説明

凍結防止剤散布車

【課題】本発明は、アイドルストップによるエンジン停止後の再走行時に、適切に凍結防止剤を散布することができる凍結防止剤散布車を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、凍結防止剤を送り出すコンベア10と、コンベア10から投入される凍結防止剤を円盤駆動モータ13で回転させることによって散布する散布円盤14と、円盤駆動モータ13の回転を制御するための第2のバルブ制御指令値によって、円盤駆動モータの回転を制御する制御部15とを備える凍結防止剤散布車1である。制御部15は、停車後の再走行時、停車前に用いていた第2のバルブ制御指令値を制御再開の基準として、円盤駆動モータ13の回転の制御を開始する。たとえば、制御部15は、ステップS7で記憶した第2のバルブ制御指令値を用いて、再走行時、ステップS8以降で円盤駆動モータ13の回転の制御を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面に、凍結防止剤を散布するための凍結防止剤散布車に関し、より特定的には、散布円盤を用いて凍結防止剤を散布することができる凍結防止剤散布車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凍結防止剤を散布するための凍結防止剤散布車として、車体にホッパを搭載し、ホッパ内に収容された凍結防止剤を、コンベヤによって車体の後方へ搬送して、コンベヤの後端部に設けたシュータにより、散布円盤上に落下させ、散布円盤の回転で路面上に散布するようにしたものが知られている(特許文献1)。
【0003】
散布円盤の回転を用いて凍結防止剤を散布する場合、道路幅に応じて所望の散布幅で凍結防止剤を散布しなければならない。そこで、凍結防止剤を所望の散布幅で散布するために、散布円盤の回転速度(回転数)を制御すればよいことも、従来より知られている(特許文献2)。
【0004】
散布円盤を回転させるための円盤駆動用モータに油圧モータを用いる場合、たとえば、エンジンから、PTO(Power take−off)によって、動力を取り出し、取り出した動力で油圧ポンプを駆動させて、油圧ポンプから吐出される圧油によって、油圧モータを回転させる。油圧モータの回転数は、油圧モータに供給される圧油の量によって決まり、圧油弁の開閉量によって制御される。そのため、油圧モータを所望の回転数にするためには、油圧モータの回転数を検出しながら圧油弁の開閉量を随時修正するフィードバック制御を用いることとなる。
【0005】
なお、コンベアは、凍結防止剤を車両後方に送り出すにあたり、車速に応じて、適正量を送り出さなければならない。油圧モータによってコンベアを駆動する場合、車速が検知され、車速に応じた油圧モータの回転数が演算され、当該回転数に適合するように、当該油圧モータの回転数がフィードバック制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3017700号公報 図4
【特許文献2】特許第3417294号公報 段落0012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、近年、環境保全や、燃料消費削減、二酸化炭素排出抑制などの観点から、信号等で停車した時点で、エンジンをアイドリングせずに停止させる、いわゆるアイドルストップといわれる行動が行われるようになってきている。車種によっては、アイドルストップを自動で行うものも存在する。凍結防止剤散布車においても、手動及び自動を問わず、アイドルストップを行うことが要求されつつある。
【0008】
アイドルストップを行う場合、停車時にエンジンを停止させることとなるが、凍結防止剤散布車のエンジンが停止すると、回転円盤を駆動するための油圧モータ(以下、円盤駆動モータという)及びコンベアを駆動するための油圧モータ(以下、コンベアモータという)が停止することとなる。そこで、停車によるエンジン停止後の再走行時の状況を考えることにする。
【0009】
停車によって、円盤駆動モータに供給される圧油は、無くなった状態となっている。したがって、円盤駆動モータは、慣性を考慮しなければ、停止状態となっている。したがって、円盤駆動モータの回転数を制御するための制御装置は、円盤駆動モータの回転数が0であると認識する。しかし、道路幅に応じた散布幅に対応するように、回転数が当該制御装置に設定されている。当該制御装置は、先述のように、フィードバック制御によって、円盤駆動モータの回転数を制御しているので、再走行時、0回転から所望の回転数に近づけるために、円盤駆動モータの油圧弁に対して、回転数が最大になるように、油圧弁を一気に開放するように指令することとなる。したがって、従来の凍結防止剤散布車の場合、アイドルストップ後の再走行時には、円盤駆動モータが最大回転数で回転し、結果、最大散布幅で凍結防止剤が散布されてしまう可能性が存在する。停車後、いきなり最大散布幅で凍結防止剤が散布されることは、決して好ましいことではない。結果として、手動及び自動を問わず、アイドルストップを凍結防止剤散布車にて実行することは、好ましくなかった。特に、自動のアイドルストップ機能を凍結防止剤散布車に設ける場合、適正散布の要求仕様に適合できなくなるので、自動アイドルストップ機能を備える凍結防止剤散布車の実用化が難しかった。
【0010】
なお、コンベアモータは、車速に応じた回転数で制御されるため、停車後の再走行時、凍結防止剤がいきなり最大量送り出されるという状況にはなりにくい。
【0011】
それゆえ、本発明は、アイドルストップによるエンジン停止後の再走行時に、適切に凍結防止剤を散布することができる凍結防止剤散布車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような特徴を有する。本発明は、凍結防止剤を送り出す搬送部と、油圧モータで散布円盤を回転させ、搬送部から投入される凍結防止剤を散布する散布部と、油圧モータの回転を制御するための回転制御情報によって、油圧モータの回転を制御する制御部とを備える凍結防止剤散布車である。制御部は、停車後の再走行時、停車前に用いていた回転制御情報を制御再開の基準として、油圧モータの回転の制御を開始することを特徴とする。
【0013】
好ましくは、制御部は、走行時、設定された散布幅となるように、フィードバック制御によって、油圧モータの回転を制御するとよい。
【0014】
好ましくは、制御部は、回転制御情報を走行中に記憶し、停車後の再走行時、過去に記憶した回転制御情報に基づいて、油圧モータの回転の制御を開始する。
【0015】
好ましくは、回転制御情報は、油圧モータの油圧弁の開閉量に関する情報であるとよい。たとえば、回転制御情報として、油圧バルブのバルブ制御指令値を用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、制御部は、停車後の再走行時、停車前に用いていた回転制御情報を制御再開の基準として、油圧モータの回転の制御を開始する。したがって、従来のように、アイドルストップ後の再走行時に、油圧バルブが一気に開放され、凍結防止剤が所望の散布幅とは関係なく散布されてしまう事態を防止することができる。よって、手動及び自動を問わず、アイドルストップを凍結防止剤散布車にて実行する場合に、再走行時に、凍結防止剤を適切な散布幅で散布することが可能となる。特に、自動のアイドルストップ機能を凍結防止剤散布車に設ける場合、散布幅を仕様に合致した適切なものとすることが可能となり、結果、自動アイドルストップ機能を備える凍結防止剤散布車の実用化が可能となる。
【0017】
制御部は、走行時、フィードバック制御によって、設定された散布幅となるように、油圧モータの回転を制御しているので、停車前に用いていた回転制御情報は、適切な散布幅を得ることができる情報となる。よって、停車前に利用していた回転制御情報を制御再開の基準とすれば、再走行時に、適切な散布幅が得られることとなる。
【0018】
一実施形態として、制御部が走行中に回転制御情報を記憶し、再走行時に、過去に記憶した回転制御情報を用いて、油圧モータの回転の制御を開始する。これによって、簡易な構成及び制御によって、再走行時の適切な散布幅を得ることができる凍結防止剤散布車が提供されることとなる。
【0019】
油圧モータの油圧弁の開閉に関する情報を回転制御情報として利用すれば、周知の従来部品を用いて、凍結防止剤散布車を構成することができ、制御部の動作を本発明に示す動作とすればよいので、凍結防止剤散布車の実用化がさらに容易となる。
【0020】
本発明のこれら、及び他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る凍結防止剤散布車1の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、凍結防止剤散布車1の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、円盤駆動モータ13を制御する際の制御部15の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る凍結防止剤散布車1の概略構成を示す図である。図1において、凍結防止剤散布車1は、油圧ポンプ2と、トラックシャーシ3と、エンジン4と、ミッション5と、PTO6と、走行変速機7と、油圧弁8と、コンベアモータ9と、コンベア10と、ホッパ11と、シュータ12と、円盤駆動モータ13と、散布円盤14とを備える。
【0023】
エンジン4によって得られた動力は、ミッション5を介して、PTO6に伝達される。エンジン4の動力をPTO6へ取り出すための構成としては、あらゆる構成を使用することができる。また、エンジン4によって得られた動力は、ミッション5を介して、走行変速機7に伝達するように構成されている。走行変速機7に伝達された動力は、シャフト16を介して、後輪17を駆動させる。
【0024】
PTO6の回転軸は、油圧ポンプ2に連結されている。エンジン4が駆動している際、PTO6の回転軸が回転し、油圧ポンプ2に動力が伝達される。油圧ポンプ2は、PTO6からの動力によって、圧油を発生させる。油圧ポンプ2が吐出した作動油は、油圧弁8を介して、コンベアモータ9及び円盤駆動モータ13に伝達される。なお、図1では、作動油を伝達するための油圧回路の記載を省略している。コンベアモータ9及び円盤駆動モータ13は、油圧モータである。油圧弁8は、コンベアモータ9に作動油を供給するための油圧弁8a(図2にて後述)と、円盤駆動モータ13(図2にて後述)に作動油を供給するための油圧弁8bとを含む。
【0025】
コンベアモータ9の回転軸が回転することによって、コンベア10が回転する。ホッパ11に収容された凍結防止剤は、コンベア10によって、車両後方に送り出される。コンベア10の終端には、シュータ12がトラックシャーシ3に取り付けられている。シュータ12に凍結防止剤が投入される。シュータ12に投入された凍結防止剤は、円盤駆動モータ13によって回転する散布円盤14上に落とされる。散布円盤14が回転することによって、凍結防止剤が遠心力にしたがって、散布されることとなる。
【0026】
図2は、凍結防止剤散布車1の機能的構成を示すブロック図である。図2において、図1と同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付す。図2に示すように、凍結防止剤散布車1は、さらに、制御部15を備える。油圧弁8a及び油圧弁8bは、電気信号によって作動油の圧力や流量が制御されることができるあらゆる構造を有する。制御部15は、油圧弁8a及び油圧弁8bの開閉量を制御することによって、油圧ポンプ2から吐出される作動油の圧力や流量などを制御する。制御部15は、油圧弁8a及び油圧弁8bを、それぞれ、第1のバルブ制御指令値及び第2のバルブ制御指令値によって、個別に制御する。第1のバルブ制御指令値及び第2のバルブ制御指令値は、コンベアモータ9及び円盤駆動モータ13の回転を制御するための回転制御信号である。バルブ制御指令値は、油圧モータの回転を制御するための回転制御情報の一例である。なお、本発明において、油圧モータの回転を制御するための回転制御信号としては、バルブ制御指令値以外の制御信号が用いられてもよく、回転制御信号の種類は、本発明を限定するものではない。なお、本実施形態では、制御部15は、油圧モータの回転数を検知することによって回転を制御することとしているが、回転速度やその他の回転に関する情報に基づいて、油圧モータの回転を制御してもよい。また、制御部15には、走行変速機7からの走行速度に関する信号(走行速度信号)が入力される。
【0027】
制御部15によるコンベアモータ9の制御について説明する。凍結防止剤の散布幅及び車速に応じて、コンベア10がシュータ12に送り出さなければならない凍結防止剤の量は、予め概ね決まる。なお、散布幅は、凍結防止剤の散布施工時に、道路幅に応じて、運転手によって設定される。したがって、そのような量の凍結防止剤を散布するために必要なコンベアモータ9の回転数も決まる。したがって、制御部15は、設定された散布幅及び車速に応じて、コンベアモータ9が適切な回転数となるように、油圧弁8aを制御する。
【0028】
制御部15によるコンベアモータ9の制御の具体的な一例を説明するが、本発明を限定するものではない。たとえば、制御部15は、散布幅及び車速に応じたコンベアモータ9の回転数を予め記憶しておく。制御部15は、設定された散布幅及び走行速度信号から認識される車速に対応するコンベアモータ9の回転数を記憶内容から読み出すことによって、散布幅及び車速に応じたコンベアモータ9の回転数を認識する。制御部15は、コンベアモータ9の回転数の検出部(図示せず)から、コンベアモータ9の回転数を認識する。制御部15は、認識したコンベアモータ9の回転数が適正な回転数となっているか否かを判断する。制御部15は、適正な回転数よりも現在の回転数が大きければ、油圧弁8aを閉じる方向に、油圧弁8aを制御する。一方、制御部15は、適正な回転数よりも現在の回転数が小さければ、油圧弁8aを開ける方向に、油圧弁8aを制御する。制御部15は、油圧弁8aの開閉量を、適正な回転数と現在の回転数とがどの程度離れているかに応じて、演算する。このような演算方法は、いわゆるフィードバック制御と呼ばれるものであるから、演算方法として、あらゆる方法を利用することができる。このように、制御部15は、典型的には、フィードバック制御によって、コンベアモータ9の回転数を適切な回転数に制御する。ただし、コンベアモータ9の回転数の制御方法については、本発明において、特に限定されるものではない。
【0029】
図3は、円盤駆動モータ13を制御する際の制御部15の動作を示すフローチャートである。以下、図3を参照しながら、制御部15による円盤駆動モータ13の制御について説明する。図3において、まず、エンジン4が始動し(ステップS1)、使用者によって凍結防止剤の散布幅が設定され(ステップS2)、凍結防止剤散布車1の走行が開始して、散布が開始したとし(ステップ3)、ステップS4の動作に進む。
【0030】
ステップS4において、制御部15は、円盤駆動モータの回転数を図示しない検知部からの信号に基づいて検知する(ステップS4)。ステップS4の後、制御部15は、円盤駆動モータの回転数が散布幅に合うように、第2のバルブ制御指令値を修正して、油圧弁8bの開閉量を調整する(ステップS5)。ステップS5における修正方法としては、様々な方法が考えられるが、以下、一例を詳述する。たとえば、制御部15は、散布幅に応じた円盤回転モータ13の回転数を予め記憶しておく。制御部15は、設定された散布幅に対応する円盤回転モータ13の回転数を記憶内容から読み出すことによって、散布幅に応じた円盤回転モータ13の回転数を認識する。制御部15は、円盤回転モータ13の回転数の検出部(図示せず)から、円盤回転モータ13の回転数を認識する。制御部15は、認識した円盤回転モータ13の回転数が適正な回転数となっているか否かを判断する。制御部15は、適正な回転数よりも現在の回転数が大きければ、油圧弁8bを閉じる方向に、油圧弁8bを制御する。一方、制御部15は、適正な回転数よりも現在の回転数が小さければ、油圧弁8bを開ける方向に、油圧弁8bを制御する。制御部15は、油圧弁8bの開閉量を、適正な回転数と現在の回転数とがどの程度離れているかに応じて、演算する。このような演算方法は、いわゆるフィードバック制御と呼ばれるものであるから、演算方法として、あらゆる方法を利用することができる。このように、制御部15は、典型的には、フィードバック制御によって、円盤回転モータ13の回転数を適切な回転数に制御する。ただし、円盤回転モータ13の回転数の制御方法については、本発明において、特に限定されるものではない。
【0031】
ステップS5の後、制御部15は、修正に利用した第2のバルブ制御指令値を記憶し(ステップS6)、ステップS7の動作に進む。
【0032】
なお、停車の数秒前の第2のバルブ制御指令値による円盤回転モータ13の回転数が適切な回転数であることが予想されるので、ステップS4からステップS6の動作に、数秒間を要するように、ステップS4からステップS6のどこかのタイミングで、一時動作を待機するようにしておくとよい。ただし、これは、本発明を限定するものではない。
【0033】
ステップS7において、制御部15は、エンジン4が停止しているかを判断する。エンジンが停止していない場合、制御部15は、ステップS4の動作に戻る。一方、エンジンが停止している場合、制御部15は、アイドルストップの状態となる。アイドルストップの状態において、制御部15には電源が供給されており、制御部15は、ステップS7において記憶していた第2のバルブ制御指令値を読み出す(ステップS8)。
【0034】
なお、ステップS4からステップS6のどこかのタイミングで待機処理を行わない場合、制御部15は、所定の数秒前に格納された第2のバルブ制御指令値を読み出すようにしてもよい。
【0035】
また、ステップ8では、制御部15は、ステップS6で一回前に記憶した第2のバルブ制御指令値を読み出すこととしているが、一回前に記憶した第2のバルブ制御指令値に限られず、二回以前の第2のバルブ制御指令値を読み出してもよい。すなわち、制御部15は、安定した散布幅を得られやすい第2のバルブ制御指令値を読み出し、過去に記憶した第2のバルブ制御指令値に基づいて、円盤回転モータ13の回転の制御を開始すればよい。
【0036】
また、制御再開の際に用いる第2のバルブ制御指令値と過去に記憶していた第2のバルブ制御指令値とは同一である必要はなく、読み出した第2のバルブ制御指令値に対して、演算を加えるなどして修正した上で、修正後の第2のバルブ制御指令値に基づいて、円盤回転モータ13の回転の制御を開始してもよい。よって、記憶していた第2のバルブ制御指令値と制御再開時の第2のバルブ制御指令値とは同一であってもよいし、記憶していた第2のバルブ制御指令値と制御再開時の第2のバルブ制御指令値とは異なっていてもよい。
【0037】
したがって、制御部15は、記憶していた第2のバルブ制御指令値を、制御再開の際の基準として利用して、制御再開時の第2のバルブ制御指令値を決定してもよい。ゆえに、本発明において、制御部15は、停車後の再走行時、停車前に用いていた回転制御情報を制御再開の基準として、円盤回転モータ13の回転の制御を開始することを特徴とする。
【0038】
ステップS8の後、制御部15は、エンジン4が停止しているか否かを判断する(ステップS9)。ステップS9において、エンジン4の停止が継続している場合、制御部15は、そのまま待機する。一方、ステップS9において、エンジンが停止せずに、始動したと判断した場合、制御部15は、ステップS10の動作に進む。
【0039】
ステップS10において、制御部15は、読み出した第2のバルブ制御指令値に基づいて、油圧弁8bのバルブ開閉量を制御する。その後、制御部15は、円盤速度が安定しているか否かを判断し(ステップS11)、安定した場合、ステップS4の動作に戻って、円盤駆動モータ13の回転数の修正を行う。
【0040】
このように、本実施形態において、エンジン始動後は、ステップS4及びS5に示すようなフィードバック制御によって、円盤駆動モータ13が適切な回転となるように制御される。走行を継続している間、フィードバック制御が安定してくると、一定の散布幅となるように、円盤駆動モータ13の回転が安定することとなる。ステップS6において、随時、円盤回転モータ13の回転制御情報として第2のバルブ制御指令値が記憶されるので、安定した回転を有する頃に利用された第2のバルブ制御指令値が記憶されることとなる。アイドルストップ後に、走行を再開する場合、安定した頃の第2のバルブ制御指令値が読み出されて、読み出された第2のバルブ制御指令値に基づいて、油圧弁8bの開閉がスタートする。すなわち、停車前に用いていた回転制御情報が制御再開の基準として用いられて、円盤回転モータ13の回転の制御が開始することとなる。よって、従来のように、アイドルストップ後の再走行時に、油圧弁8bが一気に開放されるということが防止され、適正値又は適正値に近い第2のバルブ制御指令値に基づいて、油圧弁8bが開放されることとなるので、所望の散布幅又は散布幅に近い状態で、凍結防止剤が散布されることとなる。ゆえに、アイドルストップによるエンジン停止後の再走行時に、適切な散布幅で凍結防止剤を散布することができる凍結防止剤散布車が提供されることとなる。
【0041】
なお、本発明において、凍結防止剤を散布円盤に送り出すための構造は、コンベアモータ9及びコンベア10によるものには限られない。たとえば、凍結防止剤をスクリューコンベアなで送り出す搬送部が利用されてもよい。凍結防止剤を送り出すための搬送部としては、あらゆる構造を利用することができる。
【0042】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、凍結防止剤散布車であり、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 凍結防止剤散布車
2 油圧ポンプ
3 トラックシャーシ
4 エンジン
5 ミッション
6 PTO
7 走行変速機
8 油圧弁
9 コンベヤモータ
10 コンベヤ
11 ホッパ
12 シュータ
13 円盤駆動モータ
14 散布円盤
15 制御部
16 シャフト
17 後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結防止剤を送り出す搬送部と、
油圧モータで散布円盤を回転させ、前記搬送部から投入される前記凍結防止剤を散布する散布部と、
前記油圧モータの回転を制御するための回転制御情報によって、前記油圧モータの回転を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、停車後の再走行時、停車前に用いていた前記回転制御情報を制御再開の基準として、前記油圧モータの回転の制御を開始することを特徴とする、凍結防止剤散布車。
【請求項2】
前記制御部は、走行時、設定された散布幅となるように、フィードバック制御によって、前記油圧モータの回転を制御することを特徴とする、請求項1に記載の凍結防止剤散布車。
【請求項3】
前記制御部は、前記回転制御情報を走行中に記憶し、停車後の再走行時、過去に記憶した前記回転制御情報に基づいて、前記油圧モータの回転の制御を開始することを特徴とする、請求項1又は2に記載の凍結防止剤散布車。
【請求項4】
前記回転制御情報は、前記油圧モータの油圧弁の開閉量に関する情報であることを特徴とする、請求項3に記載の凍結防止剤散布車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−144888(P2012−144888A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3223(P2011−3223)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000235163)範多機械株式会社 (26)