説明

出金許諾システム

【課題】振り込みまたは引き出しの際に、振込人が許諾者に直接連絡をとることを可能とするシステムを提供する。
【解決手段】ATMサーバ20は、口座名義人が自己の口座から出金を行う際に、出金を許諾する許諾者の連絡先と、許諾者に許諾を求めるための条件を規定した許諾要通知条件とを記憶する出金許諾情報100を有する。ATM10は、口座名義人からの出金要求を受付けた際に、口座名義人と許諾者が直接電話連絡により会話できる会話手段11を備え、口座名義人から出金要求があった際に、許諾者の電話番号に発信し、許諾者に口座名義人と直接会話させるようにする。ATMサーバ20は、口座名義人と許諾者の会話が終了後、許諾者の許諾を求め、その許諾に基づいて当該出金を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関における預金口座から口座名義人自身による出金に対して許諾機能を有する出金許諾システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、多発する振り込め詐欺などを防止するため、振り込みや現金での引き出しを自己名義の預金口座から行う場合であっても第三者に許諾または承認を求めるシステム等がいくつか提案されている。例えば、特許文献1には、口座所有者(口座名義人)が自口座から金銭の振り込みをする際、その口座で設定されている振込金額の上限の閾値を超えた高額な振り込みであった場合、その口座に予め登録されている第三者へ、振込承認要求を通知する振込方法が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、口座に予め登録されている許諾者が出金上限額や出金可能期間などの許諾の条件の登録を行い、口座所有者が手続きを行おうとした出金が該許諾の条件に適う場合のみ該出金手続きを許容する方式が記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、不正に出金することを抑制するために、口座名義人が希望の出金内容および出金金額を予約入力し、口座名義人からの出金を受付けた場合に、出金を承認する権限を有する承認者へ出金を承認するか否かの通知を自動的に発送するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−316959号公報
【特許文献2】特開2007−219885号公報
【特許文献3】特開2010−140456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、振込金額が口座に設定されている上限値を超えている場合にのみ第三者に通知が行くようになっているので、上限値未満の比較的小額である架空請求のような詐欺には対応できない。また、第三者への通知方法は、Eメールや電話による音声ガイダンス案内のような片方向のみであるので、第三者が疑問をもった振込に対して状況を詳しく知るには、口座所有者に別途連絡しなければならない。
【0007】
また、特許文献2に記載の方式では、口座所有者が出金のたびごとに事前に許諾者に連絡し、許諾者が各々の出金に対して許諾する旨の許諾記録を入力しておかねばならず、口座所有者および許諾者双方にとって手間がかかる。また、振り込め詐欺防止のために、口座所有者が高齢者の場合、許諾者を息子などに設定することが多いと思われるが、振り込め詐欺犯人グループは、その息子などになりすまして高齢者を巧みに欺くことが多いので、その場合、犯人グループに許諾を求めることになってしまう。そのため、犯人グループが許諾システムの存在を知り、振り込みではなく、別の入金方法、例えば、銀行員や警察官を名乗りキャッシュカードを預かる手口を取り、後で許諾必要額を超えないように複数回に分けて出金を行うなどの回避策をとることができてしまう。
【0008】
また、特許文献3に記載のシステムは、預金口座の名義人となっている団体の代表者や会計担当者が、振り込みではなく、現金の不正な引き出し(横領)を防止するための仕組みであり、振り込め詐欺の抑止を目的とするものではない。また、口座名義人が出金のたびごとに事前に予約する必要がある点では特許文献2の場合と同様な課題がある。
【0009】
本発明では、上記のような課題に鑑み、振り込め詐欺を防止するため、許諾者に対して事前予約を必ずしも必要とせず、実際の出金(振り込みや現金の引き出し)の際に、許諾者に直接電話連絡をとれるようなシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の出金許諾システムは、以下のような特徴を備える。
【0011】
ATMとネットワークで接続されたATMサーバで構成され、金融機関の口座名義人が自らの口座から振り込みまたは引き出しを行う際に許諾を要する出金許諾システムであって、前記ATMサーバは、前記口座からの出金を許諾する許諾者の連絡先と、前記口座名義人が当該口座から出金要求を行った際に、前記許諾者に許諾を求めるかどうかを規定した許諾要通知条件とを記憶する出金許諾情報記憶手段を備え、前記ATMは、前記口座名義人から前記出金要求を受付けた際に、当該口座名義人を前記許諾者と電話連絡により会話させる会話手段を備え、前記ATMサーバは、前記出金要求を前記ATMから受信した際に、前記許諾要通知条件を参照し、前記許諾者の許諾が必要な場合は、前記会話手段によって前記口座名義人と前記許諾者の会話を行なわせ、前記会話が終了後、前記許諾者に許諾を求め、前記許諾に基づいて当該出金を実行させる、ことを特徴とする。
【0012】
上記のシステムによれば、ATM(Automatic Teller Machine;現金自動預け払い機、または自動取引装置)と接続されたATMサーバ(ATMを制御し、ホストコンピュータが口座取引を実行する前処理を行うサーバ)が、予めその口座に登録された許諾者の許諾が必要な出金要求の場合は、口座名義人が出金操作を行っているATMと許諾者の電話機を接続し、ATMに備えた会話手段を用いて、口座名義人と許諾者とが電話により直接会話させる手段を提供する。そして、その会話が終了後に、許諾者に許諾を求め、その許諾に基づいて出金を(ホストコンピュータとATMに)実行させる。
【0013】
このような構成によれば、口座名義人は、自己の口座からの出金(振り込み、または引き出し)であっても、予め定めた条件にあてはまる場合は、許諾者の許諾が必要となるように設定することがきる。そして、ATMから実際に出金を行う際に、許諾が必要な出金の場合は、ATMから許諾者に直接電話が自動的に繋がるようにするので、口座名義人は、その場で、許諾者と直接通話することができる。許諾者は、その通話内容からその出金が詐欺などによるものでないかを、本人との会話から判断することができる。
【0014】
実際、振り込め詐欺では、口座名義人が冷静な判断ができないような状況におかれて、第三者に相談することにさえ気がまわらないことも多い、したがって、実際に出金を行なおうとしている現場であるATMから自動的に許諾者に電話連絡を行うようにする。ATMは、振り込み前に自動的に電話を発信し得る機会を持つからである。このようにすることで、口座名義人が第三者と相談することさえ気が回らないような場合であっても、第三者と連絡する手段を提供することができるので、振り込め詐欺や架空請求などの犯罪の抑制に役立つ。また、たとえ犯人が“携帯電話の番号が変わった”などの手口で口座名義人を欺いても、当システムに登録された連絡先の電話番号は変更できないので、犯人に許諾を求める電話がかかることはない。さらに、出金許諾を求める際に、許諾者(多くの場合は家族)と電話で直接話す機会が設けられるので、口座名義人が一人ぐらしの高齢者等の場合、家族のコミュニケーションの機会が広がるという効果もある。
【0015】
また、本発明の出金許諾システムは、さらに以下の特徴を備えることができる。
前記会話手段は、前記ATMに設置されたインターフォンであることを特徴とする。
【0016】
上記のシステムによれば、ATMの故障や操作が分からない場合に対応するためATMまたはATM横に設置されたインターフォンを有効利用することができる。また、インターフォン以外の別の受話器を設置することで生じる利用者の混乱も避けることができる。
【0017】
本発明の出金許諾システムは、さらに以下の特徴を備えることができる。
前記許諾要通知条件は、複数の許諾条件を組み合わせた論理式によって定義され、前記許諾条件には、該出金を行うことのできるATMの設置場所およびATMの識別子を含むことを特徴とする。
【0018】
上記のシステムによれば、出金額や出金可能な期間以外に、ATMの設置場所(店舗等)や、ATM自体も許諾を求める条件に含める。このようにすることで、上記の会話機能を持つATMを、口座名義人の通常使用するATMとして利用を促し、特に、口座名義人が機械操作に不慣れな高齢者等の場合には、いざというときには、いつでもその場から許諾者に電話連絡がつきやすい会話機能を持つATMを利用することで安心感を持ってATMを使用してもらうことができる。また、万一、キャッシュカードと暗証番号を振り込め詐欺犯人グループに騙されて渡してしまったとしても、出金額にかかわらず、特定の店舗や特定のATMでないと出金できないように許諾条件を設定しておけば、犯人検挙にも役立てることができる。
【0019】
本発明の出金許諾システムは、さらに以下の特徴を備えることができる。
前記出金許諾情報記憶手段は、複数の許諾者ごとに複数の連絡先を記憶し、予め定めた時間帯ごとに、前記許諾者に連絡する際の優先順位を前記複数の連絡先に持たせることを特徴とする。
【0020】
上記のシステムによれば、許諾者とできるだけ連絡がつくように、許諾者は複数とし、かつ各許諾者に複数の連絡先(自宅電話、携帯電話、通勤・通学先の電話等)を登録し、許諾者の生活パターンに合わせて予め定めた時間帯ごとに、電話が繋がりやすい順に各連絡先に優先順位をつける。このようにすることで、許諾者いずれとも電話連絡のつかない事態を最小にすることができる。
【0021】
本発明の出金許諾システムは、さらに以下の特徴を備えることができる。
前記ATMサーバは、前記会話手段によって許諾者のいずれとも電話連絡がとれない場合には、非会話モードに移行し、前記非会話モードにおいては、複数の許諾者からの事前許諾のあるなしに基づいて当該出金の可否を判断することを特徴とする。
【0022】
上記のシステムによれば、万一、許諾者のいずれとも電話連絡がとれない場合には、非会話モードに移行し、非会話モードでは、複数の許諾者から事前許諾がある場合に限り出金を許可し、事前許諾がない場合は、出金を拒否する。このようにすることで、電話連絡がとれない場合が想定されるときは、口座名義人から許諾者に事前に許諾を求めることもできる。逆に、許諾者のほうから、長期不在等の場合は、事前登録を促すようにしておいてもよい。この場合、許諾者を複数とするのは、振り込め詐欺犯は、許諾者の1人になりすましている可能性もあるからである。
【0023】
また、本発明のシステムは、下記のようにも構成できる。
ATMとネットワークで接続されたATMサーバで構成され、金融機関の口座名義人が自らの口座から振り込みまたは引き出しを行う際に許諾を要する出金許諾システムであって、前記ATMサーバは、前記口座からの出金を許諾する許諾者の連絡先と、前記口座名義人が当該口座から出金要求を行った際に、前記許諾者に許諾を求めるかどうかを規定した許諾要通知条件とを記憶する出金許諾情報記憶手段を備え、前記ATMは、前記口座名義人から前記出金要求を受付けた際に、当該口座名義人を前記許諾者と電話連絡により会話させるインターフォンを備え、前記ATMサーバは、前記出金要求を前記ATMから受信した際に、前記許諾要通知条件を参照し、前記許諾者の許諾が必要な場合は、前記会話手段によって前記口座名義人と前記許諾者の会話を行なわせる、ことを特徴とする。
【0024】
このような構成では、許諾者にATMのインダーフォンから、直接外部の電話に接続させ、予め登録した許諾者とその場で会話させる手段を提供することを主眼とする。このようにすることで、口座名義人は、出金の際に第三者と会話できる可能性が高まり、これだけでも振り込め詐欺の防止に繋がる。また、本構成においては、許諾者と会話したこと自体を許諾とみなし、許諾の実施そのものを別途行わなくてもよいようにもできる。
【0025】
また、本発明の出金許諾システムは、本システムの中核となるATMサーバの発明と捉えることもでき、上記の出金許諾システムと同様な作用効果を奏することができる。
【0026】
ATMとネットワークで接続され、金融機関の口座名義人が振り込みまたは引き出しを行う際に許諾を行うATMサーバであって、口座からの出金を許諾する許諾者の連絡先と、前記口座名義人が該口座から出金を行う際に、前記許諾者に許諾を求めるかどうかを規定した許諾要通知条件とを記憶する出金許諾情報記憶手段と、前記ATMが前記口座名義人からの出金要求を受付けた際に、前記許諾者の電話機と前記ATMの会話手段とを接続する接続手段とを備え、前記口座名義人が前記ATMから該口座から出金を行う際に、前記許諾要通知条件を参照し、前記許諾者の許諾が必要な場合は、前記会話手段を用いて前記口座名義人と前記許諾者の会話を行なわせ、前記会話が終了後、前記許諾者の許諾を求め、前記許諾に基づいて当該出金を実行させる、ことを特徴とする。
【0027】
また、本発明の出金許諾システムは、以下のような金融機関のシステムにおける出金許諾方法の発明と捉えることもでき、上記の出金許諾システムと同様な作用効果を奏することができる。
【0028】
金融機関のシステムにおける出金許諾方法であって、前記システムのコンピュータが、前記金融機関の口座からの出金を許諾する許諾者の連絡先を口座ごとに記憶する段階と、口座名義人が自己の口座から出金を行う際に前記許諾者に許諾を求める条件を規定した許諾要通知条件を記憶する段階と、前記口座名義人がATMから該口座から出金を行う際に、前記ATMを介して、前記口座名義人と前記許諾者とを電話連絡により会話させる段階と、前記会話の終了後、前記許諾者の許諾を求める段階と、前記許諾に基づいて、当該出金を実行する段階とを、実行することを特徴とする、出金許諾方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、自己の口座からの振り込みまたは引き出しであっても、予め登録した許諾者にATMから自動的に電話連絡がとれ、許諾者の判断を直接求めることができる、振り込め詐欺防止のシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る金融機関システムの概略を示す図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係るATMの概略の外観を示す図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係るATMの機能ブロックを示す図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係る出金許諾情報の保存データを示す図である。
【図5】本発明の第一の実施形態に係るATMの振り込み処理フローを示す図である。
【図6】本発明の第一の実施形態に係るATMの会話モード時の処理フローを示す図である。
【図7】本発明の第一の実施形態に係るATMの非会話モード時の処理フローを示す図である。
【図8】本発明の第二の実施形態に係る本発明の実施形態に係る金融機関システムの概略を示す図である。
【図9】本発明の第二の実施形態に係る金融機関システムの概略を示す図である。
【図10】本発明の第一および第二の実施形態に係るATMの振込確認画面の一例を示す図である。
【図11】本発明の第一および第二の実施形態に係る許諾者への通知メッセージの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号(符号)を付している。
【0032】
図1は、本発明の第一の実施形態に係る金融機関システムの概略を示す図である。本実施形態のATM10は、通常のATMと同様に、銀行等の金融機関の店舗の他、駅,空港,百貨店,スーパ,コンビニエンス・ストア等に設置され得る。通常のATMと異なるのは、口座名義人(ATMの利用者であり出金者)と許諾者との間の会話手段としてインターフォン部11を備えている。通常、インターフォンは、ATMの故障や操作方法等が分からない場合に、利用者が係りの人間と通話するために設置されるが、本インターフォン部11は、このような目的だけでなく、外部の一般の電話機と接続できるようになっている。ただし、通常の電話機と異なり、単に電話だけを行うことはできない。利用者がキャッシュカードをATM10に挿入し、暗証番号や生体認証などで認証が正常に終了して、振り込みや引き出しの出金操作をするときに限って、キャッシュカードの口座に予め登録された許諾者の電話番号とのみ接続可能となる。
【0033】
ATMサーバ20は、ATM10と金融機関オンラインネットワーク40で接続され、金融機関のホストコンピュータ22が、ATM10からの要求を受けて口座取引を実行するための前段階を処理する役目を果たす。口座出金許諾DB21は、ATMサーバ20に接続可能に構成された出金許諾情報記憶手段であり、許諾者および許諾者の電話番号等を含む出金許諾情報100を格納している。出金許諾情報100とは、詳しくは後述するが、予め口座名義人が定めた一または複数の許諾者の連絡先(電話番号)を含み、さらに、許諾者に許諾を求める条件を定義した「許諾要通知条件」を含んでいる。ATMサーバ20は、金融機関のホストコンピュータ22と接続されるが、高度なセキュリティを施された上で、インターネット41とも接続され、外部の機器と交信可能となっている。
【0034】
出金許諾情報100は、インターネット41を介して、許諾者が所定のユーザIDとパスワードを用いて自己のPC30や携帯電話31から口座出金許諾DB21に登録することができる。この際、ユーザIDは、口座名義人の依頼に基づき許諾者自身の本人確認も行ったうえで発行されることはいうまでもない。もちろん、口座名義人自身がPCや携帯電話を扱える場合は、許諾者と相談の上、自ら出金許諾情報100を登録してもよいし、銀行の窓口で登録を依頼することも可能である。なお、出金許諾情報100の一部または全部は、口座出金許諾DB21だけでなく、キャッシュカードがICカードの場合には、ICカードに記憶するようにしてもよい。
【0035】
ホストコンピュータ22、および口座DB23は、通常の金融機関のオンラインシステムで使用されるものであってよい。すなわち、ホストコンピュータ22は、金融機関内のすべての口座の日々の取引トランザククションを処理し、処理された口座取引の内容はすべて口座DB23に記録される。図では、本発明の特徴を示すために、ATMサーバ20を、あえてホストコンピュータとは別個のコンピュータとして示しているが、ATMサーバ20も上記のホストコンピュータ・システムの一部と考えてもよい。
【0036】
図2は、本発明の第一の実施形態に係るATMの概略の外観を示す図である。本実施形態のATM10は、通常のATMとしての機能を果たすため、利用者からの入力および表示を行う表示入力部13(タッチパネル),音声ガイド出力部14(図示せず),紙幣入出金部17A,硬貨入出金部17B,通帳印字部17C,明細票印字部17D(図示せず),カード読取部17E,オプションとして、指紋・手のひら認証などの生体認証部17F,等を備える。
【0037】
また、ATM10は、インターフォン機能として、インターフォン表示画面11A,インターフォン受話器11Bを備え、さらにATMの利用者を撮像するためのインターフォンカメラ11Cを備えていてもよい。インターフォン表示画面11Aは、前記の表示入力部13(タッチパネル)と兼用することもできるが、通常のATMの操作とは別の表示を行うので、電話連絡に関する操作のみを表示することが望ましい。また、可能であれば、テレビ電話のように通話先の人間を表示できるとさらに望ましい。インターフォン受話器11Bは、単にこれを取り上げただけでは、通常のインターフォンとしてのみ機能し、外部と繋がることはないが、キャッシュカードをATMに挿入して、許諾が必要な出金をしようとした際にはじめて許諾者の電話機に接続される。
【0038】
図3は、本発明の第一の実施形態に係るATMの機能ブロックを示す図である。ATM10の機能ブロックは、図2と対応しており、利用者の入力操作および操作ガイドなどの表示を行う表示入力部13,利用者に音声案内をする音声ガイド出力部14,ホストコンピュータと通信を行う金融機関オンライン通信部15,ATMの各処理部17(17A〜17F),インターフォン部11,インターフォン部11を公衆電話網に接続する電話回線通信部12、および制御部16から構成される。電話回線通信部12は、インターフォン部11(会話手段)と許諾者の電話機との接続手段として機能する。
【0039】
ATMの各処理部17は、図2と対応して、紙幣入出金部17A,硬貨入出金部17B,通帳印字部17C,明細票印字部17D,カード読取部17E,生体認証部17Fの各機能部に分かれている。インターフォン部11は、インターフォン表示画面11A,インターフォン受話器11B,インターフォンカメラ11Cで構成される。制御部16は、ATM本来の機能を制御するATM制御部16Aと、インターフォン部11を制御するインターフォン制御部16Bに機能的に分けることができる。
【0040】
なお、特に図示していないが、許諾者が本人であるかどうかを識別するため,声紋認証部を備えることが望ましい。あるいは、インダーフォンがテレビ電話でない場合は、許諾者のいる場所をATM画面に表示するようにしてもよい。このことは、例えば、許諾者が海外にいるのに日本からかかってきているとか、許諾者が東京に行くことはないのに東京からかかってきているとかの情報を口座名義人が確認でき、なりすましの検出に役立つ。
【0041】
図1のシステム構成および図3の機能ブロックは、あくまで一例であり、一つの機能部を分割したり、複数の機能部をまとめて一つの機能部として構成してもよい。各機能部は、装置に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only
Memory)またはハードディスク等の記憶装置に格納されたコンピュータ・プログラムを読み出し、CPUにより実行されるコンピュータ・プログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。また、本発明の実施形態におけるデータベース(DB)は、商用データベースであってよいが、単なるテーブルやファイルの集合体をも意味し、データベースの内部構造自体は問わない。
【0042】
図4は、本発明の第一の実施形態に係る出金許諾情報100に保存されるデータを示す図である。図示するように、出金許諾情報100は、口座番号,口座名義人,および出金許諾者の人数、許諾連絡先数を記憶する口座登録情報101と、出金許諾者,その連絡先(電話番号)および連絡先の優先順位を記憶する許諾者リスト102と、許諾条件を記憶する許諾条件リスト103と、許諾条件の組み合わせを論理式Rで定義する許諾要通知条件103Aと、実際の取引と許諾状況を記録する出金許諾取引履歴104と、および必須ではないが、事前許諾情報105とを含んでいる。
【0043】
口座登録情報101は、口座番号と口座名義人(名前だけでなく、フリガナ、生年月日、住所、電話番号、メールアドレス等を含んでいてもよい)を対応付け、口座から口座名義人自身が振り込みまたは引き出しを行う際に許諾を行う許諾者の数と、許諾者すべての連絡先(電話番号)の総数(許諾連絡先数)を登録しておく。許諾者は、通常、家族等に設定されることが多いが、親戚や親しい友人、または成年後見人等の場合もあり得る。
【0044】
許諾者リスト102は、上記で登録された許諾者の氏名(名前だけでなく、フリガナ、生年月日、住所、メールアドレス等を含んでいてもよい)、連絡先、優先順位を含んでいる。この例では、口座名義人の長男太郎(許諾者1)、長男の妻花子(許諾者2)、次男次郎(許諾者3)が許諾者として登録されている。なお、許諾連絡先数は、各許諾者に2つの連絡先が登録されているので、6となるようにもみえるが、実際は、102Bと102Cは同じ電話番号(長男と長男の妻が暮らす自宅の電話番号)であるので、許諾連絡先数としては5となっている。
【0045】
優先順位とは、ATM10が自動発信する際の連絡する際の順を定めたものである。すなわち、優先順位1の連絡先に電話発信して所定時間内に応答がない場合は、次に優先順位2の連絡先に電話発信が行われる。以下、同様である。なお、許諾者ごとの連絡先は、複数設定することが望ましい。例えば、「時間帯」ごとに、連絡がとりやすい電話番号(自宅、勤務先、携帯番号等)を設定する。ただし、ここでいう「時間帯」とは、単に一日の中の時間帯だけでなく、曜日や休日も含んだ意味での時間帯である。すなわち、例えば、同じ9:00〜18:00でも、平日の場合と、土日・休日の場合では異なる「時間帯」とすることもできる。「時間帯」は、許諾者の生活パターンに応じて任意に定義することができるものとする。
【0046】
優先順位は、さらに厳密にいうと、上記の「時間帯」ごとに、連絡が取りやすい連絡先の順位を指定したものである。図4の例では、時間帯1(例えば、平日の9:00〜18:00)の優先順位は、許諾者3,1,2の順であるが、時間帯2(土日休日9:00〜18:00)の優先順位は、許諾者2,1,3のように優先順位を設定している。ここで注意すべきは、許諾者でなく個々の連絡先に対して優先順位を設定する点である。例えば、ある時間帯においては、優先順位1は、許諾者1の連絡先1(102A)、優先順位2は、許諾者1の連絡先2(102B)と許諾者2の連絡先1(102C)(両者は同じ電話番号である)、優先順位3は、許諾者2の連絡先2(102D)のように設定する。この例の場合は、異なる連絡先は5つあるので、優先順位も、1から最大5までを設定することができる。
【0047】
なお、許諾者全員が承認した場合にのみ出金が行えるようにすることもできるシステムもあるが、本システムでは、いずれかの許諾者1人が許諾すればよく、効率的な連絡処理のために、許諾者に対してできるだけ速く連絡をつけることを優先する。ATMからの電話連絡をとるため、できるだけ不必要な発信を避けるためである。
【0048】
許諾条件リスト103は、口座名義人が日常的に出金する際の条件の集合である。「許諾要通知条件」とは、これらの許諾条件の組み合せによって構成され、許諾者に許諾を求める(許諾要通知を発信する、すなわち、ATMが許諾者に電話をかける)条件を定義したものである。例えば、図示するように、許諾条件1に出金額(この例では、5万円未満)、許諾条件2に出金を行える期間(この例では、毎月27〜31日午前中)、許諾条件3に、出金を行える銀行の支店名(この例では、○○銀行新宿支店)、許諾条件4に、出金を行えるATMの識別子(この例では、ATM#004,#005)、許諾条件5に、「初めての振込先でないこと」が設定されているとすると、許諾条件1から5まですべて満たされている場合には、許諾要通知は発信しないようにすることができる。通常、口座名義人が生活費などを定期的に引き出す場合は、一定の範囲の金額(例えば、5万円〜10万円程度)を、一定の場所(例えば、自宅または勤務先・通学先の近辺等)で、ある程度決まった期間(例えば、給料日または年金支給日後の近辺)に行うことが多い。また、振込みの場合は、特定の振込先に対して行うのが通常である。すなわち、上記の例のような許諾条件1〜5をすべて満たす場合は、明らかに日常的に行う出金と判断し、いちいち許諾を求める必要がないようにできる。こうすることで、口座名義人、許諾者双方の利便性が高まるのは明らかである。
【0049】
また、複数の許諾条件の組み合わせを用いることで、単に出金額だけを許諾要条件にした場合(すなわち、ある出金額を超えた場合にのみ許諾を求める)に比べ、口座名義人の様々な生活パターンに対応できる。ただし、この場合であっても、許諾要通知は発信しないが、口座名義人が出金を行った旨の通知(これを許諾不要通知と呼ぶことにする)だけは許諾者に発信するようにしてもよい。許諾要通知条件の見直しに役立つからである。
【0050】
許諾要通知条件は、具体的には、複数の許諾条件を組み合わせた論理式で定義される。例えば、上記5つの条件をすべて満す場合に許諾を不要とするには、許諾要通知条件の論理式を、R=NOT(許諾条件1 AND 許諾条件2 AND 許諾条件3 AND 許諾条件4 AND 許諾条件5)とする。また、許諾条件1(出金額)を満たさず、かつ他の条件を1つ以上満たさない場合に許諾を必要とする論理式は、R=NOT(許諾条件1)AND (NOT(許諾条件2) OR NOT(許諾条件3) OR NOT(許諾条件4) OR NOT(許諾条件5))となる。また、出金が振り込みの場合で、初めての振込先のときは、他の条件にかかわらず許諾を必要とする論理式は、R=NOT(許諾条件5)である。
【0051】
許諾条件4にATM自体の識別子を含ませていることも一つの特徴である。本発明のインターフォン機能付のATM(この例では、ATM#004,ATM#005)でないATMから出金を行うときは、許諾者とATMからは通話はできないが、許諾条件4を満たすことを許諾要通知条件に含ませていると、そのATMからの出金要求は自動的に拒否される。通常使用している店舗等のATMから引き出さない場合は、なにか事情があり、かつ通話もできないATMからの出金はいったん拒否するほうが安全だからである。ただし、緊急時には口座名義人のほうから許諾者に別途電話連絡させるように取り決めをしておく(連絡をしない限り、ATM#004、#005以外からの出金はいかなる場合も拒否され続ける)。この場合、許諾者にEメールを自動的に送信するようにしてもよい。
【0052】
また、許諾要通知条件にATM自体の識別子を含ませることで別の利用形態も考えられる。すなわち、本発明のインターフォン機能を備えたATMから出金する場合には、他の許諾条件にかかわらず、許諾者に必ず電話発信するように設定することもできる(すなわち、R=許諾条件4)。出金の際、ATMから発信する場合は、許諾者に高い確率で電話連絡をとることができるので、特に、口座名義人が普段、連絡がとだえがちな高齢者等の場合、安否確認や、家族のコミュニケーション手段としても役立つ。
【0053】
出金許諾取引履歴104は、許諾者になんらかの通知が送信された場合の出金記録を記憶したデータベースである。口座名義人自らの出金でない口座自動振替などの出金は記録されないが、許諾要通知条件にあてはまらないような出金も「自動許諾」として記録するようにしてもよい。このように記録を残すことで、通常、通帳には記入されないような情報も記録できるので、日々の出金管理や許諾条件の見直しに役立てることができる。なお、出金許諾情報100のすべての情報は、口座名義人および許諾者は、所定のIDとパスワードを入力することで、いつでも参照できることはいうまでもない。ただし、許諾者の追加・削除や許諾要通知条件の変更は、口座名義人および許諾者双方の許諾が必要となる。なお、事前許諾情報105については後述する。
【0054】
図5は、本発明の第一の実施形態に係るATMの振り込み処理フローを示す図である。この図では、ATM10、ATMサーバ20、およびホストコンピュータ22の処理のやりとりの概略を示している。
【0055】
図を参照するに、ATM10は、まずステップS10において、口座名義人(ATM利用者)が表示入力部13から振込ボタン押したことを検知して、振込開始を受付けると、暗証番号、振込金額、振込先の入力を求める(ステップS11)。これらの入力が正常に受付けられると、ATM10は、ATMサーバ20に振込処理要求を送信し(ステップS12)、この要求を受け取ったATMサーバ20は、ホストコンピュータ22に対して、いったん当該口座情報の照会を送信する(ステップS13)。口座情報が正常に受信でき、利用者の本人認証がOKであれば(ステップS14;Yes)、ステップS16に進み、出金許諾情報100を口座出金許諾DB21から読み込む。本人認証がNGであれば(ステップS14;No)、ステップS15において、ATM10に対してエラー通知を行い、エラー通知を受けたATM10は、その旨を利用者に表示し、再度入力を利用者に求めるなどして(図示せず)、処理を終了する。
【0056】
ATMサーバ20は、出金許諾情報100を読み込んだ後、口座登録情報101に含まれた許諾者数をチェックする。許諾者数がゼロであれば、許諾不要と判断し(ステップS17;No)、通常の振込処理要求をホストコンピュータ22に送信する(ステップS24)。許諾者数がゼロでなく、かつ、出金内容が許諾要通知条件を満たしていれば、許諾要と判断し(ステップS17;Yes)、現在の時間帯、曜日等を参照し、許諾者リストの中から最適な(優先度のもっとも高い)許諾連絡先を選択する(ステップS18)。
【0057】
許諾連絡先に電話番号が記入されていることを確認した場合は(ステップS19;Yes)、ステップS21に移り、後述の会話モードの処理に移る。会話モードとは、許諾者の電話連絡先にATM10またはATMサーバ20が電話連絡するため自動発信し、電話接続が確立した場合に、利用者と許諾者の会話が終了するまで待機するモードである。ただし、ATMサーバ20の会話モードは、当該ATM10との関係においてのみであり、他のATMとの関係においては通常モードのままである。ATMサーバ20が会話モードに入ると、ATM10も会話モードに入り(ステップS22)、ATM10のインターフォン部11から利用者が許諾者と直接電話連絡できるモードとなる。利用者と許諾者の会話が終了したら、具体的には利用者側からインターフォン部11の受話器を置くか所定のボタンを押すと、ATM10およびATMサーバ20の会話モードは終了する。
【0058】
なお、許諾連絡先いずれにも電話番号が記入されてない場合(ステップS19;No)は、ステップS20に移り、後述の非会話モードの処理を行う。非会話モードとは、許諾者いずれとも電話連絡がとれない場合の応急処置をとるモードである。また、いったん会話モードに入っても、許諾者いずれとも電話接続が確立しないことが判明した時点で非会話モードに移行する。
【0059】
ATMサーバ20は、会話モードが終了したとき、あるいは非会話モードが終了したとき、所定時間の間、許諾者からの許諾があるかどうか待機し、許諾があれば(ステップS23;Yes)、ステップS24において、ホストコンピュータ22に対して振込処理要求(振り込みの実行)を送信する。そして、ステップS26において、ホストコンピュータ22からの振込完了通知を確認後、振込処理完了をATM10に対して送信する。ATMサーバ20は、許諾者からの許諾がなければ、すなわち非許諾の通知を受けた場合、あるいは所定時間、許諾者からの応答がない場合は、許諾なし、と判断し(ステップS23;No)、振込処理拒否をATM10に対して送信する(ステップS25)。
【0060】
ATM10では、振込処理完了通知、振込処理拒否通知いずれを受信した場合も、振込処理状況メッセージを表示し(ステップS27)、利用者の次の指示を待つ。以上の処理フローは典型的な処理手順を示したが、基本的な流れにのっとる限りは、各ステップの多少の手順前後があってもよい。なお、以上のフローは振込みを例にあげたが、現金による引き出しの場合も同様である。
【0061】
図6は、本発明の第一の実施形態に係るATMの会話モード時の処理フローを示す図である。前述したようにATMサーバ20は、許諾連絡先に電話番号が記載されていることを確認すると、ATM10に対して会話モードに入るように指示する(ステップS41)。
【0062】
ATM10は、会話モードの指示を受信すると、最初に選択された最適許諾連絡先の電話番号に発信する(ステップS30)。この発信に対して電話接続が確立すると(ステップS31;Yes)、会話が開始したことをATMサーバ20に送信し(ステップS32)、会話が終了するのを待つ。電話接続が確立しなかった場合は(ステップS31;No)、次の優先順位の許諾連絡先を選択し、発信を行う(ステップS33)。このステップをすべての許諾連絡先に対して行ってもなお電話接続が確立しない場合は、非会話モードに移行する。非会話モードについては後述する。
【0063】
ATM10は、利用者と許諾者の間の会話が終了すると、具体的には、利用者側からインターフォン部11の受話器を置くか、所定のボタンを押すと(ステップS34;Yes)、その許諾者に対して許諾要求を送信する(ステップS35)。次に、許諾者の電話機に対して、会話終了の音声メッセージを送信した後、許諾するかどうかの音声メッセージを送信する(ステップS35)。具体的には、許諾者がこの出金を許諾する場合は、許諾者の電話機の所定のボタンを押すように促し、この出金を許諾しない場合は、別の所定のボタンを押すように促す。ATM10は、許諾者の電話機から許諾または非許諾(拒否)の通知信号を受信すると、許諾結果をATMサーバ20に対して送信する(ステップS36)。所定時間、許諾者から応答がない場合は、拒否として扱う。そして、ATM10は、会話モードの終了通知をATMサーバ20に対して送信し(ステップS39)、会話モードを終了する(ステップS40)。ATMサーバ20は、ATM10から許諾者結果を受信したら、ステップS43において、その結果を保存する。その後、ATMサーバ20も当該ATM10との関係においての会話モードを終了する。
【0064】
なお、ATM10は、ステップS34において、会話終了が所定の時間内に終了しない場合はタイムアウトとして処理し(ステップS37;Yes)、警告を表示した後(ステップS38)、会話モードを強制的に終了する。この場合、出金要求は拒否として扱ってもよいし、再度電話接続を試みるかを利用者に判断させてもよい。
【0065】
図7は、本発明の第一の実施形態に係るATMの非会話モード時の処理フローを示す図である。非会話モードとは、前述したように、ATM10からの発信に対して、許諾者いずれとも電話連絡がとれない場合の処置をするモードである。非会話モードの処置の方法としては、無条件に出金要求を拒否する方法と、Eメールで許諾を求める方法と、許諾者の事前許諾があれば出金を許可する方法とがある。無条件に出金を拒否する方法では、ATMサーバ10は、所定時間のうちに許諾者いずれとも連絡が取れない場合、出金拒否をATM10に通知する。Eメールで許諾を求める方法では、Eメールが事前登録先の携帯電話またはPC等に届き、そのリンク先を開くと所定画面が表示され許諾可能となる。事前許諾の方法については、次の図7で説明する。
【0066】
図7のステップS50において、ATMサーバ20は、該当口座の出金許諾情報100の事前許諾情報105を検索する。そして、ステップS51において、当該出金要求に対しての事前許諾があるかどうかを調べる。事前許諾があれば(ステップS51;Yes)、会話は必要なしと判断して、許諾結果を保存する。事前許諾がなければ(ステップS51;No)、非許諾(拒否)をATM10に送信する(ステップS52)。いずれの場合も、許諾結果として保存し(ステップS53)、その後、非会話モードを終了する(ステップS54)。
【0067】
事前許諾の登録は、口座名義人から予め複数の許諾者に連絡(電話または可能であればEメールでもよい)して、出金額、出金場所、出金予定時間を伝える。連絡を受けたそれぞれの許諾者は、出金内容に疑問がなければ、事前許諾情報105に、当該出金の条件に合致する場合には出金を許諾する旨を登録することが望ましい。登録された許諾者が事前承認する場合、複数の許諾があることが望ましい。複数の許諾者の許諾があったほうがよいのは、振り込め詐欺犯が許諾者の一人になりすましていることがあるからである。
【0068】
複数の許諾者を登録する場合、口座名義人が各許諾者それぞれに許諾を求めるのは手間なので、許諾者のうち1人の代表者を決め、口座名義人はその代表者に連絡し、その代表者が事前許諾した登録内容を他の許諾者に連絡して許諾を求めるようにしてもよい。このようにすることで、仮に、詐欺犯が代表者になりすましていても他の許諾者が気づく可能性が高まる。また、口座名義人は、電話で許諾者に出金条件(出金額、出金場所、出金予定時間等)を伝える場合は、記録が残らないため、伝えた出金条件を失念してしまうことが考えられる。このため、口座名義人は出金条件を事前にATMやWeb上で登録し、許諾者がその内容を確認した上で許諾登録を実施する。あるいは、口座名義人が出金条件を電話で許諾者に伝え、許諾者は、その出金条件を登録してから許諾登録を実施するようにしてもよい。このようにすることでで、出金条件が口座名義人及び許諾者の間で確実に共有することができる。なお、事前許諾した出金が完了すると、事前許諾情報105は消去される。
【0069】
図8は、本発明の第二の実施形態に係る本発明の実施形態に係る金融機関システムの概略を示す図である。図1で説明した第一の実施形態では、許諾が必要な出金であることがわかると、ATMサーバ20がATM10に通知し、ATM10から許諾者の電話機に発信するようにしたが、第二の実施形態では、ATMサーバ20が許諾者の電話機に発信する。以下、図1と異なる部分についてのみ説明する。
【0070】
ここでは、許諾者の電話機がIP電話であるとして説明する。許諾者の電話機が固定IP電話機31Aである場合は、IP電話機能付モデム32にPC30と固定IP電話機31Aが接続される。携帯電話の場合は、IP電話に対応する機種である必要がある。図示するように、許諾者のIP電話機は、インターネット41に接続されているので、同じくインターネットに接続されたATMサーバ20から電話機への送受信が行いやすくなる。また、音声以外の情報(テキストや会話者の画像等)も送受信することができる。IP電話のメリットは、第一に、ATMサーバ20が、接続先のATMを選択することができる点である。ATMサーバ20には、管理するATM10のIPアドレスと電話番号を保持しているからである。また、第二のメリットは、テレビ電話が可能となる点、第三のメリットは、距離に関係なく電話料金が安くなる点である。ただし、電話料金を誰が負担するかについては問わない。
【0071】
図9は、本発明の第二の実施形態に係る金融機関システムの概略を示す図である。この図では、IP電話を使用した場合の会話モードの処理について説明する。
【0072】
ATMサーバ20は、許諾が必要な出金要求であることを検知し、最適許諾連絡先を選択すると、会話モードに入る。会話モードに入ると、まずステップS60において、その許諾者の電話番号に発信する。接続が確立すると(ステップS61;Yes)、接続先を出金要求を送信したATM10に切り替える(ステップS62)。その信号を受信したATM10は、会話モードを開始する(ステップS64)。接続が確立しない場合は(ステップS61;No)、優先順位に従って、次の許諾連絡先を選択し、ステップS60を次の選択先がなくなるまで繰り返す(ステップS63)。いずれの連絡先にも接続が確立できない場合は、非会話モードに移行する。
【0073】
なお、非会話モードでの処理は、第一の実施形態と同様である。また、図2のATMの外観、図3のATMの機能ブロック、図4の出金許諾情報、図5のメインフローは、第二の実施形態においても変更はない。
【0074】
ATM10は、会話モードに入ると、利用者と許諾者の会話が終了するまで待機する。会話が終了すると(ステップS65;Yes)、会話終了通知をATMサーバ20に送信する(ステップS66)。会話が所定時間経過しても終了しない場合は(ステップS67;Yes)、タイムアウトとして警告表示を行い(ステップS68)、そして、ステップS66に移り強制的に会話を終了させる。
【0075】
ATMサーバ20は、ATM10から会話終了の通知を受信すると、許諾者に承認要求を発信する(ステップS69)。承認要求は自動音声メッセージであってよい。その後、許諾者が応答が得られればその結果を、所定時間たっても応答が得られない場合は、許諾拒否の結果を、許諾結果として保存する(ステップS70)。そしてATMサーバ20は会話モードを終了し(ステップS71)、その後、ATM10も会話モードを終了する(ステップS72)。
【0076】
図10は、本発明の第一および第二の実施形態に係るATMの振込確認画面の一例を示す図である。口座名義人(振込人)がATMを操作して自己の口座から振り込みを行う場合には、通常、以下のような操作を行う。すなわち、ATM10のタッチパネルで、振込ボタン押下→振込カードなしボタン押下→口座からの振込ボタン押下→キュッシュカード挿入→暗証番号入力→振込先金融機関名入力→支店名入力→口座種別入力→口座番号入力→振込金額入力、と進むと、図示するように、振込確認画面200が表示される。この振込確認画面200で、利用者が確認ボタンを押下すると、許諾が必要な振込みの場合には、画面201が表示される。これ以降の画面は、ATM10のタッチパネル(表示入力部13)でなく、インターフォン表示画面11Aに表示されるようにしてよい。
【0077】
振込人が画面201で確認ボタンを押下すると、ATM10は、登録された許諾者に電話接続を試みる。許諾者と接続が確立すると、画面202に表示が切り替わり、許諾者との電話が繋がったことを振込人に知らせる。振込人は、インターフォン受話器11Bを取ることで、許諾者と会話ができるようになる。会話が終了すると、振込人は、受話器を元の場所に置くことで許諾人との電話を終了する。その後もATM10と許諾者の電話機はまだ繋がっている状態であり、その間に許諾者に対して許諾を求める通知メッセージが送信される。この通知メッセージについては次の図で説明する。
【0078】
通知メッセージが許諾者に送られ、その応答を待っている間は、ATM10は、画面203が表示されている。その後、許諾者からの許諾を受信すると、画面204のように、許諾が得られて振込みが正常に終了したことが表示される。許諾者から非許諾を受信した場合、または指定時間内に応答がなかった場合は、許諾者からの許諾が得られなかったと判断し、画面205のように、振込みができなかった旨が表示される。
【0079】
図11は、本発明の第一および第二の実施形態に係る許諾者への通知メッセージの一例を示す図である。図10の画面201で、振込人が確認ボタンを押下すると、許諾者の電話機に電話がかかり、図11で示すように、振込人との会話を依頼するメッセージ300が流れる。ここで、許諾者が電話機の1のボタンを押すと、ATM10に接続され、振込人との通話が開始する。メッセージ300に対しての許諾者が2のボタンを押すと、会話を拒否するようにしてもよい。この場合は、メッセージ302が流れ、会話せずに、許諾するか非許諾にするかの確認を求められる。メッセージ300に対して、許諾者と振込人が通話を開始し、その通話が終了すると、メッセージ301が流れ、たったいま振込人と電話で話した振込みに許諾するか許諾しないかの確認が求められる。ここで、許諾者は、許諾する場合は1を、許諾しない場合は2を押下する。許諾した場合は、メッセージ303が流れ、許諾を求められた振込みが正常に終了したことが知らされる。許諾しなかった場合には、メッセージ304が流れ、許諾を求められた振込みが拒絶されたことが知らされる。なお、上記の通知メッセージは、音声ガイドで流れるようにしたが、許諾者のPC30の画面や電話機31の表示画面上にテキストで表示されるようにしてもよい。
【0080】
なお、上記の本発明の実施形態では、金融機関として、銀行のキャッシュカードを想定して説明したが、クレジットカード会社や証券会社等、他の金融機関が発行するキャッシングや振り込みができるカードにおいても同様である。また、ATM10を用いる代わりに、銀行等の窓口の口座取引を処理する端末に本ATM10の会話手段と同等な機能を持たせることでも、本発明は実施可能である。この場合は、窓口の店員が、口座名義人からの依頼に基づいて銀行の端末を操作し、許諾者との電話接続が確立したときは窓口の店員が口座名義人に知らせることになる。
【0081】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0082】
10 ATM
11 インターフォン部
11A 表示部(インターフォン表示画面)
11B 受話器(インターフォン受話器)
11C カメラ(インターフォンカメラ)
12 電話回線通信部
13 表示入力部
14 音声ガイド出力部
15 金融機関オンライン通信部
16 制御部
16A ATM処理制御部
16B インターフォン制御部
17 ATM処理部
17A 紙幣入出金部
17B 硬貨入出金部
17C 通帳印字金部
17D 明細票印字部
17E カード読取部
17F 生体認証部
20 ATMサーバ
21 口座出金許諾DB
22 ホストコンピュータ
23 口座DB
30 PC
31 携帯電話
31A 固定IP電話機
31B IP携帯電話機
32 モデム
40 金融機関オンラインネットワーク
41 インターネット
42 公衆電話網
100 出金許諾情報
101 口座登録情報
102 許諾者リスト
103 許諾条件リスト
103A 許諾要通知条件
104 出金許諾取引履歴
105 事前許諾情報
200,201,202,203,204,205 振込確認画面
300,301,302,303,304 許諾者への通知メッセージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATMとネットワークで接続されたATMサーバで構成され、金融機関の口座名義人が自らの口座から振り込みまたは引き出しを行う際に許諾を要する出金許諾システムであって、
前記ATMサーバは、
前記口座からの出金を許諾する許諾者の連絡先と、前記口座名義人が当該口座から出金要求を行った際に、前記許諾者に許諾を求めるかどうかを規定した許諾要通知条件とを記憶する出金許諾情報記憶手段を備え、
前記ATMは、
前記口座名義人から前記出金要求を受付けた際に、当該口座名義人を前記許諾者と電話連絡により会話させる会話手段を備え、
前記ATMサーバは、前記出金要求を前記ATMから受信した際に、前記許諾要通知条件を参照し、前記許諾者の許諾が必要な場合は、前記会話手段によって前記口座名義人と前記許諾者の会話を行なわせ、前記会話が終了後、前記許諾者に許諾を求め、前記許諾に基づいて当該出金を実行させる、
ことを特徴とする、出金許諾システム。
【請求項2】
前記会話手段は、前記ATMに設置されたインターフォンであることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記許諾要通知条件は、複数の許諾条件を組み合わせた論理式によって定義され、前記許諾条件には、該出金を行うことのできるATMの設置場所およびATMの識別子を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記出金許諾情報記憶手段は、複数の許諾者ごとに複数の連絡先を記憶し、予め定めた時間帯ごとに、前記許諾者に連絡する際の優先順位を前記複数の連絡先に持たせることを特徴とする、請求項1乃至3に記載のシステム。
【請求項5】
前記ATMサーバは、前記会話手段によって許諾者のいずれとも電話連絡がとれない場合には、非会話モードに移行し、前記非会話モードにおいては、複数の許諾者からの事前許諾のあるなしに基づいて当該出金の可否を判断することを特徴とする、請求項1乃至4に記載の出金許諾システム。
【請求項6】
ATMとネットワークで接続されたATMサーバで構成され、金融機関の口座名義人が自らの口座から振り込みまたは引き出しを行う際に許諾を要する出金許諾システムであって、
前記ATMサーバは、
前記口座からの出金を許諾する許諾者の連絡先と、前記口座名義人が当該口座から出金要求を行った際に、前記許諾者に許諾を求めるかどうかを規定した許諾要通知条件とを記憶する出金許諾情報記憶手段を備え、
前記ATMは、
前記口座名義人から前記出金要求を受付けた際に、当該口座名義人を前記許諾者と電話連絡により会話させるインターフォンを備え、
前記ATMサーバは、前記出金要求を前記ATMから受信した際に、前記許諾要通知条件を参照し、前記許諾者の許諾が必要な場合は、前記会話手段によって前記口座名義人と前記許諾者の会話を行なわせる、
ことを特徴とする、出金許諾システム。
【請求項7】
ATMとネットワークで接続され、金融機関の口座名義人が振り込みまたは引き出しを行う際に許諾を行うATMサーバであって、
口座からの出金を許諾する許諾者の連絡先と、前記口座名義人が該口座から出金を行う際に、前記許諾者に許諾を求めるかどうかを規定した許諾要通知条件とを記憶する出金許諾情報記憶手段と、
前記ATMが前記口座名義人からの出金要求を受付けた際に、前記許諾者の電話機と前記ATMの会話手段とを接続する接続手段とを備え、
前記口座名義人が前記ATMから該口座から出金を行う際に、前記許諾要通知条件を参照し、前記許諾者の許諾が必要な場合は、前記会話手段を用いて前記口座名義人と前記許諾者の会話を行なわせ、前記会話が終了後、前記許諾者の許諾を求め、前記許諾に基づいて当該出金を実行させる、
ことを特徴とする、ATMサーバ。
【請求項8】
金融機関のシステムにおける出金許諾方法であって、前記システムのコンピュータが、
前記金融機関の口座からの出金を許諾する許諾者の連絡先を口座ごとに記憶する段階と、
口座名義人が自己の口座から出金を行う際に前記許諾者に許諾を求める条件を規定した許諾要通知条件を記憶する段階と、
前記口座名義人がATMから該口座から出金を行う際に、前記ATMを介して、前記口座名義人と前記許諾者とを電話連絡により会話させる段階と、
前記会話の終了後、前記許諾者の許諾を求める段階と、
前記許諾に基づいて、当該出金を実行する段階とを、
実行することを特徴とする、出金許諾方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−185734(P2012−185734A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49328(P2011−49328)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(302064762)株式会社日本総合研究所 (367)
【Fターム(参考)】