冷陰極放電ランプおよびその製造方法
【課題】 製造が容易で、かつコストが安い冷陰極放電ランプおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の冷陰極放電ランプは、内部に放電空間11が形成されたガラスバルブ1と、放電空間11に封入された放電媒体と、ガラスバルブ1の内部に設けられた電極31とを具備しており、電極31は、底部部材を構成するT字部材311と金属板を丸めることにより形成された側部部材312とで構成され、その一部分が互いに重畳されたカップ状を呈しており、重畳部分がレーザー溶接されて溶融層313が形成されてなることを特徴とする。
【解決手段】 本発明の冷陰極放電ランプは、内部に放電空間11が形成されたガラスバルブ1と、放電空間11に封入された放電媒体と、ガラスバルブ1の内部に設けられた電極31とを具備しており、電極31は、底部部材を構成するT字部材311と金属板を丸めることにより形成された側部部材312とで構成され、その一部分が互いに重畳されたカップ状を呈しており、重畳部分がレーザー溶接されて溶融層313が形成されてなることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶テレビやノートパソコンのバックライトの光源などに用いられる冷陰極放電ランプおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、バックライトに用いられる光源は、冷陰極放電ランプが主流である。冷陰極放電ランプは、例えば、特許文献1に記載のように、ガラスバルブの内部に希ガスや水銀などの放電媒体が封入され、その内端部に一対の電極が配置されてなる。
【0003】
ここで、電極には一体形成されたカップ状の電極が一般的に用いられている。このカップ状の電極は、従来、深絞り加工や焼結などにより一体形成されていたが、このような形成方法は、加工が困難、コストが高いなどの問題があった。そこで、特許文献2〜6のようにカップ電極の底面部分と側面部分とを別に製造したのち、組み立ててなる電極が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−151496号公報
【特許文献2】特開2008−147129号公報
【特許文献3】特開2005−158539号公報
【特許文献4】特開2002−260579号公報
【特許文献5】特開2005−327485号公報
【特許文献6】特開2007−48527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2〜6のような電極でも、加工が困難、コストが高いなどの問題に対する決定的な解決手段にはならない。
【0006】
本発明の目的は、製造が容易で、かつコストが安い冷陰極放電ランプおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の冷陰極放電ランプは、内部に放電空間が形成されたガラスバルブと、前記放電空間に封入された放電媒体と、前記ガラスバルブの内部に設けられた電極とを具備する冷陰極放電ランプにおいて、前記電極は、底部部材と金属板を丸めることにより形成された側部部材とで構成され、その一部分が互いに重畳されたカップ状を呈しており、前記重畳部分が接合されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製造が容易で、かつコストが安い冷陰極放電ランプおよびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態の冷陰極放電ランプについて図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図である。
【0010】
冷陰極放電ランプの容器は、例えば、硼珪酸ガラスなどの硬質ガラスからなるガラスバルブ1で構成されている。ガラスバルブ1は両端部が密閉された細長い筒型の形状であり、その内部には放電空間11が形成されている。放電空間11には、水銀および希ガスからなる放電媒体が封入されている。ここで、希ガスとしてはネオンとアルゴンの混合ガスが適している。ガラスバルブ1の内面には、少なくともランプの光放出領域を覆う範囲にRGBの3波長蛍光体からなる蛍光体層2が形成されている。
【0011】
ガラスバルブ1の両端には、電極マウント3が封着されている。この電極マウント3は、電極31、アウターリード32およびガラスビーズ33とで構成されている。
【0012】
電極31は、本実施の形態ではカップとインナーリードとが一体形成されてなり、カップの開口がランプ中央側になるようにガラスバルブ1の端部に対向配置されている。
【0013】
アウターリード32は、一端が電極31の底面と接続されている。このアウターリード32には、ジュメット線(銅で被覆されたニッケル線)など、導電性に優れた金属を用いるのが望ましい。
【0014】
ビーズガラス33は、電極31の軸部材に形成され、ガラスバルブ1に気密封着されている。ビーズガラス33としては、ガラスバルブ1と同じガラス材料を用いるのが最適である。
【0015】
ここで、電極31の詳しい構造について、図2を参照して説明する。図2(a)は、図1の一点鎖線X部分の拡大図、(b)は径方向の断面図である。
【0016】
図からわかるように、電極31はT字部材311と側部部材312からなる。T字部材311は、T字形状をしており、カップの底を形成する底部部材3111と、ガラスバルブ1に封着されるとともに、アウターリード32と接続される軸部材3112とが一体的に構成されてなる。このような形状は、ヘッダー加工や焼結加工により形成することができる。この底部部材3111の側面の長さL1は、放電面積を広く確保しつつ、溶接時などに側部部材312が傾いて接続されるのを防止するため、側部部材312の長さL2に対して、0.5≧L1/L2≧0.005を満たしているのが好ましい。側部部材312は、厚みTが0.05mm〜0.5mm程度の金属板を丸める(ロールする)ことで形成した円筒状の筒であり、本実施の形態では端部の同士が一部重なっている。なお、底部部材3111、側部部材312ともに、モリブデン、タングステン、レニウムなどの仕事関数が低い高融点の材料を用いるのが望ましい。
【0017】
ここで、底部部材3111と側部部材312の重畳部分には、溶融層313が形成されている。溶融層313は、底部部材3111と側部部材312の両金属が溶融合金化した層であり、両者を接続する重要な部分である。この溶融層313は、後述するレーザー溶接の工程により形成されたレーザー痕である。この実施の形態では、周回りに等間隔で3つ形成されており、その深さDは底部部材3111と側部部材312を跨る深さ、すなわち側部部材312の厚みTよりも深く形成されている。なお、接続を強固に維持するためには、底部部材3111の溶融層313の深さD1を0.1mm以上とするのがよい。また、底部部材3111と側部部材312とを密着させて隙間が生じるのを防止するため、両者を圧接するのが望ましい。
【0018】
次に、電極31の製造方法について、図3を参照して説明する。
【0019】
まず、(a)のように、金属板を端部同士が一部重なるように重ね巻きして側部部材312を形成し、T字部材311を側部部材312の開口側から挿入して、底部部材3111と側部部材312の一部分を重畳させる。このとき、側部部材312の内径R’を、底部部材3111の直径Rよりも小さく形成することで、側部部材312は内径を広げられながら底部部材3111に接触することになるため、T字部材311の底部部材の側面に側部部材312が縮径しようとする力が残留して圧接した形となり、仮接続できるとともに、部材間に隙間が生じにくくすることができる。
【0020】
そして、(b)のように、底部部材3111と側部部材312の重畳部分を、レーザー照射装置314を用いてレーザー溶接して、(c)のように溶融層313を形成する。このとき、レーザーのスポット径、出力、焦点などを調節することで、溶融層313の幅W、深さD、形状を調整することが可能である。また、底部部材3111と側部部材312の重畳部分、かつ側部部材312の重なり部分にレーザー溶接すると、T字部材311と側部部材312の固定かつ側部部材312の開き防止を行うことができる。その後、この重畳部分の周回りに、2〜5回程度レーザー溶接して溶融層313を複数形成することで、T字部材311と側部部材312とが強固に接続された電極31を形成することができる。
【0021】
下記に本実施の形態の冷陰極放電ランプの一実施例を示す。
【0022】
(実施例)
ガラスバルブ1;硼珪酸ガラス製、全長=730mm、外径=4.0mm、内径=3.0mm、
放電媒体;水銀、ネオン90%とアルゴン10%の混合ガス=40torr、
蛍光体層2;RGB蛍光体で構成、
T字部材311;モリブデン製、底部部材の厚みL1=1.0mm、直径R=2.7mm、軸部材の直径=0.8mm、
側部部材312;モリブデン製、厚みT=0.1mm、長さL2=10mm、
溶融層313;幅W=0.5mm、深さD=0.2mm(うちD1=0.1mm)、
アウターリード32;ジュメット製。
【0023】
この実施例のランプについて、点灯試験を行ったところ、T字部材311と側部部材312の接続が外れて脱落するなどの不具合なく、長寿命なランプを実現できることが確認された。
【0024】
したがって、本実施の形態では、底部部材3111を構成するT字部材311と金属板を丸めることにより形成された側部部材312とで構成され、その一部分が互いに重畳されたカップ状を呈しており、重畳部分がレーザー溶接により接合され、溶融層313が形成されてなる電極31により、接続が強固で、かつ製造容易でコストが安い冷陰極放電ランプを提供することができる。
【0025】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図である。これ以降の実施の形態の各部については、第1の実施の形態の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0026】
第2の実施の形態では、底部部材3111の周端に突出部315が形成されており、その突出部315の内周面に接触するように側部部材312が配置され、突出部315から側部部材312方向に溶融層313が形成されている。第2の実施の形態でも第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、この実施の形態では、側部部材312を底部部材3111に配置する際に、側部部材312の内径を突出部315の内径よりも大きく形成しておき、側部部材312を縮径させながら突出部315の内周面に接触させることで、突出部315に弾性力を作用させるのが望ましい。
【0027】
(第3の実施の形態)
図5は、本発明の第3の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図である。
【0028】
第3の実施の形態では、底部部材3111の周端に突出部315が形成されており、底部部材3111全体の側面に側部部材312が設けられている。この突出部315を形成することにより、側部部材312の傾きを抑制しつつ、管電圧が低い冷陰極放電ランプを提供することができる。なお、この実施の形態では、図6のように突出部315をランプの端部側に突出させてもよい。
【0029】
以上、本発明の実施の形態をいくつか説明したが、本発明は上記に限られるわけではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0030】
T字部材311は、底部部材3111と軸部材3112が一体型である必要はなく、底部部材と軸部材の2パーツまたはそれ以上のパーツを組み合わせて構成されていてもよい。
【0031】
また、図7のように、底部部材3111は、半球状の凹みを有する形状であってもよい。この形状では、放電する面に放電集中しやすい角がないため、局所的な消耗の発生を抑制しつつ、第3の実施の形態と同様に側部部材312の傾きを抑制することができる。
【0032】
側部部材312は、実施の形態のように一部同士が重なる重ね巻きの形状である場合には、側部部材312の重なり部分付近の底部部材3111との間に隙間が生じやすくなる。そこで、図8のように、側部部材312の重なり部分付近に、溶融部313を形成して隙間を小さくするのが望ましい。
【0033】
なお、側部部材312の外周面とガラスバルブ1の内周面との距離は、放電が軸部分3112側に回り込まず、かつ製造しやすいよう、0.30mm以下(望ましくは0.20mm以下)、かつ0.05mm以上であることが望ましい。しかし、側部部材312が重ね巻きの形状である場合、その距離を周回り全てにおいて均一にするのは不可能であり、一般的にはガラスバルブ1と側部部材312の重なり部分の距離が他の部分よりも近くなり、製造が困難となるなどの問題が懸念される。そこで、ガラスバルブ1と側部部材312の重なり部分の距離と、その対向側のガラスバルブ1と側部部材312の距離を近づけるように、電極31を放電空間11に対して偏心させて配置してもよい。
【0034】
また、側部部材312は、重ね巻きの形状である必要はなく、図9(a)のように端部が重ならない形状や、(b)のように、端部に斜面3121を形成し、ロールしたときにそれらが互いに合致するような形状であってもよい。これにより、側部部材312の内面側に放電集中の原因となる部分がなくなるため、局所的な電極消耗を抑制することができる。ただし、両方とも、点灯中などに隙間が生じてしまうことを防止すべく、両端部付近にレーザー溶接などを行うのが望ましい。
【0035】
図10のように、底部部材3111の側面に突起316、側部部材312に穴317を形成し、穴317に突起316を嵌め込んで接続してもよい。この場合、溶接回数を減らせる、ないし溶接不要とすることができる。なお、側部部材312に突起316、底部部材3111に穴317を形成するのでもよい。
【0036】
また、図11のように、底部部材3111と側部部材312に互いに合致する斜面318を形成し、その斜面318を跨ぐように溶融層313を形成してもよい。
【0037】
底部部材3111と側部部材312は別の部材で構成してもよい。また、それらの接合は、レーザー溶接に限らず、抵抗溶接などの方法で行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための全体図。
【図2】電極について説明するための図。
【図3】電極の一製造方法について説明するための図。
【図4】本発明の第2の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図。
【図5】本発明の第3の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図。
【図6】本発明の第3の実施の形態の変形例について説明するための図。
【図7】本発明の第1の変形例について説明するための図。
【図8】本発明の第2の変形例について説明するための図。
【図9】本発明の第3の変形例について説明するための図。
【図10】本発明の第4の変形例について説明するための図。
【図11】本発明の第5の変形例について説明するための図。
【符号の説明】
【0039】
1 ガラスバルブ
11 放電空間
2 蛍光体層
3 電極マウント
31 電極
311 T字部材
3111 底部部材
312 側部部材
313 溶融層
32 アウターリード
33 ビーズガラス
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶テレビやノートパソコンのバックライトの光源などに用いられる冷陰極放電ランプおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、バックライトに用いられる光源は、冷陰極放電ランプが主流である。冷陰極放電ランプは、例えば、特許文献1に記載のように、ガラスバルブの内部に希ガスや水銀などの放電媒体が封入され、その内端部に一対の電極が配置されてなる。
【0003】
ここで、電極には一体形成されたカップ状の電極が一般的に用いられている。このカップ状の電極は、従来、深絞り加工や焼結などにより一体形成されていたが、このような形成方法は、加工が困難、コストが高いなどの問題があった。そこで、特許文献2〜6のようにカップ電極の底面部分と側面部分とを別に製造したのち、組み立ててなる電極が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−151496号公報
【特許文献2】特開2008−147129号公報
【特許文献3】特開2005−158539号公報
【特許文献4】特開2002−260579号公報
【特許文献5】特開2005−327485号公報
【特許文献6】特開2007−48527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2〜6のような電極でも、加工が困難、コストが高いなどの問題に対する決定的な解決手段にはならない。
【0006】
本発明の目的は、製造が容易で、かつコストが安い冷陰極放電ランプおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の冷陰極放電ランプは、内部に放電空間が形成されたガラスバルブと、前記放電空間に封入された放電媒体と、前記ガラスバルブの内部に設けられた電極とを具備する冷陰極放電ランプにおいて、前記電極は、底部部材と金属板を丸めることにより形成された側部部材とで構成され、その一部分が互いに重畳されたカップ状を呈しており、前記重畳部分が接合されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製造が容易で、かつコストが安い冷陰極放電ランプおよびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態の冷陰極放電ランプについて図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図である。
【0010】
冷陰極放電ランプの容器は、例えば、硼珪酸ガラスなどの硬質ガラスからなるガラスバルブ1で構成されている。ガラスバルブ1は両端部が密閉された細長い筒型の形状であり、その内部には放電空間11が形成されている。放電空間11には、水銀および希ガスからなる放電媒体が封入されている。ここで、希ガスとしてはネオンとアルゴンの混合ガスが適している。ガラスバルブ1の内面には、少なくともランプの光放出領域を覆う範囲にRGBの3波長蛍光体からなる蛍光体層2が形成されている。
【0011】
ガラスバルブ1の両端には、電極マウント3が封着されている。この電極マウント3は、電極31、アウターリード32およびガラスビーズ33とで構成されている。
【0012】
電極31は、本実施の形態ではカップとインナーリードとが一体形成されてなり、カップの開口がランプ中央側になるようにガラスバルブ1の端部に対向配置されている。
【0013】
アウターリード32は、一端が電極31の底面と接続されている。このアウターリード32には、ジュメット線(銅で被覆されたニッケル線)など、導電性に優れた金属を用いるのが望ましい。
【0014】
ビーズガラス33は、電極31の軸部材に形成され、ガラスバルブ1に気密封着されている。ビーズガラス33としては、ガラスバルブ1と同じガラス材料を用いるのが最適である。
【0015】
ここで、電極31の詳しい構造について、図2を参照して説明する。図2(a)は、図1の一点鎖線X部分の拡大図、(b)は径方向の断面図である。
【0016】
図からわかるように、電極31はT字部材311と側部部材312からなる。T字部材311は、T字形状をしており、カップの底を形成する底部部材3111と、ガラスバルブ1に封着されるとともに、アウターリード32と接続される軸部材3112とが一体的に構成されてなる。このような形状は、ヘッダー加工や焼結加工により形成することができる。この底部部材3111の側面の長さL1は、放電面積を広く確保しつつ、溶接時などに側部部材312が傾いて接続されるのを防止するため、側部部材312の長さL2に対して、0.5≧L1/L2≧0.005を満たしているのが好ましい。側部部材312は、厚みTが0.05mm〜0.5mm程度の金属板を丸める(ロールする)ことで形成した円筒状の筒であり、本実施の形態では端部の同士が一部重なっている。なお、底部部材3111、側部部材312ともに、モリブデン、タングステン、レニウムなどの仕事関数が低い高融点の材料を用いるのが望ましい。
【0017】
ここで、底部部材3111と側部部材312の重畳部分には、溶融層313が形成されている。溶融層313は、底部部材3111と側部部材312の両金属が溶融合金化した層であり、両者を接続する重要な部分である。この溶融層313は、後述するレーザー溶接の工程により形成されたレーザー痕である。この実施の形態では、周回りに等間隔で3つ形成されており、その深さDは底部部材3111と側部部材312を跨る深さ、すなわち側部部材312の厚みTよりも深く形成されている。なお、接続を強固に維持するためには、底部部材3111の溶融層313の深さD1を0.1mm以上とするのがよい。また、底部部材3111と側部部材312とを密着させて隙間が生じるのを防止するため、両者を圧接するのが望ましい。
【0018】
次に、電極31の製造方法について、図3を参照して説明する。
【0019】
まず、(a)のように、金属板を端部同士が一部重なるように重ね巻きして側部部材312を形成し、T字部材311を側部部材312の開口側から挿入して、底部部材3111と側部部材312の一部分を重畳させる。このとき、側部部材312の内径R’を、底部部材3111の直径Rよりも小さく形成することで、側部部材312は内径を広げられながら底部部材3111に接触することになるため、T字部材311の底部部材の側面に側部部材312が縮径しようとする力が残留して圧接した形となり、仮接続できるとともに、部材間に隙間が生じにくくすることができる。
【0020】
そして、(b)のように、底部部材3111と側部部材312の重畳部分を、レーザー照射装置314を用いてレーザー溶接して、(c)のように溶融層313を形成する。このとき、レーザーのスポット径、出力、焦点などを調節することで、溶融層313の幅W、深さD、形状を調整することが可能である。また、底部部材3111と側部部材312の重畳部分、かつ側部部材312の重なり部分にレーザー溶接すると、T字部材311と側部部材312の固定かつ側部部材312の開き防止を行うことができる。その後、この重畳部分の周回りに、2〜5回程度レーザー溶接して溶融層313を複数形成することで、T字部材311と側部部材312とが強固に接続された電極31を形成することができる。
【0021】
下記に本実施の形態の冷陰極放電ランプの一実施例を示す。
【0022】
(実施例)
ガラスバルブ1;硼珪酸ガラス製、全長=730mm、外径=4.0mm、内径=3.0mm、
放電媒体;水銀、ネオン90%とアルゴン10%の混合ガス=40torr、
蛍光体層2;RGB蛍光体で構成、
T字部材311;モリブデン製、底部部材の厚みL1=1.0mm、直径R=2.7mm、軸部材の直径=0.8mm、
側部部材312;モリブデン製、厚みT=0.1mm、長さL2=10mm、
溶融層313;幅W=0.5mm、深さD=0.2mm(うちD1=0.1mm)、
アウターリード32;ジュメット製。
【0023】
この実施例のランプについて、点灯試験を行ったところ、T字部材311と側部部材312の接続が外れて脱落するなどの不具合なく、長寿命なランプを実現できることが確認された。
【0024】
したがって、本実施の形態では、底部部材3111を構成するT字部材311と金属板を丸めることにより形成された側部部材312とで構成され、その一部分が互いに重畳されたカップ状を呈しており、重畳部分がレーザー溶接により接合され、溶融層313が形成されてなる電極31により、接続が強固で、かつ製造容易でコストが安い冷陰極放電ランプを提供することができる。
【0025】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図である。これ以降の実施の形態の各部については、第1の実施の形態の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0026】
第2の実施の形態では、底部部材3111の周端に突出部315が形成されており、その突出部315の内周面に接触するように側部部材312が配置され、突出部315から側部部材312方向に溶融層313が形成されている。第2の実施の形態でも第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、この実施の形態では、側部部材312を底部部材3111に配置する際に、側部部材312の内径を突出部315の内径よりも大きく形成しておき、側部部材312を縮径させながら突出部315の内周面に接触させることで、突出部315に弾性力を作用させるのが望ましい。
【0027】
(第3の実施の形態)
図5は、本発明の第3の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図である。
【0028】
第3の実施の形態では、底部部材3111の周端に突出部315が形成されており、底部部材3111全体の側面に側部部材312が設けられている。この突出部315を形成することにより、側部部材312の傾きを抑制しつつ、管電圧が低い冷陰極放電ランプを提供することができる。なお、この実施の形態では、図6のように突出部315をランプの端部側に突出させてもよい。
【0029】
以上、本発明の実施の形態をいくつか説明したが、本発明は上記に限られるわけではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0030】
T字部材311は、底部部材3111と軸部材3112が一体型である必要はなく、底部部材と軸部材の2パーツまたはそれ以上のパーツを組み合わせて構成されていてもよい。
【0031】
また、図7のように、底部部材3111は、半球状の凹みを有する形状であってもよい。この形状では、放電する面に放電集中しやすい角がないため、局所的な消耗の発生を抑制しつつ、第3の実施の形態と同様に側部部材312の傾きを抑制することができる。
【0032】
側部部材312は、実施の形態のように一部同士が重なる重ね巻きの形状である場合には、側部部材312の重なり部分付近の底部部材3111との間に隙間が生じやすくなる。そこで、図8のように、側部部材312の重なり部分付近に、溶融部313を形成して隙間を小さくするのが望ましい。
【0033】
なお、側部部材312の外周面とガラスバルブ1の内周面との距離は、放電が軸部分3112側に回り込まず、かつ製造しやすいよう、0.30mm以下(望ましくは0.20mm以下)、かつ0.05mm以上であることが望ましい。しかし、側部部材312が重ね巻きの形状である場合、その距離を周回り全てにおいて均一にするのは不可能であり、一般的にはガラスバルブ1と側部部材312の重なり部分の距離が他の部分よりも近くなり、製造が困難となるなどの問題が懸念される。そこで、ガラスバルブ1と側部部材312の重なり部分の距離と、その対向側のガラスバルブ1と側部部材312の距離を近づけるように、電極31を放電空間11に対して偏心させて配置してもよい。
【0034】
また、側部部材312は、重ね巻きの形状である必要はなく、図9(a)のように端部が重ならない形状や、(b)のように、端部に斜面3121を形成し、ロールしたときにそれらが互いに合致するような形状であってもよい。これにより、側部部材312の内面側に放電集中の原因となる部分がなくなるため、局所的な電極消耗を抑制することができる。ただし、両方とも、点灯中などに隙間が生じてしまうことを防止すべく、両端部付近にレーザー溶接などを行うのが望ましい。
【0035】
図10のように、底部部材3111の側面に突起316、側部部材312に穴317を形成し、穴317に突起316を嵌め込んで接続してもよい。この場合、溶接回数を減らせる、ないし溶接不要とすることができる。なお、側部部材312に突起316、底部部材3111に穴317を形成するのでもよい。
【0036】
また、図11のように、底部部材3111と側部部材312に互いに合致する斜面318を形成し、その斜面318を跨ぐように溶融層313を形成してもよい。
【0037】
底部部材3111と側部部材312は別の部材で構成してもよい。また、それらの接合は、レーザー溶接に限らず、抵抗溶接などの方法で行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための全体図。
【図2】電極について説明するための図。
【図3】電極の一製造方法について説明するための図。
【図4】本発明の第2の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図。
【図5】本発明の第3の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図。
【図6】本発明の第3の実施の形態の変形例について説明するための図。
【図7】本発明の第1の変形例について説明するための図。
【図8】本発明の第2の変形例について説明するための図。
【図9】本発明の第3の変形例について説明するための図。
【図10】本発明の第4の変形例について説明するための図。
【図11】本発明の第5の変形例について説明するための図。
【符号の説明】
【0039】
1 ガラスバルブ
11 放電空間
2 蛍光体層
3 電極マウント
31 電極
311 T字部材
3111 底部部材
312 側部部材
313 溶融層
32 アウターリード
33 ビーズガラス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に放電空間が形成されたガラスバルブと、前記放電空間に封入された放電媒体と、前記ガラスバルブの内部に設けられた電極とを具備する冷陰極放電ランプにおいて、
前記電極は、底部部材と金属板を丸めることにより形成された側部部材とで構成され、その一部分が互いに重畳されたカップ状を呈しており、前記重畳部分が接合されてなることを特徴とする冷陰極放電ランプ。
【請求項2】
前記重畳部分には、前記底部部材と前記側部部材に跨るように溶融層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の冷陰極放電ランプ。
【請求項3】
前記底部部材には、その端部に突出部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷陰極放電ランプ。
【請求項4】
内部に放電空間が形成されたガラスバルブと、前記放電空間に封入された放電媒体と、前記ガラスバルブの内部に設けられた電極とを具備する冷陰極放電ランプの製造方法において、
前記電極は、底部部材と側部部材とで構成されており、金属板を丸めることにより形成された前記側部部材を前記底部部材に圧接したのち、前記底部部材と前記側部部材の重畳部分にレーザーを照射して、それらに跨るように溶融層を形成することにより、カップ状に形成されることを特徴とする冷陰極放電ランプの製造方法。
【請求項1】
内部に放電空間が形成されたガラスバルブと、前記放電空間に封入された放電媒体と、前記ガラスバルブの内部に設けられた電極とを具備する冷陰極放電ランプにおいて、
前記電極は、底部部材と金属板を丸めることにより形成された側部部材とで構成され、その一部分が互いに重畳されたカップ状を呈しており、前記重畳部分が接合されてなることを特徴とする冷陰極放電ランプ。
【請求項2】
前記重畳部分には、前記底部部材と前記側部部材に跨るように溶融層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の冷陰極放電ランプ。
【請求項3】
前記底部部材には、その端部に突出部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷陰極放電ランプ。
【請求項4】
内部に放電空間が形成されたガラスバルブと、前記放電空間に封入された放電媒体と、前記ガラスバルブの内部に設けられた電極とを具備する冷陰極放電ランプの製造方法において、
前記電極は、底部部材と側部部材とで構成されており、金属板を丸めることにより形成された前記側部部材を前記底部部材に圧接したのち、前記底部部材と前記側部部材の重畳部分にレーザーを照射して、それらに跨るように溶融層を形成することにより、カップ状に形成されることを特徴とする冷陰極放電ランプの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−97710(P2010−97710A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265224(P2008−265224)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】
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