説明

凍結防止剤散布機

【課題】簡易な構成であり製造コストを低減でき、また、従来よりも融雪,凍結防止等の効果を高めることのできる凍結防止剤散布機の提供の提供。
【解決手段】
手押し式の車台4に、<i>粒状の凍結防止剤を収納するホッパ7の開口8の直下の位置に、スライド自在にしたシャッター10を配置し、そのシャッター10により上記開口8の開度を調整することで、所望の量の上記粒状の凍結防止剤を吐出して散布できるようにした粒状凍結防止剤散布部5と、<ii>液状の凍結防止剤を収納するタンク17と、そのタンク17内の凍結防止剤を吸い出す手動式ポンプ18と、該ポンプ18により送給される凍結防止剤を、車台4に横架固定された散布管21に送給し、該散布管21に所定の間隔で複数開設した吐出孔20から吐出して散布できるようにした液状凍結防止剤散布部6とを設けた凍結防止剤散布機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結防止剤散布機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、路面の凍結防止,融雪のために凍結防止剤を散布する凍結防止剤散布機として、たとえば特許文献1に記載のものがある。
その凍結防止剤散布機は、自走車両に搭載され、凍結防止剤,塩,砂等の粒状の散布剤を送風装置たるブロワによって吹き飛ばし均一に効率よく散布するもので、上記自走車両のエンジンにより駆動する油圧モータにより上記ブロワを回転させるようになっている。
【0003】
また、より簡易な構造の散布機としては、特許文献2の人力移動式散布機がある。これは、液状の防除剤や肥料等の散布を行うためのものであるが、農薬等の散布液を収容する散布液タンクと、そのタンク内の散布液を散布するためのポンプと散布ノズル、また、ポンプを駆動するためのエンジンを搭載している。
【特許文献1】実公平7−15858号公報
【特許文献2】特開2003−339296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
凍結防止剤の散布は、国や地方自治体など道路管理者が道路に散布する場合、あるいは、公民館や学校などの公共施設の玄関前や駐車場などの広いスペースに散布する場合には、主として大型の効果な専用機械が使用され、効率的な散布が行われる。
一方、小規模な公共施設、一般家屋、店舗、民間の病院などでは、一般的に手撒きによる散布が行われている。
そのような手撒きによる場合、面積あたりの散布量を均一にして定量散布を行うことが難しいため、凍結防止剤の無駄遣いになったり、その効果を十分に生かしきれないことにもなっていた。
【0005】
散布される凍結防止剤としては、粒状凍結防止剤と液状凍結防止剤とがあり、公共道路等には、液状凍結防止剤が主に用いられている。これは、広い面積に一度に散布することが可能であり、薄い氷面を早く溶解したい場合に非常に効果的であり、また、降雪や気温低下が予想される路面に事前散布することで顕著な効果を得ることができる。
一方、粒状凍結防止剤は、散布した結晶の周囲から融解が始まるため、広い面積を一度に処理するには適しないが、融氷能力が高いものは厚い氷でもすぐに溶解し、氷の中に潜り込むので定着性がよく、また、薬剤濃度が高いので持続性が高く、散布回数を少なくできるものである。
したがって、気象条件や立地条件等に応じてこれらを散布することで効果的な融雪,凍結防止等の効果を得ることができる。たとえば、広範囲の厚い氷のアイスバーンを短時間で処理するには、液状凍結防止剤により速効性を確保し、粒状凍結防止剤により持続性および薬剤濃度向上による速効性のさらなる強化を図ることができる。
【0006】
そこで、本発明は、上記特許文献1,2の散布機よりも簡易な構成にして製造コストを低減し、また、従来よりも融雪,凍結防止等の効果を高めることのできる凍結防止剤散布機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明は、手押し式の車台4,31に、<i>粒状の凍結防止剤を収納するホッパ7,40の開口8,41の直下の位置に、スライド自在にしたシャッター10,43を配置し、そのシャッター10,43により上記開口8,41の開度を調整することで、所望の量の上記粒状の凍結防止剤を吐出して散布できるようにした粒状凍結防止剤散布部5,37と、<ii>液状の凍結防止剤を収納するタンク17,51と、そのタンク17,51内の凍結防止剤を吸い出す手動式ポンプ18,52と、該ポンプ18,52により送給される凍結防止剤を、車台4,31に横架固定された散布管21,55に送給し、該散布管21,55に所定の間隔で複数開設した吐出孔20,54から吐出して散布できるようにした液状凍結防止剤散布部6,38とを設けた凍結防止剤散布機である。
【0008】
請求項2記載の本発明は、上記ホッパ7,40内に、攪拌部12,44を設け、粒状凍結防止剤の目詰まりを防止するようにしてなる請求項1記載の凍結防止剤散布機である。
【0009】
請求項3記載の本発明は、攪拌部12が、ホッパ7内の、上記開口8の直上の位置に横架された回転軸13に、螺旋状体13’を螺旋状に巻回してなる請求項2記載の凍結防止剤散布機である。
【0010】
請求項4記載の本発明は、攪拌部44が、ホッパ40内の、上記開口41の直上の位置に横架された回転軸45に羽根板46を固定してなる羽根車47からなる請求項2記載の凍結防止剤散布機である。
【0011】
請求項5記載の本発明は、上記攪拌部12,44が、上記回転軸13,45のホッパ7,40外に突出させた部分に固定したスプロケット14,48と車台4,31の車輪1,34の車軸に固定したスプロケット15,49との間にチェーン16,50を掛け回し、走行時に回転軸13,45が回転しホッパ7,40内の粒状凍結防止剤の目詰まりを防ぐようにしてなる請求項3または4記載の凍結防止剤散布機である。
【発明の効果】
【0012】
本発明凍結防止剤散布機は、簡易な構成であるから製造コストを低減することができ、また、気象条件,立地条件等に応じて液状凍結防止剤と粒状凍結防止剤とを同時に散布することもできるので、従来よりも融雪,凍結防止等の効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
手押し式の車台4,31に、<i>粒状の凍結防止剤を収納するホッパ7,40の開口8,41の直下の位置に、スライド自在にしたシャッター10,43を配置し、そのシャッター10,43により上記開口8,41の開度を調整することで、所望の量の上記粒状の凍結防止剤を吐出して散布できるようにした粒状凍結防止剤散布部5,37と、<ii>液状の凍結防止剤を収納するタンク17,51と、そのタンク17,51内の凍結防止剤を吸い出す手動式ポンプ18,52と、該ポンプ18,52により送給される凍結防止剤を、車台4,31に横架固定された散布管21,55に送給し、該散布管21,55に所定の間隔で複数開設した吐出孔20,54から吐出して散布できるようにした液状凍結防止剤散布部6,38とを設けた凍結防止剤散布機。
【実施例1】
【0014】
本実施例の凍結防止剤散布機Aは、前方下部に直径約360mmの一輪の車輪1を、後方下部に一対のソリ2,2を、後方上部に一対のハンドル3,3を備えた手押し式の車台4に、粒状凍結防止剤散布部5と液状凍結防止剤散布部6を設けたものである。
【0015】
上記粒状凍結防止剤散布部5は、粒状の凍結防止剤を収納する容量約25kgのホッパ7の開口8(たとえば、幅約60mm、長さ約450mm)の直下の位置に、両縁をレール9,9に嵌合支持させスライド自在にしたシャッター10を配置し、そのシャッター10により開口8の開度を調整することで、所望の量の凍結防止剤を吐出し散布する。
11は、上記開口8から吐出される粒状の凍結防止剤を、上記車輪1をよけて、その後方に案内するために、そのシャッター10の先端側下面に固定された案内板である
【0016】
12は、上記ホッパ7内の、上記開口8の直上の位置に配設された攪拌部である。この攪拌部12は、ホッパ7内に横架された回転軸13に、直径約10〜15mm程度の径のロープからなる螺旋状体13’をピット5〜10cm程度にして螺旋状に巻回固定してあるもので、その回転軸13の、ホッパ7外に突出させた部分に取り付けたスプロケット14と上記車輪1の車軸に取り付けたスプロケット15との間にチェーン16を掛け回してある。
したがって、ハンドル3,3を把持して人力で手押しして走行させるときに、車輪1の回転により、チェーン16を解して攪拌部12の回転軸13が回転し、ホッパ7内の凍結防止剤を攪拌し、その目詰まりを防止する。
【0017】
上記液状凍結防止剤散布部6は、液状の凍結防止剤を収納する容量約20リットルのタンク17と、そのタンク17内の凍結防止剤を吸い出す手動式ポンプ18と、吸い出した凍結防止剤を送給するパイプ19と、そのパイプ19より送給される凍結防止剤を吐出しこれを散布するための、車台4に対して該タンク17の下方の位置に横架され、吐出孔20(たとえば、直径3mm)を複数所定の間隔で(たとえば、ピッチ9cm)開設した散布管21からなる。
上記タンク17は、市販凍結防止剤を収納しているポリ缶をそのまま利用し、購入してきたものをその都度乗載固定することとしてもよい。
22は、上記パイプ19に設けられた散布量を調整するためのバルブコックである。
図4から明らかなとおり、上記タンク17は内部の液状凍結防止剤をポンプ18により最後まで吸い出せるよう、傾斜支持台23により、車台4に対して斜めに載置し固定してある。
【0018】
なお、上記ポンプ18は、押圧釦24を複数回押下することにより空気圧でタンク17内の凍結防止剤を吸い出すことができる手動式のもので、電力等を必要としない。
【0019】
上記の凍結防止剤散布機Aは、粒状凍結防止剤散布部5のシャッター10をスライドさせ、開口8の開度を適宜調整するとともに、液状凍結防止剤散布部6のポンプ18の押圧釦24を複数回押した上でバルブコック22の開度を適宜調整して、ハンドル3,3を把持し手押し走行させることにより、適量の粒状凍結防止剤と液状凍結防止剤とを、同時に、しかも、均一に散布することができる。
【0020】
粒状凍結防止剤散布部5の開口8の開度は、シャッター10により、たとえば5mm〜30mm程度とするのが好ましく、5mmの場合一平方メートルあたり30g程度、20mmの場合一平方メートルあたり150g程度の粒状凍結防止剤の散布が行える。
【0021】
なお、上記散布機Aの各部の寸法、タンク17,ホッパ7の容量等は適宜変更することができる。大型のものは手押し式でなく自動車で牽引する方式のものとしてもよい。
【0022】
この凍結防止剤散布機Aは、気象条件,立地条件等に応じて、速効性が期待できる液状凍結防止剤と、効果の長時間の持続が期待できる粒状の凍結防止剤とを、同時に散布しあるいはいずれか一方を適宜散布することができる。また、その散布量も簡単に調整したうえで、均一な散布をすることができる。
特に、両者を同時に散布することは、凍結防止、融雪、滑り止め等に効果的である。
降雪前に散布すれば融雪効果を、除雪後に散布すれば高い凍結防止効果を期待できる。
また、積雪深が5cm程度であれば、除雪をすることなく、散布が行えるので便利である。
【0023】
本散布機Aは、電力や燃料が不要で、人力で簡単に散布作業を行うことができる。
【0024】
このように、本散布機Aは、従来の電力や燃料を要する散布機と異なり、簡単な構成で低コストで製造できる。
また、手撒きの場合と異なり、均一な散布が簡単に行える。したがって、凍結防止剤を無駄に散布してしまうことがないので、コスト削減につながる。
【0025】
また、この散布機Aは、小規模農業や家庭菜園での石灰,固体肥料,液体肥料等の散布や砂埃防止剤の散布など多目的に利用できるものである。
【実施例2】
【0026】
本実施例の凍結防止剤散布機Bは、車台が2輪の前車輪および2輪の後車輪を備えたものである点、上記実施例1のものと相違する。
具体的には、その車台31は、前方下部の前車輪支持部32に車軸33を取り付け、その両端に直径360mmの2輪の前車輪34,34を軸支するとともに、後方の左右下部に取り付けた一対の後車輪支持部35,35にそれぞれ直径200mmの後車輪36,36を軸支した、手押し式のものである。
37はその車台31の前部に設けた粒状凍結防止剤散布部、38は車台31の後部に設けた液状凍結防止剤散布部である。
39は、車台31の後部に取り付けられた手押しハンドルである。
【0027】
上記粒状凍結防止剤散布部37は、ホッパ40の開口41の直下の位置に、両縁をレール42に嵌合支持させスライド自在にしたシャッター43を配置し、これにより、上記開口41からの粒状凍結防止剤の吐出量を調整可能としている。
44は、上記ホッパ40内の、上記開口41の直上の位置に配設された攪拌部である。これは、ホッパ40内に横架された回転軸45に、6枚の羽根板46(たとえば、約55mm×約450mm )を固定した羽根車47で、回転軸45の、ホッパ40外に突出した部分に固定したスプロケット48と車軸33に固定したスプロケット49との間にチェーン50を掛け回したものである。
【0028】
なお、上記羽根車47の羽根板46の数は適宜増減することができ、たとえば、4〜8枚とすることができる。
また、上記シャッター43の下面先端側に実施例1と同様に案内板を固定し、粒状凍結防止剤を適宜案内するようにするのも好ましい。
その他、上記散布機Aの各部の寸法,形状は適宜変更することができ、たとえば、ホッパ40の開口41と、前車輪34,34の車軸33とがより離隔するように位置関係を変更することで、車軸への粒状凍結防止剤の付着を防止することができる。
【0029】
上記液状凍結防止剤散布部38は、液状の凍結防止剤を収納するタンク51と、その内部の凍結防止剤を吸い出す手動式ポンプ52と、吸い出された凍結防止剤を送給するパイプ53と、車台31の後車輪支持部35,35間に横架され、吐出孔54(たとえば、直径約3mm)を複数所定の間隔で(たとえば、ピッチ約9cm)開設した散布管55とからなる。56は、上記パイプ53に設けられた、吐出量を調整するためのバルブコックである。
【0030】
この凍結防止剤散布機Bも、簡易な構成であるから製造コストを低減することができ、また、気象条件,立地条件等に応じて液状凍結防止剤と粒状凍結防止剤とを同時に散布することもできるので、従来よりも融雪,凍結防止等の効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1に係る凍結防止剤散布機の側面図である。
【図2】上記散布機の粒状凍結防止剤用タンクを拡大して示す要部拡大縦断面図である。
【図3】上記散布機の正面図である。
【図4】上記散布機の背面図である。
【図5】本発明の実施例2に係る凍結防止剤散布機の一部縦断側面図である。
【図6】上記散布機の一部縦断正面図である。
【図7】上記散布機の背面図である。
【符号の説明】
【0032】
A,B 凍結防止剤散布機
4,31 車台
5,37 粒状凍結防止剤散布部
6,38 液状凍結防止剤散布部
7,40 ホッパ
8,41 開口
9,42 レール
10,43 シャッター
12,44 攪拌部
13,45 回転軸
13’ 螺旋状体
14,48 スプロケット
15,49 スプロケット
16,50 チェーン
17,51 タンク
18,52 ポンプ
20,54 吐出孔
21,55 散布缶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手押し式の車台に、
<i>粒状の凍結防止剤を収納するホッパの開口の直下の位置に、スライド自在にしたシャッターを配置し、そのシャッターにより上記開口の開度を調整することで、所望の量の上記粒状の凍結防止剤を吐出して散布できるようにした粒状凍結防止剤散布部と、
<ii>液状の凍結防止剤を収納するタンクと、そのタンク内の凍結防止剤を吸い出す手動式ポンプと、該ポンプにより送給される凍結防止剤を、車台に横架固定された散布管に送給し、該散布管に所定の間隔で複数開設した吐出孔から吐出して散布できるようにした液状凍結防止剤散布部とを設けたことを特徴とする凍結防止剤散布機。
【請求項2】
上記ホッパ内に、攪拌部を設け、粒状凍結防止剤の目詰まりを防止するようにしてなることを特徴とする請求項1記載の凍結防止剤散布機。
【請求項3】
上記攪拌部が、ホッパ内の、上記開口の直上の位置に横架された回転軸に、螺旋状体を螺旋状に巻回してなることを特徴とする請求項2記載の凍結防止剤散布機。
【請求項4】
上記攪拌部が、ホッパ内の、上記開口の直上の位置に横架された回転軸に羽根板を固定してなる羽根車からなることを特徴とする請求項2記載の凍結防止剤散布機。
【請求項5】
上記攪拌部が、上記回転軸のホッパ外に突出させた部分に固定したスプロケットと車台の車輪の車軸に固定したスプロケットとの間にチェーンを掛け回し、走行時に回転軸が回転しホッパ内の粒状凍結防止剤の目詰まりを防ぐようにしてなることを特徴とする請求項3または4記載の凍結防止剤散布機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−174155(P2009−174155A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12273(P2008−12273)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(507296805)株式会社TSC (3)