説明

分割型複合繊維

【課題】 防風性、ソフト性、染色性に優れた高密度織物を提供し得る好適な繊維物性を有し、かつ、容易に分割可能な分割型複合繊維を提供する。
【解決手段】 ポリ乳酸を主成分とする容易に分解可能なポリエステルAと、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルBとからなる分割型複合繊維であって、ポリエステルAが少なくとも繊維表面の一部を占め、該複合繊維の繊維収縮率が9〜20%であることを特徴とするポリエステル系複合繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防風性、ソフト性、染色性に優れた高密度織物を提供し得る好適な繊維物性を有し、かつ容易に分割可能な分割型複合繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数成分から成る分割型複合繊維を減量し、極細繊維を得る方法は広く知られている。しかしその多くはポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称する)系ポリマーを用いた複合繊維であり、該複合繊維を減量して得られる極細繊維は、100℃以上での高温染色が必要である上、十分な発色性が得られず、特に濃色での商品展開に制限あった。更に、PET自体のヤング率が高いためソフト性が不十分であり、高密度織物とした際に風合いが固いという欠点があった。
【0003】
これに対し、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルに代表されるテレフタル酸の低級アルキルエステルと、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)を重縮合させて得られるポリトリメチレンテレフタレート(以下、3GTと称する)は、PETやポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと称す)に比べて低ヤング率、易染性といった特徴を持つことから、近年、注目を集めている。
【0004】
3GTの極細繊維に関しては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸共重合PETと3GTの海島複合繊維をアルカリ減量する技術が開示されているが(特許文献1参照)、こうしたアルカリ易溶出性の共重合PETは、3GTよりも融点が高い。3GTは耐熱性が低いポリマーであり融点以上の温度条件下では容易に熱分解することから、特許文献1のような共重合系PETと複合紡糸した場合、強度の低い複合繊維しか得られず、同時に繊維収縮も低下するため、本発明が目的とするような防風性の高い布帛を得ることはできない。更には製糸性においても糸切れが多発し、生産性に劣ることが明らかとなった。
【0005】
一方、減量分解される成分として生分解可能なポリ乳酸(以下、PLAと称する)を用いた分割型複合繊維については、PLAとPET、あるいはPLAとイソフタル酸共重合PETとの複合繊維(特許文献2参照)や、PLAとPBTの複合繊維(特許文献3参照)が技術開示されているが、3GTを用いた場合については明らかにされておらず、前述のとおりPETやPBTを用いた極細繊維では、染色性、ソフト性が不足し、繊維収縮も低いことから防風性が高く、ソフトで染色性の良い布帛は得られない。
【特許文献1】特開2001−348735号公報(請求項)
【特許文献2】特開平11−302926号公報(請求項)
【特許文献3】特開平8−35121号公報(請求項)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点を解決しようとするものであり、防風性、ソフト性、染色性に優れた布帛を提供可能な好適な繊維物性を有し、かつ容易に分解可能な割型複合繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(1)〜(4)に記載の項目を採用することにより達成される。
(1)ポリ乳酸を主成分とする容易に分解可能なポリエステルAと、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルBとからなる複合繊維であって、ポリエステルAが少なくとも繊維表面の一部を占め、該複合繊維の繊維収縮率が9〜20%であることを特徴とする分割型複合繊維。
(2)収縮応力ピーク値が0.20〜0.50cN/dtexであることを特徴とする(1)に記載の分割型複合繊維。
(3)初期引張抵抗度が20〜40cN/dtexであることを特徴とする(1)または(2)に記載の分割型複合繊維。
(4)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の分割型複合繊維からなる繊維製品。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、従来技術では成し得なかったソフト性、染色性に優れ、かつ布帛にしたときに高い防風性が得られるポリエステル分割型複合繊維を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
まず、本発明の分割型複合繊維について説明する。該複合繊維はPLAを主成分とするポリエステルAと、3GTを主成分とするポリエステルBとからなり、ポリエステルAによってポリエステルBが複数のセグメントに分割された分割型複合繊維であり、図1、図2に示すような海島型複合繊維や割繊型複合繊維が例として挙げられる。分割数や繊度に特に規定はなく、対象となる最終製品や生産性を考慮し設定すると良い。
【0011】
複合繊維の一方の成分であるポリエステルAは、PLAを主成分とするポリエステルであり、アルカリ処理により溶出される成分である。ポリエステルAにPLAを用いることにより、紡糸温度を低く設定することができ、ポリエステルB(3GT)の熱劣化を最小限に抑制することができる。更には、3GTとPLAは製糸工程における張力、収縮挙動が類似するため、複合紡糸に際して極めて良好な工程安定性が得られる。また、従来の有機金属塩を共重合したPETとは異なり、減量に際して酸処理工程を必要としないため、酸性溶媒の排出がなく環境負荷を低減すること可能であり。同時に溶出工程の短縮化が図れるため好ましい。
【0012】
ここで、本発明で用いるPLAとは、-(O-CHCH-CO)n-を繰り返し単位とするポリマーであり、乳酸やそのオリゴマーを重合したものをいう。乳酸にはD−乳酸とL−乳酸の2種類の光学異性体が存在するため、その重合体もD体のみからなるポリ(D−乳酸)とL体のみからなるポリ(L−乳酸)および両者からなるポリ乳酸がある。ポリ乳酸中のD−乳酸、あるいはL−乳酸の光学純度は、低くなるとともに結晶性が低下し、融点降下が大きくなる。そのため、耐熱性を高めるために光学純度は90%以上であることが好ましい。より好ましい光学純度は93%以上、さらに好ましい光学純度は97%以上である。なお、光学純度は前記した様に融点と強い相関が認められ、光学純度90%程度で融点が約150℃、光学純度93%で融点が約160℃、光学純度97%で融点が約170℃となる。また、上記のように2種類の光学異性体が単純に混合している系とは別に、前記2種類の光学異性体をブレンドして繊維に成型した後、140℃以上の高温熱処理を施してラセミ結晶を形成させたステレオコンプレックスにすると、融点を飛躍的に高めることができ、より好ましい。
【0013】
他方の成分であるポリエステルBは、3GTを主成分とするポリマーであり、アルカリ減量処理後に極細繊維を構成する成分である。本発明において、ポリエステルBを3GTとすることにより、従来のPETやPBTの極細繊維では得られなかった、ソフト性と染色性を得ることができ、布帛形成時に優れた防風性を発現させることができる。本発明で用いる3GTとは、90モル%以上がトリメチレンテレフタレートの繰り返し単位からなる3GTであり、ここで言う3GTとはテレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルである。ただし、10モル%以下の割合で他のエステル結合を形成可能な共重合成分を含むものであっても良い。共重合可能な化合物として、たとえばイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸などのジカルボン酸類、一方、グリコール成分として、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができるが、これらに限られるものではない。また、艶消剤として、二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤として、ヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを必要に応じて添加することができる。
【0014】
本発明における3GTの好ましい極限粘度は、0.7〜2.0であり、極限粘度が0.7以上とすることで充分な強度と伸度を兼ね備えた繊維を製造することが容易となる。より好ましい極限粘度は0.8以上である。また、極限粘度が2.0以下とすることで、生産安定性が得られやすい。より好ましい極限粘度は1.5以下である。
【0015】
ポリエステルAとポリエステルBの複合比は、任意に設定可能であるが、分割性とポリエステルA(PLA)の減量に伴う製品量損失分を考慮すると、1:9〜5:5の範囲であることが好ましく、より好ましくは2:8〜4:6の範囲である。ポリエステルAの複合比は1割以上とすることにより、ポリエステルBとの複合異常を回避できるほか、ポリエステルAの溶融後の配管通過時間を短縮できるため、熱劣化による変色を抑制でき、製糸性の向上が可能となる。また、ポリエステルAの複合比を5割以下にすると、減量による製品量損失を軽減できるため、生産効率を高く維持でき好ましい。
【0016】
一方、優れた分割性を得るためには、ポリエステルAが少なくとも繊維表面の一部を占めるよう配置する必要がある。ポリエステルAを繊維表面に露出させることにより、減量剤がポリエステルAに直接作用するため、露出させない場合に比べて、よりマイルドな減量条件で、より短時間で効率的に分割することが可能となる。
【0017】
次に、本発明の分割型複合繊維の物性について述べる。
【0018】
本発明の複合繊維を布帛にした際に優れた防風性、ソフト性を発現させるためには、繊維収縮率を9〜20%とする必要がある。繊維収縮を該範囲とすることにより、布帛形成後の高次加工における熱セット収縮にて組織密度が上がり、優れた防風性得ることが可能となる。繊維収縮率が9%を下回ると、高次加工における熱セット収縮が低いため十分な防風性を得ることができず、逆に繊維収縮率が20%を超えると、製糸巻き取り中に遅延収縮が発生して巻き取りコアを締め付けるため、製品が巻き取り機支持体から払い出しできない等の工程的不安定を引き起こしたり、高次工程における布帛の幅出しが困難となるため、品質の安定した製品が得られず良くない。また、繊維収縮率の下限に関しては、9.8%以上とするのがより好ましく、さらに好ましくは10.5%以上とするのが良い。繊維収縮率を9.8%以上とすることで、非常に優れた防風性の高い布帛を得ることが可能となり、10.5%以上とすると更に防風性能が向上した、極めて防風性の高い布帛を得ることができる。
【0019】
なお、適度な防風性とソフト性を有する布帛を得るうえで、収縮応力ピーク値は、0.2〜0.5cN/dtexであることが好ましく、より好ましくは0.23cN/dtex以上とするのが良い。また、複合繊維の初期引張抵抗度は20〜40cN/dtexであると好ましい。初期引張抵抗度を40cN/dtex以下とすることにより、3GTポリマーの持つソフト性を損なわず、ソフトな風合いの布帛が得られる。他の物性については特に規定されないが、3GTの特徴を活かした複合繊維とするためには、強度については、3.0〜5.0cN/dtexが好ましく、伸度は30〜60%であると、発色性に優れ、後加工でのハンドリングも良好な複合繊維が得られる。より3GTの特徴を損なわないためには、伸度は35%以上であると、良好な発色性が得ることが容易となる。本発明にて得られる分割型複合繊維は、高密度織物とした場合、非常に優れた防風性を発揮するほか、起毛加工すると、緻密で起毛方向の均質なスエード調素材を得ることができる。
【0020】
次いで、本発明の複合繊維の好ましい製造方法について説明する。
【0021】
本発明の複合繊維は、公知のいずれの方法においても製造可能であるが、複合構造の安定性、生産性を考慮すると、溶融紡糸法による生産が最も優れている。溶融紡糸法による製造にあたっては、紡糸および延伸工程を連続して行う方法、未延伸糸を一旦巻き取った後に延伸する方法、あるいは高速製糸法など、いずれのプロセスにおいても製糸が可能であり、必要に応じて仮撚りや空気交絡等の糸加工を施しても良い。一例として、以下に直接紡糸延伸法での製造について詳しく説明する。
【0022】
本発明の複合繊維を溶融紡糸する上では、一方の成分となる3GTは、240〜280℃にて溶融されるのが好ましい。溶融するに際し、プレッシャーメルター法およびエクストルーダー法が挙げられるが、均一溶融と滞留防止の観点からエクストルーダーによる溶融が好ましい。一方、他方の成分であるPLAは、3GTと同様にエクストルーダーを用い、200〜240℃での溶融が好ましい。別々に溶融されたポリマーは別々の配管を通り、計量された後、口金パックへ流入する。この際、熱劣化を抑制する観点から、配管通過時間が5〜30分であることが好ましい。パックへ流入したポリマーは口金により合流され、公知の技術により海島型、割繊型などの形態に複合され口金より吐出される。
【0023】
この際、の紡糸温度は、240〜270℃が適当である。この範囲であれば、3GTの特徴を活かした複合繊維が製造できる。
【0024】
口金から吐出されたポリマーは冷却、固化され、油剤が付与された後、引き取られる。引き取り速度は1000〜5500m/分のいずれの速度においても可能である。100〜4000m/分の未延伸糸または部分配向糸領域において引き取る場合は、一旦巻き取ることなく、予熱、延伸、熱処理を行い延伸糸とした後巻き取る方法が取られる。以上にあげた直接紡糸延伸法においては、延伸倍率は延伸糸伸度が30〜60%の範囲となるように適宜設定するのが良い。また、紡糸、延伸いずれかの工程において、巻き取りまでで公知の交絡装置を用い、交絡を施すことも可能である。必要であれば複数回付与することで交絡数を上げることが可能となる。さらには、巻き取り直前に、追加で油剤を付与するのも良い。
【0025】
好ましく用いられる装置の概略を図3に示す。40〜80℃に加熱されたホットローラー8にて1000〜4000m/分にて一旦引き取られた糸条は予熱のため、数ターンホットローラー8上で巻きつけられ、3800〜5500m/分の速度にてホットローラー9へ引き回され延伸される。この際、ホットローラー9は110〜170℃に加熱しておき、数ターン巻きつけられることで熱セットが行われる。交絡の付与後、2つのゴデーローラー11、12によって糸条の冷却とともに張力が調整され、巻き取り機にてパッケージに巻きつけられる。巻き取り機においては、パッケージに接するコンタクトロール13によってパッケージ巻き付け張力が調整される。
【0026】
コンタクトロールの速度はパッケージの巻き取り速度に対して、1.001〜1.01倍早く設定することで得られるパッケージの良好なふくらみ率と耳高率が容易に得られる。コンタクトロール速度のオーバーフィードを1.001以上とすることで、パッケージに巻かれる際の張力を低減でき、ふくらみ率、耳高率を抑制することが可能となる。より好ましい範囲は、1.0015以上である。また、1.01以下とすることによりパッケージ端面からの糸落ちを防止することができ、良好な解舒性が確保できる。より好ましいオーバーフィードの範囲は1.008以下である。さらに、コンタクトロール入口での糸条の張力は、0.1〜0.3cN/dtexであることが好ましい。張力を0.1cN/dtex以上に設定することで、ゴデーローラーから巻き取り機間の糸揺れを低減でき、巻き取り速度を上げた場合でも安定して糸条を巻き取ることができる。より好ましい張力は0.12cN/dtex以上である。また、張力を0.3cN/dtex以下とするとコンタクトロールでの張力制御が容易となり、良好なパッケージフォームが得られる。より好ましい張力は0.25cN/dtex以下である。さらには、巻き取り速度は3800〜5000m/分であることが好ましい。該範囲とすることで複合繊維の物性を損なうことなく、高い生産効率を維持することができる。より好ましい速度の範囲は3900〜5000m/分である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて具体的に説明する。なお、実施例の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)極限粘度
極限粘度[η]は、次の定義式に基づいて求められる値である。
【0028】
【数1】

【0029】
定義式のηrは、純度98%以上のO−クロロフェノールで溶解した3GTの希釈溶液の25℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶剤自体の粘度で割った値であり、相対粘度と定義されているものである。また、cは上記溶液100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
(2)強度、伸度、初期引張抵抗度
JIS L1013(1999)に従い測定した。
(3)繊維収縮率
繊維収縮率(%)={(L0−L1)/L0}×100
L0:原糸をかせ取りし、測定荷重0.029cN/dtexでのかせ長
L1:原糸を無荷重の状態で100℃の沸騰水にて15分間処理し、風乾後、測定荷重0.029cN/dtexを掛けたときのかせ長
(4)染色性
染料としてテトラシールネイビーブルーSGL0.275%owf、助剤としてテトロシンPE−C5.0%owf、分散剤としてニッカサンソルト#12001.0%owfを用い、浴比1:100にて50℃15分、さらに90℃20分にて染色を行った。染色後のサンプルは染色むら、ドラムまたはボビン間での染色差を総合的に官能検査し3段階評価した。尚、合格レベルは○以上である。
【0030】
○○:非常に優れている
○ :優れている
× :PET同等
(5)防風性
経密度5280本/m、緯密度3580本/m、生機幅1.30mのゾッキ織物を作成し、95℃にて精錬後、3wt%の水酸化ナトリウム水溶液にてPLA成分を95wt%以上アルカリ減量除去した。更に130℃にて一旦乾燥させたのち、160℃、110cm幅にて仕上げ熱セットした。こうして得られた布帛をJIS L1096(1999)A法に従い、通気性を測定した。防風性に関して、該測定による通気性を以下の3段階にて評価し、△以上を合格とした。
【0031】
○○:1cc/cm.sec未満
○ :1〜2cc/cm.sec
△ :2〜3cc/cm.sec
× :3cc/cm.sec以上を超
(6)ソフト性
上記方法にて得られたゾッキ織物の肌触りを官能検査し3段階評価した。尚、合格レベルは○以上である。
【0032】
○○:非常に優れている
○ :優れている
× :固い
(7)製糸性
製糸時の糸切れ発生率を、8錘建て巻き取り機にて生産した場合の値に換算し、糸切れが2回/t以下のものを合格(○)とし、2回/tを超えるものを不合格(×)とした。
【0033】
実施例1
光学純度98.0%のポリ−L−乳酸と極限粘度1.1のホモ3GTを、それぞれエクストルーダーを用いて210℃、250℃にて溶融後、ポンプによる計量を行い、250℃にて図1に示すような海島型複合形態を形成すべく公知の口金に流入させた。複合比はポリ乳酸3に対し、3GT7の割合とした。各ポリマーの配管通過時間は、ポリ乳酸が20分、3GTは11分であった。口金から吐出された糸条は、図3に示す装置にて冷却、油剤付与後、2700m/分の速度で55℃に加熱された第1ホットローラー8に引き取られ、一旦巻き取ることなく、4300m/分の速度で150℃に加熱された第2ホットローラー9に引き回し、延伸、熱セットを行った。さらに、4200m/分にて2個のゴデットローラー11、12を引き回した後、コンタクトロール入口での張力を0.13cN/dtex、コンタクトロール速度4080m、パッケージ巻き取り速度4072m/分、すなわちオーバーフィードを1.0020として巻き取り、64dtex―36フィラメントの8島の海島型複合繊維を得た。この複合繊維の特性評価結果は表1の通りであり、防風性、ソフト性、易染性に優れるものが得られた。
【0034】
実施例2
口金を変更し、図2−(C)に示す64dtex−36フィラメントの分割型複合糸とし、コンタクトロール入口での張力を0.15cN/dtex、コンタクトロール速度4070m/分、パッケージ巻き取り速度4062m/分、すなわちオーバーフィードを1.0020として巻き取った。上記以外の条件は実施例1と同様とした。得られた複合繊維は表1に示す通りであり、防風性、ソフト性、易染性に優れるものが得られた。
【0035】
実施例3
実施例1と同様の口金を使用し、PLA(海):3GT(島)の複合比を2:8として、POY−DTプロセスにて8島の海島型複合繊維を得た。製糸に際して、巻き取り速度2800m/分にて一旦ドラムに巻き取った後、得られた原糸を70℃の第1ロールにて予熱後、倍率1.47倍に延伸し、115℃の第2ロールで熱セットをした後、室温の第3ロールを介して、400m/分でボビンに巻き取り、目的の海島複合繊維を得た。得られた複合繊維は防風性、ソフト性、染色性ともに良好であった。
【0036】
実施例4
実施例1と同様の口金を使用し、第1ホットローラー速度を2500m/分とした以外は、実施例1と同様の条件にて海島複合繊維を得た。得られた複合繊維は防風性、ソフト性で実施例1に一歩およばないものの良好であり、染色性は実施例1と同等であった。
【0037】
実施例5
実施例1と同様の口金を使用し、第1ホットローラー速度を2300m/分とした以外は、実施例1と同様の条件にて海島複合繊維を得た。得られた複合繊維は防風性、ソフト性で実施例1に一歩およばないものの良好であり、染色性は実施例1と同等であった。
【0038】
比較例1
実施例1と同様の口金を使用し、5−ナトリウムスルホイソフタル酸共重合PETと3GTを3:7の割合で複合し製糸を試みたが、安定製糸が不可能であった。
【0039】
比較例2
第2ホットローラー温度を170℃として熱セットした以外は、実施例1と同様にして製糸し、評価した結果、ソフト性、染色性は良好であるものの、防風性に劣るものとなった。
【0040】
比較例3
実施例1と同様の口金を使用し、海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸共重合PETを、島成分としてPETを用い、海:島複合比を2:8として、実施例1と同様にして複合繊維を得た。しかし、得られた複合繊維はソフト性がやや劣り、染色性、防風性は実施例1にはるかに劣るものとなった。
【0041】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】海島型複合繊維断面の一例を示す。
【図2】割繊型複合繊維断面の一例を示す。
【図3】製糸工程(直接紡糸延伸法)の一例を示す。
【符号の説明】
【0043】
1 ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするポリマーからなる領域
2 ポリ乳酸を主成分とするポリマーからなる領域
3 中空部
4 口金
5 糸条冷却送風装置
6 油剤付与装置
7 交絡装置
8 第1ホットロール
9 第2ホットロール
10 交絡装置
11 ゴデーロール
12 ゴデーロール
13 コンタクトロール
14 パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸を主成分とするポリエステルAと、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルBとからなる複合繊維であって、ポリエステルAが少なくとも繊維表面の一部を占め、該複合繊維の繊維収縮率が9〜20%であることを特徴とする分割型複合繊維。
【請求項2】
収縮応力ピーク値が0.20〜0.50cN/dtexであることを特徴とする請求項1記載の分割型複合繊維。
【請求項3】
初期引張抵抗度が20〜40cN/dtexであることを特徴とする請求項1または2記載の分割型複合繊維。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の分割型複合繊維からなる繊維製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−274501(P2006−274501A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97277(P2005−97277)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】