説明

出窓屋根構造

【課題】雨滴の衝突などにより発生する振動音を一層低減するとともに、施工が容易で安価なものとする。
【解決手段】屋根板1と天板2の間の空間には、ビーズ発泡成形体3が少なくとも屋根板1に密着して充填されている安価なビーズ発泡成形体3により屋根板1の振動が緩衝され、振動音の発生を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、住宅家屋などに設けられる出窓の屋根の構造に関し、詳しくは雨滴の衝突などによる振動音の発生を防止した出窓屋根構造に関する。
【0002】
【従来の技術】住宅家屋に設けられる出窓の屋根構造としては、例えば図5に示すようなものが知られている。この出窓屋根構造は、出窓の室内側天井部を構成する天板100と、天板100の上部を覆う屋根板200とから構成されている。天板100の一端は建物壁101に固定され、他端には枠状のアルミサッシ102が固定されて窓が構成されている。また屋根板200は、一端が建物壁101に固定されて他端が下方へ傾斜するように突出し、他端が断面略コ字状のアルミ押出成形品201を介して天板100に固定されている。
【0003】屋根板200は、鉄板などの薄肉の金属板から形成されるのが一般的である。そのため雨滴や雨だれの滴が屋根板200に衝突すると、その衝撃で屋根板200に振動が生じ、時には屋根板200と天板100の間の空間で共鳴して大きな不快音となって室内に侵入する場合がある。また直射日光によって暖められた屋根板200の温熱や、積雪の冷熱が屋根板200から天板100を伝わって室内に侵入し、冷暖房効率を低下させるという不具合もある。
【0004】そこでこのような不具合を防止するために、従来は屋根板200と天板100の間に硬質発泡ウレタン製の発泡体300が充填され、発泡体による吸音作用と断熱作用の両立が図られている。このような従来の出窓屋根構造は、工場にて天板100と屋根板200の間の空間に発泡ウレタン樹脂を注入して発泡させることで発泡体300を形成し、建築現場にて建物壁101に固定されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが従来の出窓屋根構造では、雨滴の衝突などにより発生する振動音の遮蔽効果がまだ不十分であり、さらなる遮音性能の向上が求められている。また工場にて発泡ウレタン樹脂を注入する作業は、発泡樹脂の漏れを防止するためのシール材の施工が必要となり、またシール不十分な箇所からの発泡樹脂の漏れによるバリを除去する作業も必要となって、きわめて作業性が悪く工数が多大な作業であり、コストも高価となっている。
【0006】本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、雨滴の衝突などにより発生する振動音を一層低減するとともに、組立が容易で安価な出窓屋根構造とすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発明の出窓屋根構造の特徴は、建物壁面の開口部上端に建物壁面から外方へ突出して固定され出窓の室内天井部を構成する天板と、天板の上部で建物壁面に固定され建物壁面から外方へ突出して天板を覆う屋根板とからなる出窓屋根構造において、屋根板と天板の間の空間には、ビーズ発泡成形体が少なくとも屋根板に密着して充填されていることにある。
【0008】
【発明の実施の形態】天板の材質には制限がなく、木材、各種ボードなど従来用いられているものを用いることができる。屋根板も金属板、樹脂板、各種ボードなど、強度や耐候性などを従来と同等に満足すれば、従来用いられているものを用いることができる。振動音の発生をより低減するには、比較的減衰性の大きな樹脂板を用いるのが好ましい。
【0009】ビーズ発泡成形体とは、ポリスチレンなどの熱可塑性樹脂に発泡剤としてブタン、ペンタン、ヘキサンなどを配合したビーズ又はペレットを、そのまま、あるいは予備発泡したものを、金型に入れて加熱することにより発泡させて得られる成形体をいう。このビーズ発泡成形体の材質としては、ポリプロピレンやポリスチレン又はポリエチレンなどが例示され、その発泡倍率としては15〜45倍が好ましい。発泡倍率が15倍より低いと重量が重くなって建築現場での組立作業性が低下し、45倍より高くなると強度が低下する。
【0010】ビーズ発泡成形体を天板と屋根板の間の空間に配置するには、予め所定形状に形成されたビーズ発泡成形体をその空間に挿入してもよいし、天板及び屋根板の少なくとも一方と一体ビーズ発泡成形することもできる。そして屋根板と成形体を密着させるには、接着剤で接着してもよいし、屋根板と一体ビーズ発泡成形することも好ましい。
【0011】本発明の出窓屋根では、雨滴の衝突により屋根板が振動すると、その振動は屋根板に密着しているビーズ発泡成形体の変形により緩衝され、室内への振動音の侵入が防止される。またビーズ発泡成形体は発泡倍率が高く多くの気泡を有しているので断熱作用に優れ、屋根板からの温熱や冷熱の室内への侵入が防止されている。
【0012】
【実施例】以下、実施例によりさらに具体的に説明する。
(実施例1)図1に本実施例の出窓屋根構造の断面図を、図2にその部品構成図を示す。この出窓屋根構造は、塩化ビニル樹脂製の屋根板1と、MDFボード製の天板2と、屋根板1と天板2で形成された空間に充填されたポリプロピレン製のビーズ発泡成形体3とから構成されている。
【0013】屋根板1は、図2に示すように中央板10と左右一対の寄棟板11,12からなり、断面一定の中央板10は押出成形で形成され、寄棟板11,12は射出成形によりそれぞれ形成されている。寄棟板11,12は、それぞれ一部が中央板10内に挿入され、図示しない樹脂クリップで固定されている。そして中央板10、寄棟板11,12はそれぞれ後端にフランジ部13をもち、フランジ部13が釘40などで建物壁4に固定される。また中央板10、寄棟11,12には、それぞれ前端及び寄棟11,12には側端にも筒状の保持部14が形成され、保持部14には後方に開口し天板2が係合する溝15が形成されている。また保持部14には、図示しないアルミサッシの上端部が固定される。
【0014】天板2は、前端及び側端が保持部14の溝15に係止され、後端は断面L字状の金具16にて屋根板1に固定される。ビーズ発泡成形体3は、図2に示すように中央部30と、左右一対の寄棟部31,32から構成され、それぞれ中央板10と寄棟板11,12の内側空間部の形状に対応している。そして中央部30が中央板10と天板2の間の空間に、寄棟部31が寄棟板11と天板2の間の空間に、寄棟部32が寄棟板12と天板2の間の空間にそれぞれ挿入充填されている。
【0015】なお、中央部30は中央板10より左右長さが短く構成されるとともに、寄棟部31,32は寄棟板11,12より左右長さが長く構成され、寄棟部31,32は寄棟板11,12からはみ出て中央板10内にも挿入されている。これにより中央板10と寄棟板11,12との境界部の強度が確保されている。また中央部30と寄棟部31,32はそれぞれの対向する側面どうしが接着されているとともに、それぞれ上面が中央板10と寄棟板11,12に接着され、中央板10と寄棟板11,12は図示しない樹脂クリップで固定されているとともにそれぞれ接着によっても固定されている。
【0016】そして屋根板1のフランジ部13が釘40などで建物壁4に固定され、天板2の後端が建物壁4と係合して支持されることで、出窓屋根が形成される。この出窓屋根構造を形成するには、屋根板1とビーズ発泡成形体3をそれぞれ形成する。屋根板1は、中央板10は断面一定であるので塩化ビニル樹脂の押出成形により形成するのが効率的である。また寄棟板11,12は、それぞれ射出成形で形成される。
【0017】ビーズ発泡成形体3は、所定形状の金型内で発泡PPビーズを用いてビーズ発泡成形することにより、中央部30と寄棟部31,32がそれぞれ形成される。発泡倍率は30倍である。そして中央板10と寄棟板11,12を組付けて図示しない樹脂クリップと接着剤で固定するとともに、中央部30と寄棟部31,32を中央板10と寄棟板11,12の内側空間部に挿入し、互いに接着するとともに中央板10及び寄棟板11,12とも接着固定する。
【0018】その後、天板2を溝15に挿入して金具16で屋根板1と固定し、中央板10と寄棟板11,12の内側空間部を覆って出窓屋根アッシーとされ、建築現場にて建物壁4に固定される。本実施例の出窓屋根構造では、屋根板1に雨滴や雨だれが衝突しても、衝突の衝撃はビーズ発泡成形体3で緩衝され、振動音がほとんど生じない。因みに図5に示す従来の出窓屋根構造と同一条件で比較したところ、オーバーオール値で従来の構造が80dBであったのに対し、本実施例の構造では72dBと大きく低減されていた。
【0019】また本実施例の出窓構造では、ビーズ発泡成形体3により軽量でありながら屋根の強度が保持され、また断熱効果も高いため冷暖房効率が向上する。さらに、出窓屋根アッシーとして供給可能であるので、大量生産が可能となるとともに、従来必要であったウレタン発泡時の漏れ防止用シール材も不要となって、工場での作業性が極めて良好であり、安価な出窓屋根とすることができる。
(実施例2)上記実施例1では、ビーズ発泡成形体3が屋根板1と天板2の間の空間を全て充填していたが、本実施例では図3に示すように、ビーズ発泡成形体3の天板2との接触表面に複数の溝30を形成している。
【0020】このように構成することにより、ビーズ発泡成形体3と天板2との接触面積が小さくなるので、屋根板1の振動が天板2に伝わるのが一層防止され、振動音の発生を一層防止することができる。
(実施例3)また図4に示すように、ビーズ発泡成形体3に天板2に接触する表面に開口する深い凹部31を設けることも好ましい。このようにすれば、天板2との接触面積の低下により実施例2と同様に振動音の発生を一層防止できるとともに、重量が一層低減され軽量化により取扱い作業性が向上し、コストも一層安価となる。
【0021】なお、上記実施例では別に形成されたビーズ発泡成形体3を屋根板1内に挿入して一体化したが、屋根板1を発泡成形型内に配置してビーズ発泡成形体を一体成形することもできる。この場合は接着剤を用いずともビーズ発泡成形体を屋根板1と接合することができ、工数も低減されるのでコストを一層低減することができる。
【0022】
【発明の効果】すなわち本発明の出窓屋根構造によれば、屋根板にはビーズ発泡成形により形成されたビーズ発泡成形体が密接しているので、ビーズ発泡成形体により屋根板の振動が緩衝され振動音の発生が防止されている。またビーズ発泡成形体はきわめて軽量であるので、出窓屋根アッシーとして供給することができ、建築現場における施工がきわめて容易となるとともに大量生産も容易であり、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の出窓屋根構造の断面図である。
【図2】本発明の一実施例の出窓屋根構造の部品構成を示す斜視説明図である。
【図3】本発明の第2の実施例の出窓屋根構造の断面図である。
【図4】本発明の第3の実施例の出窓屋根構造の断面図である。
【図5】従来の出窓屋根構造を建物に取りつけた状態で示す断面図である。
【符号の説明】
1:屋根板 2:天板 3:ビーズ発泡成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 建物壁面の開口部上端に該建物壁面から外方へ突出して固定され出窓の室内天井部を構成する天板と、該天板の上部で該建物壁面に固定され該建物壁面から外方へ突出して該天板を覆う屋根板とからなる出窓屋根構造において、該屋根板と該天板の間の空間には、ビーズ発泡成形体が少なくとも該屋根板に密着して充填されていることを特徴とする出窓屋根構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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