面倒なものである。
【0006】
そこで、個人の好みや嗜好に合わせたよりおいしい冷菓を提供するために、特許文献1〜3に開示されるように、購入者の前で調理して提供する冷菓の冷菓調理器が提案されている。しかしながら、これらの冷菓調理器は冷却効率が悪いために、店頭販売や実演販売には時間が掛かり、顧客の要望に迅速に応えることができないものであった。これは、氷菓を製造する金属製の調理台や冷却皿の底面に接続した冷媒循環パイプの蒸発器の接続が、線状の接触部のみで半田付され、周囲は断熱材で覆われているだけなので、蒸発器と冷却皿と間の熱伝導面積が小さく、冷却効率が極めて悪いためであった。しかも、蒸発器の周囲を覆った断熱材は熱伝導率が非常に小さいので、蒸発器の大半の表面積は熱伝導がほとんど生じない状態であった。従って、調理台や冷却皿の表面温度を効果的に下げることができず、装置のコスト等を考慮すると、せいぜい氷点下30度程度にしか下げられないものであり、迅速な冷却ができず、シャーベト等を素速く効率的に製造することができないものであった。
【0007】
この発明は、冷却効率が高く、構造が簡単であり、コストが掛からない冷菓調理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、冷菓を調理する金属製の冷却皿と、この冷却皿の底面裏面側に接続され冷媒が循環する蒸発器と、この蒸発器を冷却する冷凍装置とを備えた冷菓調理装置であって、前記冷却皿の裏面に伝熱セメントにより前記蒸発器を接合するとともに、前記蒸発器の周囲全面を前記伝熱セメントにより覆って成る冷菓調理装置である。
【0009】
前記伝熱セメントは、銅管から成る前記蒸発器及び前記冷却皿裏面を覆っているものである。前記伝熱セメントは、セメント成分中に熱伝導率の比較的大きいセラミックス粉末及び金属粉末の少なくとも一方を含有するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明の冷凍装置は、簡単な構成で効率的に冷却することができ、冷却皿をより低い温度に迅速に設定することができる。これにより、容易に冷菓の実演販売や店頭販売等を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施形態の冷菓調理装置の斜視図である。
【図2】この実施形態の冷菓調理装置の冷却皿の部分縦断面図である。
【図3】この実施形態の冷菓調理装置の冷却システムを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の冷菓調理装置の一実施形態について、図面に基づいて説明する。この実施形態の冷菓調理装置10は、図1に示すように、天面12側に深さの浅い皿状の冷却皿14が配設されている。冷却皿14は、ステンレスにより一体に成形され、冷菓調理装置10の天面12に一体的に、冷却皿14の周縁部14aが水密的に接合されて固定されている。冷菓調理装置10の正面には、図1に示すように、手前側に操作部16が設けられ、冷却皿14の冷却のON/OFFの表示や操作用のランプやスイッチ類が配置されている。冷菓調理装置10の底面には、キャスタ18が取り付けられ、移動容易に構成されている。内部には、後述する冷凍装置20のコンプレッサ21やコンデンサ22及び配管24が設けられ、図示しないモータや制御装置等が収納されている。
【0013】
冷菓調理装置10の冷却皿14の底面裏面側には、冷媒が循環する銅管等の蒸発器26が接着されている。蒸発器26は、冷却皿14の裏面に渦巻き状に接着され、蒸発器26を形成した管の全面が、伝熱セメント28中に埋設され所定の厚さで覆われている。伝熱セメント28は、蒸発器26が埋設された状態で断面が略三角形になるように形成され、断面三角形の底面部分の伝熱セメント28が冷却皿26の裏面に広い面積で接着している。伝熱セメント28は、接着材となるセメント成分に熱伝導が金属に近いセラミック粉末や炭素粉末、その他金属粉末を混合したものである。伝熱セメント28は、氷点下でも接着性能や熱伝導率は変わらず、マイナス200度近い温度での使用も可能である。また、蒸発器26の管同士の間の冷却皿14の裏面露出部は、できるだけ伝熱セメント28で覆われている方が好ましく、蒸発器26が対面する冷却皿14の裏面全面が伝熱セメント28で覆われていると良い。さらに、蒸発器26を覆った伝熱セメント28の表面全面及び冷却皿14の露出部分は、発泡樹脂等の断熱材30により覆われている。
【0014】
冷菓調理装置10の冷凍装置20は、図3に示すように、冷媒が循環する配管24の管路途中に設けられたコンプレッサ21とコンデンサ22、及び膨張弁25を備え、図示しないモータにより駆動されたコンプレッサ21により、冷媒が循環する。コンプレッサ21は、スクロール式が好ましい。
【0015】
この実施形態の冷菓調理装置10の動作は、装置の電源が入れられるとコンプレッサ21がモータにより作動し、冷媒が循環して圧縮され、コンデンサ22で放熱される。放熱された冷媒は、膨張弁25及び蒸発器26で減圧されて断熱膨張し、低温に温度が降下した冷媒が周囲の熱を吸収する。これにより冷却皿14の熱を収集した冷媒は、コンプレッサ21より圧縮され、冷媒が凝集されて高温になり、再びコンデンサ22に送られて放熱される。この冷却サイクルを繰り返して、冷却皿22の温度を下げる。冷却温度は、この実施形態の場合、氷点下40度〜45度にまで下げることができる。これにより、液体のシャーベットの材料32を冷却皿14に広げるようにして注入すると、瞬間的に材料32が凍結し、容易にシャーベットを形成することができる。
【0016】
この実施形態の冷菓調理装置10は、冷却皿14の熱を伝熱セメント28により広い面積で吸収し、蒸発器26の管表面全面に熱伝導可能にしている。これにより、冷却皿14から蒸発器26への熱伝導が良好になり、冷却効率が高いものとなる。しかも、伝熱セメント28と冷却皿14裏面の露出部は、断熱材30で覆われているので、外部からの熱の侵入を確実に抑えることができる。
【0017】
さらに、スクロール式のコンプレッサ21を用いることにより、省電力化が図られ、圧縮トルクの変動が少なく低振動である。これにより、ホテルや店頭での実演販売に際しても、運転時の振動が抑えられ、良好な環境でシャーベット等を作成でき、顧客にも不快な感覚を与えず販売することができる。
【0018】
なお、この発明の冷菓調理装置は、上記実施形態に限定されず、コンプレッサや伝熱セメントの種類は、適宜選択し得るものである。
【符号の説明】
【0019】
10 冷菓調理装置
12 天面
14 冷却皿
20 冷凍装置
21 コンプレッサ
22 コンデンサ
24 配管
26 蒸発器
30 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷菓を調理する金属製の冷却皿と、この冷却皿の底面裏面側に接続され冷媒が循環する蒸発器と、この蒸発器を冷却する冷凍装置とを備えた冷菓調理装置において、
前記冷却皿の裏面に伝熱セメントにより前記蒸発器を接合し、前記蒸発器の周囲全面を前記伝熱セメントにより覆って成ることを特徴とする冷菓調理装置。
【請求項2】
前記伝熱セメントは、銅管から成る前記蒸発器及び前記冷却皿裏面を覆っている請求項1記載の冷菓調理装置。
【請求項3】
前記伝熱セメントは、セメント成分中にセラミックス粉末及び金属粉末の少なくとも一方を含有する請求項2記載の冷菓調理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−92311(P2013−92311A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235010(P2011−235010)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(511258673)株式会社私は薔薇 (1)