説明

冷陰極放電ランプ、照明装置および画像表示装置

【課題】ランプ電圧を下げつつ、暗黒始動特性を向上させることのできる冷陰極放電ランプを提供することを目的とする。消費電力を削減しつつ、始動特性を向上させることのできる照明装置および画像表示装置を目的とする。
【解決手段】発光管101と、発光管101の内部に設けられた電極102とを有し、電極102の表面に電子放射性物質層103を備える低圧放電ランプ100であって、電子放射性物質層103は、その表面の少なくとも一部に亀裂105を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極放電ランプ、照明装置および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷陰極放電ランプの要部拡大断面図を図13に示す。従来の冷陰極放電ランプ1(以下、「ランプ1」という)は、バルブ2の内部に1つ以上の電極(内部電極)3を設けるとともに、外部にも電極(外部電極)4を備え、これら内部電極3と外部電極4との間で放電させるようにした冷陰極放電ランプ1において、上記内部電極3は、電子放射物質5としてランタニド(ランタノイド)系希土類を備えている(例えば特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開平2−273452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明者らの検討により、冷陰極放電ランプの電極に、ランタノイド系希土類のような電子放射性物質層を備えていれば、電極に電子放射性物質層を備えていないランプに比べて低いランプ電圧によってランプを点灯させることができ、省エネに貢献できる可能性があることがわかった。
【0004】
しかしながら、ランタニド系希土類のような電子放射性物質層を電極に備えるだけでは、ランプ電圧を下げることはできても、暗黒始動特性については、まだまだ不十分である。
【0005】
特に、冷陰極放電ランプは、液晶TV等の画像表示装置のバックライトとして使用されることが多いため、500[ms]以下で点灯しなければならないという厳しい暗黒始動特性が求められる。
【0006】
そこで、本発明に係る冷陰極放電ランプは、ランプ電圧を下げつつ、暗黒始動特性を向上させることを目的とする。
【0007】
また、本発明に係る照明装置および画像表示装置は、消費電力を削減しつつ、始動特性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る冷陰極放電ランプは、発光管と、前記発光管の内部に設けられた電極と、前記電極の表面に設けられた電子放射性物質層とを備える冷陰極放電ランプであって、前記電子放射性物質層は、その表面の少なくとも一部に亀裂を有していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る冷陰極放電ランプは、前記電極は、有底筒状であって、前記電子放射性物質層は、前記電極の内面に設けられていることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る冷陰極放電ランプは、前記電子放射性物質層は、前記電極の内側底面から前記電極の軸方向における長さの1/3以下の領域まで設けられていることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る冷陰極放電ランプは、前記亀裂は、少なくとも前記電子放射性物質層における前記電極の内側底面に対応する部分に形成されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る冷陰極放電ランプは、前記亀裂は、少なくとも前記電子放射性物質層における前記電極の内側側面に対応する部分に形成され、かつ前記電極の内側底面から開口部に向かって伸びることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る冷陰極放電ランプは、前記電子放射性物質層は、希土類元素を含むことが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る冷陰極放電ランプは、前記希土類元素がランタン(La)およびイットリウム(Y)のうちいずれか1種以上であることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る冷陰極放電ランプは、前記電子放射性物質層は、珪素(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、硼素(B)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、リン(P)および錫(Sn)のうちいずれか1種以上を含むことが好ましい。
【0016】
本発明に係る照明装置は、冷陰極放電ランプを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る画像表示装置は、前記照明装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る冷陰極放電ランプは、ランプ電圧を下げつつ、暗黒始動特性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明に係る照明装置および画像表示装置は、消費電力を削減しつつ、始動特性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る冷陰極放電ランプの管軸X100を含む断面図を図1に示す。本発明の第1の実施形態に係る冷陰極放電ランプ100(以下、「ランプ100」という)は、冷陰極蛍光ランプであって、発光管101と、発光管101の内部に設けられた電極102と、電極の表面に設けられた電子放射性物質層103とを有する。
【0021】
発光管101は、ホウ珪酸ガラス製で、直管状のガラスバルブであって、その管軸に対して垂直に切った断面が略円形状である。具体的には、例えば外径が4[mm]、内径が 4[mm]、全長が349[mm]である。以下に示すランプ100の寸法は、外径が4[mm]、内径が3[mm]、全長が349[mm]の発光管101の寸法に対応する値である。なお、冷陰極蛍光ランプである場合には、内径が1.4[mm]〜7.0[mm]、肉厚が0.2[mm]以上0.6[mm]以下の範囲内であって、全長が1500[mm]以下であることが好ましい。これらの値は一例でありこれらに限定されるものではない。
【0022】
発光管101の内部には、例えば3[mg]の水銀が封入され、またアルゴンやネオン等の希ガスが所定の封入圧、例えば40[Torr]で封入されている。なお、上記希ガスとしては、例えばモル比が(Ar=10[%]、Ne=90[%])のアルゴンとネオンとの混合ガスが用いられる。
【0023】
また、発光管101の内面には蛍光体層104が形成されている。また、発光管101の内面と蛍光体層104との間には例えば酸化イットリウム(Y23)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)等の金属酸化物の保護膜(図示せず)を設けてもよい。
【0024】
電極102は、例えば有底筒状であって、内径が2.3[mm]、外径が2.7[mm]、底部の肉厚が0.45[mm]、全長が8.5[mm]であって、ニッケル(Ni)製である。電極の材料は、ニッケルに限らず、ニオビウム(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)およびタングステン(W)等を用いることができる。
【0025】
電極102は、その表面に電子放射性物質層103が形成されている。具体的には、電子放射性物質層103は、電極102の内面に形成されている。電子放射性物質層103は、例えば希土類元素を含む。冷陰極放電ランプにおいて、ランプ電圧を下げるのに効果的なためである。さらに、希土類元素は、ランタン(La)およびイットリウム(Y)のうちいずれか1種以上であることがより好ましい。
【0026】
電極102の内側底面の電子顕微鏡(SEM)写真を図2に示す。図2に示すように、電子放射性物質層103は、その表面の少なくとも一部に亀裂105を有している。なお、図2に示すSEM写真は、電極102を外側底面から開口部に向かって2[mm]の位置で電極の長手方向に対して略垂直に切り、電極の開口部側から電極の内側底面を倍率3000[倍]で撮影したものである。
【0027】
電子放射性物質層103は、電子放射性物質層103の材料となる希土類元素等を溶媒に溶かしたものを電極に塗布し、乾燥させた後に、焼成することにより形成することができる。塗布させた後に、乾燥させることで、焼成後に亀裂の形成された電子放射性物質層103を形成することができる。乾燥は、例えば80〜120[℃]で数分間行う。
【0028】
電極102は、その外側底面の略中央部においてリード線106の一端面と接続されている。
【0029】
リード線106は、例えば、電極102の外側底面と一端面が接続され、側面の一部においてガラスビード107に封着される内部リード線106aと、内部リード線106aの他端面と一端面が接続される外部リード線106bとの継線からなる。
【0030】
内部リード線106aは、線径が0.8[mm]であって、タングステン製である。なお、内部リード線106aは、発光管101やガラスビード107の材料として用いるガラスの熱膨張係数に合わせた材料を用いることが好ましい。例えば、発光管101がコバールガラスの場合、鉄とニッケルとコバルトとの合金(コバール)を用いることが好ましい。また、発光管101が鉛フリーガラスの場合、鉄とニッケルとの合金等を用いることが好ましい。
【0031】
外部リード線106bは、線径が0.6[mm]であって、ニッケル製である。なお、外部リード線の材料は、ニッケルに限らず、例えばニッケルとマンガンの合金、ジュメット線でもよい。
【0032】
ガラスビード107は、略球形状であって、その略中心軸に沿って内部リード線106aを封着しており、ホウ珪酸ガラス製である。なお、ガラスビード107は、封着性の観点から、発光管101と同一の材料、または発光管101と熱膨張係数が同一または近似する材料からなることが好ましい。
【0033】
(実験)
発明者らは、ランプ100が、従来の冷陰極放電ランプに比べてランプの陰極降下電圧を下げつつ、暗黒始動特性を向上させることができることを確認するために2つの実験を行った。具体的には、ランプの陰極降下電圧を測定する実験(実験1)と、暗黒始動時間を測定する実験(実験2)とである。以下、各実験について詳細に説明する。
【0034】
(実験1)
実験には、3種類のランプを用いた。まず、ランプ100と実質的に同一の構成のランプであって、電子放射性物質層にランタン(La)が含まれるものを実施例とした。また、電子放射性物質層の表面に亀裂がない点を除いてはランプ100と実質的に同一のランプを比較例とした。さらに、ランプ電圧がどれだけ低下したかを比較するため、電極の表面に電子放射性物質層を備えていない点を除いて実施例と実質的に同一のランプを参照例とした。なお、実施例、比較例および参照例を3[本]ずつ作製し、実験に用いた。参考のため、比較例の電子放射性物質層のSEM写真を図3に示す。なお、図3に示すSEMは、上述のランプ100の電子放射性物質層と同様の方法により撮影したものである。図3に示すように、比較例の電子放射性物質層108は、その表面に亀裂がない。
【0035】
実験は、まず、実施例、比較例および参照例について3[本]ずつ電流値12[mA]で点灯させたときのランプ電圧を株式会社エヌエフ設計ブロック製の冷陰極放電管用特性試験装置により測定し、それぞれの平均値を求めた。そして、参照例と、実施例および比較例とのランプ電圧の平均値の差を求めた。
【0036】
実験1の結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示すように、実施例も比較例もランプ電圧を下げる効果をほぼ同等に有することがわかる。
【0039】
(実験2)
続いて、発明者らは、実施例と比較例とで暗黒始動時間に違いがあるかどうか確認する実験を行った。
【0040】
実験には、実験1と実質的に同一の構成の実施例および比較例のランプを3[本]ずつ用いた。
【0041】
実験は、実施例および比較例を暗黒条件下で始動点灯させることにより暗黒始動特性を測定した。ランプを始動させるときの条件は、24[h]常温で暗黒放置後、0.1[Lux]下での暗黒状態で点灯させた。そして、ランプに電圧を印加し始めてから、ランプに電流が流れるまでの時間(始動遅れ時間すなわち暗黒始動時間)をオシロスコープにより測定した。実験は、実施例および比較例について3[本]ずつ行い、それぞれの暗黒始動時間の平均値を求めた。
【0042】
実験2の結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
表2に示すように、実施例は、比較例に比べて暗黒始動時間が早いことがわかる。
【0045】
この理由について、電子放射性物質層の構造の点より以下に詳細に説明する。冷陰極放電ランプは、始動時に、その発光管内の希ガスイオンが電極表面に叩きつけられ、エネルギーを受けて電極から電子が放出されることによって、放電が開始される。実施例の電子放射性物質層の断面における概念図を図4(a)に、比較例の電子放射性物質層の断面における概念図を図4(b)にそれぞれ示す。
【0046】
図4(a)に示すように、実施例の場合、ランプの始動時に電子放射性物質層103の表面に達する希ガスイオン109の一部が電子放射性物質層103の亀裂105に入り込む。亀裂105に入り込んだ希ガスイオン109は、亀裂105内で反発を続けることで、反発するたびに電子放射性物質層103にエネルギーを与え、電子110の放出を活発化させることができる。これにより、実施例は、暗黒始動時間を早めることができる。
【0047】
これに対し、図4(b)に示すように、比較例の場合、ランプの始動時に電子放射性物質層108の表面に達する希ガスイオン109は、電子放射性物質層108の表面に叩きつけられるのみであり、実施例のように亀裂内で反発し続けることがないため、電子110の放出を活発化させににくい。これにより、実施例に比べて暗黒始動時間が遅くなってしまうのである。
【0048】
すなわち、実験1および2より、ランプ100が、従来の冷陰極放電ランプに比べてランプの陰極降下電圧を下げつつ、暗黒始動特性を向上させることができることを確認することができた。
【0049】
上記のように、本発明の第1の実施形態に係る冷陰極放電ランプ100に係る構成によれば、ランプの陰極降下電圧を下げつつ、暗黒始動特性を向上させることができる。
【0050】
なお、電子放射性物質層は、前記電極の内側底面から前記電極の軸方向における長さの1/3以下の領域まで存在することが好ましい。この場合、放電時間の経過とともに電子放射性物質層が発光管の壁面や蛍光体層に飛散するのを抑制することができる。さらに、電子放射性物質層は、前記電極の内側底面から前記電極の軸方向における長さの1/4以下の領域まで存在することがより好ましい。
【0051】
さらに、図5に示すように、亀裂105は、少なくとも電子放射性物質層103における電極102の内側側面に対応する部分に形成され、かつ電極102の内側底面から開口部に向かって伸びることが好ましい。この場合、電極が有底筒状の場合、ランプの始動時に希ガスイオンが亀裂に入り込みやすく、さらに暗黒始動特性を向上させることができる。
【0052】
また、亀裂105の幅は、0.1[μm]以上1[μm]以下の範囲内であることが好ましい。この場合、ランプの始動時に希ガスイオンが亀裂に入り込みやすく、電子放射性物質層を脱落しにくくすることができる。さらに好ましくは、0.3[μm]以上0.7[μm]以下の範囲内である。
【0053】
また、亀裂105は、間欠状に形成されていてもよいが、連続して形成されていることがより好ましい。この場合、ランプの始動時に希ガスイオンが亀裂に入り込みやすく、暗黒始動特性をより向上させることができる。
【0054】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る冷陰極放電ランプの管軸を含む断面図を図6に示す。本発明の第2の実施形態に係る放電ランプ200(以下、単に「ランプ200」という)は、内部外部電極型冷陰極蛍光ランプである。
【0055】
ランプ200は、その一端の外面に外部電極201を有し、それに伴う構成を除いては本発明の第1の実施形態に係る冷陰極放電ランプ100と実質的に同じ構成を有している。よって、外部電極201とそれに伴う構成については詳細に説明し、それ以外の点については省略する。
【0056】
外部電極201は、例えば、半田からなり、発光管101の一端の外周面を覆うように形成されている。
【0057】
また、外部電極201は、銀ペーストを発光管101の電極形成部分の全周に塗布することによって形成してもよいし、金属製のキャップを発光管101の端部に被せてもよい。さらに、アルミニウムの金属箔を、シリコーン樹脂に金属粉体を混合した導電性粘着剤(図示せず)によって発光管101の端部全体の外周面を覆うように貼着したものであってもよい。なお、導電性粘着剤において、シリコーン樹脂の代わりにフッ素樹脂、ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂等を用いてもよい。
【0058】
また、図6には図示していないが、発光管101の内面であって、外部電極201が形成された領域に例えば酸化イットリウム(Y23)の保護膜を設けてもよい。保護膜を設けることにより、発光管101のその部分に水銀イオンが衝突することによって起こるガラス削れやピンホールを防止することができる。
【0059】
なお、保護膜は、酸化イットリウムに代えて、例えばシリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、酸化亜鉛(ZnO)、チタニア(TiO2)等の金属酸化物を用いてもよい。特に、保護膜が酸化イットリウムやシリカで形成されている場合には、保護膜に水銀が付着し難く、水銀消費が少ない。
【0060】
もっとも、保護膜は、本発明において必須の構成要素ではなく、全く形成されていなくてもよいし、その一方で、発光管101の内面の全体に亘って形成されていてもよい。
【0061】
上記のように、本発明の第2の実施形態に係る冷陰極放電ランプ200に係る構成によれば、ランプの陰極降下電圧を下げつつ、暗黒始動特性を向上させることができる。
【0062】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る照明装置の管軸を含む断面図を図7に示す。本発明の第6の実施形態に係る照明装置300(以下、単に「照明装置300」という)は直下方式のバックライトユニットであり、一つの面が開口した直方体状の筐体301と、この筐体301の内部に収納された複数のランプ100と、ランプ100を点灯回路(図示せず)に電気的に接続するための一対のソケット302と、筐体301の開口部を覆う光学シート類303とを備えている。なお、ランプ100は、本発明の第1の実施形態に係る放電ランプ100である。
【0063】
筐体301は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製であって、その内面に銀などの金属が蒸着されて反射面304が形成されている。なお、筐体301の材料としては、樹脂以外の材料、例えば、アルミニウムや冷間圧延材(例えばSPCC)等の金属材料により構成してもよい。また、内面の反射面304として金属蒸着膜以外、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂に炭酸カルシウム、二酸化チタン等を添加することにより反射率を高めた反射シートを筐体301に貼付したものを用いてもよい。
【0064】
筐体301の内部には、ソケット302、絶縁体305およびカバー306が配置されている。具体的に、ソケット302は、ランプ100の配置に対応して筐体301の短手方向(縦方向)に各々所定間隔を空けて設けられている。ソケット302は、例えばステンレスやりん青銅からなる板材を加工したものであって、リード線106が嵌め込まれる嵌込部302aを有している。そして、リード線106を嵌込部302aを押し拡げるように弾性変形させて嵌め込む。その結果、嵌込部302aに嵌め込まれたリード線103は、嵌込部302aの復元力によって押圧され、外れにくくなる。これにより、リード線106を嵌込部302aへ容易に嵌め込むことができつつ、外れにくくすることができる。
【0065】
ソケット302は、互いに隣り合うソケット302同士で短絡しないように絶縁体305で覆われている。絶縁体305は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂で構成されている。なお、絶縁体305は、上記の構成に限定されない。ソケット302はランプ100の動作中に比較的高温となる内部電極の近傍にあることから絶縁体305は耐熱性のある材料で構成することが好ましい。耐熱性のある絶縁体305の材料としては、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂やシリコンゴム等を適用することができる。
【0066】
筐体301の内部には、必要に応じた場所にランプホルダ307を設けてもよい。筐体301内側でのランプ100の位置を固定するランプホルダ307は、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂であり、ランプ100の外面形状に沿うような形状を有している。「必要に応じた場所」とは、ランプ100の長手方向の中央部付近のように、ランプ100が例えば全長600[mm]を越えるような長尺のものである場合に、ランプ100のたわみを解消するために必要な場所である。
【0067】
カバー306は、ソケット302と筐体301の内側の空間とを仕切るものであり、例えばポリカーボネート(PC)樹脂で構成し、ソケット302の周辺を保温するとともに、少なくとも筐体301側の表面を高反射性とすることにより、ランプ100の端部の輝度低下を軽減することができる。
【0068】
筐体301の開口部は、透光性の光学シート類303で覆われており、内部にちりや埃などの異物が入り込まないように密閉されている。光学シート類303は、拡散板308、拡散シート309およびレンズシート310を積層してなる。
【0069】
拡散板308は、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂製の板状体であって、筐体301の開口部を塞ぐように配置されている。拡散シート309は、例えばポリエステル樹脂製である。レンズシート310は、例えばアクリル系樹脂とポリエステル樹脂の貼り合せである。これらの光学シート類303は、それぞれ拡散板308に順次重ね合わせるようにして配置されている。
【0070】
上記のとおり、本発明の第3の実施形態に係る照明装置300の構成によれば、消費電力を削減しつつ、始動特性を向上させることができる。
【0071】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る照明装置の一部切欠斜視図を図8に示す。本発明の第4の実施形態に係る照明装置400(以下、「照明装置400」という)は、エッジライト方式のバックライトユニットで、反射板401、ランプ100、ソケット(図示せず)、導光板402、拡散シート403およびプリズムシート404から構成されている。
【0072】
反射板401は、液晶パネル側(矢印Q)を除く導光板402の周囲を囲むように配置されており、底面を覆う底面部401bと、ランプ100の配置されている側を除く側面を覆う側面部401aと、ランプ100の周囲を覆う曲面状のランプ側面部401cとで構成されており、ランプ100から照射される光を導光板402から液晶パネル(図示せず)側(矢印Q)に反射させる。また、反射板401は、例えばフィルム状のPETに銀を蒸着したものやアルミ等の金属箔を積層したもの等からなる。
【0073】
ソケットは、本発明の第3の実施形態に係る照明装置300に用いられる接続端子と実質的に同じ構成を有している。なお、図8において、図示の便宜上により、ランプ100の端部については省略している。
【0074】
導光板402は、反射板により反射された光を液晶パネル側に導くためのものであって、例えば透光性プラスチックからなり、照明装置400の底面に設けられた反射板401の上に積重されている。なお、材料としては、ポリカーボネート(PC)樹脂やシクロオレフィン系樹脂(COP)を適用することができる。
【0075】
拡散シート403は、視野拡大のためのものであって、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂やポリエステル樹脂製の拡散透過機能を有するフィルムからなり、導光板402の上に積重されている。
【0076】
プリズムシート404は、輝度を向上させるためのものであって、例えばアクリル系樹脂とポリエステル樹脂とを貼り合せたシートからなり、拡散シート403の上に積層されている。なお、プリズムシート404の上にさらに拡散板(図示せず)が積層されていてもよい。
【0077】
なお、本実施形態の場合には、ランプ100の周方向における一部分(照明装置400に挿入した場合における導光板402側)を除き、発光管101の外面に反射シート(図示せず)を設けたアパーチャ型のランプであってもよい。
【0078】
上記のとおり、本発明の第4の実施形態に係る照明装置400の構成によれば、消費電力を削減しつつ、始動特性を向上させることができる。
【0079】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る画像表示装置の概要を図9に示す。図9に示すように画像表示装置500は、例えば32[inch]液晶テレビ(液晶表示装置)であり、液晶パネル等を含む液晶画面ユニット501と本発明の第3の実施形態に係る照明装置300と点灯回路502とを備える。
【0080】
液晶画面ユニット501は、公知のものであって、液晶パネル(カラーフィルター基板、液晶、TFT基板等)(図示せず)、駆動モジュール等(図示せず)を備え、外部からの画像信号に基づいてカラー画像を形成する。
【0081】
点灯回路502は、照明装置300内部のランプ100を点灯させる。そして、ランプ100は、点灯周波数40[kHz]〜100[kHz]、ランプ電流3.0[mA]〜25[mA]で動作される。
【0082】
なお、図9では、画像表示装置500の光源装置として本発明の第3の実施形態に係る照明装置300に第1の実施形態に係る放電ランプ100を挿入した場合について説明したが、これに限らず、本発明の第2の実施形態に係る冷陰極放電ランプ200を適用することもできる。また、照明装置についても、本発明の第4の実施形態に係る照明装置400も用いることができる。
【0083】
上記のとおり、本発明の第5の実施形態に係る画像表示装置500の構成によれば、消費電力を削減しつつ、始動特性を向上させることができる。
【0084】
(変形例)
以上、本発明を上記した各実施形態に示した具体例に基づいて説明したが、本発明の内容が各実施形態に示した具体例に限定されないことは勿論であり、例えば、以下のような変形例を用いることができる。
【0085】
1.冷陰極放電ランプの変形例
(1)変形例1
本発明の第1の実施形態に係る冷陰極放電ランプの変形例1の正面図を図10(a)に、その管軸を含む要部拡大断面図を図10(b)にそれぞれ示す。本発明の第1の実施形態に係る冷陰極放電ランプ111(以下、「ランプ111」という)は、口金112を備える点を除いては、ランプ100と実質的に同一の構成を有する。よって、以下、電極について詳細に説明する。
【0086】
口金112は、リード線106と電気的かつ機械的に接続されている。具体的には、口金は、発光管101の端部を覆う胴体部112aと、胴体部112aの一端より延出し、リード線106と電気的かつ機械的に接続される延出部112bとで構成されている。このようなランプ111は、照明装置に組み込む際、口金112をヒューズソケット(図示せず)等に挿入するだけで電気的かつ機械的に接続できる。
【0087】
胴体部112aの側面には、発光管101を保持するための保持部112cが設けられている。保持部112cは、例えば、胴体部112aの側面の一部を切り抜き、発光管101側に折り曲げて形成されている。また、保持部112cの先端部112dは、発光管101を傷付けないように発光管101とは反対側に折り曲げられている。なお、保持部112cは、胴体部112aの周方向に略等間隔に3[箇所]以上設けられていることが好ましい。この場合、発光管101をより安定して保持できるためである。さらに、保持部112cと発光管101との接触部は、電極102の対向部にあることが好ましい。この場合、電極102付近で発生する熱の放熱を、保持部112cを介して促進させることができ、電子放射性物質層103が発光管101の内面や蛍光体層104に飛散するのを防止することができる。
【0088】
(2)変形例2
本発明の第1の実施形態に係る冷陰極放電ランプの変形例2の要部拡大断面図を図11(a)に示す。本発明の第1の実施形態に係る冷陰極放電ランプ113(以下、「ランプ113」という)は、電極114の構造が異なる点を除いては、ランプ100と実質的に同一の構成を有する。よって、以下、電極114について詳細に説明する。
【0089】
電極114は、有底筒状であって、その開口部側の端部114aが径方向の外側に広がっている。この場合、電極114の外側側面と発光管101の内面との間の隙間を小さくすることができ、放電が電極114の外側側面に回り込んで、電極114の外側側面がスパッタされるのを防止することができる。
【0090】
電子放射性物質層103は、少なくとも電極114の径方向の外側に広がっている開口部側の端部114aを除いて電極114の内面に形成されている。これにより、電子放射性物質層103が発光管101の内面や蛍光体層104に飛散するのを防止することができる。
【0091】
(3)変形例3
本発明の第1の実施形態に係る冷陰極放電ランプの変形例3の要部拡大断面図を図11(b)に示す。本発明の第1の実施形態に係る冷陰極放電ランプ115(以下、「ランプ115」という)は、電極116の構造が異なる点を除いては、ランプ100と実質的に同一の構成を有する。よって、以下、電極116について詳細に説明する。
【0092】
電極116は、有底筒状であって、その開口部側の端部116aが径方向の内側に狭まっている。そして、電子放射性物質層103は、少なくとも電極116の径方向の内側に狭まっている開口部側の端部116aを除いて電極116の内面に形成されている。これにより、電極116の端部116aによって、電子放射性物質層103がスパッタされるのを抑制し、かつ電子放射性物質層103がスパッタされたとしても、飛散した電子放射性物質層103が電極116の端部116aに遮られることによって、発光管101の内面や蛍光体層104に飛散するのを防止することができる。
【0093】
(4)変形例4
本発明の第1の実施形態に係る冷陰極放電ランプの変形例4の要部拡大断面図を図12(a)に示す。本発明の第1の実施形態に係る冷陰極放電ランプ117(以下、「ランプ117」という)は、電子放射性物質層118の構造が異なる点を除いては、ランプ100と実質的に同一の構成を有する。よって、以下、電子放射性物質層118について詳細に説明する。
【0094】
電子放射性物質層118は、電極102の内側底面に形成されている。これにより、電子放射性物質層118がスパッタされたとしても、電極102の内側側面に飛散されることで、発光管101の内面や蛍光体層104に飛散するのを防止することができる。
【0095】
(5)変形例5
本発明の第1の実施形態に係る冷陰極放電ランプの変形例5の要部拡大断面図を図12(b)に示す。本発明の第1の実施形態に係る冷陰極放電ランプ119(以下、「ランプ119」という)は、電子放射性物質層120の構造が異なる点を除いては、ランプ100と実質的に同一の構成を有する。よって、以下、電子放射性物質層120について詳細に説明する。
【0096】
電子放射性物質層120は、電極102の内面に形成され、電極102の内側底面から開口部に向かうにしたがって厚みが薄くなっている。この場合、電極102の開口部付近の電子放射性物質層120がスパッタされても、電極102の内側底部付近からスパッタされた電子放射性物質層120が補充されるため、ランプ電圧を低下させる効果を持続させることができる。
【0097】
(6)その他の変形例
なお、電子放射性物質層120に、セシウム(Cs)化合物が含まれていてもよい。この場合、ランプの暗黒始動特性をさらに向上させることができる。また、電子放射性物質層とは、別に電極の内面や外面にセシウム化合物を付着させてもよい。
【0098】
なお、セシウム化合物は、例えば、硫酸セシウム、アルミン酸セシウム、ニオブ酸セシウム、タングステン酸セシウム、モリブデン酸セシウムおよび塩化セシウムのうちいずれか1種以上を用いることが好ましい。
【0099】
2.発光管について
(1)紫外線吸収について
発光管の材料であるガラスに遷移金属の酸化物をその種類によって所定量をドープすることにより254[nm]や313[nm]の紫外線を吸収することができる。具体的には、例えば酸化チタン(TiO2)の場合は、組成比率0.05[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収し、組成比率2[mol%]以上ドープすることにより313[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化チタンを組成比率5.0[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが失透してしまうため、組成比率0.05[mol%]以上5.0[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。
【0100】
また、酸化セリウム(CeO2)の場合は、組成比率0.05[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化セリウムを組成比率0.5[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが着色してしまうため、酸化セリウムを組成比率0.05[mol%]以上0.5[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。なお、酸化セリウムに加えて酸化スズ(SnO)をドープすることにより、酸化セリウムによるガラスの着色を抑えることができるため、酸化セリウムを組成比率5.0[mol%]以下までドープすることができる。この場合、酸化セリウムを組成比率0.5[mol%]以上ドープすれば313[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、この場合においても酸化セリウムを組成比率が5.0[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが失透してしまう。
【0101】
また、酸化亜鉛(ZnO)の場合は、組成比率2.0[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化亜鉛を組成比率20[mol%]より多くドープした場合、ガラスが失透してしまうおそれがあるため、酸化亜鉛を2.0[mol%]以上20[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。
【0102】
また、酸化鉄(Fe23)の場合は、組成比率0.01[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化鉄を組成比率2.0[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが着色してしまうため、酸化鉄を組成比率0.01[mol%]以上2.0[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。
【0103】
(2)赤外線透過係数について
ガラス中の水分含有量を示す赤外線透過率係数は、0.3以上1.2以下の範囲、特に0.4以上0.8以下の範囲となるように調整することが好ましい。赤外線透過率係数が1.2以下であれば、外部電極放電ランプ(EEFL)や長尺の冷陰極放電ランプ等の高電圧印加ランプに適用可能な低い誘電正接を得やすくなり、0.8以下であれば誘電正接が十分に小さくなって、さらに高電圧印加ランプに適用可能となる。
【0104】
なお、赤外線透過率係数(X)は下式で表すことができる。
【0105】
[数1]X=(log(a/b))/t
a:3840[cm-1]付近の極小点の透過率[%]
b:3560[cm-1]付近の極小点の透過率[%]
t:ガラスの厚み
(3)発光管の形状について
発光管の形状は、直管形状のものに限られず、例えばL字形状、U字形状、コの字形状、渦巻き形状等であってもよい。また、その管軸に対して垂直に切った断面は、略円形状のものに限られず、例えばトラック形状や角丸形状のような扁平形状や楕円形状等であってもよい。
【0106】
3.蛍光体層の蛍光体について
(1)紫外線吸収について
例えば、近年、液晶カラーテレビの大型化に伴って、バックライトユニットの開口を塞ぐ拡散板に寸法安定性の良いポリカーボネートが使用されるようになっている。このポリカーボネートは、水銀が発する313[nm]の波長の紫外線により劣化しやすい。このような場合には、波長313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体を利用すると良い。なお、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体としては、以下のものがある。
【0107】
(a)青色
・ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[Ba1-x-ySrxEuyMg1-zMnzAl1017]又は[Ba1-x-ySrxEuyMg2-zMnzAl1627
ここで、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.4、 0.07≦y≦0.25、 0≦z<0.1なる条件を満たす数であることが好ましい。
【0108】
このような蛍光体としては、例えば、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al1627:Eu2+]、[BaMgAl1017:Eu2+] (略号:BAM−B)や、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[(Ba,Sr)Mg2Al1627:Eu2+]、[(Ba,Sr)MgAl1017:Eu2+](略号:SBAM−B)等がある。
【0109】
(b)緑色
・マンガン不活マグネシウムガレート[MgGa24:Mn2+](略号:MGM)
・マンガン付活アルミン酸セリウム・マグネシウム・亜鉛[Ce(Mg,Zn)Al1119:Mn2+](略号:CMZ)
・テルビウム付活アルミン酸セリウム・マグネシウム[CeMgAl1119:Tb3+](略号:CAT)
・ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[Ba1-x-ySrxEuyMg1-zMnzAl1017]又は[Ba1-x-ySrxEuyMg2-zMnzAl1627
ここで、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.4、 0.07≦y≦0.25、 0.1≦z≦0.6なる条件を満たす数であり、zは0.4≦x≦0.5であることが好ましい。
【0110】
このような蛍光体としては、例えば、ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al1627:Eu2+,Mn2+]、[BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+](略号:BAM−G)や、ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[(Ba,Sr)Mg2Al1627:Eu2+,Mn2+]、[(Ba,Sr)MgAl1017:Eu2+,Mn2+](略号:SBAM−G)等がある。
【0111】
(c)赤色
・ユーロピウム付活リン・バナジン酸イットリウム[Y(P,V)O4:Eu3+](略号:YPV)
・ユーロピウム付活バナジン酸イットリウム[YVO4:Eu3+](略号:YVO)
・ユーロピウム付活イットリウムオキシサルファイド[Y22S:Eu3+](略号:YOS)
・マンガン付活フッ化ゲルマン酸マグネシウム[3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn4+](略号:MFG)
・ジスプロシウム付活バナジン酸イットリウム[YVO4:Dy3+](赤と緑の2成分発光蛍光体であり、略号:YDS)
なお、一種類の発光色に対して、異なる化合物の蛍光体を混合して用いても良い。例えば、青色にBAM−B(313[nm]を吸収する。)のみ、緑色にLAP(313[nm]を吸収しない。)とBAM−G(313[nm]を吸収する。)、赤色にYOX(313nmを吸収しない。)とYVO(313[nm]を吸収する。)の蛍光体を用いても良い。このような場合は、前述のように波長313[nm]を吸収する蛍光体が、総重量組成比率で50%より大きくなるように調整することで、紫外線がガラスバルブ外に漏れ出ることをほとんど防止できる。したがって、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体を蛍光体層105に含む場合には、上記のバックライトユニットの開口を塞ぐポリカーボネート(PC)からなる拡散板等の紫外線による劣化が抑制され、バックライトユニットとしての特性を長時間維持することができる。
【0112】
ここで、「313[nm]の紫外線を吸収する」とは、254[nm]付近の励起波長スペクトル(励起波長スペクトルとは、蛍光体を波長変化させながら励起発光させ、励起波長と発光強度をプロットしたものである。)の強度を100[%]としたときに、313[nm]の励起波長スペクトルの強度が80[%]以上のものと定義する。すなわち、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体とは、313[nm]の紫外線を吸収して可視光に変換できる蛍光体である。
【0113】
(2)高色再現について
液晶カラーテレビで代表される液晶表示装置では、近年における高画質化の一環としてなされる高色再現化に伴い、当該液晶表示装置のバックライトユニットの光源として用いられる冷陰極放電ランプにおいて、再現可能な色度範囲の拡大化の要請がある。
【0114】
このような要請に対して、例えば、以下の蛍光体を用いることで、実施の形態での蛍光体を用いる場合よりも、色度範囲の拡大を図ることができる。具体的には、CIE1931色度図において、高色再現用の当該蛍光体の色度座標値が、実施の形態で使用した3つの蛍光体の色度座標値を結んでできる三角形を含んで色再現範囲を広げる座標に位置する。
【0115】
(a)青色
・ユーロピウム付活ストロンチウム・クロロアパタイト[Sr10(PO46Cl2:Eu2+](略号:SCA)、色度座標:x=0.151、y=0.065
上記以外に、ユーロピウム付活ストロンチウム・カルシウム・バリウム・クロロアパタイト[(Sr,Ca,Ba)10(PO46Cl2:Eu2+](略号:SBCA)も使用でき、上記波長313(nm)の紫外線も吸収できるSBAM−Bも高色再現用に使用できる。
【0116】
(b)緑色
・BAM−G、色度座標:x=0.139、y=0.574
・CMZ、色度座標:x=0.164、y=0.722
・CAT、色度座標:x=0.267、y=0.663
なお、これらは上述したように、波長313[nm]の紫外線も吸収でき、また、ここで説明した3つの蛍光体粒子以外にも、MGMも高色再現用に使用することもできる。
【0117】
(c)赤色
・YOS、色度座標:x=0.651、y=0.344
・YPV、色度座標:x=0.658、y=0.333
・MFG、色度座標:x=0.711、y=0.287
なお、これらは上述したように、波長313[nm]の紫外線も吸収でき、また、ここで説明した3つの蛍光体粒子以外にも、YVO、YDSも高色再現用に使用することもできる。
【0118】
また、上記で示した色度座標値は各々の蛍光体の粉体のみで測定した代表値であり、測定方法(測定原理)等に起因して、各蛍光体の粉体が示す色度座標値は、上掲した値と若干異なる場合があり得る。参考として上記実施の形態1の各蛍光体の粉体の色度座標値は、YOX(x=0.644、y=0.353)、LAP(x=0.351、y=0.585)、BAM−B(x=0.148、y=0,056)で構成されている。
【0119】
さらに、赤、緑、青の各色を発光させるために用いる蛍光体は各波長につき1種類に限らず、複数種類を組み合わせて用いることとしても良い。
【0120】
ここで、上記の高色再現用の蛍光体粒子を用いて蛍光体層を形成した場合について説明する。ここでの評価は、CIE1931色度図内においてNTSC規格の3原色の色度座標値を結ぶNTSC三角形(NTSCtriangle)の面積を基準とした、高色再現用の蛍光体を用いた場合の3つの色度座標値を結んでできる三角形の面積の比(以下、NTSC比という。)で行なう。
【0121】
例えば、青色としてBAM−B、緑色としてBAM−G、赤色としてYVOを用いると(例1)NTSC比が92[%]となり、また、青色としてSCA、緑色としてBAM−G、赤色としてYVOを用いると(例2)NTSC比が100[%]となり、また、青色としてSCA、緑色としてBAM−G、赤色としてYOXを用いると(例3)、NTSC比が95[%]となり、例1及び2に比べて輝度を10[%]向上させることができる。
【0122】
なお、ここでの評価に用いた色度座標値は、ランプ等が組み込まれた液晶表示装置とした状態で測定したものである為、カラーフィルターとの組み合わせにより色再現範囲が上記値より前後する可能性がある。
【0123】
4.放電ランプの種類について
上記の各実施形態においては、冷陰極放電ランプとして、冷陰極蛍光ランプを中心に説明したが、これに限られず、発光管の内面に蛍光体層の形成されていない紫外線ランプであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、冷陰極放電ランプ、照明装置および画像表示装置に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る冷陰極放電ランプの管軸を含む断面図
【図2】同じく冷陰極放電ランプの電子放射性物質層のSEM写真
【図3】比較例の電子放射性物質層のSEM写真
【図4】(a)実施例の電子放射性物質層の断面における概念図、(b)比較例の電子放射性物質層の断面における概念図
【図5】本発明の第1の実施形態に係る冷陰極放電ランプの電子放射性物質層の変形例の要部拡大断面図
【図6】本発明の第2の実施形態に係る冷陰極放電ランプの管軸を含む断面図
【図7】本発明の第3の実施形態に係る照明装置の分解斜視図
【図8】本発明の第4の実施形態に係る照明装置の一部切欠き斜視図
【図9】本発明の第5の実施形態に係る画像表示装置の斜視図
【図10】(a)本発明の第1の実施形態に係る冷陰極放電ランプの変形例1の正面図、(b)同じく変形例1の管軸を含む要部拡大断面図
【図11】(a)同じく変形例2の管軸を含む要部拡大断面図、(b)同じく変形例3の管軸を含む要部拡大断面図
【図12】(a)同じく変形例4の管軸を含む要部拡大断面図、(b)同じく変形例5の管軸を含む要部拡大断面図
【図13】従来の冷陰極放電ランプの管軸を含む要部拡大断面図
【符号の説明】
【0126】
100、111、113、115、117、119、200 冷陰極放電ランプ
101 発光管
102、114、116 電極
103、118、120 電子放射性物質層
104 蛍光体層
105 亀裂
300、400 照明装置
500 画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管と、前記発光管の内部に設けられた電極と、前記電極の表面に設けられた電子放射性物質層とを備える低圧放電ランプであって、
前記電子放射性物質層は、その表面の少なくとも一部に亀裂を有していることを特徴とする冷陰極放電ランプ。
【請求項2】
前記電極は、有底筒状であって、
前記電子放射性物質層は、前記電極の内面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の冷陰極放電ランプ。
【請求項3】
前記電子放射性物質層は、前記電極の内側底面から前記電極の軸方向における長さの1/3以下の領域まで設けられていることを特徴とする請求項2に記載の冷陰極放電ランプ。
【請求項4】
前記亀裂は、少なくとも前記電子放射性物質層における前記電極の内側底面に対応する部分に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の冷陰極放電ランプ。
【請求項5】
前記亀裂は、少なくとも前記電子放射性物質層における前記電極の内側側面に対応する部分に形成され、かつ前記電極の内側底面から開口部に向かって伸びることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の冷陰極放電ランプ。
【請求項6】
前記電子放射性物質層は、希土類元素を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の冷陰極放電ランプ。
【請求項7】
前記希土類元素がランタン(La)およびイットリウム(Y)のうちいずれか1種以上であることを特徴とする請求項6に記載の冷陰極放電ランプ。
【請求項8】
前記電子放射性物質層は、珪素(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、硼素(B)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、リン(P)および錫(Sn)のうちいずれか1種以上を含むことを特徴とする請求項6または7に記載の冷陰極放電ランプ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の冷陰極放電ランプを備えることを特徴とする照明装置。
【請求項10】
請求項9に記載の照明装置を備えることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−92798(P2010−92798A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263824(P2008−263824)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】