説明

出力制御装置および出力制御方法並びに当該出力制御装置を備えた水車発電システム

【課題】二台の水車ユニットを同一管路に直列に配置して構成される水車発電機の発電出力を任意の目標出力に安定するように制御する。
【解決手段】出力制御装置30は、同一の管路12に案内羽根14A,14Bの開度を調整可能な二台の水車ユニット13A,13Bを直列に配置した二台の発電機11A,11Bを備える水力発電システム10の出力制御装置であり、開度調整指令に基づき、案内羽根14A,14Bの開度をそれぞれ制御する案内羽根制御部36A,36Bと、取得した発電機11A,11Bの出力に差がある場合、発電機11Bの出力が発電機11Aの出力に追従するように制御する出力追従処理部34と、取得した案内羽根14A,14Bの開度の差に基づいて開度調整指令を案内羽根制御部36A,36Bへ出力するガイドベーン開度調整処理部35を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水車発電に関し、特に、二台の水車ユニットを同一管路に直列に配置して構成される水車発電機の出力を制御する出力制御装置および出力制御方法並びに当該出力制御装置を備えた水車発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水力発電システムは、管路を流動する水が水車ユニットの回転羽根を回転させ、当該回転により生じた回転駆動力を水車発電機に伝達し、回転駆動することによって発電するシステムである。
【0003】
水力発電システムは、省スペース化やより多くの発電出力を得る等の様々な観点から種々の工夫がなされており、例えば、特開2001−221141号公報(特許文献1)には、1台の水車ユニットに複数の回転羽根を収容し、複数の回転羽根から得られる回転駆動力を1台の水車発電機に伝達して発電出力を得る水力発電システムが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−221141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、より多くの発電出力を得る等の観点から、二台の水車ユニットを同一の管路に直列に配置して、異なる二台の水車発電機を駆動させる水車発電システムを構成する場合もある。この場合、出力調整を行わず案内羽根(ガイドベーンもしくはランナ)開度を固定し、水車の落差または流量に応じた出力を得るか、可変式の案内羽根(ガイドベーンもしくはランナ)開度を可変させて水車発電機の出力を制御することが考えられる。
【0006】
しかしながら、出力調整を行わず案内羽根(ガイドベーンもしくはランナ)開度を固定した場合、水車の落差または流量に応じた出力しか得ることができないので、任意に設定された目標出力を安定的に得ることは困難である。
【0007】
一方、可変式の案内羽根(ガイドベーンもしくはランナ)開度を可変させて水車発電機の出力を制御する場合も、上流側または下流側に設置された水車発電機の案内羽根の開度を上げ下げすることにより、上流側に設置された水車発電機と下流側に設置された水車発電機との間の水圧も上下に変動するため、一方の水車発電機の案内羽根の開度を上げ下げすることが二台の水車発電機の出力を同時に変動させることになる。従って、任意に設定された目標出力を安定的に得ることは困難という課題がある。
【0008】
すなわち、二台の水車ユニットを同一管路に直列に配置した場合、水車発電機が一台の場合と同様の考え方で出力制御を行っても、一方の水車発電機の案内羽根の開度調整が自己の水車発電機の出力のみならず他方の水車発電機の出力にも影響を与えることから、個々の水車発電機の出力バランスの調整が取りにくく、水力発電システム全体としても安定的な出力を得ることが困難であるという課題があった。
【0009】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、二台の水車ユニットを同一管路に直列に配置して構成される水車発電機の発電出力を任意の目標出力に安定するように制御する出力制御装置および出力制御方法並びに当該出力制御装置を備えた水車発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る出力制御装置は、上述した課題を解決するため、同一管路に開度の調整可能な案内羽根と回転羽根とを備えた第1の水車ユニットおよび第2の水車ユニットが直列に設置されており、前記第1の水車ユニットと接続される第1の水車発電機と、前記第2の水車ユニットと接続される第2の水車発電機とを備える水力発電システムの発電出力を制御する装置であって、開度調整指令に基づき、前記第1の水車ユニットの案内羽根の開度および前記第2の水車ユニットの案内羽根の開度を制御する案内羽根制御部と、前記第1の水車発電機の出力および前記第2の水車発電機の出力を取得し、取得した第1の水車発電機の出力と第2の水車発電機の出力とに差がある場合、前記第2の水車発電機の出力が前記第1の水車発電機の出力に追従するように制御する出力追従処理部と、前記第1の水車ユニットの案内羽根の開度および前記第2の水車ユニットの案内羽根の開度を取得して、取得した前記第1の水車ユニットの案内羽根の開度と取得した前記第2の水車ユニットの案内羽根の開度との差に基づいて開度調整指令を前記案内羽根制御部へ出力する開度調整処理部と、を具備することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る出力制御方法は、上述した課題を解決するため、同一管路に開度の調整可能な案内羽根と回転羽根とを備えた第1の水車ユニットおよび第2の水車ユニットが直列に設置されており、前記第1の水車ユニットと接続される第1の水車発電機と、前記第2の水車ユニットと接続される第2の水車発電機とを備える水力発電システムの発電出力を制御する方法であって、前記第1の水車ユニットの案内羽根の開度および前記第2の水車ユニットの案内羽根の開度を制御する案内羽根制御部が、開度調整指令に基づき、前記第1の水車ユニットの案内羽根の開度および前記第2の水車ユニットの案内羽根の開度を制御する開度制御ステップと、前記第2の水車発電機の出力が前記第1の水車発電機の出力に追従するように制御する出力追従処理部が、取得した第1の水車発電機の出力と第2の水車発電機の出力とに差がある場合、前記第2の水車発電機の出力を前記第1の水車発電機の出力に追従するように制御する出力追従処理ステップと、開度調整指令を前記案内羽根制御部へ出力する開度調整処理部が、取得した前記第1の水車ユニットの案内羽根の開度と取得した前記第2の水車ユニットの案内羽根の開度との差に基づいて前記開度調整指令を生成する開度調整指令生成ステップと、を具備することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る水車発電システムは、上述した課題を解決するため、特許請求の範囲に記載した出力制御装置の何れかを備えて構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二台の水車ユニットを同一管路に直列に配置して構成される水車発電機の発電出力を任意の目標出力に安定するように制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る水車発電システムの一例を構成する水車発電機の設置状態の一例を示した概略図。
【図2】本発明の実施形態に係る出力制御装置の構成の一例を概略的に示した説明図。
【図3】図2に示される出力制御装置が具備する下流側出力追従処理部の構成の一例を示した説明図。
【図4】図2に示される出力制御装置が具備するガイドベーン開度調整処理部の構成の一例を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る出力制御装置および出力制御方法並びに当該出力制御装置を備えた水車発電システムについて、添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る出力制御装置を備えた水車発電システム(以下、「本発明の実施形態に係る水車発電システム」と称する。)の一例である水車発電システム10を構成する水車発電機11A,11Bの設置状態の一例を示した概略図である。
【0017】
尚、図1に示される符号12は水車を回転させる水が流動する管路、符号13A,13Bはそれぞれ水車発電機11A,11Bの水車ユニット、符号14A,14Bは案内羽根(ガイドベーン)、符号15A,15Bは回転羽根(ランナベーン)を有するランナである。
【0018】
水車発電システム10は、図1に示されるように、水車を回転させる水が流動する一つの管路12に、二台の水車発電機11A,11Bが直列に配置される。ここで、水車発電機(以下、「上流側水車発電機」と称する。)11Aは、管路12において、下流側水車発電機(以下、「下流側水車発電機」と称する。)11Bよりも上流側に設置され、ガイドベーン14Aの開度を調整可能な水車ユニット(以下、「上流側水車ユニット」と称する。)13Aを備える。また、下流側水車発電機11Bも、上流側水車発電機11Aと同様にガイドベーン14Bの開度を調整可能な水車ユニット(以下、「下流側水車ユニット」と称する。)13Bを備える。
【0019】
水車発電機11Aは、ランナ15Aの回転羽根が回転することにより生じた回転駆動力がランナ15Aから水車発電機11Aに伝達され、回転駆動することによって発電し、水車発電機11Bは、ランナ15Bの回転羽根が回転することにより生じた回転駆動力が
伝達され、回転駆動することによって発電する。
【0020】
図2は、本発明に係る出力制御装置の一例である出力制御装置30の構成例を概略的に示した説明図である。
【0021】
出力制御装置30は、同一の管路12に水車発電機11A,11Bが二台直列に配置された水車発電システム10において、一方の水車発電機(例えば、上流側水車発電機11A)の出力を基準として他方の水車発電機(例えば、下流側水車発電機11B)の出力を制御するように構成されており、図2に示される出力制御装置30は、上流側水車発電機11Aの出力を基準として下流側水車発電機11Bの出力を追従させるように制御する。
【0022】
より詳細に説明すれば、出力制御装置30は、上流側出力変換部31Aが取得した上流側水車発電機11Aの発電出力、下流側出力変換部31Bが取得した下流側水車発電機11Bの発電出力、上流開度変換部32Aが取得した上流側水車ユニット13Aのガイドベーン14Aの開度、および、下流開度変換部32Bが取得した下流側水車ユニット13Bのガイドベーン14Bの開度と、偏差検出部33が取得した上流側出力変換部31Aの発電出力(上流側水車発電機11Aの発電出力)と上流側水車発電機11Aの目標となる発電出力値(目標値)に対する偏差とに応じてガイドベーン14Aの開度およびガイドベーン14Bの開度を制御し、下流側水車発電機11Bの発電出力を上流側水車発電機11Aの発電出力に追従させる。
【0023】
出力制御装置30は、下流側出力追従処理部34と、ガードベーン開度調整処理部35と、ガイドベーン制御部としての上流側ガイドベーン制御部36Aおよび下流側ガイドベーン制御部36Bとを具備する。
【0024】
下流側出力追従処理部34は、上流側水車発電機11Aの出力および下流側水車発電機11Bの出力を取得し、取得した上流側水車発電機11Aの出力と下流側水車発電機11Bの出力とに差がある場合、下流側水車発電機11Bの出力が上流側水車発電機11Aの出力に追従するように制御する。
【0025】
下流側水車発電機11Bの発電出力を上流側水車発電機11Aの発電出力に追従させる出力追従制御は、上流側水車発電機11Aの上流側水車ユニット13Aのガイドベーン14Aの開度を制御することにより行われる。これは、上流側水車発電機11Aの上流側水車ユニット13Aのガイドベーン14Aの開度を制御することにより、上流側水車ユニット13Aと下流側水車ユニット13Bとの間の水圧が変化し、下流側水車発電機11Bの出力を変化させることができるためである。
【0026】
ガイドベーン開度調整処理部35は、上流側水車ユニット13Aのガイドベーン14Aの開度および下流側水車ユニット13Bのガイドベーン14Bの開度を取得して、取得したガイドベーン14Aの開度とガイドベーン14Bの開度との間に差がある場合、二つの開度の差に基づいて開度調整指令を案内羽根制御部としての上流側ガイドベーン制御部36Aおよび下流側ガイドベーン制御部36Bへ出力する。
【0027】
上流側ガイドベーン制御部36Aおよび下流側ガイドベーン制御部36Bは、開度調整指令に基づき、それぞれ、上流側水車ユニット13Aのガイドベーン14Aの開度および下流側水車ユニット13Bのガイドベーン14Bの開度を制御する。
【0028】
次に、水車発電システム10、すなわち、二台の水車発電機11A,11Bの出力制御方法について説明する。
【0029】
水車発電システム10の出力制御は、起動から目標出力にするまでの過渡状態においてなされる第1段階の出力制御と、目標出力周辺の所定範囲内で出力が安定している状態(定常状態)となり、当該範囲内で出力を微修正しつつ目標出力となるように出力制御する第2段階の出力制御とを有するが、第1段階の出力制御および第2段階の出力制御は、いずれも、上流側水車ユニット13Aのガイドベーン14Aの開度および下流側水車ユニット13Bのガイドベーン14Bの開度制御ステップ(ガイドベーン開度一致制御ステップとガイドベーン開度同期制御ステップ)と、一方の出力に他方の出力を追従させる出力追従制御ステップとの組み合わせにより実現される。
【0030】
水車発電システム10では、まず、第1段階の出力制御として、二台の水車発電機11A,11Bを起動した状態から目標出力まで出力を上昇させる。以下の説明では、出力制御をより速く容易に実現する観点から、水車発電機11A,11Bの1台当たりの出力を水車発電システム10の全体で得られる出力の半分、すなわち、同じ出力となるように設定した例を説明する。
【0031】
第1段階の出力制御では、まず、ガイドベーン開度調整処理部35が、取得した上流側水車ユニット13Aのガイドベーン14Aの開度および下流側水車ユニット13Bのガイドベーン14Bの開度が不一致の場合、両者の開度が一致するようにガイドベーン14Aの開度とガイドベーン14Bの開度とを一致させる(ガイドベーン開度一致制御ステップ)。一致させる方法については、一方を他方の開度に一致させる方法でも良いし、設定した所定の開度に両ガイドベーン14A,14Bの開度を一致させる方法でも良い。
【0032】
続いて、上流側ガイドベーン制御部36Aが、出力を追従させる側の発電機である下流側水車発電機11Bの出力が上流側水車発電機11Aの出力と合致するようにガイドベーン14Aの開度を制御して、下流側水車発電機11Bの発電出力を上流側水車発電機11Aの発電出力に追従するように制御する。すなわち、出力が追従される側(基準側)の上流側水車発電機11Aのガイドベーン14Aの開度を制御することによって、出力を追従させる側の水車発電機である下流側水車発電機11Bの発電出力を調整する(出力追従制御ステップ)。
【0033】
その後、上流側ガイドベーン制御部36Aおよび下流側ガイドベーン制御部36Bが入力される開度調整指令に基づいてガイドベーン14Aおよびガイドベーン14Bの開度を同期制御して目標出力まで出力を上昇させる(ガイドベーン開度同期制御ステップ)。すなわち、上流側出力変換部31Aの発電出力(上流側水車発電機11Aの発電出力)を優先しつつ下流側出力変換部31Bの発電出力(下流側水車発電機11Bの発電出力)を同期させる。
【0034】
上流側ガイドベーン制御部36Aおよび下流側ガイドベーン制御部36Bに入力される開度調整指令は、偏差検出部33が上流側出力変換部31Aの発電出力(上流側水車発電機11Aの発電出力)と上流側水車発電機11Aの出力目標値との偏差を検出し、検出した偏差に応じて生成される(開度調整指令生成ステップ)。そして、上流側水車発電機11Aの出力が、目標出力(例えば、水車発電システム10全体の目標出力の1/2)まで上昇すると、当該偏差は0となり、第1段階の出力制御は終了する。
【0035】
第1段階の出力制御が終了すると、続いて、第2段階の出力制御が開始され、所定範囲内で出力を微修正しつつ目標出力を維持するように出力制御する。第2段階の出力制御も、ガイドベーン開度制御ステップと、出力追従制御ステップとを繰り返し行うことによる出力制御である。
【0036】
すなわち、第2段階の出力制御は、第1段階の出力制御の結果、取得した上流側水車ユニット13Aのガイドベーン14Aの開度および下流側水車ユニット13Bのガイドベーン14Bの開度に不一致が生じている場合には、まず、ガイドベーン開度調整処理部35が、上流側水車ユニット13Aのガイドベーン14Aの開度および下流側水車ユニット13Bのガイドベーン14Bの開度を一致させる(ガイドベーン開度一致制御ステップ)。
【0037】
続いて、下流側水車発電機11Bの発電出力が上流側水車発電機11Aの発電出力に追従するように制御される(出力追従処理ステップ)。出力追従処理ステップでは、基準側の上流側水車発電機11Aのガイドベーン14Aの開度を小刻みに制御することによって、出力を追従させる側の水車発電機である下流側水車発電機11Bの発電出力を小刻みに調整する。
【0038】
それでもなお、水車発電システム10が目標出力とならない場合、上流側ガイドベーン制御部36Aおよび下流側ガイドベーン制御部36Bが入力される開度調整指令に基づいてガイドベーン14Aおよびガイドベーン14Bの開度を同期制御して目標出力となるように、上流側出力変換部31Aの発電出力(上流側水車発電機11Aの発電出力)を優先しつつ下流側出力変換部31Bの発電出力(下流側水車発電機11Bの発電出力)を同期させる(ガイドベーン開度同期制御ステップ)。
【0039】
このように、水車発電システム10は、ガイドベーン開度一致制御ステップ、出力追従制御ステップおよびガイドベーン開度同期制御ステップを順次繰り返し行うことにより、上流側水車発電機11Aの発電出力および下流側水車発電機11Bの発電出力が目標出力となるように出力制御する。
【0040】
図3は、出力制御装置30が具備する下流側出力追従処理部34の構成の一例を示す説明図である。
【0041】
下流側出力追従処理部34は、減算処理部41と、極性判別部42と、パルス演算処理部43と、論理積演算部として第1の論理積演算部45および第2の論理積演算部46とを備える。
【0042】
減算処理部41は、上流側出力変換部31Aによって取得される上流側水車発電機11Aの発電出力と、下流側出力変換部31Bによって取得される下流側水車発電機11Bの発電出力との差分を演算する。すなわち、上流側水車発電機11Aの発電出力から下流側水車発電機11Bの発電出力を減算する。減算処理部41は、演算結果を極性判別部42およびパルス演算処理部43へ出力する。
【0043】
極性判別部42は、減算処理部41の演算結果の極性(正負)を判定し、判定結果に応じた出力を第1の論理積演算部45および第2の論理積演算部46へ出力する。例えば、極性が正の場合(上流側水車発電機11Aの発電出力は下流側水車発電機11Bの発電出力よりも大きい場合)、第1の論理積演算部45へ1を出力する一方、極性が負の場合(上流側水車発電機11Aの発電出力は下流側水車発電機11Bの発電出力よりも小さくなる場合)には第2の論理積演算部46へ1を出力する。
【0044】
パルス演算処理部43は、ガイドベーン14Aの開閉制御をするのに必要となるパルス(切を0、入を1とする)を生成し、減算処理部41の演算結果の大小に応じて当該パルスのON(入:1)状態にある時間(ON時間)を長短する。すなわち、上流側水車発電機11Aの発電出力と下流側水車発電機11Bの発電出力との差が大きい場合には、パルスのON状態にある時間を長くする一方、上流側水車発電機11Aの発電出力と下流側水車発電機11Bの発電出力との差が小さい場合には、パルスのON状態にある時間を短くする。
【0045】
論理積演算部45,46は、入力される二つの値の論理積を演算して当該演算結果を出力する機能を有する。論理積演算部45,46には、極性判別部42からの出力(0,1)とパルス演算処理部43からの出力(0,1)が入力され、論理積演算部45,46は、それぞれ、入力された極性判別部42からの出力とパルス演算処理部43からの出力との論理積を演算して、当該演算結果(0,1)を開度調整指令として上流側ガイドベーン制御部36Aへ出力する。
【0046】
第1の論理積演算部45に入力された極性判別部42の出力が1(極性が正の場合)であり、パルス演算処理部43の出力が1(ON状態)である場合には、第1の論理積演算部45が1となり、ガイドベーン14Aを開く制御指令を上流側ガイドベーン制御部36Aへ出力して、ガイドベーン14Aが開くように制御される(開制御)。
【0047】
第2の論理積演算部46に入力された極性判別部42の出力が1(極性が負の場合)であり、パルス演算処理部43の出力が1(ON状態)である場合には、第2の論理積演算部46が1となり、ガイドベーン14Aを閉じる制御指令を上流側ガイドベーン制御部36Aへ出力して、ガイドベーン14Aが閉じるように制御される(閉制御)。
【0048】
図4は、出力制御装置30が具備するガイドベーン開度調整処理部35の構成の一例を示す説明図である。
【0049】
ガイドベーン開度調整処理部35は、減算処理部51と、極性判別部52と、比較処理部53と、制御信号出力調整部54と、を備える。
【0050】
減算処理部51は、上流開度変換部32Aが取得する上流側水車ユニット13Aのガイドベーン14Aの開度と下流開度変換部32Bが取得する下流側水車ユニット13Bのガイドベーン14Bの開度との差分を演算する。すなわち、上流側水車ユニット13Aのガイドベーン14Aの開度から下流側水車ユニット13Bのガイドベーン14Bの開度を減算する。減算処理部51は、演算結果を極性判別部52および比較処理部53へ出力する。
【0051】
極性判別部52は、減算処理部51の演算結果の極性(正負)を判定し、判定結果に応じた出力を制御信号出力調整部54へ出力する。例えば、極性が正の場合(ガイドベーン14Aの開度がガイドベーン14Bの開度よりも大きい場合)、制御信号出力調整部54へ1を出力する一方、極性が負の場合(ガイドベーン14Aの開度がガイドベーン14Bの開度よりも小さくなる場合)には制御信号出力調整部54へ0を出力する。
【0052】
比較処理部53は、減算処理部51の演算結果、すなわち、上流側水車ユニット13Aのガイドベーン14Aの開度と下流側水車ユニット13Bのガイドベーン14Bの開度との差(絶対値)が、予め設定された値(閾値)よりも大きいか小さいかを比較し、比較の結果を0,1で出力する。例えば、ガイドベーン14A,14Bの開度差が設定値よりも小さい場合には0を、大きい場合には1を出力する。
【0053】
制御信号出力調整部54は、比較処理部53から入力される比較結果(0,1)に基づいて信号出力を入切(ON/OFF)するスイッチング機能と、極性判別部52の判別結果(0,1)に基づいて、ガイドベーン14Aを開くように制御する指令(信号)を上流側ガイドベーン制御部36Aへ出力するか、ガイドベーン14Bを開くように制御する指令(信号)を下流側ガイドベーン制御部36Bへ出力するかを選択する出力先選択機能とを有する。制御信号出力調整部54のスイッチング機能を持たせることにより、いわゆる不感帯が設定される。
【0054】
制御信号出力調整部54は、例えば、論理積演算部45,46を有し、比較処理部53から入力される比較結果(0,1)と、極性判別部52から入力される判別結果(0,1)との論理積を演算して演算結果(0,1)をガイドベーン制御部36A,36Bに出力する。
【0055】
より詳細には、制御信号出力調整部54は、比較処理部53の出力が0である場合(ガイドベーン14A,14Bの開度差が設定値よりも小さい場合)、スイッチング機能によって信号出力は切(OFF)状態となり、ガイドベーン制御部36A,36Bの何れにも信号は出力されない。
【0056】
一方、比較処理部53の出力が1である場合(ガイドベーン14A,14Bの開度差が設定値よりも大きい場合)、スイッチング機能によって信号出力は入(ON)状態となり、極性判別部52の判別結果(0,1)に基づいて、ガイドベーン14Aまたはガイドベーン14Bを開くように制御する指令が上流側ガイドベーン制御部36Aまたは下流側ガイドベーン制御部36Bへ伝達される。
【0057】
制御信号出力調整部54は、極性判別部52の出力が0(極性が負)の場合、ガイドベーン14Aを開くように制御する指令を上流側ガイドベーン制御部36Aへ出力する。一方、極性判別部52の出力が1(極性が正)の場合、ガイドベーン14Bを開くように制御する指令を下流側ガイドベーン制御部36Bへ出力する。
【0058】
尚、図4に示されるガイドベーン開度調整処理部35は、比較処理部53の比較結果が第1の論理積演算部45と第2の論理積演算部46とに入力される構成であるが、上流側ガイドベーン制御部36Aのガイドベーン14Aの開制御に用いられる比較結果を第1の論理積演算部45へ提供する第1の比較処理部と、下流側ガイドベーン制御部36Bのガイドベーン14Bの開制御に用いられる比較結果を第2の論理積演算部46へ提供する第2の比較処理部と、を備える構成としても良い。この場合、第1の比較処理部と第2の比較処理部とに閾値を個別に設定でき、より細やかなガイドベーン開度制御が可能となる。
【0059】
以上、水車発電システム10、出力制御装置30および出力制御手順によれば、水車発電システム10の出力制御に際して、ガイドベーン開度一致制御ステップと、ガイドベーン開度同期制御ステップと、出力追従制御ステップとを行うことができる。ガイドベーン開度一致制御ステップは、ガイドベーン14Aの開度とガイドベーン14Bの開度とが大きく異なった場合に、例えば開度の大きい方の開度に開度を一致させるため、二台の水車発電機11A,11Bの発電出力をより短時間で安定させることができる。
【0060】
また、出力追従制御ステップは、一方の水車発電機である上流側水車発電機11Aの上流側水車ユニット13Aのガイドベーン14Aの開度を制御することにより、他方の水車発電機である下流側水車発電機11Bの出力を変化させることにより行うので、従来よりも容易に出力追従制御をすることができる。
【0061】
さらに、ガイドベーン開度同期制御ステップでは、二台の水車発電機11A,11Bの発電出力を同期的に増減させることができるので、水車発電システム10の出力目標値により素早く近づけることができる。
【0062】
すなわち、水車発電システム10、出力制御装置30および出力制御手順によれば、二台の水車ユニット13A,13Bを同一の管路12に直列に配置して構成される水車発電機11A,11Bを備える水車発電システム10の出力制御に際して、当該水車発電システム10の発電出力を任意の目標出力に安定するように制御することができる。
【0063】
尚、上述した本発明の実施形態は、本発明を実施する上での一例を提示したものであり、上述した本発明の実施形態そのままに限定されるものではない。実施段階では発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等をして具体化しても良い。
【0064】
例えば、上述した水車発電システム10、出力制御装置30および出力制御手順は、上流側水車発電機11Aの出力を基準として下流側水車発電機11Bの出力を制御する場合を説明したが、下流側水車発電機11Bの出力を基準として上流側水車発電機11Aの出力を制御することもできる。
【0065】
また、水車発電機11A,11Bは、一つの回転羽根を有する水車ユニット13A,13Bを前提に説明しているが、上述した特許文献1に記載されるような1つの水車ユニット13A,13Bが複数の回転羽根を有する構成の水車発電機11A,11Bを採用しても良い。
【符号の説明】
【0066】
10 水車発電システム
11A 上流側水車発電機
11B 下流側水車発電機
12 管路
13A 上流側水車ユニット
13B 下流側水車ユニット
14A,14B 案内羽根(ガイドベーン)
15A,15B ランナ
30 出力制御装置
31A 上流側出力変換部
31B 下流側出力変換部
32A 上流側開度変換部
32B 下流側開度変換部
33 偏差検出部
34 下流側出力追従処理部
35 ガイドベーン開度調整処理部
36A 上流側ガイドベーン制御部
36B 下流側ガイドベーン制御部
41 減算処理部
42 極性判別部
43 パルス演算処理部
45 第1の論理積演算部
46 第2の論理積演算部
51 減算処理部
52 極性判別部
53 比較処理部
54 制御信号出力調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一管路に開度の調整可能な案内羽根と回転羽根とを備えた第1の水車ユニットおよび第2の水車ユニットが直列に設置されており、前記第1の水車ユニットと接続される第1の水車発電機と、前記第2の水車ユニットと接続される第2の水車発電機とを備える水力発電システムの発電出力を制御する装置であって、
開度調整指令に基づき、前記第1の水車ユニットの案内羽根の開度および前記第2の水車ユニットの案内羽根の開度を制御する案内羽根制御部と、
前記第1の水車発電機の出力および前記第2の水車発電機の出力を取得し、取得した第1の水車発電機の出力と第2の水車発電機の出力とに差がある場合、前記第2の水車発電機の出力が前記第1の水車発電機の出力に追従するように制御する出力追従処理部と、
前記第1の水車ユニットの案内羽根の開度および前記第2の水車ユニットの案内羽根の開度を取得して、取得した前記第1の水車ユニットの案内羽根の開度と取得した前記第2の水車ユニットの案内羽根の開度との差に基づいて開度調整指令を前記案内羽根制御部へ出力する開度調整処理部と、
を具備することを特徴とする出力制御装置。
【請求項2】
前記出力追従部は、前記第2の水車発電機の出力を制御する際に、前記第1の水車発電機の案内羽根の開度を調整する開度調整指令を前記案内羽根制御部へ出力するように構成されることを特徴とする請求項1記載の出力制御装置。
【請求項3】
前記出力追従部は、前記第1の水車発電機の出力と前記第2の水車発電機の出力の差分を演算する減算処理部と、
この減算処理部が演算した差分の極性を判別し、判別結果を出力する極性判別部と、
前記減算処理部が演算した差分の大小に応じてパルス信号のON時間を長短させてパルス信号を出力するパルス演算処理部と、
前記極性判別部からの出力と前記パルス演算処理部の出力との論理積を演算し演算結果に応じて前記案内羽根制御部へ開度調整指令を出力する論理積演算部とを備えることを特徴とする請求項1または2記載の出力制御装置。
【請求項4】
前記開度調整処理部は、前記第1の水車ユニットの案内羽根の開度と取得した前記第2の水車ユニットの案内羽根の開度との差が許容値以上となった場合、前記開度の差が許容値未満となるように開度調整指令を前記案内羽根制御部へ出力するように構成されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の出力制御装置。
【請求項5】
同一管路に開度の調整可能な案内羽根と回転羽根とを備えた第1の水車ユニットおよび第2の水車ユニットが直列に設置されており、前記第1の水車ユニットと接続される第1の水車発電機と、前記第2の水車ユニットと接続される第2の水車発電機とを備える水力発電システムの発電出力を制御する方法であって、
前記第1の水車ユニットの案内羽根の開度および前記第2の水車ユニットの案内羽根の開度を制御する案内羽根制御部が、開度調整指令に基づき、前記第1の水車ユニットの案内羽根の開度および前記第2の水車ユニットの案内羽根の開度を制御する開度制御ステップと、
前記第2の水車発電機の出力が前記第1の水車発電機の出力に追従するように制御する出力追従処理部が、取得した第1の水車発電機の出力と第2の水車発電機の出力とに差がある場合、前記第2の水車発電機の出力を前記第1の水車発電機の出力に追従するように制御する出力追従処理ステップと、
開度調整指令を前記案内羽根制御部へ出力する開度調整処理部が、取得した前記第1の水車ユニットの案内羽根の開度と取得した前記第2の水車ユニットの案内羽根の開度との差に基づいて前記開度調整指令を生成する開度調整指令生成ステップと、を具備することを特徴とする出力制御方法。
【請求項6】
前記出力追従処理ステップは、前記第2の水車発電機の出力を制御する際に、前記第1の水車発電機の案内羽根の開度を調整する開度調整指令を前記案内羽根制御部へ出力するステップであることを特徴とする請求項5記載の出力制御方法。
【請求項7】
前記出力追従ステップは、前記第1の水車発電機の出力と前記第2の水車発電機の出力の差分を演算する減算処理部が前記第1の水車発電機の出力と前記第2の水車発電機の出力の差分を演算する減算処理ステップと、
この減算処理ステップで演算された差分の極性を判別して判別結果を出力する極性判別部が、当該判別結果を出力するステップと、
パルス信号のON時間を長短させてパルス信号を出力するパルス演算処理部が、前記減算処理ステップで演算された差分の大小に応じてパルス信号のON時間を長短させてパルス信号を出力するステップと、
論理積を演算し演算結果を出力する論理積演算部が、前記極性判別部からの出力と前記パルス演算処理部の出力との演算結果に応じて前記案内羽根制御部へ開度調整指令を出力するステップと、を備えることを特徴とする請求項5または6記載の出力制御方法。
【請求項8】
前記開度調整指令生成ステップは、前記第1の水車ユニットの案内羽根の開度と取得した前記第2の水車ユニットの案内羽根の開度との差が許容値以上となった場合、前記開度の差が許容値未満となるように開度調整指令を前記案内羽根制御部へ出力するステップであることを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項に記載の出力制御方法。
【請求項9】
前記請求項1乃至4の何れか1項に記載の出力制御装置を備えた水力発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−132340(P2012−132340A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283599(P2010−283599)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【出願人】(000221096)東芝システムテクノロジー株式会社 (117)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】