説明

凍結表示用標識装置

【目的】 外部電源に頼ることなく、冬期に発生する道路表面の凍結をドライバー或いは道路管理者等に報知でき、その装置が廉価であること。
【構成】 路面温度が凍結温度以下のとき、全前面部材10A,10B,10Cの再帰反射面11A,11B,11Cは、道路の略水平面に対して略垂直面となり、再帰反射面11A,11B,11Cの再帰反射をドライバーに認識させる。また、路面温度が凍結温度より高いとき、全前面部材10A,10B,10Cの再帰反射面11A,11B,11Cは回動し、道路の略水平面に対して略水平面となり、ハウジング8の透明裏蓋8bの表面に接着された再帰反射面30による再帰反射をドライバーに認識させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、冬期に発生する道路表面の凍結をドライバー或いは道路管理者等に路面の凍結を警告する凍結表示用標識装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の凍結表示用標識装置としては、実開昭52−142392号公報に掲載の技術がある。
【0003】即ち、路面が凍結する温度を感知する装置を有し、設定された温度を感知したとき、路面凍結を警告する標識が点灯して表示文字が浮き出ると同時に回転警告灯または点滅警告灯が作動するものである。
【0004】一方、再帰反射面によって路側帯の存在を明示する反射標識装置は、実開昭58−10913号公報等で公知である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前述の標識が点灯して表示文字が浮き出ると同時に回転警告灯または点滅警告灯が作動するものでは、外部から電源の供給が必要となり、また、その電源の管理の不備、装置が強風や車輌の衝突等によって転倒すると、爾後、その路面凍結を警告する表示が行なえなくなる。
【0006】また、再帰反射面によって路側帯の存在を明示する反射標識装置においては、白色または黄色によって左右の路肩の存在を知ることができるが、その道路幅の表示に限られるものである。
【0007】そこで、この発明は、外部電源に頼ることなく、冬期に発生する道路表面の凍結をドライバー或いは道路管理者等に報知できる廉価な凍結表示用標識装置の提供を課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1にかかる凍結表示用標識装置は、第1の再帰反射面によって路側帯の存在を明示する反射標識本体に取付け可能なハウジングと、前記ハウジングに対して回動自在に取付けられ、前記反射標識本体の第1の再帰反射面を表出または非表出状態とし、前記第1の再帰反射面を非表出状態にしたとき表出する第2の再帰反射面を有する前面部材と、前記前面部材によって第1の再帰反射面を表出または非表出状態に駆動する温度によって変位させる温度応動駆動手段とを具備するものである。
【0009】請求項2にかかる凍結表示用標識装置は、請求項1に記載の温度応動駆動手段を、形状記憶合金による温度変化における変化により駆動するものである。
【0010】請求項3にかかる凍結表示用標識装置は、請求項1に記載の前面部材を、複数毎の板部材をその長さ方向に、水平に軸支して回動自在としたものである。
【0011】請求項4にかかる凍結表示用標識装置は、請求項1に記載の前面部材を、複数毎の板部材をその長さ方向に、垂直に軸支して回動自在としたものである。
【0012】
【作用】請求項1においては、温度応動駆動手段が略凍結温度によって前面部材を回動変位させるから、略凍結温度以下と略凍結温度を越える温度とによって、第1の再帰反射面と第2の再帰反射面による表示を切替える。
【0013】請求項2においては、請求項1の前記温度応動駆動手段を、形状記憶合金による温度変化に応動して駆動するものであるから、略凍結温度付近の温度で、第1の再帰反射面と第2の再帰反射面による表示を急変させることができる。
【0014】請求項3においては、請求項1の前記前面部材を、複数毎の板部材をその長さ方向に軸支して回動自在としたものであるから、広い面積の表示を行なう場合でも、軸支される部分に加わる加重が2分され、1個所の負担が軽くなる。
【0015】請求項4においては、請求項1の前記前面部材は、複数毎の板部材をその長さ方向に垂直に軸支して回動自在としたものであるから、軸受の加重を一点で支持できるから、その摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0017】図1は本発明の一実施例である凍結表示用標識装置の再帰反射動作状態を示す使用斜視図、図2は本発明の一実施例である凍結表示用標識装置のデリニェータの再帰反射動作状態を示す使用斜視図、図3は本発明の一実施例である凍結表示用標識装置の取付状態を示す使用斜視図である。そして、図4は本発明の一実施例である凍結表示用標識装置の再帰反射動作状態(a)及び透過動作状態(b)を示す説明図である。更に、図5及び図6は本発明の一実施例である凍結表示用標識装置の再帰反射動作状態とデリニェータの再帰反射動作状態を示す全前面部材の正面説明図である。
【0018】図1乃至図3において、支柱1には白色または黄色の再帰反射面によって路側帯の存在を明示する反射標識として、公知のデリニェータ2が頂部に取付けられている。また、ハウジング8は支柱1に公知の取付手段4によって取付けられている。本実施例の取付手段4は、ハウジング8の裏側上部に配設した装着部5aに対してデリニェータ2の頂部を挿入し、レール部材5にサドル6の一端を係合させ、そして、サドル6の他端をレール部材5にボルト・ナット7で螺止し、レール部材5とサドル6間で支柱1を挾持したものである。ハウジング8は不透明な合成樹脂材料或いは金属板、鋳型等で箱状に形成したものであり、因に、本実施例ではアルミニウムの鋳型として形成したものである。その前面には透明アクリル板または透明ガラス板からなる透明板8aが配設されている。なお、本実施例のハウジング8は、透明板8a及び後述するハウジング8の裏側に取付けられる透明裏蓋8bから構成されている。
【0019】ハウジング8の内部に配設された前面部材10A,10B,10Cの一方の平面に設けられた再帰反射面11A,11B,11Cは、全体が閉じたとき、図1に示すように、前記透明板8aから透過される表出面となる。
【0020】図4において、ハウジング8の内部に配設される前面部材10A,10B,10Cは、その片側に突出形成された支軸12A,12B,12Cを有しており、支軸12A,12B,12Cを中心に回動自在となっている。本実施例における前面部材10A,10B,10Cは、3枚の前面部材10A及び前面部材10B及び前面部材10Cからなり、その一方の平面には再帰反射面11A及び再帰反射面11B及び再帰反射面11Cとなる再帰反射材を混入した合成樹脂シートが接着されている。ハウジング8の内部に配設される前面部材10A,10B,10Cは、図4(a)のように、全体が略垂直平面になったとき、その全前面部材10A,10B,10Cの再帰反射面11A,11B,11Cが面一になり、全面再帰反射面を形成する。また、図4(b)のように、全体が略90度回動して略水平平面になったとき、その再帰反射面11A,11B,11Cは、その光の入射方向に対して反射方向を一致させる全面再帰反射面を形成できなくなり、後部にあるデリニェータ2の再帰反射面30が表出する。なお、本実施例の前面部材10A,10B,10Cは3枚からなるが、本発明を実施する場合には、枚数が拘束されるものではない。しかし、本実施例のように2〜5枚程度で構成すると、接触抵抗等が比較的小さく、また、前面部材10A,10B,10Cの機械的強度を強く構成することができる。
【0021】即ち、図5の本発明の一実施例である凍結表示用標識装置の再帰反射動作状態を示す全前面部材10A,10B,10Cの正面説明図のように、再帰反射面11A,11B,11Cが面一となることにより、その全面が入射光の方向に反射光が反射することになる。また、図4(b)のように、全前面部材10A,10B,10Cの全体が略90度回動して略水平平面になったとき、図6の本発明の一実施例である凍結表示用標識装置のデリニェータ2の再帰反射動作状態を示す全前面部材10A,10B,10Cの正面説明図のように、再帰反射面11A,11B,11Cに対して側面から入射光が入ることとなり、その再帰反射面11A,11B,11Cによる再帰反射光は無視できる程度に少なくなる。
【0022】ここで、更に、前面部材10について詳述する。
【0023】図7は本発明の一実施例である凍結表示用標識装置の構成部品展開図、図8は本発明の一実施例である凍結表示用標識装置の正面図(a)及び中央縦断面図(b)である。
【0024】図において、本実施例のハウジング8は、アルミニウムの鋳型として形成したもので、その前面は透明アクリル板、透明ガラス板等からなる透明板8aが接着剤を用いてその全周を接着している。前記ハウジング8には、その前面側から後部方向に垂直に立設させた起立片13及び起立片14が形成されている。また、起立片14には前面部材10A,10B,10Cの図示しない嵌合軸に挿通される支軸14A,14B,14C(図示せず)が螺入され、その回動を拘束するように接合されている。起立片13には前面部材10A,10B,10Cの支軸12A,12B,12Cが支承される切欠部13B(13A,13Cは図示せず)が挿入され、その離脱を防止するように離脱防止板35によって、前面部材10A,10B,10Cの支軸12A,12B,12C中心の回動のみを許容している。前面部材10A,10B,10Cは、その図示しない嵌合軸から離れた位置に接続孔15A(15B,15Cは図示せず)が設けられていて、それらは各接続ピン16A,16B,16Cによって、連結部材17に回動自在に接続されている。
【0025】一方、ハウジング8に挿着自在な内箱20には、その内側にガイド溝20Aによって上下動自在とした連結杆21が配設されている。前記連結杆21の両側にフック部21d,21eが形成されていて、一方のフック部21eには連結杆21を上昇させるべく付勢する圧縮スプリング22が配設されている。また、他方のフック部21dには連結杆21を下降させるべく付勢する形状記憶合金からなる圧縮スプリング23が配設されている。略氷点温度以下では、形状記憶合金からなる圧縮スプリング23が連結杆21を下降させる弾性力は、連結杆21を上昇させるべく付勢する圧縮スプリング22の弾性力よりも弱くなり、連結杆21を上昇させる。しかし、通常、略氷点温度を越えると、急激に形状記憶合金からなる圧縮スプリング23が連結杆21を下降させる弾性力は、連結杆21を上昇させるべく付勢する圧縮スプリング22の弾性力よりも強くなる。したがって、通常の略氷点温度以下では連結杆21が上昇しており、また、略氷点温度を越えた高い温度となると連結杆21が下降する。この形状記憶合金からなる圧縮スプリング23は、1〜2℃以下の温度で各ターン部分がその圧縮密度を粗とするように形状を記憶させたものであり、また、前記温度を越えると各ターン部分がその圧縮密度を密にするものである。
【0026】この内箱20及び連結杆21、圧縮スプリング22及び形状記憶合金からなる圧縮スプリング23は、内箱20にビス止めされた規制部材24によって、連結杆21及び圧縮スプリング22及び形状記憶合金からなる圧縮スプリング23が離脱しないようにしている。また、連結杆21には小突起21a及び小突起21bが突設されていて、規制部材24のそれぞれ凹部溝24aまたは凹部溝24bに嵌合しており、連結杆21の上下動を規制している。そして、連結杆21には大突起21cが突設されていて、規制部材24の貫通溝25に挿通され、連結杆21の上下動を大突起21cの上下動としている。
【0027】前記連結杆21の上下動を伝達する大突起21cの端部は、前記連結部材17に連結されていて、前記連結杆21の上下動を連結部材17に伝達する。
【0028】更に、前記ハウジング8の裏側に取付けられる透明裏蓋8bは、透明合成樹脂材料により公知のデリニェータ2が収容可能な収容孔8cが一体に成形されている。接着剤による接着により内部を気密化している。即ち、低湿度状態で封止し、内部が外気温の変化で露結しないようにしている。また、透明裏蓋8bにはその上部に金具からなる装着部5aが、その下部にはレール部材5が、ビスによってハウジング8に螺合されている。結果的に、透明裏蓋8bはハウジング8に対して、接着剤及びビスによって堅固に固着されている。
【0029】本実施例の凍結表示用標識装置の組付けについては、次のように行なわれる。まず、ハウジング8の起立片13及び起立片14に対して、再帰反射面11A,11B,11Cを設けた前面部材10A,10B,10C及び各接続ピン16A,16B,16Cによって回動自在に接続した連結部材17を取付け、そして、前記ハウジング8に内箱20が連結杆21、圧縮スプリング22及び形状記憶合金からなる圧縮スプリング23、内箱20にビス止めされる規制部材24と共に挿着される。その後、前記ハウジング8に透明裏蓋8bを接着剤による接着と共に装着部5a及びレール部材5がビス止めされる。これによって、ハウジング8に透明裏蓋8bを封止状態で取付ける。
【0030】そして、ハウジング8の透明裏蓋8bの上面に取付けた装着部5aに対してデリニェータ2の頂部を挿入し、透明裏蓋8bの収容孔8cに対してデリニェータ2を収容し、そして、レール部材5にサドル6の一端を係合させ、そして、サドル6の他端をレール部材5にボルト・ナット7で螺合し、レール部材5とサドル6間で支柱1を挾持状態とし、デリニェータ2とハウジング8とを堅固に一体化する。
【0031】このように構成した本実施例の凍結表示用標識装置は、次のように動作する。ハウジング8に配設されている内箱20は、ハウジング8、内箱20の熱伝導、放射熱等によって、外気温が形状記憶合金からなる圧縮スプリング23の温度となる。圧縮スプリング23、即ち、外気温が略氷点温度を越え、その略氷点温度より高い温度にあるとき、連結杆21を上昇させるべく付勢する圧縮スプリング22の弾性力よりも、形状記憶合金からなる圧縮スプリング23の弾性力は強く、圧縮スプリング22の弾性力によって連結杆21は下降させられている(内箱20内によって規制される下降限界内にある)。これによって、全前面部材10A,10B,10Cの再帰反射面11A,11B,11Cは、図5の位置から略90度回動し、道路の略水平面に対して略水平面となる。このとき、自動車等のヘッドライトの水平光が到来しても、再帰反射面11A,11B,11Cは自動車等のヘッドライトの光を直接受けないから、そのヘッドライトの光源の方向に反射光を反射させない。しかし、そのヘッドライトの光は、ハウジング8の裏側に取付けられるデリニェータ2の表面の再帰反射面30まで投光され、再帰反射面30で反射光が発生するから、これによってドライバーは再帰反射面30の存在を確認することができる。結果的に、ドライバーはデリニェータ2の再帰反射面30の存在によって道路端部の存在を確認しながら、走行することができる。このとき、全前面部材10A,10B,10Cにより遮蔽される陰影部分が生じることから、視認されるデリニェータ2の再帰反射面30による再帰反射光は略水平線の入った反射面となることもある。
【0032】また、外気温が略氷点温度以下に低下すると、本実施例では1〜2℃以下の温度で形状を記憶させた形状記憶合金からなる圧縮スプリング23の各ターンの密度を粗にしようと作用するから、1〜2℃以下の温度でその圧縮方向の弾性力が減少する。したがって、形状記憶合金からなる圧縮スプリング23の圧縮方向の弾性力の方が弱くなり、圧縮スプリング22の圧縮方向の弾性力の方が強くなるから、圧縮スプリング22は連結杆21を上昇させる。圧縮スプリング22の弾性力によって連結杆21が上昇させられると(内箱20内によって規制される上昇限界内にある)、全前面部材10A,10B,10Cの再帰反射面11A,11B,11Cの再帰反射面11A,11B,11Cは、道路の略水平面に対して略垂直面の面一状態となる。したがって、再帰反射面11A,11B,11Cは、自動車等のヘッドライトの光を受けると、そのヘッドライトの光源の方向に反射光を反射させ、これによってドライバーは再帰反射面11A,11B,11Cの存在を確認することができる。結果的に、ドライバーは再帰反射面11A,11B,11Cの存在によって道路端部の存在及び路面の凍結を認識することができる。
【0033】なお、本実施例では、路面の凍結温度より温度が低いとき、全前面部材10A,10B,10Cの再帰反射面11A,11B,11Cは、道路の略水平面に対して略垂直面となり、再帰反射面11A,11B,11Cの再帰反射をドライバーに認識させ、また、路面が凍結温度を越え、ヒステリシス温度を越えたとき、全前面部材10A,10B,10Cの再帰反射面11A,11B,11Cは略90度回動し、道路の略水平面に対して略水平面となり、ハウジング8の裏側のデリニェータ2の再帰反射面30による再帰反射をドライバーに認識させるものであるが、本発明を実施する場合には、形状記憶合金からなる圧縮スプリング23と圧縮スプリング22の取付けを逆にすれば、再帰反射面11A,11B,11Cの再帰反射表示と、デリニェータ2の再帰反射面30による再帰反射表示とを逆にすることもできる。
【0034】また、この種の再帰反射面11A,11B,11Cの再帰反射表示とデリニェータ2の再帰反射面30の再帰反射表示の違いを使用し、更に、例えば、再帰反射面11A,11B,11Cの再帰反射表示のとき、隣接する装置との間で、『凍』,『結』,『注』,『意』の文字を表出したり、或いは『走』,『行』,『注』,『意』の1文字づつを表出するように構成することもできる。即ち、本発明を実施する場合、再帰反射面11A,11B,11Cとデリニェータ2の再帰反射面30の再帰反射表示は、単に、その再帰反射面の着色に限定されるものでなく、その面に文字を形成してもよいし、或いは再帰反射面の形状を凍結を意味する外観形状としてもよい。
【0035】ところで、上記実施例の凍結表示用標識装置は、第1の再帰反射面としての再帰反射面30によって路側帯の存在を明示するデリニェータ2等の反射標識本体と、前記デリニェータ2等の反射標識本体に取付け可能なハウジング8と、前記ハウジング8に対して回動自在に取付けられ、前記反射標識本体の第1の再帰反射面としての再帰反射面30を表出または非表出状態とし、前記第1の再帰反射面としての再帰反射面30を非表出状態としたとき表出する再帰反射面11A,11B,11Cからなる第2の再帰反射面を有する前面部材10A,10B,10Cと、前記前面部材10A,10B,10Cによって第1の再帰反射面を表出または非表出状態に駆動する温度によって変化する形状記憶合金製の圧縮スプリング23からなる温度応動駆動手段とを具備する実施例とすることができる。これは請求項1の実施例に対応する。
【0036】この実施例においては、略凍結温度を中心に前面部材10A,10B,10Cを回動変位させるものであるから、前面部材10A,10B,10Cが有する再帰反射面11A,11B,11Cをドライバーに再帰反射光として認識させる場合と、デリニェータ2の再帰反射面30による再帰反射光として認識させる場合とに区分けできる。したがって、ドライバーは再帰反射面11A,11B,11Cと再帰反射面30との違いによって路面が凍結状態であるか否かを判別できる。なお、上記実施例における支柱1に取付け可能なハウジング8は、前面部材10A,10B,10Cを封止状態とするものであるが、本発明は必ずしも封止状態での使用を前提とするものではなく、設置箇所及び表出形態によっては前面部材10A,10B,10Cを封止状態とする必要性はない。しかし、前面部材10A,10B,10Cを封止状態とするハウジング8を使用することにより、塵埃に対する信頼性を上げることができ、それだけ小形化も可能となる。
【0037】また、既成のデリニェータ2等の反射標識本体に取付けるだけで、凍結表示を行なうことができる。当然、夏期には取外すこともできる。
【0038】上記実施例のハウジング8に対して回動自在に取付けられ、一方の平面に設けられた再帰反射面11A,11B,11Cを有する前面部材10A,10B,10Cは、90度回動する態様であるが、本発明を実施する場合には、前面部材10A,10B,10Cの回動を90度の回動に限定するものではない。180度回動させ、前面部材10A,10B,10Cの裏面に設けた他の再帰反射を表出することもできる。特に、この種の再帰反射面11A,11B,11Cの再帰反射表示とその反対面の再帰反射表示の違いを使用する場合には、例えば、再帰反射面11A,11B,11Cの再帰反射表示のとき、文字と背景との色彩等により再帰反射面を異にした文字または図形を表出するように構成することもできる。即ち、本発明を実施する場合、再帰反射面11A,11B,11Cと再帰反射面30の再帰反射表示は、単に、その再帰反射面の着色に限定されるものでなく、その面に文字を形成してもよいし、或いは再帰反射面の形状を凍結を意味する外観形状としてもよい。
【0039】更に、前記請求項1に対応する実施例の凍結表示用標識装置における温度応動駆動手段は、圧縮スプリング23からなる形状記憶合金による温度変化における変形により駆動するものを前提に説明したが、本発明を実施する場合には、圧縮スプリングの形状に限定されるものではなく、螺旋状或いは板バネ状とすることもできる。勿論、形状記憶合金を形状記憶プラスチック、バイメタル等の熱応動手段とすることもできる。しかし、上記実施例のように、形状記憶合金を使用すれば、道路の凍結温度付近でその表示内容の急速切替を行なうことができる。
【0040】また、前記請求項1に対応する実施例の凍結表示用標識装置における前面部材10A,10B,10Cは、複数毎の板部材をその長さ方向に、かつ、水平に軸支して回動自在としたものである。したがって、各前面部材10A,10B,10Cの加重は2分されるから、水平に軸支した箇所での磨耗を少なくすることができ、結果的に長寿とすることができる。特に、各前面部材10A,10B,10Cが大型のものに好適となる。
【0041】そして、前記請求項1に対応する実施例の凍結表示用標識装置における前面部材10A,10B,10Cは、複数毎の板部材をその長さ方向に、かつ、垂直に軸支して回動自在としたものである。したがって、各前面部材10A,10B,10Cの加重は、垂直に軸支した一点に集中し、その接触抵抗を小さくすることができるから、特に、各前面部材10A,10B,10Cが小型のものに好適となる。
【0042】更に、本実施例の前面部材10A,10B,10Cの枚数及び形状は、本発明を実施する場合には、実施例の枚数及び形状に限定されるものではない。
【0043】ところで、上記実施例の温度応動駆動手段としての形状記憶合金からなる圧縮スプリング23は、温度変化によって変化する形状記憶合金としたものであるが、本発明を実施する場合には、バイメタル等の温度の変化によって物理的な変量を期待することができる熱応動手段が使用できる。特に、路面の凍結温度を境界として急変させる場合には、形状記憶合金、バイメタル、トリメタル等のスナップ機能を持つ熱応動手段の使用が好適である。
【0044】また、上記各実施例の温度応動駆動手段は0℃以下の温度を検出するものでないが、路面から0.8〜1m程度上部に設置される凍結表示用標識装置は、その温度検出箇所と地表の温度差との関係で地表の凍結温度よりも若干高い温度とすることで良好な凍結温度検出効果が得られた。しかし、交通量、山間部等の地域、路面の種類等の設置環境、タイムラグによっては、0℃に設定することもできるし、或いは0℃以下とすることもできる。また、形状記憶合金のヒステリシス温度については3〜4℃程度のもの、即ち、4〜5℃で復帰するものを使用したが、このヒステリシス温度については、一旦、路面が凍結すると、外気温が上昇しても、路面温度がすぐに上昇しないでタイムラグが存在することから、それをこのヒステリシス温度で補正するものである。例えば、夜間凍結し、凍結が解除される路面温度と午前中の外気温との温度上昇に、ヒステリシス温度を対応させて使用するのが望ましい。そして、ハウジング8における温度応動駆動手段の配置は何れにおいてもよく、好ましくは、外気温をタイムラグを少なくして検出できる個所として下部、側部、背部、上部とすることができる。
【0045】そして、路面の凍結温度付近で変化する表出形態は、文字或いは図形の何れであってもよい。
【0046】更に、本発明を実施する場合の再帰反射面は、小球体、プリズム面等として形成できるし、反射光に対する着色は反射面の着色、透明体を有色透過性部材とすることによって実施できる。また、上記実施例の再帰反射は、透明球体のように入射角と反射角が平行するものを前提としているものの、本発明を実施する場合には、狭義の再帰反射を意味するものでなく、鏡面のように、入射角と反射角が平行するものにも置換できることは自明であり、また、厳密に入射角と反射角が平行する必要性がないことから、基本的に、入射光の多くが反射光として反射する場合を包含するものである。
【0047】なお、上記実施例では、支柱1に取付け可能なハウジング8の事例で説明したが、本発明を実施する場合、デリニェータ2を取付ける支柱1に取付けをしなければならないという限定はなく、デリニェータ2自体または他の取付具または橋の欄干等に直接的または間接的に取付けてもよい。
【0048】また、上記実施例では、ハウジング8の内部を封止する構成を前提に説明したが、本発明を実施する場合には、ハウジング8の内部を封止するものに限定されるものではない。しかし、ハウジング8の内部を封止するものにおいては、その寿命を長くすることができる。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明の凍結表示用標識装置は、第1の再帰反射面によって路側帯の存在を明示する反射標識本体に取付け可能なハウジングと、前記ハウジングに対して回動自在に取付けられ、前記反射標識本体の第1の再帰反射面を表出状態または非表出状態とし、前記第1の再帰反射面を非表出状態としたとき表出する第2の再帰反射面を有する前面部材と、前記前面部材によって第1の再帰反射面を表出または非表出状態に駆動する温度によって変位する温度応動駆動手段とを具備し、温度応動駆動手段が略凍結温度によって前面部材を回動変位させるから、略凍結温度になると、前記前面部材に設けられた第2の再帰反射面と反射標識本体に設けられた第1の再帰反射面によってその表示を替えることができる。したがって、外部電源に頼ることなく、冬期に発生する道路表面の凍結をドライバー或いは道路管理者等に報知できる。また、既成のデリニェータ等を反射標識本体に取付けるだけで、凍結表示を行なうことができる。そして、既設の反射標識本体の第1の再帰反射面を利用することにより装置が廉価になる。
【0050】請求項2の発明の凍結表示用標識装置は、前記請求項1に記載の温度応動駆動手段を、形状記憶合金による温度変化における変形により駆動するものであるから、略凍結温度になったとき、表示を急変させることができる。
【0051】請求項3の発明の凍結表示用標識装置は、前記請求項1に記載の前面部材を、複数毎の板部材をその長さ方向に、水平に軸支して回動自在としたものであるから、広い面積の表示を行なう場合でも、軸支される部分に加わる加重が少なくなる。
【0052】請求項4の発明の凍結表示用標識装置は、前記請求項1に記載の前面部材を、複数毎の板部材をその長さ方向に垂直に軸支して回動自在としたものであるから、軸受の加重を一点で支持できるから、その摩擦抵抗を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施例である凍結表示用標識装置の再帰反射動作状態を示す使用斜視図である。
【図2】図2は本発明の一実施例である凍結表示用標識装置のデリニェータの再帰反射動作状態を示す使用斜視図である。
【図3】図3は本発明の一実施例である凍結表示用標識装置の取付状態を示す使用斜視図である。
【図4】図4は本発明の一実施例である凍結表示用標識装置の再帰反射動作状態(a)及び透過動作状態(b)を示す説明図である。
【図5】図5は本発明の一実施例である凍結表示用標識装置の再帰反射動作状態を示す全前面部材の正面説明図である。
【図6】図6は本発明の一実施例である凍結表示用標識装置のデリニェータの再帰反射動作状態を示す全前面部材の正面説明図である。
【図7】図7は本発明の一実施例である凍結表示用標識装置の構成部品展開図である。
【図8】図8は本発明の一実施例である凍結表示用標識装置の正面図(a)及び中央縦断面図(b)である。
【符号の説明】
8 ハウジング
8b 裏蓋
30 再帰反射面
23 形状記憶合金からなる圧縮スプリング
21 連結杆
22 圧縮スプリング
10A,10B,10C 前面部材
11A,11B,11C 再帰反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1の再帰反射面によって路側帯の存在を明示する反射標識本体と、前記反射標識本体に取付け可能なハウジングと、前記ハウジングに対して回動自在に取付けられ、前記反射標識本体の第1の再帰反射面を表出または非表出状態に変更でき、前記第1の再帰反射面を非表出状態にしたとき表出する第2の再帰反射面を有する前面部材と、前記前面部材によって第1の再帰反射面を表出または非表出状態に駆動する温度によって変化させる温度応動駆動手段とを具備することを特徴とする凍結表示用標識装置。
【請求項2】 前記温度応動駆動手段は、形状記憶合金による温度変化に対応して駆動することを特徴とする請求項1に記載の凍結表示用標識装置。
【請求項3】 前記前面部材は、複数毎の板部材をその長さ方向に、水平に軸支して回動自在としたことを特徴とする請求項1に記載の凍結表示用標識装置。
【請求項4】 前記前面部材は、複数毎の板部材をその長さ方向に、垂直に軸支して回動自在としたことを特徴とする請求項1に記載の凍結表示用標識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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