説明

凸版印刷版の製造装置

【課題】レーザー彫刻時に版材から発生する粘着性を有する分解生成物の、配管を含む集塵系での付着・堆積を低減可能にする。
【解決手段】ドラム10の外周面に取り付けられた版材にレーザー彫刻機の露光ヘッド30からレーザー光を照射することにより版材の表面に凸部を形成する凸版印刷版の製造装置である。吹付ノズル110から吹き付けられるエアーとともにレーザー彫刻時に発生する分解生成物を吸込フード120から吸い込み、集塵機100のフィルタにより分離したエアーを排気口142から排気する。前記吸込フード120の口元近傍には、前記分解生成物を吸着するゼオライトを供給する噴出口が設けられており、集塵機100のフィルタは、前記分解生成物を吸着したゼオライトとエアーとを分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凸版印刷版の製造装置に係り、特に樹脂、ゴムなどの版材をレーザー彫刻することにより凸版を製造する凸版印刷版の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の凸版印刷版の製造装置として、図9に示すように回転するドラム1の外周面に取り付けられた樹脂等の版材(フレキソ版材)5に、露光ヘッド2からレーザー光を照射して版材の一部を融除することにより該版材をレーザー彫刻し、版材の表面にレリーフ画像を形成するものが知られている。
【0003】
上記レーザー彫刻時には版材から分解生成物(アブレーションカス)が発生するが、この分解生成物の飛散を最小限にするために、吸込フード3により分解生成物を吸引するようにしている。
【0004】
特許文献1には、レーザービームが照射され彫刻されるレーザー彫刻部にエアーを吹き付け、レーザー彫刻部で発生した分解生成物を吸引し、集塵機中のフィルタを通過させた後、屋外に排気させる記載がある。
【0005】
一方、特許文献2には、付着性粒子の分離回収装置が開示されている。この分離回収装置は、球形化処理後のトナーをサイクロン分離機に導入して製品とエアーとに分離し、サイクロン分離機により完全に分離できないエアー中の少量のトナーを含む含塵エアーをバッグフィルタに導入し、エアー中からトナーを分離し、清浄なエアーを大気に排出させるようにしている。
【0006】
そして、バッグフィルタの目詰りを防止するために、サイクロン分離機からバッグフィルタまでの配管に対して吸着材を噴射し、サイクロン分離機から排気される含塵エアーに吸着材を接触させ、付着性粒子の表面に吸着材による膜を形成し、付着性粒子の接着力を低下させるようにしている。これにより、フィルタに対する付着性粒子の接着を防止し、又は付着性粒子がフィルタに付着した場合にも、フィルタを逆洗することにより、付着性粒子を容易に除去できるようにしている。
【0007】
また、特許文献3には、レーザー加工時や溶接作業時に発生する埃、塵、煙、ガス、金属粉等のヒュームを捕集するために用いられるヒューム捕集機が開示されている。
【0008】
このヒューム捕集機は、フィルタ面に炭酸カルシウムやゼオライトに代表される吸着性、脱臭性等を備えた、いわゆるプリコート剤を予め付着させてコート層を形成させ、吸引空気中に含まれるヒュームを前記コート層に吸着させて捕集することにより、フィルタの目詰りを防止しつつ、ヒュームの捕集を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−144910号公報
【特許文献2】特開2006−35037号公報
【特許文献3】特開2005−152834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載のレーザー彫刻印刷版の製造装置は、集塵機中のフィルタにより分解生成物を除去するようにしているが、フレキソ版材の分解生成物は粘着性があるため、集塵用の吸引フードや配管内壁、集塵機のフィルタ表面に付着・堆積し、分解生成物の堆積が進むと、以下の問題が発生する。
【0011】
(1) 配管内径が小さくなり、吸引風量が低下する。
【0012】
(2) 集塵機のフィルタの目詰りにより集塵能力が低下する。
【0013】
集塵能力が低下することで、機内にアブレーションカスが飛散し、露光ヘッド2のレンズや機内がカスで汚れることになる(レンズが汚れると画質へ影響する)。尚、付着カスの付着量の分布としては、エアーの流れの外側(図9の破線部4)への付着が多い。
【0014】
集塵性能の低下を防止するためには頻繁に配管を清掃し、またフィルタを交換する必要があり、煩雑であり稼働率も低下する。また、1枚の製版に約1時間の時間を要するが、レーザー彫刻の開始時から終了時まではフィルタ交換等を行うことができず、レーザー彫刻中の集塵性能の低下を避けることができないという問題がある。
【0015】
一方、特許文献2に記載の付着性粒子の分離回収装置は、バッグフィルタの目詰りを防止するためにサイクロン分離機からバッグフィルタまでの配管に対して吸着材を噴射し、含塵エアーに吸着材を接触させ、バッグフィルタに対する付着性粒子の接着を防止するようにしているが、サイクロン分離機やサイクロン分離機の前段の供給筒内壁での付着性粒子の付着を防止することができない。
【0016】
また、特許文献3の記載のヒューム捕集機もその捕集機に至るまでの配管内のヒュームの堆積を防止することができない。
【0017】
また、特許文献2、3には、レーザー彫刻時に版材から発生する分解生成を回収する集塵機に関する記載はない。
【0018】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、レーザー彫刻時に版材から発生する粘着性を有する分解生成物の、配管を含む集塵系での付着・堆積を低減することができ、集塵性能低下を抑制することができる凸版印刷版の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するために本発明の一の態様に係る発明は、ドラムの外周面に取り付けられた版材にレーザー彫刻機の露光ヘッドからレーザー光を照射することにより前記版材の表面に凸部を形成する凸版印刷版の製造装置において、前記レーザー彫刻機の露光ヘッドの近傍に設けられ、前記レーザー彫刻機による前記版材のレーザー彫刻時に発生する分解生成物をエアーとともに吸い込む吸込フードと、前記吸込フードから吸い込んだエアーを排気口から排気させるための配管と、前記配管に設けられた集塵機であって、前記吸込フードからエアーとともに吸引した分解生成物をエアーから分離するフィルタを有し、該フィルタにより分離したエアーを前記排気口から排気させる集塵機と、前記吸込フードの口元近傍に噴出口が設けられ、該噴出口から前記分解生成物を吸着する吸着材を供給する吸着材供給手段と、を備え、前記集塵機のフィルタは、前記分解生成物を吸着した吸着材とエアーとを分離することを特徴としている。
【0020】
本発明の一の態様に係る凸版印刷版の製造装置によれば、吸込フードの口元近傍から吸着材を供給するようにしたため、レーザー彫刻時に版材から発生した粘着性を有する分解生成物を吸着することができ、吸込フードから排気口に至る配管の内壁に粘着性を有する分解生成物が付着・堆積することを防止することができ、また、前記配管の途中に設けられた集塵機のフィルタの目詰りを防止することができる。これにより、レーザー彫刻時の集塵性能の低下を抑制することができる。
【0021】
本発明の他の態様に係る凸版印刷版の製造装置において、前記吸着材供給手段は、前記集塵機内の吸着材を吸着材供給管を介して前記噴出口から噴出供給することにより循環供給させるようにしている。これにより、分解生成物と結合しなかった吸着材、又は吸着性能が低下していない吸着材を繰り返し使用することができる。
【0022】
本発明の更に他の態様に係る凸版印刷版の製造装置において、前記集塵機は、前記フィルタの表面に堆積した前記分解生成物を吸着した吸着材を払い落とす払落し手段を有することが好ましい。この払落し手段によりフィルタ表面に堆積した、分解生成物を吸着した吸着材を払い落とすことによりフィルタの性能及び吸引風量を維持することができる。払落し手段としては、フィルタ裏面から圧縮エアー(パルスジェット)を吹き付けるもの、又はフィルタを振動させるものが適用できる。尚、粘着性を有する分解生成物は、吸着材に吸着されているため、容易にフィルタ表面から払い落とすことができる。
【0023】
本発明の更に他の態様に係る凸版印刷版の製造装置において、前記集塵機は、前記フィルタの表面に前記吸着材を堆積させるプリコート手段を有することが好ましい。これにより、粘着性を有する分解生成物によるフィルタの目詰りを確実に防止することができる。尚、プリコート手段は、レーザー彫刻開始前に前記吸着材供給手段を動作させて吸着材を供給することにより前記フィルタの表面に吸着材を堆積させることができる。
【0024】
本発明の更に他の態様に係る凸版印刷版の製造装置において、前記集塵機は、前記フィルタの後段に脱臭フィルタ及び排気フィルタのうちの少なくとも一方を有することが好ましい。これにより、前段のフィルタで取り除くことができない臭いや微細な粉塵を取り除くことができる。
【0025】
本発明の更に他の態様に係る凸版印刷版の製造装置において、前記レーザー彫刻機の露光ヘッドを挟んで前記吸込フードに対向する位置に配設された吹付ノズルを有し、該吹付ノズルからエアーを吹き付けるエアー供給手段を更に備えることが好ましい。前記吸込フードに対向する位置に配設された吹付ノズルからエアーを供給することにより、レーザー彫刻部にエアーフローを作ることができ、レーザー彫刻時に版材から発生する分解生成物の飛散を最小限に留めるとともに、前記吹付ノズルから吹き付けられるエアーとともに分解生成物を効率よく吸い込むことができる。
【0026】
本発明の更に他の態様に係る凸版印刷版の製造装置において、前記吹付ノズルは、前記レーザー彫刻機の露光ヘッドから出射されるレーザー光と直交する方向にエアーを吹き付け、前記吸込フードは、前記吹付ノズルから吹き付けられて広がるエアーよりも広い吸込開口を有することが好ましい。これにより、前記吹付ノズルから吹き付けられたエアーを、前記吸込フードの吸込開口から殆ど吸い込むことができ、前記吹付ノズルから吹き付けられたエアーが拡散しないようにすることができる。
【0027】
本発明の更に他の態様に係る凸版印刷版の製造装置において、前記吹付ノズルは、前記レーザー彫刻機の露光ヘッドから出射されるレーザー光の前記版材上の露光点に向けてエアーを吹き付けるようにしている。これにより、版材から発生する分解生成物に対して直ちにエアーを吹き付けることができ、分解生成物の飛散を最小限に留めることができる。
【0028】
本発明の更に他の態様に係る凸版印刷版の製造装置において、前記ドラムの副走査方向に前記露光ヘッドを移動させる副走査手段と、前記副走査手段による前記露光ヘッドの副走査方向の移動に同期して前記吸込フードを移動させる吸込フード駆動手段と、を備え、前記吸込フードから所定の長さの配管は、前記吸込フードの移動に伴って屈曲する可撓性を有するとともに、前記所定の長さの位置にて固定されることが好ましい。吸着材により粘着性が低下した分解生成物は、吸込フードから約1mまでの範囲の配管の内壁に堆積しやすいが、この部分の配管を前記吸込フードの移動に伴って屈曲させることにより、分解生成物と結合した吸着材を落とすことができる。
【0029】
本発明の更に他の態様に係る凸版印刷版の製造装置において、前記吸込フードに振動を与える加振手段を備え、前記吸込フード又は該吸込フードから所定の長さの配管に付着した前記分解生成物と結合した吸着材を落とすことができる。前記加振手段は、レーザー彫刻終了後に吸込フードを加振することにより、該吸込フード又は該吸込フードから所定の長さの配管に付着した分解生成物と結合した吸着材を払い落とすことができる。尚、加振手段としては、前記露光ヘッドの副走査方向の移動に同期して前記吸込フードを移動させる吸込フード駆動手段を振動源として使用することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、レーザー彫刻時に発生する分解生成物を吸い込む吸込フードの口元近傍から吸着材を供給するようにしたため、該吸着材と粘着性を有する分解生成物とを結合させて分解生成物の粘着性を低減させることができ、吸込フードから排気口に至る配管の内壁に分解生成物が付着・堆積することを防止することができ、また、配管の途中に設けられた集塵機のフィルタの目詰りを防止することができる。これにより、レーザー彫刻時の集塵性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る凸版印刷版の製造装置の全体構成を示す概略図
【図2】凸版印刷版の製造装置に用いられるレーザー彫刻機の詳細な構成を示す図
【図3】吹付ノズル及び吸込フードの形状を示す斜視図
【図4】集塵機に含まれるフィルタボックスの実施形態を示す図
【図5】吸込フードと該吸込フードに設けられた吸着材供給管の噴射口の実施形態を示す図
【図6】ドラムに対して移動する吸込フードを示す図
【図7】吹付ノズルの他の実施形態を説明するために用いた図
【図8】吸込フードと該吸込フードの近傍に設けられた吸着材供給管の噴射口の他の実施形態を示す図
【図9】従来の凸版印刷版の製造装置の問題点を説明するために用いた図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面に従って本発明に係る凸版印刷版の製造装置の実施の形態について説明する。
【0033】
[凸版印刷版の製造装置の構成例]
図1は本発明に係る凸版印刷版の製造装置の全体構成を示す概略図である。図1に示すように、この凸版印刷版の製造装置1は、主としてドラム10を含む主走査部、半導体レーザダイオード光源部(LD光源部20(図2参照))、露光ヘッド30を含む副走査部、及び集塵機100を含む集塵系から構成されている。
【0034】
図2は凸版印刷版の製造装置に用いられるレーザー彫刻機の詳細な構成を示す図である。
【0035】
図2に示すように、この凸版印刷版の製造装置は、円筒形を有するドラム10の外周面にシート状の版材Fを巻き付け、ドラム10を図2中の矢印R方向(主走査方向)に回転させるとともに、版材Fに向けてレーザー彫刻機12の露光ヘッド30から、版材Fに彫刻すべき画像の画像データに応じたレーザー光を射出し、露光ヘッド30を主走査方向と直交する副走査方向(図1矢印S方向)に所定ピッチで走査させることで、版材Fの表面に2次元画像を高速で彫刻(記録)するものである。ここでは、版材Fは、フレキソ印刷用の樹脂版又はゴム版である。
【0036】
凸版印刷版の製造装置に用いられるレーザー彫刻機12は、レーザー光を生成するLD光源部20と、LD光源部20で生成されたレーザー光を版材Fに照射する露光ヘッド30と、露光ヘッド30を副走査方向に沿って移動させる露光ヘッド移動部40とを含んで構成されている。
【0037】
LD光源部20は、複数の半導体レーザー21を備えており、各半導体レーザー21の光は、それぞれ個別に光ファイバー70を介して露光ヘッド30の光ファイバーアレイ部300へと伝送される。
【0038】
各半導体レーザー21は、光源基板24上に並んで配置されている。各半導体レーザー21は、それぞれ個別に光ファイバー22の一端部にカップリングされ、光ファイバー22の他端はそれぞれSC型光コネクタ25のアダプタに接続されている。
【0039】
SC型光コネクタ25を支持するアダプタ基板23は、光源基板24の一方の端部に垂直に取り付けられている。また、光源基板24の他方の端部には、半導体レーザー21を駆動するLDドライバー回路(図2中不図示)を搭載したLDドライバー基板27が取り付けられている。各半導体レーザー21は、それぞれ個別の配線部材29を介して、対応するLDドライバー回路に接続されており、各々の半導体レーザー21は個別に駆動制御される。
【0040】
一方、露光ヘッド30には、複数の半導体レーザー21から射出された各レーザー光を取り纏めて射出する光ファイバーアレイ部300が備えられている。光ファイバーアレイ部300の光出射部は、各半導体レーザー21から導かれた複数本の光ファイバー70の出射端が1列に並んで配置された構造となっている。
【0041】
また、露光ヘッド30内には、光ファイバーアレイ部300の光出射部側より、コリメータレンズ32、開口部材33、及び結像レンズ34が、順番に並んで配設されている。コリメータレンズ32と結像レンズ34の組合せによって結像光学系が構成されている。開口部材33は、光ファイバーアレイ部300側から見て、その開口がファーフィールド(Far Field)の位置となるように配置されている。これによって、光ファイバーアレイ部300から射出された全てのレーザー光に対して同等の光量制限効果を与えることができる。
【0042】
露光ヘッド移動部40には、長手方向が副走査方向に沿うように配置されたボールネジ41及び二本のレール42が備えられており、ボールネジ41を回転駆動する副走査モータ(図2中不図示)を作動させることによってボールネジ41上に配置された露光ヘッド30をレール42に案内された状態で副走査方向に移動させることができる。また、ドラム10は主走査モータ(図2中不図示)を作動させることによって、図2の矢印R方向に回転駆動させることができ、これによって主走査がなされる。
【0043】
上記ドラム10の主走査方向の回転及び露光ヘッド30の副走査方向の間欠送りによる露光走査を繰り返すことにより、版材Fの全面に所望の凸部のレリーフ画像を形成する。
【0044】
<集塵系>
次に、レーザー彫刻により発生する分解生成物を捕集する集塵機100を含む集塵系について説明する。
【0045】
図1に示すようにレーザー彫刻機の露光ヘッド30の近傍には、露光ヘッド30を挟んで吹付ノズル110と吸込フード120とが配設されており、これらの吹付ノズル110及び吸込フード120は、図示しない吸込フード駆動手段により露光ヘッド30の副走査方向の移動に同期して移動できるようになっている。
【0046】
吹付ノズル110は、レーザー彫刻時に露光ヘッド30から出射されるレーザー光の光軸と直交する方向にエアーを吹き付けるもので、エアーフローによりレーザー彫刻時に版材Fから発生する粘着性を有する分解生成物(ガス、アブレーションカス、粉塵)を吹き飛ばす。
【0047】
吸込フード120は、前記エアーフローにより吹き飛ばされた分解生成物を、前記吹付ノズル110から吹き付けられたエアーとともに吸引するもので、配管130を介して集塵機100に接続されている。
【0048】
図3に示すように吹付ノズル110は幅広ノズルであり、この吹付ノズル110から吹き付けられるエアー112は徐々に広がるが、吸込フード120の吸込開口120Aは、その広がったエアー112よりも大きな開口に形成され、吹き付けられたエアー112を殆ど回収できるようになっている。尚、ノズル110は、丸ノズル(ラウンドタイプ)でも良い。
【0049】
即ち、吸込フード120を介して吸引されるエアーの吸引量は、吹付ノズル110から供給されるエアーの供給量、及び後述する噴出口232(図5)から吸着材とともに供給されるエアーの供給量以上とし、好ましくは吹付ノズル110からの供給エアー及び噴出口232からの供給エアーよりも数倍多くする。
【0050】
集塵機100は、フィルタボックス102と集塵機本体104とから構成されている。
【0051】
図4はフィルタボックス102の実施の形態を示す図である。このフィルタボックス102は、主としてテーパー底を有する容器1021内に2つの円筒形のフィルタ1022、1023と、パルス発生部1024とが配設されるとともに、容器1021の底部にエアー噴射ノズル1025が配設されて構成されている。尚、円筒形フィルタは二本に限らない。
【0052】
フィルタボックス102の接続口1026には、吸込フード120が接続された配管130が接続され、また、容器1021の底部と吸込フード120の口元近傍(図5参照)との間には、吸着材供給管230が接続されている。
【0053】
フィルタボックス102の底部には、分解生成物と結合する吸着材(この実施の形態では、ゼオライト108)が収容されており、エアー噴射ノズル1025から圧縮エアーを吹き出すことによりフィルタボックス102の底部に貯留されているゼオライト108を、吸着材供給管230を介して吸込フード120に供給できるようになっている。
【0054】
図5に示すように吸込フード120には、前記吸着材供給管230と接続された噴出口232が設けられており、この噴出口232からゼオライト108が吸込フード120内に噴出供給される。
【0055】
そして、レーザー彫刻時に吹付ノズル110から供給されるエアーとともに吸い込まれた分解生成物は、噴出口232から噴出供給されたゼオライト108と結合し、配管130を介して集塵機100のフィルタボックス102に吸引される。尚、吸引力を発生させるブロワは、集塵機本体104内に設けられている。
【0056】
フィルタボックス102は、2つのフィルタ1022、1022のうちのいずれか一方を使用するように吸込路を切り替える。これにより、使用中のフィルタの表面には分解生成物を吸着したゼオライトが堆積する。また、フィルタボックス102は、未使用中のフィルタに対しては、パルス発生部1024からフィルタ裏面側に圧縮エアー(パルスジェット)を吹き付け、フィルタ表面に堆積した分解生成物を吸着したゼオライトを払い落とす。尚、粘着性を有する分解生成物は、ゼオライトと結合して粘着性が低下しているため、容易にフィルタ表面から払い落とすことができる。また、フィルタ表面から堆積物を払い落とす払落し機構としては、パルスジェットを発生するパルス発生部1024に限らず、フィルタを電動又は手動で振動させるものを使用してもよい。
【0057】
このようにして2つのフィルタ1022、1023を切り替え使用することにより、レーザー彫刻の開始時から終了時までフィルタの性能及び吸引風量を維持することができる。
【0058】
また、フィルタから払い落とされたゼオライト、あるいはフィルタに付着せずに容器1021の底部に堆積したゼオライト108は、再び吸込フード120に供給(循環供給)される。これにより、分解生成物と結合しなかったゼオライト、又は吸着性能が低下していないゼオライトを繰り返し使用することができる。
【0059】
集塵機100のフィルタボックス102を通過したエアーは、フィルタボックス102に接続された集塵機本体104(図1)に供給される。図1に示す集塵機本体104は、フィルタボックス102で捕集できない臭いや微粉塵を捕集するもので、活性炭を使用した脱臭フィルタ、HEPAフィルタなどの排気フィルタ、及びブロワ(送風機)を備えている。この種の集塵機本体104としては、前記機能を有した既存のものを使用することができる。
【0060】
集塵機本体104から排気されたエアーは、配管140を介して排気口142から屋外に排気される。
【0061】
<配管内壁に付着したゼオライトの払い落とし>
ゼオライトにより粘着性が低下した分解生成物は、吸込フード120から約1mまでの範囲の配管の内壁に堆積しやすい。
【0062】
吸込フード120から約1mまでの範囲の配管の内壁に堆積した堆積物を払い落とすために、図6に示すように配管130として、可撓性を有するホースを使用し、固定部132によりホースを固定する。
【0063】
これにより、副走査方向に移動する吸込フード120と固定部132との間のホースは、移動する吸込フード120の位置に応じて屈曲する。尚、固定部132によるホースの固定は、ホースの屈曲が大きくなるように固定位置及び固定方向が決定される。図6に示す実施形態では、図6上でホース先端を左側に出すように固定しているが、右側に出すように固定するようにしてもよい。
【0064】
吸込フード120は、露光ヘッド30の副走査方向の移動に伴って移動させられるが、この吸込フード120の移動に伴って吸込フード120に連結されたホースが屈曲し、ホース内壁に堆積した堆積物(ゼオライトとの結合により粘着性が低下した分解生成物)を払い落とすことができる。
【0065】
また、吸込フード120に振動を与える加振手段を設け、吸込フード120又は吸込フード120から所定の長さのホースに付着した堆積物を払い落とすようにしてもよい。この場合の加振手段としては、吸込フード120を副走査方向に移動させる吸込フード駆動手段を振動源として使用し、レーザー彫刻終了後に吸込フード120を振動(副走査方向に小刻みに往復)させることで構成することができる。また、レーザー彫刻終了後に別振動源によりホースを振動(叩いても可)させる。
【0066】
[その他]
図1の実施形態で示した吹付ノズル110は、レーザー彫刻時に露光ヘッド30から出射されるレーザー光の光軸と直交する方向にエアーを吹き付けるようにしているが、これに限らず、図7に示す吹付ノズル110’のように、レーザー光の版材上の露光点に向けてエアーを吹き付けるようにしてもよい。これにより、版材から発生する分解生成物に対して直ちにエアーを吹き付けることができ、露光ヘッド30に分解生成物が付着しないようにすることができる。
【0067】
また、図8に示すようにゼオライトの噴出口233を吸込フード120の直下の配管に設けようにしてもよい。この場合、吸込フード120から吸い込んだエアー(流速の速いエアー)によりゼオライトを霧吹き状に拡散させることができる。また、噴出口233の下流側の配管に膨らみ部234を設け、ここでエアーの流速を遅くし、ゼオライトと分解生成物との結合を促すようにしている。
【0068】
また、フィルタボックス102のフィルタ1022、1023の表面に予めゼオライトを堆積させるプリコート手段を設けるようにしてもよい。これによれば、粘着性を有する分解生成物によるフィルタの目詰りを確実に防止することができる。尚、プリコート手段としては、レーザー彫刻開始前の一定時間、ゼオライトを吸込フード120に供給することにより、フィルタ1022、1023の表面にゼオライトを堆積させることができる。また、吸込フード120と集塵機100との間の配管130の内壁にもゼオライトをプリコートすることができ、分解生成物の付着を低減することができる。
【0069】
この実施形態では、集塵機100(フィルタボックス102)からゼオライトを吸込フードの口元近傍に循環供給するようにしたが、これに限らず、専用の吸着材供給手段からゼオライトを供給するようにしてもよい。
【0070】
また、この実施形態の集塵機100は、フィルタボックス102と集塵機本体104とが別々に構成されて連結されているが、これに限らず、一体的に構成されているものでもよい。
【0071】
更に、本発明に適用される吸着材としては、ゼオライトに限らず、炭酸カルシウム等の他の吸着材を使用してもよい。
【0072】
また、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
10…ドラム、12…レーザー彫刻機、30…露光ヘッド、100…集塵機、102…フィルタボックス、104…集塵機本体、108…ゼオライト、110、110’…吹付ノズル、120…吸込フード、130、140…配管、142…排気口、230…吸着材供給管、232、233…噴出口、1022、1023…フィルタ、1024…パルス発生部、1025…エアー噴射ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムの外周面に取り付けられた版材にレーザー彫刻機の露光ヘッドからレーザー光を照射することにより前記版材の表面に凸部を形成する凸版印刷版の製造装置において、
前記レーザー彫刻機の露光ヘッドの近傍に設けられ、前記レーザー彫刻機による前記版材のレーザー彫刻時に発生する分解生成物をエアーとともに吸い込む吸込フードと、
前記吸込フードから吸い込んだエアーを排気口から排気させるための配管と、
前記配管に設けられた集塵機であって、前記吸込フードからエアーとともに吸引した分解生成物をエアーから分離するフィルタを有し、該フィルタにより分離したエアーを前記排気口から排気させる集塵機と、
前記吸込フードの口元近傍に噴出口が設けられ、該噴出口から前記分解生成物を吸着する吸着材を供給する吸着材供給手段と、を備え、
前記集塵機のフィルタは、前記分解生成物を吸着した吸着材とエアーとを分離することを特徴とする凸版印刷版の製造装置。
【請求項2】
前記吸着材供給手段は、前記集塵機内の吸着材を吸着材供給管を介して前記噴出口から噴出供給することにより循環供給させる請求項1に記載の凸版印刷版の製造装置。
【請求項3】
前記集塵機は、前記フィルタの表面に堆積した前記分解生成物を吸着した吸着材を払い落とす払落し手段を有する請求項1又は2に記載の凸版印刷版の製造装置。
【請求項4】
前記集塵機は、前記フィルタの表面に前記吸着材を堆積させるプリコート手段を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の凸版印刷版の製造装置。
【請求項5】
前記集塵機は、前記フィルタの後段に脱臭フィルタ及び排気フィルタのうちの少なくとも一方を有する請求項1から4のいずれか1項に記載の凸版印刷版の製造装置。
【請求項6】
前記レーザー彫刻機の露光ヘッドを挟んで前記吸込フードに対向する位置に配設された吹付ノズルを有し、該吹付ノズルからエアーを吹き付けるエアー供給手段を更に備えた請求項1から5のいずれか1項に記載の凸版印刷版の製造装置。
【請求項7】
前記吹付ノズルは、前記レーザー彫刻機の露光ヘッドから出射されるレーザー光と直交する方向にエアーを吹き付け、
前記吸込フードは、前記吹付ノズルから吹き付けられて広がるエアーよりも広い吸込開口を有することを特徴とする請求項6に記載の凸版印刷版の製造装置。
【請求項8】
前記吹付ノズルは、前記レーザー彫刻機の露光ヘッドから出射されるレーザー光の前記版材上の露光点に向けてエアーを吹き付ける請求項6に記載の凸版印刷版の製造装置。
【請求項9】
前記ドラムの副走査方向に前記露光ヘッドを移動させる副走査手段と、
前記副走査手段による前記露光ヘッドの副走査方向の移動に同期して前記吸込フードを移動させる吸込フード駆動手段と、を備え、
前記吸込フードから所定の長さの配管は、前記吸込フードの移動に伴って屈曲する可撓性を有するとともに、前記所定の長さの位置にて固定される請求項1から8のいずれか1項に記載の凸版印刷版の製造装置。
【請求項10】
前記吸込フードに振動を与える加振手段を備え、前記吸込フード又は該吸込フードから所定の長さの配管に付着した前記分解生成物と結合した吸着材を払い落とす請求項1から9のいずれか1項に記載の凸版印刷版の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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