説明

冷蔵庫

【課題】風量損失を低減して、省エネルギー性を向上した冷蔵庫を得ることを目的とする。
【解決手段】冷却器で熱交換された冷気を冷凍温度帯室及び冷蔵温度帯室に送風する庫内ファンと、該庫内ファンの前方を覆うように設けられ前記冷凍温度帯室又は前記冷蔵温度帯室と連通する開口を有するファンカバーと、該ファンカバーの開口に設けられ送風を制御するダンパと、前記庫内ファンの前方に位置する前記冷凍温度帯室又は前記冷蔵温度帯室に冷気を吹き出す吹き出し口と、前記ファンカバーの前方を覆うように設けられて前記開口から前記吹き出し口に冷気を送風するダクトと、を備えた冷蔵庫において、正面から見てファンの回転方向に前記ファンカバーで形成したダクトを備え、該ダクト壁面に沿った冷気の旋回流の途中に該冷気の旋回流が上方と下方に分流される三角形状の整流部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却器によって冷蔵温度帯室と冷凍温度帯室を冷却する蒸気圧縮式冷蔵庫であって、送風を制御すべくダンパを備えた冷蔵庫としては、例えば、特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載の冷蔵庫は、冷蔵庫本体に区画形成された冷凍温度帯室及び冷蔵温度帯室と、前記冷凍温度帯室及び前記冷蔵温度帯室を冷却する冷気が熱交換される冷却器と、前記冷却器が設けられる冷却器収納室と、前記冷却器で熱交換された冷気を前記冷凍温度帯室及び前記冷蔵温度帯室に送風する庫内ファンと、該庫内ファンの前方を覆うように設けられ前記冷凍温度帯室又は前記冷蔵温度帯室と連通する開口を有するファンカバーと、該ファンカバーの開口に設けられ送風を制御するダンパと、前記庫内ファンの前方に位置する前記冷凍温度帯室又は前記冷蔵温度帯室に冷気を吹き出す吹き出し口と、前記ファンカバーの前方を覆うように設けられて前記開口から前記吹き出し口に冷気を送風するダクトと、を備えることで内容積効率や省エネルギー性が向上するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−58687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の冷蔵庫は、ファンより吐出される風の風路を形成し、冷蔵庫の庫内の容積を広くするために、風路は狭く設定されている。そのため、ファンから前方に冷気を吹き出すよりも、ファンの回転方向に吹き出される旋回流れに適した風路としている。そして、ファンの旋回流をファン上方に設けてあるダンパへ導くため、ファン前方にファンカバーが設置され、ファンの軸方向と周回方向に対しファン風路の側面壁となるように、ファン旋回流に合わせたファンのケーシングを形成しているが、このケーシングに沿ってファン上方に導かれる風の流れとは別に、ファン上部からファン回転方向での正面右側の側面壁の区間では、ファンの吐出風が直接、ファン上方に流れていく。そのため、ケーシングに沿って旋回する流れとの境界部分で、ファン風の流れの乱れ、圧力の上昇などが発生し、風量の低下や騒音発生が生じていた。
【0006】
本発明は以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、風量損失を低減して、省エネルギー性を向上した冷蔵庫を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、冷蔵庫本体に区画形成された冷凍温度帯室及び冷蔵温度帯室と、前記冷凍温度帯室及び前記冷蔵温度帯室を冷却する冷気が熱交換される冷却器と、前記冷却器が設けられる冷却器収納室と、前記冷却器で熱交換された冷気を前記冷凍温度帯室及び前記冷蔵温度帯室に送風する庫内ファンと、該庫内ファンの前方を覆うように設けられ前記冷凍温度帯室又は前記冷蔵温度帯室と連通する開口を有するファンカバーと、該ファンカバーの開口に設けられ送風を制御するダンパと、前記庫内ファンの前方に位置する前記冷凍温度帯室又は前記冷蔵温度帯室に冷気を吹き出す吹き出し口と、前記ファンカバーの前方を覆うように設けられて前記開口から前記吹き出し口に冷気を送風するダクトと、を備えた冷蔵庫において、正面から見てファンの回転方向に前記ファンカバーで形成したダクトを備え、該ダクト壁面に沿った冷気の旋回流の途中に該冷気の旋回流が上方と下方に分流される三角形状の整流部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、風量損失を低減して、省エネルギー性の向上した冷蔵庫を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の正面外形図。
【図2】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の庫内の構成を表す図1のX−X断面図。
【図3】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の庫内の構成を表す正面図。
【図4】図2の要部拡大説明図。
【図5】図3の要部拡大説明図。
【図6】従来の冷蔵庫の庫内ファン周辺構造を表す正面図。
【図7】従来の冷蔵庫の庫内ファン周辺構造を表す縦断面図。
【図8】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の冷凍室ダンパを表す斜視図。
【図9】本発明の実施形態に係る庫内ファン周辺構造を背面側から見た分解斜視図。
【図10】従来の冷蔵庫の庫内ファン周辺構造を表す縦断面図。
【図11】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の庫内ファン周辺構造を表す正面斜視図。
【図12】従来の冷蔵庫の庫内ファン周辺構造を表す正面図。
【図13】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の庫内ファン周辺構造を表す正面図。
【図14】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の庫内ファン周辺構造を表す正面図。
【図15】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の庫内ファン周辺構造を表す正面図。
【図16】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の庫内ファン周辺構造を表す平面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る冷蔵庫の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、冷蔵庫1の正面外形図であり、図2は、冷蔵庫1の庫内の構成を表す図1におけるX−X縦断面図であり、図3は、冷蔵庫1の庫内の構成を表す正面図であり、冷気ダクトや吹き出し口の配置などを示す図であり、図4は、図2の要部拡大説明図であり、図5は、図3の要部拡大説明図である。
【0012】
図1に示すように、冷蔵庫1は、食品収納室として、上方から、冷蔵室2,製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6を備えている。なお、以下本実施例では、製氷室3と上段冷凍室4と下段冷凍室5の総称として冷凍温度帯室60,冷蔵室2と野菜室6の総称として冷蔵温度帯室61と呼ぶことがある。
【0013】
冷蔵室2は前方側に、左右に分割された観音開きの冷蔵室扉2a,2bを備え、製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6は、それぞれ引き出し式の製氷室扉3a,上段冷凍室扉4a,下段冷凍室扉5a,野菜室扉6aを備えている。以下では、冷蔵室扉2a,2b,製氷室扉3a,上段冷凍室扉4a,下段冷凍室扉5a,野菜室扉6aを単に扉2a,2b,3a,4a,5a,6aと称する。
【0014】
また、冷蔵庫1は、扉2a,2b,3a,4a,5a,6aの各扉の開閉状態をそれぞれ検知する図示しない扉センサと、扉開放状態と判定された状態が所定時間、例えば、1分間以上継続された場合に、使用者に報知する図示しないアラーム,冷蔵室2や野菜室6の温度設定や冷凍温度帯室60の温度設定をする図示しない温度設定器等を備えている。
【0015】
図2に示すように、冷蔵庫1の庫外と庫内は、発泡断熱材(発泡ポリウレタン)を充填することにより形成される断熱箱体10により隔てられている。冷蔵庫1の断熱箱体10は真空断熱材25を実装している。
【0016】
庫内は、断熱仕切壁28により冷蔵室2と、上段冷凍室4及び製氷室3(図1参照、図2中で製氷室3は図示されていない)とが隔てられ、断熱仕切壁29により、下段冷凍室5と野菜室6とが隔てられている。
【0017】
扉2a,2b(図1参照)の庫内側には複数の扉ポケット32が備えられている。また、冷蔵室2は複数の棚36により縦方向に複数の貯蔵スペースに区画されている。
【0018】
図2に示すように、上段冷凍室4,下段冷凍室5及び野菜室6は、それぞれの室の前方に備えられた扉4a,5a,6aと一体に引き出される、収納容器4b,5b,6bがそれぞれ設けられており、扉4a,5a,6aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより収納容器4b,5b,6bが引き出せるようになっている。図1に示す製氷室3にも同様に、扉3aと一体に、図示しない収納容器(図2中(3b)で表示)が設けられ、扉3aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより収納容器3bが引き出せるようになっている。なお上段冷凍室4は、急速冷凍室として使用できる。急速冷凍性能の向上のために、上段冷凍室4の収納容器4bには図示しないアルミトレーが備えられており、冷凍速度が向上するようになっている。
【0019】
図2に示すように(適宜図3〜図5参照)、冷却器7は下段冷凍室5の略背部に備えられた冷却器収納室8内に設けられており、冷却器7の上方に設けられた庫内ファン9により冷却器7と熱交換して冷やされた空気(冷気、以下、冷却器7で冷やされてできた低温空気を冷気と称する)が冷蔵室ダクト11,冷凍室ダクト12を介して、冷蔵室2,上段冷凍室4,下段冷凍室5,製氷室3の各室へ送られる。各室への送風は冷蔵室ダンパ20と冷凍室ダンパ50の開閉により制御される。
【0020】
ちなみに、冷蔵室ダクト11,冷凍室ダクト12は、図3に破線で示すように冷蔵庫1の各室の背面側に設けられている。
【0021】
具体的には、冷蔵室ダンパ20が開状態、冷凍室ダンパ50が閉状態のときには、冷気は、冷蔵室ダクト11を経て多段に設けられた吹き出し口2cから冷蔵室2に送られる。冷気は、冷蔵室2の冷却を終えた後に、冷蔵室2の背面右側下部に備えられた冷蔵室戻り口2dから流入し、冷蔵室−野菜室連通ダクト16を介して、野菜室6背面右側上部に設けられた野菜室吹き出し口6cから野菜室6に流入して野菜室6を冷却する。野菜室6を冷却した冷気は、断熱仕切壁29の下部前方に設けられた、野菜室戻り口6dから、野菜室戻りダクト18を介して、冷却器7の幅とほぼ等しい幅の野菜室戻り吹き出し口18aから流入する(図3または図5参照)。
【0022】
図3では冷凍室ダンパ50が省略されているが、冷凍室ダンパ50が開状態のとき、冷却器7で熱交換された冷気が庫内ファン9により送風され、冷凍室ダクト12を経て吹き出し口3c,4c,5cからそれぞれ製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5へ送風される。なお、図3に示すとおり、本実施形態の冷蔵庫1では、冷凍温度帯室60の吹き出し口3c〜5cは、計7個備えられており、吹き出し口3c〜5cの周長の合計は1200mmである。
【0023】
図4に示すように冷蔵庫1では、冷却器7の上方に庫内ファン9を設け、庫内ファン9の上方に冷凍室ダンパ50を設けている。さらに、冷凍室ダンパ50の上方に冷凍温度帯室60の上段に位置する上段冷凍室4に冷気を送り出す上段冷凍室吹き出し口4cと製氷室吹き出し口3c(図3参照)が備えられている。なお、上段冷凍室吹き出し口4cは、冷凍室の吹き出し口の中で最も開口面積が大きくなっている。
【0024】
また、冷蔵室ダンパ20が開状態で、庫内ファン9が稼動した場合、冷気は、冷却器収納室8⇒冷気集約ダクト13(詳細は後述)⇒冷蔵室送風ダクト11⇒冷蔵室2⇒冷蔵室−野菜室連通ダクト16⇒野菜室6⇒野菜室戻りダクト18⇒冷却器収納室8の順に流れる。この冷気循環経路を形成する壁面のうち、冷凍温度帯室60と冷気循環経路を隔てている壁面、すなわち、冷却器収納室8の前面,冷蔵室2の底面,冷蔵室−野菜室連通ダクト16の前面,野菜室戻りダクト18の上面の少なくともいずれかに真空断熱材25を配設している(冷蔵室−野菜室連通ダクト16の前面の真空断熱材25は図示せず)。換言すると、冷却器収納室8から冷蔵温度帯室61に送風された後の戻り冷気が流れるダクトが冷却器7の側方且つ冷凍温度帯室60の後方に設けられており、少なくともこのダクトと冷凍温度帯室60との間に真空断熱材25が備えられている。なお、真空断熱材25は、ガスバリア性を有するフィルム内に、芯材とするグラスウールや樹脂繊維等を封入し、真空引き後、端部を熱溶着することにより形成されたものであり、熱伝導率が10mW/mK以下の高い断熱性能を有する。
【0025】
図5に示すように、冷蔵室2を冷却した冷気は、冷却器収納室8の側方に備えられた冷蔵室−野菜室連通ダクト16を通って、野菜室6に流入する。野菜室6からの戻り冷気は、野菜室戻り口6d(図2参照)から流入し、図4に示すように、断熱仕切壁29の中に設けられた野菜室戻りダクト18を通って、冷却器収納室8の下部前方に設けられた、冷却器7の幅とほぼ等しい幅寸法の野菜室戻り吹き出し口18a(図5参照)から、冷却器収納室8に流入する。一方、冷凍温度帯室60を冷却した冷気は、図4に示すように、冷却器収納室8と冷凍温度帯室60を仕切る仕切板54の下部に備えられた、冷却器7の幅とほぼ等しい幅寸法の冷凍室戻り口17を介して冷却器収納室8に流入する。なお、冷却器収納室8の下方には、除霜ヒータ22が備えられている。除霜ヒータ22は、ガラス管ヒータであり、ガラス管の外周にはアルミニウム製の放熱フィン22aが備えられている。
【0026】
除霜ヒータ22の上方には、除霜水が除霜ヒータ22に滴下することを防止するために、上部カバー53が設けられている。また、図5に示すとおり、冷却器収納室8の下部前方には、冷却器7の除霜中の上昇気流が流入する空間である、暖気収納スペース26が設けられている。この暖気収納スペース26によって、除霜ヒータ22に通電することによって実施される除霜運転中に生じる暖気(上昇気流)が、冷凍温度帯室60に流入することを抑えることができる。
【0027】
冷却器7及びその周辺の冷却器収納室8の壁に付着した霜は、除霜運転時に解かされ、その際に生じた除霜水は冷却器収納室8の下部に備えられた樋23に流入した後に、排水管27を介して後記する機械室19に配された蒸発皿21に達し、圧縮機24及び、機械室19内に配設される図示しない凝縮器及び圧縮機24の発熱により蒸発させられる。
【0028】
また、冷却器7の正面から見て左上部には冷却器7に取り付けられた冷却器温度センサ35,冷蔵室2には冷蔵室温度センサ33,下段冷凍室5には冷凍室温度センサ34がそれぞれ備えられており、それぞれ冷却器7の温度(以下、冷却器温度と称する),冷蔵室2の温度(以下、冷蔵室温度と称する),下段冷凍室5の温度(以下、冷凍室温度と称する)を検知できるようになっている。更に、冷蔵庫1は、庫外の温度を検知する図示しない外気温度センサを備えている。なお、野菜室6にも野菜室温度センサ33aが配置してある。
【0029】
冷蔵庫1の天井壁上面側にはCPU,ROMやRAM等のメモリ,インターフェース回路等を搭載した制御基板31が配置されており(図2参照)、制御基板31は、前記した外気温度センサ,冷却器温度センサ35,冷蔵室温度センサ33,野菜室温度センサ33a,冷凍室温度センサ34,扉2a,2b,3a,4a,5a,6aの各扉の開閉状態をそれぞれ検知する前記した扉センサ,冷蔵室2内壁に設けられた図示しない温度設定器等と接続し、前記ROMに予め搭載されたプログラムにより、圧縮機24のON,OFF等の制御,冷蔵室ダンパ20及び冷凍室ダンパ50を個別に駆動する図示省略のそれぞれのアクチュエータの制御,庫内ファン9のON/OFF制御や回転速度制御,前記した扉開放状態を報知するアラームのON/OFF等の制御を行う。
【0030】
次に、冷蔵庫1の庫内ファン9と冷凍室ダンパ50周辺の詳細構造について図6〜図9を参照しながら説明する。
【0031】
図6は、冷蔵庫1の庫内ファン9と冷凍室ダンパ50周辺の構造を正面から見た図、図7は、冷蔵庫1の庫内ファン9と冷凍室ダンパ50周辺の構造を側方から見た縦断面図である。また、図8は本実施形態の冷蔵庫1の冷凍室ダンパ50の斜視図、図9は庫内ファン9周辺構造を背面側から見た分解斜視図である。
【0032】
冷蔵庫1で使用する冷凍室ダンパ50は、図8に示すとおり、開口102を一面に備えた、例えば樹脂製の一体成形された横長のフレーム103と、フレーム103の一端(長方形状の短手部)にモータや減速歯車などの駆動系を内蔵した駆動手段100を備えるものである。開閉板104の一面には、例えば発泡ウレタンや発泡ポリエチレンといった柔軟な材料で成形された緩衝部材104aを備えている。冷凍室ダンパ50は、フレーム103の開口102近傍の内側の面(開閉板と対向する側の面)103aに、緩衝部材104aが押し付けられることにより閉状態となる。したがって、そのシール性能は、開口102の周長102aに依存する。ここで、開口102にはフレーム103の上辺と下辺が連結する連結部103bが備えられているが、これは、変形抑制のために備えられるものであり、シール性能に直接寄与するものではない。したがって、冷凍室ダンパ50のシール性能を考える際の、開口102の周長102aには、シール性能に直接寄与しない連結部103bの長さは含まない。なお、本実施形態の冷蔵庫1で使用する冷凍室ダンパ50の開口102の大きさは、180mm×35mmであり、シール性能に寄与する周長102aは430mmである。また、開口102の外周には、冷凍室ダンパ50取り付け時の位置合わせと、開口102の補強を兼ねたリブ103cが備えられている。
【0033】
図6中に示すように、冷蔵庫1の庫内ファン9は、ケーシング9aの形状が略方形であり、ボス部にモータを備えたモータ一体型のファンである。庫内ファン9の吐出側は、冷気を集約する冷気集約ダクト13を形成すべくファンカバー70が備えられている。ファンカバー70は、庫内ファン9の前方を覆うように設けられている。冷気集約ダクト13の外周部13aは、庫内ファン9の回転中心から外周部13aまでの距離が、最小となる位置(図8中に示した最小寸法位置)から、庫内ファン回転方向に上流から下流に向けて次第に拡大するように拡大風路13bとなっている。また、本実施形態の冷蔵庫1では、冷気集約ダクト13の拡大風路13bは、庫内ファン回転中心から風路外周壁までの距離が、最小となる位置から、庫内ファン回転方向に180度以上有している。
【0034】
すなわち、拡大風路13bは、始端(上流)から終端(下流)まで180度又は180度よりも大きい角度を有する。また、出口開口13cは、横長であって該出口開口13cの長手方向が拡大風路13bの終端(下流)に位置する。また、ファンカバー70は、庫内ファン9に対向する位置に窪みを有し、当該窪みの周囲に拡大風路13bが設けられている。すなわち、拡大風路13bを冷気が流れて整流されることで、出口開口13bをスムーズに通過して、上段冷凍室4及び下段冷凍室5に流入する。これにより、上段冷凍室4及び下段冷凍室5の冷却効率を向上することができる。
【0035】
また、図4に示すように、ファンカバー70の前方を覆うように、冷凍室ダクト12が設けられている。すなわち、冷却器収納室8と上段冷凍室4及び下段冷凍室5との間に、冷気集約ダクト13及び冷凍室ダクト12が配置される。これにより、空気断熱層が貯蔵空間の後方に形成されるため、上段冷凍室4及び下段冷凍室5が冷却器収納室8から受ける熱影響(例えば、冷却器7の除霜運転時の温度上昇等による影響)は抑制され、貯蔵空間の温度変化を抑制できる。
【0036】
また、図6中に示すとおり、庫内ファン9は水平面から角度β1(本実施形態の冷蔵庫1ではβ1は10度)だけ傾斜させて配設している。
【0037】
図7に示すとおり、冷凍室ダンパ50は、開口102が略前方に向くように配設しているが、その配設位置は、冷凍室ダンパ50のリブ103cを、図6に示す冷気集約ダクト13の出口開口13c(出口開口13cは冷凍室ダンパ50の開口102より大きい)に一致させることで容易に定まるようになっている。また、図7に示すとおり、冷凍室ダンパ50は、回転軸101が、上側になるように配設してある。さらに、冷凍室ダンパ50の開閉板104は、背面側に開き、その開角度θは、運転状態によって異なり、0度(全閉),60度,90度(全開)の状態で使用される(運転状態と開角度の関係の詳細は後述)。
【0038】
図6に示すとおり、冷凍室ダンパ50は、水平面から角度β2(本実施形態の冷蔵庫1ではβ2は6度)だけ傾斜させて設置するようにしている。また、図7に示すとおり、庫内ファン9は、角度α1(本実施形態の冷蔵庫1ではα1は13度)だけ後方に傾斜、冷凍室ダンパ50は角度α2(本実施形態の冷蔵庫1ではα2は6度)だけ後方に傾斜して設置するようにしている。
【0039】
なお、冷気集約ダクト13の出口開口13cの大きさは、188.5mm×43mmであり、その周長13dは、463mmである。
【0040】
ファンホールド71には、冷気集約ダクト13と、冷却器収納室8とが連通する連通孔75が設けられている。なお、連通孔75は、冷気集約ダクト13内の下端に位置するように設けている。
【0041】
また、冷気集約ダクト13内(ファンカバー内面)の庫内ファン9の下部の領域には、ファンカバーヒータ76が配設されている。ファンカバーヒータ76は、図6及び図7に示すとおり、冷気集約ダクト13内から、連通孔75を経て、冷却器収納室8内に延伸させた部分76aを有している。
【0042】
なお、図9に示すとおり、ファンカバー70は仕切板54と一体成型品となっている。また、庫内ファン9を保持する部材(ファンホールド71)は、ファンカバー70とは別体となっており、図9に示すようにファンカバーの背面側に組みつけられる。
【0043】
図6において、庫内ファン9による冷気の流れは、ファンカバー70に沿って上方へ導かれる冷気の流れAと、庫内ファン9から直接上方の冷凍室ダンパ50の開口部に向かう冷気の流れBとに分かれる。冷気の流れAとBは、C部においてファンカバー70の壁面に衝突し、分岐した流れを発生する。そして、C部での流れの乱れや、ファンカバー70の壁面近傍での圧力上昇が発生し、風量が減少する。また、騒音要因の増大にもなる。
【0044】
冷蔵庫1では、図10に示すとおり、図7における冷凍室ダンパ50の開閉板104で、開角度が0度、90度以外の状態(本実施形態の冷蔵庫1では、図7中θは60度)では、冷蔵室ダクト11に流れる冷気と、冷凍室ダクト12に流れる冷気に分配される。
【0045】
ファンホールド71に庫内ファン9は設置されるが、ファンホールド71の上方には、図10に示すように、冷気集約ダクト13の上方空間13aを形成する。
【0046】
本実施形態の冷蔵庫1では、図13に示す通り、図6のC部での流れの分岐、及び、乱れを解消するために、ファンカバー70に整流部70aを設定することを特徴とする。
【0047】
整流部70aにより、従来、C部において発生していた圧力上昇は減少し、風量も増加する。
【0048】
図12に、従来の構造(図6)における流体解析による圧力分布の解析結果を示す。図6のC部近傍が、圧力が高い部分となり、ファンカバー70に沿って、冷気集約ダクト13の下端部までが圧力が高めとなっている。これに対し、図13の構造では、図12の圧力に相当する箇所がほとんどなくなっている。これにより、本ダクト構造で数%の風量改善効果があることが解析にて確認できた。
【0049】
また、図14では、整流部70aの最適配置位置について示す。庫内ファン9の上方からファンカバー70へ向かう風の流線とファンンカバー70の側面垂直壁への角度が90°近傍となる位置と、庫内ファン中心部からファンカバー70の側面垂直壁へ垂線を下ろした位置との間が、図6のC部において、もっとも圧力が高くなることが図12の解析結果からも分かっている。よって、この位置に、整流部の三角形の頂点を配置するのが望ましい。
【0050】
また、図15に示す整流部高さlと、整流部三角形裾野のコーナrについては、ファンカバー70と庫内ファンとの距離Lに対して、l=0.5L乃至Lの高さで調節する。整流部高さlは、ある程度大きい方が流れの方向を損失少なく変更することが可能であるが、庫内ファンと整流部が近いと、着霜による風路の閉塞が生じやすくなるため、使用する環境に合わせて0.5Lの寸法まで許容する。
【0051】
さらに、コーナrについては、流れの方向を損失少なく変更するために大きくした方が良いが、整流部の設置スペースが課題となる。そこで、r=1mm以上を設定する。
【0052】
そして、図16に示す庫内ファンと整流部の横断面を上方から見た図において、庫内ファンと整流部の距離をdとすると、d=0〜10mmで、必要に応じて、整流部の整流効果を損なわず、着霜防止用の距離を確保する。
【0053】
なお、図13に該当する斜視図を図11に示す。図13は、ファンカバー前面部をカットし、庫内ファン9と整流部70aの関係を視覚的に表したものである。
【符号の説明】
【0054】
1 冷蔵庫
2 冷蔵室
3 製氷室
4 上段冷凍室
5 下段冷凍室
6 野菜室
7 冷却器
8 冷却器収納室
9 庫内ファン
10 断熱箱体
20 冷蔵室ダンパ
50 冷凍室ダンパ
60 冷凍温度帯室
61 冷蔵温度帯室
70 ファンカバー
70a 整流部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵庫本体に区画形成された冷凍温度帯室及び冷蔵温度帯室と、前記冷凍温度帯室及び前記冷蔵温度帯室を冷却する冷気が熱交換される冷却器と、前記冷却器が設けられる冷却器収納室と、前記冷却器で熱交換された冷気を前記冷凍温度帯室及び前記冷蔵温度帯室に送風する庫内ファンと、該庫内ファンの前方を覆うように設けられ前記冷凍温度帯室又は前記冷蔵温度帯室と連通する開口を有するファンカバーと、該ファンカバーの開口に設けられ送風を制御するダンパと、前記庫内ファンの前方に位置する前記冷凍温度帯室又は前記冷蔵温度帯室に冷気を吹き出す吹き出し口と、前記ファンカバーの前方を覆うように設けられて前記開口から前記吹き出し口に冷気を送風するダクトと、を備えた冷蔵庫において、
正面から見てファンの回転方向に前記ファンカバーで形成したダクトを備え、該ダクト壁面に沿った冷気の旋回流の途中に該冷気の旋回流が上方と下方に分流される三角形状の整流部を備えたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1において、前記整流部の三角形状の頂部は、前記冷気が前記庫内ファンの上方から前記ファンカバーへ向かい前記ファンカバーの側壁へ衝突する位置と、前記庫内ファン中心部から前記ファンカバーの側壁へ垂線を下ろした位置との間に配置したことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項3】
請求項1において、前記整流部は、整流部高さlを前記ファンカバーと前記庫内ファンとの距離Lに対して、l=0.5L乃至L、又は整流部三角形裾野のコーナrを1mm以上としたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項4】
請求項1において、前記庫内ファンと前記整流部端面の奥行き方向の距離dを10mm以下としたことを特徴とする冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−104650(P2013−104650A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251208(P2011−251208)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)