説明

凹凸構造体及びその製造方法

【課題】耐溶剤性を有する凹凸構造体を製造する。
【解決手段】分散媒と微粒子14とを含む疎水性液をつくる。微粒子は、疎水性の液体に対して一定レベルの不溶性をもつ。疎水性液を支持体に塗布する。疎水性液からなる膜が支持体上に形成する。膜に湿潤気体をあてる。結露により膜の表面に水滴が形成する。膜に分散媒蒸発用気体をあてる。膜から分散媒が蒸発する。膜に水滴蒸発用気体をあてる。膜から水滴が蒸発する。微粒子14からなる凹凸構造体10には、水滴を鋳型とする孔12が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子の集合体であって、表面に凹凸を有する凹凸構造体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、光学材料や電子材料の分野では、集積度の向上や情報量の高密度化、画像情報の高精細化といった要求がますます大きくなっている。そのため、これらの分野に用いられる部材の表面に微細な構造を設ける技術(微細パターニング)が求められている。また、再生医療分野の研究においては、表面に微細な構造を有する部材が、細胞培養する足場となる基材として有効であることが知られている。したがって、微細パターニングは、光学材料や電子材料の分野のみならず、再生医療分野等、幅広い分野で求められている。
【0003】
微細パターニングについては、マスクを用いた蒸着法、光化学反応ならびに重合反応を用いた光リソグラフィー技術、レーザーアブレーション技術など種々の方法が知られており実用化もされている。この他、ポリマーが溶媒に溶解した液からなる膜に水滴を形成した後、この水滴を蒸発させる。水滴の蒸発により、水滴が鋳型となって、ポリマーフィルムの表面に多数の孔を形成することができる(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0004】
前述した各方法によれば、表面に微細な凹凸構造を有する部材(以下、凹凸構造体と称する)を製造することができる。中でも、特許文献1〜2に記載の方法では、結露によって多数の水滴を形成するため、蒸着法、光リソグラフィー、レーザーアブレーション等に比べ、加工精度の向上及び凹凸構造体の製造容易化などを実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−2241号公報
【特許文献2】特開2003−80538号公報
【特許文献3】特開2007−175962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような凹凸構造体には幅広い分野での適用が考えられる。例えば、画像表示面に用いられる反射防止フィルムや指紋付着抑制フィルムとして、凹凸構造体を用いる場合、各フィルムに付着した汚れを取り除くために用いられる洗剤の種類によっては、凹凸構造体に耐溶剤性が求められる。また、凹凸構造体を特許文献2に記載のような高耐久性フィルタや特許文献3に記載のようなインクジェット等の液体吐出ヘッドに用いられる撥液性膜に用いる場合には、凹凸構造体に耐溶剤性が要求される。
【0007】
ところが、特許文献1に記載の方法は、凹凸構造体の原料が溶剤への溶解性を有することが前提となっているため、耐溶剤性を有する凹凸構造体を製造する方法には適していない。また、特許文献2に記載の方法は、ポリイミドの前駆体であり、溶剤に可溶なポリアミック酸を用いて凹凸構造体を形成した後、イミド化により、耐溶剤性を有するポリイミドの凹凸構造体をつくるものである。したがって、特許文献2に記載の方法を採用する場合には、原料に制限が課される結果、製造した凹凸構造体を幅広い分野で適用する点について限界がある。更に、特許文献2に記載の方法は、ポリアミック酸のイミド化を行うことが必要となること、及びイミド化の工程で生じた異物を除去する必要があることから、製造工程が複雑になってしまう。特許文献3に記載の方法も、耐溶剤性を付与するためにはフッ素コーティングが必要になることから、特許文献2と同様に、原料に制限が課される。一方、耐溶剤性を有する凹凸構造体を、蒸着法、光リソグラフィー、レーザーアブレーション等により製造することも可能であるが、加工精度の向上及び凹凸構造体の製造容易化が困難となる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、耐溶剤性の高い凹凸構造体及びその凹凸構造体を容易に高精度で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の孔を表面に有する凹凸構造体の製造方法において、前記孔よりも寸法が小さい微粒子及びこの微粒子の分散媒を含む疎水性液の液面に前記孔の鋳型となる水滴を形成する水滴形成工程と、前記微粒子の流動性が消失するまで、前記水滴形成工程を経た前記疎水性液から前記分散媒を蒸発させる分散媒蒸発工程と、前記微粒子の流動性が消失した状態の前記疎水性液から前記水滴を蒸発させる水滴蒸発工程とを有することを特徴とする。
【0010】
前記疎水性液に含まれる前記分散媒の質量をM1とし、前記疎水性液に含まれる前記微粒子の質量をM2とする場合に、(M1/M2)×100と表される残留分散媒量が、前記水滴蒸発工程を開始する際、50質量%以下であることが好ましい。また、分散状態の前記微粒子を含む前記疎水性液に対し前記水滴形成工程を行うことが好ましい。
【0011】
更に、前記疎水性液の液面は、支持体に塗布された前記疎水性液からなる膜の表面であることが好ましい。加えて、前記水滴形成工程の前に、分散状態の前記微粒子を含む前記疎水性液を前記支持体に塗布して、前記支持体に前記膜を形成し、形成されてから10分経過する前の前記膜に対し前記水滴形成工程を開始することが好ましい。なお、前記疎水性液の水に対する界面張力が5mN/m以上25mN/m以下であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の凹凸構造体は、所定の溶剤に対して不溶性を有する微粒子の集合体であって、前記集合体の表面には前記微粒子よりも寸法の大きい孔が複数形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、凹凸構造体を微粒子の集合体としているため、耐溶剤性を有する凹凸構造体を製造することができる。また、微粒子及びこの微粒子の分散媒を含む疎水性液からなる膜の表面に孔の鋳型となる水滴を形成する水滴形成工程と、この水滴形成工程を経た膜から分散媒を蒸発させる分散媒蒸発工程と、この分散媒蒸発工程を経て、微粒子の流動性が消失した状態の膜から水滴を蒸発させる水滴蒸発工程とを有するため、凹凸構造体において孔が安定して存在することとなる。したがって、本発明によれば、耐溶剤性の高い凹凸構造体を容易に高精度で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】表面に複数の孔を有する第1の凹凸構造体の概要を示す平面図である。
【図2】第1の凹凸構造体の概要を示すII−II線断面図である。
【図3】第1の凹凸構造体のIII部分の概要を示す拡大図であり、孔が形成された凹凸構造体の表面を法線方向からみたときの端面図である。
【図4】第1の凹凸構造体のIV部分の概要を示す拡大図である。
【図5】凹凸構造体の製造方法の概要を示す説明図である。
【図6】凹凸構造体製造設備の概要を示す説明図である。
【図7】膜形成工程における膜の概要を示す断面図である。
【図8】水滴形成工程における膜の概要を示す断面図である。
【図9】水滴形成工程における膜の概要を示す断面図である。
【図10】分散媒蒸発工程における膜の概要を示す断面図である。
【図11】水滴蒸発工程における前駆体の概要を示す断面図である。
【図12】第2の凹凸構造体の概要を示す断面図である。
【図13】第3の凹凸構造体の概要を示す断面図である。
【図14】第4の凹凸構造体の概要を示す断面図である。
【図15】第5の凹凸構造体の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、本発明により得られる凹凸構造体10は、シート状に形成され、表面に孔12を有する。孔12は、ハチの巣状、いわゆるハニカム構造となるように凹凸構造体10に密に配列する。
【0016】
なお、本明細書において、ハニカム構造とは、上記のように、一定形状、一定サイズの孔が連続かつ規則的に配列している構造を意味する。ハニカム構造をなす基本構造は、同一平面上において、任意の1つの孔を囲むように複数(例えば、6個)の孔が配されるものである。任意の1つの孔を囲むように配される孔の数は、6個に限らず、3〜5個或いは7個以上でも良い。
【0017】
そして、この孔12の寸法や形成密度は、後述する製造条件によって異なる。本発明により製造される凹凸構造体10の形態は特に限定されるものではないが、本発明は、例えば、図2に示すように、凹凸構造体10の厚みTH1が0.05μm以上10μm以下であることが好ましく、0.05μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上3μm以下であることが特に好ましい。また、図1に示すように、孔12の径D1が0.05μm以上3μm以下であることが好ましく、0.1μm以上2μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上1μm以下であることが特に好ましい。孔12の形成ピッチP1が0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上3μm以下であることが特に好ましい。
【0018】
図2及び図4に示すように、凹凸構造体10の表面10aから孔12の底部12aまでの深さをDe1とすると、De1/D1の値は、0.05以上1.2以下であることが好ましく、0.2以上1.0以下であることがより好ましい。なお、図3,図4,図7〜11は、いずれも模式的に描いた図である。
【0019】
図3及び図4に示すように、凹凸構造体10は、微粒子14の集合体である。微粒子14の径D2は、孔12の径D1よりも小さい。D1/D2の値は、5以上50000以下であることが好ましく、10以上10000以下であることがより好ましい。また、微粒子14の径D2は、1nm以上10μm以下であることが好ましく、3nm以上1μm以下であることがより好ましく、5nm以上0.1μm以下であることが特に好ましい。
【0020】
凹凸構造体10の孔12が形成されている表面を成す微粒子14は、曲面状に並ぶ。例えば、図4に示すように、凹凸構造体10の孔12が形成されている表面のうち孔12の部分では、微粒子14が球面状に並ぶ。このように曲面状に並ぶ微粒子14は、一定の規則性をもって配置している場合がある。例えば図4の凹凸構造体10では、孔12を成して並ぶ複数の微粒子14は、千鳥状に微粒子14が配列した規則性部分14aを構成する。また、凹凸構造体10の厚み方向において底部12a(図2参照)よりも深い深部も、微粒子14が一定の規則性をもって配置した規則性部分14aから構成される場合がある。例えば凹凸構造体10の底部12aよりも深い深部である規則性部分14aでは、図4に示すように、複数の微粒子14がマトリックス状に配列している。このように、表面を成す規則性部分14aと深部を成す規則性部分14aとの微粒子14の配列の規則性は、必ずしも互いに同じであるとは限らない。さらに、凹凸構造体10の孔12が形成されている表面を成す規則性部分14aと、深部を成す規則性部分14aとの間に、微粒子14が規則性をもたずに集合している不規則性部分14bが形成される場合もある。規則性部分14aにおける微粒子14の配列は、体心立方構造、面心立方構造、六方最密構造、その他の結晶構造にみられる原子の配列である。不規則性部分14bにおける微粒子14の配列は、結晶粒界における原子の配列に相当する。なお、凹凸構造体10の耐溶剤性という性質は、上記のような規則性部分14aの有無、不規則性部分14bの有無とは無関係に得られる。
【0021】
図5に示すように、凹凸構造体の製造方法20は、分散媒21及び微粒子14を含む疎水性液15から凹凸構造体10をつくるものであり、疎水性液15からなる膜16の表面に孔12(図1参照)の鋳型となる水滴を形成する水滴形成工程22と、水滴形成工程22を経た膜16から分散媒21を蒸発させる分散媒蒸発工程23と、分散媒蒸発工程23を経て、膜16から水滴を蒸発させる水滴蒸発工程24とを有する。なお、疎水性液15からなる膜16を形成する膜形成工程25を凹凸構造体の製造方法20に含めてもよい。膜形成工程25は水滴形成工程22の前に行ってもよい。
【0022】
図6に示すように、凹凸構造体製造設備30は、支持体送出装置31と、塗布室32と、製品カット装置33とを有する。支持体送出装置31は、支持体ロール36から帯状の支持体37を引き出して、支持体37を塗布室32に送る。塗布室32は、凹凸構造体の製造方法20を行うものであり、支持体37の上に疎水性液15を塗布し、その後所定の処理を施すことにより、凹凸構造体10を製造する。製品カット装置33は、得られた凹凸構造体10を、支持体37とともに所定のサイズに切断し、中間製品とする。この中間製品に対し各種加工を施すことで、最終製品が得られる。支持体37としては、ステンレス製やガラス製、さらにはポリマー製の板材が用いられる。なお、支持体送出装置31、製品カット装置33は、連続的に大量に凹凸構造体10を製造する場合に用いられるものであり、製造規模に応じて適宜省略してもよい。
【0023】
塗布室32は、支持体37の走行方向(以下、X方向と称する)の上流側から順に、膜形成工程25を行う第1室41、水滴形成工程22を行う第2室42、分散媒蒸発工程23を行う第3室43、及び水滴蒸発工程24を順次行う第4室44に区画されている。第1室41には、支持体37に疎水性液15を塗布する塗布ダイ45が設けられる。疎水性液15の塗布により、疎水性液15からなる膜16が支持体37上に形成する。第2室42には、膜16に湿潤気体400を送る送風吸引ユニット46が設けられる。第3室43には、膜16に分散媒蒸発用気体402を送る送風吸引ユニット47が設けられる。第4室44には、膜16に水滴蒸発用気体404を送る送風吸引ユニット48が設けられる。
【0024】
塗布ダイ45は、スリット(図示しない)及びスリット出口(図示しない)を有する。スリットは、配管53を介して疎水性液15を貯留するタンク(図示しない)と連通する。この配管53にはポンプ54が設けられる。塗布ダイ45は、スリット出口が支持体37と対向するように配される。スリット出口と支持体37の表面37aとの隙間は、0.01mm以上10mm以下となるように調節されていることが好ましい。なお、塗布ダイ45に温調機(図示しない)を設け、スリットを通過する疎水性液15の温度を所定の範囲に調整する、或いは、結露防止のために、スリット出口の近傍部分等、塗布ダイ45の各部の温度を調節してもよい。
【0025】
第2室42には、2つの送風吸引ユニット46が、方向Xに並ぶように設けられる。送風吸引ユニット46は、送風口61及び吸気口62を有するダクトと送風部63とを備える。送風部63は、送風口61から送り出す湿潤気体400の温度、湿度や風量を制御し、膜16の周辺にある気体を吸気口62から吸う。
【0026】
第3室43には、2つの送風吸引ユニット47が、方向Xに並ぶように設けられ、第4室44には、2つの送風吸引ユニット48が、方向Xに並ぶように設けられている。送風吸引ユニット47、48は、送風吸引ユニット46と同様の構造を有する。なお、各室に送風吸引ユニットを設ける数は、1つ或いは3つ以上であってもよい。
【0027】
各室41〜44には、複数のローラ65が適宜設けられている。ローラ65は主要なもののみ図示し、その他は省略している。このローラ65は、駆動ローラとフリーローラとから構成されている。駆動ローラが適宜配置されることにより、各室41〜44内で支持体37が一定速度で搬送される。また、各ローラ65は、図示しない温度コントローラにより各室毎に温度制御されている。また、各ローラ65の間で、支持体37に近接して表面37aとは反対側に、図示しない温度制御板が配置されている。温度制御板の温度は、支持体37の表面37aの温度が所定の範囲内となるように調節されている。
【0028】
塗布室32の各室41〜44には図示しない分散媒回収装置が設けられており、各室41〜44の雰囲気に含まれる分散媒を回収する。回収した分散媒は、図示しない再生装置で再生されて再利用される。
【0029】
次に、凹凸構造体製造設備30にて行われる凹凸構造体の製造方法20(図5参照)について説明する。ローラ65が回転駆動し、支持体送出装置31は、支持体37を塗布室32に送る。図示しない温度制御板により、支持体37の表面37aの温度は、所定の範囲内(0℃以上30℃以下)でほぼ一定となるように保持される。支持体37は、第1室41から第4室44までを、所定の速度(0.001m/分以上100m/分以下)で順次通過する。ポンプ54は、温度が所定の範囲(0℃以上30℃以下)内でほぼ一定に調節された所定の流量の疎水性液15を、タンクから塗布ダイ45へ供給する。
【0030】
(膜形成工程)
図6に示すように、第1室41では、塗布ダイ45がスリット出口から支持体37の表面37aへ疎水性液15を連続的に塗布する。支持体37の表面37a上には、塗布された疎水性液15からなる膜16が形成する(図7参照)。膜16には分散状態の微粒子14が含まれる。
【0031】
膜16の厚さTH0(図7参照)は、疎水性液15の粘度及び流量、塗布ダイ45(図6参照)のクリアランスや、支持体37の走行速度などにより調節することができる。厚さTH0は400μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。なお、膜厚TH0が均一の膜16を形成するためには、厚さTH0を10μm以上とすることが好ましい。
【0032】
(水滴形成工程)
図6に示すように、第2室42では、送風吸引ユニット46が湿潤気体400を膜16に送る。図8に示すように、湿潤気体400が膜16に接触すると、結露により、膜16の表面16aに水滴408が生じる。引き続いて、湿潤気体400が膜16に接触すると、図9に示すように、湿潤気体400との接触により、水滴408が成長する。そして、水滴408には毛細管力等がはたらく結果、表面16a上における水滴408の配列はハニカム構造を有する。なお、膜16に対する湿潤気体400の供給は、形成した水滴408の径が所望の値になるまで行なうことが好ましい。
【0033】
水滴408の核形成、または核成長の進行度は、湿潤気体400の露点TD400と、膜16の表面16aの温度TSとによって表されるパラメータΔTw400(=TD400−TS)により調節することができる。温度TSは、支持体37の表面37aの温度や疎水性液15の温度により調節することができる。結露を生じさせる点から、第2室42におけるΔTw400は、少なくとも0℃以上であることが好ましい。また、ΔTw400は0.5℃以上30℃以下であることが好ましく、1℃以上25℃以下であることがより好ましく、1℃以上20℃以下であることが特に好ましい。
【0034】
(分散媒蒸発工程)
図6に示すように、第3室43では、送風吸引ユニット47が分散媒蒸発用気体402を膜16に送る。図10に示すように、分散媒蒸発用気体402が膜16に接触すると、膜16に含まれる疎水性液15から分散媒21が蒸発する。分散媒21の蒸発により、膜16をなす疎水性液15の流動性が低くなるとともに、疎水性液15に含まれる微粒子14同士の凝集は促進する。
【0035】
図11に示すように、引き続いて、分散媒21の蒸発により、膜16をなす疎水性液15の流動性が低くなる。分散媒21の蒸発は、疎水性液15の流動性が消失するまで行う。疎水性液15の流動性が消失すると、微粒子14の流動性が消失する。ここで、「微粒子14の流動性が消失する」とは、分散媒21が残留しているか否かに関わらず、個々の微粒子14が移動しない状態(固定状態)に至ることをいう。このように、微粒子14の流動性が消失するまで分散媒21の蒸発を行うことにより、水滴408の成長は停止し、この水滴408が鋳型となって、膜16は凹凸構造体10の前駆体70となる。ここで、凹凸構造体10の前駆体70は、孔12の鋳型となる水滴408を有するものを指す。
【0036】
また、膜16から分散媒21を蒸発させるためには、分散媒蒸発用気体402の凝縮点TRと膜16の近傍の雰囲気温度TAとによって表されるパラメータΔTsolv(=TA−TR)を所定の範囲に調節することができる。雰囲気温度TAは、分散媒蒸発用気体402の温度によって調節することができる。凝縮点TRは、分散媒回収装置を用いて調節することができる。例えば、ΔTsolvは0℃より大きいことが好ましい。また、膜16の加熱により、膜16から分散媒21の蒸発を促進させることも可能である。膜16の加熱は、支持体37の加熱により行うことができる。なお、分散媒蒸発工程23では、水滴408の蒸発を抑えるために、分散媒蒸発用気体402の露点TD402と、膜16の表面16aの温度TSとによって表されるパラメータΔTw402(=TD402−TS)は、0℃以上10℃以下であることが好ましい。
【0037】
疎水性液15の流動性が、水滴408の成長を抑える程度であるか否かの目安として、疎水性液15の粘度、組成、残留分散媒量ZBなどを用いることができる。中でも、粘度や残留分散媒量ZBを目安とすることが好ましい。目安となる粘度、残留分散媒量ZBの範囲は、用いる疎水性液15の組成等にも依存するが、例えば、水滴408の寸法が目標寸法となるまでに、疎水性液15の粘度が10Pa・s以上となるように、或いは疎水性液15の残留分散媒量ZBが500重量%以下となるように、疎水性液15に湿潤気体400を接触させることが好ましい。ここで、残留分散媒量ZBは、疎水性液15や膜16に残留する分散媒量を乾量基準で示したものであり、具体的には、疎水性液15や膜16に含まれる分散媒の質量をM1とし、疎水性液15や膜16に含まれる微粒子の質量をM2とする場合に、(M1/M2)×100と表される。残留分散媒量ZBの測定方法は、対象となる液または膜等からサンプル液またはサンプル膜等を採取し、採取時のサンプル液またはサンプル膜等の重量x、及びサンプル液またはサンプル膜等を乾燥した後の重量yを測定し、測定した重量x及び重量yを用いて、{(x−y)/y}×100から求めることができる。
【0038】
(水滴蒸発工程)
図6に示すように、第4室44では、送風吸引ユニット48が水滴蒸発用気体404を膜16に送る。図11に示すように、水滴蒸発用気体404が膜16に接触すると、水滴408が蒸発する。水滴408の蒸発により、前駆体70から凹凸構造体10が得られる。ここで、凹凸構造体10は、水滴408が鋳型となって形成された孔12を有するものを指す。
【0039】
本発明では、微粒子14の流動性が消失した膜16に対して、水滴蒸発工程24を行う。ここで、「微粒子14の流動性」とは、疎水性液15に含まれる分散媒21の流動性、及び疎水性液15に含まれる微粒子14同士における分子間力に起因するものをいい、「微粒子14の流動性の消失」とは、疎水性液15における分散媒21の含有量の低下に起因するものである。なお、「微粒子14の流動性の消失」には、微粒子14の流動性が残っているものの、その微粒子14の流動性が、水滴蒸発工程24を経た膜16において孔12の形状が維持できる程度の場合も含む。「微粒子14の流動性」は、残留分散媒量ZBを指標として、評価することができる。例えば、残留分散媒量ZBが50重量%以下の膜16に対して、水滴蒸発工程24を行うことが好ましく、残留分散媒量ZBが30重量%以下の膜16に対して、水滴蒸発工程24を行うことがより好ましい。
【0040】
したがって、微粒子14の流動性が消失するまで、分散媒蒸発工程23を行うことが良い。例えば、膜16の残留分散媒量ZBが50重量%以下となるまで、分散媒蒸発工程23を行うことが好ましく、膜16の残留分散媒量ZBが30重量%以下となるまで、分散媒蒸発工程23を行うことがより好ましい。
【0041】
これにより、水滴蒸発工程24の際、または水滴蒸発工程24の後において、凹凸構造体10を構成する微粒子14が動きにくくなるため、微粒子14の配列によって形成される孔12が、凹凸構造体10において安定して存在することができる。
【0042】
また、本発明では、分散状態の微粒子14を含む膜16に対して、水滴形成工程22を行うため、そのまま分散媒蒸発工程23及び水滴蒸発工程24を順次行なうことで、最終的に、水滴408を鋳型とする孔12を形成することが可能となる。ここで「分散状態の微粒子14を含む膜16」とは、膜16に含まれる微粒子14の全てが分散状態である場合の他、膜16に含まれる微粒子14の一部が分散状態であり、残りが沈殿している場合も含む。例えば、膜形成工程25での形成から10分経過する前の膜16に、水滴形成工程22を開始することが好ましく、膜形成工程25での形成から5分経過する前の膜16に、水滴形成工程22を開始することがより好ましく、膜形成工程25での形成から3分経過する前の膜16に、水滴形成工程22を開始することが特に好ましい。
【0043】
なお、膜16をなす疎水性液15に含まれる微粒子14の全て、あるいは、そのほとんど沈殿してしまった場合、そのまま分散媒蒸発工程23を行っても、最終的に、水滴408を鋳型とする孔12を形成することが困難となる。かかる場合には、水滴形成工程22及び分散媒蒸発工程23の間において、沈殿した微粒子14を再び分散状態にする再分散工程を行うことが好ましい。これにより、分散状態の微粒子14を含む膜16に対し、分散媒蒸発工程23を行うことが可能となる。
【0044】
再分散工程として、例えば、支持体37を介して膜16を加熱することや、膜16へ超音波をあてることなどがあげられる。前者の場合には、支持体37を介する膜16の加熱により、膜16の両表面の温度差を生じさせる結果、膜16中に疎水性液15の対流が顕著になる。そして、疎水性液15の対流により、沈殿した微粒子14を再び分散状態にすることができる。再分散工程では、沈殿した微粒子14を再び分散状態にする代わりに、微粒子14の凝集を解いてもよい。
【0045】
分散状態の微粒子14を含む膜16を形成するためには、分散状態の微粒子14を含む疎水性液15を用いて膜16を形成することが好ましい。分散状態の微粒子14を含む疎水性液15とは、微粒子14が、疎水性液15全体に均一に分散していることをいう。
【0046】
上記実施形態では、第1室41及び第2室42において、膜形成工程25及び水滴形成工程22を順次行ったが、本発明はこれに限られず、膜形成工程25及び水滴形成工程22を同時に行ってもよい。例えば、送風吸引ユニット46を用いて、第1室41を湿潤気体400で充満させる。そして、湿潤気体400が充満する第1室41で、疎水性液15を塗布すれば、膜形成工程25及び水滴形成工程22を同時に行なうことができる。膜形成工程25及び水滴形成工程22を同時に行なうことにより、全ての微粒子14が沈殿する前に水滴408を形成することができるため、孔12の形成を確実に行うことができる。
【0047】
なお、凹凸構造体10をなす微粒子14同士の結合力をより大きなものとするために、前駆体70に対して水滴蒸発工程24を行うことによって得られる凹凸構造体10に対して、結合力増大工程を行うことが好ましい。結合力増大工程は、凹凸構造体10をなす微粒子14同士の結合力をより大きなものとするものであれば、特に制限されないが、例えば、微粒子14同士の融着等がある。そして、微粒子14同士を融着させる方法としては、凹凸構造体10を加熱する方法や水蒸気を接触させて、凹凸構造体10を加熱する方法がある。
【0048】
なお、本発明の凹凸構造体は、図12に示すように、複数の孔77を有する凹凸構造体75であってもよい。また、図13に示すように、両表面を貫通する孔82を有する凹凸構造体80であってもよいし、図14に示すように、孔87同士が連通する凹凸構造体85であってもよい。更に、図15に示すように、両表面を貫通する孔92同士が連通する凹凸構造体90であってもよい。
【0049】
なお、凹凸構造体は、ブロック状に形成され、表面に孔12を有するものであってもよい。ブロック状の凹凸構造体を製造する場合には、所望の型へ疎水性液15を流した後、型に貯留した疎水性液に対し、水滴形成工程22、分散媒蒸発工程23、及び水滴蒸発工程24を順次行なうことにより、ブロック状の凹凸構造体を得ることができる。
【0050】
上記実施形態では、塗布ダイを用いて、疎水性液15の塗布を行ったが、本発明はこれに限られず、スライド塗布、グラビア塗布、バー塗布、ロール塗布など公知の塗布方法を用いてもよい。
【0051】
上記実施形態では、湿った空気を湿潤気体400として用いたが、本発明はこれに限られず、空気に代えて、窒素及び希ガスのうちいずれか1つを用いてもよいし、空気、窒素及び希ガス等のうち少なくとも1つを含む混合ガスを用いてもよい。同様に、上記実施形態では、所定の空気を分散媒蒸発用気体402や水滴蒸発用気体404として用いたが、本発明はこれに限られず、空気に代えて、窒素及び希ガスのうちいずれか1つを用いてもよいし、空気、窒素及び希ガス等のうち少なくとも1つを含む混合ガスを用いてもよい。
【0052】
図6に示すように、上記実施形態では、製品カット装置33は、凹凸構造体10を支持体37とともに所定の寸法に切断したが、本発明はこれに限られない。例えば、支持体37が、ステンレス製のエンドレスバンドやドラム、その他のポリマー製フィルムなどのように、第1室41〜第4室44を順次エンドレスに走行する場合には、凹凸構造体10を支持体37から剥ぎ取った後、凹凸構造体10を製品カット装置33に導入すればよい。また、少量生産の場合には、支持体37の代わりに、シート状に切断されたカットシートを用いてもよい。製造した凹凸構造体10を巻き芯などに巻き取ってもよい。この場合には、巻き取られた凹凸構造体10のうち、凹凸構造が設けられた部分が他の部分と接触しないように、凹凸構造体10の表面から突出する肉厚部を凹凸構造体10に設けることが好ましい。この肉厚部を設ける位置は、適宜設定すればよいが、例えば、凹凸構造が設けられた部分の周囲に設けることが好ましい。また、凹凸構造体10が帯状の場合には、幅方向の両端部に設けることが好ましい。更に、凹凸構造体10の両表面に肉厚部を設けてもよいし、片方の表面に肉厚部を設けてもよい。
【0053】
(疎水性液)
疎水性液15は、疎水性の分散媒21と、分散媒21に分散する微粒子14とを含む。分散媒21及び微粒子14を含む疎水性液15は、均質であることが好ましい。疎水性液15における微粒子14の濃度は、支持体37の表面37a上に、膜厚が均一の膜16が形成できる範囲内であれば良く、例えば、0.01質量%以上30質量%以下の範囲であることが好ましい。微粒子14の濃度が0.01質量%未満であると、凹凸構造体10の生産性に劣り工業的大量生産に適さないおそれがある。また、微粒子14の濃度が30質量%を超える濃度であると、疎水性液15の粘度が高すぎるため、膜16を均一に形成が困難となる結果、好ましくない。
【0054】
疎水性液15の粘度は、1×10−4Pa・s以上10Pa・s以下であることが好ましい。疎水性液15の粘度が10Pa・sを超えると、疎水性液15の低い流動性に起因し、膜16における水滴408の配列が起こりにくくなる結果、孔12の形成ピッチにばらつきが生じる点で好ましくなく、疎水性液15の粘度が1×10−4Pa・s未満であると、疎水性液15の高い流動性に起因して、形成した水滴408が連結する結果、孔12の寸法にばらつきが生じる点で好ましくない。
【0055】
疎水性液15と水との界面張力が、5mN/m以上25mN/m以下であることが好ましい。疎水性液15と水との界面張力が25mN/mを超えると、疎水性液15の表面に微小な水滴を形成することが困難となる場合がある。疎水性液15と水との界面張力が5mN/m未満であると、成長過程において水滴408が融合する結果、孔12の寸法にばらつきが生じる場合がある。疎水性液15と水との界面張力は、疎水性液中の細管から水を押し出したときに形成した水滴の形状を解析する懸滴法(ペンダント・ドロップ法)により求めることができる。水滴の形状の解析には、例えば、協和界面科学株式会社製「DropMasterシリーズ DM−300」を用いることができる。
【0056】
(分散媒)
分散媒21としては、疎水性をもつ液体を用いることが好ましい。分散媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが挙げられる。また、分散媒として、疎水性を有する分散媒にアルコールやケトン類などの親水性の分散媒を添加してもよい。なお、親水性の分散媒の添加量は、10重量%以下であることが好ましい。本発明における分散媒は、単一の分散媒でもよいし、複数の分散媒の混合物でもよい。
【0057】
使用する分散媒としては、上記のほか、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼン、四塩化炭素、1−ブロモプロパンなど)、常温で液体の液体脂肪族炭化水素(ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などを用いても良い。これらのうち複数の化合物が分散媒として併用されてもよい。また、これらの化合物の単体又は混合物に、アルコールやケトン類等の親水性溶剤を20%以下程度の少量添加されたものを用いてもよい。また、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合には、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、1−ブロモプロパン等の臭素系炭化水素等が好ましく用いられる。これらは、互いに混合して用いられてもよい。例えば、酢酸メチル、アセトン、エタノール、n−ブタノールの混合有機溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン、エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン、エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も、分散媒として用いることができる。分散媒として互いに異なる2種以上の化合物を用い、その割合を適宜変更することにより、分散媒中での微粒子の分散状態の維持と鋳型となる結露した水滴の安定化および生産性を制御することができる。
【0058】
(微粒子)
凹凸構造体の耐溶剤性を所期のものにするため、微粒子14は、凹凸構造体10の使用環境(使用条件)にて用いられる溶剤(ターゲット溶剤)に対して不溶性を有する必要がある。更に、分散状態の微粒子14を含む疎水性液15を用いて凹凸構造体10を製造するため、微粒子14は、疎水性液15に含まれる分散媒21に対して不溶性を有する必要がある。ここで、分散媒21とターゲット溶剤とは同一のものであってもよいし、異なるものでも良い。このように本発明の凹凸構造体における微粒子の不溶性とは、全く溶けない(溶解しない)という性質のみを意味するものではなく、難溶性をも含む。このような一定レベルの不溶性は、凹凸構造体の使用環境(使用条件)における使用時間と溶解度との両方の観点で求めることが好ましい。例えば、凹凸構造が所定の疎水性の液体に接して使用される時間が100時間と想定されるのであれば、溶解度が少なくとも100時間、所定レベル以下に低く保持されるような微粒子14を用いればよい。また、使用環境として水との接触も想定される場合には、水に対する一定レベルの不溶性も考慮して、水との接触が想定される使用時間、所定レベル以下に溶解度が低く保持されるような微粒子14を用いればよい。
【0059】
ターゲット溶剤としては、水やアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなど)の他、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼン、四塩化炭素、1−ブロモプロパンなど)、常温で液体の液体脂肪族炭化水素(ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。このようなターゲット溶剤に対して不溶性を有する微粒子14からなる凹凸構造体10は、反射防止フィルムや指紋付着抑制フィルムに適している。
【0060】
微粒子14としては、例えば、無機粒子(Pt、Au、Ag、Cu等の金属微粒子や、Si、Ge、ZnSe、CdS、ZnO、GaAs、InP、GaN、SiC、SiGe、CuInSeなどの半導体微粒子、TiO、SnO、SiO、ITOなどの金属酸化物微粒子)、親水性の高分子微粒子や分散媒へ溶解性を持たない疎水性の高分子微粒子、または分散媒へ溶解性を有さない低分子の有機化合物のナノ結晶などが挙げられる。なお、本発明の凹凸構造体は、互いに材料が同じ微粒子の集合体であっても良いし、互いに材料が異なる微粒子の集合体であっても良い。
【0061】
(バインダ)
微粒子のバインダとして、ポリマーを用いることもできる。ポリマーとしては、疎水性を有するポリマー(以下、疎水性ポリマーと称する)を用いることが好ましい。また、疎水性ポリマーとともに界面活性剤を併用してもよい。
【0062】
(疎水性ポリマー)
前記疎水性ポリマーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル重合ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロペン、ポリビニルエーテル、ポリビニルカルバゾール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリテトラフルオロエチレンなど)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸など)、ポリラクトン(例えばポリカプロラクトンなど)、ポリアミド又はポリイミド(例えば、ナイロンやポリアミド酸など)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアロマティックス、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリシロキサン誘導体、セルロースアシレート(トリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート)などが挙げられる。これらは、溶解性、光学的物性、電気的物性、膜強度、弾性等の観点から、必要に応じてホモポリマーとしてもよいし、コポリマーやポリマーブレンドの形態をとってもよい。なお、これらのポリマーは必要に応じて2種以上のポリマーの混合物として用いてもよい。光学用途に使う場合には、例えば、セルロースアシレート、環状ポリオレフィンなどが好ましい。
【0063】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリルアミドを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基、親水性側鎖としてカルボキシル基を併せ持つ両親媒性ポリマー、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、などが挙げられる。またリン脂質や非イオン性界面活性剤や界面活性能を有する微粒子でも良い。
【0064】
(用途)
本発明の凹凸構造体は、例えば、反射防止フィルム、指紋付着抑制フィルム、電池隔膜材料又は光学材料としてのフィルター、若しくはインクジェットの液体吐出ヘッド等に用いられる撥水性膜に用いることができる。
【実施例】
【0065】
(実験1)
図6に示す凹凸構造体製造設備30において、図5に示す凹凸構造体の製造方法20を行い、凹凸構造体10を製造した。
【0066】
(疎水性液)
実験1にて用いた疎水性液15の組成は以下のとおりである。水に対する疎水性液15の界面張力Pは、15mN/mであった。
微粒子14(SiO(シリカ)) 5 質量部
分散媒21(クロロホルム) 94.9 質量部
添加剤(両親媒性ポリアクリルアミド) 0.1 質量部
【0067】
第1室41では、支持体37の上に、疎水性液15からなる膜16を形成した。形成直後の膜16の厚みは300μmであった。第2室42では、形成直後から1分経過した時点の膜16に湿潤気体400をあてて、膜16の表面16aに水滴408を形成した。第3室43では、膜16に分散媒蒸発用気体402をあてて、膜16から分散媒21を蒸発させた。第4室44では、残留分散媒量ZBが1重量%となった膜16に水滴蒸発用気体404をあてて、膜16から水滴408を蒸発させた。こうして、凹凸構造体10を製造した。
【0068】
(実験2〜8)
水滴蒸発用気体404をあて始めた膜16の残留分散媒量ZB、膜16の形成直後から、膜16に湿潤気体400をあてるまでに要した時間T1、及び水に対する疎水性液15の界面張力Pを表1に示す値にしたこと以外は、実験1と同様にして、凹凸構造体10を製造した。なお、実験4では、両親媒性ポリアクリルアミドを0.001質量部とし、クロロホルムを94.999質量部としたこと以外は実験1と同じにした。また、実験7,8では、水滴蒸発用気体404を膜16にあて始めたタイミングを、残留分散媒量ZBが表1に示すような大きいタイミングとした。このタイミングは、微粒子14の流動性が消失していない状態にあたる。
【0069】
【表1】

【0070】
表1には、実験1〜実験8において、水滴蒸発用気体404をあて始めた膜16の残留分散媒量ZB、膜16の形成直後から、膜16に湿潤気体400をあてるまでに要した時間T1、及び水に対する疎水性液15の界面張力P、並びに各評価項目についての評価結果を示す。表1における評価結果の番号は、各評価項目に付した番号を表す。
【0071】
(評価)
得られた凹凸構造体10について以下の評価を行った。
【0072】
1.凹凸構造の評価
凹凸構造体10の孔12の径D1、及び孔12の底部12aまでの深さDe1を測定し、(De1/D1)を算出した。そして、以下の基準に基づいて、算出した(De1/D1)の値を評価した。
◎:(De1/D1)の値が0.5以上1.2以下であった。
○:(De1/D1)の値が0.2以上0.5未満であった。
△:(De1/D1)の値が0.05以上0.2未満であった。
×:(De1/D1)の値が0.05未満であった。
【0073】
2.凹凸構造の規則性の評価
凹凸構造体10の表面の光学顕微鏡写真を用いて(倍率は2500倍)において、縦120μm、横90μmの範囲に存在する孔について画像解析を行い、それぞれの孔の径を測定し、孔の径の平均値DAV、孔の径の標準偏差σ、及び孔径変動係数Xを算出した。孔径変動係数Xは、(σD/DAV)×100で表される。そして、以下の基準に基づいて、孔径変動係数Xを評価した。
◎:孔径変動係数Xが5%以下であった。
○:孔径変動係数Xが5%より大きく10%以下であった。
△:孔径変動係数Xが10%より大きく15%以下であった。
×:孔径変動係数Xが15%より大きかった。
−:凹凸構造が見られないため、孔径変動係数Xを測定することができなかった。
【符号の説明】
【0074】
10 凹凸構造体
12 孔
14 微粒子
15 疎水性液
16 膜
20 凹凸構造体の製造方法
21 分散媒
22 水滴形成工程
23 分散媒蒸発工程
24 水滴蒸発工程
25 膜形成工程
30 凹凸構造体製造設備
37 支持体
45 塗布ダイ
400 湿潤空気
402 分散媒蒸発用気体
404 水滴蒸発用気体
408 水滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の孔を表面に有する凹凸構造体の製造方法において、
前記孔よりも寸法が小さい微粒子及びこの微粒子の分散媒を含む疎水性液の液面に前記孔の鋳型となる水滴を形成する水滴形成工程と、
前記微粒子の流動性が消失するまで、前記水滴形成工程を経た前記疎水性液から前記分散媒を蒸発させる分散媒蒸発工程と、
前記微粒子の流動性が消失した状態の前記疎水性液から前記水滴を蒸発させる水滴蒸発工程とを有することを特徴とする凹凸構造体の製造方法。
【請求項2】
前記疎水性液に含まれる前記分散媒の質量をM1とし、前記疎水性液に含まれる前記微粒子の質量をM2とする場合に、(M1/M2)×100と表される残留分散媒量が、前記水滴蒸発工程を開始する際、50質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の凹凸構造体の製造方法。
【請求項3】
分散状態の前記微粒子を含む前記疎水性液に対し前記水滴形成工程を行うことを特徴とする請求項1または2記載の凹凸構造体の製造方法。
【請求項4】
前記疎水性液の液面は、支持体に塗布された前記疎水性液からなる膜の表面であることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の凹凸構造体の製造方法。
【請求項5】
前記水滴形成工程の前に、分散状態の前記微粒子を含む前記疎水性液を前記支持体に塗布して、前記支持体に前記膜を形成し、形成されてから10分経過する前の前記膜に対し前記水滴形成工程を開始することを特徴とする請求項4記載の凹凸構造体の製造方法。
【請求項6】
前記疎水性液の水に対する界面張力が5mN/m以上25mN/m以下であることを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項記載の凹凸構造体の製造方法。
【請求項7】
所定の溶剤に対して不溶性を有する微粒子の集合体であって、前記集合体の表面には前記微粒子よりも寸法の大きい孔が複数形成されたことを特徴とする凹凸構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−121051(P2011−121051A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252987(P2010−252987)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】